以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(一つの実施形態)
図1に、受信装置の一実施形態を示す。
受信装置は、アンテナ101と、受信回路102と、低密度パリティ検査(LDPC)復号器103と出力ポート104と対数尤度比算出処理部110とを備えている。受信回路102は、アンテナ101に到達した無線信号から、受信信号yを分離する。対数尤度比算出処理部110は、受信信号yに基づいて、受信信号yに対応する符号の各ビットについて対数尤度比を算出する。LDPC復号器103は、受信データの各ビットについて算出された対数尤度比に基づく軟判定復号処理を行う。このLDPC復号器103による復号処理で得られた受信データは、出力ポート104を介して出力される。
図1に示した例では、対数尤度比算出処理部110は、128QAMによってマッピングされた7ビットの符号の各ビットについて対数尤度比LLR−1〜LLR−7を算出する構成を含んでいる。
この対数尤度比算出処理部110は、対数尤度比LLR−1を算出するために、LLR−1算出部111を備えている。この対数尤度比算出処理部110の例では、対数尤度比LLR−1の算出は、受信信号yのコンスタレーション平面での位置にかかわらずLLR−1算出部111に用意された所定の計算式に従って行われる。この構成例は、受信信号yの位置にかかわらず、選択処理部によって、LLR−1算出部111が選択される例として捉えることができる。同様に、図1に示した対数尤度比算出処理部110の例では、対数尤度比LLR−2の算出は、受信信号yの位置にかかわらず、LLR−2算出部121に用意された別の所定の計算式に従って行われる。また、図1に示した対数尤度比算出処理部110の例では、対数尤度比LLR−5の算出も、受信信号yの位置にかかわらず、LLR−5算出部151に用意された別の所定の計算式に従って行われる。LLR−1算出部111、LLR−2算出部121およびLLR−5算出部151にそれぞれ用意される計算式については、後述する。
一方、対数尤度比算出処理部110は、対数尤度比LLR−3を算出するために、7通りのLLR−3算出部1311〜1317と、LLR−3判別処理部132と、セレクタ133とを備えている。この対数尤度比算出処理部110の例では、受信回路102によって受信信号yが出力される信号線は、LLR−3判別処理部132および7通りのLLR−3算出部1311〜1317に接続されている。LLR−3判別処理部132は、受信信号yのコンスタレーション平面での位置に基づいて、対数尤度比LLR−3の算出に用いるLLR−3算出部131j(jは1〜7のいずれか)を示す選択信号を生成する。この選択信号に従って、セレクタ133は、LLR−3の算出部131j(jは1〜7のいずれか)を選択する。選択されたLLR−3算出部131jは、受信信号yを取り込み、この受信信号yについて対数尤度比LLR−3を算出する。算出された対数尤度比LLR−3の値はLDPC復号器103に入力される。図1に示した対数尤度比算出処理部110に備えられた7通りのLLR−3算出部1311〜1317は、第3ビットの対数尤度比を算出するための対数尤度比算出部の例である。そして、LLR−3判別処理部132およびセレクタ133は、選択処理部のうち、第3ビットの対数尤度比の算出に関する処理を行う部分の一例である。上述したLLR−3算出部1311〜1317に用意される7通りの計算式については、後述する。
同様に、対数尤度比算出処理部110は、対数尤度比LLR−4を算出するために、4通りのLLR−4算出部1411〜1414と、LLR−4判別処理部142と、セレクタ143とを備えている。この対数尤度比算出処理部110の例では、受信信号yが伝送される信号線は、LLR−4判別処理部142および4通りのLLR−4算出部1411〜1414に接続されている。LLR−4判別処理部142は、受信信号yのコンスタレーション平面での位置に基づいて、対数尤度比LLR−4の算出に用いるLLR−4算出部141j(jは1〜4のいずれか)を示す選択信号を生成する。この選択信号に従って、セレクタ143は、LLR−4の算出部141j(jは1〜4のいずれか)を選択する。選択されたLLR−4算出部141jは、受信信号yを取り込み、この受信信号yについて対数尤度比LLR−4を算出する。算出された対数尤度比LLR−4の値はLDPC復号器103に入力される。図1に示した対数尤度比算出処理部110に備えられたLLR−4算出部1411〜1414は、第4ビットの対数尤度比を算出するための対数尤度比算出部の例である。そして、LLR−4判別処理部142およびセレクタ143は、選択処理部のうち、第4ビットの対数尤度比の算出に関する処理を行う部分の一例である。上述したLLR−4算出部1411〜1414に用意される4通りの計算式については、後述する。
また、同様に、対数尤度比算出処理部110は、対数尤度比LLR−6を算出するために、4通りのLLR−6算出部1611〜1614と、LLR−6判別処理部162と、セレクタ163とを備えている。この対数尤度比算出処理部110の例では、受信信号yが伝送される信号線は、LLR−6判別処理部162および4通りのLLR−6算出部1611〜1614に接続されている。LLR−6判別処理部162は、受信信号yのコンスタレーション平面での位置に基づいて、対数尤度比LLR−6の算出に用いるLLR−6算出部161j(jは1〜4のいずれか)を示す選択信号を生成する。この選択信号に従って、セレクタ163は、LLR−6の算出部161j(jは1〜4のいずれか)を選択する。選択されたLLR−6算出部161jは、受信信号yを取り込み、この受信信号yについて対数尤度比LLR−6を算出する。算出された対数尤度比LLR−6の値はLDPC復号器103に入力される。図1に示した対数尤度比算出処理部110に備えられたLLR−6算出部1611〜1614は、第6ビットの対数尤度比を算出するための対数尤度比算出部の例である。そして、LLR−6判別処理部162およびセレクタ163は、選択処理部のうち、第6ビットの対数尤度比の算出に関する処理を行う部分の一例である。上述したLLR−6算出部1611〜1614に用意される4通りの計算式については、後述する。
