JP5521042B2 - 結合状態において高pmdを有する光ファイバ干渉計、光ファイバジャイロスコープ(fog)、及びそのようなジャイロスコープを含む慣性航法システム - Google Patents

結合状態において高pmdを有する光ファイバ干渉計、光ファイバジャイロスコープ(fog)、及びそのようなジャイロスコープを含む慣性航法システム Download PDF

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Description

発明の分野はサニャック効果に基づく干渉計ジャイロスコープの分野、より詳細には光ファイバジャイロスコープ(FOG)の分野である。
光ファイバジャイロスコープは、特に何れの外部航法支援も不可能又は利用不可能であるときに信頼性、小ささ及び極限感度に関するそれらの品質故に慣性航法システムにおける回転計測にますます使用されている。光ファイバジャイロスコープは図1に描かれたサニャックリング干渉計である。光ファイバジャイロスコープは一般的に広帯域光源1、第1のビームスプリッタ2(光源/受光器スプリッタと呼ばれる)、入口/出口偏光及び単一空間モードフィルタ3、第2のスプリッタ4(コイルスプリッタと呼ばれる)、光ファイバコイル5及び検出器6を含む。それ自身は既知の方式において、ジャイロスコープは一般的に変調器(位相又は周波数変調)と信号処理システムを備える。光源のスペクトル幅ΔλFWHMは一般的に発光中心波長λの0.1%ないし10%である。スペクトル幅は光源の発光幅に対応してもよい。より広いスペクトル範囲(1〜100nm)にわたり掃引される(自然幅<1nmの)狭帯域光源が使用されてもよい。
相互構成において、入射光ビームは偏光子と空間フィルタを通過した後、分割されて第1と第2の二次ビームを生じる。入口において偏光された第1のビームは例えば時計方向にコイルの第1の端部を介して注入され、コイルの第2の端部から出てきてもう一度偏光子を通過する。入口においてやはり偏光された第2のビームは反時計方向にコイルの第2の端部を介して注入され、コイルの第1の端部から出てきてもう一度偏光子を通過する。偏光子の下流において、第1と第2のビームは互いに干渉し、これらの干渉は検出器において読み取られる。
例として、ジャイロスコープが休止していれば、第1と第2のビームは同一経路を辿り、検出器において互いに同相である。一方ジャイロスコープが運動していれば、より正確にはコイルがその軸の周りに時計方向に回転すれば、第1の光ビームは干渉計の「最長」アームを辿るが、第2の光ビームは干渉計の「最短」アームを辿る。コイルの回転は従って光ファイバに沿って反対方向に巡回する第1と第2のビーム間の位相ずれを発生させる。この位相ずれは検出器にける第1と第2の光ビームの干渉状態を変化させる。
そのような回転センサが動作するためには、干渉計における偏光状態が偏光子の出口での、従って検出器での光量の消失、あるいは少なくとも、信頼性のある検出に不適合の減衰を生じにくいことが保証されなければならない。
現状技術において、二つの既知の解決策が存在する。第1の既知の解決策は偏波保持ファイバ(又はPMファイバ)と呼ばれる単一モードファイバで形成されたコイルを使用することにある。実際には、偏波保持ファイバは主軸と呼ばれる二つの直交軸を有する複屈折性の非常に大きいファイバである。そのようなファイバは、光ビームの偏光がその主軸の一方に整合していれば光ビームがファイバを通過する間はずっとその偏光を保存することができる。これはファイバの主モード間のゼロ又は低結合を保証することにより行われる。例えば、そのファイバコアを楕円形状に形成することにより、あるいはファイバ内に応力場を作り出すことにより、その主モード間において低結合であるファイバを作ることが知られている。
ジャイロスコープに偏波保持ファイバが使用されるときは、信号消失を生じないようにファイバは入口/出口偏光子の軸に対して正確に方向付けられねばならない。従って、ファイバの入口において、偏光子の軸がファイバの主モードの一つに平行であれば、光は選択された主モードに沿った偏光を伴ってファイバから出てくることになる。ファイバの出口において、選択された主モードが偏光子の軸にやはり平行であることも求められる。最も不都合な構成において、ファイバの出口において、ファイバの選択された主モードと偏光子の軸が互いに直交し、従って検出器に入射する光量の全喪失がある。従って検出は不可能である。より不都合な相対配置において、すなわち選択された主モードと偏光子の軸が互いに直交していない場合、出口偏光子は出てくるビームを大幅に減衰させ、これは従って検出器に入射する光量、従ってジャイロスコープの感度を減じる。
