JP5283104B2 - アセチル化及び脱アセチル化の蛍光可視化検出方法 - Google Patents
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Description
従来、細胞内のタンパク質のアセチル化量を調べる方法として、細胞を、トリチウム標識された酢酸で処理することにより細胞内のアセチル化タンパク質をアセチル化ラベルした後、目的のタンパク質を精製し、アセチル化タンパク質の放射能をオートラジオグラフィーで検出する方法と、アセチル化タンパク質を特異的に認識する抗体を用いたウェスタンブロッティング法が用いられてきた。また、アセチル化タンパク質の局在を調べる方法として、固定化した細胞に膜透過処理を行い、アセチル化タンパク質を特異的に認識する抗体を用いてその局在を検出する免疫染色法が知られている。これらの従来法は、いずれも細胞を破砕することが必要であり、生きた細胞におけるタンパク質のアセチル化・脱アセチル化の空間分解能及び時間分解能を持った解析をすることは不可能であった。
一方、タンパク質アセチル化と同様に重要な翻訳後修飾であるタンパク質リン酸化は、蛍光プローブを用いた生細胞内での空間及び時間分解能を持った解析が報告されている(非特許文献1、非特許文献2、特許文献1及び特許文献2)。
よって、本発明は、生細胞におけるタンパク質のアセチル化及び脱アセチル化を検出するための蛍光プローブの提供を目的とする。
また、本発明は、生細胞におけるタンパク質のアセチル化及び脱アセチル化を検出するための蛍光プローブを用いた、細胞内タンパク質のアセチル化及び脱アセチル化状態を検出する方法の提供を目的とする。
(1)本発明の第1の態様は、「アセチル化基質ドメインと、アセチル化基質結合ドメインを、リンカーペプチドで連結し、該アセチル化基質ドメインと該アセチル化基質結合ドメインに、各々、異なる2つの蛍光特性を持つ蛍光タンパク質を連結し、前記異なる2つの蛍光特性を持つ蛍光タンパク質がFRETのドナーとアクセプターの関係にある蛍光プローブ」である。
(2)本発明の第2の態様は、「前記リンカーペプチドが、グリシン及び/又はセリンからなることを特徴とする上記(1)に記載の蛍光プローブ」である。
(3)本発明の第3の態様は、「前記リンカーペプチドの配列が、配列番号1で表される配列が1〜9回繰り返された配列であることを特徴とする上記(1)に記載の蛍光プローブ」である。
(4)本発明の第4の態様は、「前記蛍光タンパク質が、GFP又はGFPの色変異体であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の蛍光プローブ」である。
(5)本発明の第5の態様は、「前記GFPの色変異体が、Venus、CFP、YFP、RFP、BFPからなるグループから選択されることを特徴とする上記(4)に記載の蛍光プローブ」である。
(6)本発明の第6の態様は、「前記アセチル化基質ドメインがヒストンH4であることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の蛍光プローブ」である。
(7)本発明の第7の態様は、「前記アセチル化基質結合ドメインがブロモドメインを有するタンパク質であることを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の蛍光プローブ」である。
(8)本発明の第8の態様は、「前記ブロモドメインを有するタンパク質が以下の(a)又は(b)で示されるポリペプチドであることを特徴とする上記(7)に記載の蛍光プローブである。
(a)配列番号2で表される配列の1〜443番目のアミノ酸からなるポリペプチド、
(b)配列番号2で表される配列の1〜443番目のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失若しくは挿入を持つアミノ酸配列からなり、かつ、アセチル化されたタンパク質と結合するポリペプチド」
(9)本発明の第9の態様は、「前記ブロモドメインを有するタンパク質が以下の(a)又は(b)で示されるポリペプチドであることを特徴とする請求項7に記載の蛍光プローブ。
(a)配列番号4で表される配列の57〜468番目のアミノ酸からなるポリペプチド、
(b)配列番号4で表される配列の57〜468番目のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失若しくは挿入を持つアミノ酸配列からなり、かつ、アセチル化されたタンパク質と結合するポリペプチド」である。
(10)本発明の第10の態様は、上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の蛍光プローブをコードする核酸」である。
(11)本発明の第11の態様は、「上記(10)に記載の核酸を含むベクター」である。