更に、対数尤度比算出処理部110は、対数尤度比LLR−7を算出するために、4通りのLLR−7算出部1711〜1714と、LLR−7判別処理部172と、セレクタ173とを備えている。この対数尤度比算出処理部110の例では、受信信号yが伝送される信号線は、LLR−7判別処理部172および4通りのLLR−7算出部1711〜1714に接続されている。LLR−7判別処理部172は、受信信号yのコンスタレーション平面での位置に基づいて、対数尤度比LLR−7の算出に用いるLLR−7算出部171j(jは1〜4のいずれか)を示す選択信号を生成する。この選択信号に従って、セレクタ173は、LLR−7の算出部171j(jは1〜4のいずれか)を選択する。選択されたLLR−7算出部171jは、受信信号yを取り込み、この受信信号yについて対数尤度比LLR−7を算出する。算出された対数尤度比LLR−7の値はLDPC復号器103に入力される。同様に、図1に示した対数尤度比算出処理部110に備えられたLLR−7算出部1711〜1714は、第7ビットの対数尤度比を算出するための対数尤度比算出部の例である。そして、LLR−7判別処理部172およびセレクタ173は、選択処理部のうち、第7ビットの対数尤度比の算出に関する処理を行う部分の一例である。上述したLLR−7算出部1711〜1714に用意される4通りの計算式については、後述する。
次に、各ビットの対数尤度比を算出するために利用する計算式を選択する方法について説明する。以下では、128QAMに従って信号点がマッピングされたコンスタレーション平面において、受信信号yの位置に応じて、各ビットの対数尤度比を算出するための計算式を選択する例について説明する。
図2に、対数尤度比の算出を説明する図を示す。図2に示した各信号点は、128QAMに従って配置された7ビットの符号に対応している。なお、各信号点に対応する符号を信号点の上側に示した。図2において、各信号点は、直線|I|=(2N−1)×A(N=1〜6)と直線|Q|=(2M−1)×A(M=1〜6)とが交わる格子点に配置されている。なお、上述した定数Aの値は、平均電力に基づいて決定されている。
図2の例では、第1ビットが「1」である符号に対応する信号点のうち、受信信号yに最も近い信号点X1は、符号「1100000」に対応する信号点である。また、第1ビットが「0」である符号に対応する信号点のうち、受信信号yに最も近い信号点X0は、符号「0101000」に対応する信号点である。そして、信号点X1と受信信号yとの距離と信号点X0と受信信号yとの距離が、受信信号yに対応する第1ビットの対数尤度比LLR−1の算出に用いられる。図2から分かるように、受信信号yの位置が異なれば、信号点X1,X0も異なる。このため、受信信号yの位置に対応して、対数尤度比LLR−1を計算するために用いられる計算式も異なる。
図3、図4に、対数尤度比LLR−1の算出に関する場合分けの例を示す。なお、図3には、LLR−1の算出に用いられる9通りの計算式と、各計算式が適用されるI,Q座標の範囲との対応を示した。また、図4には、コンスタレーション平面において、上述したI,Q座標の範囲で示される領域を示した。図3に示した各領域番号は、図4において、太い実線で区切って示した各領域に斜体で示した番号に対応している。
対数尤度比LLR−1の算出は、受信信号yが属する領域に対応する計算式を適用して行われる。本出願人は、上述した9通りの計算式が適用される場合それぞれについて、得られる算出結果の範囲を評価した。その結果、領域番号1に受信信号yが属する場合にのみ、対応する計算式で得られる対数尤度比の絶対値が、所定の閾値Th(8A2/σ2)よりも小さくなる場合があることがわかった。一方、他の領域番号に受信信号yが属する場合には、それぞれの領域に対応する計算式を用いて算出された対数尤度比の絶対値が上述した閾値Th以下となることはない。
ここで、例えば、第kビットについて算出された対数尤度比LLR−kの符号が正で絶対値が大きい場合は、式(1)から第kビットが0である確率P(0)の方が明らかに大きいことが分かる。同様に、算出された対数尤度比LLR−kの符号が負で絶対値が大きい場合は、式(1)から第kビットが1である確率P(1)の方が明らかに大きいことが分かる。このように、対数尤度比の絶対値が大きいほど、対数尤度比で示されるビット値の信頼度が高い。そして、対数尤度比の信頼度が高い範囲では、対数尤度比の値が多少ずれても、LDPC復号器103によって復号されるビット値は、元の値を入力した場合と変わらない。これに対して、算出された対数尤度比の絶対値が小さい場合は、対数尤度比の値から推定されるビット値の信頼度は低い。そして、対数尤度比の信頼度が低い範囲で対数尤度比の値がずれると、LDPC復号器103で復号されるビット値は大きく変動する可能性がある。
したがって、信頼度の低い対数尤度比が得られるような領域に受信信号が属する場合には、LDPC復号処理に供する対数尤度比は、その領域に対応する計算式を厳密に用いて算出されることが望ましい。一方、信頼度が高い対数尤度比が得られるような領域に受信信号が属する場合には、LDPC復号処理に供する対数尤度比は、その領域に対応する計算式を用いて算出されなくてもよい。例えば、その領域に対応する計算式の代わりに、信頼度が低い対数尤度比が算出される領域に対応する計算式を用いて、受信信号yに対応する対数尤度比を算出してもよい。
故に、各ビットに対応して、全ての場合分けに対応する計算式で対数尤度比の算出を行うハードウェアを用意する必要はない。その代わりに、信頼度の低い対数尤度比が算出される領域を特定し、これらの領域に受信信号yが属している場合については、対応する計算式が適用されるようにこの計算式に従って対数尤度比を算出する対数尤度比算出部を確保する。その上で、他の領域に属する受信信号yについての対数尤度比の算出処理は、上述したようにして確保した対数尤度比算出部のいずれかに振り分ければよい。このようにすれば、対数尤度比算出処理部110に備える対数尤度比算出部を、各ビットについて、信頼度の低い対数尤度比が算出される領域に対応するもののみに絞り込むことができる。
例えば、図3、4に示した対数尤度比LLR−1の算出の例では、上述した閾値Thに基づいて、9つの領域のうち、領域番号1の領域が、算出される対数尤度比の信頼度の低い確保対象領域として判別される。図3の例では、領域番号1に対応する確保対象領域欄に丸印を付して、この領域が確保対象領域であることを示した。また、図4の例では、領域番号1の領域に網掛けを付して示すことにより、確保対象領域を他の領域と区別して示した。
上述したように、対数尤度比LLR−1の算出の例では、確保対象領域が一つだけである。したがって、対数尤度比LLR−1の算出に関する9通りの場合分けに対応する各領域を確保対象領域に対応する一つの領域にまとめるように、場合分けを簡略化することができる。
図5に、対数尤度比LLR−1の算出に関する場合分けを簡略化した例を示す。図5の例では、コンスタレーション平面の全体が、単一の領域1にまとめられている。
このように、上述した範囲全体が単一の領域となる場合には、図1に示したように、単一のLLR−1算出部111が、対数尤度比LLR−1の算出のために、対数尤度比算出処理部110に設けられる。また、このLLR−1算出部111は、受信信号yの入力に応じて、式(5)に示す1つの計算式に従ってLLR−1を算出すればよい。
LLR−1=4A×I/σ2 ・・・(5)
以下、対数尤度比LLR−2〜LLR−7についての場合分けの簡略化について、順に説明する。
(LLR−2の簡略化)
