JP5552087B2 - Ips又はffs型液晶表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は、熱ムラが軽減されたIPS又はFFS型液晶表示装置に関する。
近年、IPS型及びFFS型液晶表示装置は、テレビ用表示装置等、その用途が拡大している。従来、垂直配向したディスコティック液晶化合物を含有する位相差層が、IPS型液晶表示装置の視野角特性の改善に寄与することが知られている(特許文献1及び2)。前記位相差層を利用することで、簡易な構成で、視野角コントラストを顕著に改善することができる。
ところで液晶表示装置は、その内部に、液晶セルを含む液晶パネルと、液晶パネルに光を入射するバックライトとを有する。液晶パネルには、液晶セル以外に、偏光板、位相差板等の種々の部材が配置されているが、基本的に、バックライトに近い部材の温度が高くなっている。バックライトの近くに配置される偏光板等の部材は、バックライトからの熱で歪みやすく、これらの部材の歪みにより、輝度ムラが生じる場合がある。近年、表示装置については薄型化の要請が高く、液晶パネルとバックライトとの距離は益々近くなり、一方で要求される表示特性も益々高くなっている。部材の熱歪みに起因する輝度ムラを解決することは、薄型化及び表示特性の改善において重要である。
高温・高湿下においても安定した位相値を確保できる光学フィルムとして、所定の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を含有する透明保護フィルムを偏光子の両面に有する偏光板と、所定の光学特性の位相差フィルムとを所定の関係で積層した光学フィルムが提案されている(特許文献3)。
特許第4253259号公報 特開2005−309382号公報 特開2004−4641号公報
本発明は熱による輝度ムラが軽減されたIPS型及びFFS型液晶表示装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明者が鋭意検討した結果、バックライトからの熱による偏光板の寸法変化、及びそれに起因する輝度ムラは、バックライト側偏光子及び表示面側偏光子のそれぞれと、液晶セルとの間に配置されている偏光子保護フィルム等のポリマーフィルムの性質の相対的関係が影響していることを見出した。この知見に基づいてさらに検討を重ね、ポリマーフィルムの厚み、弾性率及び熱膨張率がファクターとなり、これらの組み合わせから導かれる総合的性質が、所定の関係を満足する場合に、前記課題を解決し得るとの知見を得、本発明を完成するに至った。
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 第1及び第2の偏光膜、
前記偏光膜の間に配置される液晶セル、
前記第1の偏光膜と前記液晶セルとの間に配置される第1のポリマーフィルム、及び
前記第2の偏光膜と前記液晶セルとの間に配置される第2のポリマーフィルム、
を有するIPS型又はFFS型液晶表示装置であって、
前記第1の偏光膜の後方にバックライトが配置され、
前記第1及び第2のポリマーフィルムがそれぞれ面内遅相軸を有する場合は、それぞれ前記第1及び第2の偏光膜の吸収軸と平行もしくは直交にして配置され、
前記第1及び第2のポリマーフィルムの厚みd1及びd2(単位μm)、弾性率EL1及びEL2(単位:N/m2)、並びに膨張率EX1及びEX2(K-1)が、下記関係式を満足することを特徴とするIPS型又はFFS型液晶表示装置:
1×EL1×EX1 < d2×EL2×EX2
[2] 前記第1のポリマーフィルムが、セルロースアシレート系フィルムである[1]のIPS型又はFFS型液晶表示装置。
[3] 前記第1のポリマーフィルムの波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が−20〜20nmであり、及び同波長における厚み方向レターデーションRth(550)が50〜140nmである[1]又は[2]のIPS型又はFFS型液晶表示装置。
[4] 前記第1のポリマーフィルムと前記液晶セルとの間、又は前記第1のポリマーフィルムと前記第1の偏光膜との間に、ディスコティック液晶化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を有する[1]〜[3]のいずれかのIPS型又はFFS型液晶表示装置。
[5] 前記光学異方性層が垂直配向状態に固定された前記ディスコティック液晶化合物の分子を含有する[4]のIPS型又はFFS型液晶表示装置。
[6] 前記光学異方性層が、前記第1のポリマーフィルムの遅相軸と平行又は直交する遅相軸を有し、該光学異方性層が、前記第1のポリマーフィルムと前記液晶セルとの間に配置される[5]のIPS型又はFFS型液晶表示装置。
[7] 前記光学異方性層が、前記第1のポリマーフィルムの遅相軸と平行する遅相軸を有し、該光学異方性層が、前記第1のポリマーフィルムと前記第1の偏光膜との間に配置される[6]のIPS型又はFFS型液晶表示装置。
[8] 前記第2のポリマーフィルムが、環状オレフィン系ポリマーフィルム、又はアクリル系ポリマーフィルムである[1]〜[7]のいずれかのIPS型又はFFS型液晶表示装置。
[9] 前記アクリル系ポリマーフィルムが、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及びグルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーを含有するアクリル系ポリマーフィルムである[8]のIPS又はFFS型液晶表示装置。
[10] 前記第2のポリマーフィルムのRe(550)の絶対値|Re(550)|が10nm以下であり、且つRth(550)の絶対値|Rth(550)|が30nm以下である[1]〜[9]のいずれかのIPS型又はFFS型液晶表示装置。
本発明によれば、熱による輝度ムラが軽減されたIPS型及びFFS型液晶表示装置を提供することを課題とする。
本発明のIPS又はFFS型液晶表示装置の一例の断面模式図である。 本発明のIPS又はFFS型液晶表示装置の他の例の断面模式図である。 本発明のIPS又はFFS型液晶表示装置の他の例の断面模式図である。 本発明のIPS又はFFS型液晶表示装置の他の例の断面模式図である。 本発明に利用可能な画素領域例を示す概略図である。
以下、本発明の液晶表示装置の一実施形態及びその構成部材について順次説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、光学的な軸の関係については、本発明が属する技術分野において許容される誤差を含むものとする。具体的には、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10゜未満の範囲内であることを意味し、±5゜未満であることが好ましく、±3゜未満であることがより好ましい。また、「垂直配向」とは、厳密な垂直の角度よりも±20゜未満の範囲内であることを意味し、±15゜未満であることが好ましく、±10゜未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。さらに、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
本明細書において「偏光板」とは、特に断らない限り、長尺の偏光板及び液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された(本明細書において、「裁断」には「打ち抜き」及び「切り出し」等も含むものとする)偏光板の両者を含む意味で用いられる。また、本明細書では、「偏光膜」及び「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体を意味するものとする。
また、本実施形態の説明において「分子対称軸」とは、分子が回転対称軸を有する場合は、当該対称軸を指すが、厳密な意味で、分子が回転対称性であることを要求するものではない。一般的に、ディスコティック液晶性化合物において、分子対称軸は、円盤面の中心を貫く円盤面に対して垂直な軸と一致する。ダイレクターと呼ぶこともある。
