<実施形態1>
本発明を適用した、ロボットの通信制御を行う通信システムについて説明する。図1は、本発明を適用したロボット制御の通信システムの接続図である。
親局100は、子局101〜103それぞれに対して各子局のアーム104を動作させるための個別の制御情報を1msの制御フレーム毎に送信する。子局101〜103は、親局100から受信した制御情報に基づいてアーム104を制御し、フィードバック情報を親局100に送信する。
ロボットのアーム104は、子局101〜103によって制御され、物体105に作用する。物体105は、アーム104が作用する対象である。本システムにおいて親局100は、子局101〜103に接続された複数のアーム104を協調させて物体105に作用するという制御を行う。
このような制御の例としては、アーム104の先に付いたハンド(不図示)で物体105を持ち上げて、所定の位置に移動させる、といった制御が挙げられる。親局100が子局101〜103に制御情報を送信すると、子局101〜103はそれに基づいた処理を行い、親局100にフィードバック情報を返す。
親局100は、このフィードバック情報に基づいて次の制御フレームにおける制御情報を補正する。このような制御情報のやり取りを1msの制御周期で繰り返すことにより、アーム104の協調動作が行われる。
図9は、親局100と子局101〜103との間でやり取りされる制御情報とフィードバック情報の内部形式を示す図である。親局100および子局101〜103は、制御情報形式900または制御情報形式901いずれかの形式で制御情報とフィードバック情報のやり取りを行う。
制御情報形式900では、親局100はアーム104が物体105を押す力となるトルク制御情報を送信する。制御情報形式900で制御情報を受信した子局は、アーム104と物体105の間にかかる圧力の、1ms後における予測圧力を演算により求め、フィードバック情報として親局100に返す。
制御情報形式901では、親局100はアーム104が物体105を押す力となるトルク制御情報と、アーム104の角度を調節するための角度制御情報を送信する。制御情報形式901で制御情報を受信した子局は、前記予測圧力に加えて、確認のため親局100から受信した角度制御情報を合わせて、フィードバック情報として親局100に返す。
親局100と子局101〜103はTDMA/TDD方式で通信を行うため、制御情報とフィードバック情報は、それぞれ一定個数のタイムスロットを使って伝送される。ここで、制御情報形式900で通信を行う場合に必要となるスロット数は、制御情報として1スロット、フィードバック情報として1スロットである。
制御情報形式901で通信を行う場合は、制御情報として3スロット、フィードバック情報として3スロットが必要となる。親局100は、伝送帯域を効率良く利用するため、通常は制御情報形式900で制御情報を送信し、アーム104の角度を調整する必要がある場合にのみ制御情報形式901で制御情報を送信する。
次に、本システムにおける親局100と子局101〜103の構成を説明する。図2は、親局100と子局101の構成を表す図である。子局102、103については図示しないが、子局101と同一の構成である。
トルク制御情報生成部200は、一定のフレーム長を有し、1msの一定周期毎に子局101〜103のアーム104内のモーター220のトルクを制御するためのトルク制御情報を生成し、送信部205に送信する。トルク制御情報は、子局101〜103から前回受信したフィードバック情報に基づいて補正される。
角度制御情報生成部201は、前回受信したフィードバック情報を解析し、ある子局のモーター220の角度の変更が必要と判断すると、予備スロット割当部202に対して予備スロットの割り当てを要求する。そして、スロット割り当て成功の通知が得られた場合には、モーター220の角度制御情報を生成し、送信部205に送信する。
予備スロット割当部202は、スロットの割り当て要求を受け付けると、その要求に応じて予備下り用スロット内の空きスロットと、予備上り用スロット内の空きスロットを割り当てる。要求されたスロット数に対して空きスロットが足りない場合は、優先度記憶部203に記憶されている情報に従って、優先度の高い子局用の予備スロット割り当て要求を優先的に割り当てる。割り当ての成否は、要求元すなわち本実施形態の場合は角度制御情報生成部201に返される。以上の動作の手順を図7に示すが、詳細については後述する。
優先度記憶部203は、図5に示すような形式の優先度テーブルを保持する。優先度テーブル500は、各子局の識別子と、優先度の情報を保持する。優先度の値、1、2、3は、小さいほど優先順位が高いものとする。
