JP5392729B2 - 遠隔操作システム - Google Patents

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Description

本発明は遠隔操作システムに関し、より詳しくは、簡易な構造によって優れた力覚認識性能及び操作性を実現することができる遠隔操作システムに関する。
近年、医療分野においては、生体内に挿入したマニピュレータを遠隔的に操作することにより、診断や手術を行うマスタースレーブ装置が広く使用されている。
例えば、内視鏡手術では、施術者は、カメラによる視覚に頼りながら、先端の作業部(マニピュレータ)と機械的に直結された操作部で反力を感じながら作業を行う。
このような作業において、作業部と操作部との連結部分が高い剛性を有する場合には、作業部が受ける反力が操作部に機械的に伝わるため、施術者は操作部において作業部が受ける反力を直接感じながら作業を行うことができる。
しかしながら、例えば、微細な部分に細管を挿入して腫瘍等を切除する手術などでは、細管を柔軟性(可撓性)があるものとする必要があるため、作業部が受ける反力を細管を介して機械的に操作部へと伝えることが非常に困難となる。
このような問題点に鑑みて、例えば下記特許文献1に記載されたようなマスタースレーブ装置が提案されている。
特許文献1に記載されたマスタースレーブ装置は、マニピュレータの先端にセンサを設け、このセンサからの信号を操作部にフィードバックさせて、術者の手先の感覚に反映させるように構成されている。
しかしながら、この特許文献1に記載されたような装置では、マニピュレータの先端にセンサを設ける必要があり、マニピュレータが微細なものである場合にはセンサの設置が困難となってしまう。
また、マニピュレータを駆動させるために使用される複数のモータに電力を供給するための電源と、フィードバック制御を行うための制御装置が必要となることから、装置の大型化や複雑化を生じ、使用場所に制限が生じるという問題がある。
一方、片麻痺の患者の上肢のリハビリにおいては、看護士や電気駆動の機器によって患者の上肢を強制的に動かしており、患者は受動的にリハビリを受けている。
このようなリハビリ方法は、看護士による場合にはリハビリを受ける時間が限られるし、機器を使用する場合には機器の暴走の危険性がある。また、いずれの方法でも、患者に実感覚に近い力学的感覚を与えることが困難である上に、患者が受動的となることにより、回復が非常に遅くなる。
下記特許文献2には、患者に実感覚に近い力学的感覚を伝えることができる上肢リハビリ装置が開示されている。
具体的には、患者の手首の3自由度のうち、少なくとも1自由度の作動に対して患者に力学的感覚を伝える少なくとも1つの駆動手段と、駆動手段の駆動を調整する少なくとも1つの機能性流体クラッチを有する上肢リハビリ装置が開示されている。
この装置によれば、駆動手段(モータ)から機能性流体(ER流体・MR流体等)クラッチを介して駆動を伝達することにより、患者の上肢に3次元の力学的感覚を伝えることができる。また、患者は能動的にリハビリを行うことができる。
しかしながら、この装置は、リハビリ対象となる部位(手首)を直接患者が動かすものであるため、リハビリの対象部位がある程度動く軽度の片麻痺に対しては有効であるが、殆ど動かない重度の片麻痺の患者にとっては使用することが困難である。
また、装置が固定設置式であるために、病院等の決まった場所以外ではリハビリを行うことが困難である。
下記特許文献3には、リハビリの対象となる部位が殆ど動かない重度の片麻痺の患者が使用できる装置が開示されている。
この装置は、筋肉の動きを検知するセンサを使用者の健常な側の部位に取り付け、センサが検知した筋肉の動きに基づいて作動するアクチュエータを使用者の弱った部位に取り付けたものであり、健常な側と筋力の弱った側の両方を動かして、身体の半身の筋力が弱った使用者に対してリハビリを行わせることができる。
しかしながら、この開示技術は、アクチュエータによる補助力が使用者自身のエネルギーをベースにするものではないため、使用者がリハビリで動かそうとする部位(弱った部位)に働く力を直接感じながらリハビリ動作を行うことができない。
また、アクチュエータ(空気圧アクチュエータ)を駆動させるためのエネルギー源(空気圧源)を設置する必要があるため、装置が大型化・重量化し、病院等の決まった場所以外ではリハビリを行うことが困難である。
