図1は、実施形態の観測計画装置の構成を示す図である。実施形態の観測計画装置10は、観測条件テーブル作成部11、観測ウィンドウ算出部12、衛星割付け部13、観測計画シミュレーション部14を備える。また、観測計画装置10は、衛星テーブル21、方向角テーブル22、軌道暦ファイル23を備える。ただし、衛星テーブル21、方向角テーブル22、軌道暦ファイル23は、観測計画装置10の外部に設けられてもよい。この場合、衛星テーブル21、方向角テーブル22、軌道暦ファイル23は、観測計画装置10からアクセスできるように設けられる。さらに、観測計画装置10は、観測条件テーブル31、観測ウィンドウファイル32、割付管理テーブル33、割付結果ファイル34を備える。
インタフェース装置40は、入力インタフェースとしてキーボードおよびマウス等の入力デバイスを備える。そして、インタフェース装置40は、ユーザ入力を観測計画装置10に転送する。また、インタフェース装置40は、出力インタフェースとして表示装置またはプリンタ等の出力デバイスを備える。そして、インタフェース装置40は、観測計画装置10により得られる割付結果を表示または印刷する。なお、インタフェース装置40は、観測計画装置10の一部であってもよい。
ユーザは、観測衛星を利用した地球観測を行うときは、インタフェース装置40を介して観測計画装置10へ観測要求を入力する。そうすると、観測計画装置10は、図2に示すフローチャートの処理を実行し、観測計画を提供する。
ステップS1において、観測条件テーブル作成部11は、入力された観測要求を、対応する衛星グループに割り当てる。そして、観測条件テーブル作成部11は、その衛星グループに属する各衛星について、動作条件等を設定することにより、観測条件テーブル31を作成する。このとき、観測条件テーブル作成部11は、衛星テーブル21および方向角テーブル22を参照する。
ステップS2において、観測ウィンドウ算出部12は、軌道暦ファイル23および観測条件テーブル31を参照し、各衛星について、観測要求に対応する観測の観測可能時間帯を算出する。なお、1つの衛星による1回の観測ではカバーできない特定観測要求が入力された場合には、観測ウィンドウ算出部12は、各衛星について、その特定観測要求が必要とする複数の観測のそれぞれの観測可能時間帯を算出する。これにより、観測ウィンドウファイル32が生成される。特定観測要求は、後で詳しく説明するが、この実施例においては、ステレオ観測、インターフェロメトリ観測、または広域観測が指定された観測要求である。
ステップS3において、衛星割付け部13は、衛星グループ内の各衛星に対して設定されている目標使用率に基づいて、観測要求に対応する1または複数の観測を対応する衛星に割り付ける。なお、上述の特定観測要求が入力されている場合には、衛星割付け部13が備えるグループ化部13aは、衛星グループ内の各衛星について、その特定観測要求に含まれる要求要素に基づいて、観測時間帯をグループ化する。そして、衛星割付け部13が備える割付け部13bは、上述の目標使用率に基づいて、グループ化されている観測可能時間帯の観測が同じ衛星により実施されるように、複数の観測を対応する1または複数の衛星に割り付ける。
ステップS4において、観測計画シミュレーション部14は、ステップS3で得られた割付結果で観測が実施可能か否かについてシミュレーションを実行する。ここで、各衛星は、それぞれ、センタ装置から所定のタイミングで送信されるコマンドに従って観測を実施する。また、各衛星は、それぞれ、観測結果データを地上アンテナへ送信する。したがって、観測計画シミュレーション部14は、これらのコマンド/データの伝送条件等を考慮して、ステップS3で得られた割付結果で観測が実施可能か否かを判定する。そして、シミュレーションにおいて、ステップS3で得られた割付結果では観測が実施できないと判定されたときは、ステップS3に戻って異なる割付パターンが生成される。
なお、ステップS4のシミュレーションは、公知の技術により実現される。また、ステップS4のシミュレーションを実行する観測計画シミュレーション部14は、観測計画装置10の外部に設けられてもよい。すなわち、観測計画装置10は、観測計画シミュレーション部14を備えていなくてもよい。ただし、この場合、観測計画装置10は、観測計画シミュレーション部14との間でデータを送受信できるものとする。
以下、実施形態の観測計画装置10の構成および動作、並びに実施形態の観測計画方法の手順について具体的に説明する。
<観測要求について>
上述したように、観測計画装置10には、インタフェース装置40を介して観測要求が入力される。入力される観測要求は、この実施例では、下記の5つの要求要素を含むものとする。
(1)観測領域
(2)シーン要件
(3)センサ種別
(4)詳細観測条件
(5)観測頻度
「観測領域」は、所望の1地点であってもよいし、所望の広がりを持った領域(広域)であってもよい。ユーザは、例えば、地図情報を表示するGUIを利用して観測領域を指定することができる。この場合、例えば、コンピュータ上で地図がメッシュ状に分割されており、ユーザは、マウス等を用いて所望の1または複数の分割領域を選択することができる。或いは、ユーザは、緯度情報および経度情報を指定することで観測領域を入力することもできる。
「シーン要件」は、観測方式を識別し、この実施例では下記の4つの方式の中の1つが選択されるものとする。
(1)単一シーン
(2)ステレオ観測
(3)インターフェロメトリ観測
(4)広域観測
単一シーンは、所望の1地点について、1つの衛星による1回の観測のみで情報を収集する観測方式を表す。よって、シーン要件として「単一シーン」が選択されたときは、1つの「要求」に対して1つの「観測」が定義される。
ステレオ観測は、光学センサを利用した観測方式の1つであり、1つの観測目標について1組の観測(前方視観測および後方視観測)を必要とする。前方視観測は、図3に示すように、衛星の進行方向の前方向に観測目標が存在するときにその観測目標の情報を取得する観測方式である。よって、前方視観測は、衛星が観測目標の真上を通過する時刻よりも前の時刻に行われる。一方、後方視観測は、衛星の進行方向の後ろ方向に観測目標が存在するときにその観測目標の情報を取得する観測方式である。よって、後方視観測は、衛星が観測目標の真上を通過する時刻よりも後の時刻に行われる。ここで、衛星軌道は、衛星の時々刻々の位置を示す。また、衛星地上軌道は、衛星軌道が地表面に垂直に投影されたフットプリントである。このように、シーン要件として「ステレオ観測」が選択されたときは、1つの「要求」に対して2つの「観測」が定義される。
インターフェロメトリ観測は、レーダ観測方式の1つであり、1つの観測目標を異なる2つの時刻に同じ条件で観測する方式である。このため、インターフェロメトリ観測は、例えば、時間経過に対する観測目標の変化を調査する際に実施される。「同じ条件で」を満たすためには、観測目標が同じ衛星によって2回観測されることが好ましい。ここで、地球観測衛星は、一般に、準回帰軌道を採用している。すなわち、衛星の地上軌跡は、予め決められた周期で同じ位置を通過する。この周期は、回帰日数と呼ばれる。したがって、インターフェロメトリ観測では、観測目標が1つの衛星により回帰日数間隔で観測される。このように、シーン要件として「インターフェロメトリ観測」が選択されたときも、1つの「要求」に対して2つの「観測」が定義される。
広域観測は、1回の観測ではカバーできない広い目標観測領域が要求されたときに実施される。広域観測では、例えば図4に示すように、地表面をメッシュ状に分割した地図上で目標観測領域が指定される。メッシュの大きさは、1回の観測でカバー可能な領域よりも小さく、特に限定されるものではないが、例えば、辺の長さが5〜10km程度の矩形である。そして、目標観測領域が指定されると、その目標観測領域をカバーする複数のメッシュが抽出される。この場合、抽出された各メッシュを目標領域としてそれぞれ1回の「観測」が定義される。図4に示す例では、目標観測領域をカバーする41個のメッシュが抽出されるので、1つの「要求」に対して41個の「観測」が定義される。
なお、図4に示す例では、目標観測領域は、3つの衛星SA1〜SA3によって観測される。すなわち、領域Xに属する各メッシュに対応する目標領域は、○月○日に衛星SA1により観測され、領域Yに属する各メッシュに対応する目標領域は、×月×日に衛星SA2により観測され、領域Zに属する各メッシュに対応する目標領域は、△月△日に衛星SA3により観測される。
このように、ステレオ観測、インターフェロメトリ観測、広域観測は、単一シーン観測と異なり、1つの要求に対して複数の観測を必要とする。すなわち、ステレオ観測、インターフェロメトリ観測、広域観測は、1つの衛星による1回の観測ではカバーされず、1つの衛星による複数回の観測、または複数の衛星による観測を必要とする。以下では、このような観測(この実施例では、ステレオ観測、インターフェロメトリ観測、または広域観測)が指定された観測要求のことを「特定観測要求」を呼ぶことがある。
「センサ種別」は、所望の観測を実施するために必要なセンサの種別を識別する。センサの種別としては、例えば、光学センサ、赤外線センサ、レーダ等が想定される。
