JP5376635B2 - 雑音抑圧処理選択装置,雑音抑圧装置およびプログラム - Google Patents

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Description

本発明は、目的音と雑音との混合音から雑音を抑圧する技術に関する。
目的音と雑音との混合音から雑音を抑圧する技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、複数の収音機器(マイクロホンアレイ)を利用した遅延加算型のビーム形成で目的音を強調した観測音のスペクトルから、独立成分分析で推定された雑音のスペクトルを減算する技術が開示されている。
特開2007−248534号公報
しかし、特許文献1のように周波数領域で雑音を抑圧する方法においては、雑音の抑圧後に時間軸上および周波数軸上に分散的に点在する成分が、人工的で耳障りなミュージカルノイズとして受聴者に知覚されるという問題がある。以上の事情を背景として、本発明は、雑音の抑圧に起因したミュージカルノイズの抑制を目的とする。
以上の課題を解決するために、本発明に係る雑音抑圧処理選択装置は、音響信号の強度の度数分布における尖度が雑音抑圧処理の前後で変化する度合を示す尖度変化指標と、雑音抑圧の度合を示す雑音抑圧指標と、雑音抑圧処理に使用される音響信号のチャネル数(例えば収音機器の個数)との相関を、複数の音響信号の加算による目的音の強調後のスペクトルから雑音スペクトルを抑圧する第1雑音抑圧処理と、複数の音響信号の各々を雑音スペクトルの抑圧後に加算することで目的音を強調する第2雑音抑圧処理とについて記憶する記憶手段と、尖度変化指標と雑音抑圧指標と音響信号のチャネル数とのうちの少なくともひとつの数値を指定する数値指定手段と、記憶手段が記憶する相関と数値指定手段が指定した数値とに応じて第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理の何れかを選択する選択手段とを具備する。以上の構成においては、ミュージカルノイズの発生量の尺度となる尖度変化指標と雑音抑圧指標と音響信号のチャネル数との相関が雑音抑圧処理の選択に利用されるから、雑音抑圧の度合を増加させるという観点や音響信号のチャネル数を削減するという観点に加えて、雑音の抑圧後のミュージカルノイズを低減するという観点から、適切な雑音抑圧処理を選択することが可能である。
本発明の好適な態様において、数値指定手段は、雑音抑圧指標の数値を指定し、選択手段は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理のうち、記憶手段に記憶された相関のもとで、数値指定手段が指定した雑音抑圧指標に対応する尖度変化指標の示す尖度変化が小さい雑音抑圧処理、または、数値指定手段が指定した雑音抑圧指標に対応するチャネル数が少ない雑音抑圧処理を選択する。以上の態様においては、雑音抑圧指標の指定値に応じた雑音抑圧の度合を確保するという条件のもとで、雑音の抑圧後のミュージカルノイズが少ない(尖度変化が少ない)雑音抑圧処理、または、音響信号のチャネル数が少ない雑音抑圧処理を選択することが可能である。
本発明の好適な態様において、数値指定手段は、音響信号のチャネル数を指定し、選択手段は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理のうち、記憶手段に記憶された相関のもとで、数値指定手段が指定したチャネル数に対応する尖度変化指標の示す尖度変化が小さい雑音抑圧処理、または、数値指定手段が指定したチャネル数に対応する雑音抑圧指標の示す雑音抑圧の度合が大きい雑音抑圧処理を選択する。以上の態様においては、音響信号のチャネル数を数値指定手段による指定値に制約するという条件のもとで、雑音抑圧の度合が大きい雑音抑圧処理、または、雑音の抑圧後のミュージカルノイズが少ない雑音抑圧処理を選択することが可能である。
本発明の好適な態様において、数値指定手段は、尖度変化指標の数値を指定し、選択手段は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理のうち、記憶手段に記憶された相関のもとで、数値指定手段が指定した尖度変化指標に対応する雑音抑圧指標の示す雑音抑圧の度合が大きい雑音抑圧処理、または、数値指定手段が指定した尖度変化指標に対応するチャネル数が少ない雑音抑圧処理を選択する。以上の態様においては、雑音の抑圧後のミュージカルノイズを尖度変化指標の指定値に応じた度合に制約するという条件のもとで、雑音抑圧の度合が大きい雑音抑圧処理、または、音響信号のチャネル数が少ない雑音抑圧処理を選択することが可能である。
記憶手段が記憶する相関の内容は例えば以下のように選定される。第1に、記憶手段は、第2雑音抑圧処理については、音響信号のチャネル数が多いほど、尖度変化指標の示す尖度変化の度合が小さくなるように、音響信号のチャネル数と尖度変化指標との相関を記憶し、第1雑音抑圧処理については、尖度変化指標の示す尖度変化の度合が音響信号のチャネル数によらず略一定となるように、音響信号のチャネル数と尖度変化指標との相関を記憶する。第2に、記憶手段は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理の各々について、雑音抑圧指標の示す雑音抑圧の度合が大きいほど、尖度変化指標Kの示す尖度変化の度合が大きくなるように、雑音抑圧指標と尖度変化指標との相関を記憶する。
以上の各態様に係る雑音抑圧処理選択装置は、雑音抑圧処理の選択に専用されるDSP(Digital Signal Processor)などのハードウェア(電子回路)で実現されるほか、CPU(Central Processing Unit)などの汎用の演算処理装置とプログラムとの協働でも実現される。本発明の第1の態様に係るプログラムは、音響信号の強度の度数分布における尖度が雑音抑圧処理の前後で変化する度合を示す尖度変化指標と、雑音抑圧の度合を示す雑音抑圧指標と、雑音抑圧処理に使用される音響信号のチャネル数との相関を、複数の音響信号の加算による目的音の強調後のスペクトルから雑音スペクトルを抑圧する第1雑音抑圧処理と、複数の音響信号の各々を雑音スペクトルの抑圧後に加算することで目的音を強調する第2雑音抑圧処理とについて記憶する記憶手段を具備するコンピュータに、尖度変化指標と雑音抑圧指標と音響信号のチャネル数とのうちの少なくともひとつの数値を指定する数値指定処理と、記憶手段が記憶する相関と数値指定処理で指定した数値とに応じて第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理の何れかを選択する選択処理とを実行させる。以上のプログラムによれば、本発明の各態様に係る雑音抑圧処理選択装置と同様の作用および効果が相される。
また、本発明に係る雑音抑圧装置は、複数の音響信号の加算による目的音の強調後のスペクトルから雑音スペクトルを抑圧する第1雑音抑圧処理を実行する第1雑音抑圧手段と、複数の音響信号の各々を雑音スペクトルの抑圧後に加算することで目的音を強調する第2雑音抑圧処理を実行する第2雑音抑圧手段と、音響信号の強度の度数分布における尖度を算定する尖度算定手段と、尖度が閾値を上回る場合には複数の音響信号に対する第1雑音抑圧処理を第1雑音抑圧手段に実行させ、尖度が閾値を下回る場合には複数の音響信号に対する第2雑音抑圧処理を第2雑音抑圧手段に実行させる制御手段とを具備する。以上の構成においては、音響信号の尖度に応じて雑音抑圧処理が選択されるから、音響信号が採取された環境内の音響的な状況にとって好適な雑音抑圧処理を音響信号の雑音の抑圧に適用できるという利点がある。
