JP5386446B2 - 画像データ解析装置 - Google Patents

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本発明は走査型顕微鏡を用いて取得したデータを解析する画像データ解析装置に関する。
半導体や記録媒体などの産業では、パターンの形状計測に、主として測長機能を有する走査型電子顕微鏡、即ちCD−SEM(Critical Dimension Scanning Electron Microscope)が用いられている。CD−SEMでは基板上のパターンを上面から観察し、二次元的な画像を得ることができる(例えば、特許文献1、2や非特許文献1、2等)。
パターン加工寸法の微細化に伴って、CD−SEM画像から、パターン形状を正確に把握する必要が高まっている。パターン形状の評価は、ラインパターンであればライン幅、真円パターンであれば円の半径ないし直径、楕円パターンであれば長径と短径など、パターンの代表寸法の計測が主流であるが、近年これらの計測への要求精度(再現性)は非常に高くなってきた。さらにパターン輪郭即ち局所的なエッジ点の集合そのものも、直接解析されるようになりつつあるが、これらをCD−SEM画像から取り出す際にも、再現性の高さが要求される。なぜならば、これらのパターン検査において再現性が低いと、検査の信頼性が低くなり、結果的に半導体(ないし記録媒体などの)製造ラインの歩留まりが悪化するからである。
一方、パターンのエッジ位置やその集合から得られるパターン寸法は、エッジをどう定義したか、に大きく依存する。例えば、CD−SEM信号強度があるレベルに等しくある点をパターンエッジと定義する、閾値法というエッジ定義方法があるが、そのレベル(閾値)をどう設定するかによって、測定値は大きく変化することが経験的に知られている。これまでは閾値を50%にすることが多かった。これは、ある領域内の信号強度の最小値と最大値の丁度中央の値を、閾値強度とし、SEM信号強度がこの値と等しくなる点を、パターンのエッジと定義するということである。また、パターンの上部に対応するエッジを出したいというニーズもあり、閾値を100%とすることもあった。これらの値は、CD−SEM画像の上に、これらの閾値を用いて抽出されるエッジの位置を重ねて表示させ、操作者が目視で妥当であると判断した結果、使われるようになった値である。
特開2006−215020号公報 特開2009−257937号公報
J.S.Villarrubia, et al., "A simulation study of repeatability and bias in the CD-SEM", Proceedings of SPIE vol.5038, pp 138-149 (2003). B.D.Bunday, et al., "Determination of optimal parameters for CD-SEM measurement of line edge roughness", Proceedings of SPIE vol.5375, pp 515-533 (2004).
近年微細化が進み、パターン側壁がまっすぐでなくなってきた。側壁の上に段差があるもの、複雑な傾斜があるもの、パターン上部が丸くなりかつあれているもの、などである。これらのラインパターンの断面形状例を図11(a)(b)に示した。このようなパターンのCD−SEM画像からパターンエッジを抽出しようとすると、閾値50%、100%といった従来のやり方をそのまま実施すると、非常に再現性が悪くなってしまう。
再現性のよいエッジ定義を決定するためには、閾値を変えては測定再現性をチェックするという実験を繰り返さねばならず、大変な手間がかかる。特に図11に示したようなパターンでは、閾値を少し変えただけで再現性も大きく変わるため、細かい刻みで閾値を変えて実験を行う必要がある。また、再現性を測るために同じスポットを何度もCD−SEM観察するとパターン形状が変化することがある。異なるスポットを観察すると、元々のパターン形状のばらつきが結果に影響する。これら二つのことが原因となって、正しい結果が得られない可能性がある。にも関わらず、このような実験を、パターンの側壁形状が変わるたびに実施しなくてはならない。