「詳細観測条件」としては、この実施例では、衛星に搭載されているセンサの分解能および衛星から見た観測方向が指定される。これらのパラメータは、観測可能領域を規定する。すなわち、観測可能領域は、一般に、衛星の高度および衛星から見た許容方向角度に応じて決まる。許容方向角度は、通常、図5に示すように、ロール角αおよびピッチ角βで表わされる。ロール角αは、衛星の進行方向に対して左右方向の角度を表す。ここで、図5に示す観測可能幅ABは、衛星の高度およびロール角αに応じて決まる。一方、ピッチ角βは、衛星の進行方向に対して前後方向の角度を表す。なお、観測可能領域は、指定される分解能に依存する。すなわち、例えば、高い分解能が指定されたときは、ロール角αおよびピッチ角βとして小さな値が選択されて観測可能領域は狭くなり、低い分解能が指定されたときは、ロール角αおよびピッチ角βとして大きな値が選択されて観測可能領域は広くなる。
レーダ観測では、一般に、衛星から地表面に対して斜め方向にレーダ波が送信され、衛星がその反射波を観測する。このため、レーダ観測においては、図6に示すように、衛星地上軌道を挟んで1組の観測可能領域(右方視観測可能領域および左方視観測可能領域)が存在する。ユーザは、詳細観測条件として、右方視観測可能領域または左方視観測可能領域のいずれか一方を指定することができ、また、右方視観測可能領域および左方視観測可能領域の双方を指定することもできる。
「観測頻度」は、1つの観測目標に対して観測を繰り返し行う場合の頻度を表す。観測頻度は、例えば、1年間に実行すべき回数、あるいは1月間に実行すべき回数として指定される。
<観測条件テーブルの作成>
上述の観測要求が入力されると、観測計画装置10の観測条件テーブル作成部11は、観測条件テーブル31を作成する。このとき、観測条件テーブル作成部11は、観測要求の各要求要素に基づいて衛星テーブル21および方向角テーブル22を参照する。
図7は、観測条件テーブル31の実施例である。観測条件テーブル31においては、観測計画装置10に新たな観測要求が入力されると、対応するエントリが生成される。そして、各エントリには、それぞれ、要求番号REQが割り当てられる。すなわち、各観測要求は要求番号REQにより識別される。なお、以下では、要求番号REQ=1、2、3、4により識別される要求を、それぞれ、観測要求1、2、3、4と呼ぶことがある。
観測要求は、上述したように「観測領域」「シーン要件」「センサ種別」「詳細観測条件」「観測頻度」を含んでいる。これらの要求要素は、観測条件テーブル31においてはそれぞれ「要求目標領域」「シーン要件ISEEN」「センサ種別SENC」「詳細条件」「観測頻度」として登録される。
「要求目標領域」は、ユーザにより指定される観測目標位置の緯度および経度、あるいは、ユーザにより指定される観測目標領域の4隅の緯度および経度を表す。観測目標領域の形状は、例えば、長方形であるものとする。なお、広域観測を行う場合は、ユーザは、地図上でマウスのドラッグ操作等を行うことにより所望の領域を選択する。そして、選択された領域の4隅の緯度および経度が要求目標領域として登録される。
「シーン要件ISEEN」は、上述した4つの観測方式を識別する。ここでは、「N」は単一シーンを表し、「S」はステレオ観測を表し、「F」はインターフェロメトリ観測を表し、「W」は広域観測を表す。さらに、「センサ種別SENC」「詳細条件」「観測頻度」として、ユーザにより指定された情報が登録される。
観測条件テーブル31は、「観測番号OBS」「観測目標領域」「対象衛星SATG」「観測方向許容角度」「月別観測回数」を管理する。これらの情報は、上述した観測要求に基づいて生成される。
「観測番号OBS」は、各観測要求に対して実施される1または複数の観測を識別する。ここで、観測番号OBSは、シーン要件ISEENに応じて生成される。すなわち、シーン要件ISEENが「N(単一シーン)」であれば、1つの要求に対して1つの観測が実施されるので、1つの観測番号OBSが生成される。図7に示す例では、観測要求1に対して1つの観測番号OBSが生成されている。また、シーン要件ISEENが「S(ステレオ観測)」または「F(インターフェロメトリ観測)」であれば、1つの要求に対して2つの観測が実施されるので、それぞれ2つの観測番号OBSが生成される。図7に示す例では、観測要求2、3に対して、それぞれ、2つの観測番号OBS(=1、2)が生成されている。さらに、シーン要件ISEENが「W(広域観測)」であれば、1つの要求に対してn回の観測が実施されるので、n個の観測番号OBSが生成される。「n」は、観測を実施すべき分割領域の数に相当する。図7に示す例では、観測要求4に対して5つの観測番号OBS(=1〜5)が生成されている。なお、以下の説明では、観測番号OBS=1、2、3、...により識別される観測を、それぞれ、観測1、2、3、...と呼ぶことがある。
「観測目標領域」は、各観測要求に対して実施される各観測の対象領域を表す。シーン要件ISEENが「N(単一シーン)」であれば、観測目標領域は、要求目標領域と同じである。ステレオ観測においては、1つの目標領域が前方視および後方視で観測される。また、インターフェロメトリ観測においては、1つの目標領域が回帰周期間隔で観測される。すなわち、ステレオ観測およびインターフェロメトリ観測においては、同じ目標領域が2回観測される。したがって、シーン要件ISEENが「S(ステレオ観測)」または「F(インターフェロメトリ観測)」であれば、各観測における観測目標領域は、いずれも要求目標領域と同じである。例えば、ステレオ観測を要求する観測要求2の観測1、2の観測目標領域として、いずれも観測要求2の要求目標領域と同じ情報([φ,λ]2)が設定されている。
広域観測においては、上述したように、複数の分割領域のそれぞれに対して観測が実施される。すなわち、各観測の目標領域は、互いに異なっている。したがって、シーン要件ISEENが「W(広域観測)」であれば、各観測番号OBSに対して、それぞれ対象となる分割領域の位置情報が設定される。図7に示す例では、観測要求4の観測1〜5の観測目標領域として、それぞれ、[φ,λ]41〜[φ,λ]45が設定されている。なお、各分割領域は、例えば、図4に示すメッシュである。この場合、[φ,λ]41〜[φ,λ]45は、それぞれ、各メッシュの4隅の緯度および経度に相当する。
「対象衛星SATG」は、各観測要求に対応する観測を実施する衛星の候補を表す。ここで、各衛星と各衛星が搭載しているセンサの種別との対応関係は、図8に示す衛星テーブル21により管理されている。
衛星テーブル21においては、センサ識別情報SENCに対して、各衛星を識別する衛星名SATNが登録されている。すなわち、センサの種別に基づいて衛星がグループ化されている。図8に示す例では、センサAを搭載する衛星としてSA1〜SA4が登録され、センサBを搭載する衛星としてSB1〜SB2が登録され、センサCを搭載する衛星としてSC1〜SC2が登録されている。したがって、観測要求においてセンサ種別が指定されると、対応する1または複数の衛星が抽出される。
例えば、観測要求1においては、センサAが指定されているので、対象衛星SATGとしてSA1〜SA4が設定されている。また、観測要求2においては、センサBが指定されているので、各観測1、2に対して、対象衛星SATGとしてそれぞれSB1〜SB2が設定されている。さらに、観測要求3においては、センサCが指定されているので、各観測1、2に対して、対象衛星SATGとしてそれぞれSC1〜SC2が設定されている。さらに、観測要求4においては、センサAが指定されているので、各観測1〜5に対して、対象衛星SATGとしてそれぞれSA1〜SA4が設定されている。
図8に示す実施例では、1つの衛星が1つの種別に属するセンサを搭載しているものとしている。ただし、1つの衛星が複数の種別のセンサを搭載してもよい。なお、衛星テーブル21により管理される使用率目標値Cutおよび観測回数実績値Nurについては、後で説明する。
「観測方向許容角度」は、各観測要求に対応する衛星が搭載するセンサの観測範囲を指定する。ここで、各衛星が搭載しているセンサの観測範囲は、図9に示す方向角テーブル22に登録されている。
図9において、各衛星の観測領域は、詳細条件に応じて予め規定されている。観測領域1は、図5に示す観測可能領域を表す。例えば、衛星SA1の観測領域1は、高分解能観測時には、ロール角αは±15度であり、ピッチ角βも±15度である。また、衛星SA1の観測領域1は、低分解能観測時には、ロール角αは±45度であり、ピッチ角βは±20度である。
なお、図6に示すようなレーダ観測を行う衛星については、1組の観測領域1、2が規定されている。例えば、衛星SC3が左方視観測および右方視観測の双方を実施する場合には(詳細条件=指定なし)、図5に示す左方視観測可能領域を表す観測領域1のロール角の範囲は20〜55度であり、図5に示す右方視観測可能領域を表す観測領域2のロール角の範囲は−55〜−20度である。
