以下に添付図面を参照して、開示技術の好適な実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態1)
<通信システム>
図1は、実施の形態1にかかる通信システムを示す図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる通信システム100は、基地局110と、通信局120と、通信局130と、検出装置140と、を含んでいる。通信システム100は、上流の通信局120によって送信されたユーザデータを基地局110によって下流の通信局130へ転送する通信システムである。ユーザデータは、たとえば、通信システム100の運用中に送受信される実ユーザデータである。
基地局110は、転送部111を備えている。転送部111は、移動通信システムにおいて移動局とコアネットワークとの間で送受信されるユーザデータを転送する。具体的には、転送部111は、上流の通信局120から送信されたユーザデータを受信し、受信したユーザデータを終端(たとえば復号)せずに下流の通信局130へ転送する。また、転送部111は、ユーザデータの受信時刻および送信時刻を検出装置140へ送信する。
たとえば、通信局120は移動局であり、通信局130は基地局110に接続された他ノードである。他ノードは、たとえば、基地局110とコアネットワークとの間に設けられた通信局である。具体的には、他ノードは、S−GWやMMEや他の基地局(たとえばeNB)などである。この場合は、転送部111は、通信局120からの上りデータ(アップリンクデータ)を通信局130へ転送する。
または、通信局120は基地局110に接続された他ノードであり、通信局130は移動局であってもよい。この場合は、転送部111は、通信局120からの下りデータ(ダウンリンクデータ)を通信局130へ転送する。または、通信局120および通信局130のそれぞれが基地局110に接続された他ノードであってもよい。この場合は、転送部111は、通信局120からの上りデータまたは下りデータを通信局130へ転送する。
検出装置140は、取得部141と、検出部142と、を備えている。取得部141は、基地局110の転送部111がユーザデータを受信してから転送部111がユーザデータを送信するまでの時間(以下、「処理時間」と称する。)を取得する。たとえば、取得部141は、転送部111から送信された受信時刻および送信時刻の差分を算出することで、転送部111によるユーザデータの処理時間を取得する。取得部141は、取得した処理時間を検出部142へ出力する。
検出部142は、取得部141から出力された処理時間に基づいて転送部111の異常(たとえば伝送遅延)を検出する。たとえば、検出部142は、処理時間と指標値との比較結果に基づいて転送部111の異常を検出する。具体的には、検出部142は、処理時間が閾値を超えた場合は転送部111に異常が発生したと判断し、処理時間が閾値を超えなかった場合は転送部111に異常が発生していないと判断する。
検出部142は、転送部111の異常の検出結果を示す検出結果情報を出力する。たとえば、検出部142は、検出装置140のユーザへ検出結果情報を出力する。または、検出部142は、基地局110を監視する通信装置へ検出結果情報を送信してもよい。
また、検出部142から出力される検出結果情報に基づく基地局110の制御を行う制御部を基地局110または検出装置140に設けてもよい。制御部は、たとえば、転送部111に異常が発生した場合に、転送部111を迂回してユーザデータを通信局120から通信局130へ転送する冗長経路がある場合は、転送部111から冗長経路への切り替えを行う。または、制御部は、転送部111に異常が発生した場合に、転送部111の再起動を行ってもよい。
また、基地局110の転送部111が転送するユーザデータには、転送部111の異常の検出を実行するか否かを指示する試験フラグが含まれていてもよい。転送部111は、異常の検出を実行する旨の試験フラグ(たとえばフラグがON)が含まれるユーザデータの受信時刻および送信時刻を検出装置140へ送信する。また、転送部111は、異常の検出を実行しない旨の試験フラグ(たとえばフラグがOFF)が含まれるユーザデータの受信時刻および送信時刻は検出装置140へ送信しない。
この場合は、検出装置140の取得部141は、異常の検出を実行する旨の試験フラグを含むユーザデータについては転送部111の処理時間を取得し、異常の検出を実行しない旨の試験フラグを含むユーザデータについては転送部111の処理時間を取得しない。これにより、転送部111によって転送されるすべてのユーザデータに関する転送部111の処理時間を取得することを回避し、検出装置140の負荷の増大を抑制することができる。
検出装置140を基地局110とは別に設ける構成について説明したが、検出装置140を基地局110に設ける構成としてもよい。また、基地局110は転送部111を複数備え、検出装置140は複数の転送部111のそれぞれについて異常を検出してもよい。また、転送部111はユーザデータを転送する複数の回路(たとえば受信側の回路と送信側の回路)を含み、取得部141は複数の回路を含む転送部111がユーザデータを受信してから送信するまでの時間を取得してもよい。
基地局110の転送部111は、たとえばDSP(Digital Signal Processor)などの演算回路および通信インターフェースによって実現することができる。検出装置140の取得部141および検出部142は、たとえばDSPなどの演算回路によって実現することができる。
図2は、通信システムの具体例を示す図である。図2に示す通信システム200は、図1に示した通信システム100の具体例である。通信システム200は、たとえばLTEの通信システムである。図2に示すように、通信システム200は、基地局210(eNB)と、移動局220(UE)と、他ノード230と、を含んでいる。移動局220は、基地局210との間で無線通信を行う移動局である。他ノード230は、S−GWやMMEや他の基地局などである。
基地局210は、ベースバンドユニット211(BB:Base Band unit)およびハイウェイインターフェース212(HWIF:High Way InterFace)を備えている。ベースバンドユニット211およびハイウェイインターフェース212のそれぞれは、図1に示した転送部111に対応する。また、図1に示した検出装置140は、たとえば基地局210に設けられている。
基地局210は、移動局220と他ノード230との間で送受信されるユーザデータを、ベースバンドユニット211およびハイウェイインターフェース212によって中継(転送)する。下りデータ201は、他ノード230から移動局220へ送信される下りデータを示している。上りデータ202は、移動局220から他ノード230へ送信される上りデータを示している。
ベースバンドユニット211およびハイウェイインターフェース212は、他ノード230から受信した下りデータ201を移動局220へ転送する。下りデータ201については、他ノード230が図1に示した通信局120に対応し、移動局220が図1に示した通信局130に対応する。また、ベースバンドユニット211およびハイウェイインターフェース212は、移動局220から受信した上りデータ202を他ノード230へ転送する。上りデータ202については、移動局220が図1に示した通信局120に対応し、他ノード230が図1に示した通信局130に対応する。
図1に示した取得部141は、処理時間T1〜T4の少なくともいずれかを計測する。処理時間T1は、ハイウェイインターフェース212が下りデータ201を他ノード230から受信してからベースバンドユニット211へ送信するまでの時間である。処理時間T2は、ベースバンドユニット211が下りデータ201をハイウェイインターフェース212から受信してから移動局220へ送信するまでの時間である。
処理時間T3は、ベースバンドユニット211が上りデータ202を移動局220から受信してからハイウェイインターフェース212へ送信するまでの時間である。処理時間T4は、ハイウェイインターフェース212が上りデータ202をベースバンドユニット211から受信してから他ノード230へ送信するまでの時間である。