その結果、FOGの工業生産中に、光ファイバコイルの取り付けステップにおいて、検出器に入射する光量が信号変動の測定に適合する程度にその主軸がPMファイバの両端にある偏光子の軸と整合するように、特別の注意が払われねばならない。この整合ステップはしばしば手動で行われる。それは従って微妙で高価なステップである。
さらに、PMファイバでの減衰は1dB/kmのオーダである。また、FOGの感度はファイバコイル長に比例し、この長さは一般的に0.1kmないし10kmである。10kmのPMファイバ長は従って10dBの信号減衰に対応し、これはまだ非常に大きい減衰である。単位長さ当たりの減衰により、非常に長いPMファイバの使用は従ってFOGにおいては不適切である。PMファイバの使用に基づくFOGは実際には一般的に約10キロメートルに制限されたコイル長を有し、これもそれらの感度を制限する。
さらに、偏波保持ファイバは偏波を保存しない在来のファイバより高価である。
第2の既知の解決策は、一方では標準の単一モードファイバ(一般的に「電気通信」又はSM(単一モード)ファイバと呼ばれる)、従って偏波保存のないファイバで形成されたコイルを使用することにあり、他方では、例えばファイバコイルの入口と出口に設けられた「ライオット・デポラライザ」と呼ばれるデポラライザを使用することにある(特許文献1参照)。特許文献1において、入口/出口偏光子を通過することにより偏光された第1の二次ビームは、SMファイバコイルに時計方向に注入される前にライオット・デポラライザを通過することにより偏光解消される。コイルに注入される光量は従って全ての偏光方向に均一に分布する。従ってコイルの他端において、注入された光量の一部が入口/出口偏光子の軸に適合する偏光をもつことは確実であり、従って入口/出口偏光子の下流には十分な光量が存在する。なぜなら偏光子を通過した後に失われる偏光解消されたビームの強度は半分に過ぎないからである。ファイバコイルに反時計方向に注入された第2の2次ビームは同様の光路を辿る。最終的には、ジャイロスコープの組立中に偏光子に対するファイバの相対方位がどうであれ、第1と第2のビームは検出器において互いに干渉する。
偏波保存のないSMファイバは、安価でありかつ組立があまり厳密でないという利点を有する。しかしこの解決策は、高価でありかつそのファイバコイルへの組み込みがFOGの製造を複雑にするライオット・デポラライザの使用を必要とするという欠点をもつ。
最後に、SMファイバでの減衰は現在少なくとも0.25dB/kmのである。従って40kmのファイバ長に対し、信号減衰は少なくとも10dBであり、これは実際にはSMファイバFOGに対する最大長を決定する。SMファイバFOGのファイバ長は一般的には0.1kmないし20kmである。
一般的に、何れの光ファイバも偏波モード分散(PMD)を示す(例えば非特許文献1参照)。より正確には、ファイバは使用されるファイバ長Lに従って二つのPMD状態を持つと考えられる。
第1の状態は「固有」状態と呼ばれ、そこでは、DGD(群遅延時間差)で表示される二つの主偏波モード間の群伝搬時間差がファイバ長Lに対して直線的に増加する。この線形則の傾斜は固有偏波モード分散に対してPMDと表示される。従って、この固有状態では、
Figure 0005521042
ただし、PMD係数は直交モード間の有効群屈折率差
Figure 0005521042
に関連付けられ、ΔNeffは直交モード間の有効屈折率差であり、cは真空中の光速である。すなわち
Figure 0005521042
PMDは一般的にps/kmで表わされる。
この固有状態は複屈折に対応する。ビート長Λが定義されてもよく、これは、その端においてDGDが波の周期T(=λ/c)に等しくなるファイバ長である。すなわち、
Figure 0005521042
Figure 0005521042
この固有挙動は長さ2Lまで続き、この場合Lはファイバの相関長と呼ばれる(非特許文献1参照)。
