JP5453964B2 - 高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、トラックフレームなどの大型車両自動車の骨格部材などの使途に有用な、引張強さ(TS)が540MPa以上780MPa以下で、コイル内での強度バラツキが小さく、伸びフランジ性および靱性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年、地球環境保全の観点から、CO2の排出量を規制するため、自動車の燃費改善が急務とされており、使用部材の薄肉化による軽量化が要求されている。加えて、衝突時に乗員の安全を確保するため、自動車車体の衝突特性を中心とした安全性向上も要求されている。このため、自動車車体の軽量化および強化の双方が積極的に進められている。自動車車体の軽量化と強化を同時に満たすには、部材素材を高強度化することが効果的といわれており、最近では高強度鋼板が自動車部品に積極的に使用されている。軽量化効果は、使用する鋼板が高強度であるほど大きくなるため、例えば、トラックフレームや建機などの大型車両用骨格部材として引張強度(TS)が540MPa以上の鋼板を使用する動向にある。
一方、鋼板を素材とする自動車部品の多くは、プレス成形によって製造される。高強度鋼板の成形性に関しては、割れ、しわ以外に寸法精度が重要であり、特にスプリングバックの制御が重要課題になっている。最近ではCAE(Computer Assisted Engineering)により新車の開発が効率化されてきて、金型を何度も造ることがなくなってきた。同時に、鋼板の特性を入力するとスプリングバック量をより精度良く予測可能となっている。しかし、スプリングバック量のバラツキが大きい場合には、CAEによる予測の精度が低下する問題が生じる。したがって、特に強度バラツキの小さい強度均一性に優れた高強度鋼板が求められている。
コイル内の強度バラツキを小さくする方法として、特許文献1には、Cu、Ni、Cr、Moを加えた析出強化鋼のシートバーを熱間仕上げ圧延し、1秒以上の空冷を設けた後450〜750℃の範囲の温度で巻き取ることによりコイル長手方向の強度バラツキが±15MPa以下を達成する方法が開示されている。また、特許文献2には、TiとMoを複合添加して、非常に微細な析出物を均一に分散させた強度バラツキの小さい強度均一性に優れた、高強度熱延鋼板が提案されている。
特開2004−197119号公報 特開2002−322541号公報
しかしながら、上述の従来技術には、次のような問題がある。
特許文献1に記載の方法では、NbやMo添加のためコスト増加を招き経済的に不利である。さらに、Ti、V、Nbの添加により高強度化を狙う鋼板においては、熱間仕上げ圧延後に鋼板温度が高い状態であるとひずみ誘起析出による粗大な析出物が生じる。そのため、余剰に添加元素が必要になる問題を有している。
また、特許文献2に記載の鋼板では、Ti系であるが、高価なMoを添加する必要があり、コストアップを招く。
さらには、いずれの特許文献においても、コイルの幅方向と長手方向の両方を含む、コイル面内の2次元的な強度の均一性については考慮されていない。このようなコイル面内の強度バラツキは、いかに巻取り温度を均一に制御したとしても巻取り後のコイルの冷却履歴が位置毎に異なるために不可避的に生じるという問題がある。また、伸びフランジ性ならびに靱性についても考慮されていない。したがって、これまでの技術では、加工性や著しく低い気温の環境下における特性に対する信頼性に問題があった。
本発明は、かかる事情に鑑み、上記問題点を有利に解決し、高価なNi、Nb、Mo等の添加元素を用いずに安価なTi系汎用鋼板を用い、引張強度(TS)が540MPa以上780MPa以下で、熱延コイル内強度バラツキが小さく、さらには、良好な伸びフランジ性および靱性を有する強度均一性に優れた高強度熱延鋼板を提供することを目的とする。
上記のような課題を解決すべく鋭意検討を進めたところ、鋼板の化学組成、金属組織、析出強化に寄与するTiの析出状態およびセメンタイトとして析出するC量を制御することにより、熱延鋼板全面に渡って強度バラツキが小さく、さらには、良好な伸びフランジ性および靱性を有する高強度熱延鋼板を得ることに成功し本発明を完成するに至った。
本発明による高強度熱延鋼板およびその製造方法の要旨は以下の通りである。
[1]成分組成が、質量%で、C:0.010〜0.060%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、P:0.030%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.1%、N:0.005%以下、Ti:0.035〜0.100%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、平均粒径が5.0〜10.0μmであるポリゴナルフェライトを80%以上の分率で含む組織を有し、サイズ20nm未満の析出物中に存在するTiの量が、下式(1)で計算されるTi*の値の70%以上であり、鋼板のCの成分組成(質量%)に対するセメンタイトとして析出したC量の割合が20%以下であることを特徴とする高強度熱延鋼板。
