JP5451414B2 - 被検体情報処理装置および被検体情報処理方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、生体を診断する場合には、上記のような方法で音響波を検出することはできない(生体周りの全方向で音響波を検出することはできない)。そのため、例えば、生体の一部に音響波検出器を配置して、音響波を検出することになる。この場合、光吸収体と音響波検出器との距離が大きければ大きい程、音響波検出器と光吸収体とがなす立体角は小さくなり、取得する情報(生体の内部情報;音響波源の分布の情報)の不確実性が増してしまう。
このように、取得する情報の不確実性が増加すると、例えば、非特許文献1で示された逆投影法により画像再構成を行った場合に、実際には存在しない虚像(アーティファクト)が発生してしまう。さらに、解像度(横解像度)が低下し、診断精度が低下してしまう。
まず、本実施形態に係る生体情報処理装置の概要について説明する。特に、生体情報処理装置の例として、生体内の音響波源の分布を推定し、イメージングする生体情報イメージング装置について説明する。図1に、本実施形態に係る生体情報イメージング装置の構成の一例を示す。
また、本実施形態に係る生体情報イメージング装置は、光吸収により発生する音響波を受信し、信号を出力する複数の受信素子(音響波検出器9)を更に備える。具体的には、複数の受信素子は、生体1内の光吸収体8が光のエネルギーの一部を吸収して発生した音響波7を検出し電気信号に変換する。なお、複数の受信素子は、二次元アレイ状に配列していることが好ましい。音響波検出器9の前部(生体1側)には、被検体を確実に固定するための圧迫板10が設けられている。
また、本実施形態に係る生体情報イメージング装置は、音響波検出器9で得られた電気信号を解析する信号処理部6、及び、その処理信号に基づいた画像(再構成画像)を表示する画像表示部5を更に備える。
具体的には、信号処理部6は、情報生成部、記憶部、および、推定部を有する。情報生成部は、記憶部で記憶する情報を数値解析により生成する。記憶部は、予め定められた複数の位置のそれぞれについて、その位置に音響波源が存在すると仮定したときに複数の受信素子から出力される信号を表す情報を記憶する。推定部は、実際の測定において複数の受信素子から出力される信号と、記憶部に記憶されている情報とから、生体内の音響波源の分布(音響波源分布)を推定する。
画像表示部5は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子放出素子を有するディスプレイなどの画像表示装置である。
S301では、光源4からパルス光2が生体1の表面に照射される。S302では、音響波検出器9が、生体1内の光吸収体から発生する音響波を検出する。通常、球状の光吸収体から発生する音響波は、横軸を時間、縦軸を音響波の強度とすると、図2に示すようなN字型の波形を示す。S303では、信号処理部6が、音響波検出器9で得られた信号(音響波信号;測定信号)から、反復法により光吸収体の位置(音響波源の分布)を推定し、画像を生成(再構成)する。S304では、画像表示部5が、信号処理部6で生成さ
れた画像を出力(表示)する。
次に、信号処理部6による音響波源の分布の推定方法について説明する。なお、以下では、説明を容易にするために二次元の音響波源の分布を推定する場合(二次元画像を再構成する場合)について説明するが、三次元の音響波源の分布を推定する場合(三次元画像を再構成する場合)にも同様の考え方を適用することができる。また、一般的に、信号処理部6の処理は、コンピュータの演算処理装置がソフトウェア(プログラム)を実行することで実現される。
本実施形態では、画素サイズの各音響波源から発生する音響波が生体に固有であること、及び、任意の音響波源分布のとき発生する音響波は、各音響波源が発生する音響波の重ね合わせで表現できる(音響波の線形性)ことを利用する。それにより、測定したデータ(音響波信号;測定信号)から、音響波源分布を逆問題として推定することができる。具体的に、本実施形態では、推定部が、音響波源の分布を仮定し、該仮定した分布における各音響波源の位置に対応する信号を記憶部に記憶されている情報から取得し、取得した信号を重ね合わせる。そして、重ね合わせた信号と実際の測定により得られた信号との一致度が最も高くなるような音響波源の分布を、生体内の音響波源の分布とする。なお、本実施形態では、2次元の再構成画像の1要素である“ピクセル”と、3次元の再構成画像の1要素である“ボクセル”の両方を“画素”と呼ぶ。