また、本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、又は測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(III)よりRthを算出することもできる。
Figure 0005552087
・・・・・・式(A)
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(III)
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
Re、Rthの測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
(チルト角の測定)
ディスコティック液晶化合物を配向させた光学異方性層において、光学異方性層の一方の面におけるチルト角(ディスコティック液晶化合物における物理的な対象軸が光学異方性層の界面となす角度をチルト角とする)θ1及び他方の面のチルト角θ2を、直接的にかつ正確に測定することは困難である。そこで本明細書においては、θ1及びθ2は、以下の手法で算出する。本手法は本発明の実際の配向状態を正確に表現していないが、光学フィルムのもつ一部の光学特性の相対関係を表す手段として有効である。
本手法では算出を容易にすべく、下記の2点を仮定し、位相差層(光学異方性層ともいう)の2つの界面におけるチルト角とする。
1.光学異方性層はディスコティック液晶化合物を含む層で構成された多層体と仮定する。更に、それを構成する最小単位の層(ディスコティック液晶化合物のチルト角は該層内において一様と仮定)は光学的に一軸と仮定する。
2.各層のチルト角は光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化すると仮定する。
具体的な算出法は下記のとおりである。
(1)各層のチルト角が光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化する面内で、光学異方性層への測定光の入射角を変化させ、3つ以上の測定角でレターデーション値を測定する。測定及び計算を簡便にするためには、光学異方性層に対する法線方向を0°とし、−40°、0°、+40°の3つの測定角でレターデーション値を測定することが好ましい。このような測定は、KOBRA−21ADH及びKOBRA−WR(王子計測器(株)製)、透過型のエリプソメーターAEP−100((株)島津製作所製)、M150及びM520(日本分光(株)製)、ABR10A(ユニオプト(株)製)で行うことができる。
(2)上記のモデルにおいて、各層の常光の屈折率をno、異常光の屈折率をne(neは各々すべての層において同じ値、noも同様とする)、及び多層体全体の厚みをdとする。更に各層におけるチルト方向とその層の一軸の光軸方向とは一致するとの仮定の元に、光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1及び他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1及びθ2を算出する。
ここで、no及びneは文献値、カタログ値等の既知の値を用いることができる。値が未知の場合はアッベ屈折計を用いて測定することもできる。光学異方性層の厚みは、光学干渉膜厚計、走査型電子顕微鏡の断面写真等により測定数することができる。
本発明は、熱によって生じる輝度ムラが軽減されたIPS型又はFFS型液晶表示装置に関する。従来、IPS型又はFFS型液晶表示装置には、斜め方向において偏光子の透過軸が直交配置からずれることによって生じる光漏れを、所定の位相差の部材(例えば負のAプレートと負のCプレートの積層体)を、液晶セルと偏光膜との間に配置して光学補償し、軽減している。しかし、バックライトからの熱によって、偏光膜や位相差部材が変形すると、それによって輝度ムラが発生するという問題があった。より具体的には、バックライトの熱によりバックライトにより近い位置に配置されたフィルムが、表示面側に配置されているフィルムより膨張することにより、液晶セルが凹型に変形し、その液晶セルの反りに起因して輝度ムラが発生するという問題があった。本発明では、バックライト側及び表示面側にそれぞれ配置される偏光膜と、液晶セルとの間に配置される保護フィルム等のポリマーフィルムについて、厚み、弾性率及び熱膨張率の組み合わせによって特定される総合的な特性を、相対的に規定することで、従来と同様に光学補償を達成しつつ、熱による輝度ムラを軽減している。第1及び第2のポリマーフィルムの位相差については特に制限はなく、即ち、本発明の効果は、いずれの光学補償を採用するIPS型又はFFS型液晶表示装置の態様についても得られるものである。
具体的には、本発明の特徴の一つは、バックライト側に配置される第1の偏光膜と液晶セルとの間に配置される第1のポリマーフィルム、及び表示面側に配置される第2の偏光膜と液晶セルとの間に配置される第2のポリマーフィルムそれぞれの、厚みd1及びd2(単位μm)、弾性率EL1及びEL2(単位:N/m2)、並びに膨張率EX1及びEX2(K-1)が、下記関係式を満足することにある。
1×EL1×EX1 < d2×EL2×EX2
ポリマーフィルムの厚み、弾性率及び熱膨張率の積は、ポリマーフィルムの加温時の膨張応力(他部材を変形させ得る力の大きさ)の程度を示す指標となるものである。厚み、弾性率及び熱膨張率の積が上記関係式を満足することによって、本発明の効果が得られることの機構については明確ではないが、本発明者は、温度が変化しても応力の発生し難い層がバックライト側(高温側)に配置されることにより、熱ムラが発生し難いと予測している。
上記関係式を満足する限り、第1及び第2のポリマーフィルムの材料については特に制限はなく、互いに同一のポリマーを主成分として含有していてもよいし、互いに異なるポリマーを主成分として含有していてもよい。第1の偏光膜と液晶セルとの間、及び第2のポリマーフィルムと液晶セルとの間には、他の部材が配置されていてもよい。
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明のIPS又はFFS型液晶表示装置の一実施形態の断面模式図である。
図1に示す液晶表示装置は、一対の第1の偏光膜16及び第2の偏光膜18と、その間に配置されるIPS又はFFS型液晶セルLCとを少なくとも備える。第1の偏光膜16のさらに外側には、バックライト26が配置されていて、第1の偏光膜16よりバックライト26からの光が入射されるように構成されている。
図1の液晶表示装置では、液晶セルLCは、第1基板12、ネマチック液晶材料からなる液晶層10、及び第2基板14を有する。液晶層10は、黒表示時に該ネマチック液晶材料の液晶分子が一対の基板12及び14の表面に対して平行に配向するIPS又はFFS型液晶セルである。液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・dは透過モードにおいて、ねじれ構造を持たないIPS型では0.2〜0.4μmの範囲が、FFS型では0.3〜0.5μmの範囲が最適値となる。この範囲では白表示輝度が高く、黒表示輝度が小さいことから、明るくコントラストの高い表示装置が得られる。基板12及び14の液晶層10に接触する表面には、配向膜(不図示)が形成されていて、液晶分子を基板の表面に対して略平行に配向させるとともに配向膜上に施されたラビング処理方向等により、電圧無印加状態もしくは低印加状態における液晶分子配向方向が制御されている。また、基板12若しくは14の内面には、液晶分子に電圧印加可能な電極(図1中不図示)が形成されている。