Ti*=[Ti]−48×[N]÷14…(1)
ここで、[Ti]および[N]はそれぞれ鋼板のTiおよびNの成分組成(質量%)を示す。
[2]成分組成が、質量%で、C:0.010〜0.060%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、P:0.030%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.1%、N:0.005%以下、Ti:0.035〜0.100%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、1200〜1300℃の加熱温度に加熱後、800〜950℃の仕上げ温度で熱間仕上げ圧延を行い、該熱間仕上げ圧延後2秒以内に20℃/s以上の冷却速度で冷却を開始し、650℃〜750℃の温度で冷却を停止し、引き続き、2秒〜30秒の放冷工程を経たのちに、再度100℃/s以上の冷却速度で冷却を施し、650℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべて質量%である。また、本発明における高強度熱延鋼板とは、引張強度(以下、TSと称する場合もある)が540MPa以上780MPa以下の鋼板であり、熱延鋼板、さらには、これらの鋼板に例えばめっき処理等の表面処理を施した表面処理鋼板も対象とする。
さらに、本発明の目標とする特性は、熱延コイル内の強度バラツキΔTSが35MPa以下、穴広げ値(λ)が100%以上、エネルギー遷移温度(TrE)が−40℃以下である。
本発明によれば、引張強度(TS)が540MPa以上780MPa以下で、面内強度のバラツキが小さく、伸びフランジ性および靱性に優れた高強度熱延鋼板が得られる。本発明の高強度熱延鋼板は、コイル内での強度バラツキを狭小化することが可能であり、これにより、本鋼板のプレス成形時の形状凍結性や部品強度、耐久性能を安定化することが達成され、自動車用部品、特に大型車両用の鋼板として生産・使用時における信頼性の向上がはかれることになる。さらに、本発明では、Nb等の高価な原料を添加せずとも上記効果が得られるので、コスト削減がはかれることになる。
ポリゴナルフェライトの分率(%)と強度バラツキΔTS(MPa)との相関を調査した結果を示す図である。 ポリゴナルフェライトの粒径(μm)と強度バラツキΔTS(MPa)との相関を調査した結果を示す図である。 Ti*に対するサイズ20nm未満の析出物に含まれるTi量の割合(%)と、強度バラツキΔTS(MPa)との相関を調査した結果を示す図である。 鋼板のCの成分組成(質量%)に対するセメンタイトとして析出したC量の割合(%)と、穴広げ値(λ)との相関を調査した結果を示す図である。 鋼板のCの成分組成(質量%)に対するセメンタイトとして析出したC量の割合(%)と、エネルギー遷移温度(TrE)との相関を調査した結果を示す図である。
以下に本発明を詳細に説明する。
まず、本発明における強度バラツキが少ない、即ち強度均一性の評価方法について説明する。
対象の鋼板の一例としてはコイル状に巻きとったもので、その重量が5t以上、鋼板の幅が500mm以上のものがあげられる。このような場合には、熱間圧延ままの状態における、長手方向の先端部と後端部で最内周と最外周の各々ひと巻きと幅方向の両端10mmは評価の対象とはしない。これの、長手方向に少なくとも10分割、幅方向に少なくとも5分割にした試料に対して2次元的に測定した引張強度(TS)の分布をもって強度バラツキ(ΔTS)を評価するものとする。また、本発明は鋼板の引張強度(TS)が540MPa以上780MPa以下の範囲を対象としている。
次に、本発明における鋼の化学成分(成分組成)の限定理由について説明する。
C:0.010〜0.060%
Cは、後述のTiとともに本発明における重要な元素である。Cは、Tiとともに炭化物を形成し、析出強化により鋼板を高強度するのに有効である。本発明では析出強化の観点からCを0.010%以上含有する。炭化物の析出効率の観点から好ましくは後述するTi*の1.2倍以上である。一方、過剰に含有するCはセメンタイトとして析出する。0.060%を超えると靭性や穴広げ性に悪影響を及ぼしやすく、C含有量の上限は0.060%とする。好ましいC含有量の範囲は0.015〜0.055%である。含有するCは(a) 固溶状態、(b) TiCとして析出した状態、(c) セメンタイト(Fe3C)として析出した状態の3パターンに大別される。本発明鋼においては、(a) 固溶状態にあるCは0.001%、(b) Tiと結合するC量はTi*の原子量比にして1.0〜1.1倍と一定であるので、C:0.010〜0.060%の範囲とすることで、セメンタイトとして析出したC量の割合を20%以下とすることができる。このときのC含有量上限は原子量比にしてTi*の2.5倍、すなわち、重量比はTi*の0.63倍である。
Si:0.5%以下
