JP5323662B2 - リグノセルロース系バイオマスからメタンガスを生成するための微生物担持担体の作製方法 - Google Patents
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Description
ここで、本発明のメタンガス生成方法において、酢酸資化性メタン菌がメタノサルシナ(Methanosarcina)属の古細菌であり、嫌気性セルロース分解菌がクロストリジウム(Clostridium)属の細菌であることが好ましい。
また、本発明のメタンガス生成方法において、水素資化性メタン菌がメタノバクテリウム(Methanobacterium)属の古細菌及びメタノサーモバクター(Methanothermobacter)属の古細菌であり、糖分解菌がアナエロバクルム(Anaerobaculum)属の細菌であることが好ましい。
さらに、本発明のメタンガス生成方法において、炭素製の担体が炭素繊維不織布であることが好ましい。
本発明のリグノセルロース系バイオマスからのメタンガス生成用の微生物担持担体の作製方法は、嫌気性セルロース分解菌及び酢酸資化性メタン菌を少なくとも含む微生物群集が添加された懸濁液に微生物を担持し得る担体を添加すると共に、懸濁液にリグノセルロース系バイオマスを添加して微生物群集によりリグノセルロース系バイオマスの分解反応を進行させる工程を含むようにしている。
本発明の作製方法により得られた微生物担持担体を用いてリグノセルロース系バイオマスをメタン発酵処理することで、リグノセルロース系バイオマスからメタンガスを効率よく生成することができる。
リアクター内に稲藁基質とメタン発酵液と炭素繊維不織布を収容し、稲藁からのメタンガス生成について検証した。
リアクター内に炭素繊維不織布を収容しなかった以外は、実施例1と同様の条件として、稲藁からのメタンガス生成について検証した。
実施例1及び比較例1は、以下に具体的に説明する方法で実施した。
日本の農場より入手した稲藁を2mm未満に細断した。この稲藁を以下のように配合して稲藁基質を調製した。尚、酵母エキスは和光純薬工業株式会社製のものを使用し、DSMZミディアム131微量元素溶液(以下、微量元素溶液と呼ぶ)及びDSMZミディアム141ビタミン溶液(以下、ビタミン溶液と呼ぶ)はDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen and Zellkulturen)製のものを使用した。
[稲藁基質の組成(水1L中の組成)]
稲藁 :10g/L
KH2PO4 :0.8g/L
K2HPO4 :1.6g/L
NH4Cl :1g/L
NaHCO3 :2g/L
MgCl2・6H2O: 0.1g/L
CaCl2・2H2O: 0.2g/L
NaCl: 0.8g/L
酵母エキス: 1g/L
微量元素溶液: 10mL/L
ビタミン溶液: 10mL/L
デュラン社製の250mL容ガラス瓶をリアクターとして用いた。このガラス瓶を6本用意し、そのうちの3本を実施例1の実験に使用し、残りの3本を比較例1の実験に使用した。これらのガラス瓶に、生ゴミからの安定したガス生成が行われていた好熱性嫌気性消化槽(メタン発酵槽)内から採取した汚泥をそれぞれ等量ずつ(200g)入れ、さらに稲藁基質をそれぞれ50mL添加した。
リアクターは、セミバッチモードで運転した。具体的には、実験開始から15日目までは、3日に1回、シリンジを用いてガラス瓶内の内容物を50mL抜き取り、50mLの稲藁基質を新たに添加した。実験開始16日目から実験開始45日目までは、この操作を2日に1回行った。この運転条件により、実験期間中のOLR(有機物負荷量、図1中の◆)及びHRT(水理学的滞留時間、図1中の■)は図1に示す通りとなった。
バイオガス生成量は、水上置換法により測定した。また、バイオガスの組成分析は、ガスクロマトグラフィー(Agilent製、装置名6890N)により行った。
実験終了後(45日目)、各ガラス瓶内から内容物を採取し、生物学的分析に供した。また、CFTをリン酸緩衝生理食塩水に浸漬して振とう処理し、CFT付着物をリン酸緩衝生理食塩水に移行させて生物学的分析に供した。これらの試料に含まれる微生物群の16S rRNA遺伝子のコピー数の量をリアルタイムPCRを用いて定量分析した。具体的には、採取した試料を遠心分離処理して微生物群を沈降させ、トリス−EDTA緩衝液 (pH8.0、100mM トリスHCl、40mM EDTA)に懸濁した。DNAはドデシル硫酸ナトリウム及びフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコール溶液(25:24:1 v/v)の存在下、微生物群から繰り返しビーズ衝突させて抽出し、次いで、抽出DNAをQIAamp DNAミクロキット(キアゲン社製)で精製した。これを、TaqMan リアルタイムPCTに供して微生物群の16S rRNA遺伝子のコピー数を定量分析した。プライマー/プローブセットは以下の通りとした。尚、このプライマー/プローブセットは、以下の論文に記載されているものである(Takai, K., K. Horikoshi (2000). "Rapid detection and quatification of members of archaeal community by quantitative PCR using fluorogenic probes." Appl. Environ. Microbiol. 66(11): 5066-5072.、Sawayama, S., Tsukahara K, Yagishita T (2006). "Phylogenetic description of immobilized methanogenic community using real-time PCR in a fixed-bed anaerobic digester." Bioresour. Technol. 97(1): 69-76.)。
・原核生物用プライマー/プローブセット:
Uni340F/Uni806R/Uni516F