図7に戻る。各観測要求に対応する各観測の「観測方向許容角度」としては、図9に示す方向角テーブル22から抽出される情報が設定される。例えば、観測要求1においては「高分解能」が指定されている。ステレオ観測でない場合は通常直下視なので、方向角テーブル22から各衛星SA1〜SA4の高分解能時の情報が抽出され、「観測方向許容角度」として設定される。図9に示す例では、衛星SA1に対して「α11=−15、α12=15、β1=0」が設定され、衛星SA2に対して「α11=−25、α12=25、β1=0」が設定される。また、他の観測要求についても同様に、方向角テーブル22から対応する情報が抽出され、観測条件テーブル31に設定される。
「月別観測回数」は、各観測要求に対応する各観測について、月ごとに、観測を実施する回数を表す。この月別観測回数は、ユーザにより指定される「観測頻度」に応じて決定される。図7に示す例では、たとえば、観測要求1に対応する観測は毎月4回ずつ実施され、観測要求2に対応する各観測1、2は、それぞれ毎月3回ずつ実施される。
このように、観測条件テーブル31は、各観測要求に対して、1または複数の観測を識別する観測番号OBS、各観測の目標領域、使用すべき衛星の候補を表す対象衛星SATG、観測方向の許容角度、および月別の観測回数を管理する。
<観測ウィンドウの算出>
上述のようにして観測条件テーブル31が作成されると、観測計画装置10の観測ウィンドウ算出部12は、ユーザにより指定される計算期間において、各衛星について観測ウィンドウを算出する。このとき、観測ウィンドウ算出部12は、軌道暦ファイル23を参照する。なお、観測ウィンドウ算出部12により得られる観測ウィンドウ情報は、衛星ごとに、観測ウィンドウファイル32に格納される。
観測ウィンドウは、各観測を実施することができる時間帯を表す。すなわち、観測ウィンドウは、個々の衛星の観測可能領域が観測目標領域を包含する時間帯を表す。例えば、図10に示すように、時刻T1〜T2における衛星SA1の観測可能領域がユーザにより指定された観測目標領域を包含する場合、時刻T1〜T2は観測ウィンドウに属する。以下同様に、所定の時刻間隔ごとに観測の可否を判断することにより観測可能時間帯(すなわち、観測ウィンドウ)が検出される。
観測ウィンドウは、各衛星について、下記の情報に基づいて算出される。
(1)計算期間
(2)上記計算期間内の軌道暦
(3)観測方向許容角度
(4)観測目標領域
計算期間は、ユーザにより指定される。計算期間としては、例えば「2010年3月1日から2010年3月31日」のように指定される。
軌道暦は、各衛星の位置を表す時系列データであり、軌道暦ファイル23に格納されている。各衛星の位置は、例えば、緯度、経度、高度により表わされる。また、各衛星の位置は、所定の時間間隔(例えば、1分間)ごとに格納されている。なお、各衛星の任意の時刻における位置は、予め設定されている衛星軌道条件に応じて算出される。衛星軌道条件は、例えば、軌道長半径、離心率、軌道傾斜角、昇交点赤径、近地点引数、平均近点離角、軌道周期、軌道高度などにより定義される。衛星軌道条件に応じて軌道暦を生成する方法は、公知の技術なので、詳しい説明は省略する。
観測方向許容角度は、図5および図6を参照しながら説明した通りであり、図7に示す観測条件テーブル31に登録されている。ここで、衛星の位置および観測方向許容角度が与えられると、観測可能領域が一意に決定する。したがって、観測ウィンドウ算出部12は、軌道暦ファイル23および観測条件テーブル31を参照することにより、各衛星について、任意の時刻における観測可能領域を算出することができる。
観測目標領域は、ユーザにより指定される。観測目標領域は、上述したように、所望の1地点であってもよいし、所望の広がりを持った領域であってもよい。
観測ウィンドウ算出部12は、軌道暦、観測方向許容角度、観測目標領域に基づいて、指定された期間内の観測ウィンドウを算出する。観測ウィンドウは、各観測について衛星ごとに算出される。
図11は、1つの観測に対して算出された観測ウィンドウを模式的に示す図である。ここでは、図7に示す観測条件テーブル31に登録されている観測要求1に対応する観測ウィンドウが描かれている。
観測要求1に対応する観測は、この例では、センサAを用いて領域[φ,λ]1に対して実施される。また、この観測を実施する衛星の候補は、センサAを搭載する衛星であり、SA1〜SA4である。したがって、各衛星SA1〜SA4について、上記観測を実施可能な時間帯(すなわち、観測ウィンドウ)が計算される。
図11に示す例では、衛星SA1は、3月1日、3月5日、3月9日、3月13日、3月17日、3月21日、3月25日、3月29に領域[φ,λ]1を観測できる。また、衛星SA2は、3月3日、3月7日、3月11日、3月15日、3月19日、3月23日、3月27日、3月31に領域[φ,λ]1を観測できる。衛星SA3、SA4についても同様に、3月1日から3月31日までに期間に、それぞれ8回ずつ領域[φ,λ]1を観測できる。
なお、観測ウィンドウは、上述したように、要求された観測を実施可能な時間帯に相当する。すなわち、各観測ウィンドウは、それぞれ、観測を行う時間帯の候補である。したがって、実際に観測を行う時間帯は、算出された複数の観測ウィンドウの中から選択される。そして、実施形態の観測計画方法は、各観測要求に対して、或いは各観測要求に対応する各観測に対して、それぞれ使用すべき衛星を適切に割り当てる。
また、観測ウィンドウデータは、この実施例では、衛星ごとに収集される。衛星ごとに収集された観測ウィンドウデータの実施例を図12〜図14に示す。
図12は、衛星SA1の観測ウィンドウデータの実施例である。衛星SA1は、単一シーン観測が指定された観測要求1に対応する観測1を実施する候補であり、且つ、広域観測が指定された観測要求4に対応する観測1〜5を実施する候補でもある。すなわち、衛星SA1は、6つの観測を実施する可能性がある。したがって、衛星SA1に対しては、6セットの観測ウィンドウデータが生成されている。
観測要求1に対応する観測1については、この例では、指定された期間内に8個の観測ウィンドウが存在する。したがって、観測ウィンドウ数として「Nw=8」が設定される。そして、各観測ウィンドウについて、それぞれ開始時刻および終了時刻が設定される。なお、図12〜図14においては、各観測ウィンドウの開始時刻および終了時刻として「99999.99999」と記載されているが、実際には、軌道暦、観測方向許容角度、観測目標領域等に基づいて算出された時刻が書き込まれる。
グループフラグは、2以上の観測ウィンドウがグループ化されたときに各ウィンドウグループを識別する識別情報である。ただし、シーン要件が単一シーンであるときは、観測ウィンドウのグループ化は行われない。したがって、観測要求1に対応する観測1においては、各観測ウィンドウのグループフラグはすべてゼロである。なお、グループフラグの設定は、衛星割付け部13により実行される手順であり、後でフローチャートを参照しながら説明する。
割付フラグは、観測ウィンドウが算出された時点では、初期値としてゼロが設定されている。そして、各観測ウィンドウの割付フラグは、観測を実施すべき時間帯として選択されると、ゼロから「1」に更新される。なお、割付フラグの更新は、衛星割付け部13により実行される手順であり、後でフローチャートを参照しながら説明する。
観測要求4に対応する観測1〜5についても、同様に、それぞれ観測ウィンドウデータが設定されている。この例では、観測要求4に対応する観測1〜5について、指定された期間内に、それぞれ10個、9個、10個、8個、9個の観測ウィンドウが存在する。
図13は、衛星SB1の観測ウィンドウデータの実施例である。衛星SB1は、ステレオ観測が指定された観測要求2に対応する観測1、2を実施する候補である。すなわち、衛星SB1は、2つの観測を実施する可能性がある。そして、この例では、観測要求2に対応する観測1に対して10個の観測ウィンドウが存在し、観測要求2に対応する観測2に対して9個の観測ウィンドウが存在している。さらに、各観測ウィンドウについて、それぞれ開始時刻および終了時刻が設定されている。
図14は、衛星SC1の観測ウィンドウデータの実施例である。衛星SC1は、インターフェロメトリ観測が指定された観測要求3に対応する観測1、2を実施する候補である。すなわち、衛星SC1は、2つの観測を実施する可能性がある。そして、この例では、観測要求3に対応する観測1に対して10個の観測ウィンドウが存在し、観測要求3に対応する観測2に対して10個の観測ウィンドウが存在している。さらに、各観測ウィンドウについて、それぞれ開始時刻および終了時刻が設定されている。
このように、観測ウィンドウ算出部12は、衛星ごとに、各観測要求に対応する1または複数の観測についてそれぞれ観測ウィンドウを算出する。そして、算出された観測ウィンドウデータは、衛星ごとに収集され、観測ウィンドウファイル32に格納される。
<観測ウィンドウのグループ化>
上述したように、ステレオ観測、インターフェロメトリ観測、広域観測は、1つの観測要求に対して複数の観測が必要となる。したがって、これらの観測が指定された場合は、必要に応じて、観測ウィンドウのグループ化が実行される。
ステレオ観測は、図3を参照しながら説明したように、前方視観測および後方視観測を実施することで実現される。すなわち、ステレオ観測が指定された観測要求に対しては、前方視および後方視に対応する1組の観測(OBS=1,2)が実施される。そして、これら1組の観測は、1つの衛星によって短い期間内に実施されることが好ましい。