液晶層10は、電圧を無印加の状態では、液晶分子はねじれ配向せずに、例えば、基板12及び14の内面に形成された配向膜のラビング処理の方向等によって制御され、一定の水平方向に配向している。電圧を印加すると、面内方向に形成された電界によって、液晶分子が水平に所定の角度だけ回転して、所定の方向に配向する。電極の形状及び配置については種々提案されていて、いずれも利用することができる。図5に、液晶層10の1画素領域中の液晶分子の配向の一例を模式的に示す。図5は、液晶層10の1画素に相当する程度の極めて小さい面積の領域中の液晶分子の配向を、基板12及び14の内面に形成された配向膜のラビング方向4、及び基板12及び14の内面に形成された液晶分子に電圧印加可能な電極2及び3とともに示した模式図の一例である。電界効果型液晶として正の誘電異方性を有するネマチック液晶を用いてアクティブ駆動を行った場合の、電圧無印加状態若しくは低印加状態での液晶分子配向方向は5a及び5bであり、この時に黒表示が得られる。電極2及び3間に印加されると、電圧に応じて液晶分子は6a及び6b方向へとその配向方向を変える。通常、この状態で白表示を行う。
再び図1において、第1の偏光膜16と液晶セルLCとの間には、第1のポリマーフィルム20及び位相差層22との積層体である光学補償イルムFが配置されている。一方、第2の偏光膜18と液晶セルLCとの間には、第2のポリマーフィルム24が配置されている。第1のポリマーフィルム20及び位相差層22はそれぞれ、面内に遅相軸20a及び22aを有する。これらの遅相軸20a及び22aを互いに平行にして、且つ第1の偏光膜16の吸収軸16aと直交にして配置されている。
第1偏光膜16の吸収軸16aと、第2偏光膜18の吸収軸18aとは、互いに直交に配置されている。電圧無印加時には、液晶層10の液晶分子は、液晶層10の遅相軸10aが、第2偏光膜18の吸収軸18aと平行になるように水平配向している。従って、バックライト26から入射した光は、偏光状態をほぼ維持したまま液晶層10を通過し、第1偏光膜16の吸収軸16aで遮光され、黒状態になる。しかし、バックライト26から入射した光のうち、斜め方向から入射した光に対しては、偏光膜16及び18の吸収軸16a及び18aが直交関係からずれているために、光漏れが生じ、即ち視野角コントラストを低下させることになる。第1のポリマーフィルム20と位相差層22との積層体である光学補償フィルムFは、この光漏れを軽減し、視野角コントラストを改善する作用がある。
光学補償フィルムFの一例は、第1のポリマーフィルム20が負のC−プレート様の光学特性を示し、位相差層22が負のA−プレート様の光学特性を示す例である。ここで、負のC−プレート様の光学特性とは、理想的な負のC−プレートの光学特性のみならず、Reが−20〜20nm程度及びRthが50〜140nm程度の光学特性をいうものとし、また負のA−プレート様の光学特性についても、理想的なA−プレートの光学特性のみならず、Reが80〜200nm程度及びRthが−40〜−100nm程度の光学特性を意味するものとする。また、第1のポリマーフィルム20及び位相差層22が面内遅相軸を有する場合は、図1に示す通りに平行に配置するか、又は図2に示す通り直交にして配置するのが好ましい。図1に示す通り、平行に配置するほうが、熱による輝度ムラをより軽減できるので好ましい。
位相差層22の材料等については特に制限はない。ポリマーフィルムであっても、液晶化合物を含有する組成物からなる硬化層であってもよい。負のA−プレート様の光学特性を示す位相差層の一例は、ディスコティック液晶化合物を含有する組成物からなり、垂直配向状態に固定されたディスコティック液晶化合物を含有する位相差層である。液晶組成物を硬化させてなる位相差層は、一般的には、配向膜を利用して形成される。配向膜に施された配向処理の方向(例えばラビング配向膜ではラビング処理の方向)等によって、ディスコティック液晶の配向を制御でき、それによって位相差層の遅相軸の方向も決定される。例えば、ラビング配向膜を利用して、ディスコティック液晶を垂直配向させると、円盤面をラビング方向に平行にして垂直配向する平行垂直配向状態になる場合もあるし、又は円盤面をラビング方向に直交にして垂直配向する直交垂直配向状態になる場合もある。位相差層22として、いずれの垂直配向状態を固定して形成された位相差層を利用してもよい。前者の例では位相差層の遅相軸はラビング方向に平行になり、後者の例では位相差層の遅相軸はラビング方向に直交になる。ラビング方向が第1のポリマーフィルム20の遅相軸と平行である場合は、後者の例を利用すると、図1の構成になり、前者の例を利用すると、図2の構成になる。
一方、図1及び図2の構成において、第2のポリマーフィルム24には、光学補償に寄与する光学特性はなくてもよく、低Re且つ低Rthで光学的に等方性であるのが好ましい。具体的には、Re(550)の絶対値|Re(550)|が10nm以下であり、且つRth(550)の絶対値|Rth(550)|が30nm以下であるのが好ましい。また、第2のポリマーフィルム24は、斜め方向に生じるカラーシフトを軽減するという観点では、低波長分散性であるのが好ましく、具体的には、|Re(400)−Re(700)|が10nm以下であり、及び|Rth(400)−Rth(700)|が35nm以下であるのが好ましい。
第1のポリマーフィルム20及び第2のポリマーフィルム24は、厚みd1及びd2(単位μm)、弾性率EL1及びEL2(単位:N/m2)、並びに膨張率EX1及びEX2(K-1)が、下記関係式を満足する。
1×EL1×EX1 < d2×EL2×EX2
上記関係を満足するポリマーフィルムの組み合わせは種々存在し、いずれも利用することができる。第1のポリマーフィルム20として好ましい例は、セルロースアシレート系フィルムである。セルロースアシレート系フィルムは、弾性率が比較的小さい値であり、また熱膨張率が比較的小さい値であるので、セルロースアシレート系フィルムを第1のポリマーフィルムとして用いると、他の熱可塑性樹脂を主成分とする他の汎用ポリマーフィルム、例えば、環状オレフィン系ポリマーフィルム、又はアクリル系ポリマーフィルムを、上記関係式を満足する第2のポリマーフィルムとして使用することができる。第1及び第2のポリマーフィルム20及び24にそれぞれ使用可能なポリマーフィルムの例については後述する。
図1及び図2では、第1のポリマーフィルム20が第1の偏光膜16側に配置される構成を示したが、第1のポリマーフィルム20と位相差層22とを、上下を入れ替えて配置してもよく、即ち、それぞれ図3及び図4に示す構成であってもよい。但し、図3及び図4の構成では、光学補償フィルムFの第1偏光膜16と接着する面は、位相差層22であり、位相差層22が、ディスコティック液晶化合物等の液晶化合物を含有する硬化性組成物を硬化させて形成される位相差層である場合は、第1の偏光膜16との接着性が弱い場合がある。位相差層22を第1偏光膜16側にして配置する態様では、前記位相差層22の表面にポリマーフィルムを積層して、第1の偏光膜16との接着性を改善してもよい。接着性改善のために用いられるポリマーフィルムも、第2のポリマーフィルム24との関係で、上記式を満足するのが好ましい。
第1の偏光膜16及び第2の偏光膜18の外側表面には、保護フィルムが配置されているのが好ましく、第1の偏光膜16は、その一方の表面に光学補償フィルムF、及び他方の表面に保護フィルムを有する偏光板PL1として、並びに、第2の偏光膜18は、その一方の表面に第2のポリマーフィルム24、及び他方の表面に保護フィルムを有する偏光板PL2として、液晶表示装置に組み込まれていてもよい。
バックライト26の構成については特に制限はない。導光板方式及び直下型方式のいいずれを用いてもよい。導光板方式のバックライト部は、光源及び導光板を備え、直下型方式のバックライト部は、光源及び拡散板を備える。使用される光源についても特に制限はなく、電球、発光ダイオード(LED)、エレクトロルミネッセンスパネル(ELP)、1本又は複数の冷陰極管(CCFL)及び熱陰極蛍光灯(HCFL)等いずれも用いることができる。
また、バックライト26には、光の利用効率を上げるために反射板、輝度向上膜等の部材を用いることができる。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、上述の部材以外に例えば、拡散板、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板等の部品を適宜1層又は2層以上配置することができる。