Siは、固溶強化の効果ともに延性を向上させる効果がある。上記効果を得るためには、Siは0.01%以上含有することが好ましい。一方、Siを0.5%を超えて含有すると、熱間圧延時に赤スケールと称される表面欠陥が発生しやすくなり、鋼板とした時の表面外観を悪くしたり、耐疲労性、靭性に悪影響を及ぼすことがある。よって、Si含有量は0.5%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
Mn:0.8〜1.8%
Mnは、高強度化に有効であるとともに、変態点を下げ、フェライト粒径を微細化させる作用があることから、0.8%以上含有する必要がある。好ましくは1.0%以上である。一方、1.8%を超える過度のMnを含有すると、熱延後に低温変態相が生成して延性が低下したり、後述するTi系炭化物の析出が不安定になりやすくなり、強度バラツキが大きくなる。よって、Mn含有量の上限は1.8%とする。
P:0.030%以下
Pは、固溶強化に有効な元素であり、また、Si起因のスケール欠陥を軽減する効果をもつ。しかしながら、0.030%を超える過剰なPの含有は、Pが粒界に偏析しやすく、靭性および溶接性を劣化させやすい。よって、P含有量の上限は0.030%とする。
S:0.01%以下
Sは、不純物であり、鋼中に介在物として存在し、伸びフランジ性を著しく低下させる、また、熱間割れの原因になるなど鋼板の諸特性を劣化させるので、できるだけ低減する必要がある。具体的には、S含有量は、0.01%までは許容できるため、0.01%以下とする。好ましくは0.005%以下である。
Al:0.005〜0.1%
Alは、鋼の脱酸元素として有用である他、不純物として存在する固溶Nを固定して耐常温時効性を向上させる作用がある。かかる作用を発揮させるためには、Al含有量は0.005%以上とする必要がある。一方、0.1%を超えるAlの含有は、高合金コストを招き、さらに表面欠陥を誘発しやすいので、Al含有量の上限は0.1%とする。
N:0.005%以下
Nは耐常温時効性を劣化させる元素であり、できるだけ低減することが好ましい元素である。N含有量が多くなると耐常温時効性が劣化し、機械的特性向上の寄与が少ない粗大なTi系窒化物として析出してしまうため、固溶Nを固定するために多量のAlやTiの含有が必要となる。そのため、できるだけ低減することが好ましく、N含有量の上限は0.005%とする。
Ti:0.035〜0.100%
Tiは、析出強化により鋼を強化させるために重要な元素である。本発明の場合、Cとともに炭化物を形成することで析出強化に寄与する。
引張強度TSが540MPa以上780MPa以下の高強度鋼板を得るためには、析出物は析出物サイズ20nm未満となるように微細化することが好ましい。また、この微細な析出物(析出物サイズ20nm未満)の割合を高めることが重要である。これは、析出物のサイズが20nm以上では、転位の移動を抑制する効果が得られにくく、またポリゴナルフェライトを十分に硬質化できないため、強度が低下する場合があるからと考えられるからである。したがって、析出物のサイズは20nm未満とすることが好ましい。そして、この20nm未満の微細なTiを含む析出物は、TiとCを共に0.035%以上0.100%以下の範囲で含有することにより形成される。
なお、本発明においては、これらTiとCを含有する析出物を総称してTi系炭化物と呼ぶ。Ti系炭化物としては例えばTiC、Ti4C2S2などがあげられる。また、前記炭化物中にNを組成として含んだり、MnSなどと複合して析出していても良い。
さらに、本発明の高強度鋼板においては、Ti系炭化物は、主にポリゴナルフェライト中に析出していることが確認できている。これは、ポリゴナルフェライトにおけるCの固溶限は小さいので、過飽和のCがポリゴナルフェライト中に炭化物として析出しやすいためと考えられる。このため、このような析出物により軟質のポリゴナルフェライトが硬質化し、540MPa以上780MPa以下の引張強度(TS)が得られることになる。同時にTiは、固溶Nと結合しやすく、TiNは粗大であり強化に寄与しないので、固溶Nを固定するのにも好ましい元素でもある。このような観点からもTiは0.035%以上とする。
しかしながら、Tiの過剰な含有は加熱段階で強度に寄与しない粗大なTiの未溶解炭化物であるTiC等を生成させるだけで好ましくなく、非経済的である。よって、Tiの上限は0.100%とする。
また、本発明では、上記した成分以外の残部は鉄および不可避的不純物の組成とする。
次に、本発明の高強度熱延鋼板の鋼組織を限定した理由について説明する。
平均粒径5.0〜10.0μmのポリゴナルフェライトを80%以上の分率で含む組織を有し、かつ、サイズ20nm未満の析出物中に存在するTiの量が、下式(1)で計算されるTi*の値の70%以上であり、鋼板のCの成分組成(質量%)に対するセメンタイトとして析出したC量の割合が20%以下である。
Ti*=[Ti]−48×[N]÷14…(1)
ここで、[Ti]および[N]はそれぞれ鋼板のTiおよびNの成分組成(質量%)を示す。