(12)本発明の第12の態様は、「上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の蛍光プローブを生細胞内に導入し、該蛍光プローブから得られるFRET変化を検出し、生細胞内における前記アセチル化基質ドメインのアセチル化−脱アセチル化の変動を測定する方法」である。
(13)本発明の第13の態様は、「上記(11)に記載のベクターを生細胞内に形質導入し、該ベクターから蛍光プローブが発現する条件下で細胞を培養し、細胞内で発現した蛍光プローブから得られるFRET変化を検出し、生細胞内における前記アセチル化基質ドメインのアセチル化−脱アセチル化の変動を測定する方法」である。
(14)本発明の第14の態様は、「上記(7)乃至(9)のいずれかに記載の蛍光プローブを生細胞内に導入し、該生細胞と候補化合物とを反応させ、蛍光プローブから得られるFRETを検出し、生細胞と候補化合物を反応させた結果FRETが変化した場合、該候補化合物をブロモドメイン結合因子であると判定する、ブロモドメイン結合因子のスクリーニング方法」である。
(15)本発明の第15の態様は、「上記(7)乃至(9)のいずれかに記載の蛍光プローブを生細胞内に導入し、該生細胞と候補化合物とを反応させ、蛍光プローブから得られるFRETを検出し、該生細胞と候補化合物を反応させた結果FRETが変化した場合、該候補化合物をヒストンアセチル化酵素活性の制御因子であると判定する、ヒストンアセチル化酵素活性の制御因子のスクリーニング方法」である。
(16)本発明の第16の態様は、「上記(7)乃至(9)のいずれかに記載の蛍光プローブを生細胞内に導入し、該生細胞と候補化合物とを反応させ、蛍光プローブから得られるFRETを検出し、該生細胞と候補化合物を反応させた結果FRETが変化した場合、該候補化合物をヒストン脱アセチル化酵素活性の制御因子であると判定する、ヒストン脱アセチル化酵素活性の制御因子のスクリーニング方法」である。
(17)本発明の第17の態様は、「ブロモドメイン結合因子のスクリーニングシステムであって、以下の手段:
(a)上記(7)乃至(9)のいずれかに記載の蛍光プローブを生細胞に導入する手段、
(b)前記生細胞と候補化合物とを反応させる手段、
(c)蛍光プローブから得られるFRETの変化を検出する手段、及び
(d)前記FRETの変化の検出結果を指標にして、候補化合物の中からブロモドメイン結合候補化合物を選別する手段、
を含む前記システム」である。
(18)本発明の第18の態様は、「ヒストンアセチル化酵素活性又はヒストン脱アセチル化酵素活性の制御因子のスクリーニングシステムであって、以下の手段:
(a)上記(7)乃至(9)のいずれかに記載の蛍光プローブを生細胞に導入する手段、
(b)前記生細胞と候補化合物とを反応させる手段、
(c)蛍光プローブから得られるFRETの変化を検出する手段、及び
(d)前記FRETの変化の検出結果を指標にして、候補化合物の中からヒストンアセチル化酵素活性又はヒストン脱アセチル化酵素活性の制御因子候補化合物を選別する手段、
を含む前記システム」である。
「アセチル化基質ドメイン」には、アセチル化されるアミノ酸を含むタンパク質又はポリペプチド断片であって、必ずしも、機能的領域として作用しないものも含まれる。アセチル化基質ドメインとしては、例えば、ヒストンH2A、ヒストンH2B、ヒストンH3、ヒストンH4、p53タンパク質、α−チューブリン、HSP90、HIF1α、NF−kappaB、Importin α、Ku70、アンドロゲンレセプター 及びこれらの断片などを挙げることができる。また、「アセチル化基質結合ドメイン」とは、アセチル化基質ドメインと結合するタンパク質又はポリペプチド断片であって、必ずしも、機能的領域として作用しないものも含まれる。アセチル化基質結合ドメインとしては、例えば、BRDT(bromodomain protein testis−specific)、Brd2(bromodomain containing protein 2)、Brd4、TAFII250、PCAF、GCN5、CBPのブロモドメインなどを挙げることができる。
本発明の蛍光プローブ(図1参照)は、アセチル化基質ドメイン(図1、ヒストンH4)とアセチル化基質結合ドメイン(図1、ブロモドメイン)との結合解離に伴うFRETの変化をモニターすることで、アセチル化基質ドメインのアセチル化及び脱アセチル化状態の変動を、生細胞内でリアルタイムに検出することを可能にするものである。つまり、アセチル化基質ドメインがアセチル化されていない状態では、アセチル化基質結合ドメインと結合せず、両ドメインに連結している蛍光タンパク質間にFRETが生じるが、アセチル化基質ドメインがアセチル化されると、アセチル化基質結合ドメインと結合するため、蛍光タンパク質間におけるFRETが解消する。このようなFRETの変化を検出することで、アセチル化基質ドメインのアセチル化状態をモニターすることができる。