図1に示した検出部142は、取得部141によって取得された処理時間T1や処理時間T4に基づいてハイウェイインターフェース212の異常を検出する。また、検出部142は、取得部141によって取得された処理時間T2や処理時間T3に基づいてベースバンドユニット211の異常を検出する。このように、検出部142は、たとえば基地局210が備える各転送部の異常を検出する。
<基地局の具体例>
図3は、基地局の具体例を示す図である。図3に示すように、基地局210は、アンテナ310と、増幅器320(MHA:Mast Head Amplifier)と、送信電力増幅器330(TPA:Transmit Power Amplifier)と、RE340(Radio Equipment)と、REC350(Radio Equipment Controller)と、を備えている。
アンテナ310および増幅器320は、基地局210の複数のセクタに対応してそれぞれ複数設けられている。アンテナ310は、移動局220との間で無線信号を送受信する無線インターフェースである。増幅器320は、アンテナ310と送信電力増幅器330との間で送受信される信号を増幅する。送信電力増幅器330は、増幅器320とRE340との間で送受信される信号を増幅する。
RE340は、送受信機341(TRX:Transmitter Receiver)と、ベースバンドユニット342(BB)と、を備えている。送受信機341およびベースバンドユニット342は、基地局210の複数のセクタに対応してそれぞれ複数設けられている。ベースバンドユニット342は、図2に示したベースバンドユニット211に対応する。
送受信機341は、ベースバンドユニット342からの送信ベースバンド信号(移動局220を宛先とするダウンリンク信号)を無線周波数に周波数変換(アップコンバージョン)して送信電力増幅器330に送信する。また、送受信機341は、送信電力増幅器330から受信した無線信号(アップリンク信号)をベースバンド周波数に周波数変換(ダウンコンバージョン)してベースバンドユニット342に送信する。
ベースバンドユニット342は、REC350のスイッチ351からの送信信号に符号化、変調などのベースバンド処理を行って送受信機341へ送信する。また、ベースバンドユニット342は、送受信機341から受信したベースバンド信号に復調、復号などのベースバンド処理を行ってREC350のスイッチ351へ送信する。
REC350は、スイッチ351(SW:SWitch)と、ハイウェイインターフェース352(HWIF)と、共有メモリ353(CM:Common Memory)と、呼処理ユニット354(CPU:Call Processing Unit)と、データベースユニット355(DB:Data Base unit)と、を備えている。ハイウェイインターフェース352は、図2に示したハイウェイインターフェース212に対応する。呼処理ユニット354は、図1に示した検出装置140に対応する。
スイッチ351は、呼処理ユニット354からの制御に従って、ベースバンドユニット342とハイウェイインターフェース352との間の接続を切り替える。具体的には、スイッチ351は、ベースバンドユニット342からの信号はハイウェイインターフェース352へ、ハイウェイインターフェース352からの信号はベースバンドユニット342のいずれかへ出力する。
ハイウェイインターフェース352は、S1インターフェース、X2インターフェースとしての機能を有し、他ノード230と通信する。たとえば、ハイウェイインターフェース352は、S1インターフェース、X2インターフェースを介して制御プレーン信号を送信する送信手段としての機能を有する。また、ハイウェイインターフェース352は、S1インターフェース、X2インターフェースを介して制御プレーン信号を受信する受信手段としての機能を有する。
共有メモリ353は、呼処理ユニット354が動作する上で用いるデータを保持する。この共有メモリ353には、たとえば、データベースユニット355のデータが読み出されて展開される場合もある。また、共有メモリ353には、ハイウェイインターフェース352によって取得される時刻情報や処理時間などが記憶されてもよい。
呼処理ユニット354は、共有メモリ353およびデータベースユニット355の少なくとも一方に保持されたデータに基づいてスイッチ351を制御し、移動局220や他ノード230との間で送受される信号を適切な経路へ転送する。共有メモリ353およびデータベースユニット355の少なくとも一方に保持されたデータには、たとえば呼制御のためのアプリケーションデータや設定データなどが含まれる。
データベースユニット355は、基地局210が動作する上で必要なデータを保持する。データベースユニット355には、他の基地局との間で確立、解放するアソシエーションを管理する情報も登録される。たとえば、データベースユニット355には、アソシエーション番号、基地局210で使用しているエンドポイント、送信元/宛先ポート番号(SCTPパラメータ)、基地局210のIPアドレス、他ノード230のIPアドレスなどが登録される。
ここでは、複数のセクタに対応するために、アンテナ310、増幅器320、送受信機341、ベースバンドユニット342のそれぞれが複数設けられた構成について説明した。ただし、アンテナ310、増幅器320、送受信機341、ベースバンドユニット342のそれぞれが一つずつ設けられた構成としてもよい。
図4は、ベースバンドユニットの具体例を示す図である。図4に示すように、ベースバンドユニット342は、BB処理部401と、GTP処理部402と、LANインターフェース403と、を備えている。BB処理部401は、送受信機341(図3参照)とGTP処理部402との間で送受信される信号のベースバンド処理を行う。
GTP処理部402は、GTP(GPRS Tunneling Protocol)によるパケット転送処理を行う。具体的には、GTP処理部402は、BB処理部401を介して送受信機341と信号を送受信する。また、GTP処理部402は、LANインターフェース403を介してREC350と信号を送受信する。LANインターフェース403はREC350に接続されるインターフェースである。
図5は、ハイウェイインターフェースの具体例を示す図である。図5に示すように、ハイウェイインターフェース352は、LANインターフェース501と、GTP処理部502と、L2スイッチ503(L2SW:Layer2 SWitch)と、を備えている。LANインターフェース501は、REC350に接続されるインターフェースである。GTP処理部502は、GTPによるパケット転送処理を行う。具体的には、GTP処理部502は、LANインターフェース501を介してREC350のスイッチ351と信号を送受信する。また、GTP処理部502は、L2スイッチ503を介して他ノード230と信号を送受信する。
<他ノードの具体例>
図6は、他ノードの具体例を示す図である。他ノード230がS−GWである場合は、図6に示すように、他ノード230は、ハイウェイインターフェース601(HWIF)と、呼処理ユニット602(CPU)と、を備えている。ハイウェイインターフェース601は、基地局210に接続されたインターフェースである。呼処理ユニット602は、基地局210との間の呼処理を行う。
<各部の処理の例>
図7は、ベースバンドユニットおよびハイウェイインターフェースの処理の一例を示すフローチャートである。ここではベースバンドユニット342の処理について説明するが、ハイウェイインターフェース352の処理についても同様である。ベースバンドユニット342は、たとえば以下の各ステップを繰り返し実行する。