そこで、衛星割付け部13のグループ化部13aは、観測ウィンドウファイル32を参照し、ステレオ観測を実施する各衛星について、それぞれ、観測1の任意の観測ウィンドウの開始時刻Ts(OBS=1)からの差分が、閾値時間ΔTよりも小さい観測2の観測ウィンドウTs(OBS=2)をサーチする。すなわち、ステレオ観測を実施する各衛星について、下式を満たす観測ウィンドウのペアがサーチされる。
Ts(OBS=2)−Ts(OBS=1)<ΔT
ここで、閾値時間ΔTは、衛星の軌道周期の2分の1よりも小さい値が選択される。例えば、衛星の軌道周期が90分であるときは、閾値時間ΔTとして30分程度の値を設定することができる。そして、グループ化部13aは、上記関係式を満たす観測ウィンドウに対して同じグループフラグを付与する。
図15(a)は、ステレオ観測が要求されたときのグループ化について説明する図であり、1つのステレオ観測要求に応じてある1つの衛星に対して算出される観測ウィンドウを示している。この実施例では、前方視観測に対応する観測1(OBS=1)に対して観測ウィンドウW11〜W15が存在し、後方視観測に対応する観測2(OBS=2)に対して観測ウィンドウW21〜W25が存在している。そして、観測ウィンドウW11、W21の開始時刻の差異が閾値時間ΔTよりも小さい。したがって、観測ウィンドウW11、W21に対して同じグループフラグ(IFGR=1)が付与される。同様に、観測ウィンドウW12、W22に対してグループフラグ(IFGR=2)が付与され、観測ウィンドウW14、W23に対してグループフラグ(IFGR=3)が付与され、観測ウィンドウW15、W24に対してグループフラグ(IFGR=4)が付与される。
グループフラグは、上述したように、観測ウィンドウファイル32に書き込まれる。図13に示す例では、衛星SB1において、例えば、観測1の観測ウィンドウ1および観測2の観測ウィンドウ1がグループ化されている。また、観測1の観測ウィンドウ2および観測2の観測ウィンドウ2がグループ化されている。以下同様に、衛星SB1において、8個の観測ウィンドウグループが生成されている。
インターフェロメトリ観測は、上述したように、1つの領域を衛星の回帰日数に相当する時間だけ隔てて2回観測することで実現される。すなわち、インターフェロメトリ観測が指定された観測要求に対しては、2回の観測(OBS=1,2)が実施される。そして、この2回の観測は、1つの衛星によって実施されることが好ましい。
そこで、グループ化部13aは、観測ウィンドウファイル32を参照し、インターフェロメトリ観測を実施する各衛星について、それぞれ、観測1の任意の観測ウィンドウの開始時刻Ts(OBS=1)からの差分が、衛星の回帰日数に相当する時間である観測2の観測ウィンドウTs(OBS=2)をサーチする。すなわち、インターフェロメトリ観測を実施する各衛星について、下式を満たす観測ウィンドウのペアがサーチされる。
M−δ<Ts(OBS=2)−Ts(OBS=1)<M+δ
ここで、Mは、衛星の回帰日数に相当する時間を表す。また、δは、軌道計算に伴う誤差を考慮したマージンを表し、例えば、5分程度の値を設定することができる。そして、グループ化部13aは、上記関係式を満たす観測ウィンドウに対して同じグループフラグを付与する。
図15(b)は、インターフェロメトリ観測が要求されたときのグループ化について説明する図であり、1つのインターフェロメトリ観測要求に応じてある1つの衛星に対して算出される観測ウィンドウを示している。この実施例では、観測1(OBS=1)に対して観測ウィンドウW11〜W15が存在し、観測2(OBS=2)に対して観測ウィンドウW21〜W25が存在している。そして、観測ウィンドウW11、W25の開始時刻の差異が、M±δの範囲内である。したがって、観測ウィンドウW11、W25に対して同じグループフラグ(IFGR=1)が付与される。
図14に示す例では、衛星SC1において、例えば、観測1の観測ウィンドウ1および観測2の観測ウィンドウ5がグループ化されている。また、観測1の観測ウィンドウ2および観測2の観測ウィンドウ6がグループ化されている。以下同様に、衛星SC1において、6個の観測ウィンドウグループが生成されている。
広域観測においては、目標観測領域が仮想的なメッシュを利用して複数の領域に分割される。そして、各メッシュに対してそれぞれ観測番号(OBS=1,2,3,...,n)が割り当てられる。すなわち、各メッシュがそれぞれ観測されることになる。ただし、図4に示すように、同じ衛星により連続して観測可能なメッシュも存在し得る。図4に示す例では、衛星SA1により領域X内の14個のメッシュを観測可能であり、衛星SA2により領域Y内の12個のメッシュを観測可能であり、衛星SA3により領域Z内の15個のメッシュを観測可能である。この場合、同じ衛星により連続して観測可能な複数のメッシュについては、同じ衛星により連続して観測すると効率的である。
そこで、グループ化部13aは、観測ウィンドウファイル32を参照し、広域観測を実施する各衛星について、互いに時間的に重なっている観測ウィンドウをグループ化する。すなわち、広域観測を実施する各衛星について、時間的に連続している2以上の観測ウィンドウがグループ化される。広域観測の場合の観測ウィンドウのグループ化は、例えば、衛星ごとに下記の手順で行われる。
(1)広域観測要求に対応する全ての観測(OBS=1,2,3,...,n)の全ての観測ウィンドウを、開始時刻について昇順にソートする。
(2)グループフラグの初期設定を行う。まず、全ての観測ウィンドウのグループフラグにゼロを設定する。続いて、変数iに「1」を設定する。変数iは、昇順にソートされた観測ウィンドウを先頭から順番に識別する。すなわち、「i=1」は、第1番目の観測ウィンドウ(すなわち、開始時刻が最も早い観測ウィンドウ)を識別する。そして、変数iにより識別される第1番目の観測ウィンドウのグループフラグに「1(IFGR=1)」を設定する。
(3)昇順にソートされた観測ウィンドウについて順番に下式の条件を満たすか否かをチェックする。
Ts(i+1)≦Te(i)
Tsは、観測ウィンドウの開始時刻を表す。また、Teは、観測ウィンドウの終了時刻を表す。すなわち、上記条件式は、i+1番目の観測ウィンドウの開始時刻が、i番目の観測ウィンドウの終了時刻以前であるか否かをチェックする。さらに換言すれば、上記条件式は、i番目の観測ウィンドウおよびi+1番目の観測ウィンドウが時間的に重なっているか否かをチェックする。
上記条件式が満たされていれば、i+1番目の観測ウィンドウのグループフラグに、i番目の観測ウィンドウのグループフラグと同じ値を設定する。そして、変数iをインクリメント(i=i+1)して次の観測ウィンドウに進む。一方、上記条件式が満たされていなければ、グループフラグをカウントアップする。すなわち、「IFGR=IFGR+1」を行う。そして、i+1番目の観測ウィンドウのグループフラグに、更新されたIFGRを設定する。この後、変数iをインクリメント(i=i+1)して次の観測ウィンドウに進む。そして、上記手順を全ての観測ウィンドウに対して実行することにより、時間的に重なり合って連続する観測ウィンドウがグループ化される。
図15(c)は、広域観測が要求されたときのグループ化について説明する図であり、1つの広域観測要求に応じてある1つの衛星に対して算出される観測ウィンドウを示している。この実施例では、観測1(OBS=1)に対して観測ウィンドウW11〜W13が存在し、観測2(OBS=2)に対して観測ウィンドウW21〜W22が存在し、観測3(OBS=3)に対して観測ウィンドウW31〜W32が存在し、観測4(OBS=4)に対して観測ウィンドウW41〜W42が存在し、観測5(OBS=5)に対して観測ウィンドウW51〜W52が存在している。そして、観測ウィンドウW11、W21が互いに重なり合っている。よって、観測ウィンドウW11、W21に対して同じグループフラグ(IFGR=1)が付与される。さらに、4つのグループ(IFGR=2,3,4,5)が生成されている。
図12に示す例では、衛星SA1において、例えば、グループ1として、観測要求4に対応する観測1の観測ウィンドウ1および観測2の観測ウィンドウ1がグループ化されている。また、グループ2として、観測要求4に対応する観測3の観測ウィンドウ1および観測4の観測ウィンドウ1がグループ化されている。
このように、グループ化部13aは、特定観測要求(すなわち、ステレオ観測、インターフェロメトリ観測、または広域観測を指定する観測要求)が入力されたときは、衛星ごとに、観測ウィンドウのグループ化を行う。
<衛星の選択>
衛星割付け部13の割付け部13bは、観測条件テーブル31および観測ウィンドウファイル32を読み込み、割付管理テーブル33を作成する。なお、観測ウィンドウファイル32は、グループ化部13aによりグループ化処理が施されているものとする。すなわち、衛星ごとに、特定観測要求の観測ウィンドウがグループ化されているものとする。
図16は、割付管理テーブル33の実施例である。割付管理テーブル33は、各観測要求に対応する各観測について、衛星が割り付けられた回数を管理する。ここで、観測要求は、要求番号REQにより識別される。各観測要求に対応する観測は、観測番号OBSにより識別される。要求回数Nfreqは、ユーザにより指定された期間内に各観測を実施する回数を表す。この例では、観測条件テーブル31の「月別観測回数」として設定されている値が使用される。