2Lより大きいファイバ長Lに対し、状態はいわゆる「結合」状態となり、そのときDGDは長さの平方根として増加する。この平方根則の係数はPMDで表示される。
Figure 0005521042

ただし、
Figure 0005521042
PMDは一般的にps/√kmで表わされる。
従って以下のモデルが定義でき、これは何れのタイプのファイバにも当てはまる。
Figure 0005521042
Figure 0005521042
従って
Figure 0005521042
従って図2に模式的に示されるように、何れのファイバも長さLの関数としてそのDGDの特性曲線を有する。
実際、偏波保持(PM)ファイバは1550nmの波長において3mm程度のビート長Λにより特徴付けられる。すなわちΔNeff≒5x10−4、従ってPMD≒1.5ns/kmである。長さ2Lは約100km程度であり、これからPMD≒15ns/√kmが演繹される(図3のPMファイバ曲線参照)。
標準のSMファイバは1550nmの波長において15m程度のビート長Λにより特徴付けられる。すなわち1550nmにおいてΔNeff≒1x10−7、従ってPMD≒0.03ps/kmである。それはまたPMD≒0.03ps/√kmにより特徴付けられる。そこから約5mの長さLが演繹される(図3のSM曲線参照)。
偏波保持ファイバの使用に基づくFOGは0.1kmないし10kmのファイバ長Lを用いて固有状態で動作する。この長さLは長さ2L(概ね100km)より小さく、直交偏波モード間の結合を避ける。最大長Lは実際にはファイバの減衰(約1dB/km、すなわち100kmに対して100dB)により制限される。
標準SMファイバの使用に基づくFOGは相関長が非常に短いので結合状態で動作するが、PMDの値は非常に小さく、ライオット・デポラライザを使用して偏波モードの均一な干渉パターンを得る必要がある。
一般的に、ファイバのPMDは入力パルスの広がりを生じ、これはファイバの帯域幅を制限する。従って先行技術によれば、ファイバの帯域幅を増加するために低PMD値を有し、時間的に安定し、環境条件の変動に鈍感なファイバを作ることが試みられている。
Szafraniec他の米国特許第6801319号「Symmetrical depolarized fiber-optic gyroscope」
John A. BUCK著「Fundamentals of Optical Fibers」2004:pages 161-172
発明の一つの目的は良好な感度で安価な光ファイバ干渉計を製造することである。発明の干渉計の好ましい用途は光ファイバジャイロスコープである。
そのために、本発明はより詳細には、中心波長λ及び典型的にはλの0.1%ないし10%のスペクトル幅ΔλFWHM(FWHMはFull Width at Half Maximum(半値全幅)の略)を有し、位相緩和時間τDC(ただしτDC=λ/cΔλFWHM)を有する入射光ビームを放射できる広帯域光源と、全長がLで第1と第2の端部を有するN回巻きの単一モード光ファイバを有するコイルと、前記入射ビームを前記光ファイバの前記第1と前記第2の端部にそれぞれ結合された第1と第2のビームに分割することができ、それにより前記第1のビームが第1の方向に前記光ファイバを通過し、前記第2のビームが反対の伝搬方向に前記光ファイバを通過する光学手段であって、前記ファイバを伝搬後に前記両端からそれぞれ出てくる前記両ビームを合成して出力ビームにすることができる光学手段と、前記出力ビームの干渉を検出することができる検出器とを含む光ファイバ干渉計に関する。
発明によれば、前記コイルの前記光ファイバは高偏波モード分散(PMD)を有する光ファイバであり、前記光ファイバコイルの長さLは前記ファイバの相関長の2倍より大きい、すなわちL>2Lであり、それにより前記ファイバは結合状態で動作し、前記ファイバの長さLにわたり累積された二つの直交偏波状態間の群伝搬時間差(DGD)は前記光源の位相緩和時間より大きい。すなわち、
Figure 0005521042
好ましい実施例は、前記光学手段が、前記入射ビームを前記光ファイバの前記第1と前記第2の端部にそれぞれ結合された第1と第2のビームに空間的に分割することができ、それにより前記第1のビームが第1の方向に前記光ファイバを通過し、前記第2のビームが反対の伝搬方向に前記光ファイバを通過する双方向光スプリッタであって、前記ファイバを伝搬後に前記両端からそれぞれ出てくる前記両ビームを合成して出力ビームにすることができる双方向光スプリッタと、前記光源から前記入射ビームを受けることができる単一空間モードフィルタ及び偏光子であって、前記直線偏光単一空間モード入射ビームを前記光スプリッタに送ることができる単一空間モードフィルタ及び偏光子とを含む、発明による干渉計を含む光ファイバジャイロスコープに関する。
