JP5540313B2 - 仰角方向の音源知覚可能な耳介装置 - Google Patents

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Description

この発明は仰角方向の音源知覚可能な耳介装置に関し、特に、仰角方向の音源定位を可能にする頭部伝達関数を有する、耳介装置に関する。
人間の耳介形状は非常に複雑である。耳介の上にある小さな凸凹によって頭部伝達関数(HRTF)が特徴付けられる。頭部伝達関数とは、音源から外耳道入口までの音響特性を現すもので、左右の耳で音圧差のない、仰角方向の音源定位に特に重要な働きを持つ。
従来、耳介の凸凹の音響的な意味が未解明であったため、マイクロフォンアレイを用いず、人間と同じ方式で音源定位を行なうためには、特許文献1や非特許文献1によって公知の、人間を模した耳介形状を用いている。
特表2001−525141号公報 http://www.marubun.co.jp/product/measurement/sensor/qgc18e0000039110.html
特許文献1の背景技術も非特許文献1の背景技術も、非常に複雑な形状であるため、製作が困難である。
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、仰角方向の音源知覚可能な耳介装置を提供することである。
この発明の他の目的は、単純な形状で、仰角方向の音源知覚可能な耳介装置を提供することである。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
第1の発明は、基体(12)、基体に形成される凹部(14)、凹部内側面に形成され、最下段から最上段に向かって段々にせり出す3段以上の段面(16a-16c)を有する階段部(16)、および階段部の最深の段面に設けられるマイクロフォン(18)を備える、耳介装置である。
第1の発明において、観測点、すなわちマイクロフォンを中心とするたとえば半径10cmの円周上で頭部伝達関数(HRTF)を計算する。計算では、相反定理により、観測点にGaussian Pulse(ガウスパルス)を印加し、円周上に10°刻みに置いた点で、時間領域差分(FDTD)法により圧力変動を計算して24kHzまでの伝達関数を求めた。その結果、実際の耳介において解明したものと類似するHRTFのピーク/ノッチパターンが観測できた。
したがって、第1の発明によれば、実際の耳介と同じように、仰角方向における音源の定位が可能となる。
第2の発明は、第1の発明に従属し、凹部は階段部の幅の方向の第1方向がそれに交差する第2方向より短く形成される、耳介装置である。
第2の発明ではつまり、凹部は縦長に形成される。したがって、所要の頭部伝達関数が確実に得られる。
第3の発明は、第2の発明に従属し、第2方向の長さと第1方向の長さとの比が1.5以上である、耳介装置である。
第3の発明では、凹部のアスペクト比が1.5以上である。
第4の発明は、第3の発明に従属し、第2方向の長さと第1方向の長さとの比が2.0以上である、耳介装置である。
第4の発明では、凹部のアスペクト比が2.0以上である。
第5の発明は、第1ないし第4の発明に従属し、基体はロボットの頭部である、耳介装置である。
第5の発明では、耳介装置がロボットの頭部に直接設けられ得る。
第6の発明は、頭部およびそれを支持する胴部を有するロボットであって、頭部の両側面にそれぞれ開口が側面を向くように形成される2つの凹部、凹部内側面にそれぞれ形成され、最下段から最上段に向かって段々にせり出す3段以上の段面を有する2つの階段部、および階段部のそれぞれの最深の段面に設けられる2つのマイクロフォンを備える、ロボットである。
第6の発明によれば、ロボットの頭部に水平方向に離れた2つの耳介装置を設けるので、そのロボットでは、仰角方向の音源の定位だけではなく、水平方向での音源定位も可能である。
第7の発明は、基体、基体に平面矩形に形成され、その矩形の長辺と短辺とのアスペクト比が1.5以上である凹部、凹部内側面に、矩形の長辺方向に形成され、最下段から最上段に向かって段々にせり出す3段以上の段面を有する階段部、および階段部の最深の段面に設けられるマイクロフォンを備える、耳介装置である。