そのため、今後高さ方向で構造が変化するようなパターンに対してでも、適切な画像処理条件(閾値等)を簡便に得られるような方法が必要になると考えられる。なお、ここで言う「適切」とは、高さ方向で構造が変化するパターンの測定において再現性が高いだけではなく、高さ方向のどこを測っているかを認識している、という意味を含んでいる。例えば、二段構造になっている(図11(a)のような)パターンの場合、下段のエッジを検出したい場合もあれば、上段のエッジを検出したい場合もある。これは例えば、レイヤーやパターンによっては、パターンのうちデバイスの性能に影響する部分が、トップであったりボトムであったりするためである。
特許文献2には、画像処理条件の代表的なパラメータ(以下画像処理パラメータと記す)を変えてラインエッジラフネスや真のラインエッジラフネスを測定し、そのグラフから、操作者が指定した高さのエッジを出すための画像処理パラメータの値を得る方法が開示されている。しかしこの方法を高さ方向で構造が変化するようなパターンに対して単純に適用した場合、ノイズが大きい場合に正しい結果が得られないことが予想される、通常半導体検査で使われる程度のノイズレベルの画像でも、正しい結果が得られない恐れがある。また、真のラインエッジラフネスを用いた場合は、別途AFM(原子間力顕微鏡)で求めた高さデータとの照合により高さの指定はできるものの、エッジ位置や測長の再現性が得られない恐れがある。さらに、段差の検出には感度が足りない(即ち、側壁で構造に変化があることが十分認識できない)恐れがある。
なお、ノイズの影響については特許文献1、非特許文献1、2に開示されている。非特許文献1には、CD−SEMからパターンパターンのエッジ位置を算出する際、画像に信号強度の平均化などの処理を行なわなかった場合、画像ノイズの影響でエッジ点の位置は真の位置の周りに確率的に1nm以上ばらつくことが記載されている。特許文献1や非特許文献2には、ラインエッジラフネスの大きさについて、このばらつきの影響を除いた真の値を算出する方法が開示されている。しかしながら、これらの文献ではノイズの影響を除いた真のCD値や真のエッジ位置そのものは決定できない。
さらに、開発時間の短縮やスループットの向上のためには、三次元形状情報を取得する際に常に必要となるAFMや光学計測などの追加実験や、それらのデータとCD−SEMデータとの照合などの時間のかかる解析を導入することは適切でない。即ち、上記のように、高さ方向のおおよその位置(高さ)の指定と高い再現性が実現したとしても、さらに、簡便さが必要である。
即ち、上記従来技術を用いたのでは、高さ方向で構造が変化する場合、簡便な方法でパターンエッジを決定するための画像処理条件(閾値等)を決めることが困難である。
本発明の目的は、高さ方向で構造が変化するようなパターンであっても、走査型顕微鏡(CD−SEM)を用いて取得した画像データを用いて所望のパターンエッジが再現性よく決定できる画像処理条件(閾値等)を、簡便に得ることのできる画像データ解析装置を提供することにある。
上記目的を達成するには、第一に、パターンエッジの位置ないしはパターン寸法の、画像処理パラメータ(画像処理条件の一部)に対する依存性を把握し、これらの測定値の依存性が小さくなるような画像処理パラメータの値を選択することが効果的である。
図12は図11(a)に示した断面形状を持つラインパターンの片側のエッジの位置を、閾値法の閾値を変えて検出した結果である。閾値の大きさは、抽出されるエッジ点の高さと強い相関があり、図中左に行くほど、ボトムに近いエッジを検出していることになる。閾値60%くらいのところに段差があることがわかるので、側壁がボトム領域とトップ領域に分かれていること、また、段差部分に相当するのが閾値60%くらいであることが分かる。この場合、今後ボトム領域のライン幅やラインエッジラフネスの計測をしたければ、閾値を60%より小さくすればよい。逆に、トップ領域の計測をしたければ、閾値を60%より大きくすればよい。
図13は図11(b)に示した断面形状を持つラインパターンのライン幅を前述の例と同様に閾値を変えて計測した例である。閾値が80%以上になるとライン幅の変化が急激になり、かつ、不安定になっていることがわかる。このことから、側壁の状態はボトム領域とトップ領域に分かれており、その境界に相当するのが閾値80%くらいであること、また、トップ領域はライン幅が安定に測れないことが分かる。この場合、今後はトップ領域の計測は行わないか、参考程度に留めておき、80%未満の閾値を用いてライン幅やラインエッジラフネス計測をすべきであると分かる。また、そうして得られる計測値は、パターンのボトム領域のデータであることも分かる。