特開2002−59380号公報 特開2006−247280号公報 特開2008−12358号公報
本発明は、上記したような問題点を解決するためになされたものであって、優れた力覚認識性能及び操作性を有しながら、簡易な構成で小型化が可能である遠隔操作システムを提供するものである。具体的には、例えば、医療分野において微細な部分の内視鏡手術等を行うためのマスタースレーブ装置や、患者自身のエネルギーを使用してリハビリ部位に働く力を直接感じながら能動的に且つ場所を選ばずに安全に使用できるリハビリ装置への適用が可能な遠隔操作システムを提供するものである。
請求項1に係る発明は、片麻痺の患者のリハビリ用に用いられるシステムであって、操作者により操作される操作部と、該操作部と離れた位置に設けられて操作部の操作に伴って作動する作業部と、前記操作部及び前記作業部に夫々接続されたエネルギー変換機とを備えており、
前記エネルギー変換機は、前記操作部から入力される機械エネルギーを電気エネルギーに変換する第1の変換機と、該第1の変換機から得られる電気エネルギーを機械エネルギーに変換して前記作業部に伝える第2の変換機とからなり、前記第1の変換機及び第2の変換機は1つの電気回路中に設けられており、前記操作部に入力される力と、前記作業部から出力される力とが比例関係にあり、前記操作部と前記第1の変換機の間もしくは前記作業部と前記第2の変換機の間の少なくともいずれか一方に介在された速度変換機構を備えており、該速度変換機構は、前記第1の変換機及び第2の変換機の駆動速度を、前記操作部及び作業部の駆動速度に比べて大きくし、前記操作部が患者の健常部に装着され、前記作業部が患者の障害部に装着されることを特徴とする片麻痺患者リハビリ用の遠隔操作システムに関する。
請求項に係る発明は、前記エネルギー変換機がDCモータであることを特徴とする請求項に記載の遠隔操作システムに関する。
請求項1に係る発明によれば、使用者自身のエネルギーを使用することで電源等のエネルギー源を不要又は小型化することができるとともに、センサを必要とせずに作業部に作用する反力に比例する力を操作部で感知することができるため、極めて簡易な構成で高い力覚認識性能を有し且つ小型化が可能な、医療分野におけるマスタースレーブ装置や片麻痺患者用のリハビリ装置として好適に利用可能な遠隔操作システムを得ることができる。
更に、請求項1に係る発明によれば、操作部と第1の変換機の間もしくは作業部と第2の変換機の間の少なくともいずれか一方に介在された速度変換機構を備えており、該速度変換機構は、第1の変換機及び第2の変換機の駆動速度を、操作部及び作業部の駆動速度に比べて大きくすることにより、外部電源を必要とせずに、操作部と作業部の動きに差が生じるのを抑制することができる。
請求項に係る発明によれば、患者自身の健常部(例えば左手)の動きを利用して操作部を操作することで、障害部(例えば右手)を作業部と共に動かすことができ、電源を不要とすることもできるため、患者が自身のエネルギーを利用して障害部に働く力を直接感じながら能動的に且つ場所を選ばずに安全に使用できるリハビリ装置として利用することができる。
請求項に係る発明によれば、エネルギー変換機がDCモータであることから、機械エネルギーと電気エネルギーの相互変換を簡易且つ安価な構成で確実に行わせることが可能となる。
本発明に係る遠隔操作システムの基本構成を示す図である。 図1のシステムを等価な機械系のみの系に変換した図である。 エネルギー補充手段を備えた遠隔操作システムの例を示す図である。 エネルギー補充手段を備えた遠隔操作システムにおいて、電源から電気回路に電圧を与える方法の一例についての説明図である。 速度変換機構を備えた遠隔操作システムの例を示す図である。 本発明に係る遠隔操作システムを内視鏡手術用のシステムに適用した例を示す概略図である。 本発明に係る遠隔操作システムを、片麻痺患者の上肢リハビリ用のシステムに適用した例を示す概略図である。
以下、本発明に係る遠隔操作システムの好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る遠隔操作システムの基本構成を示す図である。
本発明に係る遠隔操作システムは、操作者(システム利用者)により操作される操作部(1)と、この操作部(1)と離れた位置に設けられて該操作部の操作に伴って作動する作業部(2)と、これら操作部(1)及び作業部(2)に夫々接続されたエネルギー変換機(3)とを備えている。