この発明によれば、単純な形状、構造で、仰角方向の音源を知覚可能な耳介装置を得ることができる。
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
図1はこの発明の一実施例の耳介装置を示す図解図であり、図1(A)は斜視図であり、図1(B)は断面図である。 図2は図1の実施例の耳介装置の配置状態を示す図解図であり、図2(A)は耳介装置を横(凹部開口側)から見た図であり、仰角としては、前方が0°で上方が90°であることを示し、図2(B)は耳介装置を上から見た図であり、矢状面に対して角度θ(実施例では、5°)傾けて配置していることを示す。 図3は仰角に対する頭部伝達関数のピーク/ノッチパターンの一例を示す図解図である。 図4は実際の耳介形状を示す参考図である。 図5は図1の実施例の原型モデルを示す図解図であり、図5(A)は斜視図であり、図5(B)は断面図である。 図6は図1実施例との比較のための比較モデルを示す図解図であり、図6(A)は2/3Hモデルであり、図6(B)は1/3Hモデルであり、図6(C)は1/3Pモデルであり、図6(D)は1/2Pモデルであり、図6(E)は8mm2段モデルであり、図6(F)は4mm2段モデルである。 図7は実測した音圧分布を示し、図7(A)は原型モデルの音圧分布であり、図7(B)は2/3Hモデルの音圧分布であり、図7(C)は1/3Hモデルの音圧分布であり、図7(D)は1/3Pモデルの音圧分布である。 図8は実測した音圧分布を示し、図8(A)は1/2Pモデルの音圧分布であり、図8(B)は8mm2段モデルの音圧分布であり、図8(C)は4mm2段モデルの音圧分布であり、図8(D)は図1実施例の耳介装置の音圧分布である。 図9はこの発明の他の実施例を示す図解図である。
図1を参照して、この実施例の耳介装置10は、左の耳介を想定したものであり、図2(A)に示すように、図1(A)の斜視図の左側が前方を向くように配置される。右の耳介に相当する耳介装置の場合は、図1(A)と対称に形成されるということを予め言及しておく。
実施例の耳介装置10は、矩形の平板状基体12を含む。実際の耳介形状を模して、実施例では、基体12の長辺の長さを72mmとし、短辺の長さを36mmとし、厚みを17mmとした。基体12の材料は、金属、プラスチック、ゴム、木材など任意のものであってよい。実施例では、成形容易性を考慮して、プラスチックで基体12を形成した。また、基体12は実施例では矩形平板で形成したが、矩形である必要もなく、板状である必要もない。つまり、基体12は任意の形状であってよい。
基体12には、平面(側面から見た)形状が矩形の凹部14が形成される。凹部14は耳介構造の「腔(cavity)」として機能することを意図して形成したもので、実施例では、実際の耳介を想定して、凹部14の短辺の長さL1を16mmとし、長辺の長さL2を33mmとしている。つまり、腔すなわち凹部14は、約2.0(≒33/16)アスペクト比(長辺L2と短辺L1との比率)のものとして形成された。ただし、凹部14の深さD(図1(B))は、実施例では、15mmとした。
凹部14の内側面には、最下段から最上段に向かうにつれて開口側へ段々にせり出すような、3段の階段部16が形成される。階段部16は、最下段で最も奥(最深部)に位置する第1段面16a、この第1段面16aから段差S(図1(B):実施例では4mmとした。)だけ開口側に出された第2段面16b、および最上段であって第2段面16bから段差S(実施例では4mmとした。)だけ開口側に出され、最も外(最浅部)に位置する第3段面16cを含む。第1段面16a、第2段面16bおよび第3段面16cのそれぞれの幅または高さH(図1(B)は、実施例では、長辺L2=33mmを3等分した、11mmとした。
そして、この腔すなわち凹部14の前下方(底面または内側面から1mm外側、前面から5mm後方、下面から6mm上方)を外耳道入口として観測点を置き、そこにマイクロフォン18を設けた。