まず、ベースバンドユニット342は、ユーザデータ(下りデータまたは上りデータ)を上流から受信したか否かを判断し(ステップS701)、ユーザデータを受信するまで待つ(ステップS701:Noのループ)。ユーザデータを受信した場合(ステップS701:Yes)は、ベースバンドユニット342は、受信したユーザデータに含まれる試験フラグがONか否かを判断する(ステップS702)。試験フラグがONである場合(ステップS702:Yes)は、ベースバンドユニット342は、ステップS701におけるユーザデータの受信時刻をメモリに記憶する(ステップS703)。
つぎに、ベースバンドユニット342は、ステップS701において受信されたユーザデータを下流へ送信する(ステップS704)。つぎに、ベースバンドユニット342は、ステップS704におけるユーザデータの送信時刻をメモリに記憶する(ステップS705)。つぎに、ベースバンドユニット342は、ステップS703,S705によって記憶された各時刻(受信時刻および送信時刻)を示す時刻情報を呼処理ユニット354へ送信し(ステップS706)、一連の処理を終了する。
ステップS702において試験フラグがONでない場合(ステップS702:No)は、ベースバンドユニット342は、ステップS701において受信されたユーザデータを下流へ送信し(ステップS707)、一連の処理を終了する。
また、ここではユーザデータを転送するごとに時刻情報を呼処理ユニット354へ送信する場合について説明したが、時刻情報を送信するタイミングはこれに限らない。たとえば、ベースバンドユニット342は、ユーザデータを転送するごとに受信時刻および送信時刻を蓄積しておき、蓄積しておいた各受信時刻および各送信時刻を示す時刻情報を所定のタイミングで送信するようにしてもよい。
図8は、呼処理ユニットの処理の一例を示すフローチャートである。まず、呼処理ユニット354は、各転送部におけるユーザデータごとの各時刻情報を取得する(ステップS801)。各転送部は、たとえばベースバンドユニット342およびハイウェイインターフェース352である。
つぎに、呼処理ユニット354は、ステップS801によって取得された時刻情報に基づいて、各転送部におけるユーザデータごとの各処理時間を算出する(ステップS802)。具体的には、呼処理ユニット354は、時刻情報が示す送信時刻から、時刻情報が示す受信時刻を減算することで処理時間を算出する。
つぎに、呼処理ユニット354は、ステップS802によって算出された各処理時間をそれぞれ指標値と比較する(ステップS803)。つぎに、呼処理ユニット354は、ステップS803による比較結果に基づいて、ベースバンドユニット342およびハイウェイインターフェース352の中から異常箇所を特定する(ステップS804)。つぎに、呼処理ユニット354は、ステップS804によって特定された異常箇所について所定の処理を実行し(ステップS805)、一連の処理を終了する。
<通信システムの動作例>
図9は、通信システムの動作の一例を示すシーケンス図である。図9に示すように、まず、ハイウェイインターフェース352が、他ノード230からの下りデータを受信する(ステップS901)。ステップS901によって受信された下りデータには、他ノード230によって付加された試験フラグが含まれている。また、下りデータの試験フラグは、ONとなっており、異常の検出を実行する旨を示している。
つぎに、ハイウェイインターフェース352が、ステップS901によって受信された下りデータに含まれる試験フラグのON/OFFを判定する(ステップS902)。ここでは試験フラグがONであると判定される。また、ハイウェイインターフェース352が、ステップS901によって受信された下りデータの受信時刻をメモリに記憶する(ステップS903)。
つぎに、ハイウェイインターフェース352が、ステップS901によって受信された下りデータをベースバンドユニット342へ送信する(ステップS904)。また、ハイウェイインターフェース352は、ステップS904によって送信された下りデータの送信時刻をメモリに記憶する(ステップS905)。
つぎに、ベースバンドユニット342が、ステップS904によって送信された下りデータに含まれる試験フラグのON/OFFを判定する(ステップS906)。ここでは試験フラグがONであると判定される。また、ベースバンドユニット342は、ステップS904によって受信された下りデータの受信時刻をメモリに記憶する(ステップS907)。
つぎに、ベースバンドユニット342は、ステップS904によって受信された下りデータを送受信機341へ送信する(ステップS908)。また、ベースバンドユニット342は、ステップS908によって送信された下りデータの送信時刻をメモリに記憶する(ステップS909)。
つぎに、ベースバンドユニット342が、送受信機341からの上りデータを受信したとする(ステップS910)。また、ステップS910によって受信された上りデータが、ステップS908によって下りデータを送信した試験対象の移動局からの応答であるとする。つぎに、ベースバンドユニット342は、ステップS910によって受信された上りデータの受信時刻をメモリに記憶する(ステップS911)。
つぎに、ベースバンドユニット342は、ステップS910によって受信された上りデータをハイウェイインターフェース352へ送信する(ステップS912)。また、ベースバンドユニット342は、ステップS912によって送信された上りデータの送信時刻をメモリに記憶する(ステップS913)。
また、ベースバンドユニット342は、ステップS907,S909,S911,S913によって記憶された各時刻を示す時刻情報を呼処理ユニット354へ送信する(ステップS914)。つぎに、ハイウェイインターフェース352が、ステップS912によって送信された上りデータの受信時刻をメモリに記憶する(ステップS915)。
つぎに、ハイウェイインターフェース352は、ステップS912によって送信された上りデータを他ノード230へ送信する(ステップS916)。また、ハイウェイインターフェース352は、ステップS916によって送信された上りデータの送信時刻をメモリに記憶する(ステップS917)。
つぎに、ハイウェイインターフェース352は、ステップS903,S905,S915,S917によって記憶された各時刻を示す時刻情報を呼処理ユニット354へ送信する(ステップS918)。つぎに、呼処理ユニット354が、ステップS914,S918によって送信された各時刻情報に基づいて、ベースバンドユニット342およびハイウェイインターフェース352の各処理時間を算出する(ステップS919)。
つぎに、呼処理ユニット354は、ステップS919によって算出された各処理時間に基づいて、ベースバンドユニット342およびハイウェイインターフェース352の各異常を検出する(ステップS920)。具体的には、呼処理ユニット354は、各処理時間を所定の指標値と比較し、ベースバンドユニット342およびハイウェイインターフェース352のうちの処理時間が指標値を超えた転送部に異常が発生したと判断する。
ステップS901において、他ノード230が、試験フラグをONに設定した下りデータを送信する場合について説明したが、試験フラグの設定は基地局210において行ってもよい。たとえば、ハイウェイインターフェース352は、ステップS904において送信する下りデータの試験フラグをONに設定する。
たとえば、他ノード230またはハイウェイインターフェース352は、周期的なタイミングを計時するタイマを有し、タイマによって計時されるタイミングにおいては下りデータの試験フラグをONに設定する。また、他ノード230またはハイウェイインターフェース352は、タイマによって計時されるタイミング以外のタイミングにおいては下りデータの試験フラグをOFFに設定する。
または、他ノード230またはハイウェイインターフェース352は、ユーザ操作により設定されたタイミングにおいては下りデータの試験フラグをONに設定する。また、他ノード230またはハイウェイインターフェース352は、ユーザ操作により設定されたタイミング以外のタイミングにおいては下りデータの試験フラグをOFFに設定する。
また、ハイウェイインターフェース352およびベースバンドユニット342は、受信時刻および送信時刻をユーザごとに記憶してもよい。この場合は、ステップS914,S918によって送信される時刻情報は、受信時刻および送信時刻をユーザごとに示す時刻情報となる。