さらに、本発明の蛍光プローブを用いると、アセチル化基質ドメインとして完全長のタンパク質、あるいは、該タンパク質の細胞内局在に影響を与えない程度の長さのタンパク質の一部を用いると、細胞内において適切な局在を示すことにより、アセチル化状態の変化をその局在位置においてモニターすることが可能となる。この場合、FRETの変化は特定の細胞について、蛍光顕微鏡などにより観察することができるため、目的のタンパク質(アセチル化基質ドメイン)のアセチル化状態の変化をリアルタイムで可視化することができる。
本発明のシステムには、
(a)本発明の蛍光プローブを生細胞に導入する手段、
(b)前記生細胞とブロモドメイン結合候補化合物とを反応させる手段、
(c)蛍光プローブから得られるFRETの変化を検出する手段、及び
(d)前記FRETの変化の検出結果を指標にしてブロモドメイン結合候補化合物を選別する手段、
及び、
(a)本発明の蛍光プローブを生細胞に導入する手段、
(b)前記生細胞と候補化合物とを反応させる手段、
(c)蛍光プローブから得られるFRETの変化を検出する手段、及び
(d)前記FRETの変化の検出結果を指標にして、候補化合物の中からヒストンアセチル化酵素活性又はヒストン脱アセチル化酵素活性の制御因子候補化合物を選別する手段、
を含む前記システム
本実施例では、アセチル化基質ドメインとしてヒストンH4の全長、アセチル化基質結合ドメインとしてBRDTのブロモドメイン又はBrd2のブロモドメイン、蛍光タンパク質としてCFPとVenusを用いて蛍光プローブを調製した(図1)。Venus、BRDTのブロモドメイン、Brd2のブロモドメイン、ヒストンH4、CFPをコードするDNAは、各々、配列番号9、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号11からなる鋳型DNAに対し、下記のプライマーセットを用いて、pyrobest DNA Polymerase(Takara社)を用い、添付の説明書に従ってPCRを行うことにより取得した。なお、鋳型となるDNAに関して、マウスヒストンH4については、プロクエストツーハイブリッドcDNAライブラリー(マウス脳;invitrogen社)から、
H4−For:5’−GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTCCGGTACCATGTCAGGACGAGGA−3’(配列番号12)
H4−Rev no Stop:5’−GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCGACGCCGCCGAAGCCGTA−3’(配列番号13)、
のプライマーペアーを用いて、pyrobestDNA polymerase(Takara社)を使用し、PCRを行い、GATEWAY法(Invitrogen社)によりクローニングを行った。また、マウスBRDTについては、Pivot−Pajotら,Mol.Cell.Biol.23:5354−5365,2003に記載のクローニング方法により、ヒトBrd2については、スーパースクリプトプリメイドcDNAライブラリー(ヒト脳;invitrogen社)から、
hBrd2_EcoRI_for:5’−CGAATTCACCCCTGCCAACCCA−3’(配列番号14)
hBrd2_XhoIstopSalI_rev:5’−AGTTCTCGAGTTAGTCGACGGCAGTAGAGACTGG−3’(配列番号15)
プライマーペアーを用いて、pyrobestDNA polymerase(Takara社)を使用し、PCRを行い、クローニングを行った。Venusについては、Nagaiら,Nat.Biotechnol.20:87−90,2000に記載のクローニング方法により入手し、CFPについては、クロンテック社から購入した。
Venus
GFPforEcoRI:5’−CCGTGGTACCATGGTGAGCAAGGGC−3’(配列番号16)
GFPrevEcoRI:5’−CCGTGAATTCCTTGTACAGCTCGTC−3’(配列番号17)
BRDTのブロモドメイン
BRDTforEcoRI:5’−AGTTGAATTCTTTAAACCCGAGGAGCTA−3’(配列番号18)
BRDTrevSalI:5’−AGTTGTCGACAAGAGACTGCATGACAGG−3’(配列番号19)
Brd2のブロモドメイン
hBrd2_EcoRI_for:5’−CGAATTCACCCCTGCCAACCCA−3’(配列番号14)
hBrd2_XhoIstopSalI_rev:5’−AGTTCTCGAGTTAGTCGACGGCAGTAGAGACTGG−3’(配列番号15)