本発明に係る雑音抑圧装置は、雑音抑圧処理に専用されるDSP(Digital Signal Processor)などのハードウェア(電子回路)で実現されるほか、CPU(Central Processing Unit)などの汎用の演算処理装置とプログラムとの協働でも実現される。本発明の第2の態様に係るプログラムは、音響信号の強度の度数分布における尖度を算定する尖度算定処理と、尖度が閾値を上回る場合には、複数の音響信号の加算による目的音の強調後のスペクトルから雑音スペクトルを抑圧する第1雑音抑圧処理を実行し、尖度が閾値を下回る場合には、複数の音響信号の各々を雑音スペクトルの抑圧後に加算することで目的音を強調する第2雑音抑圧処理を実行する制御処理とをコンピュータに実行させる。以上のプログラムによれば、本発明に係る雑音抑圧装置と同様の作用および効果が相される。
なお、本発明の第1の態様および第2の態様に係るプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で利用者に提供されてコンピュータにインストールされるほか、通信網を介した配信の形態でサーバ装置から提供されてコンピュータにインストールされる。
雑音抑圧装置のブロック図である。 第1雑音抑圧部のブロック図である。 第2雑音抑圧部のブロック図である。 音響信号の強度の度数分布の形状が雑音成分の抑圧の前後で変化する様子を示す概念図である。 第1実施形態に係る雑音抑圧処理選択装置のブロック図である。 尖度変化指標と音響信号のチャネル数との相関を第1雑音抑圧処理と第2雑音抑圧処理とについて示すグラフである。 第2実施形態に係る雑音抑圧装置のブロック図である。 変形例に係る雑音抑圧装置のブロック図である。
<A:第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る雑音抑圧処理選択装置は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理の何れかを選択する。そこで、雑音抑圧処理選択装置の説明に先立ち、第1雑音抑圧処理と第2雑音抑圧処理とについて詳述する。
<雑音抑圧処理の内容>
図1は、雑音抑圧装置のブロック図である。図1に示すように、雑音抑圧装置101にはJ個(Jは2以上の自然数)の収音機器M1〜MJが接続される。収音機器M1〜MJの各々は、相互に間隔をあけて平面内に配列されてマイクロホンアレイを構成する。収音機器Mj(j=1〜J)は、周囲から到来する音響の時間的な波形を表す音響信号Vj(V1〜VJ)を生成する。
目的音と雑音との混合音が周囲から収音機器M1〜MJに到来する。目的音は、所定(既知)の方向D0から収音機器M1〜MJに到来する音響(例えば音声や楽音)である。例えば利用者の発話音が入力される電子機器(典型的には携帯電話機)に雑音抑圧装置101が搭載される場合、電子機器の筐体に対して正面の方向D0から目的音(発話音)が到来する。雑音は、目的音とは別方向から到来する音響である。
雑音抑圧装置101は、音響信号V1〜VJに対する雑音抑圧処理(第1雑音抑圧処理または第2雑音抑圧処理)で音響信号VOUTを生成する。雑音抑圧装置101は、雑音抑圧用のプログラムを実行する演算処理装置(CPU)や、雑音抑圧に専用される電子回路(DSP)で実現される。雑音抑圧装置101が生成した音響信号VOUTは、放音機器(例えばスピーカやヘッドホン)90に供給されることで音波として再生される。
図1に示すように、雑音抑圧装置101は、周波数分析部12と雑音抑圧部14と波形合成部16とを含んで構成される。周波数分析部12は、音響信号Vjを時間軸上で区分した複数のフレームの各々について周波数スペクトルXj(m,n)(X1(m,n)〜XJ(m,n))を生成する。記号nは、周波数軸上に離散的に設定された複数の周波数のうち第n番目の周波数を意味する。符号mはフレームの番号に相当する。
雑音抑圧部14は、各フレームの周波数スペクトルX1(m,n)〜XJ(m,n)(音響信号V1〜VJ)に対して雑音抑圧処理を実行することで、雑音が抑圧された周波数スペクトルY(m,n)をフレーム毎に生成する。波形合成部16は、雑音抑圧部14がフレーム毎に生成した周波数スペクトルY(m,n)の時系列から時間領域の音響信号VOUTを合成する。具体的には、波形合成部16は、周波数スペクトルY(m,n)の逆フーリエ変換で算定した時間領域の信号を複数のフレームについて時間軸上で重複させることで音響信号VOUTを算定する。
図2の第1雑音抑圧部141または図3の第2雑音抑圧部142が図1の雑音抑圧部14として採用される。図2の第1雑音抑圧部141は第1雑音抑圧処理を実行し、図3の第2雑音抑圧部142は第2雑音抑圧処理を実行する。第1雑音抑圧処理は、音響信号V1〜VJ(周波数スペクトルX1(m,n)〜XJ(m,n))の加算による目的音の強調後の周波数スペクトルQ(m,n)から雑音スペクトルψ(m,n)を抑圧する処理である。他方、第2雑音抑圧処理は、音響信号V1〜VJ(周波数スペクトルX1(m,n)〜XJ(m,n))の各々から雑音スペクトルψj(m,n)を抑圧したJ個の周波数スペクトルR1(m,n)〜RJ(m,n)の加算で目的音を強調する処理である。
図2に示すように、第1雑音抑圧部141は、目的音強調部22と雑音推定部24と抑圧処理部26とを含んで構成される。目的音強調部22は、目的音を強調した周波数スペクトルQ(m,n)を周波数スペクトルX1(m,n)〜XJ(m,n)から生成する。具体的には、周波数スペクトルX1(m,n)〜XJ(m,n)を遅延後に加算することで周波数スペクトルQ(m,n)を生成する遅延加算型(DS:delay-sum)型のビームフォーマが目的音強調部22として利用される。各周波数スペクトルXj(m,n)に付与される遅延量は、方向D0の目的音が強調される(すなわち、方向D0にビームが形成される)ように、収音機器Mjの位置に応じて設定される。
雑音推定部24は、周波数スペクトルX1(m,n)〜XJ(m,n)から雑音スペクトル(パワースペクトル)ψ(m,n)を生成する。雑音スペクトルψ(m,n)の生成には、例えば独立成分分析(ICA:independent component analysis)による音源分離が利用される。具体的には、雑音推定部24は、分離行列で分離される第1分離信号(目的音を強調した信号)と第2分離信号(雑音を強調した信号)とが統計的に独立するように分離行列を逐次的に更新(学習)し、学習後の分離行列で生成された第2分離信号から雑音スペクトルψ(m,n)を生成する。
抑圧処理部26は、周波数スペクトルQ(m,n)から雑音スペクトルψ(m,n)を減算(スペクトルサブトラクション)することで周波数スペクトルY(m,n)を生成する。周波数スペクトルY(m,n)は、振幅スペクトルP(m,n)1/2と周波数スペクトルQ(m,n)の位相θq(n)とから以下の数式(1)で算定される。
Y(m,n)={P(m,n)}1/2・ejθq(n) ……(1)
