JP5337631B2 - プライマーセット、Eikelboomtype021N検出方法、ならびに、生物処理方法 - Google Patents
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Description
このような生物処理方法においては、下水や工場排水を被処理水として生物処理槽に導入し、該生物処理槽中に収容させた活性汚泥(以下、単に「汚泥」ともいう)と接触させて処理対象物質を分解させ、処理対象物質の低減された処理水を前記生物処理槽から流下させることが行われている。
生物処理槽においてこのような生物処理工程が実施された後の前記処理水には、前記汚泥が浮遊性の固形物(以下「SS」(suspended solid)ともいう)として含まれることが多く、この汚泥を除去するために、従来、生物処理槽から流下された前記処理水を沈殿槽に導入して前記汚泥を沈殿分離したり、前記処理水を限外ろ過膜等によって膜分離したりすることが行われている。
例えば、沈殿槽にいては、(1)Eikelboom type021NやSphaerotilus natansなどの糸状性細菌により引き起こされる糸状性バルキング、(2)浮上汚泥や腐敗汚泥、および、(3)凝集性が悪化した解体汚泥によって固液分離障害が引き起こされることが知られている(下記非特許文献1参照)。
その出現原因は種類により異なるため、糸状性細菌に起因する固液分離障害(糸状性バルキング)の対策には糸状性細菌の同定が必要となる(下記非特許文献2参照)。
しかし、この方法は熟練を要する上に、特徴が分かりにくい場合や出現環境によって形態が変わる場合もあることから、熟練者といえども正確に同定を行うことは容易ではない。
例えば、下記非特許文献3には、固液分離障害(糸状性バルキング)の主要な原因細菌の一つであるEikelboom type021Nの検出・定量のためのPCR用プライマーについて記載されている。
また、例えば、下記非特許文献4には、FISH法によるEikelboom type021Nの検出について記載されている。
そのため、Eikelboom type021N検出方法においては、その精度を向上させることが難しい状況であり、生物処理方法においては固液分離障害に対する対策が立て難い状況となっている。
したがって、当該細菌の増殖を抑制可能な条件となるように生物処理の条件(装置運転条件等)を変更することができ、固液分離障害の発生を抑制させ得る。
このPCRによるEikelboom type021Nの検出は、形態学的特徴に基づいた検出方法などのように熟練技術者でなくとも正確かつ簡単に糸状性バルキング原因細菌を検出・定量できるという利点を有する。
そして、汚泥中のEikelboom type021Nの検出を定期的に実施することでEikelboom type021Nの増加・減少の傾向を把握することができる。
すなわち、糸状性バルキング原因細菌を正確に検出・定量することが可能となることで本細菌の増殖を抑制し、固液分離障害を防止することができる。
Eikelboom type021Nの存在比率が全細菌数の概ね1%以上になって、本細菌が糸状性バルキングの主原因になると考えられる場合は、先のような原因についてまず初めに調査して改善することがその対策方法として挙げられる。
なお、水力学的滞留時間(HRT)が2時間から3時間になるように嫌気もしくは無酸素槽を設ける、あるいは、間欠曝気運転を行うことで、糸状性バルキング原因細菌であるEikelboom type021Nを減少させることができ、沈殿槽における固液分離障害を抑制させることができる。
早急に活性汚泥の沈降性を改善したい場合は、次亜塩素酸ナトリウムや市販のバルキング用製剤を投入し、本細菌を死滅させることにより改善される。
このリアルタイムPCRとしては、蛍光を発する色素をインターカレートさせる方法や、蛍光色素を結合させたプローブを用いる方法などを採用し得る。
また、例えば、このリアルタイムPCRは、Applied Biosystems 7300(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社製)などのリアルタイムPCR装置を使用して実施することができる。
上記プライマー(プライマーセット)を用いることにより、Eikelboom type021NのDNAとの相同性の高いDNAの増幅を他の核酸の増幅を抑制しつつ実施させることができる。
したがって、Eikelboom type021Nの検出及び定量が従来のプライマーを用いた場合に比べて精度良く実施され得る。
1)既存のPCRプライマーを用いたEikelboom type021Nの検出
前記非特許文献3に記載されている、H.Vervaerenらが考案したgroup II Eikelboom type021Nを検出・定量するためのPCRプライマー「21Nf」(5’−CGTAGGCGGTTTAAGTC(A/G)GAT−3’)と「21Nr」(5’−CCGACGGCTAGTTGACATCGTTTA−3’)とをそれぞれ用いて、下水の生物学的処理に用いられている汚泥に対してEikelboom type021N菌の検出を試みた。