従来知見において、本発明にかかる高強度熱延鋼板の強度は、純鉄が有する基礎となる強度に、固溶強化、セメンタイトによる組織強化、粒界による細粒化強化、そして微細なTi系炭化物による析出強化の4つの強化機構が加算されることによって決定するとされる。このうち、基礎となる強度は鉄固有の強度であり、固溶強化分は化学組成が決まればほぼ一義的に定まることから、この二つの強化機構はコイル内の強度バラツキには殆ど関与しない。強度バラツキに最も関係が深いのが組織強化、細粒化強化、そして析出強化である。
組織強化による強化量は、化学組成と圧延後の冷却履歴によって定まる。鋼組織はオーステナイトから変態する温度域によってその種類が決まり、鋼組織が決まれば強化量が定まる。
細粒化強化では、ホールペッチ則で知られているように粒界面積、すなわち鋼組織を形成する結晶粒径と強化量は相関がある。
析出強化による強化量は、析出物のサイズと分散(具体的には析出物間隔)によって定められる。析出物の分散は、析出物の量とサイズによって表現できるため、析出物のサイズと量が決まれば析出強化による強化量が定まる。
以上の知見を基に、次に、本発明を完成すべく実験を行った。以下に、発明の根拠となる実験事実について述べる。
化学組成が後述する表1の鋼Aを転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これら鋼スラブを1200〜1300℃の範囲で再加熱した後、粗圧延してシートバーとした。これを、800〜950℃の温度にて仕上げ圧延を施し、仕上げ圧延から1.4〜3.0秒後に25℃/s以上の冷却速度で冷却を開始し、550〜780℃の温度で冷却を停止した。引き続き、2〜60秒の放冷工程を経た後、50〜200℃/sの冷却速度で再度冷却し、700℃以下の温度範囲で巻き取り、コイル状の板厚6〜14mmの熱延鋼板を製造した。得られた熱延鋼板から、後述する実施例における採取位置と同様の方法にて、引張試験片を189点採取した。
上記のように製造された熱延鋼板群に対し、ポリゴナルフェライトの分率(%)と強度バラツキΔTS(MPa)との相関を調査した。得られた結果を図1に示す。図1においては、縦軸を強度バラツキΔTS(MPa)、横軸をポリゴナルフェライトの分率(%)とし、ポリゴナルフェライト分率が80%以上を符号○、80%未満を符号×にて示している。
図1より、ポリゴナルフェライト分率の増加とともに強度バラツキΔTSは減少の傾向を示すことがわかった。そして、ポリゴナルフェライト分率が80%以上(符号○)の場合では、ΔTSが35MPa以下となる試料群(図1中、点線Aで囲った領域)が現れることが分かった。
なお、ポリゴナルフェライトの分率は、例えば以下のようにして求めることができる。鋼板のL断面(圧延方向に平行な断面)の板厚の表層10%を除く部分について、5%ナイタールによる腐食現出組織を走査型電子顕微鏡(SEM)で100倍に拡大して撮影する。粒界の凹凸が0.1μm未満の滑らかで、かつ粒内に腐食痕が残らず平滑なフェライト結晶粒をポリゴナルフェライトと定義して、その他の形態のフェライト相やパーライトやベイナイトなどの異なる変態相区別する。これらを画像解析ソフト上で色分けし、その面積率をもって、ポリゴナルフェライト分率とする。
一方、引張試験の方法は、後述する実施例と同様の方法にて行った。さらに、強度バラツキ(ΔTS)は、上記測定した189点の引張強度TSの標準偏差σを求めてこれを4倍したものとした。
以上の結果を受けて、次に、上記のように製造された熱延鋼板群よりポリゴナルフェライトの分率が80%以上のものを抽出し、さらにポリゴナルフェライトの粒径d(μm)と強度バラツキΔTS(MPa)との相関を調査した。得られた結果を図2に示す。図2においては、縦軸を強度バラツキΔTS(MPa)、横軸をポリゴナルフェライトの平均粒径d(μm)とし、ポリゴナルフェライト平均粒径が5.0μm以上10.0μm以下を符号○、5.0μm未満または10.0μm超えを符号×にて示している。
図2より、ポリゴナルフェライト平均粒径が5.0μm以上10.0μm以下の範囲(符号○)の一部で、ΔTSが35MPa以下となる試料群(図中、点線Bで囲った領域)が現れることも分かった。但し、板厚が6mm未満の場合には、板厚方向に存在する粒径の数が相対的に減少し、平均粒径が10.0μmを超えた場合でも強度バラツキは鋼材全体として問題となるほど大きくならないことが判明している。また、板厚が大きい鋼板においては、鋼板表層部は冷却速度が大きいが、板厚中心部は表層部と比して冷却速度が小さい。このとき、板厚中止分のポリゴナルフェライト粒径が5.0μm以上10.0μm以下の範囲にない場合、板厚方向の粒径分布を無視できなくなる。従って、板厚6mm以上の場合に、平均粒径の範囲を5.0μm以上10.0μm以下とすればより発明の効果を奏することになる。
なお、ポリゴナルフェライトの平均粒径は、JIS G 0551に準拠した切断法にて測定し、倍率100倍で撮影した1枚の写真につき、3本の垂直、水平線を引きそれぞれの平均粒径を計算し、その平均をもって最終的な粒径とした。
また、ポリゴナルフェライトの平均粒径dは、コイル長手中央かつ幅中央の値をもって代表値とした。