<時刻情報の例>
図10は、ベースバンドユニットが記憶する時刻情報の一例を示す図である。ベースバンドユニット342は、たとえば図10に示すテーブル1000を時刻情報として記憶している。テーブル1000には、下りデータとユーザの組み合わせごとに、ハイウェイインターフェース352からの受信時刻と、送受信機341への送信時刻が含まれている。また、テーブル1000には、上りデータとユーザの組み合わせごとに、送受信機341からの受信時刻と、ハイウェイインターフェース352への送信時刻が含まれている。
ベースバンドユニット342における下りデータのハイウェイインターフェース352からの受信時刻は、図9に示したステップS907によって記憶された時刻である。ベースバンドユニット342における下りデータの送受信機341への送信時刻は、図9に示したステップS909によって記憶された時刻である。
ベースバンドユニット342における上りデータの送受信機341からの受信時刻は、図9に示したステップS911によって記憶された時刻である。ベースバンドユニット342における上りデータのハイウェイインターフェース352への送信時刻は、図9に示したステップS913によって記憶された時刻である。
図11は、ハイウェイインターフェースが記憶する時刻情報の一例を示す図である。ハイウェイインターフェース352は、たとえば図11に示すテーブル1100を時刻情報として記憶している。テーブル1100には、下りデータとユーザの組み合わせごとに、他ノード230からの受信時刻と、ベースバンドユニット342への送信時刻が含まれている。また、テーブル1100には、上りデータとユーザの組み合わせごとに、ベースバンドユニット342からの受信時刻と、他ノード230への送信時刻が含まれている。
ハイウェイインターフェース352における下りデータの他ノード(S−GWまたはeNB)からの受信時刻は、図9に示したステップS903によって記憶された時刻である。ハイウェイインターフェース352における下りデータのベースバンドユニット342への送信時刻は、図9に示したステップS905によって記憶された時刻である。
ハイウェイインターフェース352における上りデータのベースバンドユニット342からの受信時刻は、図9に示したステップS915によって記憶された時刻である。ハイウェイインターフェース352における上りデータの他ノードへの送信時刻は、図9に示したステップS917によって記憶された時刻である。
図12は、呼処理ユニットによって算出される処理時間の一例を示す図である。呼処理ユニット354は、ベースバンドユニット342から受信したテーブル1000と、ハイウェイインターフェース352から受信したテーブル1100と、に基づいてたとえば図12に示すテーブル1200を生成する。テーブル1200には、ベースバンドユニット342における下りデータおよび上りデータの各処理時間がユーザごとに含まれている。また、テーブル1200には、ハイウェイインターフェース352における下りデータおよび上りデータの各処理時間がユーザごとに含まれている。
たとえば、ベースバンドユニット342におけるユーザ「1」の下りデータの処理時間a1は、テーブル1000の時刻「aa:aa」と時刻「aa:bb」との差分である。ベースバンドユニット342におけるユーザ「1」の上りデータの処理時間b1は、テーブル1000の時刻「aa:cc」と時刻「aa:dd」との差分である。
ハイウェイインターフェース352におけるユーザ「1」の下りデータの処理時間c1は、テーブル1100の時刻「AA:AA」と時刻「AA:BB」との差分である。ハイウェイインターフェース352におけるユーザ「1」の上りデータの処理時間d1は、テーブル1100の時刻「AA:CC」と時刻「AA:DD」との差分である。
また、テーブル1200において、ベースバンドユニット342における下りデータおよび上りデータにはそれぞれ指標値A,Bが設定されている。また、テーブル1200において、ハイウェイインターフェース352における下りデータおよび上りデータにはそれぞれ指標値C,Dが設定されている。
テーブル1200の各指標値は、たとえばネットワーク監視者によってあらかじめ設定される。または、テーブル1200の各指標値は、通信システム200の運用中に動的に変化させてもよい。たとえば、呼処理ユニット354は、定期的に、過去の所定数の各処理時間の平均値を算出し、算出した平均値にマージンとなる値を加算して指標値として設定する。このように、過去に取得した処理時間に基づいて指標値を設定することで、ベースバンドユニット342やハイウェイインターフェース352の負荷状態によって変化する処理時間に基づく適切な指標値を自動的に設定することができる。
ベースバンドユニット342の異常の検出について説明する。呼処理ユニット354は、各処理時間と指標値を比較し、比較結果に基づいて異常を検出する。たとえば、呼処理ユニット354は、処理時間a1を指標値Aと比較し、処理時間a1が指標値Aより高い場合は、ベースバンドユニット342のユーザ「1」の下りデータにおいて異常が発生したと判断する。また、呼処理ユニット354は、処理時間a1が指標値Aより高くない場合は、ベースバンドユニット342のユーザ「1」の下りデータにおいて異常が発生していないと判断する。ここではベースバンドユニット342のユーザ「1」の下りデータについて説明したが、ユーザ「2」、「3」および上りデータについても同様である。
また、呼処理ユニット354は、ベースバンドユニット342の各処理時間をそれぞれ指標値と比較し、複数の比較結果に基づいてベースバンドユニット342の異常を検出してもよい。たとえば、呼処理ユニット354は、ベースバンドユニット342の各処理時間のうちの指標値より高かった処理時間が一定数以上である場合にベースバンドユニット342において異常が発生したと判断する。また、呼処理ユニット354は、ベースバンドユニット342の各処理時間のうちの指標値より高かった処理時間が一定数未満である場合にベースバンドユニット342において異常が発生していないと判断する。
また、呼処理ユニット354は、ベースバンドユニット342の各処理時間のうちの指標値より高かった処理時間の数に応じて段階的な異常検出を行ってもよい。たとえば、呼処理ユニット354は、ベースバンドユニット342の各処理時間のうちの指標値より高かった処理時間の数が多いほど重要度が高い異常が発生したと判断する。
ここではベースバンドユニット342の異常の検出について説明したが、ハイウェイインターフェース352の異常の検出についても同様である。このように、呼処理ユニット354は、各転送部(ベースバンドユニット342およびハイウェイインターフェース352)のそれぞれについて処理時間と指標値を比較することで、各転送部の異常をそれぞれ検出することができる。
<検出結果に基づく処理>
呼処理ユニット354は、転送部(ベースバンドユニット342またはハイウェイインターフェース352)の異常の検出結果に基づく所定の処理を行う。所定の処理は、たとえばネットワーク監視者によってあらかじめ設定される。たとえば、呼処理ユニット354は、検出結果を示す検出結果情報を基地局210のユーザへ出力する。または、呼処理ユニット354は、基地局210を監視する通信装置へ検出結果情報を送信してもよい。
また、呼処理ユニット354は、異常の検出結果に基づく基地局210の制御を行ってもよい。呼処理ユニット354は、たとえば、転送部に異常が発生した場合に、異常が発生した転送部を迂回してユーザデータを転送する冗長経路がある場合は、異常が発生した転送部から冗長経路への切り替えを行う。また、呼処理ユニット354は、冗長経路への切り替えを行う場合に、移動局220の他の基地局へのハンドオーバ(可能であれば)を行ってから冗長経路への切り替えを行ってもよい。これにより、冗長経路への切り替えによって移動局220の通信が切断されることを回避することができる。