図1に示す実施例の耳介装置10のノッチ/ピークパターンを観測するために、観測点、すなわちマイクロフォン18を中心とする半径10cmの円周上でHRTFを計算する。計算では、相反定理により、観測点にGaussian Pulse(ガウスパルス)を印加し、円周上に10°刻みに置いた点で、時間領域差分法により圧力変動を計算して24kHzまでの伝達関数を求めた。仰角は正面が0°、上方が90°とした。なお、人体では、耳介は左右に張り出しており、耳介の表面は矢状面と平行ではない。そこで、これを表現するため、図2(B)で示すように、耳介装置10を上から見たときに図2(A)の円周が含まれる平面(矢状面)に対してθ(実施例では、5°)傾けた。
発明者等の研究(たとえば、[1] 竹本ら、音響学会講演論文集(音講論)(春)1445-1448、2009 [2] 竹本ら、音講論(秋)523-526、2009 [3] Takemoto et al. Proc. IWPASH, 2009)によって、仰角に対するHRTFのピーク/ノッチの変化には一定のパターンがあることが分かっている。図3に示すように、約10kHz以下に3つのピーク(P1、P2、P3)があり、これを取り巻くように第1ノッチ(N1)が出現する。P1は仰角によらず出現するが、P2およびP3は主として120°を中心とする高い仰角に対して出現する。仰角に対してピークP1、P2、P3の周波数は一定しているが、ノッチN1の周波数は大きく変化する。N1周波数は、低い仰角ではP2周波数よりやや低く、仰角の増大に伴って急激に上昇し、約120°で最高になり、それ以降では下降して再びP2周波数を下回る。たとえば、[4] Iida et al., Applied Acoustics, 68, 835-850, 2007に示すように、このような仰角に対する系統的なHRTFの変化パターンは、音源の仰角知覚の手がかりになっていると考えられている。
このような知見に基づいて、発明者等は、これらのピークやノッチの成因について、MRIで計測した耳介形状に基づいてFDTD法によるシミュレーションで検討してきた。その結果、(1)ピークとノッチは、共に耳介の4つの腔(耳甲介腔、耳甲介舟、三角窩、舟状窩:図4参照)の共鳴により生成され、頭部の影響は小さいこと、(2)ピークは耳甲介腔が音圧の腹になる共鳴パターンであること、(3)ノッチは耳甲介腔以外の腔の共鳴が到来する音波を耳甲介腔上で打ち消す共鳴パターンであることを明らかにした。
しかし、耳介形状は非常に複雑であるため、どのような形態的要素がピークやノッチに影響を与えるかを検討することは極めて困難である。そこで、図3に示すような音源の仰角知覚手がかりを残して耳介形状を単純化する実験を重ねた。
まず、図5に示す原型モデルを作成した。この原型モデル1でも、図1実施例と同様に左の耳介を縦72mm、横36mm、厚さ17mmの平板の基体2で表現した。この原型モデル1でも、図の左側が人体の前方、上側が上方、図の手前側が外側にそれぞれ対応する。この平板基体2に縦33mm、横16mm、深さ15mmの矩形の穴すなわち凹部4を形成した。この凹部4は、原型腔(original cavity)とも呼ぶべきもので、図1実施例と同様に、この腔4の前下方(底面から1mm外側、前面から5mm後方、下面から6mm上方)を外耳道入口として観測点としてそこにマイクロフォン18を置いた。
実験では、図5の原型モデル1に対して、図1の実施例になったものも含めて、4種類の変形を行い、HRTFを計算した。なお、全ての変形で原型腔の横幅は変化させないこととした。
変形1では、原型腔4の高さを縮小させて、原型腔の高さを2/3、1/3倍した。以下、2/3Hモデル、1/3Hモデルと呼ぶ(図6(A)、(B)参照)。
変形2は原型腔4の移動である。つまり、変形2では、観測点(マイクロフォン)が原型腔の高さの1/3、1/2の位置になるように、観測点ではなく、原型腔を下方へ移動した。以下、1/3Pモデル、1/2Pモデルと呼ぶ(図6(C)、(D)参照)。
変形3では、原型腔4の上部2/3をそれぞれ8mm、4mm浅くして原型腔4に2段の階段部(実施例の階段部16に相当する)を形成した。以下、8mm2段モデル、 4mm2段モデルと呼ぶ(図6(E)、(F)参照)。
変形4は結果的に図1の実施例となるもので、原型腔4の上部1/3から2/3の部分を4mm浅くし、さらに上部1/3を8mm浅くして原型腔に3段の階段部16(図1)を形成した。
実験では、特定の仰角および周波数における音響現象を理解するために、音圧分布パターンを解析した。この解析では、音源を仰角に応じた円周上に置き、注目している周波数を持つ正弦波で励振した。解析領域全体が定常状態に達した後、音圧分布を記録して可視化した。