数式(1)のパワースペクトルP(m,n)は以下の数式(2a)および数式(2b)で算定される。
Figure 0005376635

すなわち、周波数スペクトルQ(m,n)の強度(パワー)|Q(m,n)|が所定値(係数αと雑音スペクトルψ(m,n)との乗算値)を上回る場合、パワースペクトルP(m,n)は、数式(2a)に示すように強度|Q(m,n)|から所定値α・ψ(m,n)を減算した数値(|Q(m,n)|−α・ψ(m,n))に設定される。他方、強度|Q(m,n)|が所定値α・ψ(m,n)を下回る場合、パワースペクトルP(m,n)は、数式(2b)に示すように雑音スペクトルψ(m,n)と係数βとの乗算値(β・ψ(m,n))に設定される。
次に、図3の第2雑音抑圧部142について説明する。第2雑音抑圧部142は、音響信号V1〜VJのチャネル数(収音機器M1〜MJの個数)に相当するJ個の抑圧処理部32(32-1〜32-J)と、雑音推定部34および目的音強調部36とを含んで構成される。雑音推定部34は、音響信号V1〜VJの各々について(すなわちチャネル毎に)雑音スペクトルψj(m,n)(ψ1(m,n)〜ψJ(m,n))を周波数スペクトルX1(m,n)〜XJ(m,n)から算定する。雑音スペクトルψj(m,n)は、音響信号Vjに含まれる雑音のパワースペクトルである。
雑音推定部34による雑音スペクトルψ1(m,n)〜ψJ(m,n)の推定には、SIMO(single-input multiple-output)モデルを利用した独立成分分析(SIMO-ICA)や、独立成分分析と射影法との組合わせが好適に採用される。SIMO-ICAについては、T. Takatani, et al., "High-fidelity blind separation of acoustic signals using SIMO-model-based independent component analysis," IEICE Trans., Fundamentals, vol. E87-A, no. 8, p.2063-2072, 2004に開示され、独立成分分析と射影法との組合わせについては、S. Ikeda and N. Murata, "A method of ICA in the frequency domain," Proc. Intern. Workshop on ICA and BSS, p. 365-371, 1999に開示されている。
第j番目の抑圧処理部32-jは、周波数スペクトルXj(m,n)から雑音スペクトルψj(m,n)を減算することで周波数スペクトルRj(m,n)(R1(m,n)〜RJ(m,n))を生成する。すなわち、音響信号Vのチャネル毎に個別に雑音が抑圧される。周波数スペクトルRj(m,n)の算定には、図2の抑圧処理部26による周波数スペクトルY(m,n)の算定と同様の方法が採用される。具体的には、周波数スペクトルRj(m,n)は、振幅スペクトルPj(m,n)1/2と周波数スペクトルXj(m,n)の位相θx(n)とから以下の数式(3)で算定される。
Rj(m,n)={Pj(m,n)}1/2・ejθx(n) ……(3)
数式(3)のパワースペクトルPj(m,n)は以下の数式(4a)および数式(4b)で算定される。
Figure 0005376635

すなわち、パワースペクトルPj(m,n)は、周波数スペクトルXj(m,n)の強度|Xj(m,n)|が所定値α・ψj(m,n)を上回る場合には、強度|Xj(m,n)|から所定値α・ψj(m,n)を減算した数値(|Xj(m,n)|−α・ψj(m,n))に設定され(数式(4a))、強度|Xj(m,n)|が所定値α・ψj(m,n)を下回る場合には雑音スペクトルψj(m,n)と係数βとの乗算値(β・ψj(m,n))に設定される(数式(4b))。
数式(2a)および数式(4a)の係数α(減算係数)や数式(2b)および数式(4b)の係数β(フロアリング係数)は、雑音抑圧の度合(雑音抑圧の性能)を決定する変数である。すなわち、減算係数αが大きいほど雑音抑圧の度合は大きく、フロアリング係数が小さいほど雑音抑圧の度合は大きい。
図3の目的音強調部36は、目的音を強調した周波数スペクトルY(m,n)を周波数スペクトルR1(m,n)〜RJ(m,n)から生成する。具体的には、周波数スペクトルR1(m,n)〜RJ(m,n)を遅延後に加算することで周波数スペクトルY(m,n)を生成する遅延加算型のビームフォーマが目的音強調部36として利用される。各周波数スペクトルRj(m,n)に付与される遅延量は、方向D0の目的音が強調される(すなわち方向D0にビームが形成される)ように、収音機器Mjの位置に応じて設定される。
ところで、第1雑音抑圧部141や第2雑音抑圧部142が生成する周波数スペクトルY(m,n)の時系列には、第1雑音抑圧処理(雑音スペクトルψ(m,n)の減算)や第2雑音抑圧処理(雑音スペクトルψj(m,n)の減算)後に残存した高強度の成分(孤立点)が時間軸上および周波数軸上に点在し、人工的で耳障りなミュージカルノイズとして受聴者に知覚されるという問題がある。
図4の部分(A)は、雑音の抑圧前の所定個のフレームにわたる強度(例えば、第1雑音抑圧処理における周波数スペクトルQ(m,n)の強度や、第2雑音抑圧処理における周波数スペクトルX1(m,n)〜XJ(m,n)の強度)の度数分布(強度を確率変数とする確率密度関数)FAのグラフである。図4の部分(A)に示すように、雑音の抑圧前に各強度が発生する度数(確率)は、強度がゼロから増加するほど減少するように非線形に分布する。
図4の部分(B)は、雑音の抑圧後の所定個のフレームにわたる強度(例えば、第1雑音抑圧処理における周波数スペクトルY(m,n)の強度や、第2雑音抑圧処理における周波数スペクトルR1(m,n)〜RJ(m,n)の強度)の度数分布(確率密度関数)FBのグラフである。強度がゼロに近い数値となる度数(確率)は雑音抑圧処理で増加するから、雑音の抑圧後における度数分布FBのうち強度がゼロの近傍となる区間内の分布は、雑音の抑圧前の度数分布FAと比較して急峻な形状となる。度数分布の形状(傾斜の急峻度)の尺度として尖度(kurtosis)を導入すると、雑音の抑圧後の度数分布FBの尖度KBmは抑圧前の度数分布FAの尖度KAmよりも高い数値となる。尖度がガウス性の尺度であることを考慮すると、音響信号Vのうち強度の度数分布のガウス性が高い雑音(定常的な雑音)が雑音抑圧処理によって抑圧されることで度数分布の非ガウス性が増加すると理解される。ミュージカルノイズは非ガウス性が強い雑音(ゼロの付近の強度の度数が高い雑音)であるから、雑音抑圧処理の前後で尖度が増加するほどミュージカルノイズが顕在化するという傾向がある。
第1雑音抑圧処理においては、目的音強調部22による加算後の周波数スペクトルQ(m,n)から雑音スペクトルψ(m,n)が減算されるから、周波数スペクトルY(m,n)の時系列(音響信号VOUT)における強度の度数分布においては高い非ガウス性が維持される。他方、第2雑音抑圧処理においては、各抑圧処理部32(32-1〜32-J)による雑音スペクトルψj(m,n)の減算で強度の度数分布の非ガウス性が増加するものの、減算後の周波数スペクトルR1(m,n)〜RJ(m,n)の加算で強度の度数分布の非ガウス性は減少する(中心極限定理)。したがって、第2雑音抑圧処理には、第1雑音抑圧処理と比較してミュージカルノイズの発生を抑制できるという傾向がある。以上が第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理の詳細である。