スロット割当部204は、伝送フレームを制御周期と同じ1msとし、一つの伝送フレーム内で親局100と子局101〜103が行う通信のスロットを図3のように割り当てた上で、その割り当て情報を送信部205に送信する。図3および割り当ての詳細については後述する。
親局100の送信部205は、トルク制御情報が生成するトルク制御情報のみを受け取っている場合には制御情報形式900でそれぞれの子局用の制御情報を生成し保持する。また、角度制御情報生成部201が生成する角度制御情報も受け取っている場合には制御情報形式901で、それぞれの子局用の制御情報を生成し保持する。さらに送信部205は、スロット割当部204および予備スロット割当部202からスロット割り当て情報を受け取り、これを保持する。そして送信部205は、同期信号生成部207から入力される同期信号、および前記スロット割り当て情報に基づいたタイミングで、保持しているデータを伝送路に送信する。
親局100の受信部206は、子局101〜103から親局100に宛てに送信された信号を復調し、トルク制御情報生成部200および角度制御情報生成部201に送る。
親局100の同期信号生成部207は、親局100および子局101〜103がスロットの同期を取るための信号を生成し、送信部205に送る。子局101のモーター制御部210は、親局100から受信した制御情報、すなわち、親局100のトルク制御情報生成部200と、角度制御情報生成部201で生成された制御情報を元に、ロボットのアーム104のモーター220を制御する。
子局101の演算部211は、圧力センサ221から取得したアーム104と物体105の間にかかる現在の圧力情報と、親局100から受信した制御情報を元に、1ms後の予測圧力値を求め、フィードバック情報として送信部213に送信する。また、演算部211は、受信した制御情報に角度情報が含まれる場合には、その角度制御情報を確認のためにフィードバック情報に含める。演算部211は、制御情報を受信してフィードバック情報を送信するまでにスロット2個分の演算時間を要する。
子局101の受信部212は、伝送路上の信号から、自局宛ての制御情報を抽出し、モーター制御部210と演算部211に送る。
子局101の送信部213は、演算部211から受け取ったフィードバック情報を、スロット制御部214の指示に基づいたタイミングで伝送路に送信する。
子局101のスロット制御部214は、受信部212で受信した信号から、スロット同期信号及びスロット割り当て情報を抽出し、送信部213が、親局100によって指示されたスロット割り当てで送信するように制御する。例えばスロット制御部214は、上りスロットおよび予備上り用スロット内に子局101用として割り当てられたスロットにおいて送信部213がデータを送信するように制御する。
ロボットのアーム104のモーター220は、モーター制御部210によって指定されたトルクを、同じくモーター制御部210によって指定された角度で発生する。アーム104の圧力センサ221は、アーム104と物体105の間にかかる圧力を測定し、子局101の演算部211に送信する。
ここで、親局100のスロット割当部204によるスロット割り当て方法を説明する。図3は、スロット割当部204によるスロット割り当てを表す図である。図に示すように、常時使用するために固定位置に配置された下り用スロットおよび上り用スロット以外の位置に、予備下り用スロットおよび予備上り用スロットが配置されている。
スロット割当部204は、報知スロット300をフレームの先頭に配置する。報知スロット300では、スロット割り当て情報とスロット同期信号が、親局100から子局101〜103へ同報送信される。スロット割当部204は、報知スロット300に1個のスロットを割り当てる。
またスロット割当部204は、予備下り用スロット301を、下りスロット302の前方に配置し、予備下り用スロット301に2個のスロットを割り当てる。スロット割当部204は、下りスロット302を、上りスロット303の前方に配置し、下りスロット302内の各スロットに、親局100が子局101〜103へ送信する制御情報の伝送用として子局毎に1スロットずつ、計3スロットを割り当てる。
スロット割当部204は、上りスロット303を、下りスロット302の後方に配置する。また、スロット割当部204は、上りスロット303内の各スロットに、子局101〜103が親局100へ送信するフィードバック情報の伝送用として子局毎に1スロットずつ、計3スロットを割り当てる。
スロット割当部204は、予備上り用スロット304を、上りスロット303の後方に配置する。またスロット割当部204は、予備上り用スロット304に2個のスロットを割り当てる。
