JP5565926B2 - 眼科手術方法およびこれに用いるキット - Google Patents

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Description

本発明は、眼科手術方法およびこれに用いるキットに関する。
白内障などの治療のために行われる極小切開眼科手術において、種々の粘弾性物質が手術補助のために用いられている(特許文献1)。また、異なる2種類の粘弾性物質を用いた手術方法も知られている(特許文献1、非特許文献1)。
この2種類の粘弾性物質を用いる方法は「ソフトシェルテクニック」(soft shell technique)とも呼ばれている。この手法は、角膜内皮と接触する位置に、優れた角膜内皮の保護効果を発揮する分散型粘弾性物質を配し、前房内の空間を保持するとともに前記分散型粘弾性物質を角膜内皮に圧着させる位置に、前房内における優れた空間保持効果を発揮する高分子凝集型粘弾性物質を配することによって、優れた手術操作性と角膜内皮保護効果を発揮させようとするものである。
ソフトシェルテクニックは、優れた手術操作性と角膜内皮保護効果が発揮されるという点で優れている一方、熟練を要し、施術する眼科医によっても巧拙がみられるという特徴を有している。また、ソフトシェルテクニックを緑内障手術に用いると、術後の眼圧が上昇する、術後の粘弾性物質の十分な除去が困難である等の点も指摘されている。粘弾性物質が完全除去できないと、術後細菌性眼内炎の温床にもなりうる。したがって、ソフトシェルテクニックは緑内障手術に向いておらず、緑内障手術ではソフトシェルテクニックの前記メリットを享受することができないこととなる。
そこで、眼科手術に携わるすべての眼科医において、より均質かつ安定的に施術でき、また緑内障手術等にも安心して適用できる眼科手術方法が望まれていた。
米国特許第5,273,056号明細書
松原令、他1名、「分散型粘弾性物質と低分子凝集型粘弾性物質を用いた新しい3ステップソフトシェルテクニック」、眼科手術(Japanese Journal of Ophthalmic Surgery)、日本眼科手術学会、2005年7月号、第18巻、第3号、p.417−420,2005年7月30日発行
本発明は、眼科手術に対する熟練や技量の程度を問わず、より均質かつ安定的に、幅広い症例で施行することができる眼科手術方法及びこれに用いるキットを提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、表面張力が異なる少なくとも2種類の粘弾性物質を、特定の順番で、前房内の特定の領域に注入することによって、優れた手術操作性と角膜内皮保護効果を確保しつつ、眼科手術に対する熟練や技量の程度を問わず、極めて容易、均質かつ安定的に施行することができる新たな眼科手術方法を提供するに至った。この方法は、本発明者によって”Dual Visco Sealed-Up Technique”と名づけられた。
また本発明者は、この”Dual Visco Sealed-Up Technique”に用いるための眼科手術補助キットをも提供するに至った。
すなわち本発明は、極小切開眼科手術において、
(1)第1の粘弾性物質を、角膜の側方の切開部位から、当該切開部位の対極側の前房内に、房水を排出させながら注入し、
(2)次いで、前記第1の粘弾性物質よりも表面張力が高い第2の粘弾性物質を、前記切開部位から、未だ第1の粘弾性物質で満たされていない前房内の領域に注入し、
(3)次いで、前記第2の粘弾性物質よりも表面張力が低い第3の粘弾性物質を、前記切開部位から、既に第1の粘弾性物質で満たされている前房内の領域に、既に注入されている第2の粘弾性物質が前記切開部位を閉塞するに至るまで注入するステップを少なくとも含む、極小切開眼科手術方法(以下、「本発明方法1」という。)を提供する。
この粘弾性物質としては、糖鎖を含有する水溶液が好ましい。また糖鎖としては、グリコサミノグリカンが好ましい。またグリコサミノグリカンとしては、ヒアルロン酸又はその塩が好ましい。
このヒアルロン酸又はその塩の重量平均分子量は、60万〜400万であることが好ましい。
また、本発明方法1における上記(1)の第1の粘弾性物質と、上記(3)の第3の粘弾性物質は、同一の粘弾性物質であることが好ましい。
また、第1の粘弾性物質としては重量平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸又はその塩を含有する水溶液が好ましく、第2の粘弾性物質としては重量平均分子量150万〜400万のヒアルロン酸又はその塩(より好ましくは、重量平均分子量190万〜390万のヒアルロン酸又はその塩)を含有する水溶液が好ましい。
また、粘弾性物質としてヒアルロン酸又はその塩の水溶液を用いる場合、当該水溶液中におけるヒアルロン酸又はその塩濃度は、約1%(w/v)であることが好ましい。
また本発明は、極小切開眼科手術において、
(1)前房穿刺によって房水を排出し、
(2)次いで、第2の粘弾性物質を、当該穿刺創から、前房内における当該穿刺創付近の領域に注入し、