<雑音抑圧処理選択装置の構成>
第1実施形態に係る雑音抑圧処理選択装置は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理のうち利用者が指示した条件のもとで最適な雑音抑圧処理を選択する。図5に示すように、雑音抑圧処理選択装置200には入力装置62と出力装置64とが接続される。入力装置62は、雑音抑圧処理選択装置200に対する指示や数値の入力のために利用者が操作する複数の操作子を含む。出力装置64は、雑音抑圧処理選択装置200による処理の結果(すなわち雑音抑圧処理選択装置200が選択した雑音抑圧処理)を利用者に報知する機器(例えば音声を出力する放音機器や画像を表示する表示機器)である。利用者は、自身が指示した条件にとって好適な雑音抑圧処理を出力装置64からの報知で知得する。
図5に示すように、雑音抑圧処理選択装置200は、演算処理装置42と記憶装置44とを含むコンピュータシステムで実現される。記憶装置44は、雑音抑圧処理を選択するためのプログラムや各種のデータを記憶する。半導体記録媒体や磁気記録媒体などの公知の記録媒体が記憶装置44として任意に採用される。
記憶装置44は、尖度変化指標Kと雑音抑圧指標Sと音響信号V(V1〜VJ)のチャネル数(収音機器Mの個数)Jとの相関C(C1,C2)を第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理の各々について記憶する。相関C1は、第1雑音抑圧処理における尖度変化指標Kと雑音抑圧指標Sとチャネル数Jとの関係であり、相関C2は、第2雑音抑圧処理における尖度変化指標Kと雑音抑圧指標Sとチャネル数Jとの関係である。
尖度変化指標Kは、音響信号Vの強度の度数分布F(FA,FB)の尖度が雑音抑圧処理の前後で変化する度合を示す指標(尺度)である。本形態の尖度変化指標Kは、雑音抑圧処理の実行後の尖度KBmと雑音抑圧処理の実行前の尖度KAmとの差分値(尖度差)として定義される(K=KBm−KAm)。すなわち、雑音抑圧処理の前後にわたる尖度変化が大きいほど尖度変化指標Kは大きい数値となる。図4を参照して説明したように雑音抑圧処理の前後にわたる尖度変化が大きいほどミュージカルノイズの発生量は多いから、尖度変化指標Kが大きいほどミュージカルノイズの発生量が多いと評価できる。すなわち、尖度変化指標Kは、雑音抑圧処理に起因して発生するミュージカルノイズの度合の尺度に相当する。
雑音抑圧指標Sは、雑音抑圧の度合を示す指標(尺度)である。数式(2a),(2b)および数式(4a),(4b)の説明とともに前述した通り、雑音抑圧の度合は、数式(2a)および数式(4a)の減算係数αや数式(2b)および数式(4b)のフロアリング係数βに依存する。そこで、本形態においては、フロアリング係数βを雑音抑圧指標Sとして利用する。フロアリング係数βが小さいほど雑音抑圧の度合は大きいから、雑音抑圧指標Sが小さいほど雑音抑圧の度合が大きいという傾向がある。
図6は、尖度変化指標Kと音響信号Vのチャネル数Jとの相関を第1雑音抑圧処理と第2雑音抑圧処理とについて示すグラフである。第1雑音抑圧処理については、雑音抑圧指標Sを変化させた各場合について尖度変化指標Kとチャネル数Jとの相関が図示されている。
図6から理解されるように、第1雑音抑圧処理においては、音響信号Vのチャネル数Jが変化しても尖度変化指標Kは殆ど変化しない。他方、第2雑音抑圧処理の尖度変化指標Kとチャネル数Jとの間には、チャネル数Jが多いほど尖度変化指標Kが小さい(尖度変化の度合が小さい)という相関がある。すなわち、チャネル数Jが多いほど第2雑音抑圧処理に起因したミュージカルノイズの発生は抑制される。
また、第1雑音抑圧処理の雑音抑圧指標Sと尖度変化指標Kとの間には、雑音抑圧指標Sが小さい(雑音抑圧の度合が大きい)ほど尖度変化指標Kが大きいという相関がある。したがって、第1雑音抑圧処理による雑音抑圧の度合が小さい(雑音抑圧指標Sが大きい)ほど、第1雑音抑圧処理に起因したミュージカルノイズの発生は抑制される。図6には図示されていないが、第2雑音抑圧処理についても同様に、雑音抑圧指標S(フロアリング係数β)が大きいほど尖度変化指標Kが小さい(ミュージカルノイズの発生が抑制される)という相関がある。
雑音抑圧指標Sとチャネル数Jとを変化させた各場合について尖度変化指標Kを実測または演算(シミュレーション)することで雑音抑圧処理毎に以上のような相関Cが特定される。そして、第1雑音抑圧処理について特定された相関C1と第2雑音抑圧処理について特定された相関C2とが記憶装置44に格納される。例えば、尖度変化指標Kと雑音抑圧指標Sとチャネル数Jとの各数値を対応させたテーブルを記憶装置44に格納した構成や、尖度変化指標Kと雑音抑圧指標Sとチャネル数Jとの相関を定義(近似)する関数を記憶装置44に格納した構成が好適である。
図5の演算処理装置42は、記憶装置44に記憶されたプログラムを実行することで複数の要素(数値指定部52および選択部54)として機能する。なお、雑音抑圧処理の選択に専用される電子回路(DSP)が演算処理装置42の各要素を実現する構成や、演算処理装置42の各要素を複数の集積回路に分散的に搭載した構成も採用される。
数値指定部52は、利用者からの指示に応じて雑音抑圧処理の条件を可変に指定する。利用者は、入力装置62を適宜に操作することで、尖度変化指標Kと雑音抑圧指標Sとチャネル数Jとから何れかの変数を選択したうえで当該変数の数値を入力する。例えば、雑音の抑圧後に発生するミュージカルノイズの抑制を優先させる必要がある場合、利用者は、尖度変化指標Kを選択して所望の数値を指示する。また、利用者は、雑音抑圧の度合を優先させる必要がある場合には雑音抑圧指標Sの数値を指示し、収音機器Mの個数を優先させる必要がある場合(例えば費用面から収音機器Mの個数が制約される場合)にはチャネル数Jの数値を指示する。数値指定部52は、尖度変化指標Kと雑音抑圧指標Sとチャネル数Jとのうち利用者が選択した変数の数値を利用者からの指示に応じた数値に設定する。
選択部54は、記憶装置44が記憶する相関C(C1,C2)と数値指定部52が指定する条件とに応じて第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理の何れかを選択する。概略的には、選択部54は、数値指定部52が指定する条件のもとで、尖度変化指標Kの示す尖度変化が小さく(すなわち、ミュージカルノイズが少なく)、雑音抑圧指標Sの示す雑音抑圧の度合が大きく、または、音響信号Vのチャネル数Jが少ない、という条件を満たす雑音抑圧処理を、記憶装置44に格納された相関Cを参照することで決定する。
利用者が雑音抑圧指標Sの数値を指示した場合とチャネル数Jを指示した場合と尖度指標値Kの数値を指示した場合とに区分して、選択部54の具体的な動作を以下に説明する。なお、第2雑音抑圧処理においては音響信号Vのチャネル毎に雑音スペクトルψj(m,n)の減算が実行されるから、第1雑音抑圧処理と比較して演算量が多い。そこで、第2雑音抑圧処理での演算量を削減するという観点から、以下では、第2雑音抑圧処理における数式(4b)のフロアリング係数β(第2雑音抑圧処理の雑音抑圧指標S)をゼロに設定した場合(すなわち、図6に実線で例示された場合)を想定する。