エネルギー変換機(3)は、操作部(1)から入力される機械エネルギーを電気エネルギーに変換する第1の変換機(31)と、第1の変換機から得られる電気エネルギーを機械エネルギーに変換して作業部(2)に伝える第2の変換機(32)とからなる。
そして、操作部(1)に入力される力(エネルギー)と作業部(2)から出力される力(エネルギー)とは比例関係にある。
第1の変換機(31)及び第2の変換機(32)としてはDCモータが最も好適に利用される。そのため、以下の説明では、第1の変換機(31)及び第2の変換機(32)としてDCモータを使用した場合を例に挙げて説明する。
但し、本発明においては、機械エネルギーと電気エネルギーの相互変換がDCモータと同様の関係式で実行可能な装置であれば、DCモータに代えて他の種類の変換機(例えば圧電素子)を使用してもよい。
第1の変換機(31)及び第2の変換機(32)は1つの電気回路中に設けられている。
電気回路は、第1の変換機(31)、抵抗(R)、第2の変換機(32)、コイル(L)が、この順の経路で電流が流れるように直列に接続されている。
図1に示す遠隔操作システムにおいて、第1の変換機(31)及び第2の変換機(32)として同じモータ(DCモータ)を使用した場合(以下、基本実施形態という)について説明する。
この場合、外部電源が無ければ、
操作部(1)の運動方程式は下式となり、
作業部(2)の運動方程式は下式となる。
ここで、
T:モータトルク
A:アクチュエータ係数(トルク定数、時定数の総称として用いる)
である。
電気回路の運動方程式は下式となり、
それぞれのモータの誘導電圧は下式となる。
十分遅い現象でLの影響を無視すれば下式となる。
2つのモータのアクチュエータ係数が等しい場合、即ちA=A=Aの場合、

となる。ここで
である。
電流が消去されたため、これらの式の変数は、機械系の変数θだけで表現されており、Cを等価な減衰定数と考えれば、図2に示すような機械系のみの系と等価である。
すなわち、2つの慣性モーメントが減衰器で結合されている系と等価である。
ここで、2つの慣性モーメントの影響、即ち慣性力が十分小さい場合であれば、近似的にF=Fとなり、作業部の反力と操作部に加える力(トルク)が等しくなる。
このことから、操作部(1)においては、作業部(2)の反力を直接感じながら操作ができることになる。そして、反力が小さければ、作業部(2)は操作部とあまり変わらない速度で動くため、操作部(1)でほぼリアルタイムで反力を感じながら操作することが可能となる。
このように、本発明によれば、電源やセンサを必要とせずに、力覚認識性能が高い遠隔操作システムを得ることが可能となる。
尚、上述の説明では、モータが回転モータである場合(操作部及び作業部で回転運動を行う場合)を想定したが、モータがリニアモータである場合(操作部及び作業部で並進運動を行う場合)についても同様の考え方が成り立つ。
上記基本実施形態では、電気回路の抵抗によりエネルギー損失が生じるため、作業部(2)が受ける抵抗(反力)が大きい場合には、操作部(1)と作業部(2)の動きに時間差が生じる。即ち、運動性能が悪くなる。
この欠点を改善する(運動性能を改善する)ための方法としては、先ず、電気回路で消費されるエネルギー損失を補うエネルギー補充手段を設ける方法が挙げられる。
図3は、エネルギー補充手段を備えた遠隔操作システムの例(第1の例)を示す図である。
この例において、エネルギー補充手段は、電気回路で消費されるエネルギーを測定するセンサ(図示略)と、該センサにより測定された消費エネルギー量以下のエネルギーに相当する電力を電気回路に供給する電源(4)とからなる。
具体的には、電源(4)により下式で表される電圧eを電気回路内に加える。
ここで、Rは事前に計測しておくことができる既知の定数(抵抗値)であり、iは電流センサによりリアルタイムで計測する。
上式において、α=1とすれば、電気回路で消費されるエネルギーを全て補充することが可能であるが、安定性確保のため、αは0<α≦1の範囲で状況に応じて設定する。
上記eを加えると、電気回路の運動方程式は、
となり、整理すれば、
となる。式形を見れば、電気回路の抵抗がRからR(1−α)に減少したのと同等である。
したがって、等価な減衰定数をCとすれば、