特定の実施例によれば、発明のジャイロスコープは、前記光源から来る前記入射ビームと、前記出力ビームとを空間的に分割し、それぞれ前記入射ビームを前記ファイバコイルに、前記出力ビームを前記検出器に送ることができるスプリッタを含む。
発明のジャイロスコープの好ましい実施例によれば、前記光ファイバは前記光源の位相緩和時間の100倍より大きい前記ファイバの長さLにわたり累積されたDGDを有する。すなわち、
DGD>100τDC
発明のジャイロスコープの特定の実施例によれば、前記光ファイバは1ないし1000ps/√kmの、結合モードにおけるPMD係数PMDを有する複屈折性ファイバである。
発明のジャイロスコープの特定の実施例によれば、前記光ファイバは10−6ないし2x10−4の、波長λにおける直交偏波モード間の有効群屈折率差
Figure 0005521042
を有する複屈折性ファイバである。
発明のジャイロスコープの好ましい実施例によれば、前記ファイバコイルの長さLは0.1kmないし20kmである。
発明のジャイロスコープの好ましい実施例によれば、前記光源の波長λは800ないし1600nmであり、スペクトル幅ΔλFWHMはλの0.1%ないし10%である。
発明はまた、発明によるジャイロスコープを含む慣性航法システムに関する。
本発明はまた、以下の説明に記載される特徴に関し、それらは個々に、あるいは技術的に可能な任意の組み合わせとして考慮されねばならない。
この説明は非制限的例として与えられ、添付図面を参照すれば、如何に発明が実施できるかをより良く理解することを可能にするであろう。
光ファイバジャイロスコープを模式的に示す。 ファイバ長Lの関数としての偏波モードの群遅延時間差(DGD)の変化曲線を示し、二つの伝搬状態、すなわち固有状態と結合状態を示す。 三つのタイプのファイバ、すなわち単一モードSMファイバ(非複屈折性)、偏波保持(PM)ファイバ、及び結合状態における高偏波モード分散(HPMD)を有するファイバのDGD曲線を模式的に示す。 三つのタイプのファイバに対する長さLの関数としてのDGDの数値例を、1550nm付近に中心を置く異なるスペクトル幅の光源に対応する位相緩和時間の水準と共に示す。 ポアンカレ球上の偏光ベクトルを示す。 長さ40kmのSMファイバを通る1470nmないし1570nmの波長変化に対する偏光ベクトルの変化例を示す。 初期偏光とファイバの軸との整合を示す偏波保持ファイバを通る偏光ベクトルの変化例を示す。 偏光子と検光子の間にあるHPMDを透過後の中心波長1532nmでスプクトル幅ΔλFWHM≒5nmの光源のスペクトルを示す。
二つの在来の場合(低い値のPMD、PMD及びLを有し、結合状態で動作する標準SMファイバと、非常に高い値のPMD、PMD及びLを有し、固有状態で動作する偏波保持PMファイバ)と対照的に、発明は高い値のPMDとPMDを有し、結合状態で動作するファイバを使用することを提案する。そのようなファイバはHPMDファイバ(結合高偏波モード分散ファイバ)と定義される。
HPMDファイバの例は数百ps/km程度の高PMDと数百ps/√kmのPMDを有する結合状態で動作するファイバである。例えば、PMD≒500ps/kmでPMD≒150√kmである。
Figure 0005521042
HPMDファイバはPMファイバのものと同様の技術(ストレスバー又は楕円コア)を用いて作れるが、その複屈折性は小さく(PMファイバに対する5x10−4と比較して1ないし2x10−4程度のΔNeff)、これはその製造を著しく簡略化する。言い換えれば、HPMDファイバは約3ps/kmないし約700ps/kmのPMDを有する。
図3は三つのタイプのファイバ、SM、PM及びHPMDに対して、DGD曲線を使用ファイバ長Lの関数として模式的に示す。円は各タイプのファイバに対して、長さLのファイバコイルを用いたFOGでの使用の状態に対応する点を表わす。
図4はDGD曲線の数値例をファイバ長の関数として示し(横軸と縦軸は対数目盛)、異なるスペクトル幅(それぞれ5nm及び50nm)の光源に対する位相緩和時間の水準を示す。