第二に、画像自身にある再現性劣化の原因である、画像ノイズの影響を把握し、最小化するように画像処理条件を選択することが必要である。再現性劣化の原因は様々なものがあるが、近年の複雑な微細パターンの観察においては、この影響が一番大きく、また、画像処理パラメータの最適化だけで改善されるものがこれである。この場合には、第一の場合同様に画像処理パラメータに対する画像ノイズインパクトの量の依存性を把握し、画像ノイズインパクトを最小にする値を選択すればよい。この際、パターンエッジラフネスの値の画像処理パラメータに対する依存性もプロットし、この依存性が小さい領域で、画像ノイズの影響が最も小さくなるように、画像処理パラメータ値を選択するとなおよい。
第二の方法を第一の方法と比較した場合のメリットは、段差に対する感度が高いことである。段差のある部分ではわずかなノイズでエッジの位置が大きくゆらぐため、画像のノイズそのものがたとえ小さくても、ノイズインパクトは大きくなる。このため段差が強調される。図11(a)に断面形状が示してあるラインパターンについて、第二の方法を実施すると、図14に示されたグラフが得られる。なおおこでは、ノイズインパクトの量は最大値を1とした。
第一の方法と第二の方法の両方を行うと、計算時間が多少長くなるが、検査の信頼性はさらに向上する。
従来の方法では、CD−SEM画像からパターンのエッジ位置を求めるために画像処理条件を決定する際、パターンの上部、下部、などのおおよその高さ方向の位置を指定した上で、さらに画像ノイズ起因のばらつきが小さい画像処理条件を得るには、複雑で時間のかかる解析が必要であった。また、CD−SEM以外の装置による観察も必要であった。本発明を用いれば、パターンのおおよその高さ方向の位置を指定した上で、ノイズ起因のばらつきが小さい画像処理条件を、1回のCD−SEM観察だけから得ることができる。これにより、正確なパターン形状検査、寸法計測が簡単に行えるようになり、検査精度が向上するとともに検査にかかるコストが削減できる。
第1の実施例に係る画像データ解析装置を用いて画像データ解析を行うときの処理フロー図である。 第1の実施例で用いられた、観察サンプルの概略鳥瞰図である。 図2で示した観察サンプルのCD−SEM観察画像の平面模式図である。 (a)は図2で示した観察サンプルのCD−SEM観察画像の信号プロファイルであり、(b)は信号プロファイル上でエッジ点を定義する方法を説明するための概念図である。 第1の実施例に係る画像データ解析装置の構成を表す概念図である。 第1の実施例で得られたラフネス計測の出力値(ラフネス値とそのノイズ)と閾値の関係を表すグラフである。 第1の実施例で最適な閾値を算出する際のGUI画面の模式図である。 第2の実施例で用いられた観察サンプルに形成された複雑なパターンのCD−SEM観察画像の平面模式図である。 第2の実施例で用いられた他の観察サンプルに形成されたラインパターンのCD−SEM観察画像の平面模式図である。 第2の実施例で得られたラフネス計測の出力値(ラフネス値とそのノイズ)と閾値の関係を表すグラフである。 側壁に構造のあるパターンの断面図の例であり、(a)は上部と下部で幅が異なる場合、(b)は上部表面が荒れている場合を示す。 側壁に構造のあるパターンのCD−SEM観察画像から抽出したパターンエッジ位置と、エッジを定義する際に用いた閾値パラメータの値の関係を示すグラフである。 側壁に構造のあるパターンのCD−SEM観察画像から抽出したパターンの寸法と、エッジを定義する際に用いた閾値パラメータの値の関係を示すグラフである。 側壁に構造のあるパターンのCD−SEM観察画像からパターンエッジを抽出する際のノイズのインパクト及びエッジラフネスと、エッジを定義する際に用いた閾値パラメータの値との関係を示すグラフである。
以下、実施例により説明する。
以下、本発明の第一の実施例を図1〜図7を用いて説明する。図1は本実施例に係る画像データ解析装置を用いて画像処理条件を最適化する等、画像データ解析のために操作者及び装置が行う処理を順次に表しているフロー図、図2は本実施例で観察に用いたラインパターンの鳥瞰図を簡単に表したもの、図3は図2で示した観察サンプルのラインパターンをCD−SEMで観察して得られた画像の平面模式図であり、本実施例で解析した対象パターンである。図4は図3に示した画像データを構成するCD−SEMの二次電子信号の一部及びエッジ点抽出法を説明するための模式図、図5は本実施例で用いられた画像データ解析装置の構成を表す概念図、図6は本実施例で得られたラフネス計測の出力値(ラフネス値とそのノイズ)と閾値の関係を表すグラフ、図7は本実施例実施時に表示装置に現れる入力画面の模式図である。
