JP5495227B2 - 平衡誘導による導電率測定方法及び装置 - Google Patents
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Description
電気探査法は、電極を用いるので取り付けのための工事が必要で、使用場所が限定されるという問題がある。これに対し、電磁法は非接触で導電率を測定できるため、使用場所を選ばない。そのため、導電率測定の主流となると考えられる。
例えば、円形もしくは矩形の送信コイルによる1次磁場は、ビオサバールの法則により図6のような磁場分布を呈する。そして、一般に、コイルは、中心軸方向で磁場強度や受信感度が最大である性質を持ち、コイル外縁を離れると距離の3乗で急速に減衰する。図6は、送信コイル20と受信コイル21が離れて置かれた従来の電磁法の模式図であるが、この図から分かるように、受信コイル21を鎖交する1次磁場の磁力線は、ある幅と広がりを有する。そのため、これによる誘導磁場も同様な空間となるため受信コイル21直下以外の導電率情報も加わることになる。その結果、ピンポイント的な測定データを得難いのである。
このような問題を解決する方法として、特許文献1の比抵抗測定装置がある。この装置は、図7に示すように、コイル20aは、棒状のコア22に左巻きに巻かれた送信コイル上部であり、コイル20bは、前記コア22に右巻きに巻かれた送信コイル下部である。コイル23は、その中間に置かれた受信コイルである。この送信コイル20a、20bの両端に、測定したい任意の周波数の駆動電圧を印加すると送信電流I1が流れる。しかし、上下部の送信コイル20a、20bは互いに逆巻きになっているため磁場は中間で打ち消し合い、受信コイル23には信号電圧が発生しない。したがって、コイル20a、b、23の巻き数や位置関係を正確に製作すれば容易にキャンセル状態を実現できることになる。
その結果、受信電圧を大きくとるため、送信電流を増加すると、磁心内部から発生するノイズが無視できなくなり、受信電圧のS/N比の悪化を招く。
さらに、この渦電流による損失は、周波数が高くなるほど大きくなるため、特に、送信電流の周波数を広い範囲で使用した場合、周波数によって測定感度がばらつくという問題がある。
そのため、測定対象の導電率を小さい値から大きい値まで幅広く測定できる。特に、測定点直下だけの導電率を正しく測定できる効果は大である。また、従来機のように1次磁場のキャンセルが不十分であるという問題点を解決でき、より正確な導電率の測定を実現できる。
この形態の平衡誘導による導電率測定装置は、図1に示すように、送信コイル1、受信コイル2、信号発生手段Aと、導電率検出手段Bで構成されている。
一方、受信コイル2は、前記送信コイル1の第1と第2の空芯コイル1a、1b間に、その第1と第2の空芯コイル1a、1bと軸心を一致させて配置する。
そのため、送信コイル1と受信コイル2は、図3の外側筒部材Cとその内側に嵌める内側筒部材Dで支持するようにしてある。
筒部材本体Ca、Daは、外周に周方向の溝13を設けて送信コイル1と受信コイル2を巻回するようになっている。この溝13は、内側筒部材本体Daでは、溝13の中央に分離帯13aを設けて2つに分割し、送信コイル1を構成する第1と第2の2つの空芯コイル1a、1bをそれぞれ巻回することで、第1の空芯コイル1aと逆巻きに巻回した第2の空芯コイル1bを、間隔を置いて軸心を一致させて配置し、その間隔を置いて配置した第1と第2の空芯コイル1a、1bを直列に接続できるようになっている。
一方、外側筒部材Cでは、溝13は、外部筒部材本体Caの中央部分に一本形成して、受信コイル2を巻回することで、送信コイル1の第1と第2の空芯コイル1a、1b間に、その第1と第2の空芯コイル1a、1bと軸心を一致させて配置できるようにしてある。
また、筒部材本体Ca、Daの両端の開口端に、ネジ孔14を設けて蓋部材Cb、Dbを取り付けるようになっており、蓋部材Cb、Dbを取り付けることで、受信コイル2と送信コイル1の位置調整を行えるようにしてある。
