JP5332886B2 - 光子発生装置 - Google Patents
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Description
このような量子情報技術にとってキーデバイスとなるのが、光子を1つずつ発生させる単一光子発生装置である。単一光子は、単一の原子や単一のイオンなどから生成することができるが、特に半導体から単一光子を生成するためのデバイスとして、半導体量子ドットによる単一光子源が盛んに研究されている。
量子ドットから単一光子を生成するためには量子ドット中に電子と正孔のペアを生成する必要があるが、その方法としては外部からの励起光を利用する光励起型と、電気的に電子と正孔を注入する電流注入型の2種類の方式が存在する。このうち、開発が先行しているのは光励起型であるが、デバイスの小型化や低コスト化という点では電流注入型の単一光子発生器の方が優れている。
また、電極の片方には、単一量子ドットから発せられた光子を取り出すための微小開口が形成されている。単一光子を生成するには単一量子ドットからの発光を利用する必要があるが、分子線エピタキシー(MBE)で成長した量子ドットの密度は通常1×1010(cm−2)程度と比較的大きいため、対物レンズで集光しただけでは多くの量子ドットからの発光を拾ってしまい、単一光子を得ることはできない。このため非特許文献1では、電極の一部に開口を形成することで、一個の量子ドットからの発光のみが開口を通して取り出せるような構造を作製している。
以上が従来報告されている電流注入型単一光子発生装置の基本的な構造である。しかしながら、現状ではまだ改善すべき課題も残っている。その一つが、光子の取り出し効率の問題である。そもそも量子ドット光源は発光波長よりもサイズが小さいため、伝播光への変換効率が悪い。加えて、量子ドットによる単一光子発生は自然放出に基づくものであるため、光子は全ての方位角にランダムに放出される。このため、微小開口部以外の方向(例えば基板面に平行な方向)に放出された光子は、外部に有効に取り出すことができない。また、仮に微小開口部の方向に光子が放出されたとしても、開口サイズは光の波長以下、または波長と同程度であるため、その透過率は非常に小さな値になってしまう。
非特許文献2には、マイクロピラー共振器中に量子ドットを埋め込んだ構造が示されている。ここでマイクロピラー共振器とは、発光体であるInAs量子ドットが、GaAsとAlAsの多層膜からなるDBRミラーに上下から挟まれ、かつ側部のドライエッチングにより、基板に垂直な柱状に切り出された構造を指している。このような構造では、柱を細く切り出すことで原理的には1個の量子ドットを隔離することができることに加え、上下方向の共振器効果および側壁での全反射により、量子ドットからの発光を上方向に効率よく取り出すことも可能である。しかしながら、細く不安定な柱状構造に電極を取り付けるのは難しく、電流注入方式には適していない。実際、これまでに報告されているマイクロピラー型単一光子発生装置はほとんどが光励起方式によるものである。
また非特許文献7では、アルミニウムによる微小アンテナ構造により量子ドットからの光の取り出しが向上することが示されている。しかしながら、いずれの文献においても、量子ドットへの電流注入を行う構造や、他の発光体からの背景光を遮るような構造は示されていない。
以上のように、量子ドットへの電流注入構造と、十分な光子取り出し効率の両方を兼ね備えたデバイスは実現されていない。
自己形成型量子ドットにおいて単一量子ドットからの光のみを取り出すために、電極上に直径1μmからそれ以下の微小開口が作製されているが、量子ドットからの光子はあらゆる方向にランダムに放出されることに加え、微小開口部分の透過率が小さいため、光子の取り出し効率が低い。
また、電流注入型の装置では、電極から注入されたキャリアが半導体中の不純物や欠陥にトラップされて光るため、量子ドット以外からのバックグラウンド光が大きくなる。これは、光子レベルの微弱光による通信では大きな問題となる。また、このような不純物起因のバックグラウンド光の問題は、開口サイズを大きくするほどより深刻になるため、光子の取り出し効率とトレードオフの関係にある。