まず、操作者は工程101を実施し、画像データ解析装置解析のインターフェイス505を用いて、解析を行うCD−SEM画像のファイルを指定した。するとそのファイルのデータは記録装置504から処理部503にロードされ(工程102)、記憶領域501に一時記録されると共に、その画像が表示部502に表示された。この画像は図3に示されている。これは図2に示されたラインパターンを鉛直上方からCD−SEMで観察したものである。パターンはシリコン基板上のレジストパターンであった。画像の各画素の濃淡はパターンから発せられてCD−SEMの検出器で検出された二次電子の信号の強度を、グレイスケールで表したものである。符合301はラインパターンの下地層に対応する領域、符号302はラインパターンの左エッジ近傍に対応する信号強度の大きい領域、符号303はラインパターン上部の平らな部分に対応する信号強度の小さい領域、符号304はラインパターンの右エッジ近傍に対応する信号強度の大きい領域、符号305は検査領域を示す枠、符号306は画像を上下に二分する直線を示す。
次に工程103に進み、操作者はインターフェイス505を用いて、画像内においてエッジを抽出すべき領域、即ち検査領域を入力した。これが図3中の枠305である。この枠で囲まれた検査領域内で、ラインパターンのエッジを定義する。この領域はy方向に400ピクセル、x方向に50ピクセルであり、長さに換算するとy方向に2000nm、x方向に66nmの長さであった。
次に工程104に進み、操作者はエッジを抽出する際の画像処理条件を入力した。この際、パターンエッジは閾値法で定義することとした。この閾値法を以下に詳しく説明する。図4(a)に、図3の線306に沿って二次電子の信号強度を表したもの、即ち二次電子信号強度のx依存性を示した。このような二次電子信号強度のx依存性は、二次電子信号プロファイルと呼ばれる。二つのピークがあるが、左側のピークがパターン左エッジ、右側のピークがパターン右エッジから出た信号である。左エッジに対応するピーク付近の信号強度を拡大して示したものが図4(b)である。このグラフ上で、枠305内に入るxの値の領域は、aからbまでの領域である。閾値法ではまず、a<x<bとなる領域で、信号強度I(x)の最大値と最小値を探す。得られたそれぞれの値をI_max、I_min、またそのときのxの値をx_max、x_minとする。閾値法では、百分率で表された閾値Tに対して
Figure 0005386446
となるx(T)を、エッジの位置とする。ただしx(T)の値はx_minとx_maxとの間になければならない。
今、検査領域はライン302に沿って400ピクセルであるから、含まれる二次電子信号プロファイルも400ある。これらのプロファイル上でTに対して得られたエッジの位置をx_1(T), x_2(T),....x_400(T)と置く。
次に工程105に進み、抽出したエッジ点位置から計算する指標を指定した。本例では、通常のラフネス計測で出力値を増大させるノイズ(3sigma_error)と、ノイズの影響を除去したラフネスの値(3sigma_0)とを選択した。
ここで、これら二つの量について説明をする。これらはTの関数となっている。上記のエッジの位置(400個ある)の分布の標準偏差をsigma(T)と置く。この値がいわゆるラインエッジラフネスであるが、この値は前述のようにランダムな画像ノイズを含んでいる。即ち、
Figure 0005386446
ノイズを除去し、3sigma_0(T)を求める方法自体は周知であり、ここでは省略する。
次に、工程106に進み、操作者は解析装置により上述の計算を実施させ、モニタに表示させた。これにより、Tの値に対して、画像ノイズの影響を含まないラインエッジラフネス、3sigma_0(T)と、画像ノイズによるバイアス量3sigma_error(T)が得られ、モニタ上に図6に示すグラフが表示された。なおこのときの表示部502の様子を図7に示す。帯状の表示領域701に、画像ファイル名が、表示領域702にグラフが示される。