子局101用の下りスロット310を用いて、親局100から子局101へ宛てた制御情報が伝送される。また、子局101用の上りスロット311を用いて、子局101から親局100へ宛てたフィードバック情報が伝送される。
スロット割当部204は、下りスロット302の中の各スロットを、図3に示すように子局101用、子局102用、子局103用の順で割り当てる。また、上りスロット303の中の各スロットも同様に子局101用、子局102用、子局103用の順で割り当てる。このように割り当てることで、子局101用の下りスロット310と、子局101用の上りスロット311の間に、子局101が演算を行うための時間がスロット2個分確保される。子局102、子局103についても同様なスロット割り当てが行われる。
ここで、親局100と子局101〜103が、制御情報形式900で通信する場合の動作について説明する。制御情報形式900では、親局100から子局101へ送信される制御情報、および各子局から親局100へ送信されるフィードバック情報は、それぞれ1スロットで伝送することが出来る。
したがって、親局100と子局101〜103が制御情報形式900で通信する場合は、図3のスロット310で子局101へ宛てた制御情報が全て伝送される。同様に、スロット311で子局101からのフィードバック情報が全て伝送される。子局102、103についても同様であるため、スロット割り当ては図3に示すような割り当てとなる。このとき子局101〜103それぞれには、受信完了から送信開始までスロット2個分の処理時間が確保される。よって親局100と子局101〜103は、下りスロット302と上りスロット303を用いて、1msの制御周期毎に制御情報形式900で制御情報とフィードバック情報のやり取りを行うことができる。
次に、親局100と一部の子局が、制御情報形式901で通信する場合の動作について説明する。まず親局において子局からのフィードバック情報が解析され、その結果トルク制御情報の他に角度制御のための情報を送信する必要があると判断される。制御情報形式901で通信する状況が発生するのは、その角度制御のための角度制御情報生成部201が角度制御情報を生成するときである。ここでは、角度制御情報生成部201が子局101用と子局102用の角度制御情報を生成する場合の動作を例に説明する。
まず、角度制御情報生成部201が、予備スロット割当部202に、子局101用と子局102用それぞれについて予備スロット割り当て要求を出す。予備スロット割当部202が受け取るパラメータは、各要求について(子局識別子、下り用要求予備スロット数、上り用要求予備スロット数)の3つである。
ここで、制御情報形式901では、制御情報とフィードバック情報の伝送を行うために、それぞれ3スロットが必要となるが、下りスロットと上りスロットには各子局についてそれぞれ1スロットしか割り当てがない。したがって、角度制御情報生成部201が角度の追加情報を送るために要求する下り用要求予備スロット数と上り用要求予備スロット数は、子局101、子局102それぞれについて2個ずつとなる。また子局の識別子は、予め親局100と各子局が接続されたときに決定されており、いま、子局101、子局102、子局103の識別子が、それぞれ101、102、103であるとする。角度制御情報生成部201が発行する予備スロット割り当て要求は、(子局識別子:101、下り用要求予備スロット数:2、上り用要求予備スロット数:2)と(子局識別子:102、下り用要求予備スロット数:2、上り用要求予備スロット数:2)となる。
図6は、予備スロット割当部202において予備スロット割り当て要求を保持するための要求テーブルの構成を表す図である。予備スロット割当部202は、受け付けた要求を要求テーブル600に保持する。要求テーブル600には、各要求について、子局の識別子、下り用要求予備スロット数、下り用要求予備スロット数の3つのパラメータが格納できる形式となっている。さらに、要求テーブル600は、優先度割り当て処理のための作業パラメータとして、各要求について処理済みフラグおよび割り当て可否フラグを保持する。予備スロット割当部202は、要求を受け付けた時点では、処理済フラグおよび割り当て可否フラグをFALSEに設定する。
予備スロット割当部202は、1フレーム分の要求を全て受け付けたら、要求の優先順位を決定し、順番に予備スロットの割り当てを行う。図7は、予備スロット割当部202における予備スロット割り当て手順を表す図である。