図6および図7に、対数尤度比LLR−2の算出に関する場合分け例を示す。なお、図6には、LLR−2の算出に用いられる10通りの計算式と、各計算式が適用されるI,Q座標の範囲との対応を示した。また、図7には、コンスタレーション平面において、上述したI,Q座標の範囲で示される領域を示した。図6に示した各領域番号は、図7において、太い実線で区切って示した各領域に斜体で示した番号に対応している。
本出願人は、上述した10通りの計算式が適用される場合それぞれについて、得られる算出結果の範囲を評価した。その結果、領域4あるいは領域9に受信信号yが属する場合にのみ、対応する計算式で得られる対数尤度比の絶対値が、閾値Th(8A2/σ2)よりも小さくなる場合があることがわかった。つまり、図6、7に示した対数尤度比LLR−2の算出の例では、上述した閾値Thに基づいて、10の領域のうち、領域4,9が、算出される対数尤度比の信頼度の低い確保対象領域として判別される。図6の例では、領域番号4,9に対応する確保対象領域欄に丸印を付して、これらの領域が確保対象領域であることを示した。また、図7の例では、領域4,9にそれぞれ異なる種類の網掛けを付して示すことにより、確保対象領域を他の領域と区別して示した。
図6に示した領域4に対応する計算式と領域9に対応する計算式とは、max関数を利用して一つの式(6)のようにまとめることができる。
LLR−2=4A×(max(|I|,|Q|)−8A)/σ2 ・・・(6)
これにより、対数尤度比LLR−2の算出について判別された二つの確保対象領域もまた、一つに統合される。したがって、対数尤度比LLR−2の算出のために用いる計算式は、上述した式(6)一つに絞り込まれる。そして、対数尤度比LLR−2の算出に関する10通りの場合分けに対応する各領域を、統合された確保対象領域にまとめるように、場合分けを簡略化することができる。
図8に、対数尤度比LLR−2の算出に関する場合分けを簡略化した例を示す。図8(a)に示した例では、コンスタレーション平面の全体が、単一の領域1にまとめられている。また、図8(b)に示した例では、図8(a)に示した単一の領域1について、式(6)が適用されることが示されている。
つまり、対数尤度比算出処理部110には、対数尤度比LLR−2の算出のために、上述した式(6)に従って対数尤度比LLR−2を算出する単一のLLR−2算出部121を用意すればよい。
次に、対数尤度比LLR−3の算出に関する場合分けの簡略化について説明する。
(LLR−3の簡略化)
図9および図10に、対数尤度比LLR−3の算出に関する場合分け例を示す。なお、図9には、LLR−3の算出に用いられる21通りの計算式と、各計算式が適用されるI,Q座標の範囲との対応を示した。また、図10には、コンスタレーション平面において、上述したI,Q座標の範囲で示される領域を示した。図9に示した各領域番号は、図10において、太い実線で区切って示した各領域に斜体で示した番号に対応している。
本出願人は、上述した21通りの計算式が適用される場合それぞれについて、得られる算出結果の範囲を評価した。その結果、領域番号4,5,7、14,15,20,21の各領域に受信信号yが属する場合に、対応する計算式で得られる対数尤度比の絶対値が、閾値Th(8A2/σ2)よりも小さくなる場合があることがわかった。つまり、図9、10に示した対数尤度比LLR−3の算出の例では、上述した閾値Thに基づいて、21の領域のうち、上述した7つの領域が、算出される対数尤度比の信頼度の低い確保対象領域として判別される。図9の例では、領域番号4,5,7、14,15,20,21に対応する確保対象領域欄に丸印を付して、これらの領域が確保対象領域であることを示した。また、図10の例では、領域4,5,7、14,15,20,21にそれぞれ異なる種類の網掛けを付して示すことにより、確保対象領域を他の領域と区別して示した。
図9、10に示したように、対数尤度比LLR−3の算出に関する場合分けは複雑である。そして、複数の確保対象領域がコンスタレーション平面の各象限に分布している。これらの確保対象領域に、他の領域を統合する手法を工夫することにより、統合後の各領域境界線をすっきりと整理することができる。
図11に、領域の統合を説明する図を示す。なお、図11(a),(b)には、コンスタレーション平面のI≧0、Q≧0の範囲の場合分けが示されている。図11(a)において、図9、10に示した場合分けに対応する各領域の境界線が太い実線で示されている。
図10および図11(a)から明らかなように、領域4と領域7とを区切る境界線の方程式と、領域11と領域12および領域16と領域17、18とを区切る境界線の方程式とは異なっている。そして、このことは、対数尤度比LLR−3の算出に関する場合分けが複雑となる一因になっている。
ここで、上述した領域11、12、16、17および18は、いずれも、確保対象領域ではない。したがって、これらの領域に対応する範囲(I≧8A,Q≦4A)に受信信号yが属している場合に、受信信号yがこれらの領域のどれに属しているかを厳密に特定する必要はない。よって、これらの領域を、領域4と領域7とを区切る境界線を用いて、再分割することができる。図11(a)に、再分割に用いる境界線を太い破線で示した。また、図11(b)に、再分割後の各領域の例を示した。なお、図11(b)の例において、再分割によって境界線が変更された領域は、領域番号に下線を付して示した。
次に、確保対象領域以外の各領域について、以下に挙げる指針(1)〜(3)などに基づいて、統合先となる確保対象領域を選択する。そして、確保対象領域以外の各領域は、選択された確保対象領域に統合される。
(1)最も近い確保対象領域を統合先として選択する。
(2)統合後の計算式で求めた対数尤度比が閾値Thよりも大きくなるように統合先を選択する。
(3)隣接する領域のいずれかと統合先の確保対象領域が同一となるように統合先を選択する。
図11(b)に示した例では、これらの指針に基づいて、各領域に対応して、矢印で示された確保対象領域が選択されている。そして、この選択結果に従って、例えば、領域1,9,11,16は、領域4に統合される。また、領域2,3,6は、領域5に統合される。また、領域8,10は、領域7に統合される。領域12,13は、領域14に統合される。領域17,18,19は、領域20に統合される。このようにして、対数尤度比LLR−3の算出に関する複雑な場合分けを簡略化することができる。
なお、指針(1)、(3)に従って領域の統合先を選択することにより、統合後の領域の形状をより単純な形状にすることができる。また、指針(2)に従って領域の統合先を選択することにより、統合後の領域に対応する計算式で求めた対数尤度比の絶対値を、閾値Thよりも大きくすることができる。
図12,13に、対数尤度比LLR−3の算出に関する場合分けを簡略化した例を示す。図12に、コンスタレーション平面において、簡略化された場合分けに対応する各領域の配置を示した。また、図13に、上述した領域の統合後の領域を示すI,Q座標の範囲と対数尤度比LLR−3の計算式との対応を示した。