本発明鋼において、金属組織がポリゴナルフェライトが80%以上であるとき、フェライト変態の進行と同時にTi系析出物が析出する。これらの析出物が粗大化すると強度が低下する上、粒度分布が広範囲にわたり強度バラツキは大きくなる。そのため、析出物の粒子径は強化に寄与する20nm未満である必要があり、このとき析出強化による強度バラツキを抑制しうる。また、含有するCはTi系析出物として析出するため第二相(パーライト相、マルテンサイト相、ベイナイト相)の過剰な硬化も抑制でき、第二相の分率が小さいため、組織強化による強度バラツキをも低減できる。
そこで、次に、上記のように製造された熱延鋼板群より、ポリゴナルフェライトの分率が80%以上、かつ、ポリゴナルフェライトの粒径が5.0μm以上10.0μm以下のものを抽出して、下式(1)で示されるTi*に対するサイズ20nm未満の析出物に含まれるTi量[Ti20]の割合[Ti20]/Ti*(%)と、強度バラツキΔTS(MPa)との相関を調査した。得られた結果を図3に示す。上述したように、析出強化に寄与するサイズ20nm未満の析出物は、含有したTiにより形成されるため、20nm未満の析出物中のTi量[Ti20]を把握すれば、Tiが効率良く微細析出物として析出しているかどうかを明確にできるからである。
図3においては、縦軸に強度バラツキΔTS(MPa)、横軸にTi*に対するサイズ20nm未満の析出物に含まれるTi量の割合[Ti20]/Ti*(%)とし、Ti*に対するサイズ20nm未満の析出物に含まれるTi量の割合[Ti20]/Ti*が70%以上を符号○、70%未満を符号×にて示している。
図3より、サイズ20nm未満の析出物に含まれるTi量の割合[Ti20]/Ti*の増加とともに強度バラツキΔTSは減少の傾向を示す。また、サイズ20nm未満の析出物に含まれるTi量の割合[Ti20]/Ti*が70%以上であれば、ΔTSが35MPa以下となることも分かった。
なお、Ti*に対するサイズ20nm未満の析出物に含まれるTi量の割合[Ti20]/Ti*は、コイル長手中央かつ幅中央の値をもって代表値としたものである。
以上の結果から、ポリゴナルフェライトを80%以上の分率範囲で含む鋼組織とし、前記ポリゴナルフェライトの粒径範囲を平均粒径5.0μm以上10.0μm以下と制御し、かつ、20nm未満のサイズの析出物に含まれるTi量が下記式(1)で示されるTi*の70%以上の範囲となるように制御すれば、その生じる強度バラツキΔTSは35MPa以下にできることに想到した。
Ti*=[Ti]−48×[N]÷14…(1)
ここで、[Ti]および[N]はそれぞれ鋼板のTiおよびNの成分組成(質量%)を示す。
したがって、本発明の要件、すなわち、平均粒径が5.0〜10.0μmであるポリゴナルフェライトを80%以上の分率で含む組織を有し、かつ、サイズ20nm未満の析出物中に存在するTiの量が、下式(1)で計算されるTi*の値の70%以上であることが、熱延コイルのいずれの位置においても達成されているならば、その各位置における鋼板の強度バラツキは小さくなり、結果として当該鋼板全体が、強度バラツキの小さい強度均一性に優れたものとできる。
なお、サイズ20nm未満の析出物に含まれるTiの量は、以下の方法により測定することができる。
試料を電解液中で所定量電解した後、試料片を電解液から取り出して分散性を有する溶液中に浸漬する。次いで、この溶液中に含まれる析出物を、孔径20nmのフィルタを用いてろ過する。この孔径20nmのフィルタをろ液と共に通過した析出物がサイズ20nm未満である。次いで、ろ過後のろ液に対して、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、ICP質量分析法、および原子吸光分析法等から適宜選択して分析し、鋼組成に対するサイズ20nm未満での析出物におけるTiの量[Ti20]を求める。
さらに、本発明では、上記強度均一性に加え、良好な伸びフランジ性および靱性を得ることも課題とする。検討したところ、伸びフランジ性および靱性に対してセメンタイトの量が支配因子となることがわかった。そこで、次に、表1の鋼Aの内、平均粒径が5.0〜10.0μmであるポリゴナルフェライトを80%以上の分率で含む組織を有し、かつ、サイズ20nm未満の析出物中に存在するTiの量が、下式(1)で計算されるTi*の値の70%以上である試料に対して、鋼板のCの成分組成(質量%)に対するセメンタイトとして析出したC量の割合(%)と、穴広げ値(λ)との相関を調査した。得られた結果を図4に示す。縦軸に穴広げ値(λ)、横軸に鋼板のCの成分組成(質量%)に対するセメンタイトとして析出したC量の割合(%)とし、穴広げ値が100%以上を符号○、100%未満を符号×にて示している。図4より、鋼板のCの成分組成(質量%)に対するセメンタイトとして析出したC量の割合(%)が20%以下ならば穴広げ値は100%以上となることがわかる。