(3)次いで、前記第2の粘弾性物質よりも表面張力が低い第1の粘弾性物質を、前記穿刺創から、既に注入されている第2の粘弾性物質が存在する位置よりも遠位の前房内の領域に、当該第2の粘弾性物質が前記穿刺創を閉塞するに至るまで注入するステップを少なくとも含む、極小切開眼科手術方法(以下、「本発明方法2」という。また本発明方法1及び2を併せて単に「本発明方法」という。)を提供する。
この粘弾性物質としては、糖鎖を含有する水溶液が好ましい。また糖鎖としては、グリコサミノグリカンが好ましい。またグリコサミノグリカンとしては、ヒアルロン酸又はその塩が好ましい。
このヒアルロン酸又はその塩の重量平均分子量は、60万〜400万であることが好ましい。
また、第1の粘弾性物質としては重量平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸又はその塩を含有する水溶液が好ましく、第2の粘弾性物質としては重量平均分子量150万〜400万のヒアルロン酸又はその塩(より好ましくは、重量平均分子量190万〜390万)のヒアルロン酸又はその塩を含有する水溶液が好ましい。
また、粘弾性物質としてヒアルロン酸又はその塩の水溶液を用いる場合、当該水溶液中におけるヒアルロン酸又はその塩濃度は、約1%(w/v)であることが好ましい。
また本発明は、少なくとも下記の(A)及び(B)を構成成分として含み、本発明方法のために用いられる眼科手術補助キット(以下、「本発明キット」という。)を提供する;
(A)第1の粘弾性物質、
(B)第1の粘弾性物質よりも表面張力が高い第2の粘弾性物質。
この粘弾性物質としては、糖鎖を含有する水溶液が好ましい。また糖鎖としては、グリコサミノグリカンが好ましい。またグリコサミノグリカンとしては、ヒアルロン酸又はその塩が好ましい。
このヒアルロン酸又はその塩の重量平均分子量は、60万〜400万であることが好ましい。
また、第1の粘弾性物質としては重量平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸又はその塩を含有する水溶液が好ましく、第2の粘弾性物質としては重量平均分子量150万〜400万のヒアルロン酸又はその塩(より好ましくは、重量平均分子量190万〜390万)のヒアルロン酸又はその塩を含有する水溶液が好ましい。
また、粘弾性物質としてヒアルロン酸又はその塩の水溶液を用いる場合、当該水溶液中におけるヒアルロン酸又はその塩濃度は、約1%(w/v)であることが好ましい。
本発明方法(Dual Visco Sealed-Up Technique)によれば、前房深度の保持による優れた手術操作性と優れた角膜内皮保護効果とを維持しつつ、眼科手術に対する熟練や技量の程度を問わず、極めて容易、均質かつ安定的に白内障手術等の眼科手術を行うことができることから極めて有用である。このことは、手術時間の短縮にもつながる。すなわち、本発明方法によれば、良好な術後成績を得ることができ、しかもその手術成果の普遍化が可能になる。したがって、経験が浅いあるいは少ない眼科医でも、手術経験が豊富な眼科医と同等の術後成績を得ることができる。よって本発明方法は、医療水準の格差減少・医療の高品質化・均質化にも寄与するものである。
また本発明方法は、注入された粘弾性物質の除去も容易で術後細菌性眼内炎のリスクも軽減でき、さらに緑内障症例等における術後の眼圧上昇も防止することができるという点においても極めて有用である。すなわち、副作用を軽減できる。したがって、本発明方法によれば、手術を契機とする症状悪化を防止することができる。
さらに、本発明方法は、従来のソフトシェルテクニックでは適用できなかった緑内障症例にも拡大して適用できるという点においても、極めて有用である。
さらに本発明方法によれば、手術操作中の粘弾性物質の漏出も少なく、粘弾性物質の再注入も不要であることから、粘弾性物質の使用量を減少させることができるという経済的メリットもあり、この点でも極めて有用である。
このような本発明方法は、施術により治療できる範囲の拡大はもちろん、施術を受ける患者の負担軽減や手術に対する不安感の除去等にもつながり、患者のクオリティー・オブ・ライフの向上にも多大な寄与をするものである。
また本発明キットについても、このような本発明方法のより迅速な実施を可能とすることから、極めて有用であることはいうまでもない。
本発明方法1の概念図である。 本発明方法2のステップ(2)および(3)の概念図である。
<1>本発明方法1
本発明方法1は、極小切開眼科手術において、
(1)第1の粘弾性物質を、角膜の側方の切開部位から、当該切開部位の対極側の前房内に、房水を排出させながら注入し、
(2)次いで、前記第1の粘弾性物質よりも表面張力が高い第2の粘弾性物質を、前記切開部位から、未だ第1の粘弾性物質で満たされていない前房内の領域に注入し、
(3)次いで、前記第2の粘弾性物質よりも表面張力が低い第3の粘弾性物質を、前記切開部位から、既に第1の粘弾性物質で満たされている前房内の領域に、既に注入されている第2の粘弾性物質が前記切開部位を閉塞するに至るまで注入するステップを少なくとも含む、極小切開眼科手術方法である。
<1>−1 粘弾性物質について
