JP5303269B2 - 骨髄指向性薬物送達物質およびその用途 - Google Patents
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Description
本発明は、薬学および臨床医薬の分野に係る。より具体的には、本発明は、骨、軟骨、骨髄および関節の疾患の診断、治療または予防のような広範な用途に用いることができる薬物送達物質に関する。
注入部位から離れている疾患部位を治療するために、溶液の形態で構成された薬物を静脈内投与することは、一般的である。しかし、静脈内投与に続いて、薬物は、対象の全身にわたって広がり、そのほとんどが、例えば尿を通じて、排泄される。したがって、患者は、疾患部位に治療レベルを用意するために、比較的多量の薬物投与を必要とし得る。多くの場合、過剰に多量の投与は薬物の副作用あるいは薬物の安全性に関する不確実性をもたらし得るので、要求される治療的投与量を投与することはできない可能性がある。すなわち、副作用の危険を減少させて、治療剤をより効率的に疾患部位に送達するための新規な方法および物質についての必要性が存在する。
本発明者らは、高い特異性をもって、治療剤を骨に指向させる能力を有する新規な薬物送達物質を確定した。これの剤は、また、骨における治療剤の蓄積をもたらす能力を有する。
MOOC−(R1)p−R2
(ここで、Mは水素原子あるいは一価の陽イオンであり、R1はスペーサーであり、R2は疎水性基であり、pは0または1である)で示される化合物であり得る。あるいは、両親媒性化合物は、式(2):
MOOCR3−CO−HNCH(COOR4)CH2CH2COOR4
(ここで、Mは水素原子あるいは一価の陽イオンであり、R3は、−CH2CH2−または−CH(CH3)CH2−を表し、R4は、C12〜C22アルキル基を表す)で示される。
MOOCR3−CO−HNCH(COOR4)CH2CH2COOR4
(ここで、Mは水素原子あるいは一価の陽イオンであり、R3は、−CH2CH2−または−CH(CH3)CH2−であり、R4は、C10〜C22アルキル基である)で示される両親媒性化合物、および0.5〜4.8モル%の、親水性部としてポリエチレングリコールを含む両親媒性化合物を含み、少なくとも1つの微粒子が、100〜500nmの平均粒径を有する。
本発明は、一般的に、表面上にアニオン性基を含む少なくとも1つの微粒子を含む骨髄指向性の薬物送達物質に関する。
1.微粒子
本発明による薬物を生体内に送達するための送達物質は、少なくとも1つのアニオン性基を表面に担持する指向性の担体(微粒子)を含む。微粒子は、表面に少なくとも1つのアニオン性基を担持する限り、どのような物質で構成されていてもよい。そのような物質の例には、油滴、脂肪乳剤、ポリマービーズ、ポリマーミセル、ポリマーゲル、蛋白質重合体、および両親媒性化合物により形成されるミセル、小胞体、繊維状集合体、平板状集合体等が含まれる。このような微粒子のサイズは、特に限定されるものでないが、通常は直径が20〜5000nm、好ましくは100〜1000nm、さらに好ましくは250±100nmである。粒子径が5000nmを越える微粒子の投与は、肺の毛細管閉塞を誘発するかもしれない。さらに、5000nmよりも大きな粒子は、肝臓または脾臓での網内系内に取り込まれ得、所期の効果が低下することもある。
ここで、両親媒性分子は、少なくとも1つの疎水性基と少なくとも1つの親水性基を有する分子をいうものと定義される。両親媒性分子は、例えば、ポリマー化合物、界面活性剤、脂質化合物のような、カルボン酸残基を含むことができる。好ましくは、カルボン酸残基は、所期の効果を効果的に生じさせるために、薬物送達物質の表面に配置され、この目的には、親水部にカルボン酸基を有する両親媒性化合物を用いることができる。
MOOC−(R1)p−R2
(ここで、Mは水素原子あるいは一価の陽イオン、R1はスペーサー、R2は疎水性基、pは0または1である)で示すことができる。スペーサー(R1)はあっても(p=1)なくても(p=0)よい。しかしながら、カルボン酸残基が送達物質の他の成分として使用されている両親媒性化合物の親水基により遮蔽されるような場合は、骨指向性が低下するため、好ましくは、スペーサーが存在する。スペーサーの例には、−(CH2)n−(nは1〜5の整数)、−(CH2CH2O)n−(nは1〜115の整数)および−CH2OCH2−が含まれる。疎水性基(R2)の例には、疎水性ペプチド、アルキル基、コレステロール等のステロール基、アミノ酸のジアシル誘導体が含まれる。親水性基は、親水性と疎水性のバランスや送達物質の他の成分として使用される両親媒性化合物との相溶性を考慮して選択される。一価の陽イオン(M)の例には、ナトリウムおよびカリウムのようなアルカリ金属が含まれる。