ステップS1において予備スロット割当部202は、要求テーブル600を参照して未処理の要求があるか否かをチェックする。ここでは、子局101用と子局102用の要求があり、ともにまだ未処理のためステップS2へ進む。
ステップS2において予備スロット割当部202は、優先度テーブル500を参照し、未処理の要求がある子局のうち最も優先度の高いものを割り当て候補とする。優先度テーブル500では子局101と子局102では子局102の優先度が高いため、子局102が割り当て候補となり、ステップS3へ進む。
ステップS3において予備スロット割当部202は、割り当て候補となった子局102との通信に必要なスロット数が、予備下り用スロット301と予備上り用スロット304の中の空きスロットに入るか否かをチェックする。ここで、要求テーブル600によれば、子局102が必要なスロット数は、予備下り用スロット301に2個、予備上り用スロット304に2個である。まだ他の子局には予備スロットを割り当てていないため、図3のように予備下り用スロット301と予備上り用スロット304にはそれぞれ2個ずつの空きスロットが存在する。したがって十分な空きスロットがあると判定され、ステップS4に進む。
ステップS4において予備スロット割当部202は、割り当て候補となっていた子局102用のスロットを予備下り用スロット301と予備上り用スロット304に割り当てる。そして割り当て候補となっていた子局の割り当て可否フラグをTRUEとして、ステップS5に進む。
ステップS5において予備スロット割当部202は、要求テーブル600の子局102に対して処理済みフラグをTRUEとし、ステップS1に戻る。
ステップS1において要求テーブル600の子局101の処理済みフラグがまだFALSEであるので、ステップS2へ進む。
ステップS2において、要求テーブル600の処理済みフラグがFALSEとなっているのは子局101のみであるので、割り当て候補を子局101としてステップS3へ進む。
ステップS3において、予備下り用スロットと予備上り用スロットにそれぞれ2個あった空きスロットは、共に前記ステップS4で子局102用のスロットに割り当てられ、もう残っていない。従って、子局101用の予備スロットの割り当ては行われずにステップS5へ進む。
ステップS5において、要求テーブル600の子局101の処理済みフラグはTRUEとなり、ステップS1に戻る。
ステップS1において、要求テーブル600の処理済フラグがFALSEとなっている子局は存在しないため、ステップS6へ進む。
ステップS6において、各要求についての割り当て可否フラグの内容を要求元に返した後に要求テーブル600を初期化し、1フレーム分の予備スロット割り当て処理を終了する。
以上の手順により、子局102との通信用として予備下り用スロットと予備上り用スロットにそれぞれ2個ずつのスロットが割り当てられる。図4は、このときのスロット割り当てを表す図である。
図4のスロット402とスロット400とが、子局102との通信用に割り当てられている。角度制御情報生成部201は、子局102との通信用の予備スロットが確保されたことを予備スロット割当部202から通知されるので、次のフレームにおいて、子局102用の角度制御情報を生成して送信部205に送る。なお、子局101用の角度制御情報については次のフレーム以降で再度予備スロット割り当て要求を行い、スロットが確保できたら生成するものとする。
親局100の送信部205は、受け取った子局102用の角度制御情報を、同じく子局102用のトルク制御情報と合成して制御情報形式901の制御情報を生成し、図4のスロット402とスロット400を使って子局102用の制御情報を送信する。図4から、子局101〜103それぞれには、受信完了から送信開始までスロット2個分の処理時間が確保されていることがわかる。
また、図4において、子局102が制御情報の受信を全て完了するのは、スロット400の受信完了時となる。これはスロット番号4のときである。また、子局102がフィードバック情報の送信を開始するのは、図4のスロット401の送信開始時となる。これはスロット番号7のときである。
一方、子局102と親局100が制御情報形式900で通信する場合には図3のようなスロット割り当てになっていた。この場合においても、子局102が制御情報の受信を全て完了するのはスロット番号4のときであり、子局102がフィードバック情報の送信を開始するのはスロット番号7のときである。
すなわち、子局102は、親局100と制御情報形式900または制御情報形式901いずれの形式で通信する場合にも、常に同じスロットにおいて制御情報の受信を完了し、同じスロットにおいてフィードバック情報の送信を開始する。