本発明方法1において用いる粘弾性物質は、医薬的に許容される透明な粘弾性物質である限りにおいて特に限定されない。
このような粘弾性物質として、例えば糖鎖を含有する水溶液を例示することができる。
この場合における「水溶液」には、生理的塩類溶液等も包含されることはいうまでもない。
ここで用いることができる糖鎖も、その水溶液が眼科学的に許容される透明な粘弾性物質である限りにおいて特に限定されない。このような糖鎖としてはグリコサミノグリカンを例示することができ、グリコサミノグリカンとしては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸及びこれらの塩を例示することができる。特に、高純度に精製され、医薬として混入が許されない物質を実質的に含有しないものを採用することが好ましい。
本発明方法1において用いる粘弾性物質として特に好ましいのは、ヒアルロン酸又はその塩を含有する水溶液や、ヒアルロン酸又はその塩とコンドロイチン硫酸又はその塩の両方を含有する水溶液である。
また、ここで「塩」とは、医薬的に許容される塩である限りにおいて特に限定されない。このような塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の無機塩基との塩、またはジエタノールアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、アミノ酸塩等の有機塩基との塩のうち、医薬的に許容される塩を用いることができる。アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
ヒアルロン酸又はその塩を用いる場合、好ましい重量平均分子量は60万〜400万である。
このような粘弾性物質は眼科手術補助剤としても市販されており、この市販されている製品をそのまま本発明方法1で用いてもよい。このような製品としては、例えばオペガン(OPEGAN)(いずれも登録商標。参天製薬株式会社発売、生化学工業株式会社製造)、オペガンハイ(OPEGAN Hi)(いずれも登録商標。参天製薬株式会社発売、生化学工業株式会社製造)、ヒーロン(Healon)(登録商標。アドバンスド・メディカル・オプティクス(Advanced Medical Optics;AMO))、ビスコート(VISCOAT)(いずれも登録商標。アルコン(Alcon))、プロビスク(PROVISC)(いずれも登録商標。アルコン(Alcon))、オペリード(OPELEAD)(いずれも登録商標。千寿製薬株式会社発売、株式会社資生堂製造)等を例示することができる。ここに掲げたオペガン、オペガンハイ、プロビスクはいずれもヒアルロン酸ナトリウムの水溶液であり、ビスコートはヒアルロン酸ナトリウムとコンドロイチン硫酸ナトリウムの混合物である。
本発明方法1のステップ(1)における「第1の粘弾性物質」としては、ステップ(2)における「第2の粘弾性物質」よりも表面張力が低いものを用いる。換言すれば、本発明方法1のステップ(2)における「第2の粘弾性物質」は、ステップ(1)で用いる「第1の粘弾性物質」よりも表面張力が高いものを用いる。
また、本発明方法1のステップ(3)では、第2の粘弾性物質よりも表面張力が低い第3の粘弾性物質を用いる。この第3の粘弾性物質は、第2の粘弾性物質よりも表面張力が低いものである限りにおいて特に限定されず、ステップ(1)で用いた第1の粘弾性物質と同一のものであっても、異なるものであってもよい。ステップ(3)において、ステップ(1)で用いる第1の粘弾性物質と同一の粘弾性物質を採用する場合には、本発明方法1を行うにあたって予め第1の粘弾性物質と第2の粘弾性物質の2種類の粘弾性物質を用意しておけばよい。
このように、本発明方法1において用いるそれぞれの粘弾性物質は、その表面張力が「第1の粘弾性物質」<「第2の粘弾性物質」かつ「第2の粘弾性物質」>「第3の粘弾性物質」であればよい。したがって、「第1の粘弾性物質」=「第3の粘弾性物質」であってもよい。このように、表面張力は相対的な関係が把握できれば足りることから、表面張力の測定方法(把握方法)も特に限定されず公知の手法を用いることができる。
本発明方法1においては、ステップ(1)の第1の粘弾性物質と、ステップ(3)の第3の粘弾性物質が同一であることが、手術の効率性や経済面の観点からは好ましい。
第1の粘弾性物質の特に好ましい具体例として、重量平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸又はその塩を含有する水溶液を挙げることができる。
また、第2の粘弾性物質の特に好ましい具体例として、重量平均分子量150万〜400万のヒアルロン酸又はその塩を含有する水溶液を挙げることができる。また、さらに好ましい例として、重量平均分子量190万〜390万のヒアルロン酸又はその塩を含有する水溶液を挙げることができる。