MOOCR3−CO−HNCH(COOR4)CH2CH2COOR4
(ここで、Mは水素原子あるいは一価の陽イオンであり、R3は、−CH2CH2−または−CH(CH3)CH2−を表し、R4は、C10〜C22アルキル基を表す)で示すことができる。一価の陽イオン(M)の例には、ナトリウムおよびカリウムのようなアルカリ金属が含まれる。これらカルボン酸含有脂質化合物は、例えば、ここに参照により具体的に組み込まれる米国特許第5,370,877号に記載されている方法により合成することができる。カルボン酸基を含有する両親媒性化合物の追加の例は、ここに参照により具体的に組み込まれるWO2003/018539に記載されている。しかしながら、カルボン酸基を有する両親媒性化合物は、上に記載されたものに限定されるものでない。
本発明のある態様において、微粒子は、小胞体を形成する、両親媒性分子の集合体を含む。本発明の小胞体は、上記負荷電基含有脂質化合物に加えて、中性脂質化合物を含むことが好ましい。全体的に負または正に荷電していないいずれもの脂質分子を中性脂質化合物として用いることができる。ホスファチジルコリン基を含有するリン脂質が好ましい。ホスファチジルコリン基を含有するリン脂質には、飽和リン脂質および不飽和リン脂質が含まれ、本発明ではいずれのものでも使用できる。また、これらの化合物のいずれもの組み合わせも用いることができる。飽和リン脂質の例には、合成および半合成リン脂質、および中性脂質またはそれらの誘導体、例えば100%に近い水添率の水添卵黄レシチン、水添大豆レシチン、並びにジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが含まれる。不飽和リン脂質の例には、卵黄レシチン、大豆レシチン、重合性基を有する重合性リン脂質、例えば、1,2−ビス(2,4−オクタデカジエノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリンまたは1,2−ビス−(8,10,12オクタデカトリエノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリンが含まれる。重合性リン脂質は、炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、アシル基、非重合性アルケニル基もしくは非重合性アルケノイル基のような非重合性脂肪酸残基を含有していてもよい。
本発明の特別の側面において、少なくとも1つの微粒子は、微粒子に結合された薬物を含む。用語「薬物」および「治療剤」は、この出願中で同義語として用いられており、対象における疾患または健康関連状態の診断、治療または予防に適用され得るいずれもの剤をいう。本発明の薬物送達物質に担持される薬物は、骨、骨髄または関節疾患の予防、診断、治療、あるいは保護に好適なものから選択される、特に限定されるものでない。好ましくは、送達物質は、抗ウイルス剤、抗微生物剤、抗細菌剤、抗真菌剤、抗新生物剤、抗炎症剤、放射標識剤、放射線不透過化合物、蛍光化合物、色素化合物、核酸配列、抗癌剤、細胞増殖因子、造血因子(エリスロポエチン、G-CSF)および生理活性物質から選択される薬物を担持する。これらの薬物を担持させるために、担体および薬物の物性を考慮して好適な方法を用いることができる。例えば、薬物は、共有結合、あるいは水素結合、疎水性相互作用およびイオン結合のような二次的な相互作用を利用して担体に担持させることができる。担体が小胞体により構成される場合、担持方法は、小胞体の内水層に内包させる方法、小胞体膜の疎水性部に導入する方法、および小胞体表面に結合あるいは吸着させる方法の中から、担持される薬物の物性を考慮して、選択することができる。