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解決することであって、その目的は、第1に、電流注入型単一光子発生装置において光子取り出し効率を十分な値に向上させることであり、第2に、バックグラウンド光の影響を十分に低減させることである。
また、好ましくは、前記第2の金属電極の、前記微小発光部側とは反対側の表面には、前記突起付開口を中心として複数の凸部が周期的に形成されている。すなわち、前記第2の金属電極の表面にはグレーティングが形成されている。
また、好ましくは、前記突起付開口において、開口内部に張り出す前記金属突起の先端が尖っている。これにより、金属突起先端に形成されるギャップにおいて、アンテナモードがより励起されやすくなり、光取り出し効率のさらなる増大が可能となる。
また、好ましくは、前記第2の金属電極の前記微小発光部側の表面には、対をなす前記金属突起同士の対向側の先端部に、前記金属突起の先端部に沿って前記第2の半導体層に埋め込まれた埋め込み金属突起が形成されている。
また、好ましくは、前記第1または第2の半導体層の少なくとも一方の層内には、前記微小発光部上または下に開口を有する酸化膜が形成されている。
また、好ましくは、前記第1の半導体層の前記第1の金属電極と接する部分は、n型とp型のいずれか一方であり、前記第2の半導体層の前記第2の金属電極側の部分は、n型とp型のいずれか他方である。この場合、前記第1、第2の金属電極はそれぞれ前記第1、第2の半導体層にオーミックに接触している。
また、好ましくは、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層の内一方はi型で、他方はp型またはn型である。この場合、この場合、二つの金属電極の内、一方の金属電極は半導体層とオーミックに接触し、他方はi型の半導体層とショットキー接合を形成している。
また、好ましくは、前記第1または第2の半導体層の少なくとも一方が屈折率の異なる2種類の半導体を交互に積層した構造を有している。
本発明の光子発生装置によれば、量子ドット上の金属電極に所定の間隔のギャップを有する突起付開口が形成されている。このような突起付開口では、空間的に限られた範囲で電磁場モードが増強される結果、量子ドットから放出される光子の透過率が増大し、光子を効率よく外部に取り出すことができる。
特に、量子ドット層の、前記第2の金属電極の下面からの深さdが、λ/20n<d<λ/5nを満たすときに、より高い効率で光子を取り出すことができる。
また、本発明の光子発生装置において、前記第2の金属電極には、前記突起付開口を中心として周期的に凸部が形成されている。これによりグレーティングが形成され、光子発生装置から発生する光子を、高い指向性を持って自由空間に放出させることができ、ファイバーなどへの結合効率を向上させることができる。
また、本発明の別の実施形態によれば、前記金属突起の対向側先端部には、前記第2の半導体層に埋め込まれた埋め込み金属突起が形成されている。これにより、量子ドットから発生する光をより強く突起付開口に結合させ、光子の取り出し効率を向上さることができる。
さらに、本発明の別の実施形態によれば、前記第2の半導体層の層内には、前記量子ドット上に開口を有する酸化膜が形成されている。これにより、量子ドットから発生する光をより強く突起付開口に結合させ、光子の取り出し効率を一層向上させることができる。また、注入電流を量子ドット近傍に限定することができ、高効率化を実現することができる。
また、本発明の光子発生装置において、前記第1、第2の半導体層の金属電極側は、一方がp型で、他方がn型である。従って、前記1対の金属電極間に電圧を印加することで、p型層から正孔を、n型層から電子を量子ドットに注入することができ、電流注入による光子の発生が実現される。
また、本発明の別の実施形態によれば、前記第1、第2の半導体層の内、一方がi型で、他方がp型またはn型である。これにより、量子ドット内に正または負の電荷を持つ荷電励起子と呼ばれる状態を光励起し、発光させることできる。これにより、発光レートを向上させることができる。
また、本発明の別の実施形態によれば、前記第1の半導体層内に屈折率の異なる2種類の半導体を交互に積層した構造を有している。これにより、量子ドットの周りに実効的なファブリペロー共振器が形成されるため、量子ドットから発せられる光は突起付開口により強く結合し、光子の取り出し効率をさらに向上させることができる。
(第1の実施形態)