ヒストンH4
H4forBamHI:5’−AGTTGGATCCATGTCAGGACGAGGAAAA−3’(配列番号22)
H4revSalI:5’−AGTTGTCGACGCCGCCGAAGCCGTA−3’(配列番号23)
CFP
GFPforSalI_EcoRV:5’−AGTTGTCGACCCAGCTTTCTTGTACAAAGTGGTTGATATCATGGTGAGCAAGGGC−3’(配列番号24)
GFPrevXhoI:5’−AGTTCTCGAGTTACTTGTACAGCTCGTC−3’(配列番号25)
また、リンカーペプチドをコードするDNAについては、下記のポリヌクレオチドを、定法によりアニールさせて調製した。
リンカーペプチド
Linker(GGGGS)4for:5’−TCGACGGAGGAGGTGGATCTGGTGGAGGAGGTTCTGGAGGTGGTGGTTCA GGTGGTGGAGGATCTG−3’(配列番号20)
Linker(GGGGS)4rev:5’−GATCCAGATCCTCCACCACCTGAACCACCACCTCCAGAACCTCCTCCACCAGATCCACCTCCTCCG−3’(配列番号21)
Venus:KpnI、EcoRI
BRDT及びBrd2のブロモドメイン:EcoRI、SalI
リンカーペプチド:SalI、BamHI
ヒストンH4:BamHI、SalI
CFP:SalI、XhoI
次に、ヒストンH4とCFPをpcDNA3.1のBamHI−XhoIサイトにクローニングし、その後、Venus、BRDTのブロモドメイン及びリンカーペプチドを順次クローニングし、5’側から、Venus、BRDTのブロモドメイン又はBrd2のブロモドメイン、リンカーペプチド、ヒストンH4、CFPをコードする各DNAの順に配置された発現ベクターを調製した。
蛍光プローブを発現させるCos7細胞は、10%FCS,1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%MEM Non−Essential Amino Acids (Invitrogen社)、1mM ピルビン酸ナトリウムを添加したDMDM中で培養した。
調製した発現ベクターは、FuGENE6(ロシュ社)を用いてCos7細胞に形質導入し、その後、37℃、5%CO2の条件下で静置した。
以下、調製した蛍光プローブ(図1、以下VB4HC(BRDTのブロモドメインを使用)又はBrd2−VB4HC(Brd2のブロモドメインを使用)とする。)を細胞内に導入し、ヒストンH4のアセチル化状態を検出した結果を示す。実験のコントロールとして、BRDTのブロモドメインに存在する2つのチロシンをアラニンに置換し、アセチル化ヒストンとの結合能を消失させたもの(図1、VB4HC−Y2A)、ヒストンH4の4つのリジン(5番目、8番目、12番目及び16番目)をアルギニンに置換し、アセチル化を受けない変異体としたもの(図1、VB4HC−K4R)を作製して、適宜使用した。
2−1.VB4HCの機能について
BRDTのブロモドメインはヒストンH4の5番目のリジンと8番目のリジンがアセチル化された時に結合するが、5番目と8番目のリジンのアセチル化はヒストンH4が高度にアセチル化された状態で生じる。従って、本実施例で使用した蛍光プローブはヒストンH4の過剰アセチル化状態をモニターすることができる。図2は、Venus−BRDTのコンストラクトを細胞内に形質導入し、Pivot−Pajotらの方法(Pivot−Pajotら、Mol.Cell Biol.23:5354−5364、2003)により行ったペプチドプルダウンアッセイの結果を示すものである。この結果から、BRDTのブロモドメインはアセチル化したヒストンH4と特異的に結合し、ヒストンH4の5番目と8番目の両方のリジンがアセチル化されたときのみBRDTのブロモドメインと結合することが明らかとなった(図2下段)。
VB4HCの細胞内局在について検討を行った(図3)。VB4HCをCos7細胞に形質導入した後、蛍光イメージの観察のためにフェノールレッドを含まない培養液に置換した。細胞は、CCDカメラ(UIC−QE;Molecular Devies社)を備えた顕微鏡(Olympus IX81;オリンパス社)を用いて、37℃、5%CO2の条件下で観察を行った。Hoechst33342とVenusのイメージは、Delta Vision system(Applied Precision社)を用いて、CCDカメラ(PhotometricsCH350L;Roper社)を備えた顕微鏡(Olympus IX70;オリンパス社)を用いて取り込んだ。その結果、作製したVB4HCは、DNAと同じ局在を示すことが分かった(図3D)。
また、細胞成分を分画してVB4HCの存在を確認したところ、内在性のヒストンと同様にクロマチン内に取り込まれていることも分かった(図4)。