または、呼処理ユニット354は、転送部に異常が発生した場合に、異常が発生した転送部の再起動を行ってもよい。また、呼処理ユニット354は、異常が発生した転送部の再起動を行う場合に、移動局220の他の基地局へのハンドオーバ(可能であれば)を行ってから異常が発生した転送部の再起動を行ってもよい。これにより、転送部の再起動によって移動局220の通信が切断されることを回避することができる。
または、呼処理ユニット354は、転送部に異常が発生し、異常が発生した転送部を迂回してユーザデータを転送する冗長経路がなく、移動局220の他の基地局へのハンドオーバが不可能である場合に転送部の再起動を行ってもよい。
このように、実施の形態1にかかる通信システム100においては、ユーザデータを終端せずに転送する転送部111について、ユーザデータの受信から送信までにかかった時間に基づいて転送部111の異常を検出する。これにより、ユーザデータを終端しない転送部111であっても異常の検出を行うことができる。このため、ネットワークの異常箇所を精度よく特定することができる。
(実施の形態2)
<通信システム>
図13は、実施の形態2にかかる通信システムを示す図である。図13において、図1に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図13に示すように、実施の形態2にかかる通信システム100は、基地局110と、通信局120と、検出装置140と、を含んでいる。ただし、通信システム100は、図1に示した通信局130を含んでいてもよい。
通信局120は、基地局110との間の伝送路1301によりユーザデータを送受信する。たとえば、通信局120は基地局110に接続された他ノードである。検出装置140の取得部141は、基地局110および通信局120の一方がユーザデータを受信してから基地局110および通信局120の他方がユーザデータを受信するまでの時間(以下、「伝送時間」と称する。)を取得する。これにより、取得部141は、基地局110と通信局120との間におけるユーザデータの伝送時間を取得することができる。
たとえば、取得部141は、基地局110がユーザデータを送信してから通信局120がユーザデータを受信するまでの伝送時間と、通信局120がユーザデータを送信してから基地局110がユーザデータを受信するまでの伝送時間と、のそれぞれを取得する。具体的には、取得部141は、基地局110によるユーザデータの送信時刻およびユーザデータの受信時刻を基地局110から取得し、通信局120によるユーザデータの送信時刻およびユーザデータの受信時刻を通信局120から取得する。そして、取得部141は、取得した各受信時刻および各送信時刻に基づいて各伝送時間を算出する。取得部141は、算出した伝送時間を検出部142へ出力する。
検出部142は、取得部141から出力された伝送時間に基づいて、基地局110と通信局120との間の伝送路1301の異常を検出する。たとえば、検出部142は、伝送時間と指標値との比較結果に基づいて伝送路1301の異常を検出する。具体的には、検出部142は、伝送時間が閾値を超えた場合は伝送路1301に異常が発生したと判断し、伝送時間が閾値を超えなかった場合は伝送路1301に異常が発生していないと判断する。検出部142は、異常の検出結果を示す検出結果情報を出力する。たとえば、検出部142は、基地局110を監視する通信装置へ検出結果情報を送信する。
また、検出部142から出力される検出結果情報に基づく通信システム100の制御を行う制御部を、たとえば基地局110または検出装置140に設けてもよい。制御部は、たとえば、伝送路1301に異常が発生した場合に、伝送路1301を迂回してユーザデータを転送する冗長経路がある場合は、伝送路1301から冗長経路への切り替えを行う。または、制御部は、伝送路1301に異常が発生した場合に、基地局110および通信局120の少なくとも一方の再起動を行ってもよい。
また、基地局110の転送部111が転送するユーザデータには、伝送路1301の異常の検出を実行するか否かを示すフラグが含まれていてもよい。転送部111および通信局120は、異常の検出を実行する旨のフラグ(たとえばフラグがON)が含まれるユーザデータの受信時刻および送信時刻を検出装置140へ送信する。また、転送部111および通信局120は、異常の検出を実行しない旨のフラグ(たとえばフラグがOFF)が含まれるユーザデータの受信時刻および送信時刻は検出装置140へ送信しない。
この場合は、検出装置140の取得部141は、異常の検出を実行する旨のフラグを含むユーザデータについては伝送路1301の伝送時間を取得し、異常の検出を実行しない旨のフラグを含むユーザデータについては伝送路1301の伝送時間を取得しない。これにより、伝送路1301によって伝送されるすべてのユーザデータに関する伝送時間を取得することを回避し、検出装置140の負荷の増大を抑制することができる。
さらに、図13に示した通信システム100は、図1に示した通信システム100の機能を有していてもよい。以下、図1および図13に示した各機能を有する通信システム100について説明する。すなわち、通信システム100は、転送部111の異常の検出と、伝送路1301の異常の検出と、を行う。
また、検出装置140を基地局110および通信局120とは別に設ける構成について説明したが、検出装置140を基地局110や通信局120に設ける構成としてもよい。また、伝送路1301には、たとえばルータなどの中継機が設けられていてもよい。
図14は、通信システムの具体例を示す図である。図14において、図2に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図14に示す通信システム200は、図13に示した通信システム100の具体例である。検出装置1401は、図13に示した検出装置140に対応している。検出装置1401は、基地局210および他ノード230とは別に設けられているとする。
検出装置1401は、伝送時間T5,T6の少なくともいずれかを計測する。伝送時間T5は、他ノード230が下りデータ201を送信してからハイウェイインターフェース212が下りデータ201を受信するまでの時間である。伝送時間T6は、ハイウェイインターフェース212が上りデータ202を送信してから他ノード230が上りデータ202を受信するまでの時間である。
検出装置1401は、取得部141によって取得された伝送時間T5や伝送時間T6に基づいて、基地局210と他ノード230との間の伝送路の異常を検出する。検出装置1401は、検出結果情報をオペレーションシステム1402(OPS)へ送信する。オペレーションシステム1402は、検出装置1401から送信された検出結果情報に基づく所定の処理を行う。
<基地局および他ノードの具体例>
基地局210および他ノード230の具体例については図3〜図6に示した具体例と同様である。
<各部の処理の例>
ベースバンドユニット342およびハイウェイインターフェース352の処理については、図7に示した処理と同様である。
図15は、呼処理ユニットの処理の一例を示すフローチャートである。図15に示すステップS1501,S1502は、図8に示したステップS801,S802と同様であるため説明を省略する。ステップS1502のつぎに、呼処理ユニット354は、処理時間情報および時刻情報を検出装置1401へ送信し(ステップS1503)、一連の処理を終了する。ステップS1503によって送信される処理時間情報は、ステップS1502によって算出された各処理時間を示す処理時間情報である。
ステップS1503によって送信される時刻情報は、基地局210がユーザデータを送受信した時刻を示す時刻情報である。基地局210がユーザデータを受信した時刻は、たとえば、ハイウェイインターフェース352が他ノード230からの下りデータを受信した時刻である。基地局210がユーザデータを送信した時刻は、たとえば、ハイウェイインターフェース352が他ノード230へ上りデータを送信した時刻である。