・メタン菌用プライマー/プローブセットセット:
S-P-MArch-0348-S-a-17/S-D-Arch-0786-A-a-20/S-P-MArch-0515-S-a-25
(1)ガス成分分析結果
ガス生成速度の経時変化に関し、実施例1と比較例1の結果を図2に示す。実験開始(0日)〜15日目までは、実施例1の方がガス生成速度が若干速かったものの、顕著な差は見られなかった。しかし、HRTを10日として負荷を上昇させた16日目以降ではガス生成速度に顕著な差が見られた。即ち、比較例1では、ガス生成速度が徐々に低下し、最終日(45日目)には73mL/L/日まで低下したにも関わらず、実施例1では、最終日までガス生成速度が徐々に増加し続け、終には257mL/L/日まで上昇した。
揮発性脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)濃度の経時変化に関し、実施例1と比較例1の結果を図3に示す。実施例1では、全期間において揮発性脂肪酸が殆ど検出されなかった。これに対し、比較例1では、揮発性脂肪酸が全期間において検出され、特に実験期間の後半に向かうに伴い、その濃度が上昇する傾向が見られた。また、比較例1において蓄積している揮発性脂肪酸の大部分は酢酸であることが確認された。
COD除去効率及びSS除去効率に関し、実施例1と比較例1の結果をそれぞれ図4及び図5に示す。図4及び図5から明らかなように、実施例1の方が圧倒的にCOD除去効率及びSS除去効率が優れていた。
グルコース濃度に関し、実施例1と比較例1の結果を図6に示す。実験期間中において、グルコース濃度に殆ど差は見られなかった。
比較例1の発酵液及び実施例1の発酵液に存在していた原核生物及びメタン菌の定量PCRによるコピー数、実施例1のCFTに保持されていた原核生物及びメタン菌の定量PCRによるコピー数を確認した結果を表1に示す。
末端断片長多型解析(T−RFLP)により、全菌のうち、細菌を除く古細菌の群集構造を比較した。結果を図7に示す。図7中、Aは比較例1の発酵液中の細菌、Bは実施例1の発酵液中の細菌、Cは実施例1のCFT上に保持されていた細菌に関する結果である。
末端断片長多型解析(T−RFLP)により、全菌のうち、古細菌を除く細菌の群集構造を比較した。結果を図8に示す。図8中、Aは比較例1の発酵液中の細菌、Bは実施例1の発酵液中の細菌、Cは実施例1のCFT上に保持されていた細菌に関する結果である。
Claims (13)
- 古細菌として酢酸資化性メタン菌及び水素資化性メタン菌を含み、且つ細菌として嫌気性セルロース分解菌及び糖分解菌を含むメタン発酵汚泥またはメタン発酵汚泥含有液に微生物を担持し得る炭素製の担体を添加すると共にリグノセルロース系バイオマスを添加し、前記リグノセルロース系バイオマスの分解反応を進行させて、前記担体に少なくとも前記酢酸資化性メタン菌、前記水素資化性メタン菌、前記嫌気性セルロース分解菌及び前記糖分解菌を担持させ、且つ前記古細菌のうち前記酢酸資化性メタン菌を優占的に担持させる工程を含むことを特徴とするリグノセルロース系バイオマスからメタンガスを生成するための微生物担持担体の作製方法。
- 前記酢酸資化性メタン菌がメタノサルシナ(Methanosarcina)属の古細菌であり、
前記嫌気性セルロース分解菌がクロストリジウム(Clostridium)属の細菌である
請求項1に記載の微生物担持担体の作製方法。 - 前記水素資化性メタン菌がメタノバクテリウム(Methanobacterium)属の古細菌及びメタノサーモバクター(Methanothermobacter)属の古細菌であり、
前記糖分解菌がアナエロバクルム(Anaerobaculum)属の細菌である
請求項2に記載の微生物担持担体の作製方法。 - 前記炭素製の担体が炭素繊維不織布である請求項1〜3のいずれか1つに記載の微生物担持担体の作製方法。
- 前記リグノセルロース系バイオマスが藁である請求項1〜4のいずれか1つに記載の微生物担持担体の作製方法。
- 前記リグノセルロース系バイオマスが稲藁である請求項5に記載の微生物担持担体の作製方法。
- 請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法により得られた微生物担持担体を用いてリグノセルロース系バイオマスをメタン発酵処理することを特徴とするリグノセルロース系バイオマスからのメタンガス生成方法。
- 古細菌として酢酸資化性メタン菌及び水素資化性メタン菌を含み、且つ細菌として嫌気性セルロース分解菌及び糖分解菌を含むメタン発酵汚泥またはメタン発酵汚泥含有液に微生物を担持し得る炭素製の担体を添加すると共にリグノセルロース系バイオマスを添加し、前記リグノセルロース系バイオマスの分解反応を進行させて、前記担体に少なくとも前記酢酸資化性メタン菌、前記水素資化性メタン菌、前記嫌気性セルロース分解菌及び前記糖分解菌を担持させ、且つ前記古細菌のうち前記酢酸資化性メタン菌を優占的に担持させる工程を含むことを特徴とするリグノセルロース系バイオマスからのメタンガス生成方法。
- 前記酢酸資化性メタン菌がメタノサルシナ(Methanosarcina)属の古細菌であり、
前記嫌気性セルロース分解菌がクロストリジウム(Clostridium)属の細菌である
請求項8に記載のメタンガス生成方法。 - 前記水素資化性メタン菌がメタノバクテリウム(Methanobacterium)属の古細菌及びメタノサーモバクター(Methanothermobacter)属の古細菌であり、
前記糖分解菌がアナエロバクルム(Anaerobaculum)属の細菌である
請求項9に記載のメタンガス生成方法。 - 前記炭素製の担体が炭素繊維不織布である請求項8〜10のいずれか1つに記載のメタンガス生成方法。
- 前記リグノセルロース系バイオマスが藁である請求項7〜11のいずれか1つに記載のメタンガス生成方法。
- 前記リグノセルロース系バイオマスが稲藁である請求項12に記載のメタンガス生成方法。
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