割付数Ngetは、観測番号OBSにより識別される各観測が、それぞれ、後述する割付け手順によって衛星が割り付けられた回数を表す。したがって、各割付数Ngetの初期値はゼロである。そして、割付数Ngetは、対応する観測に衛星が割り付けられる毎に、1ずつカウントアップする。なお、各観測に対する衛星の割付け手順は、割付数Ngetが要求回数Nfreqに達するまで繰り返し実行される。
また、割付け部13bは、特定の衛星に観測が偏らないように、各観測に対して衛星を割り付ける。他方、各衛星の使用頻度は、衛星の能力や使用開始時期などに応じて決定されることが好ましい。そこで、実施形態の観測計画方法では、各衛星について予め使用率の目標値を定義し、各衛星の使用率がそれぞれ目標値に近づくように、各観測に対する衛星の割付けが行われる。
各衛星の使用率目標値は、衛星テーブル21に登録されている。この例では、各衛星グループ内での使用率目標値の和が「1」となるように、各衛星の使用率目標値が決定される。図8に示す例では、例えば、センサAを搭載する衛星SA1、SA2、SA3、SA4の使用率目標値Cutは、それぞれ「0.4」「0.3」「0.2」「0.1」に設定されている。なお、使用率目標値は、固定的に設定されてもよいし、必要に応じて更新されるようにしてもよい。
衛星テーブル21は、さらに、観測回数実績値Nurを管理する。観測回数実績値Nurは、各衛星が実際に観測を行った回数を表す。なお、観測回数実績値Nurは、特に限定されるものではないが、各衛星の観測データを処理する管理システムにより管理される。この場合、観測計画装置10は、管理システムから各衛星の観測回数実績値Nurを受け取って衛星テーブル21に格納する。
一例として、4つの衛星の中からある観測に割り付けるべき衛星を選択する方法を説明する。各衛星の観測回数実績をNur(1)、Nur(2)、Nur(3)、Nur(4)で表わす。また、各衛星が新たに観測を行う予定回数をNnew(1)、Nnew(2)、Nnew(3)、Nnew(4)で表わす。そして、各衛星について、下式により、観測回数Nuを算出する。
Nu(i)=Nur(i)+Nnew(i)(i=1,2,3,4)
すなわち、観測回数Nuは、各衛星についての、過去に実際に観測を行った回数と、新たに観測を行う予定回数との和である。なお、予定回数Nnewおよび観測回数Nuは、特に限定されるものではないが、不図示の観測回数メモリ領域に保持されているものとする。さらに、各衛星の使用率目標値をCut(1)、Cut(2)、Cut(3)、Cut(4)で表わす。
まず、割付け部13bは、下式により、各衛星の使用率Cu(i)(i=1,2,3,4)を計算する。
Cu(i)=Nu(i)/Ntotal
Ntotal=Nu(1)+Nu(2)+Nu(3)+Nu(4)
また、割付け部13bは、各衛星について、下式により、使用率目標値に対する現在の使用率の比率Rを算出する。
R(i)=Cu(i)/Cut(i)
そして、割付け部13bは、ある観測に対して衛星を割り付けるときは、その観測を実施可能な衛星の中から、上記比率Rが最小の衛星を選択する。このとき、観測回数メモリ領域に保持されている対応する予定回数Nnewがカウントアップされ、その結果として、観測回数Nuもカウントアップされる。以降、この手順に従って衛星を選択することにより、各衛星の使用率は、それぞれ対応する使用率目標値に近づくことになる。
このように、実施形態の観測計画方法によれば、各衛星の使用率がそれぞれ目標値に近づく。したがって、使用率の目標値を各衛星に均等に設定すれば、特定の衛星に観測が集中する状況は回避される。また、特定の衛星を優先的に使用したい場合には、その衛星の使用率目標値を高くすればよい。
<観測ウィンドウの割り付け>
次に、複数の観測ウィンドウの中から観測に対して割り付けられる観測ウィンドウを選択する方法について説明する。ここでは、1つの観測に対して存在する観測ウィンドウの数が、実際に観測を実施する回数よりも多いものとする。
各観測に対して割り付けられる観測ウィンドウは、観測対象期間内において、時間的に分散して配置されることが好ましい。したがって、1つの観測に対してNw個の観測ウィンドウが存在し、且つ、観測対象期間内にNobs(Nw>Nobs)回の観測が実施される場合は、割付け部13bは、例えば、[1,Nw]において互いに異なるNobs個の乱数を生成する。そして、生成された乱数値で表わされる観測ウィンドウを、観測を実施すべきウィンドウとして選択する。なお、各観測に対して使用すべき観測ウィンドウを選択する方法は、後でフローチャートを参照しながら詳しく説明する。
観測要求が上述した特定観測要求(ステレオ観測、インターフェロメトリ観測、または広域観測が指定された観測要求)である場合は、グループ化部13aにより付与されるグループフラグを参照して観測ウィンドウの割付けが行われる。例えば、ステレオ観測またはインターフェロメトリ観測が指定されている場合は、同じグループフラグが付与されている観測1、2の観測ウィンドウは、いっしょに選択される。すなわち、割付け部13bは、同じグループフラグが付与されている1組の観測ウィンドウの一方を選択するときには、他方の観測ウィンドウも合わせて選択する。ただし、グループフラグがゼロである観測ウィンドウは、ペアが存在しないことを表しているので、観測に対して割り付けられことはない。また、広域観測が指定されている場合も、同じグループフラグが付与されている2以上の観測ウィンドウは、いっしょに選択される。
このように、実施形態の観測計画方法においては、複数の衛星のそれぞれに対して設定されている使用率目標値に基づいて、観測を行うべき衛星が選択される。このため、特定の衛星に観測の実施が偏る状況を回避できる。また、グループ化されている複数の観測ウィンドウを使用する複数の観測が同じ衛星により実施されるように、各観測に対して衛星が割り付けられる。したがって、1つの観測要求に対応する一連の観測を効率的に実施することができる。
図17は、衛星割付け部13の動作を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、観測ウィンドウ算出部12により各衛星について観測ウィンドウデータが生成され、さらにグループ化部13aにより対応する観測ウィンドウにグループフラグが付与された後に実行される。
ステップS11において、割付け部13bは、観測条件テーブル31を読み込む。観測条件テーブル31は、図7を参照しながら説明したように、各観測要求について、観測番号、観測目標領域、対象衛星、観測方向許容角度、月別観測回数を管理する。
ステップS12において、割付け部13bは、図16に示す割付管理テーブル33の初期設定を行う。このとき、「要求回数」および「観測番号」は、観測条件テーブル31から対応する情報が抽出されて設定される。また、「割付数」は、それぞれゼロに初期化される。
ステップS13において、割付け部13bは、図8に示す衛星テーブル21から、各衛星についての観測回数実績を読み込む。以下では、各衛星の観測実績回数を「Nur(i)」で表わす。なお、変数iは、各衛星を識別する。
続いて、割付け部13bは、各観測要求に対してそれぞれステップS14〜S18の処理を実行する。以下の説明では、各観測要求を識別する要求番号を「IREQ」で表わす。また、観測要求の総数を「Nreq」で表わす。この実施例では、図7に示すように、4つの観測要求が入力されているので「Nreq=4」である。この場合、観測要求1、2、3、4についてそれぞれステップS14〜S18の処理が実行される。
ステップS14において、割付け部13bは、処理対象の観測要求で指定または設定されている情報を、対応する変数に与える。変数SATG(j)は、搭載するセンサの種別に応じ手グループ化された衛星グループを表す。変数ISEENは、シーン要件を表す。変数Nfreqは、指定された観測期間内に実施される観測回数を表す。変数Nobsは、観測番号の最大値(すなわち、観測要求が必要とする観測の回数)を表す。たとえば、図7に示す観測要求1については、「SATG(j)=A」「ISEEN=N」「Nfreq=4」「Nobs=1」が得られる。また、観測要求2については、「SATG(j)=B」「ISEEN=S」「Nfreq=3」「Nobs=2」が得られる。
ステップS15〜S18において、割付け部13bは、シーン要件ISEENに対応する割付け処理を実行する。このとき、「ISEEN=N(単一シーン)」であれば、ステップS16が実行される。「ISEEN=S(ステレオ観測)」または「ISEEN=F(インターフェロメトリ観測)」であれば、ステップS17が実行される。「ISEEN=W(広域観)」であれば、ステップS18が実行される。ステップS16、S17、S18の具体的な処理は、それぞれ図18、図19、図20〜図21を参照して説明する。そして、ステップS19において、割付け部13bは、ステップS16、S17、またはS18の処理により得られる割付結果を割付結果ファイル34へ出力する。