図12,13から分かるように、上述したような領域の統合により、元の21通りの場合分けは、7通りの場合分けに整理されている。そして、コンスタレーション平面において、7つの領域を区切る境界線の共通化を図ったことにより、受信信号yが属する領域を判別する処理の簡易化を実現することができる。
このようにして簡略化された場合分けを適用することにより、まず、対数尤度比LLR−3の算出のために用いて計算式を、21通りから7通りに絞り込むことができる。この7通りの計算式は、上述した確保対象領域に対応する計算式である。式(7)に、対数尤度比LLR−3の算出のために用意される7通りの計算式を示す。図1に示したLLR−3算出部1311〜1317は、式(7)に示す7通りの計算式に従って、対数尤度比LLR−3の算出処理を行う。
LLR−3=−4A×(|I|−|Q|+4A)/σ2
LLR−3=−4A×(|I|−4A)/σ2
LLR−3=4A×(|Q|−8A)/σ2
LLR−3=−4A×(|I|−|Q|)/σ2 ・・・(7)
LLR−3=−4A×(|I|−2×|Q|+10A)/σ2
LLR−3=−4A×(2×|I|−|Q|−10A)/σ2
LLR−3=−8A×(|I|−|Q|)/σ2
また、図11〜図13で説明した領域の統合を伴う簡略化を適用したことにより、受信信号yに適用する計算式を選択する処理を単純化することができる。図13に示した場合分けでは、図1に示したLLR−3判別処理部132は、受信信号y(I+Qj)が属している領域を、|I|および|Q|と定数との比較および直線|I|+|Q|=12Aとに基づいて特定することができる。したがって、LLR−3判別処理部132を、例えば、比較器やアンドゲートなどを含む論理回路によって実現することができる。
次に、対数尤度比LLR−4の算出に関する場合分けの簡略化について説明する。
(LLR−4の簡略化)
図14および図15に、対数尤度比LLR−4の算出に関する場合分け例を示す。なお、図14には、LLR−4の算出に用いられる5通りの計算式と、各計算式が適用されるI,Q座標の範囲との対応を示した。また、図15には、コンスタレーション平面において、上述したI,Q座標の範囲で示される領域の配置を示した。図14に示した各領域番号は、図15において、太い実線で区切って示した各領域に斜体で示した番号に対応している。
本出願人は、上述した5通りの計算式が適用される場合それぞれについて、得られる算出結果の範囲を評価した。その結果、全ての領域において、対応する計算式で得られる対数尤度比の絶対値の範囲が、閾値Th(8A2/σ2)よりも小さくなる場合があることがわかった。つまり、図14、15に示した対数尤度比LLR−4の算出の例では、上述した閾値Thに基づいて、5つの領域すべてが、算出される対数尤度比の信頼度の低い確保対象領域と判別される。図14の例では、領域番号1〜5に対応する確保対象領域欄に丸印を付して、これらの領域が確保対象領域であることを示した。また、図15の例では、領域番号1〜5の領域にそれぞれ異なる種類の網掛けを付して示した。
ここで、図14に示した領域1に対応する計算式と領域2に対応する計算式とは、式(8)に示すように、一つの式にまとめることができる。
LLR−4=(|4A×(|I|−4×A)|−8A2)/σ2 ・・・(8)
したがって、図14,15に示した領域1と領域2とは、統合可能である。そして、対数尤度比LLR−4の算出のために用いる計算式は、上述した式(8)に式(9)に示す3通りの計算式を合わせた4通りとなる。これにより、対数尤度比LLR−4の算出に関する5通りの場合分けは、4通りの場合分けに簡略化される。
LLR−4=−4A×(|I|−10A)/σ2
LLR−4=−4A×(2×|I|−|Q|−10A)/σ2 ・・・(9)
LLR−4=−8A×(|I|−|Q|)/σ2
図16,17に、対数尤度比LLR−4の算出に関する場合分けを簡略化した例を示す。図16に示した例では、コンスタレーション平面の全体が、4つの領域1〜4に区切られている。
図16に示した例において、領域1は、図15に示した領域1と領域2とを統合した領域である。また、図16の例に示した領域2〜4は、図15に示した領域3〜5に相当する。図17に示した例では、簡略化後の各領域について、式(8)、式(9)で示した計算式がそれぞれ適用されることが示されている。
この場合に、対数尤度比算出処理部110に設けられたLLR−4算出部1411〜1414は、それぞれ、上述した4つの領域1から4に対応する。したがって、LLR−4算出部1411〜1414は、対応する領域の計算式に従って対数尤度比LLR−4を算出すればよい。また、図1に示したLLR−4判別処理部142は、図17に示した簡略化後の領域1〜4の範囲に基づいて、LLR−4の算出に用いるLLR−4算出部141を選択すればよい。例えば、LLR−4判別処理部142は、受信信号y(I+Qj)が属している領域を、|I|および|Q|と定数との比較および領域1、2と領域3,4との境界を示す4つの直線との比較に基づいて特定することができる。したがって、LLR−4判別処理部142を、例えば、比較器やアンドゲート、オアゲートなどを含む論理回路によって実現することができる。
次に、対数尤度比LLR−5についての場合分けの簡略化について説明する。
(LLR−5の簡略化)
図18および図19に、対数尤度比LLR−5の算出に関する場合分け例を示す。なお、図18には、LLR−5の算出に用いられる9通りの計算式と、各計算式が適用されるI,Q座標の範囲との対応を示した。また、図19には、コンスタレーション平面において、上述したI,Q座標の範囲で示される領域の配置を示した。図18に示した各領域番号は、図19において、太い実線で区切って示した各領域に斜体で示した番号に対応している。
本出願人は、上述した9通りの計算式が適用される場合それぞれについて、得られる算出結果の範囲を評価した。その結果、領域番号1の領域に受信信号yが属する場合にのみ、対応する計算式で得られる対数尤度比の絶対値が、閾値Th(8A2/σ2)よりも小さくなる場合があることがわかった。つまり、図18、19に示した対数尤度比LLR−5の算出の例では、上述した閾値Thに基づいて、9つの領域のうち、領域番号1の領域が、算出される対数尤度比の信頼度の低い確保対象領域として判別される。図18の例では、領域番号1に対応する確保対象領域欄に丸印を付して、この領域が確保対象領域であることを示した。また、図19の例では、領域1に網掛けを付して示すことにより、確保対象領域を他の領域と区別して示した。
上述したように、対数尤度比LLR−5の算出の例では、確保対象領域が一つだけである。したがって、対数尤度比LLR−5の算出に関する9通りの場合分けに対応する各領域を確保対象領域に対応する一つの領域にまとめるように、場合分けを簡略化することができる。