[1]数値指定部52が雑音抑圧指標Sの数値を指定した場合
利用者からの指示に応じて数値指定部52が雑音抑圧指標Sの数値を指定した場合、選択部54は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理のうち、数値指定部52が指定した雑音抑圧指標Sが得られるという条件のもとで、尖度変化指標Kの示す尖度変化が小さい(ミュージカルノイズが少ない)雑音抑圧処理、またはチャネル数Jが少ない雑音抑圧処理を、記憶装置44に格納された相関C(C1,C2)を参照することで決定する。
利用者は、尖度変化指標Kおよびチャネル数Jの一方の数値を入力装置62から指示する。数値指定部52は、尖度変化指標Kまたはチャネル数Jの数値を利用者からの指示に応じて雑音抑圧指標Sとともに指定する。数値指定部52が雑音抑圧指標Sおよびチャネル数Jの数値を指定した場合と雑音抑圧指標Sおよび尖度変化指標Kの数値を指定した場合とに区分して、選択部54の動作を以下に詳述する。なお、以下の例示においては、第1雑音抑圧処理の雑音抑圧指標S(数式(2a)のフロアリング係数β)が0.2に指定された場合を想定する。前述の通り第2雑音抑圧処理の雑音抑圧指標Sはゼロである。
[1A]雑音抑圧指標Sおよびチャネル数Jの数値が指定された場合
雑音抑圧指標Sおよびチャネル数Jの数値を数値指定部52が利用者からの指示に応じて指定した場合、選択部54は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理のうち、相関C(C1,C2)のもとで雑音抑圧指標Sおよびチャネル数Jの指定値に対応する尖度変化指標Kが小さい雑音抑圧処理を選択する。
例えば、数値指定部52がチャネル数Jを3以下の数値に設定した場合、図6に示すように、第1雑音抑圧処理の尖度変化指標Kは6に維持されるのに対して第2雑音抑圧処理の尖度変化指標Kは6を上回る。したがって、選択部54は、尖度変化指標Kが小さい(すなわちミュージカルノイズが少ない)第1雑音抑圧処理を選択する。他方、数値指定部52がチャネル数Jを4以上の数値に設定した場合、図6に示すように、第1雑音抑圧処理の尖度変化指標Kは6に維持されるのに対して第2雑音抑圧処理の尖度変化指標Kは6を下回る。したがって、選択部54は、尖度変化指標Kが小さい第2雑音抑圧処理を選択する。
[1B]雑音抑圧指標Sおよび尖度変化指標Kの数値が指定された場合
雑音抑圧指標Sおよび尖度変化指標Kの数値を数値指定部52が利用者からの指示に応じて指定した場合、選択部54は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理のうち、相関C(C1,C2)のもとで雑音抑圧指標Sおよび尖度変化指標Kの指定値に対応するチャネル数Jが小さい雑音抑圧処理を選択する。
例えば、数値指定部52が尖度変化指標Kを6に指定した場合、図6に示すように、第2雑音抑圧処理のもとで尖度変化指標Kを6以下に抑制するためにはチャネル数Jを3以上とする必要があるのに対して第1雑音抑圧処理ではチャネル数Jは3以下で足りる。したがって、選択部54は第1雑音抑圧処理を選択する。他方、数値指定部52による尖度変化指標Kの指定値が6を上回る場合、図6に示すように、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理の何れでも同じチャネル数J(J=2)で尖度変化指標Kは指定値となる。ただし、第2雑音抑圧処理よりも第1雑音抑圧処理の方が尖度変化指標Kが小さいから、選択部54は、第1雑音抑圧処理を選択する。また、図6に示すように、第1雑音抑圧処理では尖度変化指標Kを6未満に抑制できないから、数値指定部52による尖度変化指標Kの指定値が6を下回る場合、選択部54は第2雑音抑圧処理を選択する。
[2]数値指定部52が音響信号Vのチャネル数Jを指定した場合
利用者からの指示に応じて数値指定部52がチャネル数Jを指定した場合、選択部54は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理のうち、数値指定部52が指定したチャネル数Jの音響信号V1〜VJを雑音抑圧処理に使用するという条件のもとで、尖度変化指標Kの示す尖度変化が小さい雑音抑圧処理、または雑音抑圧指標Sの示す雑音抑圧の度合が大きい雑音抑圧処理を、記憶装置44に格納された相関C(C1,C2)を参照することで決定する。
利用者は、雑音抑圧指標Sおよび尖度変化指標Kの一方の数値を入力装置62から指示する。数値指定部52は、雑音抑圧指標Sまたは尖度変化指標Kの数値を利用者からの指示に応じてチャネル数Jとともに指定する。数値指定部52がチャネル数Jおよび雑音抑圧指標Sの数値を指定した場合、選択部54は、前述の項目[1A]と同様の動作で第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理の何れかを選択する。
他方、数値指定部52がチャネル数Jおよび尖度変化指標Kの数値を指定した場合、選択部54は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理のうち、相関Cのもとでチャネル数Jおよび尖度変化指標Kの指定値に対応する雑音抑圧指標Sが小さい(雑音抑圧の度合が大きい)雑音抑圧処理を選択する。例えば、数値指定部52がチャネル数Jを4に設定するとともに尖度変化指標Kを4に指定した場合、図6に示すように、第2雑音抑圧処理では雑音抑圧指標S(フロアリング係数β)をゼロに設定できるのに対して第1雑音抑圧処理では雑音抑圧指標Sを約0.3に設定する必要がある。したがって、選択部54は、雑音抑圧指標Sの示す雑音抑圧の度合が大きい(フロアリング係数βが小さい)第2雑音抑圧処理を選択する。
[3]数値指定部52が尖度変化指標Kの数値を指定した場合
利用者からの指示に応じて数値指定部52が尖度変化指標Kの数値を指定した場合、選択部54は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理のうち、数値指定部52が指定した尖度変化指標Kが得られるという条件のもとで、雑音抑圧指標Sの示す雑音抑圧の度合が大きい雑音抑圧処理、またはチャネル数Jが少ない雑音抑圧処理を、記憶装置44に格納された相関C(C1,C2)を参照することで決定する。
利用者は、雑音抑圧指標Sおよびチャネル数Jの何れを優先させるかを入力装置62から指示する。雑音抑圧指標Sの優先が指示された場合とチャネル数Jの優先が指示された場合とに区分して、選択部54の動作を以下に説明する。
[3A]雑音抑圧指標Sを優先する場合
雑音抑圧指標Sの優先が利用者から指示された場合、選択部54は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理のうち、相関C(C1,C2)のもとで尖度変化指標Kの指定値に対応する雑音抑圧指標Sが小さい(雑音抑圧の度合が大きい)雑音抑圧処理を選択する。