次に、図18〜図21を参照しながら、具体的な割付け手順について説明する。なお、図18〜図21に示すフローチャートの説明では、各種テーブルから抽出されるデータを変数として扱う際に、データ名に対して「I」または「J」を付して呼ぶことがある。例えば、要求番号REQは、変数IREQとして設定される。また、観測番号OBSは、変数IOBSまたは変数JOBSとして設定される。
図18は、単一シーンが指定されたときの割付け処理を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、図17に示すステップS16に相当する。また、割付け部13bには、要求番号IREQ、衛星グループSATG(j)、観測回数Nfreqが与えられるものとする。
単一シーン(ISEEN=N)は、この実施例では、図7に示す観測要求1(IREQ=1)において指定されている。この場合、「SATG(j)=A」および「Nfreq=4」が得られる。すなわち、観測要求1を実施する可能性がある対象衛星は、図8に示すように、4つの衛星SA1〜SA4である。また、割付け部13bは、各「観測」に対してそれぞれステップS21〜S27の処理を実行する。この実施例では「Nfreq=4」である。この場合、4つの観測に対してそれぞれステップS21〜S27の処理が実行される。
ステップS21において、割付け部13bは、変数SATG(j)によって指定された衛星グループの中から、各衛星の使用率目標値に基づいて、観測を実施すべき衛星を1つ選択する。各衛星の使用率目標値は、図8に示す衛星テーブル21に登録されている。ここで、指定された衛星グループの中から1つの衛星を選択する方法は、上述した通りである。すなわち、各衛星の使用率がそれぞれ対応する使用率目標値に近づくように、1つの衛星が選択される。そして、割付け部13bは、衛星iを選択したときは、その衛星iの予定回数Nnew(i)をカウントアップすることにより、観測回数Nu(i)をカウントアップする。なお、以下の説明では、変数SATは、選択された衛星を表す。
ステップS22において、割付け部13bは、ステップS21で選択された衛星についての観測ウィンドウデータを観測ウィンドウファイル32から抽出し、さらに、処理対象の観測要求のデータを読み込む。このとき、処理対象の観測要求は、要求番号IREQにより識別される。例えば、ステップS21において衛星SA1が選択されたものとする。そうすると、ステップS22では、図12に示す観測ウィンドウデータが読み出され、さらに、観測要求1(OBS=1)に係わるデータが抽出される。なお、以下では、変数Nwは、1つの観測に対する観測ウィンドウの数を表す。図12に示す例では、「Nw=8」である。
ステップS23〜S25において、割付け部13bは、Nw個の観測ウィンドウの中から1つの観測ウィンドウを選択する。即ち、ステップS23において、Nw以下の自然数の中で乱数が生成される。ここで、生成された乱数を「IR」と呼ぶことにする。続いて、ステップS24において、乱数IRにより指定される観測ウィンドウの割付フラグIGETを読み込む。例えば、乱数として「3(IR=3)」が生成された場合は、観測ウィンドウ3の割付フラグIGETがチェックされる。そして、割付フラグIGETが「ゼロ」であれば、ステップS26に進む。これに対して、割付フラグIGETが「ゼロ」でない場合は、ステップS23に戻って次の乱数を生成する。ここで、「IGET≠0」は、指定された観測ウィンドウが既に割り付けられていることを表す。よって、この場合は、他の観測ウィンドウを探すために、ステップS23〜S25の処理が繰り返される。
ステップS26において、割付け部13bは、ステップS23〜S25で指定された観測ウィンドウの割付フラグIGETを「ゼロ」から「1」に更新する。さらに、ステップS27において、割付け部13bは、割付管理テーブル33において割付数Ngetを更新する。すなわち、処理対象の観測要求(要求番号=IREQ)の割付数Ngetがカウントアップされる。
このように、実施形態の観測計画方法によれば、各衛星に使用率に基づいて、観測要求に対応する各観測に対してそれぞれ衛星が選択される。このとき、1つの衛星が複数の観測に割り当てられてもよい。そして、選択された衛星ごとに、各観測に対してそれぞれ1つの観測ウィンドウが割り付けられる。このとき、各衛星が提供する複数の観測ウィンドウの中から、対象観測に対して1つの観測ウィンドウが割り付けられる。
図19は、ステレオ観測またはインターフェロメトリ観測が指定されたときの割付け処理を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、図17に示すステップS17に相当する。
ステレオ観測(ISEEN=S)は、この実施例では、図7に示す観測要求2(REQ=2)において指定されている。この場合、「SATG(j)=B」および「Nfreq=3」が得られる。すなわち、観測要求2に対応する観測を実施する可能性がある対象衛星は、図8に示すように、衛星SB1〜SB2である。また、インターフェロメトリ観測(ISEEN=F)は、この実施例では、図7に示す観測要求3(REQ=3)において指定されている。この場合は、「SATG(j)=C」および「Nfreq=2」が得られる。すなわち、観測要求2に対応する観測を実施する可能性がある対象衛星は、図8に示すように、衛星SC1〜SC2である。
割付け部13bは、各「観測ペア」に対してそれぞれステップS31〜S39の処理を実行する。ここで、観測ペアは、ステレオ観測においては、図3を参照しながら説明したように、前方視観測(観測1)および後方視観測(観測2)に相当する。また、観測ペアは、インターフェロメトリ観測では、回帰周期期間を隔てて実施される1組の観測(観測1、2)に相当する。なお、以下では、観測要求においてステレオ観測が指定されているものとする。そうすると、この実施例では「Nfreq=3」である。すなわち、観測対象期間内に3回の観測が行われる。したがって、この場合、3つの観測ペアに対してそれぞれステップS31〜S39の処理が実行される。
ステップS31において、割付け部13bは、変数SATG(j)により指定された衛星グループの中から、各衛星の使用率の目標値に基づいて、観測を実施すべき衛星を1つ選択する。この処理は、上述したステップS21と同じなので、説明を省略する。
ステップS32において、割付け部13bは、ステップS31で選択された衛星についての観測ウィンドウデータを観測ウィンドウファイル32から抽出し、さらに、処理対象の観測要求に対応する「観測1」についてのデータを読み込む。このとき、処理対象の観測要求は、要求番号IREQにより識別される。例えば、ステップS31において衛星SB1が選択されたものとする。そうすると、ステップS32では、図13に示す観測ウィンドウデータが読み出され、さらに、観測1(OBS=1)に係わるデータが抽出される。また、観測ウィンドウの数を表す変数には、「Nw=10」が設定される。
ステップS33〜S35において、割付け部13bは、Nw個の観測ウィンドウの中から1つの観測ウィンドウを選択する。この処理は、基本的に、上述したステップS23〜S25と同じである。ただし、割付フラグIGETが「ゼロ」であれば、ステップS36に進む。
ステップS36〜S37において、割付け部13bは、ステップS33〜S35で指定された観測ウィンドウのグループフラグIFGRの値をチェックする。このとき、グループフラグIFGRが「ゼロ」であれば、当該観測ウィンドウとペアとなる観測ウィンドウが存在しないと判定される。この場合、ステップS33に戻って次の乱数を生成する。一方、グループフラグIFGRが「ゼロ」以外であれば、ステップS38へ進む。このように、ステップS33〜S37においては、ペアとなる観測ウィンドウを有する観測ウィンドウが抽出される。
ステップS38において、割付け部13bは、ステップS33〜S37で観測1に対して指定された観測ウィンドウの割付フラグIGETを「1」に更新する。また、割付け部13bは、観測2に対して算出されている複数の観測ウィンドウの中から、観測1に対して指定された観測ウィンドウと同じグループフラグIFGRが付与されている観測ウィンドウを抽出し、その抽出した観測ウィンドウの割付フラグIGETも「1」に更新する。
例えば、使用率に基づいて衛星SB1が選択され、ステップS33〜S37の処理により図13に示す観測ウィンドウデータにおいて観測1の観測ウィンドウ1が指定されたものとする。ここで、観測1の観測ウィンドウ1のグループフラグは「1」である。また、観測2の観測ウィンドウ1〜9の中で、観測ウィンドウ1のグループフラグが「1」である。そうすると、割付け部13bは、観測1の観測ウィンドウ1および観測2の観測ウィンドウ1の割付フラグIGETをそれぞれ「1」に更新する。すなわち、グループ化されている1組の観測ウィンドウの割付フラグが更新される。なお、このような設定が行われると、上記1組の観測は、いずれも衛星SB1により実施されることになる。