また、図4と同様の試料に対して、鋼板のCの成分組成(質量%)に対するセメンタイトとして析出したC量の割合(%)と、エネルギー遷移温度(TrE)との相関を調査した。得られた結果を図5に示す。縦軸にエネルギー遷移温度(TrE)、横軸に鋼板のCの成分組成(質量%)に対するセメンタイトとして析出したC量の割合(%)とし、エネルギー遷移温度が−40℃以下を符号○、−40℃を超えた結果を符号×にて示している。図5においても、図4に示す穴広げ値(λ)と同様に、鋼板のCの成分組成(質量%)に対するセメンタイトとして析出したC量の割合(%)が20%以下ならばエネルギー遷移温度が−40℃以下と良好な靱性が得られることがわかった。
なお、穴広げ値(λ) およびエネルギー遷移温度(TrE)の測定は、後述する実施例と同様の方法で行った。
以上より、強度均一性、伸びフランジ性、靱性を考慮すると、平均粒径が5.0〜10.0μmであるポリゴナルフェライトを80%以上の分率で含む組織を有し、サイズ20nm未満の析出物中に存在するTiの量が、下式(1)で計算されるTi*の値の70%以上であり、鋼板のCの成分組成(質量%)に対するセメンタイトとして析出したC量の割合が20%以下とすることで、これまでにない良好な特性を有する鋼板が得られることがわかった。
次に、本発明の高強度熱延鋼板の好ましい製造方法一例について説明する。
本発明の製造方法に用いられる鋼スラブの組成は、上述した鋼板の組成と同様であり、またその限定理由も同様である。本発明の高強度熱延鋼板は、上記した範囲内の組成を有する鋼スラブを素材とし、該素材に粗圧延を施し熱延鋼板とする熱間圧延工程を経ることにより製造できる。
イ)鋼スラブを1200℃〜1300℃の加熱温度で加熱
鋼スラブを熱間圧延前に加熱する目的のひとつとして、連鋳までに生成した粗大なTi系炭化物を鋼中に再固溶させることが挙げられる。1200℃を下回る加熱温度では析出物の固溶状態が不安定になり、後の工程で生成する微細なTi系炭化物の生成量が不均一となる。したがって、加熱温度の下限は1200℃とする。一方で、1300℃を超える加熱はスラブ表面のスケールロス増大の悪影響を及ぼすことから、上限は1300℃とする。
次いで、上記条件で加熱された鋼スラブに粗圧延および仕上圧延を行う熱間圧延を施す。ここで、鋼スラブは粗圧延によりシートバーとされる。なお、粗圧延の条件は特に規定する必要はなく、常法に従って行えばよい。また、仕上げ圧延温度を確保し、かつ熱間圧延時のトラブルを防止するといった観点からは、シートバーを加熱する、所謂シートバーヒーターを活用することが好ましい。
次いで、シートバーを仕上げ圧延して熱延鋼板とする。
ロ)仕上げ温度(FDT)を800℃〜950℃
仕上げ温度が800℃未満では、圧延荷重が増大し、オーステナイト未再結晶温度領域での圧延率が高くなることにより異常な集合組織が発達したり、Ti系炭化物のひずみ誘起析出による粗大な析出物が生じることから好ましくない。一方で、仕上げ温度が950℃超えではポリゴナルフェライト粒径の粗大化を招き、成形性が低下したり、スケール性欠陥が生じる。好ましくは840℃〜920℃とする。
また、熱間圧延時の圧延荷重を低減するため、仕上げ圧延の一部または全部のパス間で潤滑圧延としてもよい。潤滑圧延を行うことは、鋼板形状の均一化や強度の均一化の観点から有効である。潤滑圧延の際の摩擦係数は、0.10〜0.25の範囲とするのが好ましい。さらに、相前後するシートバー同士を接合し、連続的に仕上げ圧延する連続圧延プロセスとすることも好ましい。連続圧延プロセスを適用することは、熱間圧延の操業安定性の観点からも望ましい。
ハ)熱間仕上げ圧延後2秒以内に20℃/s以上の冷却速度(一次冷却)で冷却
熱間仕上げ圧延後2秒以内に20℃/s以上の冷却速度で冷却を開始する。仕上げ圧延後冷却を開始するまでに2秒を超える時間を経過すると、仕上げ圧延時に蓄積された歪みが開放され、ポリゴナルフェライト粒の粗大化や、粗大なTi系炭化物のひずみ誘起析出が生じるため好ましくない。また、冷却速度が20℃/sを下回る場合も同様な現象が生じやすくなる。
ニ)650℃〜750℃の温度域で冷却を停止し、引き続き2秒〜30秒の放冷工程
650℃〜750℃の温度で冷却を停止し、引き続き、2秒〜30秒の放冷する。放冷の温度はランアウトテーブルを通過する短時間に効果的にTiC のようなTi系炭化物を析出させる温度とし、最もフェライト変態が進行する温度域に一定時間保持する必要がある。650℃未満の放冷(保持)温度ではポリゴナルフェライト粒の成長が阻害され、それに伴いTi系炭化物の析出も生じにくくなる。一方750℃を超える放冷(保持)温度においては、ポリゴナルフェライト粒およびTi系炭化物の粗大化が起きる悪影響につながる。したがって、放冷温度は650℃〜750℃とする。
また、本発明鋼でポリゴナルフェライト分率80%以上を得るための最低放冷時間は2秒である。また、30秒を超える放冷はTi系炭化物の粗大化により強度が低下する。したがって、放冷時間は2秒〜30秒とする。
ホ)再度100℃/s以上の冷却速度(二次冷却)で冷却
再度100℃/s以上の冷却速度で冷却を施す。前述の工程により安定的に得られた微細なTi系炭化物の状態を維持するため、大きな冷却速度を要する。そのため冷却速度の下限は100℃/sとする。