図20に、対数尤度比LLR−5の算出に関する場合分けを簡略化した例を示す。図20の例では、コンスタレーション平面の全体が、単一の領域1にまとめられている。
このように、受信信号yの分布範囲全体が単一の領域にまとめられたので、図1に示したように、単一のLLR−5算出部151が、対数尤度比LLR−5の算出のために、対数尤度比算出処理部110に設けられる。このLLR−5算出部151は、受信信号yの入力に応じて、式(10)に示す1つの計算式に従う演算を行うように用意すればよい。
LLR−5=4A×Q/σ2 ・・・(10)
次に、対数尤度比LLR−6の算出に関する場合分けの簡略化について説明する。
(LLR−6の簡略化)
図21および図22に、対数尤度比LLR−6の算出に関する場合分け例を示す。なお、図21には、LLR−6の算出に用いられる10通りの計算式と、各計算式が適用されるI,Q座標の範囲との対応を示した。また、図22には、コンスタレーション平面において、上述したI,Q座標の範囲で示される領域の配置を示した。図21に示した各領域番号は、図22において、太い実線で区切って示した各領域に斜体で示した番号に対応している。
本出願人は、上述した10通りの計算式が適用される場合それぞれについて、得られる算出結果の範囲を評価した。その結果、領域番号2,3,6,8の各領域に受信信号yが属する場合に、対応する計算式で得られる対数尤度比の絶対値が、上述した閾値Th(8A2/σ2)よりも小さくなる場合があることがわかった。つまり、図21、22に示した対数尤度比LLR−6の算出の例では、上述した閾値Thに基づいて、10の領域のうち、上述した4つの領域が、算出される対数尤度比の信頼度の低い確保対象領域として判別される。図21の例では、領域番号2,3,6,8に対応する確保対象領域欄に丸印を付して、これらの領域が確保対象領域であることを示した。また、図22の例では、領域2,3,6,8にそれぞれ異なる種類の網掛けを付して示すことにより、確保対象領域を他の領域と区別して示した。
図21,22に示したように、対数尤度比LLR−6の算出に関する場合分けも複雑である。しかし、対数尤度比LLR−3の算出に関する場合分けを簡略化した方法を利用して、上述した複数の確保対象領域に他の領域を統合することにより、統合後の各領域の境界線をすっきりと整理することができる。
図23,24に、対数尤度比LLR−6の算出に関する場合分けを簡略化した例を示す。図23に示した例では、コンスタレーション平面は、4つの領域に区切られている。また、図24に、上述した統合によって簡略化された後の各領域と対数尤度比LLR−6の計算式との対応を示した。
図23に示した例では、図22に示した領域2に、領域1と領域9と領域10および領域7の一部とが統合されて、簡略化後の領域1となっている。図23の例では、図22に示された領域7は、|I|=6Aを境界として別々の確保対象領域に統合されている。つまり、図22に示された領域7のうち、|I|≧6Aの範囲が、図22の領域2に統合されて、図23の例に示した領域1の一部となっている。そして、図22に示された領域7のうち、|I|<6Aの範囲は、図22の領域8に統合されて、図23の例に示した領域2の一部となっている。また、図22に示した領域4は、領域3に統合されて、図23の例に示した領域3の一部となっている。そして、図22に示した領域5は、領域6に統合されて、図23の例に示した領域4の一部となっている。
対数尤度比LR−6の算出のために確保される計算式は、上述した確保対象領域に対応する4通りの計算式である。式(11)に、この4通りの計算式を示す。また、図1に示したLLR−6算出部1611〜1614は、図23,24に示した領域1〜4に対応して設けられる。したがって、LLR−6算出部1611〜1614は、対応する領域の計算式に従って、対数尤度比LLR−6の算出処理を行えばよい。
LLR−6=4A×|Q|−4A)/σ2
LLR−6=4A×(|I|−|Q|+4A)/σ2
LLR−6=−4A×(|Q|−8A)/σ2
LLR−6=−4A×(|I|−4A)/σ2 ・・・(11)
また、上述した領域の統合を伴う簡略化を適用したことにより、受信信号yに適用する計算式を選択する処理を単純化することができる。図24に示した場合分けでは、図1に示したLLR−6判別処理部162は、受信信号y(I+Qj)が属している領域を、|I|および|Q|と定数との比較および直線|I|+|Q|=12Aとに基づいて特定することができる。したがって、LLR−6判別処理部162を、例えば、比較器やアンドゲート、オアゲートなどを含む論理回路によって実現することができる。
次に、対数尤度比LLR−7の算出に関する場合分けの簡略化について説明する。
(LLR−7の簡略化)
図25および図26に、対数尤度比LLR−7の算出に関する場合分け例を示す。なお、図25には、LLR−7の算出に用いられる5通りの計算式と、各計算式が適用されるI,Q座標の範囲との対応を示した。また、図26には、コンスタレーション平面において、上述したI,Q座標の範囲で示される領域の配置を示した。図25に示した各領域番号は、図26において、太い実線で区切って示した各領域に斜体で示した番号に対応している。
本出願人は、上述した5通りの計算式が適用される場合それぞれについて、得られる算出結果の範囲を評価した。その結果、全ての領域において、対応する計算式で得られる対数尤度比の絶対値の範囲が、所定の閾値Th(8A2/σ2)よりも小さくなる場合があることがわかった。つまり、図25、26に示した対数尤度比LLR−7の算出の例では、上述した閾値Thに基づいて、5つの領域すべてが、算出される対数尤度比の信頼度の低い確保対象領域と判別される。図25の例では、領域番号1〜5に対応する確保対象領域欄に丸印を付して、これらの領域が確保対象領域であることを示した。また、図26の例では、領域1〜5にそれぞれ異なる種類の網掛けを付して示した。
ここで、図25に示した領域1に対応する計算式と領域2に対応する計算式とは、式(12)に示すように、一つの式にまとめることができる。
LLR−7=(|4A×(|Q|−4×A)|−8A2)/σ2 ・・・(12)
したがって、図25,26に示した領域1と領域2とは、統合可能である。よって、対数尤度比LLR−7の算出のために用いる計算式は、上述した式(12)に式(13)に示す3通りの計算式を合わせた4通りとなる。これにより、対数尤度比LLR−7の算出に関する5通りの場合分けは、4通りの場合分けに簡略化される。
LLR−7=−4A×(|Q|−10A)/σ2
LLR−4=4A×(|I|−2×|Q|+10A)/σ2 ・・・(13)
LLR−4=−8A×(|I|−|Q|)/σ2
図27,28に、対数尤度比LLR−7の算出に関する場合分けを簡略化した例を示す。図27に示した例では、コンスタレーション平面の全体が、4つの領域1〜4に区切られている。