図7(A)は原型モデルのHRTFである。原型モデルでは、腔が1つしかないにも拘わらず、低い周波数帯域に、図3のP1、P2に類似したピークと、N1に類似した遷移パターンを持つノッチが出現した。ただし、ノッチは0°以下と180°以上の仰角のみで出現し、0°と180°で2番目のピークと相殺する。15kHz以下には、3.5kHz、6.75kHz、11.25kHz、11.75kHz、13kHzに5つのピークが出現し、出現する仰角はピークによって規則的に変化した。
確認のために、各ピーク生成時の瞬時音圧の分布を観測した結果、第1ピークは、原型腔4が内外の方向(図4(B)での左右方向)に共鳴する1次モード、第2ピークは上下(図4(B)での上下方向)の1次モード、第3ピークは上下の2次モード、第4ピークは前後(図4(A)での左右方向)の1次モード、第5ピークは平面的なモードであることが分かった。
次に、変形1の結果を検討する。図7(B)は2/3Hモデル、図7(C)は1/3HモデルのHRTFである。音圧分布を解析した結果、図7(B)の第1から第4ピークは、それぞれ、内外の1次モード、上下の1次モード、前後の1次モード、平面的なモードであり、図7(C)の第1、2ピークはそれぞれ、内外の1次モード、前後の1次モードであった。図3のN1と類似したノッチは、2/3Hモデルの2番目のピークより低い周波数領域の0°以下と180°以上の仰角に対して現れたが、1/3Hモデルでは消失した。これは、ノッチが上下方向のモードと関連していることを示唆する。
次に、変形2の結果を検討する。原型モデル(図4)と1/3Pモデル(図6(C))では、基本的なピークノッチパターンは共通しているが、7kHz付近の第2ピークの振幅が1/3Pモデルでは減少した(図7(D)参照)。1/2Pモデルでは、この7kHzのピークが消失した(図8(A)参照)。これは、原型モデルの第2ピークが腔の上下方向の第1共鳴であり、その中央が音圧の節になっているため、1/3Pモデルでは観測点(図6(C)における黒丸)が節に相対的に近づいたことにより振幅が減少し、1/2Pモデルでは観測点(図6(D)における黒丸)が節と一致したことによりピークが失われたためである。逆に言えば、観測点が腔の下端に近い位置にあれば、腔の上下方向の共鳴によるピークが現れる。実際の耳介形状では、外耳道は耳介の4つの腔の下端である耳甲介腔に開口しているため、このような耳介の上下方向の共鳴によるピークが必ず発生する。
また、1/3Pモデルでは、0°以下と180°以上の仰角で図3のN1と類似したノッチパターンが見られたが、1/2Pモデルでは腔の上下方向の第1共鳴の消失とともにノッチも消失した。この事実も、ノッチが腔の上下方向の共鳴と関連して発生する現象であることを示唆する。
次に、変形3の結果について検討する。図8(B)、図8(C)に示すように、8mm2段モデルと4mm2段モデルでは、ピークノッチの基本パターンは類似しているが、第2ピークの振幅が前者で小さい。特に、0°以下と180°以上では、ピークとノッチがともに消失している。また、4mm2段モデルでは、90°を中心とした狭い範囲の仰角で12kHz付近に3番目のピークが出現し、全体として図3のピークノッチパターンに類似した。また、原型モデルでは見られなかった、0°から180°の仰角に対するあいまいなノッチパターンが出現した。
最後に、変形4すなわち図1実施例の結果を検討する。図8(D)は3段モデルすなわち実施例の耳介装置10におけるHRTFである。4mm2段モデルに比べて主に3つの点で変化が生じた。まず、0°から180°のノッチパターンが明瞭になった。次に、10kHz以上の帯域に、1番目のノッチとほぼ同じ遷移パターンを示す2番目のノッチ(N2)が出現した。このノッチパターンは、他のモデルでも存在するが、明確ではなかった。最後に、2番目のピークが約1kHz上昇し、3番目のピークが約0.5kHz下降して2つのピークが接近した。このとき、2番目のピークの振幅は減少してブロードになり、3番目のピークの振幅は増加した。これらの変化は、3段になったことにより生じたと考えられる。このように、3段モデルは単純な形状ながら、図3と類似したピークノッチパターンを生成した。図3のピーク/ノッチを図8(D)に重ねて図示しているが、これによっても、実施例の耳介装置10のピーク/ノッチパターンが実際の耳介から発明者等が解明したピーク/ノッチパターンとかなり類似していることが読取れる。