S401では、信号処理部6(情報生成部)が、画素位置毎に、その位置に音響波源が存在すると仮定し、各受信素子で測定されうる音響波信号を順問題解析により算出する。S402では、信号処理部6(記憶部)が、S401での算出結果を配列データ(LUT(Look Up Table)データ;小ヤコビアン行列)として記憶する。
順問題解析では、式1の波動方程式の解を計算することにより、各受信素子で測定されうる音響波信号を算出する。式1において、p(x,y,t)は、位置(x,y)、時刻tにおいて観測される圧力(音響波)を意味している。cは音速である。なお、音響波信号は、解析的な表式を用いて算出されてもよいし、FDM(Finite Difference Method)やFEM(Finite Element Method)を用いたシミュレーション解析によって算出されて
もよい。
。図5(A)は、生体内を示す図(実空間(x,y))であり、図5(B)は、各受信素子で得られる音響波信号の一例を示す図(信号空間(x,t);受信素子の位置と受信時刻とから構成される空間)である。図中、実空間において塗りつぶされている位置は音響波源が存在する位置であり、信号空間において塗りつぶされている位置(小ヤコビアン行列の要素)は値を有する位置(要素)である。
S401では、例えば、実空間座標(1,1)に音響波が存在する場合の音響波信号として、図5(B)に示す様な音響波信号を算出する。なお、音響波は球面波として時間とともに広がるため、信号空間内では音響波信号の軌跡は二次曲線を描くことになる。また、4画素×4画素の大きさの画像を再構成する場合には、実空間座標(画素位置)と音響波信号の対応関係が4×4=16個得られることになる。
図6は、音響波源分布の推定に用いる方程式を、マトリクス形式で表したものである。図6の(a)は、S401で算出された画素位置毎の音響波信号を並べたものである(以下、マトリクスJ(ヤコビアン行列)と記す)。図6の(b)は、推定する音響波源分布を示している(以下、音響波源分布ΔPIと記す)。図6の(c)は、音響波信号の実測値を示している(以下、音響波信号ΔPmと記す)。音響波の線形性から、音響波源分布ΔPIのときに測定される音響波信号は、画素位置毎の音響波信号(マトリクスJ)と音響波源分布ΔPIとの積JΔPIとなる。従って、正しい音響波源分布ΔPIを推定した場合には、JΔPIとΔPmは完全に一致、または、近い値になる。これを式で表現すると式2の様になる。
正規方程式の解法としては、連立一次方程式の解法である従来手法(直説解法や反復解法)を用いることができる。再構成画像として三次元の画像を生成する場合の様に、音響波源分布を推定する領域のサイズが大きい場合には、例えば、共役勾配法等の反復解法を用いることが好ましい(本実施例では反復解法を用いるものとする)。正規方程式(式3)の解は、
下か否かを判定する。そして、所定の閾値以下となるまで、S404の処理を繰り返す。
なお、得られた音響波信号にノイズが存在する場合には、式3の左辺の対角成分に一定の値αを加えた
以上の処理により、予め用意されたマトリクスJと実測値(音響波信号ΔPm)から、音響波源分布ΔPIを推定し、画像再構成を行うことができる。
まず、省メモリ化(記憶部に記憶する情報の圧縮方法)について説明する。
予め定められた複数の位置の内、第1の位置に音響波源が存在すると仮定したときに複数の受信素子から出力される信号を第1の信号とし、第2の位置に音響波源が存在すると仮定したときに複数の受信素子から出力される信号を第2の信号とする。この場合、第1の信号と、第2の信号とは、信号空間上で平行移動または回転移動することにより、互いに一致する部分を有することがある(このような性質を対称性と呼ぶ)。本実施形態では、第1の信号と第2の信号の間の一致する部分を共通化することにより、記憶部に記憶する情報のデータ量が圧縮された情報を用いる。
但し、図8に示すように、受信素子までの距離が異なる画素位置を音響波源とした場合の音響波信号は、それぞれ、信号空間内において音響波の軌跡の曲率が異なる。そのため、複数の受信素子までの距離が互いに異なる複数の小ヤコビアン行列(図8中y方向(深さ方向)の位置毎の小ヤコビアン行列)が必要となる。
図6の(a)の場合には、小ヤコビアン行列群の総要素数は、4(受信素子の数)×6(サンプリング数)×16(再構成画像の画素数)=384個となる。一方、図9の例では、2×(受信素子の数)×6(サンプリング数)×4(深さ方向の画素数)=192個
の要素で済む。したがって、図9の場合には、図6の(a)の場合に比べ、必要なメモリサイズを2分の1にすることができる。この省メモリ化の効果は、音響波源分布を推定する領域のサイズが大きい場合に顕著になる。例えば、64画素×64画素の再構成画像を生成する場合には、対称性を利用することにより、画素位置毎の小ヤコビアン行列を用いる場合よりも、必要なメモリサイズを32分の1にすることができる。