本発明の液晶表示装置には、画像直視型、画像投影型や光変調型が含まれる。本発明は、TFTやMIMのような3端子又は2端子半導体素子を用いたアクティブマトリックス液晶表示装置に適用した態様が特に有効である。勿論、時分割駆動と呼ばれるパッシブマトリックス液晶表示装置に適用した態様も有効である。
以下、本発明の液晶表示装置に使用可能な種々の部材の好ましい光学特性や部材に用いられる材料、その製造方法等について、詳細に説明する。
1.第1及び第2のポリマーフィルム
第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルム24は、厚みd1及びd2(単位μm)、弾性率EL1及びEL2(単位:N/m2)、並びに膨張率EX1及びEX2(K-1)が、下記関係式を満足する。
1×EL1×EX1 < d2×EL2×EX2
2×EL2×EX2とd1×EL1×EX1との差が、1×106以上7×106以下であると、本発明の効果がより顕著になるので好ましい。
第1及び第2のポリマーフィルムは、それぞれ、第1及び第2の偏光膜の保護フィルムとしても機能しているのが好ましく、そのためにはある程度の厚みであるのが好ましく、具体的にはそれぞれの厚みd1及びd2は20〜100μm程度であるのが好ましく、30〜90μm程度であるのがより好ましい。厚みd1とd2の関係については特に制限はない。d1<d2、d1>d2、及びd1=d2のいずれであってもよい。
また、第1及び第2のポリマーフィルムそれぞれの弾性率EL1及びEL2(単位:N/m2)、並びに膨張率EX1及びEX2(K-1)についても上記関係式を満足することを条件として、特に制限はない。一般的には、ポリマーフィルムの弾性率は0.1〜10GN/m2程度になり、また膨張率は2×10-5〜10×10-5-1程度になる。弾性率については、第2のポリマーフィルムが第1のポリマーフィルムと比較して同等以上であるのが好ましく、熱膨張率については、第2のポリマーフィルムが第1のポリマーフィルムと比較してより大きいのが好ましい。但し、これらの関係を満足する態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、ポリマーフィルムの弾性率及び膨張率はそれぞれ、フィルムのMD方向及びTD方向の平均値とする。ここで、「MD方向」は、連続生産におけるフィルムの送り出し方向、及び「TD方向」はそれに直交する方向を意味する。実際に使用される形状、例えば矩形状、に切断された形態のフィルムでは、MD方向及びTD方向が特定できない場合もあるが、ポリマーフィルムの面内の任意の方向と、それに直交する方向について、それぞれ弾性率及び膨張率を測定し、平均値を算出してもよい。
上記関係を満足するポリマーフィルムの組み合わせは種々存在し、いずれも利用することができる。第1及び第2のポリマーフィルムの材料については特に制限はない。ポリマーの例には、セルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム(屈折率1.48)、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルムポリオレフィン、脂環式構造を有するポリマー(ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製))、ポリプロピレンなどが挙げられる。
第1のポリマーフィルムとして好ましい例は、主成分としてセルロースアシレート(特に好ましくはトリアセチルセルロース)を含有するセルロースアシレート系フィルムである。セルロースアシレート系フィルムは、弾性率が比較的小さい値であり、また熱膨張率が比較的小さい値であるので、セルロースアシレート系フィルムを第1のポリマーフィルムとして用いると、他の熱可塑性樹脂を主成分とする他の汎用ポリマーフィルム、例えば、環状オレフィン系ポリマーフィルム、又はアクリル系ポリマーフィルムが、上記関係式を満足する第2のポリマーフィルムとして使用することができる。
前記セルロースアシレートフィルムは、ソルベントキャスト法により製膜されるのが好ましい。ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号及び同2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号等の公報を参考にすることができる。また、前記セルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法及び条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等の各公報を参考にすることができる。
幅方向に延伸(TD延伸)する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。幅方向の延伸の場合、フィルムの幅をテンターで保持しながら搬送して、テンターの幅を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。長手方向の延伸(MD延伸)の場合、例えば、2対のニップロールを設置し、この間を加熱しながら出口側のニップロールの周速を入口側のニップロールの周速より速くすることで達成できる。この際、ニップロール間の間隔(L)と延伸前のフィルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。L/Wが2を超え50以下(長スパン延伸)ではRthを小さくでき、L/Wが0.01〜0.3(短スパン延伸)ではRthを大きくできる。本発明では長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)どれを使用しても良いが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。さらに高Rthを狙う場合は短スパン延伸、低Rthを狙う場合は長スパン延伸と区別して使用することがより好ましい。
これらの縦延伸の好ましい延伸温度は(Tg−10℃)〜(Tg+50)℃であり、より好ましくは(Tg−5℃)〜(Tg+40)℃であり、さらに好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃である。フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くするとフィルムは延伸される。
また第1及び第2のポリマーフィルムとして、環状オレフィン系ポリマーフィルム、又はアクリル系ポリマーフィルムを用いることもできる。特に、第2のポリマーフィルムとして用いるのが好ましい。環状オレフィン系ポリマーフィルムの例には、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)等が含まれる。
また、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及びグルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーを含有するアクリル系ポリマーフィルムは、光学的に等方性の高い性質を示すものであり、第2のポリマーフィルムとして好ましい。前記アクリル系ポリマーフィルムの詳細については特開2008−9378号公報に詳細な記載があり、参照することができる。
第1及び第2のポリマーフィルムは、他の部材との接着性の改善を目的として、表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理、アルカリ鹸化)処理)が施されていてもよい。また接着層(下塗り層)を設けてもよい。また、偏光膜と接着させる態様では、アルカリ鹸化処理等の表面処理を行うのが好ましい。
2.位相差層