図16は、検出装置の処理の一例を示すフローチャートである。まず、検出装置1401は、図15に示したステップS1503によって送信される基地局210からの処理時間情報および時刻情報を取得する(ステップS1601)。つぎに、検出装置1401は、他ノード230からの時刻情報を取得する(ステップS1602)。
ステップS1602によって取得される時刻情報は、他ノード230がユーザデータを送受信した時刻を示す時刻情報である。他ノード230がユーザデータを送信した時刻は、たとえば、他ノード230が基地局210へ下りデータを送信した時刻である。他ノード230がユーザデータを受信した時刻は、たとえば、他ノード230が基地局210からの上りデータを受信した時刻である。
つぎに、検出装置1401は、ステップS1601,S1602に基づいて、基地局210と他ノード230との間の各伝送時間をユーザデータごとに算出する(ステップS1603)。つぎに、検出装置1401は、ステップS1603によって算出された各伝送時間およびステップS1601によって取得された基地局210の各処理時間を指標値と比較する(ステップS1604)。
つぎに、検出装置1401は、ステップS1604による比較結果に基づいて、基地局210の各転送部と、基地局210と他ノード230との間の伝送路と、の中から異常箇所を特定する(ステップS1605)。つぎに、検出装置1401は、ステップS1605によって特定された異常箇所を示す検出結果情報をオペレーションシステム1402へ送信し(ステップS1606)、一連の処理を終了する。
<通信システムの動作例>
図17は、通信システムの動作の一例を示すシーケンス図である。図17に示すように、まず、他ノード230が、下りデータの試験フラグをONに設定する(ステップS1701)。つぎに、他ノード230が、ステップS1701によって試験フラグがONに設定された下りデータを基地局210へ送信する(ステップS1702)。また、他ノード230は、ステップS1702による下りデータの送信時刻をメモリに記憶しておく。
つぎに、基地局210が、ステップS1702によって送信された下りデータを移動局220へ送信する(ステップS1703)。また、基地局210は、ステップS1702,S1703において、下りデータの送受信時刻の記憶を行う。送受信時刻の記憶は、たとえば図9に示したステップS903,S905,S907,S909と同様である。
つぎに、移動局220が、試験フラグがONの上りデータを基地局210へ送信したとする(ステップS1704)。つぎに、基地局210が、ステップS1704によって送信された上りデータを他ノード230へ送信する(ステップS1705)。他ノード230は、ステップS1705による上りデータの受信時刻をメモリに記憶しておく。また、基地局210は、ステップS1704,S1705において、上りデータの送受信時刻の記憶を行う。送受信時刻の記憶は、たとえば図9に示したステップS911,S913,S915,S917と同様である。
また、基地局210は、ステップS1702,S1703において記憶した下りデータに関する送受信時刻と、ステップS1704,S1705において記憶した上りデータに関する送受信時刻と、に基づいて各転送部の処理時間の算出を行う。各転送部の処理時間の算出は、たとえば図9に示したステップS914,S918,S919と同様である。
つぎに、基地局210が、算出した処理時間を示す処理時間情報と、基地局210のユーザデータの送受信時刻を示す時刻情報と、を検出装置1401へ送信する(ステップS1706)。つぎに、他ノード230が、他ノード230のユーザデータの送受信時刻を示す時刻情報を検出装置1401へ送信する(ステップS1707)。ステップS1707によって送信される時刻情報は、たとえば、ステップS1702による下りデータの送信時刻と、ステップS1705による上りデータの受信時刻と、を示す時刻情報である。
つぎに、検出装置1401が、ステップS1706,S1707によって送信された各時刻情報に基づいて基地局210と他ノード230との間の伝送時間を算出する(ステップS1708)。つぎに、検出装置1401が、基地局210の各転送部および基地局210と他ノード230との間の伝送路の異常を検出する(ステップS1709)。
具体的には、検出装置1401は、ステップS1706によって送信された処理時間情報に基づいて基地局210の各転送部の異常を検出する。また、検出装置1401は、ステップS1708によって算出された伝送時間に基づいて基地局210と他ノード230との間の伝送路の異常を検出する。
つぎに、ステップS1709による検出結果を示す検出結果情報をオペレーションシステム1402へ送信する(ステップS1710)。つぎに、オペレーションシステム1402が、ステップS1710によって送信された検出結果情報に基づく制御指示を他ノード230および基地局210へ送信し(ステップS1711)、一連の動作を終了する。
<時刻情報の例>
ベースバンドユニット342およびハイウェイインターフェース352が記憶する時刻情報については、それぞれ図10および図11に示したテーブル1000およびテーブル1100と同様である。
図18は、呼処理ユニットによって算出される処理時間の一例を示す図である。呼処理ユニット354は、ベースバンドユニット342から受信したテーブル1000と、ハイウェイインターフェース352から受信したテーブル1100と、に基づいてたとえば図18に示すテーブル1800を生成する。
テーブル1800の各処理時間は、図12に示したテーブル1200と同様である。ただし、呼処理ユニット354は異常の検出を行わないため、テーブル1800には指標値は含まれていなくてもよい。呼処理ユニット354は、図17に示したステップS1706において、テーブル1800を処理時間情報として検出装置1401へ送信する。
図19は、基地局が検出装置へ送信する時刻情報の一例を示す図である。基地局210は、図17に示したステップS1706において、たとえば図19に示すテーブル1900を時刻情報として検出装置1401へ送信する。テーブル1900には、基地局210における他ノード230からの下りデータの受信時刻と、基地局210における他ノード230への上りデータの送信時刻と、がユーザごとに含まれている。
テーブル1900の受信時刻は、ハイウェイインターフェース352から取得したテーブル1100(図11参照)の下りデータの他ノード230からの受信時刻である。テーブル1900の送信時刻は、ハイウェイインターフェース352から取得したテーブル1100(図11参照)の下りデータの他ノード230への送信時刻である。
図20は、他ノードが検出装置へ送信する時刻情報の一例を示す図である。他ノード230は、図17に示したステップS1707において、たとえば図20に示すテーブル2000を時刻情報として検出装置1401へ送信する。テーブル2000には、他ノード230における基地局210への下りデータの送信時刻と、他ノード230における基地局210からの上りデータの受信時刻と、がユーザごとに含まれている。
テーブル2000の下りデータの送信時刻は、図17に示したステップS1702によって他ノード230が基地局210へ下りデータを送信した時刻である。テーブル2000の上りデータの受信時刻は、図17に示したステップS1705によって他ノード230が基地局210から上りデータを受信した時刻である。
図21は、検出装置によって管理される処理時間および伝送時間の一例を示す図である。検出装置1401は、基地局210から受信したテーブル1800,1900と、他ノード230から受信したテーブル2000と、に基づいてたとえば図21に示すテーブル2100を生成する。テーブル2100には、基地局210の各転送部(ベースバンドユニット342およびハイウェイインターフェース352)の処理時間と、基地局210と移動局220との間の下りデータおよび上りデータの伝送時間と、が含まれている。
基地局210の各転送部の処理時間は、図12に示したテーブル1200と同様である。たとえば、基地局210と移動局220との間におけるユーザ「1」の下りデータの伝送時間e1は、テーブル2000の時刻「EE:EE」とテーブル1900の時刻「AA:AA」との差分である。基地局210と移動局220との間におけるユーザ「1」の上りデータの伝送時間f1は、テーブル1900の時刻「AA:DD」とテーブル2000の時刻「EE:HH」との差分である。