なお、図7および図8は本来はカラー画像であるが、そのカラーの原画像においては、青色が最も低い音圧レベル、たとえば−20dBを示し、緑色が0dB付近の音圧レベルを示し、黄色を経て赤色になり、赤色が最も高い音圧レベル、たとえば20dBを示す。そして、図8(D)の実施例モデルの画像では、3つのピークP1,P2,P3付近で縦方向に赤色の帯(または太い点線)が見て取れる。したがって、図1に示す実施例のピーク/ノッチパターンが図4に示すモデルパターンによく対応している。
これらの実験を通して、発明者等は次のような結論を得た。すなわち、ピークには、音源の仰角に対して指向性の小さい共鳴と、指向性の大きい共鳴が混在している。耳介の腔の第1共鳴(P1)は内外方向に発生し、腔(凹部14)の底部(内側面)を閉鎖端、開口部を開放端とする片開き管の第1共鳴であり、その強度は音源の仰角による影響が小さい。耳介の腔の第2、3共鳴(P2、P3)は、耳介の長軸(図1における上下方向)に沿った方向に発生し、腔の上部下部をそれぞれ閉鎖端とする両側閉管に類似した第1、2共鳴である。腔の下部は共鳴時に圧力変動の腹となるため、この部分に観測点(マイクロフォン18)があることでピークとして観測される。その強度は、音源が長軸方向にあるときに極大となる指向性を持つ。なお、腔の内部の段差(階段部16の各段面16a‐16c)は、長軸に沿って音響的な不連続性を生じさせ、上下方向の第1、第2共鳴の周波数や強度を変化させる要因となると思われる。
ノッチは長軸方向の共鳴に伴って出現する。0°以下と180°以上の仰角では、原型モデルでもノッチは確認できたが、0°から180°の仰角では、2段モデルあるは3段モデル(実施例の装置)でノッチパターンが明確になった。これより、0°から180°の仰角のノッチに対しては、耳介の腔の上部の構造が重要であることが明らかになった。これは、N1の生成には耳甲介舟、三角窩、舟状窩の共鳴が関与しているというこれまでの結果と一致する。
上で詳しく説明したように、発明者等は図4に示す原型モデルおよびそれからの各種変形モデルを作成して実験したが、図1実施例の耳介装置10が実際の耳介のピーク/ノッチパターンを出現させることを確認した。実施例の耳介装置10は、平板の基体12に階段部16を有する凹部(腔)14を形成しただけの極めて単純な形状、構造である。それにも拘わらず、得られたピーク/ノッチパターンは実際の耳介のものと大差ないため、実施例の耳介装置10を用いれば、仰角方向における音源定位(知覚)が可能となる。
実際の耳介形状と実施例の構造とを比較してみると、実際の耳介には、図4で示すように4つの腔が存在する。実施例の耳介装置10(3段モデル)の3つの段面の最下段面16a、中間段面16bおよび最上段面16cが、それぞれ、耳甲介腔、耳甲介舟、三角窩および舟状窩と対応すると思われる。
また、実耳ではN1が最高周波数に達する仰角は約120°であるが、実施例モデルにおいては90°であった。これは、実耳の長軸が鉛直方向より後方へ約30°傾いているからであると考えられる。
なお、発明者等は、さらなる実験によって、凹部14に形成する階段部16は3段以上であれば、たとえば4段でも、所要のピーク/ノッチパターンが得られることを確認した。ただし、段数が多くなればそれにつれて加工が面倒になるので、必要な特性との兼ね合いで段数を決めればよい。
さらに、発明者等の実験に基づけば、凹部14のアスペクト比が実施例における約2.0より小さくても、階段部16の段数が3段以上であれば、比較的良好なピーク/ノッチパターンが得られることが分かった。たとえば1.5以上のアスペクト比であれば、かなり明瞭なピーク/ノッチパターンが得られる。
さらにまた、実施例では、凹部14の平面視形状を矩形としたが、3段以上の階段部16を形成する限り、矩形以外の形状、たとえば長円形、楕円形、三角形、逆三角形などの平面視形状であってもよい。
また、実施例で示した寸法などの具体的数値は単なる例示であり、目的とする音響的性質(たとえば、男声、女声、子供)に基づいて適宜変更できることは言うまでもない。