本発明の液晶表示装置は、前記第1及び第2のポリマーフィルムとともに、他の位相差層を有していてもよい。位相差層は、第1及び第2の偏光膜の透過軸が、斜め方向において直交配置からずれるために生じる光漏れを補償するのに寄与する。位相差層は複屈折フィルムであってもよいし、液晶化合物の組成物を配向状態に固定してなる硬化層であってもよい。IPS型又はFFS型液晶表示装置の光学補償の一例として、負のC−プレートと負のAプレートを用いる例が挙げられる。第1及び第2のポリマーフィルムが負のC−プレート様の光学特性を示す態様では、負のA−プレート様の光学特性を示す位相差層を利用するのが好ましい。
なお、上記した通り、本明細書では、負のC−プレート様の光学特性とは、理想的な負のC−プレートの光学特性のみならず、Reが−20〜20nm程度及びRthが50〜140nm程度の光学特性をいうものとし、また負のA−プレート様の光学特性とは、理想的なA−プレートの光学特性のみならず、Reが80〜200nm程度及びRthが−40〜−100nm程度の光学特性をいうものとする
負のAプレート様の光学特性を示す位相差層の一例は、ディスコティック液晶化合物を含有する硬化性組成物を垂直配向状態で固定してなる硬化層である。
前記位相差層の形成に利用可能なディスコティック液晶化合物の例には、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載されている化合物が含まれる。
ディスコティック液晶性化合物は、重合により固定可能なように、重合性基を有するのが好ましい。例えば、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させた構造が考えられるが、但し、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に連結基を有する構造が好ましい。即ち、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式で表される化合物であることが好ましい。
D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは1〜12の整数である。前記式中の円盤状コア(D)、二価の連結基(L)及び重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)であり、同公報に記載の内容を好ましく用いることができる。なお、液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、30〜300℃が好ましく、30〜170℃が更に好ましい。
下記式(I)で表わされるディスコティック液晶性化合物は、面内レターデーションの波長分散性が低く、高い面内レターデーションを発現可能であり、また特殊な配向膜や添加剤を使用しなくても高い平均傾斜角で均一性に優れた垂直配向を達成できるので、光学異方性層の形成に利用するのが好ましい。更に該液晶性化合物を含有する塗布液は、その粘度が比較的低くなる傾向があり、塗布性が良好である点でも好ましい。
Figure 0005552087
式中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立に置換されていてもよいメチン又は窒素原子を表し;L1、L2及びL3は、それぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し;H1、H2及びH3は、それぞれ独立に一般式(I−A)又は(I−B)の基を表し;R1、R2及びR3は、それぞれ独立に下記一般式(I−R)を表す;
Figure 0005552087
一般式(I−A)中、YA1及びYA2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(I)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;**は上記一般式(I)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す;
Figure 0005552087
一般式(I−B)中、YB1及びYB2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(I)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;**は上記一般式(I)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す;
一般式(I−R)
*−(−L21−Q2n1−L22−L23−Q1
一般式(I−R)中、*は、一般式(I)におけるH1〜H3側と結合する位置を表す;L21は単結合又は二価の連結基を表す;Q2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す;n1は、0〜4の整数を表す;L22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−又は**−C≡C−を表す;L23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す;Q1は重合性基又は水素原子を表す。
前記式(I)で表される3置換ベンゼン系ディスコティック液晶化合物の各符号の好ましい範囲、及び前記式(I)の化合物の具体例については、特開2010−244038号公報の段落[0013]〜[0077]記載を参照することができる。但し、本発明に使用可能なディスコティック液晶化合物は、前記式(I)の3置換ベンゼン系ディスコティック液晶化合物に限定されるものではない。
トリフェニレン化合物としては、特開2007−108732号公報の段落[0062]〜[0067]記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、前記3置換ベンゼン又はトリフェニレン化合物とともに、下記一般式(II)(より好ましくは一般式(II’))で表されるピリジニウム化合物の少なくとも1種、及び下記一般式(III)で表されるトリアジン環基を含む化合物の少なくとも1種を含有させてもよい。前記ピリジニウム化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物100質量部に対し、0.5〜3質量部であるのが好ましい。また、前記トリアジン環基を含む化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物100質量部に対し、0.2〜0.4質量部であるのが好ましい。
Figure 0005552087
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基であり;R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基であり;Xはアニオンであり;Y22及びY23はそれぞれ、置換されていてもよい5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基であり;Z21はハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基であり;pは1〜10の数であり;並びにmは1又は2である。
Figure 0005552087
式中、R31、R32及びR33は、末端にCF3基を有するアルキル基又はアルコキシ基を表し、但し、アルキル基(アルコキシ基中のアルキル基も含む)中の隣接していない2以上の炭素原子は、酸素原子又は硫黄原子に置換されていてもよい;X31、X32及びX33は、アルキレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−、−SO2−及びそれらの群より選ばれる二価の連結基を少なくとも二つ組み合わせた基を表し;m31、m32及びm33はそれぞれ、1〜5の数である。上記式(III)中、R31、R32及びR33はそれぞれ、下記式で表される基であるのが好ましい。
−O(Cn2nn1O(Cm2mm1−Ck2k+1