次にこのグラフから操作者は、T=50%近辺を境にラフネスの様子が異なることを見て取り、Tが50以下の下部とそれ以上の上部とに分かれると判断し、まずTが5から50の間すなわち下部でノイズの影響を最も受けにくいTを算出すると決定し、最適なTを探索するための条件を入力した(工程107)。本工程107において、3次元計測位置が決められる。本工程において、まず、図7に示すように、表示領域703にカーソルを移動させ、最適なTを探したい領域を5から50までと入力した(操作者による入力可)。また、3sigma_0と3sigma_errorのグラフを元にTを決定すべく表示領域704のこれらの項目の前にチェック印をつけた(操作者による入力可)。また、3sigma_0は安定しているところを、3sigma_errorは最小になるところを求めるため、それぞれ表示部分をプルダウンしてこれらの項目を表示させた。なお、表示領域704のプルダウン項目として、「安定」「最小」の他「最大」等を登録しておくことができる。その後、工程108に進み、Calculateと表示された表示領域705の実行ボタンをクリックし、解析装置により閾値の最適化を実施した。
処理部503は3sigma_0が安定している領域を判定した。この結果、T=20%から40%の領域で3sigma_0が安定していると判断された。次に処理部503は前述の各領域で3sigma_errorが最小になるTの値を見つけた。本例の場合、T=30%であった。そこで、図7のように、T=30の位置に線が表示され、30という値が表示部502のグラフ上に表示された。基本的にはこれで操作は終了である。
ここでライン幅を参考にTを決めたい場合は図7の表示領域704においてCDという表示の左にあるチェックボックスにチェック印をつける。ただしその場合には、工程105で、CDも同時にプロットするように選択しておく必要がある。CDを選択することにより、本実施例ではライン302のライン幅が出力される。また、安定性を元に決定する場合はstabilityを表示させるが、最小値を選択する場合はminimumを表示させる。
ここでは、パターン上部でも同様のことを実施するには、工程107と工程108を繰り返した。まずパターン上部の最適なTを得るため、領域入力部分に50と100を入力し(工程107の繰り返し)、表示領域705のCalculateと表示された実行ボタンをクリックした(工程108の繰り返し)ところ、処理部503は3sigma_0がT=75から95で安定していると判断、さらに3sigma_errorがT=85で最小となっていると判断し、85という値をグラフ上に表示させた。
このようにして、この観察サンプル(ウエハ)のパターンの下部を計測する際には、閾値として30%を、上部を計測する際には85%を用いると、ノイズの影響が小さいエッジ検出を行えることがわかった。
そこで、上記の結果を用いて量産工程における検査を実施した。この観察サンプル(ウエハ)と同じリソグラフィプロセスでパターン形成するウエハに対して、従来のライン幅測定のほかに閾値30%で求めたラインエッジラフネスの大きさ(以下3sigma_bottomと記す)を算出することとした。この指標の値は、パターンボトムのラフネスを表すものである。ウエハの検査では、これらの指標を1チップあたり1箇所測定し、ライン幅がターゲット値±2nmであり、かつ3sigma_bottom<3nm、を満たすチップを良品チップとし、その数を数えた。ウエハ1枚につき、前述のチップの数が検査したチップの数の70%を超えた場合はウエハを次工程に送り、70%以下であった場合は、リソグラフィをやり直した。
従来はパターンの検査を単純なライン幅計測と、閾値を最適化せずに測定したラインエッジラフネスを用いて行っていたが、検査を上記のものに変えたところ、検査時間は最初の最適なTを得る工程の分が増加しただけで、最終的な製品の良品率が88%から91%に向上した。
さらに、上記のライン幅及び3sigma_bottomの測定に加えて、閾値85%でラインエッジラフネスの大きさ(以下3sigma_top)も測定した。このとき、良品チップの条件に3sigma_top<5nmを加えた。すると、検査時間はウエハ1枚あたり1分30秒増加しただけで、良品率は92%になった。
さらに、閾値30%と85%とで計測したライン幅の値の差(以下ΔCDと記す)を算出することとした。この指標はパターン側壁の傾斜を表すものとみなされる。ウエハの検査では、上記の条件に加えてΔCD<3nmとなるチップを良品とした。これにより、ウエハあたりの検査時間はさらに1分増加したものの、良品率は94%にまで向上した。