語句「薬学的に効果的な」または「薬学的に許容され得る」は、必要に応じて、動物またはヒトに投与されたとき、拒絶反応、アレルギー性反応または他の有害な反応を生じない分子および組成物を指す。ここで用いている「薬学的製剤」には、あらゆる溶媒、分散剤、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤等が含まれる。薬学的に活性な物質に対するそのような媒体および剤は、当該分野でよく知られている。いずれかの通常の媒体または剤が活性成分と適合しない場合を除き、治療組成物におけるその使用が企図されている。補助的活性成分も、組成物に含めることができる。ヒトへの投与のためには、製剤は、バイオロジックス標準のFDA局により要求される無菌性、発熱性、一般の安全性および純度の基準を満たすべきである。
本発明の送達物質は、いずれもの疾患または健康関連状態の診断、治療または予防に利用することができる。例えば、本発明の特別の態様において、疾患は、骨髄、骨、軟骨または関節を冒す疾患である。
本発明のいくつかの側面において、本発明の物質は、疾患、例えば、骨、骨髄、軟骨または関節などの疾患の予防、診断または治療において適用される。当業者に公知の広い多様な治療法が、本発明の物質と組み合わせて使用されてもよい。そのような治療法の例は、放射線療法、化学療法、外科的療法、免疫療法、遺伝子療法、光線療法、寒冷療法、毒素学的療法、またはホルモン療法を含む。当業者は、このリストが、がんおよび他の過形成性の病変のために利用できる治療様式を網羅的に示すものではないことを知っているであろう。
有意な期間は、各々の送達時間の間に終了しなかったことは一般的に保証されるだろう。そのような例において、互いに約12から24時間以内、より好ましくは互いに約6から12時間以内に両方の薬剤が投与されることが企図される。しかしながら、いくつかの状況において、有意な治療のための期間が延期されること、それぞれの投与の間が数日(2、3、4、5、6または7日)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8週)が経過することが望ましくてもよい。
本発明の薬物送達物質は、キットに組み込まれてもよい。当該キットは1以上の容器を含む。当該の容器は、一般的に少なくとも1のバイアル、バッグ、試験管、フラスコ、ビン、または他の容器を含み、それに対して構成要素が、好ましくは適切な一定分量で添加されてもよい。1以上の容器は、薬学的に有効量の本発明の薬物送達物質を含んでもよい。本発明のいくつかの態様において、当該薬物送達物質は1以上の薬物を含んでもよい。他の態様において、当該薬物は第一の容器に含まれ、当該薬物送達物質は第ニの容器に含まれ、それらは投与に先駆けて一緒にされ得る。
以下の例は、本発明のある態様を実例によって示すために含まれている。続く例において開示される技術は、本発明の実施において本発明者により発見された技術が良好に機能することを示すものであり、従って、その実施のためのいくつかの様式を構成するものであるとみなすことが可能であることが、当業者によって認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示の知識において、特定の態様において多くの変更が行われることが可能であり、これらは、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに同様または類似の結果が開示される、および同様または類似の結果が得られるということを正しく認識するべきである。
ジパルミトイルホスホコリンおよびコレステロールは、日本精化(株)(日本国大阪)から購入し、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[モノメトキシポリ(エチレングリコール)(5000)](PEG−DSPE)は、NOF社(日本国東京)から購入した。R3が−CH2CH2−を表し、R4がヘキサデシルを表す式(2)の化合物は、既報(宗ら、Biotecnol. Prog., 19:1547-1552, 2003)通りに合成した。グルタチオンは、シグマ(MO、セントルイス)から購入した。すべての小胞体の調製は、滅菌条件下で行った。ジパルミトイルホスホコリン(45.5モル%)、コレステロール(45.5モル%)およびカルボン酸基含有脂質化合物(R3が−CH2CH2−を表し、R4がヘキサデシルを表す式(2)の化合物;9.0モル%)をt−ブタノールに溶解させ、その混合物を凍結乾燥して混合脂質粉末を調製した。この粉末を水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に分散させ、25℃で撹拌して、多重層小胞体の水分散体を得た。