図1(a)、(b)は、本発明の単一光子発生装置の第1の実施形態を示す上面図と断面図であり、図1(c)、(d)はその部分拡大図である。本実施形態の光子発生装置において、量子ドット層1、i型半導体層2、3を含む活性層6が、p型半導体層4とn型半導体層5の間に挟まれて形成されており、p-i-n構造が構成されている。p型半導体層4とn型半導体層5には、それぞれオーミック電極11、10が取り付けられており、p-i-n構造に電圧を印加することができるようになっている。
p型半導体層4と接触するオーミック電極11には、量子ドット層1から光子を取り出すための突起付開口9が形成されている。ここで突起付開口9は通常の円形開口と異なり、開口の周縁部から中心部へと金属突起12、13が張り出した構造を有している。そして、この金属突起12、13間のギャップの直下に量子ドット7が位置している。
突起付開口9においてアンテナ効果が生じる共鳴波長は開口径aとギャップ幅wの関数であるため、aとwという2つの自由度を調整することで、共鳴波長を量子ドットの発光波長に合わせる。ただし、ギャップ幅wが大きすぎる場合、2つのダイポールは結合せず、十分なアンテナ効果を得ることができない。そこで、ギャップ幅wが量子ドットのサイズsよりも大きく、かつ量子ドットの発光波長λよりも十分小さくなるように突起付開口9を設計する。ここでは、s<w<λ/5nとする。
深さdを小さくするほど結合はより強くなる。ただし、あまりdが小さすぎると、金属への非輻射緩和のために量子ドットが光らなくなることが文献(D. E. Chang et al., Phys. Rev. Lett. 97, 053002)より知られている。従って、光子の取り出し効率を最適化するにはλ/20n<d<λ/5nであることが望ましい。
なお、量子ドット層1において量子ドット7が埋め込まれている位置(水平位置)については、図1(b)に示しているように、金属突起12と13の間のギャップ内に収まっている場合が光取り出し効率の点から最も好ましい。分子線エピタキシー装置(MBE)で成長する自己形成型量子ドットの場合、量子ドットが形成される水平位置は通常ランダムになるが、走査型プローブ顕微鏡などの技術を応用することで量子ドット成長位置の制御が可能となる。例えば、原子間力顕微鏡(AFM)のカンチレバー型プローブを用いて量子ドット成長の核となる種をパターニングすることで、任意の位置に自己形成型量子ドットを成長させる方法が知られている(S. Ohkouchi, et al., Journal of Crystal Growth 311, 1819 (2009))。この技術を用いれば、最初にプローブで指定した位置に量子ドット7を成長させ、その後、その位置を中心として突起付開口9を形成することにより、アンテナ効果が最大となる位置に量子ドット7を配置することができる。
なお、本実施形態において、オーミック電極11および金属突起12、13の材料としては、可視光〜近赤外光領域において光学損失が比較的小さくかつ表面プラズモンを誘起することが可能な金、銀、アルミニウム、銅などを用いる。このように本発明では、従来の面発光レーザーなどの場合と異なり、発光波長よりも小さな微小光源を金属突起間ギャップの直下に配置することで、光源からの光を突起付開口のアンテナモードに直接結合させている。このような「ナノスケール光源から光を効率的に取り出すためのアンテナ」として機能が本発明の特徴である。
ここまで述べたように、量子ドットからの光子の取り出し・収集効率を向上できる点が本発明の最大の利点であるが、もう一つの利点としてバックグラウンド光低減の効果が挙げられる。これまで報告されている電流注入型単一光子発生装置では、光励起型の装置に比べてバックグラウンド光がより強く観測されていた。これは、p型層やn型層から流れるキャリアが半導体中の不純物を通して光るためと考えられる。本発明の単一光子発生装置では、開口中心の真下に位置する発光体からの光のみが突起付開口9を透過するため、従来装置に比べて不純物起因のバックグラウンド光を大きく低減することができる。
次に、第1の実施形態の実施例を、図4を参照して説明する。
なお、以上説明した電極構造自体は集束イオンビーム法(FIB)によっても作製することが可能であるが、突起付開口の直下に量子ドットが存在するため、プロセス時にダメージを与えてしまう。このため、本発明の単一光子発生装置の場合、リフトオフ法による作製が望ましい。