ステップS39において、割付け部13bは、割付管理テーブル33により管理されている割付数Ngetを更新する。すなわち、処理対象の観測要求(要求番号=IREQ)に対応する1組の観測についての割付数Ngetがそれぞれカウントアップされる。図16に示す例では、観測要求2(REQ=2)に対応する観測1(OBS=1)および観測2(OBS=2)の割付数Ngetがそれぞれカウントアップされる。なお、上記説明では、シーン要件としてステレオ観測が指定されているが、インターフェロメトリ観測が指定された場合の処理も同様である。
このように、実施形態の観測計画方法によれば、ステレオ観測またはインターフェロメトリ観測が指定された場合には、使用率に基づいて選択された衛星の観測ウィンドウの中から、同じグループフラグが付与されている1組の観測ウィンドウが選択される。このとき、ステレオ観測の場合は、時間的に互いに近接している1組の観測ウィンドウが選択される。また、インターフェロメトリ観測の場合は、回帰周期間隔だけ離れている1組の観測ウィンドウが選択される。したがって、1つの観測要求に対応する1組の観測が、1つの衛星に適切に割り付けられ、効率的な観測が実現される。
図20〜図21は、広域観測が指定されたときの割付け処理を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、図17に示すステップS18に相当する。
広域観測(ISEEN=W)は、この実施例では、図7に示す観測要求4(IREQ=4)において指定されている。この場合、「SATG(j)=A」および「Nfreq=2」が得られる。すなわち、観測要求4を実施する可能性がある対象衛星は、図8に示すように、4つの衛星SA1〜SA4である。また、月ごとに2回の広域観測が実施されるように、衛星の割付が行われる。
広域観測の場合は、1つの観測要求に対して複数の「観測」が実施される。例えば、図7に示す例では、観測要求4に対して5つの観測(OBS=1,2,3,4,5)が実施される。そして、割付け部13bは、各「観測」に対してステップS41〜S55の処理を実行する。なお、変数IOBSは、各「観測」を識別し、変数Nobs以下の自然数を取り得る。また、変数Nobsは、1回の広域観測において実施すべき観測の数を表し、この例では「5」である。すなわち、「Nobs=5」である場合、IOBS=1,2,3,4,5に対してそれぞれステップS41〜S55の処理が実行される。
ステップS41において、割付け部13bは、割付管理テーブル33から、指定された観測要求の指定された観測に対する割付数Ngetを読み込む。この実施例では、広域観測が指定されている観測要求4に対応する5つの観測の中の1つが変数IOBSにより指定され、その指定された観測についての割付数Ngetが読み込まれる。ここで、観測対象期間内に広域観測を実施すべき月別観測回数(割付管理テーブル33では、要求回数)として「Nfreq」が設定されている。一方、割付数Ngetは、月別観測回数に対して、衛星が既に割り当てられている回数を表す。したがって、割付け部13bは、新たに衛星を割り付ける必要がある観測の回数「Nfreq−Nget」を算出する。以下の説明では、新たに衛星を割り付ける必要がある観測の回数(すなわち、残りの観測回数)は、変数Nrestで表わされる。
続いて、割付け部13bは、変数IOBSにより指定された観測に対してステップS41〜S55の処理を実行する手順の中で、その指定されている観測について、ステップS42〜S55の処理を、残り観測回数だけ繰り返し実行する。以下、ステップS42〜S55について説明する。
ステップS42において、割付け部13bは、変数SATG(j)により指定された衛星グループの中から、各衛星の使用率の目標値に基づいて、観測を実施すべき衛星を1つ選択する。この処理は、上述したステップS21と同じなので、説明を省略する。
ステップS43において、割付け部13bは、ステップS42で選択された衛星についての観測ウィンドウデータを観測ウィンドウファイル32から抽出し、変数IOBSにより指定される観測についてのデータを読み込む。処理対象の観測要求は、変数IREQにより識別される。また、指定された観測の観測ウィンドウの数を表す変数Nwが設定される。例えば、ステップS42において衛星SA1が選択されたものとする。そうすると、ステップS43において、図12に示す観測ウィンドウデータが読み出される。さらに、観測1〜5(OBS=1,2,3,4,5)の中から、変数IOBSにより指定される観測についての観測ウィンドウデータが抽出される。このとき、観測1が指定されると、対応する観測ウィンドウの数として「Nw=10」が設定される。
ステップS44〜S46において、割付け部13bは、Nw個の観測ウィンドウの中から1つの観測ウィンドウを選択する。この処理は、基本的に、上述したステップS23〜S25と同じである。ただし、割付フラグIGETが「ゼロ」であれば、ステップS47に進む。
ステップS47において、割付け部13bは、ステップS44〜S46で指定された観測ウィンドウの割付フラグIGETを「1」に更新する。すなわち、変数IOBSにより指定される観測についての複数の観測ウィンドウの中から乱数IRにより指定される観測ウィンドウの割付フラグIGETが「1」に更新される。
ステップS48において、割付け部13bは、割付管理テーブル33により管理されている割付数Ngetを更新する。すなわち、処理対象の観測要求(要求番号=IREQ)に対応する複数の観測の中で、変数IOBSにより指定される観測の割付数Ngetがカウントアップされる。このように、ある観測に対して観測ウィンドウが割り付けられると、その観測に対応する割付数Ngetがカウントアップされる。
ステップS49において、割付け部13bは、ステップS44〜S46で指定された観測ウィンドウのグループフラグの値を読み込む。以下の説明では、このグループフラグの値が変数IFRGに設定される。
続いて、割付け部13bは、ステップS42〜S55の処理を実行する手順の中で、変数IOBSにより指定されている処理対象の観測以外の各観測について、ステップS50〜S55の処理をそれぞれ実行する。例えば、1つの広域観測要求に対して観測1〜5が必要とされる場合において、変数IOBSにより観測1が指定されているときは、観測2〜5のそれぞれに対してステップS50〜S55の処理が実行される。以下、ステップS50〜S55について説明する。なお、以下の説明では、処理対象の観測以外の各観測は、変数JOBSを用いて識別される。
ステップS50において、割付け部13bは、割付管理テーブル33から、処理対象の観測要求(要求番号=IREQ)に対応する観測であって変数JOBSにより指定される観測についての割付数を読み込む。そして、この割付数は、変数Nget(JOBS)に設定される。
ステップS51において、割付け部13bは、変数JOBSにより指定される観測に対して観測ウィンドウが割り付けられた回数が、要求されている月別観測回数に達したか否かをチェックする。すなわち、変数Nget(JOBS)と、変数Nfreq(JOBS)とが比較される。なお、変数Nfreq(JOBS)は、変数JOBSにより指定される観測についての観測要求回数を表す。そして、割付数が月別観測回数に達していなければ、ステップS52に進む。一方、割付数が月別観測回数に達していれば、ステップS50に戻る。
ステップS52〜S53において、割付け部13bは、変数JOBSにより指定される観測についての観測ウィンドウデータを読み込み、各観測ウィンドウのグループフラグ及び割付フラグをチェックする。そして、ステップS42〜S49で検出されたグループフラグIFGRと同じ値のグループフラグが付与されており、且つ、割付フラグIGETが「ゼロ」である観測ウィンドウが存在すれば、ステップS54に進む。ただし、上記条件を満たす観測ウィンドウが存在しないときは、ステップS50に戻る。
ステップS54において、割付け部13bは、変数JOBSにより指定されている観測に対応する観測ウィンドウであって、ステップS49で検出されたグループフラグIFGRと同じ値のグループフラグが付与されている観測ウィンドウの割付フラグを「1」に更新する。そして、ステップS55において、割付け部13bは、処理対象の観測要求(要求番号=IREQ)に対応する観測であって、変数JOBSにより指定される観測の割付数Ngetをカウントアップする。
なお、ステップS41〜S55から構成される処理ループ(以下、第1の処理ループ)は、観測番号IOBSにより識別される各観測について順番に実行される。すなわち、要求された広域目標領域をメッシュ状に分割することにより得られる各分割領域に対して、それぞれ、ステップS41〜S55の処理が実行される。よって、第1の処理ループは、広域目標領域を空間方向にスキャンする手順に相当する。
また、ステップS42〜S55から構成される処理ループ(以下、第2の処理ループ)は、指定期間内の異なる複数の時刻に実施される各観測について順番に実行される。したがって、第2の処理ループは、指定された観測期間を時間方向にスキャンする手順に相当する。
更に、ステップS50〜S55から構成される処理ループ(以下、第3の処理ループ)は、広域観測要求に対してグループ化された観測ウィンドウを抽出して同じ衛星に割り付ける処理に相当する。ここで、第3の処理ループは、第2の処理ループが実行される手順の中で繰返し実行され、第2の処理ループは、第1の処理ループが実行される手順の中で繰返し実行される。したがって、図20〜図21に示すフローチャートを実行することにより、広域観測要求に係る空間方向および時間方向のすべての観測が衛星に割り付けられる。