ヒストン脱アセチル化阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)処理によるVB4HCのアセチル化の蓄積をイムノブロッティング(ウエスタンブロティング法)により検出した結果である(図5)。VB4HCを発現するCos7細胞と発現していないCos7細胞を、1μMのTSAで37℃にて、0、1、2、3、4、8時間処理し、各時点で、複数箇所(Lys5、8、12及び16)でアセチル化されたヒストンH4に対する抗体で細胞全体についてイムノブロッティングを行った(図5)。その結果、蛍光プローブのアセチル化の蓄積する時間経過は、内在性のヒストンH4のアセチル化の蓄積の時間経過と一致することが確認された(図5、AとBとの比較)。
次に、TSAの存在下でVB4HCから得られるFRETを検出した。蛍光イメージは、440AF21励起フィルター455DRLP2色性ミラーと、2つの放射フィルター(CFP用;480AF30、Venus用;535AF26)を備えたMetaFluor(Universal Imaging社)を用いて取り込み、480nm/535nmの蛍光強度比を経時的に観察した(図6及び図7)。その結果、蛍光プローブ、VB4HCを発現させたCos7細胞にTSAを添加すると、核全体においてFRETが解消するように蛍光強度比変化が生じ(図6)、この応答はTSA添加後、3時間以内に平衡に達することが分かった(図7)。この平衡に達するまでにかかる時間は、ウェスタンブロッティング法によってアセチル化のバンドが検出されるまでにかかる時間と等しい(図5参照)。VB4HCのアセチル化サイトである4つのリジンをアルギニンにかえた変異体(VB4HC−K4R)(図1、B4HC−K4R)を発現しているCos7細胞にTSAを添加しても、蛍光強度比変化は起きなかった(図8、K4R)。これは蛍光プローブの応答が蛍光プローブのアセチル化に依存していることを示している。また、アセチル化基質結合ドメインに、アセチル化ヒストンH4と結合しないようなBRDTのブロモドメインを用いた蛍光プローブ(VB4HC−Y2A)を発現しているCos7細胞にTSA添加しても、蛍光強度比変化は起きなかった(図8、Y2A)。FRETアクセプターであるVenusに直接強い励起光を当て、Venusの蛍光団を壊すと、Venusの蛍光団からの蛍光(535nm)が減少、FRETドナーであるCFPの蛍光(480nm)が回復する(図9)。この結果から、この蛍光プローブ(VB4HC)はアセチル化が誘導される前にFRETを起こしていることを示している。また、Venusの蛍光団を壊した後に、TSAを添加しても、蛍光強度比変化は起きなかった(図8、光退色)。この結果は、蛍光プローブの蛍光強度比変化が蛍光プローブのアセチル化によるFRET変化に依存していることを示している。
また、Brd2−VB4HCについても、VB4HCと同様にTSAによりFRETが解消するように蛍光強度比変化が生じた(図10及び図11)。従って、本発明の蛍光ブローブは、BRDTのみならず、他のブロモドメインを使用した場合においても、効果的に機能することが明らかとなった。
本実施例で報告した蛍光プローブ(VB4HC)を用いて、各種HDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)阻害剤によるヒストンH4アセチル化誘導を調べた。TSAの例を図14に、CHAP31、SCOP304、SCOP402(Nishinoら,Org Lett 5:5079−5082,2003)の例を、各々、図15、16、17に示した。TSAは添加後、直ちにアセチル化の蓄積がはじまるのに対し(図14)、SCOP304は添加後、90分後からアセチル化の蓄積がはじまることがわかった(図16)。これはこの蛍光プローブがヒストンH4のアセチル化の蓄積の時間変化を高分解能で追うことが可能であることを示している。また、TSA添加によるアセチル化の蓄積をウェスタンブロッティングと比較したところ、ウェスタンブロッティングでアセチル化が検出できるTSAの濃度の10分の1の濃度である1nMからアセチル化が検出できた(図14)。この結果は、この蛍光プローブがヒストンH4のアセチル化を従来のウェスタンブロッティング法より高感度で検出可能であることを示している。さらに、市販のHDAC阻害剤であるスクリプタイド(Sigme−Aldrich社)とブチル酸ナトリウム(和光純薬)添加による蛍光プローブの応答を図18、図19に示した。
以上の結果から、本発明の蛍光プローブはヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害剤の影響を検出することが可能であるため、HDAC阻害因子のスクリーニング等に有効であることが明らかとなった。