となり、理論的にはαを1に近づければ、Cをいくらでも大きくすることが可能となり、減衰定数Cを大きくすることによって、操作部(1)への入力と作業部(2)からの出力の速度差を十分に小さくすることができる。つまり、運動性能を改善することができる。
但し、1−αが負になれば、電気回路で消費される消費されるエネルギーを超えて電源(4)からエネルギーが供給されることになってシステムが不安定になるので、負にならないようにαを設定する必要がある。
上記システムにおいては、電源(4)により電気回路に加える電圧eを決定するために電流iをセンサによりリアルタイムで計測する必要があるが、電流iは作業部(2)でも操作部(1)でも共通であるため、作業部(2)にセンサを設ける必要がなく、操作部(1)の近傍にセンサを設けることが可能となる。また、電源(4)についても操作部(1)の近傍に設けることができる。
従って、手術ロボット等の作業部(2)の近傍にスペースを確保できないような場合にも問題なく使用することができる。
次に、エネルギー補充手段を備えた遠隔操作システムの第2の例について、再び図3に基づいて説明する。
第2の例において、エネルギー補充手段は、第1の変換機(31)及び第2の変換機(32)の駆動速度を測定する測定手段(図示略)と、第1の変換機(31)の駆動速度と第2の変換機(32)の駆動速度の偏差を小さくするように電気回路に電力を供給する電源(4)からなる。
尚、他の例と同様にこの例においても、第1の変換機(31)及び第2の変換機(32)としてDCモータを使用した場合について説明する。
測定手段は2つのモータの速度を計測し、電源(4)は下式で表される電圧eをリアルタイムで電気回路に加える。
測定手段は、リアルタイムで速度を計測できるものであれば限定されず、例えばエンコーダ、リゾルバ、タコジェネレータ等を使用することができる。
上記eを加えると、電気回路の運動方程式は、
となり、Lの影響を無視すれば、
となり、等価な減衰定数は、
となる。
従って、pを大きくすれば、Cを十分大きくすることが可能となり、操作部(1)への入力と作業部(2)からの出力の速度差を十分に小さくすることができる。つまり、運動性能を改善することができる。
尚、電源(4)から電気回路に加える電圧eの制御方式について、上記した比例制御の代わりに下式で表されるPI制御とすることもできる。
また、変位θ,θの測定結果を用いて電源(4)からの電力供給を制御してもよい。この場合、速度だけでなく位置も制御することが可能となる。
具体的には、上述した第2の例において、測定手段が、第1の変換機(31)及び第2の変換機(32)の駆動速度に代えて変位(θ,θ)を測定し、電源(4)が、第1の変換機(31)の変位と第2の変換機(32)の変位の偏差を小さくするように電気回路に電力を供給するように構成することができる。
或いは、上述した第2の例において、測定手段が、第1の変換機(31)及び第2の変換機(32)の駆動速度に加えて変位を測定し、電源(4)が、第1の変換機の駆動速度と変位の1次結合と第2の変換機の駆動速度と変位の1次結合の偏差を小さくするように電気回路に電力を供給するように構成することができる。
上述した第1の例及び第2の例において、電源(外部電源)(4)から電気回路に電圧eを与える方法の一例について説明する。
図4に示すように、電源(4)として低電圧のバッテリーを使用し、2つのスイッチ(6)をバッテリーに接続する場合と接続しない場合とを高速で切り替えれば、平均的に
となる。
ここで、
:バッテリーへの接続時間
:バッテリーへの非接続時間
E:バッテリーの電圧
である。
従って、必要なeになるようにT/(T+T)をリアルタイムで制御するとよい。
操作部(1)と作業部(2)の動きに時間差が生じる欠点を改善するための別の方法としては、速度変換機構を設ける方法が挙げられる。
より具体的には、操作部(1)と第1の変換機(31)の間もしくは作業部(2)と第2の変換機(32)の間の少なくともいずれか一方に速度変換機構を設ける。そして、この速度変換機構により、第1の変換機(31)及び第2の変換機(32)の駆動速度を、操作部(1)及び作業部(2)の駆動速度に比べて大きくする。
図5は、速度変換機構(5)を備えた遠隔操作システムの例を示す図である。
尚、この例においても、第1の変換機(31)及び第2の変換機(32)としてDCモータを使用した場合について説明する。
また、速度変換機構(5)を、操作部(1)と第1の変換機(31)の間及び作業部(2)と第2の変換機(32)の間の両方に設けた場合について説明する。