また図3と図4から、子局101、103についても同様に、子局102と親局100が制御情報形式900または901いずれの形式で通信する場合にも、常に同じスロットにおいて制御情報の受信を完了し、同じスロットにおいてフィードバック情報の送信を開始していることがわかる。
各子局からみると、自局または他の子局の制御情報の中に、角度情報が有る無しに関わらず、正確に1ms毎に全ての制御情報を得ることができ、常に同じタイミングでフィードバック情報を返すことができる。
これにより、一定の周期で親局と子局が制御情報とフィードバック情報をやり取りするようなシステムにおいて、制御情報とフィードバック情報のサイズが変化するような場合であっても、制御周期の一定性が保たれ、制御の精度を高めることが出来る。また、角度情報を毎回送信しないため、伝送帯域を有効に活用することが出来る。
実施形態1では、制御情報形式901のフィードバック情報に、子局が受信した角度制御情報を含めた。しかし、制御情報形式901のフィードバック情報に、受信した角度制御情報を含めない場合には、スロット割当部204は、予備上り用スロット304を割り当てなくてもよい。このようなスロット割り当ての例を図10に示す。この場合においても、各子局の受信完了タイミングと送信開始タイミングは、やはり一定に保たれるため、一定の周期で親局と子局が制御情報とフィードバック情報をやり取りするようなシステムにおいて、上記と同様の効果を得ることができる。
<実施形態2>
実施形態2において、実施形態1で説明した内容と異なる部分を説明する。図11は、実施形態2において親局100と子局101〜103との通信に用いられる変調方式を表す図である。実施形態2では、伝送路の悪化している子局に対して、データを確実に送るために、予備スロットを用いて情報を冗長化して送信し、また変調方式をデータの誤りが生じにくい変調方式に切り替える。
親局100と子局101〜103との通信は、第1変調方式1100または第2変調方式1101のいずれかの変調方式で行われる。第1変調方式1100と第2変調方式1101の違いは、多値数が異なる点のみである。一般に、変調方式の多値数を小さくすると伝送誤りは発生しにくくなるが、送受信に必要なスロット数は増加する。第1変調方式1100での通信に必要なスロット数は制御情報とフィードバック情報それぞれ1スロットであるが、第2変調方式1101においては、それぞれ3スロットである。例えば親局100と子局101〜103は、通常は64QAMの第1の変調方式1100で通信を行い、伝送路の状態が悪化、即ち干渉が増加した場合にのみQPSKの第2変調方式1101で通信を行う。
図8は、本発明の実施形態2の親局と子局の機能ブロックを表す図である。以下、実施形態1の図2で説明したブロックと異なる機能ブロックについて記述する。
親局100の伝送路品質監視部800は、親局100の中にあって、子局101〜103の伝送路品質情報生成部810が生成した伝送路の品質情報を調査する。そして品質情報の値が所定の閾値以下となり、一部の子局の伝送路の品質が悪化していることを検出すると、その子局の識別子を変調方式決定部801に通知する。ここで言う伝送路の品質情報の値は、例えば各子局における、親局からの送信信号の受信レベルなどを意味する。
親局100の変調方式決定部801は、伝送路品質監視部800から一部の子局との伝送路の品質情報が悪化していることを通知されると、予備スロット割当部202に対して予備スロットの割り当てを要求する。変調方式決定部801は、スロット割り当て成功の通知が得られた場合には、その次のフレームにおいて、伝送路悪化の通知を受けた子局用の通信スロットでは第2変調方式1101で通信するという情報を、変調方式記憶部804に格納する。
親局100の送信部802は、図2の送信部205に、変調方式記憶部804から指示された変調方式で変調する機能を追加したものである。また送信部802は、送信の際にどの変調方式で変調したかを表す情報を報知スロット300で送信する機能を持つ。
親局100の受信部803は、図2の受信部206に、変調方式記憶部804から指示された変調方式に対応する復調方式で復調する機能を追加したものである。親局100の変調方式記憶部804は、図13に示すような変調方式テーブル1300を持ち、変調方式決定部801で決定された各子局との通信の変調方式を保持する。なお、変調方式決定部から特に通知のない子局については変調方式を1100として保持する。