この分散体を液体窒素で凍結した後40℃で融解させた。この凍結融解サイクルを3回繰返して、小胞体の分散体を得た。この分散体を凍結乾燥して小胞体組成物を得た。グルタチオン溶液(30mM)を添加し、組成物を25℃で2時間撹拌した。得られた混合物を、EXTRUDER(登録商標)(日本国の日油リポソーム製)に加え、加圧(2MPa)しながら14℃で、それぞれ3.0μm、0.8μm、0.65μm、0.45μm、0.30μmおよび0.22μmの孔径のアセチルセルロースフィルター(日本国の富士写真フイルム製)を順次透過させ、それにより小胞体分散体を得た。未封入グルタチオンを、3回の超遠心分離工程(3×105g、各60分)により除去し、消泡体を生理食塩水に分散させた。
放射性同位元素[テクネチウム−99m]過テクネチウム酸ナトリウム(99mTcO4;半減期6時間)の生理食塩中溶液を凍結乾燥したヘキサメチルプロピレンアミンオキシム(HMPAO)の市販キットに添加した、この溶液を例1のカルボン酸基含有小胞体分散体と混合した(Rudolph et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:10976-10980, 1991; Phillips et atl., Nucl. Med. Biol., 19:539-547, 1992; Phillips et al., J. Parmacol. Exp. Ther., 288:665-670, 1999; Sou et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 312:702-709, 2005;米国特許第5143713号および第5158760号)。得られた混合物を1時間放置し、遊離99mTcO4をゲル濾過により除去し、それにより放射性標識物質を内包した小胞体分散体を得た。表2に示すように、放射性標物質の80%以上が小胞体に内包された。
雄性ニュージーランド白色ウサギ(2〜3kg、各小胞体製剤あたりn=3〜4)をケタミン/キシラジン(いずれも、MO、セントジョゼフのフェニックス・サイエンティフィックから)混合物(それぞれ、50および10mg/kg体重(b.w.)の筋肉内投与により麻酔した。ウサギの一方の耳を静脈ラインでカテーテル化し、他方の耳を動脈ラインでカテーテル化した。例2で得た99mTc−小胞体分散体を1mL/分で静脈ライン中に注入し、血液紙料を動脈ラインから取り出した。各ウサギは、214.6〜377.4MBq(5.8〜10.2mCi)99mTc活性の合計投与と、15mg/kg体重の脂質を受けた。ウサギを、低エネルギー全目的コリメータを用いた、ピンナクル(Pinnacle)撮像コンピュータに接続されたピッカー(Picker)(クリーブランド、OH)大視野ガンマカメラ下で、仰臥位に置いた。
例2で調製した放射標識した小胞体分散体を耳静脈よりウサギに投与(脂質投与量:15mg/kg体重)した。24時間時点でこの動物をすばやく犠牲にし、組織紙料を集め、秤量し、バイオ分布の計算のための同じシンチレーションウェルカウンター内で放射線量についてカウントした。骨の質量は、1つの大腿骨のそれの12倍であると見積もった(Deitz, Proc. Soc. Exp. Med., 57:60-62, 1944)。肝臓、脾臓および骨に集積した放射性物質の割合を計測した。結果を図3に示す。図3からわかるように、高い骨中の集積性が確認され、PEG脂質を0.6モル%以上導入した場合では、骨中のパーセント注入投与量(ID)が増大し、肝臓中のパーセントIDが低下する。なお、パーセントIDは、摘出臓器において測定された放射線量より、投与全量を100%としたときの百分率として算出した。
ジパルミトイルホスホコリン(50モル%)、コレステロール(50モル%)からなる小胞体組成物を例2におけるように放射標識した。得られた小胞体分散体をウサギに投与(脂質投与量:15mg/kg体重)した。投与24時間後に、肝臓、脾臓および骨に集積した放射性物質の量を計測し、骨選択性比を計算した。結果を表3Aに示す。表3Aに示すように、小胞体の大部分が肝臓と脾臓に集積したため、この小胞体製剤について骨選択比0.05は、極めて低い。