図27に示した例において、領域1は、図26に示した領域1と領域2とを統合した領域である。また、図27の例に示した領域2〜4は、図26に示した領域3〜5に相当する。図28に示した例では、簡略化後の各領域について、式(12)、式(13)で示した計算式がそれぞれ適用されることが示されている。
この場合に、対数尤度比算出処理部110に設けられたLLR−7算出部1711〜1714は、それぞれ、図27,28に示した領域1〜4に対応する。したがって、LLR−7算出部1711〜1714は、対応する領域の計算式に従って対数尤度比LLR−7を算出すればよい。また、図1に示したLLR−7判別処理部172は、図28に示した簡略化後の領域の範囲に基づいて、LLR−7の算出に用いるLLR−7算出部171を選択すればよい。例えば、LLR−7判別処理部172は、受信信号y(I+Qj)が属している領域を、|I|および|Q|と定数との比較および領域1、2と領域3,4との境界を示す4つの直線との比較に基づいて特定することができる。したがって、LLR−7判別処理部172は、例えば、比較器やアンドゲート、オアゲートなどを含む論理回路によって実現することができる。
以上に説明したように、対数尤度比LLR−1〜LLR−7の算出に関する場合分けを簡略化することができる。上述した簡略化では、計算式に従って算出される対数尤度比の値の範囲に基づいて、対数尤度比LLR−1〜LLR−7の算出に用いられる計算式の数を、元の69通りから22通りにまで削減している。
更に、対数尤度比LLR−3の項で詳細に説明したように、確保対象領域以外の領域の再分割を含む簡略化手法を適用することにより、対数尤度比の算出に適用する計算式を選択する処理の簡略化を図ることができる。
これらの簡略化手法を適用したことにより、受信信号yから対数尤度比LLR−1〜LLR−7を算出する処理を、現実的な規模のハードウェアによって実現することが可能となる。
なお、上述した簡略化手法において、算出される対数尤度比の信頼性の高さを判定するための閾値Thとして、数値8A2/σ2以外の値を用いることもできる。例えば、上述した数値8A2/σ2よりも大きい閾値Thを用いて、上述した例よりも多くの確保対象領域を判別することも可能である。
また、受信装置の用途によっては、上述した例よりも、更にハードウェア量を削減することもできる。
(受信装置の別実施形態)
以上に説明した一の実施形態では、コンスタレーション平面において、受信信号yが分布する確率に大きな差がないことを前提としている。しかしながら、伝送経路において高いSN比が保証される環境では、受信信号yが分布する確率は、上述した範囲で必ずしも一様ではない。
図29に、高SN比での受信信号yの分布範囲の例を示す。図29の例において、受信信号yの分布範囲は、細い実線で囲まれた範囲である。この範囲は、各信号点を中心とする半径σの円で示される領域の結びに相当する範囲である。
ここで、図29に示した受信信号yの分布範囲と、図12に示した対数尤度比LLR−3の算出に関する場合分け例と比較する。この比較により、図12に示した領域5,7は、受信信号yの分布範囲に含まれていないことが分かる。
つまり、高SN比が想定される受信装置に備えられる対数尤度比算出処理部110では、図12に示した領域5,7に対応するLLR−3算出部1315,1317は不要となる。したがって、図12,13に示した場合分けは、更に簡略化することができる。
図30,31に、対数尤度比LLR−3の算出に関する場合分けを簡略化した別の例を示す。図30に示した例では、コンスタレーション平面は、5つの領域に区切られている。また、これらの5つの領域に対応する計算式が図31に示されている。
図30の例に示した領域1〜3は、図12の例に示した領域1〜3に相当する。また、図30に示した領域4は、図12の例に示した領域4に上述した領域5を統合した領域に相当する。そして、図30に示した領域5は、図12の例に示した領域6に上述した領域7を統合した領域に相当する。
したがって、高SN比で動作する受信装置の対数尤度比算出処理部110は、対数尤度比LLR−3の算出のために、上述した領域1〜5に対応してLLR−3算出部1311〜1315を備えればよい。これらのLLR−3算出部1311〜1315は、図31に示した各領域に対応する計算式に従って、それぞれLLR−3を算出すればよい。
また、図32に、LLR−3判別処理部の一実施形態を示す。図32の例では、LLR−3判別処理部132には、入力端子II,IQを介して、受信信号yのI,Q座標が入力される。そして、このLLR−3判別処理部132により、図30,31に示した領域1〜5に対応するLLR−3算出部1311〜1315のいずれかを選択する選択信号が生成される。これらの選択信号は、出力端子N1〜N5を介して出力される。
図32に示したLLR−3判別処理部132の絶対値変換部(abs)211,212は、受信信号yのI,Q座標の入力に応じて、それぞれ|I|、|Q|を出力する。絶対値変換部211の出力|I|は、比較器214,218,219、221,222,223の入力端子の一方に入力される。絶対値変換部212の出力|Q|は、比較器215,216の入力端子の一方に入力される。また、加算器213により、絶対値変換部211,212の出力|I|、|Q|の和が算出される。この|I|、|Q|の和は、比較器217,220の入力端子の一方に入力される。
また、LLR−3判別処理部132に設けられた端子T1〜T4には、定数4A,8A,10A,12Aに相当する閾値電圧が入力されている。図32の例では、端子T1を介して入力される定数4Aは、比較器214、218の入力端子の他方に接続されている。また、端子T2を介して入力される定数8Aは、比較器215、216、219,221の入力端子の他方に接続されている。また、端子T3を介して入力される定数10Aは、比較器222,223の入力端子の他方に接続されている。そして、端子T4を介して入力される定数12Aは、比較器217、220の入力端子の他方に接続されている。