したがって、例えばステップ(1)の第1の粘弾性物質と、ステップ(3)の第3の粘弾性物質とを同一のものとする場合、ステップ(1)の第1の粘弾性物質としては「重量平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸又はその塩を含有する水溶液」を、ステップ(2)の第2の粘弾性物質としては「重量平均分子量150万〜400万(好ましくは190万〜390万)のヒアルロン酸又はその塩を含有する水溶液」を、ステップ(3)の第3の粘弾性物質としては「重量平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸又はその塩を含有する水溶液」を用いることが好ましい。
また、粘弾性物質としてヒアルロン酸又はその塩の水溶液を用いる場合、当該水溶液中におけるヒアルロン酸又はその塩濃度は、約1%(w/v)であることが好ましい。特に1%(w/v)であることが好ましい。
したがって、例えばステップ(1)の第1の粘弾性物質と、ステップ(3)の第3の粘弾性物質とを同一のものとする場合、ステップ(1)の第1の粘弾性物質としては「重量平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸又はその塩を約1%(w/v)含有する水溶液」を、ステップ(2)の第2の粘弾性物質としては「重量平均分子量150万〜400万(好ましくは190万〜390万)のヒアルロン酸又はその塩を約1%(w/v)含有する水溶液」を、ステップ(3)の「第3の粘弾性物質としては「重量平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸又はその塩を約1%(w/v)含有する水溶液」を用いることが好ましい。この濃度がいずれも1%(w/v)であることが特に好ましいことは、前記の通りである。
このような粘弾性物質として、市販のものを用いる場合には、ステップ(1)の第1の粘弾性物質としては前記の「オペガン」(登録商標)を、ステップ(2)の第2の粘弾性物質としては前記の「オペガンハイ」(登録商標)を、ステップ(3)の第3の粘弾性物質としては前記の「オペガン」(登録商標)を用いることが好ましい。
なお「オペガン」(登録商標)は、重量平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸ナトリウムを1%(w/v)含有するリン酸緩衝生理食塩液である。また「オペガンハイ」(登録商標)は、重量平均分子量190万〜390万のヒアルロン酸ナトリウムを1%(w/v)含有するリン酸緩衝生理食塩液である。
<1>−2 具体的方法について
本発明方法1は、極小切開眼科手術において、以下の3つのステップを少なくとも含むことを特徴とする。
(1)第1の粘弾性物質を、角膜の側方の切開部位から、当該切開部位の対極側の前房内に、房水を排出させながら注入するステップ、
(2)次いで、前記第1の粘弾性物質よりも表面張力が高い第2の粘弾性物質を、前記切開部位から、未だ第1の粘弾性物質で満たされていない前房内の領域に注入するステップ、
(3)次いで、前記第2の粘弾性物質よりも表面張力が低い第3の粘弾性物質を、前記切開部位から、既に第1の粘弾性物質で満たされている前房内の領域に、既に注入されている第2の粘弾性物質が前記切開部位を閉塞するに至るまで注入するステップ。
ステップ(1)は、第1の粘弾性物質を、角膜の側方の切開部位から、当該切開部位の対極側の前房内に、房水を排出させながら注入するステップである。
ここで用いる第1の粘弾性物質については前記の通りである。ステップ(1)では、この第1の粘弾性物質を、極小切開眼科手術における角膜側方の切開部位から前房内に注入する。第1の粘弾性物質が注入される位置は、前房内における当該切開部位の対極側(前房内における当該切開部位から遠い側)である。したがって、当該粘弾性物質を注入するために用いる注射針等のデバイスの先端を、前房内における当該切開部位の対極側(前房内における当該切開部位から遠い側)に第1の粘弾性物質が注入されるような位置に配置した上で、注入を行えばよい。
注入する第1の粘弾性物質の容量は、個々の患者における前房のサイズや手術目的等に応じて当業者が適宜設定することができる。例えば成人の白内障の手術を行う場合の一例として、角膜を真上から観察したときの当該角膜を「円」と捉えたときに、その円の面積の概ね5〜6割程度が満たされることとなる容量を例示することができる。もちろん、この容量に限定されるものではない。
なお第1の粘弾性物質を徐々に注入していくと、これに対応して前房内の房水が角膜側方の切開部位から徐々に排出されることとなる。「房水を排出させながら注入」とはこのことを意味している。
ステップ(2)は、ステップ(1)に引き続いて、前記第1の粘弾性物質よりも表面張力が高い第2の粘弾性物質を、前記切開部位から、未だ第1の粘弾性物質で満たされていない前房内の領域に注入するステップである。
ここで用いる第2の粘弾性物質については前記の通りである。ステップ(2)では、この第2の粘弾性物質を、前記切開部位から前房内に注入する。この第2の粘弾性物質が注入される位置は、前房内において未だ第1の粘弾性物質で満たされていない領域である。ステップ(1)によって、当該切開部位の対極側(前房内における当該切開部位から遠い側)の前房内が第1の粘弾性物質によって満たされている。したがって、ステップ(2)において第2の粘弾性物質を注入すべき位置は、当該切開部位側の前房内の領域ということになる。したがって、当該粘弾性物質を注入するために用いる注射針等のデバイスの先端を、前房内において未だ第1の粘弾性物質で満たされていない領域(当該切開部位側の前房内の領域)に第2の粘弾性物質が注入されるような位置に配置した上で、注入を行えばよい。