図5(a)、(b)は、本発明の単一光子発生装置の第2の実施形態を示す上面図と断面図である。図5において、第1の実施形態を示す図1の部分と対応する部位には、同一の参照符号を付し重複する説明は適宜省略する〔これ以降の第3〜第7の実施形態(図6〜図10)についても同様である〕。本実施形態では、図1に示される第1の実施形態の基本構成において、突起付開口9の金属突起として、先端部分の尖った金属突起12、13を採用している。
このように、金属突起12、13の先端を尖らせることで、その間のギャップにおいてアンテナモードがより励起されやすくなり、光取り出し効率のさらなる増大が可能となる。
図6(a)、(b)は、本発明の単一光子発生装置の第3の実施形態を示す上面図と断面図である。本実施形態では、図1に示される第1の実施形態の基本構成に加え、突起付開口9の金属突起12、13の先端部の直下に、埋め込み金属突起16、17が付加されている。
埋め込み金属突起16、17の材料としては金属突起12、13と同様に可視光〜近赤外光領域において光学損失が比較的小さい金、銀、アルミニウム、銅などを用いる。このような埋め込み金属突起16、17が付加された電極構造は、電子線リソグラフィとドライエッチングによりp型半導体層4に窪みを形成し、その上から金属を蒸着することにより作製することができる。
埋め込み金属突起16、17は、量子ドット層の埋め込み深さdに対し、d/2<h<d程度の深さhまで埋め込む。すなわち、量子ドット層の深さをd=50nmとした場合、金属突埋め込み金属突起16、17の深さはh=30nm程度とする。これにより、量子ドットが感じるアンテナ効果をさらに強めると同時に、量子ドットから発せられる光子が基板面方向(図面横方向)に逃げるのを防ぐことができる。
図7(a)、(b)は、本発明の単一光子発生装置の第4の実施形態を示す上面図と断面図である。本実施形態では、図1に示される第1の実施形態の基本構成に加え、活性層6とオーミック電極11との間に、突起付開口9の下に開口を有する酸化膜18が付加されている。このような酸化膜18は、活性層6上に、例えばGaAs層、AlGaAs層、 GaAs層を成長させ、メサ構造に切り出した後水蒸気雰囲気下で400℃程度まで加熱し、AlGaAsを側面からAl2O3にウェット酸化させることにより作製することができる。
酸化膜18の下面のオーミック電極11からの深さDが、量子ドット層の埋め込み深さdに対し、d/2<D<dを満たす程度の深さに酸化膜18を埋め込む。すなわち、量子ドット層の深さをd=50nmとした場合、酸化膜開口18の深さはD=30nm程度とする。
このような開口を有する酸化膜18の効果は2つある。1点目は、光のモードを横方向に閉じ込めることができる点である。これにより、量子ドット7からの光を突起付開口9により強く結合させることができる。2点目は、酸化膜18が電流阻止膜として働くため、量子ドット7を中心とする開口内にだけ電流を流すことができる点である。これにより、高効率な電流注入型光子発生が可能となる。なお、この酸化膜18は、活性層の両側もしくは下側に付加することもできる。
図8に、本発明の第5の実施形態である偏光無依存な突起付開口を用いた単一光子発生装置を示す。図8(a)、(b)は、その上面図と断面図である。第1〜第4の実施形態にて用いた一対の金属突起を有する突起付開口では、金属突起の突起方向に平行な偏光(以下、水平偏光と呼ぶ)を持つ光子に関しては取り出し効率を向上することができたが、逆に金属突起の突起方向に垂直(金属突起先端部の辺と平行)な偏光(以下、垂直偏光)の光子に関してはアンテナ効果が働かないため、ほとんど外部に取り出すことができない。すなわち、第1の実施形態などに示したデバイスは常に決まった直線偏光の光のみを取り出す単一光子発生装置となっている。しかし、光子の偏光状態を利用した量子情報処理を行う場合、あらゆる偏光の光子を一様に透過させる偏光無依存な構造が求められる。
特に、4本の金属突起を全て同じ長さ、同じ幅で設計した場合、開口の中心部では水平偏光と垂直偏光の電磁場モードがそれぞれ全く同様に増強される〔図8(c)〕。全ての偏光は水平偏光と垂直偏光の和と考えられるので、これはあらゆる偏光成分に対してアンテナ効果が機能することを意味する。従って、開口中心の直下に量子ドットをおいた場合、全ての偏光の光子を同様に外部に効率よく取り出す偏光無依存な単一光子発生装置が実現される。