ストークス/ミューラー形式とポアンカレ球は光ビームの偏光状態を定義及び表現することを可能にする(例えばEtude de la dispersion modale de polarisation dans les systemes regeneres optiquement", thesis of Benoit Clouet, 15 jan. 2009, pages 37-56 and 244; J. P. Gordon, H. Kogelnik, PMD fundamentals: "Polarization mode dispersion in optical fibers", Proceedings of the National Academy of Sciences PNAS, Vol. 97, No. 9, Apr. 2000, pp. 4541-4550; P. K. A. Wai, C. R. Menyuk, "Polarization mode dispersion, decorrelation, and diffusion in optical fibers with randomly varying birefringence" IEEE Journal of Lightwave Technology, Vol. 14, No. 2, Feb. 1996, pp. 148-157; M. Midrio, "Nonlinear principal states of polarization in optical fibers with randomly varying birefringence", Journal of Optical Society of America B, Vol. 17, No. 2, Feb. 2000, pp. 169-177; G. J. Foschini, C. D. Poole, "Statistical theory of polarization dispersion in single mode fibers", IEEE Journal of Lightwave Technology, Vol. 9,No. 11, Nov. 1991, pp. 1439-1456参照)。
ストークス形式は、ストークス四次元ベクトル、又はより単純にストークスベクトルと呼ばれる実数四次元ベクトルにより偏光状態を表わす。このベクトルの成分は光強度を表わす。準単色光平面波を仮定する(偏光又は非偏光)。ストークス四次元ベクトルSは以下のように電界に基づいて定義される。
Figure 0005521042
記号<x>はxの時間平均を表わす。すなわち、
Figure 0005521042
ただし、積分時間Tは一般的に、<x>がTに依存しない程度に大きく選ばれる。
電界に関連するストークスベクトルは以下のように表わされてもよい。
Figure 0005521042
ただし、θは方位角であり、εは楕円率角である。θは偏光楕円の傾斜を定め、εはその楕円率を定める。εは右偏光に対して正で、左偏光に対して負である。
完全偏光電界に対して、ストークスベクトルの成分は以下を立証する。
Figure 0005521042
ストークス形式は偏光状態の非常に実用的な表現、すなわちポアンカレ球を使用することを可能にする。光波のストークスベクトルが正規化されれば、それは以下のように表わされる。
Figure 0005521042
最後の三つの成分は波の偏光された部分を特徴付ける。
それらは球上の点の座標(方位角、仰角)と解釈されてもよい。偏光状態は従って球上で表現できる。それらは方位角θと楕円率εにより完全に特徴付けられ、球半径は1に正規化される。ポアンカレ球は図5に模式的に示される。
ポアンカレ球上の点は三つの軸、すなわち水平直線偏光e、45°の直線偏光e及び右円偏光eに関して位置が特定される。直線偏光は球の赤道上に位置する。左及び右円偏光は球の下及び上の極にある。右楕円偏光は上半球にある。
二つの直交偏光は球上の径方向対点、すなわち反対のストークスベクトルで表わされる。
実際には、球上の角度は現実世界に対して2倍される。
PMDに対して以下に基づいてベクトルが定義できる。すなわち、
− 主偏波状態、
− DGD。
偏波分散ベクトルはストークス空間において所定の長さzに対して