このように、実施形態の観測計画方法によれば、広域観測が指定された場合には、同じグループフラグが付与された複数の観測ウィンドウが、1つの衛星に割り付けられる。ここで、同じグループフラグが付与された複数の観測ウィンドウは、時間的に連続または重複する。したがって、連続する2以上の目標領域の観測を1つの衛星に割り付けることができる。この結果、効率的な広域観測が実現される。
なお、広域観測においては、複数の目標領域の一部に対応する観測に対して異なるグループフラグが重複して付与されることがある。例えば、図22に示す例において、領域1a〜1jに対応する各観測ウィンドウには衛星SA1のグループフラグ1が付与され、領域2a〜2kに対応する各観測ウィンドウには衛星SA2のグループフラグ2が付与されているものとする。ここで、領域1gおよび領域2eは、同じ領域を表している。すなわち、領域1g/2eを対象とする観測には、2つのグループフラグが重複して付与されている。
この場合、領域1g/2eを対象とする観測には、いずれか1つの衛星が割り当てられる。例えば、ステップS42において、使用率に基づいて衛星SA1が先に選択されるものとする。そうすると、まず、領域1a〜1jに対応する各観測ウィンドウに衛星SA1が割り付けられる。その後、領域2a〜2d、2f〜2kに対応する各観測ウィンドウに衛星SA2が割り付けられる。ただし、実施形態の方法は、これに限定されるものではなく、重複領域1g/2eは、衛星SA1および衛星SA2の双方によって観測されてもよい。
図23および図24は、実施形態の観測計画方法により得られる観測割付結果チャートの実施例である。図23および図24において、各四角形は、それぞれ1つの観測ウィンドウを表している。また、黒色の四角形は観測を行うウィンドウを表し、白ぬきの四角形は観測を行わないウィンドウを表す。なお、これらの観測割付結果チャートは、例えば、インタフェース装置40に表示される。
図23は、観測要求ごとに表わされた割付結果を示している。また、図24は、衛星ごとに表わされた割付結果を示している。図23および図24に示すように、ステレオ観測の場合は、同じ衛星により1組の観測が実施されるように計画されている。例えば、3月5日において、衛星SB2により、1つの目標領域に対して前方視観測および後方視観測が計画されている。また、インターフェロメトリ観測の場合も、同じ衛星により1組の観測が実施されるように計画されている。例えば、回帰周期を隔てた3月2日および3月18日において、衛星SC1による観測が計画されている。さらに、広域観測では、可能な限り多くの観測が同じ衛星により実施されるように計画されている。例えば、3月17日に衛星SA1により観測1、2、5を実施するとともに、3月26日に衛星SA3により観測3、4を実施する計画が立案されている。
<観測計画装置のハードウェア構成>
図25は、観測計画装置のハードウェア構成を示す図である。図25において、CPU101は、メモリ103を利用して観測計画プログラムを実行することにより、実施形態の観測計画方法を提供する。記憶装置102は、観測計画プログラムを格納する。なお、記憶装置102は、外部記憶装置であってもよい。メモリ103は、例えば半導体メモリであり、RAM領域およびROM領域を含んで構成される。このように、実施形態の観測計画装置は、CPUおよびメモリを備えるコンピュータにより実現される。
読み取り装置104は、CPU101の指示に従って可搬型記録媒体105にアクセスする。可搬型記録媒体105は、例えば、半導体デバイス、磁気的作用により情報が入出力される媒体、光学的作用により情報が入出力される媒体を含むものとする。通信インタフェース106は、CPU101の指示に従って、ネットワークを介してデータを送受信する。入出力装置107は、例えば、ユーザからの指示を受け付けるデバイス等に相当する。
実施形態に係わる観測計画プログラムは、上述したフローチャートの手順を記述しており、例えば、下記の形態で提供される。
(1)記憶装置102に予めインストールされている。
(2)可搬型記録媒体105により提供される。
(3)プログラムサーバ110からダウンロードする。
そして、上記構成のコンピュータシステムで観測計画プログラムを実行することによって、実施形態に係わる観測計画装置が実現される。すなわち、上記構成のコンピュータシステムで実施形態の観測計画プログラムを実行することにより、観測条件テーブル作成部11、観測ウィンドウ算出部12、衛星割付け部13の一部または全部が実現される。また、観測条件テーブル31、観測ウィンドウファイル32、割付管理テーブル33は、例えば、メモリ103上に作成される。割付結果ファイル34は、例えば、記憶装置102に格納される。
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
観測要求に対応する複数の観測を複数の衛星の中の1つ以上の衛星へ割り付けるためにコンピュータに、
各衛星について、1つの衛星による1回の観測ではカバーできない特定観測要求が必要とする複数の観測のそれぞれの観測可能時間帯を算出するステップ、
各衛星について、前記特定観測要求に含まれる要求要素に基づいて、前記算出された観測可能時間帯をグループ化するステップ、
前記複数の衛星のそれぞれに対して設定されている使用率目標値に基づいて、かつ、前記グループ化されている観測可能時間帯の観測が同じ衛星により実施されるように、前記複数の観測を対応する衛星に割り付けるステップ、
を実行させるための観測計画プログラム。
(付記2)
付記1に記載の観測計画プログラムであって、
前記特定観測要求が複数の連続する領域の観測を要求する広域観測要求であるときは、各衛星について、異なる観測に対して算出されている連続する2以上の観測可能時間帯をグループ化するステップ、をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする観測計画プログラム。
(付記3)
付記1または2に記載の観測計画プログラムであって、
前記特定観測要求が1つの領域を異なる時刻に同じ条件で観測するインターフェロメトリ観測要求であるときは、各衛星について、回帰周期だけ離れている観測可能時間帯をグループ化するステップ、をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする観測計画プログラム。
(付記4)
付記1〜3のいずれか1つに記載の観測計画プログラムであって、
前記特定観測要求が1つの領域を前方視および後方視で観測するステレオ観測要求であるときは、各衛星について、軌道周期の2分の1以下に設定された閾値時間よりも短い間隔だけ離れている観測可能時間帯をグループ化するステップ、をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする観測計画プログラム。
(付記5)
観測要求に対応する複数の観測を複数の衛星の中の1つ以上の衛星へ割り付ける方法であって、
各衛星について、1つの衛星による1回の観測ではカバーできない特定観測要求が必要とする複数の観測のそれぞれの観測可能時間帯を算出し、
各衛星について、前記特定観測要求に含まれる要求要素に基づいて、前記算出された観測可能時間帯をグループ化し、
前記複数の衛星のそれぞれに対して設定されている使用率目標値に基づいて、かつ、前記グループ化されている観測可能時間帯の観測が同じ衛星により実施されるように、前記複数の観測を対応する衛星に割り付ける
ことを特徴とする観測計画方法。
(付記6)
付記5に記載の観測計画方法であって、
前記特定観測要求が複数の連続する領域の観測を要求する広域観測要求であるときは、各衛星について、異なる観測に対して算出されている連続する2以上の観測可能時間帯をグループ化する
ことを特徴とする観測計画方法。
(付記7)
付記5または6に記載の観測計画方法であって、
前記特定観測要求が1つの領域を異なる時刻に同じ条件で観測するインターフェロメトリ観測要求であるときは、各衛星について、回帰周期だけ離れている観測可能時間帯をグループ化する
ことを特徴とする観測計画方法。
(付記8)
付記5〜7のいずれか1つに記載の観測計画方法であって、
前記特定観測要求が1つの領域を前方視および後方視で観測するステレオ観測要求であるときは、各衛星について、軌道周期の2分の1以下に設定された閾値時間よりも短い間隔だけ離れている観測可能時間帯をグループ化する
ことを特徴とする観測計画方法。
(付記9)
観測要求に対応する複数の観測を複数の衛星の中の1つ以上の衛星へ割り付ける観測計画装置であって、
各衛星について、1つの衛星による1回の観測ではカバーできない特定観測要求が必要とする複数の観測のそれぞれの観測可能時間帯を算出する算出部と、
各衛星について、前記特定観測要求に含まれる要求要素に基づいて、前記算出された観測可能時間帯をグループ化するグループ化部と、
前記複数の衛星のそれぞれに対して設定されている使用率目標値に基づいて、かつ、前記グループ化されている観測可能時間帯の観測が同じ衛星により実施されるように、前記複数の観測を対応する衛星に割り付ける割付け部、
を備える観測計画装置。