例えば、数値指定部52が尖度変化指標Kを2に指定した場合、図6に示すように、第2雑音抑圧処理では雑音抑圧指標S(フロアリング係数β)をゼロに設定できるのに対して第1雑音抑圧処理では雑音抑圧指標Sを0.6に設定する必要がある。したがって、選択部54は、雑音抑圧指標Sの示す雑音抑圧の度合が大きい第2雑音抑圧処理を選択する。
[3B]チャネル数Jを優先する場合
チャネル数Jの優先が利用者から指示された場合、選択部54は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理のうち、相関C(C1,C2)のもとで尖度変化指標Kの指定値に対応するチャネル数Jが小さい雑音抑圧処理を選択する。
例えば、数値指定部52が尖度変化指標Kを2に指定した場合、図6に示すように、第2雑音抑圧処理ではチャネル数Jを10以上に設定する必要があるのに対し、第1雑音抑圧処理では、雑音抑圧指標Sを0.6に設定した場合にチャネル数Jは10以下で足りる。したがって、選択部54は、チャネル数Jが少ない第1雑音抑圧処理を選択する。
以上に説明したように、第1実施形態においては、尖度変化指標Kと雑音抑圧指標Sとチャネル数Jとの相関C(C1,C2)が雑音抑圧処理の選択に利用されるから、尖度変化指標Kの示す尖度変化が小さく、雑音抑圧指標Sの示す雑音抑圧の度合が大きく、または、音響信号Vのチャネル数Jが小さいという観点から最適な雑音抑圧処理を利用者に提案することが可能である。特に、尖度変化指標Kが雑音抑圧処理の選択に適用されるから、ミュージカルノイズの低減(再生音の音質の改善)にとって好適な雑音抑圧処理を選択できるという利点がある。
また、尖度変化指標Kと雑音抑圧指標Sとチャネル数Jとから選択された変数が数値指定部52による指定値に設定されるように雑音抑圧処理が選択されるから、雑音抑圧処理に対する利用者の要求(尖度変化指標Kと雑音抑圧指標Sとチャネル数Jとの何れを優先させるか)のもとで最適な雑音抑圧処理を選択することが可能である。
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、尖度変化指標Kと雑音抑圧指標Sとチャネル数Jとについて図6に例示した相関を利用することで最適な雑音抑圧処理を実行する雑音抑圧装置である。なお、以下の各形態において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
図7は、第2実施形態に係る雑音抑圧装置のブロック図である。雑音抑圧装置102には、図1の雑音抑圧装置101と同様にJ個の収音機器M1〜MJが接続される。なお、以下の説明ではチャネル数J(収音機器Mの個数)が4である場合を想定する。雑音抑圧装置102は、収音機器M1〜MJが生成する音響信号V1〜VJに第1雑音抑圧処理または第2雑音抑圧処理を実行することで音響信号VOUTを生成する。音響信号VOUTは、放音機器90に供給されることで音波として再生される。
図7に示すように、雑音抑圧装置102は、演算処理装置72と記憶装置74とを含むコンピュータシステムで実現される。記憶装置74は、雑音抑圧処理を選択および実行するためのプログラムや各種のデータを記憶する。半導体記録媒体や磁気記録媒体などの公知の記録媒体が記憶装置74として任意に採用される。
演算処理装置72は、記憶装置74に記憶されたプログラムを実行することで複数の要素(周波数分析部12,波形合成部16,雑音抑圧部82,制御部84,尖度算定部86)として機能する。なお、雑音抑圧処理の選択および実行に専用される電子機器(DSP)が演算処理装置72の各要素を実現する構成や、演算処理装置72の各要素を複数の集積回路に分散的に搭載した構成も採用される。
周波数分析部12は、図1を参照して説明したように、音響信号V1〜VJから各フレームの周波数スペクトルX1(m,n)〜XJ(m,n)を生成する。雑音抑圧部82は、第1雑音抑圧部141と第2雑音抑圧部142とを含んで構成される。第1雑音抑圧部141の構成は図2の例示と同様である。すなわち、第1雑音抑圧部141は、周波数スペクトルX1(m,n)〜XJ(m,n)(音響信号V1〜VJ)に第1雑音抑圧処理を実行することで周波数スペクトルY(m,n)をフレーム毎に生成する。第2雑音抑圧部142の構成は図3の例示と同様である。すなわち、第2雑音抑圧部142は、周波数スペクトルX1(m,n)〜XJ(m,n)(音響信号V1〜VJ)に第2雑音抑圧処理を実行することで周波数スペクトルY(m,n)をフレーム毎に生成する。
図7の制御部84は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理を選択的に雑音抑圧部82に実行させる。制御部84は、選択部842と切替部844とを含んで構成される。選択部842は、第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理の何れかをフレーム毎に選択する。切替部844は、選択部842が第1雑音抑圧処理を選択した場合には第1雑音抑圧部141に周波数スペクトルX1(m,n)〜XJ(m,n)を出力し、選択部842が第2雑音抑圧処理を選択した場合には第2雑音抑圧部142に周波数スペクトルX1(m,n)〜XJ(m,n)を出力する。したがって、選択部842が選択した雑音抑圧処理で生成された周波数スペクトルY(m,n)がフレーム毎に波形合成部16に供給される。波形合成部16は、図1を参照して説明したように、周波数スペクトルY(m,n)の時系列から時間領域の音響信号VOUTを合成する。
選択部842は、音響信号VK(音響信号V1〜VJの何れか)の尖度KAmに応じて第1雑音抑圧処理および第2雑音抑圧処理の何れかをフレーム毎に選択する。図7の尖度算定部86は、選択部842が雑音抑圧処理の選択に使用する尖度KAmを周波数スペクトルXK(m,n)(すなわち、音響信号VKの周波数スペクトル)からフレーム毎に算定する。尖度KAmと雑音抑圧処理の選択との関係について以下に詳述する。
第1雑音抑圧処理について図6に例示したように、雑音抑圧指標Sが示す雑音抑圧の度合が大きい(フロアリング係数βが小さい)ほど尖度変化指標Kは大きい数値となる。すなわち、雑音抑圧の度合が大きいほど、抑圧後のミュージカルノイズの発生量は多い(尖度KBmが高い)。第2雑音抑圧処理についても同様に、雑音抑圧の度合が大きいほどミュージカルノイズの発生量は多くなる(尖度KBmが高くなる)という傾向がある。
ただし、尖度変化指標Kを所望の数値に維持する(ミュージカルノイズの発生を所望の度合に抑制する)ために必要な雑音抑圧指標Sは、図6から理解されるように、第2雑音抑圧処理のほうが第1雑音抑圧処理よりも低い。すなわち、第2雑音抑圧処理には、第1雑音抑圧処理と比較して、雑音抑圧の度合を高目に維持し易い(具体的には、雑音抑圧の度合を高く維持した場合でもミュージカルノイズを低減できる)という利点がある。他方、第1雑音抑圧処理には、第2雑音抑圧処理と比較して処理量が少ない(したがって消費電力が少ない)という利点がある。
いま、音響信号VKの尖度KAmが低下した場合を想定すると、尖度変化指標K(K=KBm−KAm)を、ミュージカルノイズが所望の度合に抑制される数値に維持するためには、雑音の抑圧後の尖度KBmを低い数値に設定する必要がある。前述の通り、雑音の抑圧後の尖度KBmを低い数値に維持するためには雑音抑圧の度合を抑制する(フロアリング係数βを大きい数値に設定する)必要がある。しかし、雑音抑圧の度合が抑制されるほど音響信号VOUTのSN比は低下する。したがって、音響信号VKの尖度KAmが低い場合には、雑音抑圧の度合を高目に維持し易い第2雑音抑圧処理が第1雑音抑圧処理よりも好適である。