Figure 0005521042
で定義される。このベクトルは所定の光周波数において定義されるが、横軸zに至るまでの全てのファイバを含み、それはzに沿う偏波の進化を決定づける。偏波分散に対する無限小回転則は以下のように表わされる。
Figure 0005521042
この式は偏光分散ベクトルの定義として使用できる。周波数に依存しない入力偏波に対して、偏波の進化はPMDにより与えられる速度で、偏波分散ベクトルで定義された軸の周りのポアンカレ球上の円を辿る。回転数の周期はΔωcyle=2π/DGDに等しい。
この式は偏波分散ベクトルノルムにより周波数領域における偏波の進化をPMDの時間効果に直接関連付ける。
次いで複屈折ベクトルは方向に対して偏波の遅い固有モードを有し、ノルムに対してΔβを有するストークスベクトルとして
Figure 0005521042
で定義される。
PMDの動的方程式は以下のように表わされる。
Figure 0005521042
この方程式はPMD理論に基づいている。それは偏波分散(左)の巨視的概念を複屈折(右)の局所的概念に関連付ける。それは距離による偏波分散ベクトルの進化を支配する。方程式の右の要素において、第1項はDGDの進展を決定づける。第2項は偏波分散ベクトルの方向にのみ影響を与える。
固有状態で動作するファイバの場合、波長の関数としての偏波状態によるPMDの測定(例えば、偏光解析装置と波長可変レーザ光源を用いるMeasurement of Polarization-Mode Dispersion, by Brian L. Heffner and Paul R. Hernday in Hewlett-Packard Journal, February 1995に述べられる方法を参照)は従って、ファイバの複屈折軸の周りのポアンカレ球上の回転であり、この円の直径は入力偏波とファイバの主軸との整合度の関数である(図7参照)。
結合状態で動作するファイバ、すなわちその長さがファイバの相関長よりずっと長いファイバの場合、複屈折ベクトルはファイバに沿って変化する。そのときPMDは非決定性現象になる。そのとき偏波の進化はポアンカレ球上のランダム曲線に沿って生じる。ポアンカレ球上のこのランダム変位は球全体に広がる。
例えば、標準SMファイバに対し、ポアンカレ球全体に広がるには非常に長いファイバ長(40kmより大きいL)と非常に大きい波長変化(約100nm)が必要である。従って、図6は長さ40kmのSMFファイバに対する偏波分散ベクトルの変化をポアンカレ球表示で示す(Agilent 8509B Lightwave Polarization Analyzer Product Overview (1993))。
それに反し、固有状態で動作する偏波保持(PM)ファイバはポアンカレ球上では円で表わされ、その円錐半角は、コイルの入口と出口における偏光子とファイバ主軸の整合度に依存する。図7はポアンカレ球上の種々の斜線円を示し、それぞれの円はファイバ軸と偏光子軸の不整合度に対応する(完全な整合は球上の点に対応する)。光源のスペクトル幅はここでは100nmであり、100nmの帯域にわたり狭帯域光源を変化させることにより得られる。
HPMDファイバの場合、図6のSMファイバの場合のようにランダムにポアンカレ球全体に広がるが、スペクトル幅と長さはずっと小さく、0.1kmないし10kmオーダのコイル長とnmオーダのスペクトルである。
偏光子と検光子の間のこのHPMDファイバを通過する光源のスペクトルに対してHPMDファイバにより誘発される偏波スクランブルの効果も観測される。ΔλFWHM=5nm(FWHM、半値全幅)の光源と長さ4kmのHPMDファイバによるノイズの多いスペクトルが図8の曲線について観測される。実際、スペクトルのノイズは多ければ多いほど、偏光はよりスクランブルされ、FOG用のシステムはより良好になる。
発明は結合状態で高偏波モード分散(PMD)を有する十分長いHPMDファイバを使用して偏波スクランブルを発生させる。そうすることにより、発明のFOGは偏波保持ファイバの使用や、ライオット・デポラライザが付随する偏波保持のないファイバの使用を避ける。