図10から、上記対称性を利用した小ヤコビアン行列を用いる場合の方が、画素位置毎の小ヤコビアン行列を用いる場合よりも小ヤコビアン行列群の総要素数(必要なメモリサイズ)が少ないことがわかる。例えば、64画素×64画素×64画素の再構成画像を生成する場合には、上記対称性を利用することにより、画素位置毎の小ヤコビアン行列を用いる場合よりも、必要なメモリサイズを1024分の1にすることができる。それにより、従来は扱えなかったサイズの領域について音響波源分布を推定することが可能になる。
この様に、省メモリ化の効果は、音響波源分布を推定する領域のサイズが大きいほど顕著になり、特に三次元の音響波源分布を推定する際により顕著になる。
次に、処理の高速化について説明する。
図11は、計算(処理)の高速化を実現するための方法の一例を示す図である(図中、数値0〜5はtの値を意味する)。受信素子で検出される音響波はパルス波であるため、小ヤコビアン行列の要素の大部分は、実質的に値を有していない。そこで、本実施形態では、小ヤコビアン行列において、値を有していない領域を圧縮する(省く)ことにより、計算を高速化する。具体的には、記憶部に記憶する情報として、予め定められた複数の位置のそれぞれについて、その位置に音響波源が存在すると仮定したときの音響波を受信する受信素子とその受信時刻との組み合わせ(小ヤコビアン行列内での位置)を表す情報を用いる。以下、このような小ヤコビアン行列の圧縮を“コンパクト化”と呼ぶ。
なお、小ヤコビアン行列の要素を値の大きい順に並べ替え、復元の際に所定値以上の大きさの値のみを値の大きい順に参照すれば、精度は低下するが演算量をより低減させることができる(処理を高速化することができる)。
上述した対称性を利用した方法を用いれば、図13(A)〜(C)のいずれの場合においても省メモリ化の効果を得ることができる。特に、図13(A)に示す場合において高
い省メモリ化の効果を得ることができる。なお、図13の例では、立方体の1つの面に複数の受信素子が配置されているが、複数の受信素子は立方体の複数面に配置されていてもよい。
また、本実施形態では、信号処理部6が、記憶部に記憶する情報を生成する情報生成部を有する構成としたが、情報は別の装置などで生成され、記憶部に予め記憶されていてもよい。
また、本実施形態では、対称性が並進対称性である場合(受信素子の配列方向が直線的である場合)について説明したが、対称性は軸対称性や球対称性であっても、それらの対称性を利用することによって省メモリ化を実現できる。ただし、対称性が軸対称性や球対称性の場合には、受信素子の位置や形状と、測定される信号との対応関係の情報が必要となる。
以下、シミュレーションによる画像の再構成(音響波源分布の推定)の結果について図14を用いて説明する。
なお、本実施例では64画素×64画素の再構成画像を生成した。図14において、各画像の左上の座標を(0,0)、右下の座標を(63,63)とする。
例えば、汎用PCを用いて、従来の反復法により音響波源分布を計算すると、10分の計算時間を要した。それに対し、本実施例では、小ヤコビアン行列をコンパクト化しているため、同等のPCを用いた場合に5秒程度(従来の120分の1程度)の計算時間で済んだ。
また、本実施例では、対称性を利用した小ヤコビアン行列を用いているため、画素位置
毎の小ヤコビアン行列を用いる場合に比べ、使用するメモリ容量を32分の1に低減することができた。
以上の結果から、本発明が診断装置の実用化に大きく寄与していることがわかる。
64画素×64画素×64画素の再構成画像を生成することにより、省メモリ化の効果を検証した。なお、本実施例では、三次元の画像の1つの面(64画素×64画素)に対応する4096個の受信素子を用い、サンプリング数を512とした。
この場合、対称性を利用しない場合に必要となるメモリの容量は、小ヤコビアン行列群の総要素数である、642(受信素子数)×512(サンプリング数)×643(画素数)に比例することとなる。一方、対称性を利用する場合に必要となるメモリの容量は、4×642(受信素子の数)×512(サンプリング数)×64(深さ方向の画素数)に比例することとなる。すなわち、本実施例によれば、対称性を利用することにより、利用しない場合のメモリ容量の1024分の1のメモリ容量で同じ計算を行うことができる。
64画素×64画素×64画素の再構成画像を生成することにより、小ヤコビアン行列のコンパクト化による処理の高速化の効果を検証した。なお、本実施例では、三次元の画像の1つの面(64画素×64画素)に対応する4096個の受信素子を用い、サンプリング数を512とした。