図9(a)、(b)は、本発明の単一光子発生装置の第6の実施形態を示す上面図と断面図である。基本的な構成は図1に示した第1の実施形態と共通で、量子ドットをp-i-n構造に埋め込み、電子と正孔を量子ドットへ電気的に注入することで単一光子を発生させる。但し、本実施形態では、n型半導体層5の代わりに、n型DBR構造(15)が用いられている。この構造は、量子ドット7から発せられる波長の光に対してミラーとして働き、このn型DBRミラー15と、p型半導体層4の上端との間で共振器(ファブリペロー共振器)が形成される。これにより、量子ドット7からの発せられる光子は、より優先的に突起付開口9における電磁場モードに放出されるようになり、さらに突起付開口9と反対方向に発せられた光子も、DBRミラー15で反射し、突起付開口9での透過光に寄与する。このように、n型DBRミラー15を用いることで光子の取り出し効率をさらに向上させることができる。
例えば、量子ドット7としてInGaAs/GaAs量子ドットを用いた場合、n型DBRミラー15としてはGaAsとAlAsを交互に10〜20層ほど積み重ねた超格子構造を用いることができる。なお、このDBRミラーは、活性層6の上側もしくは両側に設けることもできる。
ここまでの実施形態では、電流注入型単一光子発生装置について説明してきたが、本発明の構造は光励起型単一光子発生装置に利用することもできる。図10(a)、(b)は、本発明の第7の実施形態であるショットキーダイオード型単一光子発生装置の上面図と断面図である。
本実施形態の光子発生装置では、量子ドット層1は、i型半導体層3/n型半導体層5とi型半導体層24に挟まれており、n型半導体層5にはオーミック電極10が、i型半導体層24にはショットキー電極21がそれぞれ取り付けられている。すなわち本実施形態は、量子ドット7がn-iショットキーダイオード内部に埋め込まれた構造を有している。また、突起付開口9は、第6の実施形態で示した二対の金属突起を有する構造を用いている。従って、あらゆる偏光の光子を同様に取り出すことができる。
この場合、量子ドット7に正孔を電気的に注入することはできないが、n型半導体層5からの電子の注入は可能である。従って、電圧制御により電子の電気的注入と、光励起による電子・正孔対の生成を組み合わせることで、負に帯電した荷電励起子と呼ばれる状態を量子ドット中に生成し、発光させることができる。
このような荷電励起子発光を利用した単一光子発生装置の利点は2点挙げられる。1点目は、ピークの分裂のない理想的な単一光子発生装置が実現できる点である。中性励起子では電子スピンと正孔スピンの間の交換相互作用のために、偏光によって微細相互分裂と呼ばれるエネルギー差が生じてしまうのに対し、2つの電子スピンがペアを組む荷電励起子ではこのような分裂が生じない。2点目は、中性励起子と異なり、荷電励起子には暗状態と呼ばれる発光しないスピン状態が存在しないため、最終的な発光レートを上げることができる。
また、量子ドットや半導体層の半導体材料はInGaAsやGaAsに限定されない。また、p型半導体層とn型半導体層との導電型は入れ替えてもよい。また、光励起型の光子発生装置において注入されるキャリアは、電子、正孔のいずれであってもよい。また、光励起型の光子発生装置において、量子ドットにキャリアを注入する半導体層は、量子ドット層の上層側、下層側のいずれの半導体層であってもよい。また、量子ドットは自己形成型に限定されない。また、実施の形態では、グレーティング14は、凸形状に形成されていたが、オーミック電極11やショットキー電極21にエッチングを行うなどして凹形状に形成してもよい。また、グレーティング14は電極と同じ材料を用いて形成しなくてもよい。また、以上では光源として主に量子ドットを用いる実施形態について説明してきたが、光子を発生する他の微小発光体に置き換えることもできる。例えば半導体中のドナー(またはアクセプタ)不純物や、ナノ結晶、ダイヤモンド中の窒素空孔などが候補として上げられる。また、開口内部に張り出す金属突起は、必ずしも平面的に形成されている必要はなく、例えば先端に向かってせりあがるような三次元的構造に形成されたものであってもよい。さらに、各実施形態を組み合わせたものも本発明に含まれる。
2、3 i型半導体層
4 p型半導体層
5 n型半導体層
6 活性層