図5において、操作部(1)に接続したモータの回転速度と、作業部(2)に接続したモータの回転速度をそれぞれ
とし、これらとは別に操作部(1)及び作業部(2)の機械系の速度をそれぞれ
とする。この速度は回転でも並進でもよいが、ここでは回転で説明する。
速度変換機構を介装した場合の機械系とモータの速度比は、操作部(1)と作業部(2)で異なっていてもよいし、一方だけ速度変換機構を介装してもよいが、以下では、説明を分かり易くするために操作部でも作業部でも同じ速度比Nの速度変換機構を用いる場合を説明する。
速度比を下式のように仮定し、
J,Kは機械系のパラメータとすれば、
となる。
速度変換機構がない場合と比較すれば、等価な機械系の減衰定数がCからNに変わるので、Nを大きくとれば、減衰定数を飛躍的に大きくすることができることが分かる。
従って、速度変換機構を設けることにより、操作部(1)への入力と作業部(2)からの出力の速度差を十分に小さくすることができる。つまり、運動性能を大幅に改善することができる。また、外部電源が不要であるというメリットもある。
操作部と作業部の動きに時間差が生じる欠点を改善するための更に別の方法としては、第1の変換機と第2の変換機のアクチュエータ係数を異ならせる方法が挙げられる。
上述した例では、A=A=Aの場合について説明した。この場合は、力も動きも操作部と作業部で1対1である。
以下では、A≠Aの場合について考える。
とすると、操作部の運動方程式は下式となり、
作業部の運動方程式は下式となる。
電気回路の運動方程式は、電源の無い場合で考えれば、
となり、十分遅い現象でLの影響を無視すれば
となり、操作部の運動方程式は下式となり、
作業部の運動方程式は下式となる。
ここで
であり、Cが十分大きければ、
となるので、n>1であれば、作業部はほぼ減速比1/nに減速され、作業部のトルクは操作部のほぼn倍になる。n<1であれば逆に増速となる。
このようにアクチュエータ係数を操作部側と作業部側で異ならせることにより、減速器や増速器を挿入しなくても、それと同等の効果を得ることが可能となる。尚、トランスを用いることによっても同様の作用効果が得られる。
但し、この方法は、等価な機械系の減衰定数Cが十分大きくなければ、電気回路でのエネルギー損失による作業部側の速度の低下が生じる。
これを避ける必要がある場合には、上述したエネルギー補充手段(第1及び第2の例)を設けることが有効である。
但し、第2の例における速度偏差は、
として計算する。
以下、本発明に係る遠隔操作システムの適用例について説明する。
図6は、本発明に係る遠隔操作システムを内視鏡手術用のシステムに適用した例を示す概略図である。
内視鏡手術用システムに適用する場合、高い運動性能(操作性)が要求されるとともに、作業部(2)の近傍にはスペースを確保できないため、上述したエネルギー補充手段を備えた遠隔操作システム(第1及び第2の例)が特に好適に利用される。但し、上述した他のシステムを用いることもできる。
第1の変換機(31)及び第2の変換機(32)としてはDCモータが使用されており、操作部(1)と作業部(2)は人体に挿入可能な細管(7)により接続されている。
操作部(1)は、図示例では操作者が手動で回動操作できるレバーからなり、操作部(1)を回動操作することにより第1の変換機(31)を構成するモータを駆動することができる。また、操作部(1)の近傍には、電源(4)と電流センサ等の電気回路の制御系が配置されている。
作業部(2)は患者の生体内に挿入して腫瘍等を切除することができるマイクロ刃物、具体的にはマイクロはさみからなり、第2の変換機(32)を構成するモータの駆動に伴って開閉するように構成されている。
作業部(2)のマイクロはさみが切除時に受ける反力は、はさみを構成する2つの刃物の角度が平行のときに切ればモータトルクだけとなるから、細管(7)には力が殆ど作用しない。そのため、細管(7)は、人体内の血管や尿管に沿って屈曲可能な柔軟な可撓性材料から構成することができる。但し、剛性材料から構成することもできる。
細管(7)の内部には、操作部(1)と作業部(2)とを電気的に接続する電気回路の配線等が挿通されている。
この内視鏡手術用のシステムによれば、患者の生体内に細管(7)を挿入して作業部(2)のマイクロはさみにより患者の腫瘍等を切除することができるとともに、切除時に作業部(2)が受ける反力を操作部(1)により略リアルタイムで感知することが可能となる。