なお、上記の例では3sigma_0と3sigma_error両方を閾値Tに対してプロットしたが、時間を短縮するには、3sigma_errorのみから閾値の最適化を行うことも可能である。ただしこの場合にはパターン側壁のラフネスが高さ方向にどう変化しているかが正確に把握できないため、求めた閾値でエッジの検出を行う際、エラー(エッジ検出の失敗)が生じることがある。
パターン側壁のラフネスの高さ方向の変化を検知するには、3sigma_0の代わりにラフネスデータから得られるエッジ位置分布の歪度γや自己相関長ξといったラフネス指標を用いることもできる。これら歪度は、分布の非対称性を表す指標で、エッジラフネス計測に応用することで、エッジがラインの内側に食い込むラフネス、あるいは外側に張り出すラフネスの存在を検知する。また自己相関長は局所的なゆらぎが減衰するまでの距離であり、エッジラフネス計測に応用することで、エッジに沿って計測するラフネスの特徴的なサイズを評価できる。いずれも、ラフネスの程度ではなく、エッジに沿った方向の特性を表す量である。これらの指標を解析に使うには、図7に示した画面で、SkewnessやACL(Auto−correlation length の略)という表示の左側にあるチェックボックスをクリックすればよい。なお、γは以下のように計算される。
Figure 0005386446
ここでNはエッジ点の数、x_i(T)は閾値Tを用いて得られた、i番目のパターンエッジ位置(x座標)であり、μ(T)はそれらの算術平均である。
また、自己相関長ξは以下の式を解いて得られる。
Figure 0005386446
Figure 0005386446
Figure 0005386446
ここでx_i(T)は周期的であり、x_(i+N)(T)の値はx_i(T)と同じである。また、Δyはエッジ点のy方向の間隔である。
一般には、3sigma_0(画像ノイズが抑制されている場合は3sigma)をプロットすることで精度よく閾値Tを最適化できるが、他の指標が望ましい場合もある。例えばパターンの上部と下部とでラインエッジラフネスの形成過程が大きく違う場合は、γやξのT依存性が明確である。これには、ドライエッチングでパターンのトップのみが荒れた場合などが相当する。特に、ラインに食い込むような形のラフネスが現れる場合はγを用いるとよい。また、多結晶シリコンや凝集しやすい高分子などを加工する際には、プロセスの変動によって粒径が変化しその結果自己相関長ξが変化するので、ξを用いるとよい。
尚、ここでは画像処理条件のパラメータを閾値としたが、周知の他の方法でエッジを定義する場合にも上述の手順でパラメータを最適化できる。それにはまず画像処理の主たるパラメータを決める。次にその値を一定の範囲内で変化させてはエッジを抽出し、図6に示したものと同様のグラフ(横軸が閾値ではなく、操作者が選択したパラメータ、縦軸は3sigma_0、3sigma_error、あるいは上で述べたラフネス指標やライン幅、となる)を得る。その後は本実施例で述べたように、3sigma_0が安定で3sigma_errorが小さいパラメータの値を選択すればよい。
以上説明したように、本実施例に係る画像データ解析装置を用いることにより、量産工程のスループットには影響を及ぼすことなく半導体パターン形状の検査精度が高まり、歩留まりが向上した。
本実施例によれば、高さ方向で構造が変化するようなパターンであっても、走査型顕微鏡(CD−SEM)を用いて取得した画像データを用いて所望のパターンエッジが再現性よく決定できる画像処理条件(閾値等)を、簡便に得ることのできる画像データ解析装置を提供することができた。また、製品の製造歩留まり向上を図ることができた。
以下、本発明の第二の実施例について図8〜図10を用いて説明する。なお、実施例1に記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用することができる。図8は解析対象となったパターンのCD−SEMによる観察画像、図9はラインパターンのCD−SEMによる観察画像を表す。図10に、解析で得られ表示されたラフネス計測の出力値(ラフネス値とそのノイズ)と閾値の関係を表すグラフを示す。本実施例2では、複雑な二次元形状のパターンの輪郭線を求める例について説明する。