また、テーブル2100において、ベースバンドユニット342における下りデータおよび上りデータにはそれぞれ指標値A,Bが設定されている。また、テーブル2100において、ハイウェイインターフェース352における下りデータおよび上りデータにはそれぞれ指標値C,Dが設定されている。指標値A〜Dについては、図12に示したテーブル1200の指標値A〜Dと同様である。
また、テーブル2100において、基地局210と移動局220との間の下りデータおよび上りデータの伝送時間にはそれぞれ指標値E,Fが設定されている。テーブル2100の指標値E,Fは、たとえばネットワーク監視者によってあらかじめ設定される。または、テーブル2100の指標値E,Fは、通信システム200の運用中に動的に変化させてもよい。たとえば、検出装置1401は、定期的に、過去の所定数の各伝送時間の平均値を算出し、算出した平均値にマージンとなる値を加算して指標値として設定する。このように、過去に取得した伝送時間に基づいて指標値を設定することで、基地局210と他ノード230との間の伝送路の負荷状態によって変化する伝送時間に基づく適切な指標値を自動的に設定することができる。
検出装置1401は、各伝送時間と指標値を比較し、比較結果に基づいて基地局210と他ノード230との間の伝送路の異常を検出する。たとえば、検出装置1401は、伝送時間e1を指標値Eと比較し、伝送時間e1が指標値Eより高い場合は、基地局210と他ノード230との間の伝送路において下りデータの異常が発生したと判断する。また、検出装置1401は、伝送時間e1が指標値Eより高くない場合は、基地局210と他ノード230との間の伝送路において下りデータの異常が発生していないと判断する。基地局210と他ノード230との間の下りデータについて説明したが、基地局210と他ノード230との間の上りデータについても同様である。
また、検出装置1401は、基地局210と他ノード230との間の各伝送時間をそれぞれ指標値と比較し、複数の比較結果に基づいて基地局210と他ノード230との間の伝送路の異常を検出してもよい。たとえば、検出装置1401は、基地局210と他ノード230との間の各伝送時間のうちの指標値より高かった伝送時間が一定数以上である場合に基地局210と他ノード230との間の伝送路において異常が発生したと判断する。また、検出装置1401は、基地局210と他ノード230との間の各伝送時間のうちの指標値より高かった伝送時間が一定数未満である場合に基地局210と他ノード230との間の伝送路において異常が発生していないと判断する。
また、検出装置1401は、基地局210と他ノード230との間の各伝送時間のうちの指標値より高かった伝送時間の数に応じて段階的な異常検出を行ってもよい。たとえば、検出装置1401は、基地局210と他ノード230との間の各伝送時間のうちの指標値より高かった伝送時間の数が多いほど重要度が高い異常が発生したと判断する。
<検出結果に基づく処理>
オペレーションシステム1402は、基地局210と他ノード230との間の伝送路の異常の検出結果に基づく所定の処理を行う。所定の処理は、たとえばネットワーク監視者によってあらかじめ設定される。たとえば、オペレーションシステム1402は、検出結果を示す検出結果情報をネットワーク監視者へ出力する。
また、オペレーションシステム1402は、異常の検出結果に基づく基地局210および他ノード230の少なくとも一方の制御を行ってもよい。オペレーションシステム1402は、たとえば、基地局210と他ノード230との間の伝送路に異常が発生した場合に、基地局210と他ノード230との間の伝送路を迂回してユーザデータを転送する冗長経路がある場合は冗長経路への切り替えを行う。
また、オペレーションシステム1402は、冗長経路への切り替えを行う場合に、移動局220の他の基地局へのハンドオーバ(可能であれば)を行ってから冗長経路への切り替えを行ってもよい。これにより、冗長経路への切り替えによって移動局220の通信が切断されることを回避することができる。
または、オペレーションシステム1402は、基地局210と他ノード230との間の伝送路に異常が発生した場合に、基地局210および他ノード230の少なくとも一方の再起動を行ってもよい。また、オペレーションシステム1402は、基地局210および他ノード230の少なくとも一方の再起動を行う場合に、移動局220の他の基地局へのハンドオーバ(可能であれば)を行ってから再起動を行ってもよい。これにより、冗長経路への切り替えによって移動局220の通信が切断されることを回避することができる。
または、オペレーションシステム1402は、基地局210と他ノード230との間の伝送路に異常が発生し、伝送路を迂回する冗長経路がなく、移動局220の他の基地局へのハンドオーバが不可能である場合に再起動を行ってもよい。
このように、実施の形態2にかかる通信システム100においては、ユーザデータを終端せずに転送する基地局210について、他ノード230との間のユーザデータの伝送時間に基づいて基地局210と他ノード230との間の伝送路1301の異常を検出する。これにより、ユーザデータを終端しない基地局210を端点とする伝送路1301であっても異常の検出を行うことができる。このため、ネットワークの異常箇所を精度よく特定することができる。
(通信システムの適用例)
図22は、通信システムの適用例を示す図である。図2または図14に示した通信システム200は、たとえば図22に示す通信システム2200に適用することができる。通信システム2200は、LTEの通信システムであり、基地局2211〜2213と、上位通信局2221,2222と、移動局2231と、を含んでいる。
基地局2211〜2213(eNB)は、X2インターフェースによって互いに接続されている。また、基地局2211〜2213は、S1インターフェースによって上位通信局2221,2222と接続されている。上位通信局2221,2222は、たとえばS−GWやMMEである。上位通信局2221,2222は、コアネットワーク2201と接続されている。
図2または図14に示した基地局210は、基地局2211〜2213のいずれかに適用することができる。ここでは基地局210を基地局2211に適用するとする。ここでは基地局210を基地局2211に適用するとする。この場合は、図2または図14に示した移動局220は、基地局2211に接続する移動局2231に適用することができる。また、この場合は、図2または図14に示した他ノード230は、上位通信局2221に適用することができる。この場合は、基地局2211は、移動局2231と上位通信局2221との間で送受信されるユーザデータを転送(中継)する。
図23は、移動局のハンドオーバの一例を示す図である。図22に示した通信システム2200において、移動局2231が、基地局2212(Source eNB)から基地局2211(Target eNB)へハンドオーバする場合について説明する。この場合は、図23に示すように、基地局2211は、移動局2231のユーザデータを、基地局2212を経由して上位通信局2221との間で送受信するとする。
したがって、図2または図14に示した基地局210を基地局2211に適用し、図2または図14に示した他ノード230を基地局2212に適用することもできる。この場合は、基地局2211は、移動局2231と基地局2212との間で送受信されるユーザデータを中継(転送)する。
図24は、S1インターフェースのプロトコルスタックの一例を示す図である。図24のプロトコルスタック2400は、基地局2211〜2213(eNB)と上位通信局2221,2222(S−GW)との間を接続するS1インターフェースのプロトコルスタックである。プロトコルスタック2400に示すように、S1インターフェースでは、UDPの上位レイヤとしてGTPが設定される。GTPは、たとえば図4に示したGTP処理部402や図5に示したGTP処理部502によって処理される。