ヘ)650℃以下の温度で巻き取る
650℃以下の温度で巻き取る。巻き取り温度が650℃超えでは、析出物のサイズが粗大化し、著しく不均一になるため好ましくない。低温側の巻き取り温度に対しては強度バラツキの原因とはならないため、巻き取り温度の下限は特に定めない。
次に、本発明の実施例について説明する。
表1に示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これら鋼スラブを表2に示す条件の温度で加熱し、粗圧延してシートバーとし、次いで、表2に示す条件の仕上圧延を施す熱間圧延工程により熱延鋼板とした。
Figure 0005453964
Figure 0005453964
これらの熱延鋼板を酸洗し、伸び率0.5%の調質圧延を施した後、幅方向の端部10mmをトリミングして除去し、各種特性を評価した。コイルの長手方向の、先端部と後端部で最内周と最外周の各々ひと巻きをカットした位置とその内側を、長手方向に20等分した分割点より鋼板を採取した。これらの幅端部および幅方向に8分割した分割点より引張試験片と析出物分析サンプルを採取した。
引張試験の試験片は圧延方向に平行な方向(L方向)に採取しJIS5号引張試験片に加工した。JIS Z 2241の規定に準拠してクロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行い、引張強さ(TS)を求めた。
穴広げ試験は鉄連規格JFST 1001に準じて試験を行った。
靱性試験はJIS Z 2242に準拠して行った。ただし、試験片のノッチ形状はVノッチであり、試験片幅は板厚と同等とした。
ミクロ組織は、L断面(圧延方向に平行な断面)の板厚中心の±17%の部分について、ナイタールによる腐食現出組織を走査型電子顕微鏡(SEM)で400倍に拡大した16視野に対して行った。
ポリゴナルフェライトの分率は、以下のようにして求めた。鋼板のL断面(圧延方向に平行な断面)の板厚の表層10%を除く部分について、5%ナイタールによる腐食現出組織を走査型電子顕微鏡(SEM)で100倍に拡大して撮影する。粒界の凹凸が0.1μm未満の滑らかで、かつ粒内に腐食痕が残らず平滑なフェライト結晶粒をポリゴナルフェライトと定義して、その他の形態のフェライト相やパーライトやベイナイトなどの異なる変態相区別する。これらを画像解析ソフト上で色分けし、その面積率をもって、ポリゴナルフェライト分率とする。尚、ポリゴナルフェライトの粒径はJIS G 0551に準拠した切断法とし、倍率100倍で撮影した1枚の写真につき、3本の垂直、水平線を引きそれぞれの平均粒径を計算し、その平均をもって最終的な粒径とした。
20nm未満のサイズの析出物中におけるTiの定量は、以下の定量法により実施した。
上記により得られた熱延鋼板を適当な大きさに切断し、10%AA系電解液(10vol%アセチルアセトン-1mass%塩化テトラメチルアンモニウム-メタノール)中で、約0.2gを電流密度20mA/cm2で定電流電解した。
電解後の、表面に析出物が付着している試料片を電解液から取り出して、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液(500mg/l)(以下、SHMP水溶液と称す)中に浸漬し、超音波振動を付与して、析出物を試料片から剥離しSHMP水溶液中に抽出した。次いで、析出物を含むSHMP水溶液を、孔径20nmのフィルタを用いてろ過し、ろ過後のろ液に対してICP発光分光分析装置を用いて分析し、ろ液中のTiの絶対量を測定した。次いで、Tiの絶対量を電解重量で除して、サイズ20nm未満の析出物に含まれるTiの量(試料の全組成を100質量%とした場合の質量%)を得た。なお、電解重量は、析出物剥離後の試料に対して重量を測定し、電解前の試料重量から差し引くことで求めた。この後、上記で得られたサイズ20nm未満の析出物に含まれるTiの量(質量%)を、表1に示したTiとNの含有量を式(1)に代入して算出したTi*で除して、サイズ20nm未満の析出物に含まれるTiの量の割合(%)とした。
Ti*=[Ti]−48×[N]÷14…(1)
ここで、[Ti]および[N]はそれぞれ鋼板のTiおよびNの成分組成(質量%)を示す。
析出したセメンタイトの定量は、以下の定量法により実施した。上記により得られた熱延鋼板を適当な大きさに切断し、10%AA系電解液(10vol%アセチルアセトン-1mass%塩化テトラメチルアンモニウム-メタノール)中で、約0.5gを電流密度20mA/cm2で定電流電解した。電解後の表面に析出物が付着している試料片を電解液から取り出して、SHMP水溶液中に浸漬し、超音波振動を付与して、析出物を試料片から剥離しSHMP水溶液中に抽出した。次いで、析出物を含むSHMP水溶液を、孔径200μmのフィルタを用いてろ過し、それによって得られた抽出物をICP発光分光分析装置を用いて分析し、Feの絶対量を測定した。Feの析出物はセメンタイト(Fe3C)として存在していることから、このFeの測定量から、セメンタイトとして析出しているC量を求め、セメンタイトとして析出しているC量の割合は鋼中のC含有量とセメンタイトとして析出しているC量から求めた。