まず、操作者は解析対象となる二次元パターンをCD−SEMで観察し、図8に示す画像を得た。次に、前述の観察対象となったパターンと同じ材料を用いて、同じ条件で作成したラインパターンのサンプルを、CD−SEMで観察した。観察条件は全て、図8に示す画像を得たときと同じであった。その結果、図9に示す観察画像が得られた。
次に、操作者は図9に示した画像を用いて、実施例1と同じ解析を行った。その結果、図10に示すグラフが得られ、側壁に構造はないこと、閾値を80%とすることでノイズ起因の誤差を最小化できることがわかった。そこで閾値80%で図8の画像からパターンのエッジを取り出した。
図8に示したものと同じレイアウトのパターンは、製造している素子にとって最も重要な部分のひとつであったため、この部分が設計どおりにパターニングされているかどうかは重要な検査項目であった。この製造工程において以前は閾値50%で図8の画像と同じ形状のパターン輪郭を抽出し、形状のよしあしを判定していたが、閾値80%で検査を行うよう変更したところ、完成した製品の不良率が3%から1.5%に減少した。
高さ方向で構造が変化するようなパターンであっても、走査型顕微鏡(CD−SEM)を用いて取得したパターンの画像データを用いて所望のパターンエッジが再現性よく決定できる画像処理条件(閾値等)を、簡便に得ることのできる画像データ解析装置を提供することができた。
本実施例によれば、走査型顕微鏡(CD−SEM)を用いて取得した画像データを用いて所望のパターンエッジが再現性よく決定できる画像処理条件(閾値等)を、簡便に得ることのできる画像データ解析装置を提供することができた。また、複雑な2次元パターンを有するパターン輪郭を容易に求めることができ、製品の不良率を低減することができた。
以上、本願発明を詳細に説明したが、以下に主な発明の形態を列挙する。
(1)走査型電子顕微鏡により得られた、基板上に形成されたパターンの画像データを記録する記録部と、前記記録部に記録された前記画像データを処理する処理部と、前記処理部で処理された結果を表示する表示部とを有する画像データ解析装置であって、
前記処理部は、
前記画像データから、複数の画像処理条件を用いて前記パターンのエッジのラフネスの特徴を表すラフネスパラメータの値と、画像のノイズの程度ないしは前記エッジの位置に対するノイズの影響の程度を表すノイズパラメータの値とを求め、
前記ラフネスパラメータ及び前記ノイズパラメータの値を一方とし、前記画像処理条件を表す値をもう一方としたグラフを前記述表示部に表示することを特徴とする画像データ解析装置。
(2)前項(1)に記載の画像データ解析装置であって、
前記処理部は、
前記ノイズパラメータの値を画像処理条件の中の画像処理パラメータの関数として表し、前記ノイズパラメータの値が前記画像処理パラメータに対して極小値をとるときの画像処理パラメータを得ることを特徴とする画像データ解析装置。
(3)前項(1)に記載の画像データ解析装置であって、
前記ラフネスパラメータの値を画像処理条件の中の画像処理パラメータの関数として表し、前記ラフネスパラメータの値の前記画像処理パラメータに対する依存性が、あらかじめ定めた値よりも小さくなる前記画像処理パラメータの値を得ることを特徴とする画像データ解析装置。
(4)前項(1)に記載の画像データ解析装置であって、
前記ラフネスパラメータとして、
前記パターンのエッジに垂直な方向にx座標を定めた場合の、前記パターンのエッジ点のx座標の分布の標準偏差を表す値、ないしは、前記パターンのエッジ点のx座標の分布の歪度γ、ないしは、
前記パターンがラインパターンである場合にはx座標に垂直にy座標を定め、
前記パターンが閉じたパターンである場合にはエッジに沿った方向にパターンエッジ上の一点からの距離を計りそれをy座標と定め、
前記ラインパターンのエッジ点のx座標の平均値ないし設計値からのずれをyの関数として表したΔx(y)の数列を算出し、そこから求められる自己相関長ξを用いることを特徴とする画像データ解析装置。
(5)前項(2)または(3)に記載の画像データ解析装置であって、
前記処理部は、
前記走査型電子顕微鏡により得られた前記画像データ、画像処理に用いた複数の前記画像処理条件処理、複数の前記画像処理条件における前記ラフネスパラメータの値、及び得られた前記画像処理パラメータの値、のうち少なくとも二つ以上を一組のデータとして前記記録部に記録する機能を備えていることを特徴とする画像データ解析装置。
101…解析したい画像ファイルを指定する工程、
102…指定されたファイルを解析装置が記録領域から処理部へロードする工程、
103…画像上の検査領域を設定する工程、