ジパルミトイルホスホコリン(45.5モル%)、コレステロール(45.5モル%)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(9.0モル%)からなる小胞体組成物を例2におけるように放射標識した。得られた小胞体分散体をウサギに投与(脂質投与量:15mg/kg体重)した。投与24時間後に、肝臓、脾臓および骨に集積した放射性物質の量を計測し、骨選択性比を計算した。結果を表3Aに示す。表3Aに示すように、小胞体の大部分が肝臓と脾臓に集積したため、この小胞体製剤についての骨選択比0.16は、極めて低い。
ジパルミトイルホスホコリン(45.5モル%)、コレステロール(45.5モル%)カルボン酸基含有脂質化合物(R1が−CH2CH2−を表し、R2がヘキサデシルを表す式(2)の化合物;9.0モル%)、およびPEG−DSPE(0.6モル%)からなるカルボン酸残基含有小胞体を例1に記載した方法に従って調製し、放射性同位元素[テクネチウム−99m]HMPAO(99mTc−HMPAO;半減期:6時間)による小胞体の標識化を例2に記載した方法に従って行った。この小胞体分散体を耳静脈よりウサギに投与(脂質投与量:15mg/kg体重)し、投与後6時間まで全身のガンマカメラ像(シンチグラム)を取った。1分のダイナミック64×64画素シンチグラフィー像を、99mTc−小胞体の注入後連続1.5時間にわたって獲得した。注入後種々の時間で静止画像も獲得した。画像解析を、核医薬分析ワークステーション(ピンナクルコンピュータ;メダシス、アナーバー、MI)を用いて行った。対象の領域を、全身、1つの大腿骨、肝臓および脾臓の画像の周りに描画した。放射線量のカウントを、各時間で減衰補正し、全身カウントのパーセンテージに変換した。補正は、注入直後に測定したパーセント注入投与量を用いて、各臓器の血液プール分担率について行った。図4Aおよび4Bは、投与後1.5時間(図4A)および6時間(図4B)のシンシンチグラムである。シンチグラムより算出した骨、肝蔵および脾臓における投与された小胞体の分布のプロファイルをシンチグラムから解析し、図5に示す。骨における小胞体分布率は投与後から上昇し、投与後6時間で68.55±3.31%(n=3)に達した。
例7の1つの大腿骨を粗く骨幹と骨端に分離し、骨幹を更に骨髄と骨格に分離した。各組織における放射線量をカウントした。図5に示すとおり、66.5±0.9%の放射線量が骨髄で検出され、これは、カルボン酸残基含有小胞体が特に骨髄への方向性を有することを意味する。
初期の研究は、当該カルボン酸残基含有小胞体がナノ粒子担体として機能することを示し、並びにそれらの組織における顕微鏡的局在化を確認するために設計された。ジパルミトイルホスファチジルコリン(45.5モル%)、コレステロール(45.5モル%)およびカルボン酸基含有脂質化合物(式(2)において、R3が−CH2CH2−を表し、R4がヘキサデシル基を表す化合物;9.0モル%)およびPEG−DSPE(0.6モル%)を含み、内水相にテキサスレッド(TR)スルホニルクロライドに結合されたスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)(TR−SOD)を封じ込めること、および二分子膜に4,4−ジフルオロ−5−メチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ドデカン酸(C1−BODIPY C12)を埋め込むことにより二重蛍光標識された当該カルボン酸残基含有小胞体は、変更された例1において記載した方法に従って調製した。SODは、和光純薬(Wako Pure Chemical Industries, Ltd., Osaka, Japan)から購入した。C1−BODIPY C12およびTRスルホニルクロリドは、モレキュラー・プローブズ、Inc.(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)から購入した。SODへのTRスルホニルクロライドの結合は、以前に報告された方法(Lefevre et al., Bioconjug. Chem., 7(4):482-489, 1996)に従って行い、精製されたTR−SODを1モル%のC1−BODIPY C12を含む混合脂質で被包し、直径が247±22nmの大きさの二重蛍光標識カルボン酸残基含有含有小胞体を得た。標識された小胞体を、i.v.注射により麻酔した雄性ニュージーランド白色ウサギ(2.5kg、脂質:体重kg当たり15mg)に投与した。