他方、音響信号VKの尖度KAmが上昇した場合、雑音の抑圧後の尖度KBmが増加してもミュージカルノイズの発生は所望の度合に維持される。すなわち、尖度KAmが高い場合には、第2雑音抑圧処理の利用で音響信号VOUTのSN比を高めなくても(すなわち雑音抑圧の度合を低目に設定した場合でも)、ミュージカルノイズの発生は所望の度合に抑制される。したがって、音響信号VKの尖度KAmが高い場合には、雑音抑圧の処理量を削減し易い第1雑音抑圧処理が第2雑音抑圧処理よりも好適である。
以上の傾向を考慮して、図7の選択部842は、音響信号VKの尖度KAmが所定の閾値KTHを上回る場合には第1雑音抑圧処理(第1雑音抑圧部141)を選択し、音響信号VKの尖度KAmが閾値KTHを下回る場合には第2雑音抑圧処理(第2雑音抑圧部142)を選択する。尖度KAmが閾値KTHを上回る場合および下回る場合の双方において雑音抑圧の度合とミュージカルノイズの発生量とが適度に両立するように、閾値KTHは実験的または統計的に選定される。
次に、M個の強度x1〜xMの度数分布における尖度κ(KAm)について詳述する。尖度κは、n次のモーメントμnから以下の数式(5)で算定される高次統計量である。
Figure 0005376635

M個の強度x1〜xMの度数分布(確率密度関数)は、以下の数式(6)の関数Ga(x;k,θ)で近似される。
Figure 0005376635


数式(6)の係数Cは、ガンマ関数Γ(k)を利用して以下のように定義される。
Figure 0005376635

2次のモーメントμ2の定義式における分布関数(確率密度関数)P(x)を数式(6)の関数Ga(x;k,θ)に置換することで以下の数式(7)が導出される。
Figure 0005376635

2次のモーメントμ2の導出と同様に、4次のモーメントμ4の定義式における分布関数P(x)を数式(6)の関数Ga(x;k,θ)に置換することで以下の数式(8)が導出される。
Figure 0005376635

数式(7)の2次のモーメントμ2と数式(8)の4次のモーメントμ4とを数式(5)に代入すると、尖度κを定義する以下の数式(9)が導出される。
Figure 0005376635

図7の尖度算定部86は、第m番目のフレームを含む所定個のフレームにわたる周波数スペクトルX1(m,n)〜XJ(m,n)のM個の強度x1〜xMについて数式(9)を演算することで尖度KAmを算定する。もっとも、尖度κを算定する方法は以上の例示に限定されない。例えば、強度x1〜xMの度数分布を所定の関数(例えば数式(6))で近似する構成は必須ではない。
以上の形態においては、音響信号VKの尖度KAmに応じて選択された雑音抑圧処理が実行されるから、収音機器M1〜MJが設置された環境内の音響的な状況にとって好適な雑音抑圧処理で音響信号VOUTを生成できるという利点がある。
例えばいま、空調設備の動作音などの定常的な雑音と多数の発声音の混合音などの定常性が低い雑音とが混在する環境(例えば展示会の会場)を想定する。多くの発声者が存在する場合、音響信号VKの尖度KAmは低い数値となるから(中心極限定理)、選択部842は第2雑音抑圧処理を選択する。したがって、音響信号VOUTのSN比を高く維持しながらミュージカルノイズを所望の度合に抑制できる。他方、発声者の人数が減少した場合(例えばお昼時)、多数の発声者が存在する場合と比較して音響信号VKの尖度KAmが高い数値となるから、選択部842は第1雑音抑圧処理を選択する。したがって、音響信号VOUTのSN比の確保とミュージカルノイズの抑制とを適度に両立しながら、第2雑音抑圧処理が選択された場合と比較して雑音抑圧装置102による処理量(さらには消費電力)を削減することが可能である。
<C:変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を組合わせた構成も好適である。
(1)変形例1
以上の各形態においては、雑音の抑圧前の尖度KAmと抑圧後の尖度KBmとの差分値を尖度変化指標Kとしたが、尖度変化指標Kの定義は以上の例示に限定されない。例えば、尖度KAmに対する尖度KBmの相対比(KBm/KAm)を尖度変化指標Kとして使用する構成や、尖度KAmと尖度KBmとを変数とする所定の関数の演算値を尖度変化指標Kとして使用する構成(例えば尖度KAmに対する尖度KBmの相対比の対数値を尖度変化指標Kとして使用する構成)も好適である。
また、以上の各形態においては、尖度KAmに対して尖度KBmが増加するほど尖度変化指標Kが増加する場合を例示したが、尖度KAmに対して尖度KBmが増加するほど尖度変化指標Kが減少するように尖度変化指標Kを定義した構成も採用される。すなわち、尖度変化指標Kは、音響信号の強度の度数分布における尖度が雑音抑圧処理の前後で変化する度合の尺度となる数値(尖度変化の度合に応じて変化する数値)であれば足り、尖度変化指標Kの定義(尖度KAmや尖度KBmとの関係)の如何は不問である。
(2)変形例2
以上の各形態においては、フロアリング係数βを雑音抑圧指標Sとしたが、雑音抑圧指標Sの定義は以上の例示に限定されない。例えば、数式(2a)や数式(4a)の減算係数αを雑音抑圧指標Sとして使用する構成や、減算係数αおよびフロアリング係数βの少なくとも一方を変数とする所定の関数の演算値を雑音抑圧指標Sとして使用する構成も好適である。減算係数αを雑音抑圧指標Sとした構成では、フロアリング係数βを雑音抑圧指標Sとした場合とは逆に、雑音抑圧指標Sが大きいほど雑音抑圧の度合が増加する。また、雑音抑圧の度合が大きいほど音響信号VOUTのSN比が上昇するという関係を考慮すると、音響信号VOUTのSN比を雑音抑圧指標Sとする構成(雑音抑圧指標Sが大きいほ雑音抑圧の度合が大きい)も採用される。以上のように、雑音抑圧指標Sは、雑音抑圧の度合の尺度となる数値(雑音抑圧の度合に応じて変化する数値)であれば足り、雑音抑圧指標Sの定義や雑音抑圧指標Sの大小と雑音抑圧の度合の高低との関係の如何は不問である。
(3)変形例3
第1実施形態においては、選択部54による選択の結果が出力装置64から利用者に報知される構成を例示したが、選択部54が選択した雑音抑圧処理を実行する雑音抑圧装置(すなわち雑音抑圧処理選択装置200を含む雑音抑圧装置)も採用される。図8に示すように、雑音抑圧装置201は、図1の雑音抑圧処理選択装置200の要素(記憶装置44,数値指定部52,選択部54)に加えて、収音機器M1〜Mjが生成した音響信号V1〜VJを処理する要素(周波数分析部12,切替部56,第1雑音抑圧部141,第2雑音抑圧部142,波形合成部16)を具備する、周波数分析部12と第1雑音抑圧部141と第2雑音抑圧部142と波形合成部16とは第2実施形態と同様の作用および機能を実現する。
切替部56は、第2実施形態の切替部844と同様に、選択部54による選択の結果に応じて第1雑音抑圧部141による第1雑音抑圧処理または第2雑音抑圧部142による第2雑音抑圧処理を選択的に実行させる。以上の構成によれば、尖度変化指標Kの示す尖度変化が小さく、雑音抑圧指標Sの示す雑音抑圧の度合が大きく、または、音響信号Vのチャネル数Jが小さいという観点から選択された最適な雑音抑圧処理で音響信号VOUTを実際に生成することが可能である。