注入する第2の粘弾性物質の容量は、後述するステップ(3)によって前記切開部位が閉塞されるに足る容量であればよい。したがって、一般に、ステップ(1)で注入された第1の粘弾性物質の容量よりもかなり少ない量で足りることとなる。具体的な容量は、切開のサイズ、個々の患者における前房のサイズや手術目的等に応じて当業者が適宜設定することができる。例えば成人の白内障の手術を行う場合の一例として、角膜を真上から観察したときの当該角膜を「円」と捉えたときに、その円の面積の概ね1〜2割程度が満たされることとなる容量を例示することができる。もちろん、この容量に限定されるものではない。
なお第2の粘弾性物質を注入する場合にも、これに対応して前房内の房水が角膜側方の切開部位から排出されることがあるのはもちろんである。
ステップ(3)は、ステップ(2)に引き続いて、前記第2の粘弾性物質よりも表面張力が低い第3の粘弾性物質を、前記切開部位から、既に第1の粘弾性物質で満たされている前房内の領域に、既に注入されている第2の粘弾性物質が前記切開部位を閉塞するに至るまで注入するステップである。
ここで用いる第3の粘弾性物質については前記の通りである。ステップ(3)では、この粘弾性物質を、前記切開部位から前房内に注入する。この粘弾性物質が注入される位置は、前房内において既に第1の粘弾性物質で満たされている領域である。ステップ(1)によって、当該切開部位の対極側(前房内における当該切開部位から遠い側)の前房内が第1の粘弾性物質によって満たされているので、ステップ(3)においては粘弾性物質をこの領域に再度注入すればよいことになる。したがって、当該粘弾性物質を注入するために用いる注射針等のデバイスの先端を、前房内において既に第1の粘弾性物質で満たされている領域に注入されるような位置に配置した上で、注入を行えばよい。
ここで注入する粘弾性物質の容量は、既に注入されている第2の粘弾性物質が前記切開部位を閉塞するに至るまでの容量である。したがって、具体的な容量は、既に注入されている第1の粘弾性物質及び第2の粘弾性物質のそれぞれの容量、切開のサイズ、個々の患者における前房のサイズ等に依存することとなる。
ステップ(3)で粘弾性物質を注入することにより、房水が当該切開部位から排出される。そして、この房水の流れに乗って既に注入されている第2の粘弾性物質が当該切開部位に向かって移動する。したがって、ステップ(3)においては、この第2の粘弾性物質の動きを観察しながら、この第2の粘弾性物質が前記切開部位を閉塞するに至るまで粘弾性物質を注入すればよい。
以上のステップの概念図を図1に示す。左から順にステップ(1)、ステップ(2)、ステップ(3)に対応する。
本発明方法1により、第2の粘弾性物質によって切開部位が閉塞された状態で、前房内の空間が第1の粘弾性物質あるいは、ステップ(3)において第1の粘弾性物質とは異なる粘弾性物質を注入した場合には、第1の粘弾性物質と当該粘弾性物質によって前房深度が良好に保持されるため、その後の眼科手術の操作性も良好で、かつ優れた角膜内皮保護効果も維持される。しかも、極めて簡便な方法であることから、眼科手術に対する熟練や技量の程度を問わず、均質かつ安定的に眼科手術を行うことができる。
なお、本発明方法1は、あらゆる極小切開眼科手術に用いることができるが、極小切開白内障手術に用いることが好ましい。
<2>本発明方法2
本発明方法2は、極小切開眼科手術において、
(1)前房穿刺によって房水を排出し、
(2)次いで、第2の粘弾性物質を、当該穿刺創から、前房内における当該穿刺創付近の領域に注入し、
(3)次いで、前記第2の粘弾性物質よりも表面張力が低い第1の粘弾性物質を、前記穿刺創から、既に注入されている第2の粘弾性物質が存在する位置よりも遠位の前房内の領域に、当該第2の粘弾性物質が前記穿刺創を閉塞するに至るまで注入するステップを少なくとも含む、極小切開眼科手術方法である。
<2>−1 粘弾性物質について
本発明方法2において用いる粘弾性物質(「第2の粘弾性物質」及び「第1の粘弾性物質」)については、本発明方法1(<1>−1)と同じである。
<2>−2 具体的方法について
本発明方法2は、極小切開眼科手術において、以下の3つのステップを少なくとも含むことを特徴とする。
(1)前房穿刺によって房水を排出し、
(2)第2の粘弾性物質を、当該穿刺創から、前房内における当該穿刺創付近の領域に注入するステップ、
(3)次いで、前記第2の粘弾性物質よりも表面張力が低い第1の粘弾性物質を、前記穿刺創から、既に注入されている第2の粘弾性物質が存在する位置よりも遠位の前房内の領域に、当該第2の粘弾性物質が前記穿刺創を閉塞するに至るまで注入するステップ。
ステップ(2)は、第2の粘弾性物質を、当該穿刺創から、前房内における当該穿刺創付近の領域に注入するステップである。