注射の6時間後に大腿骨髄組織、肝臓および脾臓を取り出し、10%のホルマリン溶液で固定し、次に切片にスライスした。当該切片はスライドグラスに4℃で寒天で固定し、共焦点スキャニング顕微鏡(Olympus IX−70)で検査した。図6に示すとおり、当該骨髄切片は、TR−SODとC1−BODIPY C12−標識カルボン酸残基含有小胞体の両方からの蛍光を有する。当該蛍光は局所的に集中し、より長い蛍光ドメインは、長軸に沿って30μmのサイズであった。脾臓の赤色髄における蛍光分布は高密度であり、これに対して肝臓においては低密度であった。この観察からの重要な知見は、膜プローブおよび被包性プローブからの蛍光は骨髄に共存することである。これらの画像は明瞭に、当該カルボン酸残基含有小胞体がナノ粒子担体として機能し、被包化された薬剤を骨髄組織に送達することを示す。透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行い、高拡大率で骨髄組織を観察した。ジパルミトイルホスファチジルコリン(45.5モル%)、コレステロール(45.5モル%)およびカルボン酸基含有脂質化合物(式(2)において、R3が−CH2CH2−、R4がヘキサデキシル基である化合物;9.0モル%)およびPEG−DSPE(0.6モル%)を含むカルボン酸残基含有小胞体を、i.v.注射で麻酔した雄性ニュージーランド白色ウサギ(2.5kg)に投与した。当該ウサギに体重kg当たり15mgの脂質を与えた。コントロールのウサギには注射をしなかった。小胞体の注射の6時間後にウサギの左大腿骨から骨髄を採取し、2.5%のグルタルアルデヒド溶液で固定した。固定した骨髄を次に、0.1mol/Lのリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄し、2%のオスミン酸で4℃で2時間染色した。臓器を段階的にエタノールで脱水し、次にクエトール812(Quetol 812)を用いて60℃で28時間重合した。得られた試料をウルトラカット・S・ミクロトーム(Ultracut S microtome)を使用して切片にスライスした。スライスした試料を3%の酢酸ウラニル溶液で20分間染色し、サトー鉛溶液(Satho’s lead solution, 酢酸鉛、硝酸鉛およびクエン酸鉛)でクエン酸中で5分間処理し、洗浄し、乾燥した。その試料を、透過型電子顕微鏡(TEM、H−7500、日立、東京、日本国)で観察し、写真を撮った。TEM観察は、明瞭に骨髄におけるカルボン酸残基含有小胞体の位置を示した(図7A、図7B)。大量の数の小胞体がマクロファージのエンドソームおよびリソソームに捕捉されたが、細胞質および細胞核では小胞体は全く観察されなかった(図7B)。これらの小胞体の直径の平均は270nmであり、これは静脈内に投与したカルボン酸残基含有小胞体の本来の直径であった。エンドソームおよびリソソームに小胞体を含むいくつかの類似のマクロファージが観察され、これに対して、観察した切片における顆粒球白血球、赤芽球、および内皮細胞などの他の種類の細胞においては小胞体が全く観察されなかった。これらの顕微鏡局在化調査は、マクロファージが循環からの小胞体のクリアランスおよびそれらの骨髄による取り込みの原因である細胞成分であることを示す。
ジパルミトイルホスホコリン(45.5モル%)、コレステロール(45.5モル%)、カルボン酸基含有脂質化合物(式(2)において、R3が−CH2CH2−を表し、R4がヘキサデシルを表す化合物)(8.4モル%)およびPEG−DSPE(0.6モル%)をt−ブタノールに溶解し、その混合物を凍結乾燥し、混合脂質粉末を調製した。当該粉末(0.8g)を200mMの硫酸アンモニウム溶液(20mL)に分散し、25℃で2時間攪拌した。結果として生じた混合物をEXTRUDER(登録商標)(日油リポソーム製、日本国)に加え、加圧(2MPa)しながら14℃で孔径がそれぞれ3.0μm、0.8μm、0.65μm、0.45μm、0.30μmおよび0.22μmのアセチルセルロースフィルター(富士写真フイルム製)を順次透過させて、それにより小胞体分散液を得た。この小胞体分散液を超遠心分離(3x105g、60分間)により、被包されなかった硫酸アンモニウムを除去し、小胞体を生理食塩水中に分散し、カルボン酸基含有小胞体(脂質濃度:40mg/mL、平均直径:245±84nm)を得た。