この場合、小ヤコビアン行列のコンパクト化により、小ヤコビアン行列の参照される要素の数は、4×(64×64×512)から、4×(64×64×30)に減少する。すなわち、参照される要素の数は、コンパクト化前に比べ512分の30となる。その結果、小ヤコビアン行列をコンパクト化するための処理を増やしたとしても、トータルで15倍程度、処理を高速化することができる。
Claims (10)
- 被検体に光を照射する光源と、
光吸収により発生する音響波を受信し、信号を出力する複数の受信素子と、
予め定められた複数の位置のそれぞれについて、その位置に音響波源が存在すると仮定したときに前記複数の受信素子から出力される信号を表す情報を記憶する記憶手段と、
前記複数の受信素子から出力された信号と、前記記憶手段に記憶されている情報とから、前記被検体内の音響波源の分布を推定する推定手段と、
を有し、
前記記憶手段に記憶されている前記情報は、第1の位置に音響波源が存在すると仮定したときに前記複数の受信素子から出力される第1の信号と、第2の位置に音響波源が存在すると仮定したときに前記複数の受信素子から出力される第2の信号とを、前記複数の受信素子の位置と前記複数の受信素子が音響波を受信する時刻とから構成されている信号空間上にて平行移動または回転移動することによって一致する信号を共通化した情報であることを特徴とする被検体情報処理装置。 - 前記推定手段は、音響波源の分布を仮定し、該仮定した分布における各音響波源の位置に対応する信号を前記記憶手段に記憶されている情報から取得し、取得した信号を重ね合わせ、重ね合わせた信号と実際の測定により得られた信号との一致度が最も高くなるような音響波源の分布を、前記被検体内の音響波源の分布とする
ことを特徴とする請求項1に記載の被検体情報処理装置。 - 前記記憶手段に記憶されている前記情報は、前記予め定められた複数の位置のそれぞれについて、その位置に音響波源が存在すると仮定したときの音響波を受信する前記複数の受信素子の位置と前記複数の受信素子のそれぞれが音響波を受信する時刻との組み合わせを表す情報である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の被検体情報処理装置。 - 前記記憶手段で記憶する前記情報を数値解析により生成する生成手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の被検体情報処理装置。 - 前記生成手段は、前記数値解析において、前記複数の受信素子のそれぞれについて、受
信素子の受信面内の複数点に到達する音響波の強度を計算し、該音響波の強度の平均値を該受信素子に到達する音響波の強度とする
ことを特徴とする請求項4に記載の被検体情報処理装置。 - 前記生成手段は、前記数値解析において前記複数の受信素子で受信される音響波の周波数帯域を、前記複数の受信素子が受信可能な音響波の周波数帯域に制限することを特徴とする請求項4または5に記載の被検体情報処理装置。
- 前記生成手段は、前記数値解析において、前記音響波源から前記複数の受信素子までの音速分布を想定したモデルを用いる
ことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の被検体情報処理装置。 - 前記記憶手段で記憶する前記情報を、前記被検体を模擬したサンプルを用いて実際に測定された音響波の測定値を用いることにより生成する生成手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の被検体情報処理装置。 - 予め定められた複数の位置のそれぞれについて、その位置に音響波源が存在すると仮定したときに複数の受信素子から得られる信号を表す情報を記憶する記憶手段を有する被検体情報処理装置における被検体情報処理方法であって、
被検体に光を照射することにより被検体内で発生する音響波を前記複数の受信素子で受信して、信号を出力するステップと、
前記複数の受信素子から出力された信号と、前記記憶手段に記憶されている情報とから、前記被検体内の音響波源の分布を推定するステップと、
を有し、
前記記憶手段に記憶されている前記情報は、第1の位置に音響波源が存在すると仮定したときに前記複数の受信素子から出力される第1の信号と、第2の位置に音響波源が存在すると仮定したときに前記複数の受信素子から出力される第2の信号とを、前記複数の受信素子の位置と前記複数の受信素子が音響波を受信する時刻とから構成されている信号空間上にて平行移動または回転移動することによって一致する信号を共通化した情報であることを特徴とする被検体情報処理方法。 - コンピュータに、請求項9に記載の被検体情報処理方法を実行させるためのプログラム。
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