図32の例では、アンドゲート224により、比較器214,215の出力の論理積が求められる。このアンドゲート224の出力は、図31に示した領域1に受信信号yが属しているか否かを示す。したがって、アンドゲート224の出力は、LLR−3算出部1311を活性化する選択信号となる。この選択信号は、端子N1を介してセレクタ133に入力される。また、図32の例では、アンドゲート225により、比較器216,217の出力の論理積が求められる。このアンドゲート225の出力は、図31に示した領域2に受信信号yが属しているか否かを示す。したがって、アンドゲート225の出力は、LLR−3算出部1312を活性化する選択信号となる。この選択信号は、端子N2を介してセレクタ133に入力される。同様に、図32の例に示したアンドゲート226は、比較器218,219,220の出力の論理積を求める。このアンドゲート226の出力は、図31に示した領域3に受信信号yが属しているか否かを示す。したがって、アンドゲート226の出力は、LLR−3算出部1313を活性化する選択信号となる。この選択信号は、端子N3を介してセレクタ133に入力される。また、図32の例に示したアンドゲート227は、比較器220,221,222の出力の論理積を求める。このアンドゲート227の出力は、図31に示した領域4に受信信号yが属しているか否かを示す。故に、アンドゲート227の出力は、LLR−3算出部1314を活性化する選択信号となる。この選択信号は、端子N4を介してセレクタ133に入力される。また、図32の例に示したアンドゲート228は、比較器220,223の出力の論理積を求める。このアンドゲート228の出力は、図31に示した領域5に受信信号yが属しているか否かを示す。したがって、アンドゲート228の出力は、LLR−3算出部1315を活性化する選択信号となる。この選択信号は、端子N5を介してセレクタ133に入力される。
このように、2つの絶対値変換部211,212と、加算器213と、10個の比較器214〜223と5つのアンドゲート224〜228を用いて、LLR−3判別処理部132を実現することができる。
同様にして、対数尤度比LLR−4の算出に関する場合分けを更に簡略化することができる。図29に示した受信信号yの分布範囲と、図16に示した対数尤度比LLR−4の算出に関する場合分け例と比較する。この比較により、図16に示した領域3,4は、受信信号yの分布範囲に含まれていないことが分かる。
つまり、高SN比が想定される受信装置に備えられる対数尤度比算出処理部110では、図16に示した領域3,4に対応するLLR−4算出部1413,1414は不要となる。このことを利用して、図16,17に示した場合分けを、更に簡略化することができる。
図33に、対数尤度比LLR−4の算出に関する場合分けを簡略化した別の例を示す。図33(a)に示した例では、コンスタレーション平面は、2つの領域に区切られている。また、これらの2つの領域に対応する計算式が図33(b)に示されている。
図33(a)の例では、図16に示した領域1のうち、|I|≧8Aの範囲が、受信信号yの分布範囲に含まれていないことに着目し、領域1について再分割を行っている。この再分割では、領域1のうち、この|I|≧8Aの範囲が領域1から分離される。そして、領域1から分離された範囲と、図16に示した領域3,4とが領域2に統合されている。このような再分割を適用した簡略化により、図33(a)に示したように、コンスタレーション平面は、|I|=8Aを境界線としてすっきりと2つに区切られる。
したがって、高SN比で動作する受信装置の対数尤度比算出処理部110は、対数尤度比LLR−4の算出のために、上述した領域1,2に対応して、2つのLLR−4算出部1411〜1412を備えればよい。これらのLLR−4算出部1411〜1412は、図33(b)に領域に対応して示した計算式に従って、それぞれLLR−4を算出すればよい。
同様にして、対数尤度比LLR−7の算出に関する場合分けを更に簡略化することができる。図29に示した受信信号yの分布範囲と、図27に示した対数尤度比LLR−7の算出に関する場合分け例と比較する。この比較により、図17に示した領域3,4は、受信信号yの分布範囲に含まれていないことが分かる。
つまり、高SN比が想定される受信装置に備えられる対数尤度比算出処理部110では、図27に示した領域3,4に対応するLLR−7算出部1713,1714は不要となる。このことを利用して、図27,28に示した場合分けを、更に簡略化することができる。
図34に、対数尤度比LLR−7の算出に関する場合分けを簡略化した別の例を示す。図34(a)に示した例では、コンスタレーション平面は、2つの領域に区切られている。また、これらの2つの領域に対応する計算式が図34(b)に示されている。
図34(a)の例では、図27に示した領域1のうち、|Q|≧8Aの範囲が、受信信号yの分布範囲に含まれていないことに着目し、領域1について再分割を行っている。この再分割では、領域1のうち、この|Q|≧8Aの範囲が領域1から分離される。そして、領域1から分離された範囲と、図27に示した領域3,4とが領域2に統合されている。このような再分割を適用した簡略化により、図34(a)に示したように、コンスタレーション平面は、|Q|=8Aを境界線としてすっきりと2つに区切られる。
したがって、高SN比で動作する受信装置の対数尤度比算出処理部110は、対数尤度比LLR−7の算出のために、上述した領域1,2に対応して、2つのLLR−7算出部1711〜1712を備えればよい。これらのLLR−7算出部1711〜1712は、図34(b)に各領域に対応して示した計算式に従って、それぞれLLR−7を算出すればよい。
図35に、受信装置の別実施形態を示す。なお、図35に示した構成要素のうち、図1に示した構成要素と同等のものについては、同一の符号を付して示し、その説明は省略する。
図35に示した受信装置には、高SN比での受信信号の分布範囲を考慮した場合分けの簡略化が適用されている。図1に示した受信装置と図35に示した受信装置とを比べると、LLR−3算出部131の数が、7個から5個に削減されている。また、LLR−4算出部141およびLLR−7算出部171の数が、それぞれ4個から2個に削減されている。したがって、図35に示した受信装置の例では、対数尤度比の算出に関する場合分けの総数は、16通りとなる。
また、図35に示した受信装置では、LLR−3算出部1311〜1315のそれぞれに、受信信号yが入力されている。これらのLLR−3算出部1311〜1315は、LLR−3判別処理部132からの選択信号によって活性化されたときに、対数尤度比LLR−3を算出するための演算処理を行う。同様に、図35に示した例では、LLR−4算出部1411、1412のそれぞれに、受信信号yが入力されている。これらのLLR−4算出部1411、1412は、LLR−4判別処理部142からの選択信号によって活性化されたときに、対数尤度比LLR−4を算出するための演算処理を行う。また、図35に示した例では、受信信号yは、LLR−6算出部1611〜1614にも入力されている。これらのLLR−6算出部1611〜1614は、LLR−6判別処理部162からの選択信号によって活性化されたときに、対数尤度比LLR−6を算出するための演算処理を行う。同様に、図35に示した例では、受信信号yは、LLR−7算出部1711、1712にも入力されている。これらのLLR−7算出部1711、1712は、LLR−7判別処理部172からの選択信号によって活性化されたときに、対数尤度比LLR−7を算出するための演算処理を行う。
図1および図35に示した例のように、複数の計算式のうちどれを使うかを選択した後に、対応する計算式による演算処理を行う構成では、選択される計算式に対応する演算処理のみが実行される。したがって、対数尤度比LLR−1〜LLR−7を算出する際の消費電力を低減することができる。