また、マイクロはさみに作用する反力は、大部分が内力となり外部に伝わる力が小さいために、切除時にマイクロはさみで切る力を操作部(1)で正確に感知することができる。
更に、細管(7)の内部に光ファイバーを挿通してファイバースコープ(視覚センサ)を構成することにより、操作者は操作部(1)を操作しながら作業部(2)を視認することができるため、切除作業等をより正確に行うことが可能となる。この場合には、運動性能が低くてもよいため、エネルギー補充手段を備えないシステムを利用することもでき、電源は不要となる。
図7は、本発明に係る遠隔操作システムを、片麻痺患者の上肢リハビリ用のシステムに適用した例を示す概略図である。
図示例のシステムは、操作部(1)が患者の健常部(例えば左手)に装着可能であり、作業部(2)が患者の障害部(例えば右手)に装着可能であるようにウェアラブルに構成されている。尚、操作部(1)と作業部(2)を左脚と右脚にそれぞれ装着可能とすることにより、下肢リハビリ用システムとしても利用可能である。
図示例においては、操作部(1)及び作業部(2)は、肘の関節を曲げる動作と連動して回動するレバーから構成されている。
第1の変換機(31)及び第2の変換機(32)としてはDCモータが使用されており、操作部(1)と作業部(2)とは電気回路の配線により接続されている。また、電気回路には、電源(4)と電気回路の制御系が配置されている。電源(4)としては軽量バッテリーが好適に用いられる。
上肢リハビリ用システムに適用する場合、作業部(障害部)に十分なスペースを確保できるため、操作部(健常部)の速度と作業部(障害部)の速度の偏差を利用するシステム、具体的には、上述したエネルギー補充手段を備えた遠隔操作システムの第2の例が好適に利用できる。
但し、要求される性能に応じて、上述した他のシステムを適宜選択して利用することができる。例えば、操作部(健常部)と作業部(障害部)の動きに時間差が生じてもよい場合には、エネルギー補充手段を備えないシステム(例えば、速度変換機構を備えたシステム)を利用することもでき、この場合には外部電源が不要となる。
この上肢リハビリ用システムによれば、患者自身の健常部(例えば右手)の動きを利用して操作部を操作することで、障害部(例えば左手)を作業部と共に動かすことができる。また、電源を不要とすることもできるため、着用して使用することができ、場所の制約を受けずにどこでもリハビリをすることが可能となる。また、自分の意思に基づいて障害部を動かすので精神面からの回復効果が見込める。更に、自分の健常部で反力を感じることができるため安心して力を調整しながらリハビリを行うことができる。
本発明は、内視鏡手術用のシステムや片麻痺患者のリハビリ用システム等の医療分野において特に好適に利用することができる。
1 操作部
2 作業部
3 エネルギー変換機
31 第1の変換機
32 第2の変換機
4 電源(外部電源)
5 速度変換機構

Claims (2)

  1. 片麻痺の患者のリハビリ用に用いられるシステムであって、
    操作者により操作される操作部と、該操作部と離れた位置に設けられて操作部の操作に伴って作動する作業部と、前記操作部及び前記作業部に夫々接続されたエネルギー変換機とを備えており、
    前記エネルギー変換機は、前記操作部から入力される機械エネルギーを電気エネルギーに変換する第1の変換機と、該第1の変換機から得られる電気エネルギーを機械エネルギーに変換して前記作業部に伝える第2の変換機とからなり、
    前記第1の変換機及び第2の変換機は1つの電気回路中に設けられており、
    前記操作部に入力される力と、前記作業部から出力される力とが比例関係にあり、
    前記操作部と前記第1の変換機の間もしくは前記作業部と前記第2の変換機の間の少なくともいずれか一方に介在された速度変換機構を備えており、
    該速度変換機構は、前記第1の変換機及び第2の変換機の駆動速度を、前記操作部及び作業部の駆動速度に比べて大きくし、
    前記操作部が患者の健常部に装着され、前記作業部が患者の障害部に装着されることを特徴とする片麻痺患者リハビリ用の遠隔操作システム。
  2. 前記エネルギー変換機がDCモータであることを特徴とする請求項に記載の遠隔操作システム。
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