また、親局100の変調方式記憶部804は、スロット割当部204が出力するスロット割り当て情報と、同期信号生成部207が生成する同期信号から、変調方式の切換をどのタイミング行えばよいかを決定する。そして、各子局との通信における変調方式が変調方式テーブル1300で保持している内容と一致するようなタイミングで、送信部802と受信部803に変調方式情報を出力する。
伝送路品質情報生成部810は、子局101〜103の中にあって、受信部212における受信データのビット誤り率を取得し、伝送路品質情報としてフィードバック情報と合成して送信部213に送信する。
子局101〜103の変調方式制御部811は、親局100が送信する情報から自局の変調方式に関する情報を抽出し、受信部812と送信部813に変調方式を伝える。子局101〜103の受信部812は、図2の受信部212に、変調方式制御部811から通知された変調方式に対応する復調方式で復調する機能を追加したものである。また子局101〜103の送信部813は、図2の送信部213に、変調方式制御部811から通知された変調方式で変調する機能を追加したものである。
図12は、親局100の送信部802および子局101〜103の送信部813の変調部と、親局100の受信部803および子局101〜103の受信部812の復調部の内部構成を表す図である。
親局100の変調方式切換部1200は、指示された変調方式に従って、スイッチ1201を制御する。スイッチ1201は、変調方式切換部1200によって制御され、64QAM変調部1202またはQPSK変調部1203いずれか一方の変調処理を有効にする。
親局100の64QAM変調部1202は、入力されたデータを64QAM変調して伝送路に出力する。またQPSK変調部1203は、入力されたデータをQPSK変調して伝送路に出力する。そして、送信バッファ1204は、保持しているデータをスロット割り当て情報に基づいて変調部に送る。
子局101〜103の復調方式切換部1210は、指示された変調方式に対応する復調方式に従って、スイッチ1211を制御する。スイッチ1211は、復調方式切換部1210によって制御され、64QAM復調部1212またはQPSK復調部1213いずれか一方の復調処理を有効にする。
子局101〜103の64QAM復調部1212は、入力された信号を64QAM復調して出力する。QPSK復調部1213は、入力された信号をQPSK変調して出力する。
以上の構成により、親局100の送信部802および子局101〜103の送信部813と、親局100の受信部803および子局101〜103の受信部812は、複数の変調方式を切り換えることができる。
ここで、親局100と子局101〜103が、第1変調方式1100で通信する場合の動作について説明する。第1変調方式1100では、親局100から子局101へ送信される制御情報、および各子局から親局100へ送信されるフィードバック情報は、それぞれ1スロットで伝送することが出来る。したがって、親局100と子局101〜103が第1変調方式1100で通信する場合は、図3のスロット310で子局101へ宛てた制御情報が全て伝送される。同様に、スロット311で子局101からのフィードバック情報が全て伝送される。子局102、103についても同様であるため、スロット割り当ては図3のようになる。このとき子局101〜103それぞれには、受信完了から送信開始までスロット2個分の処理時間が確保される。よって親局100と子局101〜103は、下りスロット302と上りスロット303を用いて、1msの制御周期毎に第1変調方式1100で制御情報とフィードバック情報をやり取りすることができる。
次に、親局100と一部の子局が、第2変調方式1101で通信する場合の動作について説明する。第2変調方式1101で通信する状況が発生するのは、親局100の伝送路品質監視部800が一部の子局との伝送路状態の悪化を検出するときである。ここでは、親局100と子局101および親局100と子局102の間の伝送路状態が悪化した場合を例に説明する。
まず、親局100の伝送路品質監視部800において、子局101と102の伝送路品質情報生成部810が生成した伝送路の品質情報から、親局100と子局102および親局100と子局102との間の伝送路の品質が悪化していることが検出される。そして、その情報が変調方式決定部801に伝わる。親局100の変調方式決定部801は、予備スロット割当部202に、子局101用と子局102用それぞれについて予備スロット割り当て要求を出す。
ここで、第2変調方式1101では、制御情報とフィードバック情報の伝送には、それぞれ3スロットが必要であるが、下りスロットと上りスロットには各子局についてそれぞれ1スロットしか割り当てがない。したがって、変調方式決定部801が要求する下り用要求予備スロット数と上り用要求予備スロット数は、子局101、子局102それぞれについて2個ずつとなる。