一方、内側筒部材用の蓋部材Dbは、内側筒部材本体Daの開口より大径で、外側筒部材本体Caの内径より稍小径で、図4(a)のように、外側筒部材本体Caの開口に嵌るサイズに形成されている。また、中央のドーナツ孔の周縁の板面に、貫通孔15を設けて内側筒部材本体Daの両側の開口にネジ止めするようになっている。さらに、内側筒部材用の蓋部材Dbには、中央のドーナツ孔と周縁との間にバランス調整用のネジ16と係合するネジ孔18を90度間隔で4個形成し、図4のように、内側筒部材Dを外側筒部材本体Caに嵌め入れた際に、バランス調整用のネジ16を挿通する外側筒部材用の蓋部材Cbの孔17と合致するようになっている。
すなわち、外側筒部材Cに内側筒部材Dを嵌め入れた際に、外側筒部材Cと内側蓋部材Dbを、図4(a)のように、バランス調整用ネジ16で連結し、バランス調整用ネジ16を回動することにより、内側筒部材Dを上下の軸方向に移動するように構成し、調整手段を形成している。
なお、前記4個のバランス調整用ネジ16を個々に調整することにより、送信コイル1の軸心を傾けて受信コイル2の感度やノイズを調整することもできる。また、符号19は、送信コイル1と受信コイル2を支えるスタンドである。
信号発信器7は、下記のような系列の正弦波を発振する所謂掃引発振器で、この形態では、1分間隔で16周波数を順に発振するものである。この出力は、送信電流駆動装置5と、導電率検出手段Bに接続されている。
364、256,182,128、91、64、45.5、32、22.8、16、
11.4、8、5.7、2.8、2 (KHz)
受信信号増幅器6は、受信コイル2と接続され、受信コイル2の受信信号を位相差検出装置8の入力レベルまで、増幅するためのものである。
位相差検出装置8は、受信信号増幅器6と、信号発生手段Aの信号発振器7の出力と接続されており、両出力を比較して位相差に基づく電圧を導電率演算回路9に出力する。
導電率演算回路9は、位相差に基づく電圧を導電率に基づく信号に変換するためのもので、変換した信号は、A/ D 変換器10に出力される。
A / D 変換器10は、前記信号をデジタルデータ化するためのもので、デジタルデータ化した信号は、この形態では、パソコン11に出力して、リアルタイムで表示するようになっている。
なお、符号12は、上記信号発生手段Aと導電率検出手段Bの処理を制御するための制御装置で、ここでは、マイクロコンピュータを使用してコントロールするようになっている。
また、この形態では、送信コイル1と受信コイル2を支持する筒部材C、Dに円筒形のものを使用したが、前記筒部材C、Dの形状は円筒だけに限定されるものではない。3角や4角などの多角筒や断面が楕円などであってもコイルとして作用するので、筒状のものであっても良い。
この形態の導電率測定装置は、図3のように、送信コイル1と受信コイル2をコンパクトに組み立てることができるので、巻回数の異なる複数の送信コイル1と受信コイル2を準備して組み合せるようにすれば、測定対象に応じて受信感度や分解能などを最適に設定できる。
この送信コイル1と受信コイル2の組み立ては、測定に最適な受信コイル2を巻回した外側筒部材本体Caと送信コイル1を巻回した内側筒部材本体Daを準備する。そして、外側筒部材本体Caの下側の開口に外側筒部材用の蓋部材Cbを取り付け、外側筒部材本体Caの上方の開口から内側筒部材Dを嵌入する。このとき、内側筒部材本体Daの下側の開口に内側筒部材用の蓋部材Dbを取り付けおき、嵌め入れた内側筒部材Dを回動するなどして、両蓋部材Cb、Dbのバランス調整ネジ用のネジ孔18と孔17を合わせる。そして、外側筒部材本体Caの開口に内側筒部材用の蓋部材Dbを嵌め入れ、内側筒部材本体Daの開口にネジ止めしたのち、外側筒部材本体Caの開口に外側筒部材用の蓋部材Cbをネジ止めする。このとき、外側筒部材用の蓋部材Cbと内側筒部材用の蓋部材Dbのバランス調整ネジ用のネジ孔18と孔17とを合わせてバランス調整用ネジ16を嵌める。
そして、導電率測定装置の信号発生手段Aから送信コイル1に交流信号を入力し、受信コイル2の出力を導電率検出手段Bで測定して、出力レベルが最小となるようにバランス調整用ネジ16を回して調整する。
すなわち、送信コイル1の第2のコイル1bは第1のコイル1aと逆向きに巻回してある。そのため、磁場は打ち消し合って磁場の影響が極小となるポイントが生じるので、そのポイントに受信コイル2が位置するように調整を行うことで、受信コイル2への1次磁場の影響をキャンセルするのである。このとき、送信コイル1の第1のコイル1aと第2のコイル1bの巻回数を同じにしておけば、構造上分離帯13aの部分が磁場の影響がゼロとなる目安となるので、調整が楽にできる。