(4)変形例4
第2実施形態においては各フレームの尖度KAmに応じてフレーム毎に雑音抑圧処理を選択したが、尖度算定部86による尖度KAmの算定の周期や選択部842による雑音抑圧処理の選択の周期は適宜に変更される。例えば、複数のフレーム毎に尖度KAmの算定や雑音抑圧処理の選択を実行する構成も好適である。また、尖度算定部86が尖度KAmを算定する方法は以上の例示に限定されない。例えば、以上の例示においては音響信号V1〜VJから選択された1個の音響信号VK(周波数スペクトルXK(m,n))を尖度KAmの算定に利用したが、複数の音響信号V1〜VJ(周波数スペクトルX1(m,n)〜XJ(m,n))の強度x1〜xMから尖度KAmを算定する構成も採用される。
第1雑音抑圧処理や第2雑音抑圧処理の内容は適宜に変更される。例えば、雑音推定部24による雑音スペクトルψ(m,n)の算定や雑音推定部34による雑音スペクトルψ1(m,n)〜ψJ(m,n)の算定の方法は任意である。具体的には、所定の方向の雑音を強調する遅延加算型のビームフォーマや、目的音の方向D0に収音上の死角を形成する死角制御型のビームフォーマが、雑音スペクトルψ(m,n)や雑音スペクトルψ1(m,n)〜ψJ(m,n)の生成に利用される。また目的音強調部22や目的音強調部36による目的音の強調の方法も任意である。例えば、雑音の方向に収音上の死角を形成する死角制御型のビームフォーマや、独立成分分析による音源分離で目的音を強調(分離)する要素も、目的音強調部22や目的音強調部36として利用される。
101,102,201……雑音抑圧装置、12……周波数分析部、14……雑音抑圧部、141……第1雑音抑圧部,142……第2雑音抑圧部、16……波形合成部、22,36……目的音強調部、24,34……雑音推定部、26,32-1〜32-J……抑圧処理部、42,72……演算処理装置、44,74……記憶装置、52……数値指定部、54……選択部、82……雑音抑圧部、84……制御部、842……選択部、844……切替部、86……尖度算定部。

Claims (6)

  1. 音響信号の強度の度数分布における尖度が雑音抑圧処理の前後で変化する度合を示す尖度変化指標と、雑音抑圧の度合を示す雑音抑圧指標と、雑音抑圧処理に使用される音響信号のチャネル数との相関を、複数の音響信号の加算による目的音の強調後のスペクトルから雑音スペクトルを抑圧する第1雑音抑圧処理と、複数の音響信号の各々を雑音スペクトルの抑圧後に加算することで目的音を強調する第2雑音抑圧処理とについて記憶する記憶手段と、
    尖度変化指標と雑音抑圧指標と音響信号のチャネル数とのうちの第1指標および第2指標の数値を指定する数値指定手段と、
    前記記憶手段が記憶する相関と前記数値指定手段が前記第1指標および前記第2指標について指定した数値とに応じて前記第1雑音抑圧処理および前記第2雑音抑圧処理の何れかを選択する選択手段と
    を具備する雑音抑圧処理選択装置。
  2. 音響信号の強度の度数分布における尖度が雑音抑圧処理の前後で変化する度合を示す尖度変化指標と、雑音抑圧の度合を示す雑音抑圧指標と、雑音抑圧処理に使用される音響信号のチャネル数との相関を、複数の音響信号の加算による目的音の強調後のスペクトルから雑音スペクトルを抑圧する第1雑音抑圧処理と、複数の音響信号の各々を雑音スペクトルの抑圧後に加算することで目的音を強調する第2雑音抑圧処理とについて記憶する記憶手段と、
    尖度変化指標と雑音抑圧指標と音響信号のチャネル数とのうちの第1指標の数値を指定する数値指定手段と、
    前記記憶手段が記憶する相関と前記数値指定手段が前記第1指標について指定した数値と、尖度変化指標と雑音抑圧指標と音響信号のチャネル数とのうち前記第1指標以外で利用者から優先が指示された第2指標の数値の大小とに応じて前記第1雑音抑圧処理および前記第2雑音抑圧処理の何れかを選択する選択手段と
    を具備する雑音抑圧処理選択装置。
  3. 複数の音響信号の加算による目的音の強調後のスペクトルから雑音スペクトルを抑圧する第1雑音抑圧処理を実行する第1雑音抑圧手段と、
    複数の音響信号の各々を雑音スペクトルの抑圧後に加算することで目的音を強調する第2雑音抑圧処理を実行する第2雑音抑圧手段と、
    音響信号の強度の度数分布における尖度を算定する尖度算定手段と、
    前記尖度が閾値を上回る場合には前記複数の音響信号に対する前記第1雑音抑圧処理を前記第1雑音抑圧手段に実行させ、前記尖度が前記閾値を下回る場合には前記複数の音響信号に対する前記第2雑音抑圧処理を前記第2雑音抑圧手段に実行させる制御手段と
    を具備する雑音抑圧装置。
  4. 音響信号の強度の度数分布における尖度が雑音抑圧処理の前後で変化する度合を示す尖度変化指標と、雑音抑圧の度合を示す雑音抑圧指標と、雑音抑圧処理に使用される音響信号のチャネル数との相関を、複数の音響信号の加算による目的音の強調後のスペクトルから雑音スペクトルを抑圧する第1雑音抑圧処理と、複数の音響信号の各々を雑音スペクトルの抑圧後に加算することで目的音を強調する第2雑音抑圧処理とについて記憶する記憶手段を具備するコンピュータに、
    尖度変化指標と雑音抑圧指標と音響信号のチャネル数とのうちの第1指標および第2指標の数値を指定する数値指定処理と、
    前記記憶手段が記憶する相関と前記数値指定処理で前記第1指標および前記第2指標について指定した数値とに応じて前記第1雑音抑圧処理および前記第2雑音抑圧処理の何れかを選択する選択処理と
    を実行させるプログラム。
  5. 音響信号の強度の度数分布における尖度が雑音抑圧処理の前後で変化する度合を示す尖度変化指標と、雑音抑圧の度合を示す雑音抑圧指標と、雑音抑圧処理に使用される音響信号のチャネル数との相関を、複数の音響信号の加算による目的音の強調後のスペクトルから雑音スペクトルを抑圧する第1雑音抑圧処理と、複数の音響信号の各々を雑音スペクトルの抑圧後に加算することで目的音を強調する第2雑音抑圧処理とについて記憶する記憶手段を具備するコンピュータに、
    尖度変化指標と雑音抑圧指標と音響信号のチャネル数とのうちの第1指標の数値を指定する数値指定処理と、
    前記記憶手段が記憶する相関と前記数値指定処理で前記第1指標について指定した数値と、尖度変化指標と雑音抑圧指標と音響信号のチャネル数とのうち前記第1指標以外で利用者から優先が指示された第2指標の数値の大小とに応じて前記第1雑音抑圧処理および前記第2雑音抑圧処理の何れかを選択する選択処理と
    を実行させるプログラム。
  6. 音響信号の強度の度数分布における尖度を算定する尖度算定処理と、
    前記尖度が閾値を上回る場合には、複数の音響信号の加算による目的音の強調後のスペクトルから雑音スペクトルを抑圧する第1雑音抑圧処理を実行し、前記尖度が前記閾値を下回る場合には、複数の音響信号の各々を雑音スペクトルの抑圧後に加算することで目的音を強調する第2雑音抑圧処理を実行する制御処理と
    をコンピュータに実行させるプログラム。
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