式中、n及びmはそれぞれ1〜3であり、n1及びm1はそれぞれ1〜3であり、kは1〜10である。
Figure 0005552087
式(II’)中、式(II)と同一の符号は同一の意義であり;L25はL24と同義であり;R23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12のアルキル基を表し、n3は0〜4、n4は1〜4、及びn5は0〜4を表す。
る。
前記光学異方性層の形成に用いられる重合性液晶性組成物は、少なくとも1種以上含有しており、また、前記組成物とともに添加剤の1種以上を含有していてもよい。使用可能な添加剤の例として、空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等について説明する。
空気界面配向制御剤:
前記組成物は、空気界面においては空気界面のチルト角で配向する。このチルト角は、液晶性組成物に含まれる液晶性化合物の種類や添加剤の種類等で、その程度が異なるため、目的に応じて空気界面のチルト角を任意に制御する必要がある。
前記チルト角の制御には、例えば、電場や磁場のような外場を用いることや添加剤を用いることができるが、添加剤を用いることが好ましい。このような添加剤としては、炭素原子数が6〜40の置換もしくは無置換脂肪族基、又は炭素原子数が6〜40の置換もしくは無置換脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基を、分子内に1本以上有する化合物が好ましく、分子内に2本以上有する化合物が更に好ましい。例えば、空気界面配向制御剤としては、特開2002−20363号公報に記載の疎水性排除体積効果化合物を用いることができる。
また、特開2009−193046号公報等に記載のフルオロ脂肪族基含有ポリマーも同様な作用があるので空気界面配向制御剤として添加することができる。
空気界面側の配向制御用添加剤の添加量としては、前記組成物(塗布液の場合は固形分、以下同様である)に対して、0.001質量%〜20質量%が好ましく、0.01質量%〜10質量%が更に好ましく、0.1質量%〜5質量%がより更に好ましい。
ハジキ防止剤:
前記組成物に添加し、該組成物の塗布時のハジキを防止するための材料としては、一般に高分子化合物を好適に用いることができる。
使用するポリマーとしては、前記組成物の傾斜角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。
ポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
前記組成物の配向を阻害しないように、ハジキ防止目的で使用されるポリマーの添加量は、前記組成物に対して一般に0.1〜10質量%の範囲にあり、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
重合開始剤:
前記組成物は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。重合開始剤を含有する前記組成物を用いると、液晶相形成温度まで加熱した後、重合させ冷却することによって液晶状態の配向状態を固定化して、光学異方性層を作製することもできる。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応と電子線照射による重合反応が含まれるが、熱により支持体等が変形、変質するのを防ぐためにも、光重合反応又は電子線照射による重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)等が挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、前記組成物の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
重合性モノマー:
前記組成物には、重合性のモノマーを添加してもよい。本発明で使用できる重合性モノマーとしては、併用される液晶化合物と相溶性を有し、液晶性組成物の配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は、併用される液晶化合物に対して一般に0.5〜50質量%の範囲にあり、1〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜との密着性を高める効果が期待できるため、特に好ましい。
前記組成物は、塗布液として調製してもよい。塗布液の調製に使用する溶剤としては、汎用の有機溶剤が好ましく用いられる。汎用の有機溶剤の例には、アミド系溶剤(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド系溶剤(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環系溶剤(例、ピリジン)、炭化水素系溶剤(例、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド系溶剤(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル系溶剤(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン系溶剤(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル系溶剤(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。エステル系溶剤及びケトン系溶剤が好ましく、特にケトン系溶剤が好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
[塗布方法]
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。中でも、前記位相差層を形成する際は、ワイヤーバーコーティング法を利用して塗布するのが好ましく、ワイヤーバーの回転数は下記式を満たすことが好ましい。
0.6<(W×(R+2r)×π)/V<1.4
[W:ワイヤーバーの回転数(rpm)、R:バーの芯の直径(m)、r:ワイヤーの直径(m)、V:支持体の搬送速度(m/min)]
(W×(R+2r)×π)/Vの範囲は、0.7〜1.3であることがより好ましく、0.8〜1.2であることが更に好ましい。
前記位相差層の形成にはダイコーティング法が好ましく用いられ、特に、スライドコーター又はスロットダイコーターを利用した塗布方法が好ましい。
前記位相差層の形成には、配向膜を利用することができる。利用する配向膜の例については特に制限はないが、中でも、ポリマーを主成分とする組成物からなる膜の表面をラビング処理することで形成されるラビング配向膜が好ましい。配向膜の形成に利用可能なポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが更に好ましく、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%が更に好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は100〜5000であることが好ましい。
前記配向膜の形成のために、架橋反応を進行させてもよい。架橋反応を進行させるためには、主成分ポリマーとして、架橋性官能基を側鎖に有するポリマーを用いてもよいし、架橋剤を用いてもよく、また併用してもよい。
配向膜は、ポリマーフィルムの表面に、上記主成分ポリマーを含む塗布液を塗布、乾燥、所望により架橋反応を進行させて、形成することができる。利用可能な塗布方法の例には、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法又はロールコーティング法が含まれる。
好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。