なお、この形態では、前記コイル1、2の調整を行ってから、現場に設置するようにしたが、現場で組み立てや調整を行うようにしても良いことは明らかである。
すなわち、送信コイル1からの電波が測定対象の表面から深部へ侵入する場合、一般に、表皮効果により、周波数の高い電波は表面近くを流れ、周波数の低い電波はより深くまで達する。したがって、測定対象が前記コイル1、2より遠方のものは、低い周波数で測定し、近傍のものは、高い周波数で測定するので、測定感度のバラツキを起こさない。また、波長の短い高い周波数で測定すれば、小さな対象物を精度良く測定できるため、分解能の改善が図れる。
1a 第1の空芯コイル
1b 第2の空芯コイル
2 受信コイル
13 溝
13a 分離帯
16 バランス調整用ネジ
A 信号発生手段
B 導電率検出手段
C 外側筒部材
Ca 外側筒部材本体
Cb 外側筒部材用蓋部材
D 内側筒部材
Da 内側筒部材本体
Db 内側筒部材用蓋部材
Claims (5)
- 空芯コイルからなる第1のコイル(1a)と前記第1のコイル(1a)と逆巻きの空芯コイルからなる第2のコイル(1b)を間隔を置いて、かつ、コイル(1a、1b)の軸心を一致させて配置し、その間隔を置いて配置した第1と第2の空芯コイル(1a、1b)を直列に接続した送信コイル(1)の第1と第2の空芯コイル(1a、1b)間に、空芯コイルからなる受信コイル(2)を前記第1と第2の空芯コイル(1a、1b)と軸心を一致させて配置し、
前記送信コイル(1)の第1と第2の空芯コイル(1a、1b)の直列回路の両端に交流信号を入力し、送信コイル(1)あるいは受信コイル(2)の一方あるいは両方を軸心方向に動かして、送信コイル(1)の第1と第2の空芯コイル(1a、1b)間の磁場が打ち消し合って受信コイル(2)からの出力が最小となるように調整したのち、
送信コイル(1)の一方の開口を測定対象に対向させて、受信コイル(2)に流れる電流と送信コイル(1)に入力する交流信号の電流との位相差に基づいて測定対象の導電率を測定する平衡誘導による導電率測定方法。 - 上記送信コイル(1)の第1と第2の空芯コイル(1a、1b)の直列回路の両端間に交流信号を入力し、送信コイル(1)あるいは受信コイル(2)の一方または両方を軸心方向に動かして受信コイル(2)からの出力が最小となるように調整したのち、送信コイル(1)の一方の開口を測定対象に対向させて、前記送信コイル(1)に複数の異なる周波数の信号電流を掃引したものを入力し、受信コイル(2)に流れる電流値と送信コイル(1)に入力する交流信号の電流との位相差に基づいて測定対象の導電率を測定する請求項1に記載の平衡誘導による導電率測定方法。
- 空芯コイルからなる第1のコイル(1a)と前記第1のコイル(1a)と逆巻きの空芯コイルからなる第2のコイル(1b)を間隔を置いて、非磁性体で形成した外側筒部材(C)と、その内部に嵌める内側筒部材(D)のいずれか一方の外周に巻回してコイル(1a、1b)の軸心を一致させて配置し、その間隔を置いて配置した第1と第2の空芯コイル(1a、1b)を直列に接続した送信コイル(1)と、
前記送信コイル(1)を巻回しなかった他方の内側筒部材(D)あるいは外側筒部材(C)の外周に巻回して前記送信コイル(1)の第1と第2の空芯コイル(1a、1b)間に軸心を一致させて配置した空芯コイルからなる受信コイル(2)と、
前記送信コイル(1)の第1と第2の空芯コイル(1a、1b)を直列に接続した直列回路の両端に、交流信号を入力する信号発生手段(A)と、
前記受信コイル(2)に流れる電流と信号発生手段(A)の信号電流の位相差から導電率を算出する導電率検出手段(B)と、
前記外側筒部材(C)と内側筒部材(D)をそれぞれ軸方向に移動する調整手段(16)を設けた平衡誘導による導電率測定装置。 - 上記信号発生手段(A)が複数周波数の交流信号を掃引した出力を発生する請求項3に記載の平衡誘導による導電率測定装置。
- 上記送信コイル(1)の第1と第2の空芯コイル(1a、1b)の巻回数を同じにした請求項3または4に記載の平衡誘導による導電率測定装置。
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