ここで用いる第2の粘弾性物質は、本発明方法1において説明した「第2の粘弾性物質」と同じである。ステップ(1)は、極小切開眼科手術において、前房穿刺によって房水を排出する。ステップ(2)は、前房穿刺によって房水が排出されることを確認後、当該穿刺創から第2の粘弾性物質を前房内に注入する。第2の粘弾性物質が注入される位置は、前房内における当該穿刺創付近の領域である。したがって、当該粘弾性物質を注入するために用いる注射針等のデバイスの先端を、前房内における当該穿刺創付近の領域に第2の粘弾性物質が注入されるような位置に配置した上で、注入を行えばよい。
注入する第2の粘弾性物質の容量は、後述するステップ(3)によって前記穿刺創が閉塞されるに足る容量であればよい。したがって、一般に、後述するステップ(3)で注入される第1の粘弾性物質の容量よりもかなり少ない量で足りることとなる。具体的な容量は、穿刺創のサイズ、個々の患者における前房のサイズや手術目的等に応じて当業者が適宜設定することができる。例えば成人の白内障の手術を行う場合の一例として、角膜を真上から観察したときの当該角膜を「円」と捉えたときに、その円の面積の概ね1〜2割程度が満たされることとなる容量を例示することができる。もちろん、この容量に限定されるものではない。
なお第2の粘弾性物質を注入する場合に、これに対応して前房内の房水が穿刺創から排出されることがあるのはもちろんである。
ステップ(3)は、ステップ(2)に引き続いて、前記第2の粘弾性物質よりも表面張力が低い第1の粘弾性物質を、前記穿刺創から、既に注入されている第2の粘弾性物質が存在する位置よりも遠位の前房内の領域に、当該第2の粘弾性物質が前記穿刺創を閉塞するに至るまで注入するステップである。
ここで用いる第1の粘弾性物質は、本発明方法1において説明した「第1の粘弾性物質」と同じである。ステップ(2)では、この第1の粘弾性物質を、前記穿刺創から前房内に注入する。この第1の粘弾性物質が注入される位置は、既に注入されている第2の粘弾性物質が存在する位置よりも遠位の領域である。この領域は、前房内において未だ第2の粘弾性物質で満たされていないことはいうまでもない。
したがって、当該粘弾性物質を注入するために用いる注射針等のデバイスの先端を、既に注入されている第2の粘弾性物質が存在する位置よりも遠位の領域(前房内において未だ第2の粘弾性物質で満たされていない)に第1の粘弾性物質が注入されるような位置に配置した上で、注入を行えばよい。この際、当該デバイスの先端を、既に注入されている第2の粘弾性物質に突き刺した状態で注入を行ってもよい。
ここで注入する第1の粘弾性物質の容量は、既に注入されている第2の粘弾性物質が
が前記穿刺創を閉塞するに至るまでの容量である。
したがって、具体的な容量は、既に注入されている第2の粘弾性物質の容量、切開のサイズ、個々の患者における前房のサイズ等に依存することとなる。
第1の粘弾性物質を注入することにより、房水が当該穿刺創から排出される。そして、この房水の流れに乗って既に注入されている第2の粘弾性物質が当該穿刺創に向かって移動する。したがって、ステップ(2)においては、この第2の粘弾性物質の動きを観察しながら、この第2の粘弾性物質が前記穿刺創を閉塞するに至るまで粘弾性物質を注入すればよい。
以上のステップ(2)および(3)の概念図を図2に示す。左から順にステップ(2)、ステップ(3)に対応する。
本発明方法2によっても、第2の粘弾性物質によって穿刺創が閉塞された状態で、前房内の空間が第1の粘弾性物質によって前房深度が良好に保持されるため、その後の眼科手術の操作性も良好で、かつ優れた角膜内皮保護効果も維持される。しかも、極めて簡便な方法であることから、眼科手術に対する熟練や技量の程度を問わず、均質かつ安定的に眼科手術を行うことができる。
なお、本発明方法2も、あらゆる極小切開眼科手術に用いることができるが、極小切開白内障手術に用いることが好ましい。
<3>本発明キット
本発明キットは、少なくとも下記の(A)及び(B)を構成成分として含み、本発明方法のために用いられる眼科手術補助キットである;
(A)第1の粘弾性物質、
(B)第1の粘弾性物質よりも表面張力が高い第2の粘弾性物質。
上記(A)における「第1の粘弾性物質」及び上記(B)における「第2の粘弾性物質」については、本発明方法1(<1>−1)と同じである。
上記(A)及び(B)は、それぞれ別体の容器に充填・密封し、これをセットとして提供することができる。容器の種類も特に限定されず、注射用シリンジ、アンプル、バイアル等、医薬品を充填・密封して流通・保存が可能な各種容器のなかから、当業者が適宜選択することができる。
例えば、上記(A)及び(B)を注射用シリンジに充填して提供する場合には、前記の通り別々の注射用シリンジに充填・密封してこれを1セットとして提供しても良いことはもちろんである。さらに、複数の注射用シリンジが一体化したもの(例えば、2本の注射用シリンジを平行に結合させることにより一体化させ、そのうちの1本には上記(A)を、もう1本には上記(B)をそれぞれ充填・密封し、(A)及び(B)を選択して注入できるようにしたもの)や、1つの注射用シリンジの内部が複数室に分かれているもの(例えば、1つの注射用シリンジの内部が2室に分かれており、そのうちの1室には上記(A)を、もう1室には上記(B)をそれぞれ充填・密封し、(A)及び(B)を選択して注入できるようにしたもの)を用いてもよい。