製膜後に、膜表面をラビング処理する。製造適性の観点では、ラビング処理は、ポリマーフィルムの搬送方向、即ち連続生産される長尺状のフィルムの長手方向に沿って行うのが好ましい。ラビング処理は、膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、実施することができる。
その他、配向膜として、光配向膜を利用することもできる。
3.第1及び第2の偏光膜
本発明に利用される偏光膜については特に制限はない。偏光膜としては、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜のいずれを用いてもよい。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の吸収軸は、フィルムの延伸方向に相当する。従って、縦方向(搬送方向)に延伸された偏光膜は長手方向に対して平行に吸収軸を有し、横方向(搬送方向と垂直方向)に延伸された偏光膜は長手方向に対して垂直に吸収軸を有する。
偏光膜は一般に保護膜を有する。本発明において、上記第1及び第2のポリマーフィルムは、第1及び第2の偏光膜の保護フィルムとして機能させることができる。第1及び第2の偏光膜の第1及び第2のポリマーフィルムをそれぞれ接着させる表面の他方の表面にも保護フィルムを配置することが好ましい。第1及び第2の偏光膜の外側に配置される保護フィルムについては特に制限はなく、セルロースアシレート系フィルム、環状オレフィン系ポリマーフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系フィルム、アクリル系フィルム、PET系フィルム等を用いることができる。
偏光板の好ましい製造方法は、2枚の保護フィルムと偏光膜とが、それぞれ長尺の状態で連続的に積層される工程を含む。該長尺の偏光板は用いられる画像表示装置の画面の大きさに合わせて裁断される。なお、第1及び第2の偏光膜は、一方の表面には、前記第1及び第2のポリマーフィルムをそれぞれ貼合する。この様にして作製された偏光板は、第1及び第2のポリマーフィルムを液晶セル側にして配置される。
3.液晶セル
本発明の液晶表示装置は、IPS及びFFS型の液晶セルを有する。これらのモードについては、種々の文献に記載があり、いずれの構成も本発明に採用することができる。表示装置のいずれにおいても得られる。IPS型液晶表示装置は、例えば特開2003−15160号、特開2003−75850号、特開2003−295171号、特開2004−12730号、特開2004−12731号、特開2005−106967号、特開2005−134914号、特開2005−241923号、特開2005−284304号、特開2006−189758号、特開2006−194918号、特開2006−220680号、特開2007−140353号、特開2007−178904号、特開2007−293290号、特開2007−328350号、特開2008−3251号、特開2008−39806号、特開2008−40291号、特開2008−65196号、特開2008−76849号、特開2008−96815号等の各公報に記載のものも使用できる。
FFS型(以下、FFSモードともいう)液晶セルは、カウンター電極と画素電極を有する。これらの電極はITO等の透明物質で形成され、及び上・下部基板等の間の間隔より狭い間隔で、電極上部に配置されている液晶分子等が全て駆動することができる程度の幅で形成されている。この構成により、FFSモードでは、IPSモードより向上した開口率を得ることができ、さらに、電極部分が光透過性であるので、IPSモードより向上した透過率を得ることができる。FFSモード液晶セルについては、例えば特開2001−100183号、特開2002−14374、特開2002−182230、特開2003−131248、特開2003−233083号等の各公報の記載を参照することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
1.フィルムの準備
(1)フィルムPF1の準備
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.7〜61.1%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 336質量部
メタノール(第2溶媒) 29質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤(A)16質量部、メチレンクロライド92質量部及びメタノール8質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション上昇剤溶液25質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、6.0質量部であった。
Figure 0005552087
得られたドープを、バンド延伸機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、70℃の温風で1分乾燥し、バンドからフィルムを140℃の乾燥風で10分乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%のセルロースアセテートフィルムを作製した。
得られた長尺状のセルロースアセテートフィルムの幅は1490mmであり、厚さは60μmであった。これをフィルムPF1とする。
(2)フィルムPF2Aの準備
ポリメタクリル酸メチル樹脂を用いて偏光子保護フィルムを作製した。ポリメタクリル酸メチル樹脂(三菱レーヨン社製、アクリペットVH、光弾性係数5×10-122/N)90重量部と、アクリロニトリル−スチレン共重合体(旭化成社製、スタイラックAS)10重量部とを溶解してTダイより押し出し、キャストロール上でフィルム状に形成した後、ゾーン延伸法により、縦方向の延伸倍率を1.8倍として縦延伸された分子が一軸配向されたポリメタクリル酸メチルフィルムを得た。そしてテンター延伸法により横方向の延伸倍率を2.2倍として逐次二軸延伸にて、分子が二軸配向された厚さ60μmのポリメタクリル酸メチルフィルムを得た。このフィルムを、PF2Aとして用いた。
(3)フィルムPF2Bの準備
市販のノルボルネン系ポリマーフィルム「ZEONOR ZF14−060」((株)オプテス製)の表面に、ソリッドステートコロナ処理機6KVA(ピラー(株)製)によりコロナ放電処理を行った。このフィルムをPF2Bとして使用した。このフィルムの厚みは、60μmであった。
以下の表に各フィルムの特性を示す。
Figure 0005552087
2.位相差層の形成
フィルムPF1上に以下の方法により位相差層を形成した。
(アルカリ鹸化処理)
フィルムPF1を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、フィルムPF1をアルカリ鹸化処理した。
(アルカリ溶液組成)
────────────────────────────────────
アルカリ溶液組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
(配向膜の形成)
上記のように鹸化処理したフィルムPF1に、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥した。
配向膜塗布液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー2959、チバ・ジャパン製) 0.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Figure 0005552087
(ディスコティック液晶性化合物を含む光学異方性層の形成)
上記作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対して、ラビングローラーの回転軸0°(MD)で処理したものと、ラビングローラーの回転軸90°方向(TD)で処理したものをそれぞれ用意した。