さらに、実施例では、階段部16の各段面16a‐16cを垂直面として形成しているが、これらの段面をたとえば上端または下端を内外方向(図1(B)における左右方向)に出し入れするなどして、傾斜面として形成することも考えられる。
同様に、階段部16の各段面16a‐16cの下端面を水平面として形成しているが、これらの下端面の内外方向(図1(B)における左右方向)端部を上下方向に変位して傾斜面として形成することも考えられる。
たとえば、この実施例の耳介装置10は、ロボットへの適用も考えられるが、その場合、たとえば図9に示す実施例のように、ロボットの頭部を、そのまま基体として利用することも考えられる。
図9に示すロボット100は、頭部102を含み、この頭部102には、たとえばその内部にカメラ(図示せず)を設けた目104aや、スピーカ(図示せず)を備える口104bなどが形成される。頭部102は、直接、または首106を介して、胴体または胴部108によって支持される。
図9の実施例では、頭部102に図1に示すような耳介装置110が設けられる。この場合、頭部102を図1の実施例における基体12と同様の基体112と看做し、この頭部すなわち基体112に凹部114を穿設し、その凹部114の内側面に、図1の段面16a‐16cと同様の3つの段面を有する階段部116を形成している。また、図示しないが、図1の実施例と同様に、最下段の段面にはマイクロフォンが設置される。
図9では左耳に相当する1つの耳介装置110だけが図面に表現されているが、頭部102の図9では隠れている側には、同じような構造の右耳に相当する耳介装置が設けられることは勿論である。このように、水平方向に離れた2つの耳介装置110を設けたロボット100では、仰角方向の音源の定位だけではなく、水平方向での音源定位も可能である。
このような耳介装置110は、図1の実施例と同じ機能を果たすものであり、ここでは、重複する説明は省略する。
なお、図9の実施例において、耳介装置110を頭部102に直接形成するのではなく、頭部側面に図1の実施例の耳介装置10を取り付けるようにしてもよい。この場合には、耳介装置10の凹部14が、頭部102に直接にではなく、頭部102側面に間接的に形成されることになるが、この場合も凹部は頭部側面に形成されるのである。ただし、いずれの実施例においても、図2(B)に示す角度θを確保して耳介装置110または10を設けるものとする。
10,110 …耳介装置
12,112 …基体
14,114 …凹部
16,116 …階段部
18 …マイクロフォン

Claims (7)

  1. 基体、
    前記基体に形成される凹部、
    前記凹部内側面に形成され、最下段から最上段に向かって段々にせり出す3段以上の段面を有する階段部、および
    前記階段部の最深の段面に設けられるマイクロフォンを備える、耳介装置。
  2. 前記凹部は前記階段部の幅の方向の第1方向がそれに交差する第2方向より短く形成される、請求項1記載の耳介装置。
  3. 前記第2方向の長さと前記第1方向の長さとの比が1.5以上である、請求項2記載の耳介装置。
  4. 前記第2方向の長さと前記第1方向の長さとの比が2.0以上である、請求項3記載の耳介装置。
  5. 前記基体はロボットの頭部である、請求項1ないし4のいずれかに記載の耳介装置。
  6. 頭部およびそれを支持する胴部を有するロボットであって、
    前記頭部の両側面にそれぞれ開口が側面を向くように形成される2つの凹部、
    前記凹部内側面にそれぞれ形成され、最下段から最上段に向かって段々にせり出す3段以上の段面を有する2つの階段部、および
    前記階段部のそれぞれの最深の段面に設けられる2つのマイクロフォンを備える、ロボット。
  7. 基体、
    前記基体に平面矩形に形成され、その矩形の長辺と短辺とのアスペクト比が1.5以上である凹部、
    前記凹部内側面に、前記矩形の長辺方向に形成され、最下段から最上段に向かって段々にせり出す3段以上の段面を有する階段部、および
    前記階段部の最深の段面に設けられるマイクロフォンを備える、耳介装置。
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