本発明キットは、本発明方法のために用いられる眼科手術補助キットである。したがって、本発明キットは前記の本発明方法に従って使用することができる。
具体的には、本発明キットを本発明方法1のために用いる場合には、本発明方法1におけるステップ(1)及び(3)において上記(A)(第1の粘弾性物質)を用い、ステップ(2)において上記(B)(第2の粘弾性物質)を用いればよい。
また、本発明キットを本発明方法2のために用いる場合には、本発明方法2におけるステップ(2)において上記(B)(第2の粘弾性物質)を用い、ステップ(3)において上記(A)(第1の粘弾性物質)を用いればよい。
本発明キットは、本発明方法としてあらゆる極小切開眼科手術に用いることができるが、極小切開白内障手術に用いられるものであることが好ましい。
また本発明キットは、上記(A)及び(B)を少なくとも構成成分として含んでいればよい。すなわち、更に他の構成成分を含むものであってもよい。例えば、本発明キットが注射用シリンジの形態で提供される場合には、使用時に当該注射用シリンジに連結されることとなる各種付属物を更に含んでいてもよい。また、本発明方法1や2に係る方法が記載された説明書等を更に含んでいてもよいことはいうまでもない。
また、本発明方法のいずれのステップにおいても(本発明キットにおいては、構成成分(A)及び(B)のいずれにおいても)、粘弾性物質として「糖鎖を含有する水溶液」を用い、当該糖鎖が同種のものであり、かつ、当該糖鎖の水溶液中の濃度が同一である場合には、本出願書類における「表面張力」の語を、「水溶液中に含有されている糖鎖の重量平均分子量」の語に置き換えることができる。例えば、本発明キットの構成成分(A)及び(B)ともに1%(w/v)のヒアルロン酸又はその塩の水溶液を用いる場合には、用いるべき構成成分(B)は、「第1の粘弾性物質(A)よりも水溶液中に含有されているヒアルロン酸又はその塩の重量平均分子量が高い第2の粘弾性物質」と読み替えることができる。つまりこの場合、第1の粘弾性物質(A)中に含有されているヒアルロン酸又はその塩よりも重量平均分子量が高いヒアルロン酸又はその塩の水溶液を、構成成分(B)における第2の粘弾性物質として用いればよい。本発明方法1及び2においても同様である。
また粘弾性物質は、複数種のものを混合したものでもよく、これによって症例に応じて粘弾性物質の動態をコントロールすることもできる。例えば、重量平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸又はその塩を約1%(w/v)含有する水溶液(例えば「オペガン」(登録商標))と、重量平均分子量190万〜390万のヒアルロン酸又はその塩を約1%(w/v)含有する水溶液(例えば「オペガンハイ」(登録商標))とを用い、これらを混合する場合には、混合する際の前者の分量を多くすれば角膜内側の滞留(角膜内皮保護効果)を高めることができ、後者の分量を多くすれば空間保持効果を高めることができるとともに、一塊で吸引除去することもできる。このような特性を踏まえて、症例に応じて適宜調製した混合物を本発明方法の各ステップにおける粘弾性物質として用いてもよく、また本発明方法に限らず広く極小切開眼科手術において用いてもよい。
本発明キットにおいても、上記(A)及び(B)が充填・密封された容器に加え、これらを混合できる容器をさらに構成成分として含んでいてもよい。もちろん、この混合可能な容器は注射用シリンジであってもよく、前記と同様に、上記(A)及び(B)が充填・密封された複数の注射用シリンジと一体化させてもよく、1つの注射用シリンジの内部にさらに混合用の室を設けたものを用いてもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に詳説する。
<1>本発明方法1
本発明方法1におけるステップ(1)の第1の粘弾性物質として「オペガン」(登録商標。参天製薬株式会社発売、生化学工業株式会社製造)を、ステップ(2)の第2の粘弾性物質として「オペガンハイ」(登録商標。参天製薬株式会社発売、生化学工業株式会社製造)を、ステップ(3)の第3の粘弾性物質として前記の「オペガン」(登録商標)を用いた。なお、ここで用いた「オペガン」中には重量平均分子量90万のヒアルロン酸ナトリウムが、「オペガンハイ」には重量平均分子量240万のヒアルロン酸ナトリウムがそれぞれ含有されている。
ブタ(計20眼)に対し、本発明方法1により施術したところ、いずれも前房深度が良好に保持され、その後の眼科手術の操作性も良好で、均質かつ安定的な施術が極めて容易かつ短時間に可能であった。また、手術操作中の粘弾性物質の漏出も少なく、粘弾性物質の再注入も不要であった。しかも、術後には粘弾性物質を容易かつ十分に除去することができ、眼圧上昇等の特段の副作用も観察されず、予後も極めて良好であった。