すなわち、Fast DNA SPIN kit for SOIL(Qbiogene社製)を用いて下水処理場の汚泥から精製したDNA 1ng、AmpliTaq Gold PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社)および0.25μMのそれぞれのPCRプライマーから構成される反応液を用いて、表1に示す反応条件で実施した。
データベース(DDBJ(DNA Data Bank of Japan): http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome−j.htmlやNCBI(National Center for Biotechnology):http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)に登録されているEikelboom type021Nの16SrRNA遺伝子の配列を基に新規PCRプライマーを設計した。
PCRプライマーの設計は、Primer BLAST (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/tools/primer−blast/index.cgi?LINK_LOC=BlastDescAd)を用いて実施した。
表3に示す4組のプライマーセットを用い、DNAを鋳型にしてEikelboom type021Nの16SrRNA遺伝子を増幅した。
続いてそれぞれの増幅産物をクローニング後、塩基配列を決定し、データベースに登録されている既知の細菌の16SrRNA遺伝子と相同性解析を行い、増幅産物がEikelboom type021Nの16SrRNA遺伝子であること、つまり目的とする遺伝子だけが増幅され、目的外の細菌の遺伝子は増幅されないことを確認した。
すなわち、上記1)で精製したDNA 1ng、AmpliTaq Gold PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社製)および0.25μMのそれぞれのPCRプライマーセットから構成される反応液を用いて、表2のPCR条件でPCRを行った。
得られた形質転換体を任意にそれぞれ12個選択し、QIAquick Spin Miniprep Kit(インビトロジェン株式会社製)を用いて組み換えプラスミドを精製した。
これらのプラスミドを鋳型にしてBigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社製)を用いてPCR産物の塩基配列を決定した。
決定した塩基配列は、データベース(DDBJ(DNA Data Bank of Japan): http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome−j.html)上に登録されている既存の細菌の16SrRNA遺伝子の塩基配列と相同性を求めることにより、増幅されたPCR産物がどの細菌種に由来するかを推定した。
上記1)で精製したDNA 1ng、それぞれ300nMのForwardプライマーとReverseプライマーおよびQuantiTect SYBR Green PCR Kit(株式会社キアゲン製)から構成される反応液を用い、表4に示す条件により定量PCRを行った。
PCR反応は、Applied Biosystems 7300リアルタイムPCRシステム(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社製)を用いて行った。
さらに、各プライマーセットで行ったPCR産物を上記3)と同じ方法で精製、クローニングし、得られた形質転換体を任意にそれぞれ24個選択し、塩基配列を決定した。
決定した塩基配列は、上記3)と同様にデータベース上の既知の細菌の16SrRNA遺伝子と相同性を求めた。
表3に示す4組のプライマーセットを用い、下水処理場の活性汚泥中のEikelboom type021Nの検出および存在数量の定量を行った。
すなわち、上記(ステップ1)で精製したDNA 1ng、それぞれ300nMのForwardプライマーとReverseプライマーおよびQuantiTect SYBR Green PCR Kit(株式会社キアゲン製)から構成される反応液を用い、表4に示す条件により定量PCRを行った。
PCR反応は、Applied Biosystems 7300リアルタイムPCRシステム(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社製)を用いて行った。
1)既存のPCRプライマーを用いたEikelboom type021Nの検出
PCR増幅産物のアガロースゲル電気泳動の結果を図1に示す。
lane1が100bp分子量マーカー、lane2がDNAを含まない陰性対照のPCR増幅産物、そしてlane3が下水処理場の活性汚泥から精製したDNAのPCR増幅産物を示す。