図25は、X2インターフェースのプロトコルスタックの一例を示す図である。図25のプロトコルスタック2500は、基地局2211〜2213(eNB)を互いに接続するX2インターフェースのプロトコルスタックである。プロトコルスタック2500に示すように、X2インターフェースでは、UDPの上位レイヤとしてGTPが設定される。
図26は、GTPのヘッダの一例を示す図である。図26に示すGTPヘッダ2600は、S1インターフェースおよびX2インターフェースに用いられるGTPのヘッダである。GTPヘッダ2600の「Version」(Version field)は、GTPのプロトコルバージョンである。「PT」(Protocol Type)は、プロトコルの識別子である。具体的には、「PT」は、GTPが加入者情報伝送用と課金情報伝送用のいずれのタイプであるかを示す。
「(*)」は、予約ビット2601である。上述した試験フラグは、予約ビット2601を用いて実現することができる。具体的には、予約ビット2601をON(1)に設定したユーザデータについては、通信システム200において異常の検出が行われる。また、予約ビット2601をOFF(0)に設定したユーザデータについては、通信システム200において異常の検出が行われない。
「E」(Extension header flag)は、拡張ヘッダフラグである。「S」(Sequence number flag)は、「Sequence number」領域が有効か否かを示すシーケンスナンバーフラグである。「Sequence number」領域は、GTPごとに転送されるT−PDUデータをシーケンス管理するために用いられるシーケンスナンバー領域である。
「PN」(N−PDUナンバーフラグ)は、「N−PDU Number」領域が有効か否かを示すフラグである。「N−PDU Number」領域は、SGSN Routeing Area Update procedureや異なるシステム間でのhandover procedures時に使用される。
「Message Type」は、GTPのメッセージタイプを示す。「Length」は、GTPヘッダ2600が付加されたパケットのペイロード長を示す。「Tunnel Endpoint IDentifier」(TEID)は、GTPによって確立されるIPトンネルの識別情報である。
以上説明したように、開示技術によれば、ネットワークの異常箇所を精度よく特定することができる。このため、たとえば、ネットワークの運用者は、不具合回線の切り離し、切り替え、装置のパラメータの調整などの保守処理を容易に行うことができる。また、これらの保守処理をネットワークにおいて自動で行う場合でも、ネットワークの異常箇所を精度よく特定することができるため、適切な保守処理が可能になる。このため、ネットワークのパフォーマンスを安定させることができる。
また、開示技術によれば、実際に送受信されるユーザデータを用いて異常を検出することができるため、サービス中のまま異常の検出を行うことが可能になる。このため、たとえば擬似的な信号を生成して試験を行う場合に比べて、ネットワークやサービスへの影響を抑制しつつネットワークの異常箇所を特定することができる。
また、開示技術は、基地局がユーザデータを受信してから送信するまでの時間や、一方の通信局がユーザデータを送信してから他方の通信局がユーザデータを受信するまでの時間を用いて異常箇所を特定する。したがって、開示技術によれば、順序制御や承認応答を行うネットワークでなくてもネットワークの異常箇所を特定することができる。このため、開示技術は、たとえばUDP(User Datagram Protocol)などにも適用することができる。
上述した各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)ユーザデータを転送する転送部と、
前記転送部が前記ユーザデータを受信してから前記転送部が前記ユーザデータを送信するまでの時間を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された時間に基づいて前記転送部の異常を検出する検出部と、
を備えることを特徴とする基地局。
(付記2)前記ユーザデータは、前記異常の検出を実行するか否かを示すフラグを含み、
前記取得部は、前記異常の検出を実行する旨のフラグを含むユーザデータについては前記時間を取得し、前記異常の検出を実行しない旨のフラグを含むユーザデータについては前記時間を取得しないことを特徴とする付記1に記載の基地局。
(付記3)前記検出部は、前記時間と指標値との比較結果に基づいて前記異常を検出することを特徴とする付記1または2に記載の基地局。
(付記4)前記取得部は、前記転送部によって転送される複数のユーザデータのそれぞれについて前記時間を取得し、
前記検出部は、前記取得部によって取得された各時間と指標値との各比較結果に基づいて前記異常を検出することを特徴とする付記1または2に記載の基地局。
(付記5)前記検出部は、前記取得部によって過去に取得された時間の平均に基づいて前記指標値を設定することを特徴とする付記3または4に記載の基地局。
(付記6)前記検出部による検出結果に基づく前記基地局の制御を行う制御部を備えることを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載の基地局。
(付記7)基地局が備える転送部であってユーザデータを転送する転送部が前記ユーザデータを受信してから前記転送部が前記ユーザデータを送信するまでの時間を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された時間に基づいて前記転送部の異常を検出する検出部と、
を備えることを特徴とする検出装置。
(付記8)ユーザデータを転送する転送部を備える基地局と、
前記転送部が前記ユーザデータを受信してから前記転送部が前記ユーザデータを送信するまでの時間に基づいて前記転送部の異常を検出する検出装置と、
を含むことを特徴とする通信システム。
(付記9)基地局が備える転送部であってユーザデータを転送する転送部が前記ユーザデータを受信してから前記転送部が前記ユーザデータを送信するまでの時間を取得し、
取得された時間に基づいて前記転送部の異常を検出することを特徴とする検出方法。
(付記10)ユーザデータを転送する基地局と、前記基地局との間の伝送路により前記ユーザデータを送受信する通信局と、を含む通信システムの検出装置において、
前記基地局および前記通信局の一方が前記ユーザデータを受信してから前記基地局および前記通信局の他方が前記ユーザデータを受信するまでの時間を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された時間に基づいて前記伝送路の異常を検出する検出部と、
を備えることを特徴とする検出装置。
(付記11)前記基地局は、前記ユーザデータを転送する転送部を備え、
前記取得部は、前記転送部が前記ユーザデータを受信してから前記転送部が前記ユーザデータを送信するまでの第二の時間を取得し、
前記検出部は、前記取得部によって取得された第二の時間に基づいて前記転送部の異常を検出することを特徴とする付記10に記載の検出装置。
(付記12)ユーザデータを転送する基地局と、
前記基地局との間の伝送路により前記ユーザデータを送受信する通信局と、
前記基地局および前記通信局の一方が前記ユーザデータを受信してから前記基地局および前記通信局の他方が前記ユーザデータを受信するまでの時間に基づいて前記伝送路の異常を検出する検出装置と、
を含むことを特徴とする通信システム。
(付記13)ユーザデータを転送する基地局と、前記基地局との間の伝送路により前記ユーザデータを送受信する通信局と、を含む通信システムの検出方法において、
前記基地局および前記通信局の一方が前記ユーザデータを受信してから前記基地局および前記通信局の他方が前記ユーザデータを受信するまでの時間を取得し、
取得された時間に基づいて前記伝送路の異常を検出することを特徴とする検出方法。