白内障患者300名に対し、本発明方法1により施術したところ、いずれも前房深度が良好に保持され、その後の眼科手術の操作性も良好で、均質かつ安定的な施術が極めて容易かつ短時間に可能であった。また、手術操作中の粘弾性物質の漏出も少なく、粘弾性物質の再注入も不要であった。しかも、術後には粘弾性物質を容易かつ十分に除去することができ、眼圧上昇等の特段の副作用も観察されず、予後も極めて良好であった。
<2>本発明方法2
本発明方法2におけるステップ(2)の第2の粘弾性物質として前記の「オペガンハイ」(登録商標)を、ステップ(3)の第1の粘弾性物質として前記の「オペガン」(登録商標)を用いた。
ブタ(計10眼)に対し、本発明方法2により施術したところ、いずれも前房深度が良好に保持され、その後の眼科手術の操作性も良好で、均質かつ安定的な施術が極めて容易かつ短時間に可能であった。また、手術操作中の粘弾性物質の漏出も少なく、粘弾性物質の再注入も不要であった。しかも、術後には粘弾性物質を容易かつ十分に除去することができ、眼圧上昇等の特段の副作用も観察されず、予後も極めて良好であった。
白内障患者80名に対し、本発明方法2により施術したところ、いずれも前房深度が良好に保持され、その後の眼科手術の操作性も良好で、均質かつ安定的な施術が極めて容易かつ短時間に可能であった。また、手術操作中の粘弾性物質の漏出も少なく、粘弾性物質の再注入も不要であった。しかも、術後には粘弾性物質を容易かつ十分に除去することができ、眼圧上昇等の特段の副作用も観察されず、予後も極めて良好であった。
<3>本発明キット
以下の構成成分からなる本発明キットを製造した。
(1)重量平均分子量90万のヒアルロン酸ナトリウムを1%(w/v)含有するリン酸緩衝生理食塩液(注射用シリンジに充填したもの;オペガン(登録商標)に相当するもの)・・・・1本
(2)重量平均分子量240万のヒアルロン酸ナトリウムを1%(w/v)含有するリン酸緩衝生理食塩液(注射用シリンジに充填したもの;オペガンハイ(登録商標)に相当するもの・・・1本
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱すること無く様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2008年1月30日出願の米国仮出願61/024,589に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。

Claims (9)

  1. 少なくとも下記の(A)〜(C)の粘弾性物質を含む極小切開眼科手術のために用いられる眼手術補助キット。
    (A)角膜の側方の切開部位から、当該切開部位の対極側の前房内に、房水を排出させながら注入させるための第1の粘弾性物質。
    (B)前記切開部位から、未だ第1の粘弾性物質で満たされていない前房内の領域であって、当該切開部側の前房内の領域に注入させるための、第1の粘弾性物質よりも表面張力が高い第2の粘弾性物質。
    (C)前記切開部位から、既に第1の粘弾性物質で満たされている前房内の領域に、既に注入されている第2の粘弾性物質が前記切開部位を閉塞するにいたるまで注入させるための、前記第2の粘弾性物質よりも表面張力が低い第3の粘弾性物質。
  2. 粘弾性物質が、糖鎖を含有する水溶液である、請求項1に記載の眼手術補助キット。
  3. 糖鎖がグリコサミノグリカンである、請求項2に記載の眼手術補助キット。
  4. グリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸又はその塩である、請求項3に記載の眼手術補助キット。
  5. 第1の粘弾性物質が重量平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸又はその塩を含有する水溶液である、請求項4に記載の眼手術補助キット。
  6. 第2の粘弾性物質が、重量平均分子量150万〜400万のヒアルロン酸又はその塩を含有する水溶液である、請求項4又は5に記載の眼科手術補助キット。
  7. ヒアルロン酸又はその塩の溶液の濃度が、1%(w/v)である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の眼手術補助キット。
  8. 第1の粘弾性物質及び第3の粘弾性物質が重量平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸又はその塩を1%(w/v)含有する水溶液からなり、第2の粘弾性物質が重量平均分子量150万〜390万のヒアルロン酸又はその塩を1%(w/v)含有する水溶液からなる、ことを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項に記載の眼手術補助キット。
  9. 第1の粘弾性物質、第2の粘弾性物質及び第3の粘弾性物質がそれぞれ注射用シリンジに充填されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の眼科手術補助キット。
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