また、本発明の蛍光プローブ(VB4HC)を用いて、有糸分裂過程におけるヒストンH4のアセチル化状態を観察した。図20に有糸分裂中のヒストンH4のアセチル化状態を擬似カラー表示で示した。染色体が凝集するとともにヒストンH4の脱アセチル化が起こり、分裂後期の初めにヒストンH4のアセチル化量は最も低くなり、分裂後期の後半からヒストンH4の再びアセチル化が起こり、分裂終期の後半には分裂前のアセチル化状態まで回復した(図20及び図21)。微小管重合阻害剤であるノコダゾール処理によって分裂期に停止させたCos7細胞は、ノコダゾール未処理のCos7細胞と比較して、分裂期のマーカーであるヒストンH3のS10のリン酸化の増加が確認され、ヒストンH4のアセチル化は減少していることをウェスタンブロッティングによって確認した(図22)。
以上の結果は、本発明の蛍光プローブを用いることで生体内のヒストンH4アセチル化の変動をリアルタイムで検出することを示したものであるが、原理的には、アセチル化ヒストンとブロモドメインの結合を競合阻害する物質が存在すれば、そのような阻害物質を簡便に検出できるはずである。すなわち、通常の細胞状態では一定レベルのアセチル化が存在するため、部分的なアセチル化ヒストン−ブロモドメインの相互作用があり、そのため480nm/535nmの比は一定の値を示す。アセチル化ヒストン−ブロモドメインの相互作用と競合し、阻害するものがあれば、この値は低下するはずである。実際、ブロモドメインのアセチル化リジン結合ドメインと結合する化合物A(SPECS社、ID番号;AG−670/40909956)を添加すると蛍光強度比の減少が観察された(図23)。この蛍光プローブの蛍光強度比の減少は似た構造を持つがブロモドメインと結合しない化合物B(SPECS社、ID番号;AF−399/15128278)を添加しても観察されなかった。この結果は、生細胞内でこの化合物Aが、蛍光プローブ内のBRDTのブロモドメインに競合的に結合することで、ブロモドメインとアセチル化リジンの結合を阻害していることを示している。
化合物B
Claims (7)
- ヒストンH4とBRDTのブロモドメインがリンカーペプチドで連結され、該ヒストンH4と該BRDTのブロモドメインに、各々、異なる2つの蛍光特性を持つ蛍光タンパク質が連結され、前記異なる2つの蛍光特性を持つ蛍光タンパク質がFRETのドナーとアクセプターの関係にある蛍光ブローブを、生細胞内に導入し、該蛍光プローブから得られるFRET変化を検出し、生細胞内における前記ヒストンH4の5番目及び8番目の両方のリジンがアセチル化された状態を検出する方法。
- ヒストンH4とBRDTのブロモドメインがリンカーペプチドで連結され、該ヒストンH4と該BRDTのブロモドメインに、各々、異なる2つの蛍光特性を持つ蛍光タンパク質が連結され、前記異なる2つの蛍光特性を持つ蛍光タンパク質がFRETのドナーとアクセプターの関係にある蛍光ブローブをコードする核酸を含むベクターを、生細胞内に形質導入し、該ベクターから蛍光プローブが発現する条件下で細胞を培養し、細胞内で発現した蛍光プローブから得られるFRET変化を検出し、生細胞内における前記ヒストンH4の5番目及び8番目の両方のリジンがアセチル化された状態を検出する方法。
- 前記リンカーペプチドが、グリシン及び/又はセリンからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
- 前記リンカーペプチドの配列が、配列番号1で表される配列が1〜9回繰り返された配列であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
- 前記蛍光タンパク質が、GFP又はGFPの色変異体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
- 前記GFPの色変異体が、Venus、CFP、YFP、RFP、BFPからなるグループから選択されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
- 前記BRDTのブロモドメインが以下の(a)又は(b)で示されるポリペプチドであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
(a)配列番号2で表される配列の1〜443番目のアミノ酸からなるポリペプチド、
(b)配列番号2で表される配列の1〜443番目のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失若しくは挿入を持つアミノ酸配列からなり、かつ、アセチル化されたタンパク質と結合するポリペプチド
Priority Applications (1)
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