アドリアマイシン溶液(アドレアマイシン濃度:17.2mM)を生理的食塩水(6.2mL)に市販のアドレアマイシン(62mg)を溶解することにより調製し、これを当該カルボン酸基含有小胞体分散液に添加し(40mg/mL、11.3mL)、次にこの混合物を55℃で10分間放置し、アドレアマイシンをカルボン酸基含有小胞体の内水相に封入した。封入されなかったアドレアマイシンは超遠心(3x105g、60分間)により取り除いた。紫外可視分光光度計(490nmの吸光度)による測定から、上澄みに回収された遊離しているアドレアマイシンは添加されたアドレアマイシンの3%であると算出され、添加されたアドレアマイシンの97%が小胞体の内水相に封入されたことが示された。沈殿した小胞体を生理的食塩水に分散させ、当該小胞体分散液をアセチルセルロースメンブランフィルター(孔径:0.45μm、アドバンテック製)を透過させて、アドレアマイシンを含有させたカルボン酸残基含有小胞体の所望の分散液(容量:13.2mL)を得た。
Claims (17)
- 少なくとも1つの微粒子を含む、骨髄を標的とするための薬物送達物質であって、
前記微粒子が
20〜500nmの直径を有し、
以下の構造;MOOCR3−CO−HNCH(COOR4)CH2CH2COOR4;を有する第1の両親媒性化合物(ここで、Mは水素原子あるいは一価の陽イオンであり、R3は、−CH2CH2−または−CH(CH3)CH2−を表し、R4は、C12〜C22アルキル基を表す)と、
PEG−DSPEからなる第2の両親媒性化合物と、
を含み、
前記微粒子は、前記第1および第2の両親媒性化合物により形成されている小胞体である、薬物送達物質。 - 20〜500nmの平均直径を有する複数の微粒子を含む請求項1に記載の薬物送達物質。
- 請求項1または2に記載の前記薬物送達物質であって、
前記第1の両親媒性物質が、1〜50モル%で存在し、前記第2の両親媒性物質が0.5〜4.8モル%で存在する、薬物送達物質。 - 前記少なくとも1つの微粒子が、該少なくとも1つの微粒子に結合された薬物を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬物送達物質。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載の薬物送達物質を含む、対象における骨、軟骨または骨髄の疾患の予防、治療または診断のための医薬組成物。
- 前記薬物送達物質が、体重1kgあたり0.1〜500mgの薬物送達物質量の投与形態にある、請求項5に記載の医薬組成物。
- 前記疾患が、対象における骨髄の疾患であり、前記薬物送達物質が、体重1kgあたり0.1〜500mgの薬物送達物質量の投与形態にある、請求項5に記載の医薬組成物。
- 前記疾患が対象における関節の疾患である、請求項5に記載の医薬組成物。
- 前記薬物送達物質が、体重1kgあたり0.1〜500mgの薬物送達物質量の投与形態にある請求項8に記載の医薬組成物。
- 前記対象が、ヒトである請求項5〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
- 薬学的に有効量の請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬物送達物質を含む、対象における骨、軟骨または骨髄の疾患の予防、治療または診断のための医薬組成物。
- 前記薬物送達物質の薬学的に有効量が、対象の体重1kgあたり薬物送達物質0.1〜500mgである請求項11に記載の医薬組成物。
- 前記対象が、骨髄の疾患を有する請求項11に記載の医薬組成物。
- 薬学的に有効量の請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬物送達物質を含む、対象における関節の疾患の予防、治療または診断のための医薬組成物。
- 前記薬物送達物質の薬学的に有効量が、対象の体重1kgあたり薬物送達物質0.1〜500mgである請求項14に記載の医薬組成物。
- 前記対象が、ヒトである請求項11〜15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
- 所定量の請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬物送達物質、および封止された容器を含むキット。
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