なお、LLR−3算出部1311〜1315、LLR−4算出部1411、1412、LLR−6算出部1611〜1614およびLLR−7算出部1711、1712が、受信信号yの入力と同時に対数尤度比の算出を開始するように構成することもできる。
以上に説明したように、本件開示の受信装置では、場合分けの簡略化を適用することにより、対数尤度比LLR−1〜LLR−7を算出する処理を現実的なサイズのハードウェアによって実現することが可能である。
また、以上に説明した一の実施形態の受信装置および別実施形態の受信装置は、いずれも、受信信号のコンスタレーション平面での位置に応じて、各ビットの対数尤度比を算出するための対数尤度比算出部を選択する仕組みを備えている。この仕組みは、上述したように、各ビットについての場合分けで、受信信号が確保対象領域に属している場合は、当該確保対象領域に対応する計算式を適用するように対数尤度比算出部を選択する。そして、受信信号が確保対象領域に属していない場合は、予め特定された確保対象領域に対応する計算式のいずれかを適用するように対数尤度比算出部が、上述した仕組みにより選択される。つまり、図1または図35に例示した受信装置は、本件開示の受信方法を適用した受信装置の一例である。
図36に、対数尤度比の算出に関する場合分けを簡略化した効果を説明する図を示す。図36(a)に、対数尤度比LLR−1〜LLR−7の算出に関する場合分けの数を、簡略化前と一の実施形態と別実施形態とについて対応して示す。また、図36(b)に、簡略化前と一の実施形態と別実施形態とについてのシミュレーション結果を示す。
図36(a)から明らかなように、本件開示の一の実施形態では、場合分けの総数は22通りとなっており、簡略化前の約3分の1である。更に、本件開示の別実施形態では、場合分けの総数は16通りと、簡略化前の約4分の1にまで削減されている。
本出願人は、簡略化前の場合分けを適用した受信装置、一の実施形態の受信装置および別実施形態の受信装置について、高SN比の範囲(22dB〜23.5dB)において、LDPC復号処理のシミュレーションを行った。シミュレーションに用いた符号は、マイクロ波多重無線装置用の符号長4560、符号化率55/58の修正アレーLDPC符号である。また、各受信装置についてのシミュレーションは、LDPC復号アルゴリズムとしてNormalized Min-sumアルゴリズムを用いて、復号処理の最大繰り返し回数に20回を設定して行った。
図36(b)に示したシミュレーション結果から明らかなように、一の実施形態の受信装置および別実施形態の受信装置で実現されるBER(Bit Error Rate)は、簡略化前の場合分けを適用した受信装置で実現されるBERと同等であった。
つまり、本件開示の受信装置および本件開示の受信方法を適用した受信装置によれば、受信特性を維持しつつ、対数尤度比の算出のために備えるハードウェア量の削減を図ることができる。
なお、上述した一の実施形態および別の実施形態において説明した場合分けの簡略化手法は、図2に例示した128QAMのコンスタレーション平面に限らず、ほかのコンスタレーション平面にも適用可能である。
以上の説明に関して、更に、以下の各項を開示する。
(付記1) 送信データに対応する信号点が配置されたコンスタレーション平面において、各ビットについての対数尤度比を算出するための計算式が前記コンスタレーション平面における座標についての同一の関数で表される領域ごとに、前記座標に対応する各ビットの対数尤度比をそれぞれ算出する対数尤度比算出部と、
前記受信信号の前記コンスタレーション平面における位置に基づいて、前記各ビットの対数尤度比の算出に適用する対数尤度比算出部を選択する選択処理部と、
を備え、
前記各ビットの対数尤度比を算出する前記対数尤度比算出部は、算出され得る対数尤度比の絶対値の最小値が所定の閾値以下となる確保対象領域を含む少なくとも一つの前記領域について設けられ、
前記選択処理部は、
前記各ビットについて設けられた前記対数尤度比算出部に対応する前記少なくとも一つの領域のいずれにも前記受信信号が含まれない場合に、前記受信信号に対応する当該ビットの対数尤度比の算出を、前記少なくとも一つの領域のいずれかに対応する対数尤度比算出部に振り分ける振り分け部と、
を備えた
ことを特徴とする受信装置。
(付記2) 付記1に記載の受信装置において、
前記振り分け部は、
各ビットについての対数尤度比を算出するための計算式の種類に対応して前記コンスタレーション平面を区分した複数の領域のうち、前記確保対象領域以外の領域の少なくとも一部を前記少なくとも一つの確保対象領域のいずれかに統合して形成される領域区分に従って、前記受信信号に対応する前記各ビットの対数尤度比の算出を振り分ける対数尤度比算出部を特定する特定部を備える
ことを特徴とする受信装置。
(付記3) 付記2に記載の受信装置において、
前記特定部は、
前記複数の領域を区切る境界線であって、前記コンスタレーション平面の両方の座標軸に交差する境界線のうち、前記少なくとも一つの確保対象領域のいずれかと別の確保対象領域との境界線を表す方程式を用いて、前記受信信号に対応する前記各ビットの対数尤度比の算出を振り分ける対数尤度比算出部を特定する
ことを特徴とする受信装置。
(付記4) 付記2に記載の受信装置において、
前記確保対象領域以外の領域の少なくとも一部の前記少なくとも一つの確保対象領域のいずれかへの統合は、統合先の確保対象領域に対応する計算式で算出した対数尤度比の絶対値が前記所定の閾値より大きくなるように行われる
ことを特徴とする受信装置。
(付記5) 付記1に記載の受信装置において、
前記選択処理部は、
前記少なくとも一つの確保対象領域のうち、前記受信信号が分布する確率が所定の閾値以下である領域に受信信号が含まれる場合に、前記受信信号に対応する対数尤度比の算出を、他の確保対象領域のいずれかに対応する対数尤度比算出部に振り替える振り替え部を備えた
ことを特徴とする受信装置。
(付記6) 送信データに対応する信号点が配置されたコンスタレーション平面における受信信号の位置に基づいて、各ビットについての対数尤度比を算出するための計算式が前記コンスタレーション平面における座標についての同一の関数で表される領域のうち、前記受信信号が含まれる領域を前記各ビットについて特定し、
前記特定された領域が、算出され得る対数尤度比の絶対値の最小値が所定の閾値以下となる確保対象領域を含む少なくとも一つの前記領域のいずれかである場合に、前記特定された領域に対応する計算式を用いて、前記受信信号に対応する対数尤度比を算出し、
前記特定された領域が、前記確保対象領域を含む少なくとも一つの前記領域のいずれでもない場合に、前記特定された領域に対応する計算式の代わりに、前記確保対象領域を含む少なくとも一つの前記領域のいずれかに対応する計算式を用いて、前記受信信号に対応する対数尤度比を算出する
ことを特徴とする受信方法。