下記の組成のディスコティック液晶化合物を含む塗布液Aを上記作製した配向膜上に#2.7のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は36m/minとした。塗布液の溶媒の乾燥及びディスコティック液晶化合物の配向熟成のために、80℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にてUV照射を行い、液晶化合物の配向を固定化し光学異方性層を形成し、位相差フィルムF1を得た。
光学異方性層塗布液(A)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のディスコティック液晶化合物 100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバ・ジャパン社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のピリジニウム塩 1質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP1) 0.4質量部
メチルエチルケトン 252質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
Figure 0005552087
Figure 0005552087
Figure 0005552087
なお、遅相軸の方向はラビングローラーの回転軸と平行であった。別途、セルロースアセテートフィルムを支持体に用いる代わりに、ガラスを基板として用いてディスコティック液晶化合物を含む上記組成物から同様にして位相差層を形成して、Re(0)、Re(40)及びRe(−40)をKOBRA21 ADHを用いて測定したところ、それぞれ、142.3nm、128.9nm及び128.7nmであった。これらの結果からディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることが確認できた。
3.偏光板の作製
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記位相差フィルムF1に含まれるアルカリ鹸化処理したPF1と、同様のアルカリ鹸化処理したTD80UL(富士フイルム社製)を用意し、偏光膜を間に挟んで貼り合わせ、光学フィルムとTD80ULが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板1を作製した。
前記フィルムPF2A及びPF2Bのそれぞれの表面に、ソリッドステートコロナ処理機6KVA(ピラー(株)製)によりコロナ放電処理を行い、各フィルムとケン化処理したTD80ULを保護フィルムとする偏光板2A及び偏光板2Bをそれぞれ作製した。
4.液晶表示装置の作製と評価
(1)IPS型液晶表示装置の作製
東芝製(37Z3500)の液晶TVから両面の偏光板を剥し、IPS型液晶セルとして利用した。Δn・d=311nmで、プレチルトは2.0度であった。
(2)FFS型液晶表示装置の作製
東芝製(37H3000)の液晶TVから両面の偏光板を剥し、FFS型液晶セルとして利用した。Δn・d=360nmで、プレチルトは2.5度であった。
IPSセル、又はFFSセルの片面に、フィルムPF1を含んだ偏光板1と、フィルムPF2を含んだ偏光板2A又は2Bを、市販の粘着剤により貼り合わせて液晶表示装置をそれぞれ作製した。実施例では偏光板1をバックライト側偏光板として配置し、比較例では偏光板2Aをバックライト側偏光板として配置した。
各実施例及び比較例の構成をそれぞれ下記表に示す。ここで、矢印は遅相軸(セルについては黒表示時の遅相軸)または、吸収軸の方向を示す。なお、フィルムPF2A及びPF2Bはそれぞれ低Reのフィルムであり、面内遅相軸は特定できなかった。
(3)輝度ムラの評価
各液晶表示装置を0℃の部屋に設置し、電源を入れてから5時間後に、黒表示にて正面から目視し、ムラの程度を確認した。バックライトの熱によりバックライトにより近い位置に配置されたフィルムが、視認側に配置されたフィルムより膨張することにより、セルが凹型に変形し、その反りが大きいほどムラが強くなった。ムラの強度を、◎:無、○:弱、△:中、×:強、の4段階で評価した。
Figure 0005552087
10 液晶層
12、14 基板
16 第1偏光膜
18 第2偏光膜
20 第1位相差領域
22 第2位相差領域
24 保護フィルム
26 バックライト

Claims (10)

  1. 第1及び第2の偏光膜、
    前記偏光膜の間に配置される液晶セル、
    前記第1の偏光膜と前記液晶セルとの間に配置される第1のポリマーフィルム、及び
    前記第2の偏光膜と前記液晶セルとの間に配置される第2のポリマーフィルム、
    を有するIPS型又はFFS型液晶表示装置であって、
    前記第1の偏光膜の後方にバックライトが配置され、
    前記第1及び第2のポリマーフィルムがそれぞれ面内遅相軸を有する場合は、それぞれ前記第1及び第2の偏光膜の吸収軸と平行もしくは直交にして配置され、
    前記第1及び第2のポリマーフィルムの厚みが30〜90μmであり、
    前記第1及び第2のポリマーフィルムの厚みd1及びd2(単位μm)、弾性率EL1及びEL2(単位:N/m2)、並びに膨張率EX1及びEX2(K-1)が、下記関係式を満足することを特徴とするIPS型又はFFS型液晶表示装置:
    1×EL1×EX1 < d2×EL2×EX2
    ただし、d 2 ×EL 2 ×EX 2 とd 1 ×EL 1 ×EX 1 との差が、1×10 6 以上7×10 6 以下である。
  2. 前記第1のポリマーフィルムが、セルロースアシレート系フィルムである請求項1に記載のIPS型又はFFS型液晶表示装置。
  3. 前記第1のポリマーフィルムの波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が−20〜20nmであり、及び同波長における厚み方向レターデーションRth(550)が50〜140nmである請求項1又は2に記載のIPS型又はFFS型液晶表示装置。
  4. 前記第1のポリマーフィルムと前記液晶セルとの間、又は前記第1のポリマーフィルムと前記第1の偏光膜との間に、ディスコティック液晶化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のIPS型又はFFS型液晶表示装置。
  5. 前記光学異方性層が垂直配向状態に固定された前記ディスコティック液晶化合物の分子を含有する請求項4に記載のIPS型又はFFS型液晶表示装置。
  6. 前記光学異方性層が、前記第1のポリマーフィルムの遅相軸と平行又は直交する遅相軸を有し、該光学異方性層が、前記第1のポリマーフィルムと前記液晶セルとの間に配置される請求項5に記載のIPS型又はFFS型液晶表示装置。
  7. 前記光学異方性層が、前記第1のポリマーフィルムの遅相軸と平行する遅相軸を有し、該光学異方性層が、前記第1のポリマーフィルムと前記第1の偏光膜との間に配置される請求項に記載のIPS型又はFFS型液晶表示装置。
  8. 前記第2のポリマーフィルムが、環状オレフィン系ポリマーフィルム、又はアクリル系ポリマーフィルムである請求項1〜7のいずれか1項に記載のIPS型又はFFS型液晶表示装置。
  9. 前記アクリル系ポリマーフィルムが、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及びグルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーを含有するアクリル系ポリマーフィルムである請求項8に記載のIPS又はFFS型液晶表示装置。
  10. 前記第2のポリマーフィルムのRe(550)の絶対値|Re(550)|が10nm以下であり、且つRth(550)の絶対値|Rth(550)|が30nm以下である請求項1〜9のいずれか1項に記載のIPS型又はFFS型液晶表示装置。
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