発明によるFOGの製造は従って簡略化され、サニャック干渉計内のライオット・デポラライザの製造と組み込みの問題はもはや存在せず、発明によるFOGのサニャック干渉計は特別の幾何学軸を持たないので、入口/出口偏光子への接続はファイバ主モードと偏光軸の整合という制約を伴って最早行われない。発明によるFOGはより容易でより安価な工業生産性を有し、従ってFOGの使用を一般化することができる。
図1は発明の光ファイバジャイロスコープを模式的に示す。FOGは広帯域スペクトル光源1と、二つのビームスプリッタ2及び4と、入口/出口偏光及び空間フィルタ3と、結合状態で高PMDを有するN回巻きの単一モード光ファイバを備えて偏波をスクランブルするコイル5と、検出器6とを備える。そのようなFOGの動作は結合状態のSMファイバ又は固有状態PMファイバを有するFOGのものと同様である。しかしながら、発明のFOGはライオット・デポラライザを備えず、固有状態で動作しない。
結合状態の高PMDファイバが直線偏向スクランブラであるためには、このファイバが実際に結合状態で動作し、DGDが使用光源の位相緩和時間より大きいことが求められる。すなわち、
DGD>τdc
ただし、光源に関するτdcは以下のように定義できる。
Figure 0005521042
ΔλFWHMは光源の半値全幅である。
偏波スクランブルは結合状態でのランダムな現象であるので、FOGの偏光子を通過する光が常に半分あり、これは従ってシステムの一定感度を保証する。
しかしながら、光ファイバジャイロスコープの重要なパラメータの一つは回転速度の関数として測定される位相曲線の傾斜として定義されるその倍率の安定性である。倍率は検出器に戻る光の平均波長に反比例する。DGD=τdcであれば、ポアンカレ球のほんのわずかな表面積にしか広がらず、平均波長は従ってあまり安定しない。高性能ジャイロスコープに対し、DGD>100τdcを、あるいはDGD>1000τdcをも保証することが望ましく、これはポアンカレ球全体を掃引し、従って高倍率性能を保証することを可能にする。従って、5nm程度のスペクトル線幅を有する1530nmの中心波長をもつエルビウム型の光源に対し、平均波長の安定性は、DGDがτdcオーダであるときは数10−3であり、DGDが100τdcオーダであるときは数10−6である。
結合状態の高PMDファイバの使用により、発明は先行技術による習慣に逆らうことに注目すべきである。実際、先行技術によれば、ファイバのPMDによる入力パルスの広がりは帯域幅の点でこのファイバの能力を劣化させる。先行技術は従って、小さくて時間的に安定しかつ周囲条件の変動に鈍感なPMD値を有するファイバを作ることを目指している。
発明によるFOGに使用される結合状態の高PMD光ファイバの特定の例示的実施例は以下の表に与えられる物理特性を有する。
Figure 0005521042
もちろん、当業者は、全ての波長、特に820nm又は1310nmでの用途に対して結合状態において高PMDを有する光ファイバが開発できることが分かるであろう。
発明によるFOGは偏波保持ファイバを備える第1のタイプの既知のFOGで得られるものと同様の性能を有することが分かった。
好都合には、高PMDファイバは偏波保持ファイバより潜在的に製造が容易であることが分かった。HPMDファイバはPMファイバのものと同様の技術(ストレスバー又は楕円コア)を用いて作れるが、その複屈折性は小さく(PMファイバに対する5x10−4と比較して1ないし2x10−4程度のΔNeff)、これはその製造を著しく簡略化する。これは製造コストの低減を可能にする。これはまたより長いファイバを得てジャイロスコープ用のより大きいコイルを作り、それによりそのように作られたFOGの感度を増加する。
もちろん、高PMDファイバは特別の方向をもたないので、FOG性能を変化することなくコイルのファイバに溶着部を作ることが可能である。これはコイルの溶着修理、コイル長の増加を可能にする。
従って、偏波保持PMファイバより小径のHPMDファイバを作ってジャイロスコープの小ささを改良することが可能であると思われる。
好都合には、発明によるFOGは偏波保持ファイバを備える第1のタイプの既知のFOGより磁界に対して低感度をすることが分かった。
発明は特定の実施例を参照して述べられたが、それには限定されない。それは述べられた手段と均等の全ての技術やそれらの組合せを含み、それらは発明の枠内にある。
1 広帯域光源
2 ビームスプリッタ
3 入口/出口偏光及び空間フィルタ
4 ビームスプリッタ
5 光ファイバコイル
6 検出器

Claims (9)