親局100の予備スロット割当部202が受け取るパラメータは、各要求について(子局識別子、下り用要求予備スロット数、上り用要求予備スロット数)の3つである。したがって、親局100の変調方式決定部801が発行する予備スロット割り当て要求は、(子局識別子:101、下り用要求予備スロット数:2、上り用要求予備スロット数:2)と(子局識別子:102、下り用要求予備スロット数:2、上り用要求予備スロット数:2)となる。
その結果、子局102との通信用として予備下り用スロットと予備上り用スロットにそれぞれ2個ずつのスロットが割り当てられ、図4に示すようなスロット割り当てとなる。このようなスロット割り当てとなる経緯は、実施形態1において、親局100の角度制御情報生成部201が子局101用と子局102用の角度制御情報を生成する場合の動作と同じであるので省略する。
親局100の変調方式決定部801は、子局102との通信用の予備スロットが確保されたことを予備スロット割当部202から通知されるので、次のフレームにおいて、子局102との通信用の変調方式を第2変調方式1101とするための情報を変調方式記憶部804に格納する。
これにより、親局100の変調方式記憶部804に記憶された変調方式テーブル1300は、図13に示した内容となる。変調方式記憶部804は、子局102との通信スロットのタイミングにおいて、第2変調方式1101で変復調するように送信部802と受信部803に指示を出す。
送信部802に変調方式を第2変調方式1101とする指示が入力されると、図12の変調方式切換部1200は、スイッチ1201を制御して、QPSK変調部1203による変調パスが有効になるようにする。
受信部803に変調方式を第2変調方式1101とする指示が入力されると、図12の復調方式切換部1210は、スイッチ1211を制御して、QPSK復調部1213による復調パスが有効になるようにする。
以上の動作により、親局100と子局102は、第2変調方式1101を用いて通信する。このとき親局100から子局102への制御情報は、図4のスロット402とスロット400で伝送される。また子局102から親局100へのフィードバック情報は、図4のスロット401とスロット403で伝送される。一方、子局101および子局103との通信は第1変調方式1100で行われる。
図4から、子局101〜103それぞれには、受信完了から送信開始までスロット2個分の処理時間が確保されていることがわかる。また、図4において、子局102が制御情報の受信を全て完了するのは、スロット400の受信完了時となる。これはスロット番号4のときである。また、子局102がフィードバック情報の送信を開始するのは、図4のスロット401の送信開始時となる。これはスロット番号7のときである。
一方、子局102と親局100が第2変調方式1101で通信する場合には図3のようなスロット割り当てになっていた。この場合においても、子局102が制御情報の受信を全て完了するのはスロット番号4のときであり、子局102がフィードバック情報の送信を開始するのはスロット番号7のときである。
すなわち、子局102は、親局100と第1の変調方式1100または第2変調方式1101いずれの方式で通信する場合にも、常に同じスロットにおいて制御情報の受信を完了し、同じスロットにおいてフィードバック情報の送信を開始する。また図3と図4から、子局101と子局103も同様に、子局102と親局100が第1の変調方式1100または第2変調方式1101のいずれの場合にも、常に同じスロットにおいて制御情報の受信を完了し、同じスロットにおいてフィードバック情報の送信を開始していることがわかる。
各子局からみると、自局または他の子局の変調方式が第1の変調方式1100であるか第2変調方式1101であるかに関わらず、正確に1ms毎に全ての制御情報を得ることができ、常に同じタイミングでフィードバック情報を返すことができる。これにより、一定の周期で親局と子局が制御情報とフィードバック情報をやり取りするようなシステムにおいて、制御情報とフィードバック情報のサイズが変化するような場合であっても、制御周期の一定性が保たれ、制御の精度を高めることが出来る。また、伝送路の状態によって変調方式を変えることができるため、システムの信頼性を向上させることが出来る。
実施形態2では、変調方式を切り換えるとしたが、変調方式の代わりに符号化方式を切り換えてもよい。この場合には、各子局における送受信のタイミングを変えることなく、伝送路の状態に応じて符号化方式を変更し、システムの信頼性を向上させることが出来る。