以上により得られた各熱延鋼板の引張特性、穴広げ試験、靱性試験、ミクロ組織、析出物を調査した結果を表3に示す。
Figure 0005453964
ここで表3に示す結果のうち、ポリゴナルフェライト分率、粒径、式(1)で示されるTi*に対するサイズ20nm未満の析出物に含まれるTi量の割合、引張強度TS、穴広げ試験および靱性試験は、コイルの長手中央かつ幅中央の値をもって代表値としたものである。また、TS適合率は、測定した189点のうち引張強度TS が540MPa以上780MPa以下の値を示した割合である。ΔTSは1試料あたり測定した189点のTSにおける標準偏差σを求め、これを4倍したものである。
表3に示す調査結果より明らかなように、本発明例では、いずれもTSは540MPa以上の高強度であり、かつ、コイル面内での強度バラツキ(ΔTS)が35MPa以下と小さく、強度均一性の良好な鋼板が得られている。さらに、TS適合率は、主として微細な析出物量と密接な関係があり、サイズ20nm未満の析出物に含まれるTiの量の割合が大きいほどTS適合率は高い。さらに、穴広げ値(λ)が100%以上であり、エネルギー遷移温度(TrE)が-40℃以下となっており、伸びフランジ性および靱性に優れているのがわかる。
また、これらの結果から、本発明においては、特に、板厚6mm以上14mm以下の熱延コイル内での強度バラツキΔTSを35MPa以下とすることができ、そのため、大型車両用の鋼板としてプレス成形時の形状凍結性や部材強度、耐久性能を安定化することが可能となる。
本発明の高強度熱延鋼板は、引張強度(TS)540MPa以上780MPa以下でありかつ強度バラツキが小さく、さらに、優れた伸びフランジ性および靱性を有する。そのため、例えば、本発明の高強度熱延鋼板を自動車部品に適用した場合、ハイテンにおける成形後のスプリングバック量や衝突特性のバラツキを低減し、車体設計の高精度化が可能となり、自動車車体の衝突安全性や軽量化に十分寄与できることになる。

Claims (2)

  1. 成分組成が、質量%で、C:0.010〜0.060%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、P:0.030%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.1%、N:0.005%以下、Ti:0.035〜0.100%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、平均粒径が5.0〜10.0μmであるポリゴナルフェライトを80%以上の分率で含む組織を有し、サイズ20nm未満の析出物中に存在するTiの量が、下式(1)で計算されるTi*の値の70%以上であり、鋼板のCの成分組成(質量%)に対するセメンタイトとして析出したC量の割合が20%以下であることを特徴とする、強度バラツキ(ΔTS)が35MPa以下、穴広げ値(λ)が100%以上、エネルギー遷移温度(Tr E )が−40℃以下である高強度熱延鋼板。
    Ti*=[Ti]−48×[N]÷14…(1)
    ここで、[Ti]および[N]はそれぞれ鋼板のTiおよびNの成分組成(質量%)を示す。
  2. 成分組成が、質量%で、C:0.010〜0.060%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、P:0.030%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.1%、N:0.005%以下、Ti:0.035〜0.100%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、1200〜1300℃の加熱温度に加熱後、800〜950℃の仕上げ温度で熱間仕上げ圧延を行い、該熱間仕上げ圧延後2秒以内に20℃/s以上の冷却速度で冷却を開始し、650℃〜750℃の温度で冷却を停止し、引き続き、2秒〜30秒の放冷工程を経たのちに、再度100℃/s以上の冷却速度で冷却を施し、650℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする、平均粒径が5.0〜10.0μmであるポリゴナルフェライトを80%以上の分率で含む組織を有し、サイズ20nm未満の析出物中に存在するTiの量が、下式(1)で計算されるTi*の値の70%以上であり、鋼板のCの成分組成(質量%)に対するセメンタイトとして析出したC量の割合が20%以下であり、強度バラツキ(ΔTS)が35MPa以下、穴広げ値(λ)が100%以上、エネルギー遷移温度(Tr E )が−40℃以下である高強度熱延鋼板の製造方法。
    Ti*=[Ti]−48×[N]÷14…(1)
    ここで、[Ti]および[N]はそれぞれ鋼板のTiおよびNの成分組成(質量%)を示す。
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