  1. 中心波長λ及びスペクトル幅ΔλFWHMを有し、位相緩和時間τDC=λ/(cΔλFWHM)を有する入射光ビームを放射できる広帯域光源(1)と、
    全長がLで第1と第2の端部を有するN回巻きの単一モード光ファイバ(5)を有するコイルと、
    前記入射ビームを第1と第2のビームに分割して、前記第1のビームを前記光ファイバ(5)の前記第1の端部に、前記第2のビームを前記光ファイバ(5)の前記第2の端部にそれぞれ結合することができ、それにより前記第1のビームが第1の方向に前記光ファイバ(5)を通過し、前記第2のビームが反対の伝搬方向に前記光ファイバ(5)を通過する光学手段であって、前記ファイバ(5)を伝搬後に前記両端からそれぞれ出てくる前記両ビームを合成して出力ビームにすることができる光学手段と、
    前記出力ビームの干渉を検出することができる検出器と
    を含む光ファイバ干渉計であって、
    前記光ファイバ(5)は高偏波モード分散(PMD)光ファイバであり、
    前記光ファイバコイル(5)の長さLは前記ファイバ(5)の相関長Lの2倍より大きい、すなわちL>2Lであり、それにより前記ファイバ(5)は結合されたPMD状態で動作し、
    前記ファイバ(5)の長さLにわたり累積された二つの直交偏波状態間の群伝搬時間差(DGD)は前記光源の位相緩和時間より大きい、すなわち、
    DGD>τDC
    であることを特徴とする光ファイバ干渉計。
  2. 請求項1に記載の干渉計を備える光ファイバジャイロスコープであって、
    前記光学手段は、
    前記入射ビームを前記光ファイバ(5)の前記第1と前記第2の端部にそれぞれ結合された第1と第2のビームに空間的に分割することができ、それにより前記第1のビームが第1の方向に前記光ファイバ(5)を通過し、前記第2のビームが反対の伝搬方向に前記光ファイバ(5)を通過する双方向光スプリッタ(4)であって、前記ファイバ(5)を伝搬後に前記両端からそれぞれ出てくる前記両ビームを合成して出力ビームにすることができる双方向光スプリッタ(4)と、
    前記光源から前記入射ビームを受けることができる単一空間モードフィルタ及び偏光子(3)であって、前記直線偏光した単一空間モード入射ビームを前記光スプリッタ(4)に送ることができる単一空間モードフィルタ及び偏光子(3)と
    を含むことを特徴とする光ファイバジャイロスコープ。
  3. 前記光源からくる前記入射ビームと、前記出力ビームとを空間的に分割し、それぞれ前記入射ビームを前記ファイバコイル(5)に、前記出力ビームを前記検出器(6)に送ることができるスプリッタ(2)を備えることを特徴とする請求項2に記載のジャイロスコープ。
  4. 前記光ファイバ(5)は前記光源の位相緩和時間の100倍より大きい前記ファイバ(5)の長さLにわたり累積されたDGDを有する、すなわち、
    DGD>100τDC
    であることを特徴とする請求項2または3に記載のジャイロスコープ。
  5. 前記光ファイバ(5)は1ないし1000ps/√kmの、結合モードにおけるPMD係数PMDを有する複屈折性ファイバであることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一つに記載のジャイロスコープ。
  6. 前記光ファイバ(5)は10−6ないし2x10−4の、波長λにおける直交偏波モード間の有効群屈折率差
    Figure 0005521042
    を有する複屈折性ファイバであることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか一つに記載のジャイロスコープ。
  7. 前記ファイバコイル(5)の長さLは0.1kmないし20kmであることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか一つに記載のジャイロスコープ。
  8. 前記光源の波長λは800ないし1600nmであり、スペクトル幅ΔλFWHMはλの0.1%ないし10%であることを特徴とする請求項7に記載のジャイロスコープ。
  9. 請求項1ないし8のいずれか一つに記載のジャイロスコープを備える慣性航法システム。
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