7 量子ドット
8 光子
9 突起付開口
10、11 オーミック電極
12、13、22、23 金属突起
14 グレーティング
15 n型DBRミラー
16、17 埋め込み金属突起
18 酸化膜
21 ショットキー電極
24 i型半導体層
25 透明電極層
Claims (14)
- 微小発光部を含む発光層と、前記発光層の第1の主面側に形成された第1の半導体層と、前記発光層の第2の主面側に形成された第2の半導体層と、前記第1の半導体層と接合を形成する第1の金属電極と、前記第2の半導体層の前記発光層と反対側の表面に設置された、前記第2の半導体層と接合を形成する、前記微小発光部上に開口を有する第2の金属電極と、を備え、前記開口は、開口の周縁部から開口内部に張り出す少なくとも1つの金属突起が設けられている突起付開口であって、該突起付開口の形状およびサイズは前記微小発光部が発生する光子の取り出し効率を高めるように設定されていることを特徴とする光子発生装置。
- 前記微小発光部のサイズが発光波長よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の光子発生装置。
- 前記微小発光部として、量子ドットを用いることを特徴とする請求項2に記載の光子発生装置。
- 前記微小発光部の発光波長をλ、前記第2の半導体層の屈折率をnとしたとき、前記発光層の前記第2の金属電極の下面からの距離dが、d<λ/2nを満たすことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光子発生装置。
- 前記微小発光部の発光波長をλ、第2の半導体層の屈折率をnとしたとき、前記発光層の前記第2の金属電極の下面からの距離dが、λ/20n<d<λ/5nを満たすことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光子発生装置。
- 前記微小発光部の発光波長をλ、前記微小発光部のサイズをs、前記金属突起の先端に形成されるギャップをwとして、s<w<λ/5nを満たすことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の光子発生装置。
- 前記第2の金属電極の、前記微小発光部側とは反対側の表面には、前記突起付開口を中心として複数の凸部または凹部が周期的に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の光子発生装置。
- 前記第2の金属電極は、表面プラズモンを誘起することが可能な材料により形成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の光子発生装置。
- 前記微小発光部が、前記突起付開口により電磁場モードが強められる位置またはその近傍に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の光子発生装置。
- 前記突起付開口において、開口内部に張り出す前記金属突起の先端が尖っていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の光子発生装置。
- 前記開口内部に張り出す前記金属突起は、対をなして形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の光子発生装置。
- 前記第2の金属電極の前記微小発光部側の表面には、前記金属突起の内側先端部に、前記金属突起の先端部に沿って前記第2の半導体層に埋め込まれた埋め込み金属突起が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載の光子発生装置。
- 前記第1または第2の半導体層の少なくとも一方の層内には、前記微小発光部上または下に開口を有する酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の光子発生装置。
- 前記第1または第2の半導体層の少なくとも一方が屈折率の異なる2種類の半導体を交互に積層した構造を有していることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれかに記載の光子発生装置。
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