下水処理場の活性汚泥から精製したDNAを鋳型にしたPCRにおいて、予想される約200bpの増幅産物(矢印)が得られた。
そこで、このPCRにより目的とするEikelboom type021Nの16SrRNA遺伝子だけが増幅されているか否かを検証するために、PCR産物をクローニングしその塩基配列を決定した。
決定した塩基配列は、データベース(DDBJ(DNA Data Bank of Japan): http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome−j.html)上に登録されている既存の塩基配列と相同性を求めることにより、増幅されたPCR産物がどの細菌種に由来するかを推定した。
表5に相同性検索の結果を示す。
以上の結果より、前出のH.Vervaerenらが考案したPCRプライマーの精度は低く、Eikelboom type021Nの精度良い検出・定量には適していないことが判明した。
上述のように、H.Vervaerenらが考案したPCRプライマーの精度は低く、Eikelboom type021N以外の細菌を間違って検出・定量するおそれがあることが判明した。
そこで、データベース(DDBJ(DNA Data Bank of Japan): http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome−j.htmlやNCBI(National Center for Biotechnology):http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)に登録されているEikelboom type021Nの16SrRNA遺伝子の配列を基に表6に示す新規PCRプライマーを設計した。
前述の表3に示す4組のPCRプライマーセットを用いて増幅したPCR産物のアガロースゲル電気泳動写真を図2に示す。
lane1が100bp分子量マーカー、lane2がNo.1プライマーセット、lane3がNo.2プライマーセット、lane4がNo.3プライマーセット、lane5がNo.4プライマーセットを用いてPCRを行った時のPCR増幅産物を示す。
全てのPCRにおいて、予想される約170bpの増幅産物(矢印)が得られた。
決定した塩基配列は、データベース(DDBJ(DNA Data Bank of Japan): http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome−j.html)上に登録されている既存の塩基配列との相同性を求めることにより、増幅されたPCR産物がどの細菌種に由来するかを推定した。
表7に相同性検索の結果を示す。
以上の結果より、本発明に係るプライマー(プライマーセット)は、目的としている細菌だけを検出できる精度の高いプライマーであることが検証された。
表8に示す条件でスタンダードサンプルを鋳型にして定量PCRを行った時の陰性対象の出現の有無、検量線のR2値、増幅効率、および定量下限値の結果を表9に示す。
また、定量下限値は、それぞれ12.8copies/反応と少ない量の当該細菌の16SrRNA遺伝子を検出可能であった。
その結果を表10〜表13に示す。
以上の結果より、本発明のプライマーはEikelboom type021Nの定量に有用な精度の高いプライマーであることが確認された。
表3に示す4組の新規PCRプライマーセットのうち、No.1(Eik021Nf1/Eik021Nr1)のプライマーセットを用いて表4の条件で下水処理場のMLSS中のEikelboom type021Nの存在数量を求めた。
その結果を表14に示す。
Claims (3)
- Eikelboom type021Nの核酸の増幅に用いられ、配列番号1又は配列番号3の塩基配列を有しているフォワードプライマーと配列番号2又は配列番号4の塩基配列を有しているリバースプライマーとが用いられてなることを特徴とするプライマーセット。
- 配列番号1又は配列番号3の塩基配列を有しているフォワードプライマーと配列番号2又は配列番号4の塩基配列を有しているリバースプライマーとを用いてEikelboom type021Nの核酸を増幅させることによって試料中のEikelboom type021Nの検出を行うことを特徴とするEikelboom type021Nの検出方法。
- 汚泥を用いて被処理水を生物学的に処理する生物処理工程と、該生物処理工程後の処理水を固液分離して前記汚泥除去する固液分離工程とが実施される生物処理方法であって、 配列番号1又は配列番号3の塩基配列を有しているフォワードプライマーと配列番号2又は配列番号4の塩基配列を有しているリバースプライマーとを用いてEikelboom type021Nの核酸を増幅させることによって前記汚泥中のEikelboom type021Nを検出する工程がさらに実施されることを特徴とする生物処理方法。
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