104…エッジ抽出時の画像処理条件を設定する工程、
105…エッジ位置データから算出する指標を指定する工程、
106…指標の閾値依存性を算出し表示する工程、
107…閾値最適化のための解析条件を設定する工程、
108…閾値の最適化を実施する工程、
301…ラインパターンの下地層に対応する領域、
302…ラインパターンの左エッジ近傍に対応する信号強度の大きい領域、
303…ラインパターンの上の平らな部分に対応する信号強度の小さい領域、
304…ラインパターンの右エッジ近傍に対応する信号強度の大きい領域、
305…検査領域を示す枠、
306…画像を上下に二分する直線、
501…CD−SEMシステムないしはCD−SEMデータを保存する記録領域、
502…表示部、
503…処理部、
504…記録装置、
505…処理装置を制御するためのインターフェイス、
701…解析している画像ファイル名の表示領域、
702…グラフの表示領域、
703…最適なTを探すTの範囲の表示領域(操作者入力可)、
704…閾値最適化を行う条件を設定するための表示領域(操作者入力可)。

Claims (6)

  1. 走査型電子顕微鏡により得られた、基板上に形成されたパターンの画像データを記録する記録部と、前記記録部に記録された前記画像データを処理する処理部と、前記処理部で処理された結果を表示する表示部とを有する画像データ解析装置であって、
    前記処理部は、
    前記画像データから、複数の画像処理条件を用いて前記パターンのエッジのラフネスの特徴を表すラフネスパラメータの値と、画像のノイズの程度ないしは前記エッジの位置に対するノイズの影響の程度を表すノイズパラメータの値とを求め、
    前記ラフネスパラメータ及び前記ノイズパラメータの値を一方とし、前記画像処理条件を表す値をもう一方としたグラフを前記述表示部に表示することを特徴とする画像データ解析装置。
  2. 請求項1に記載の画像データ解析装置であって、
    前記処理部は、
    前記ノイズパラメータの値を画像処理条件の中の画像処理パラメータの関数として表し、前記ノイズパラメータの値が前記画像処理パラメータに対して極小値をとるときの画像処理パラメータを得ることを特徴とする画像データ解析装置。
  3. 請求項1に記載の画像データ解析装置であって、
    前記ラフネスパラメータの値を画像処理条件の中の画像処理パラメータの関数として表し、前記ラフネスパラメータの値の前記画像処理パラメータに対する依存性が、あらかじめ定めた値よりも小さくなる前記画像処理パラメータの値を得ることを特徴とする画像データ解析装置。
  4. 請求項1に記載の画像データ解析装置であって、
    前記ラフネスパラメータとして、
    前記パターンのエッジに垂直な方向にx座標を定めた場合の、前記パターンのエッジ点のx座標の分布の標準偏差を表す値、ないしは、前記パターンのエッジ点のx座標の分布の歪度γ、ないしは、
    前記パターンがラインパターンである場合にはx座標に垂直にy座標を定め、
    前記パターンが閉じたパターンである場合にはエッジに沿った方向にパターンエッジ上の一点からの距離を計りそれをy座標と定め、
    前記ラインパターンのエッジ点のx座標の平均値ないし設計値からのずれをyの関数として表したΔx(y)の数列を算出し、そこから求められる自己相関長ξを用いることを特徴とする画像データ解析装置。
  5. 請求項2に記載の画像データ解析装置であって、
    前記処理部は、
    前記走査型電子顕微鏡により得られた前記画像データ、画像処理に用いた複数の前記画像処理条件処理、複数の前記画像処理条件における前記ラフネスパラメータの値、及び得られた前記画像処理パラメータの値、のうち少なくとも二つ以上を一組のデータとして前記記録部に記録する機能を備えていることを特徴とする画像データ解析装置。
  6. 請求項請求項3に記載の画像データ解析装置であって、
    前記処理部は、
    前記走査型電子顕微鏡により得られた前記画像データ、画像処理に用いた複数の前記画像処理条件処理、複数の前記画像処理条件における前記ラフネスパラメータの値、及び得られた前記画像処理パラメータの値、のうち少なくとも二つ以上を一組のデータとして前記記録部に記録する機能を備えていることを特徴とする画像データ解析装置。
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