JP5281227B2 - マルトース−1−リン酸生成酵素 - Google Patents
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Description
FEBS Letters 1976, 61(2):192-3 Enzyme Microb. Technol. 1995, 17,140-146 Atherroscleosis 1998, 136(2):297-303, Acta Histochem. 1997, 99(4):401-410, J. Immunol. 1989, 143(11):3666-3672 Arch Microbiol. 2003, 180(4):233-239 Planta. 1982, 154:87-93
1)作用 :グルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖及びリン酸類又はその塩からマルトース−1−リン酸を生成する。
2)基質特異性:リン酸類又はその塩との存在下で、グルコース重合度6以上のα−1,4グルコシド結合を含むオリゴ糖、多糖又はそれらの分解物によく作用してマルトース−1−リン酸を生成する。グルコース重合度5のオリゴ糖に若干作用し、重合度2〜4のオリゴ糖には殆ど作用しない。
3)分子量 :約75kDa(SDS−PAGE)
4)至適pH :6.5〜8.0
5)至適温度 :35〜50℃
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)(a)のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つマルトース−1−リン酸生成能を有するタンパク質
(c)(a)のアミノ酸配列と60%以上の同一性を有し、且つマルトース−1−リン酸生成能を有するタンパク質
(d)(a)のアミノ酸配列と38%以上の同一性を有し、且つマルトース−1−リン酸生成能を有するタンパク質であって、Ara-Glu-Asn-Pro-Pro-Lys-Lys(又はArg)-Tyr-Gln(又はGlu)-Asp-Ile又はPhe-Arg-Val(又はIle)-Asp-Asn-Pro-His-Thr-Lys-Proで示されるアミノ酸配列を有するタンパク質
(a)配列番号1に示す塩基配列で示されるDNA
(b)(a)の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つマルトース−1−リン酸生成能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)(a)の塩基配列と60%以上の同一性を有し、且つマルトース−1−リン酸生成能を有するタンパク質をコードするDNA
本発明酵素の生産微生物としては、コリネバクテリウム属細菌、例えばCorynebacterium sp. JCM1300や、Corynebacteriumflavescens、Corynebacterium glutamicum、Corynebacteriumhoagii、Corynebacterium vitaeruminis、Corynebacteriumpilosum、Corynebacterium amycolatum、Corynebacterium matruchoti、Corynebacteriumminutissimum、Corynebacterium striatum、Corynebacteriumcallunae等が挙げられる。特に、Corynebacterium sp. JCM1300、Corynebacterium flavescens JCM1317、Corynebacteriumglutamicum JCM1318、Corynebacterium hoagii JCM1319、Corynebacteriumglutamicum JCM1321、Corynebacterium vitaeruminis JCM1323、Corynebacteriumpilosum JCM3714、Corynebacterium amycolatum JCM7447、Corynebacteriummatruchotii JCM9386、Corynebacterium minutissimum JCM9387、Corynebacteriumstriatum JCM9390、Corynebacterium callunae IFO15359が好ましく、マルトース−1−リン酸生産性の高さの点から、Corynebacteriumsp. JCM1300、Corynebacterium hoagii JCM1319、Corynebacteriumglutamicum JCM1321、Corynebacterium callunae IFO15359が特に好ましい。
1)作用
グルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖及びリン酸類又はその塩からマルトース−1−リン酸を生成する。
すなわち、本発明酵素は、リン酸類又はその塩の存在下において、グルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖に作用して、マルトース単位を認識して加リン酸分解をするホスホリラーゼ活性を有する。ホスホリラーゼは、これまでグルコース等、単糖を認識してグルコース−1―リン酸等を生成する酵素しか報告されておらず、このように二糖を認識して二糖リン酸を生成するタイプのものはこれまでに全く知られていない。
一方、本発明酵素は、リン酸類の非存在下においては、マルトオリゴ糖に作用して、マルトース単位で転移をする。すなわち、マルトヘキサオース(DP=6)に作用させることにより、マルトオリゴ糖(DP=4、DP=6、DP=8、DP=10等)が、また、マルトヘプタオース(DP=7)に作用させることにより、マルトオリゴ糖(DP=5、DP=7、DP=9、DP=11等)が生成するように、マルトペンタオース以上のオリゴ糖に作用してマルトース単位で転移する活性を有する。従来、マルトシルトランスフェラーゼは、Eur. J. Biochem. (1998) 250, 1050-1058に報告があるが、当該酵素に、マルトース−1−リン酸を生成するという報告は無い。また、従来のマルトシルトランスフェラーゼは、マルトトリオース(DP=3)等の低分子に作用し、DP=3以上のオリゴ糖に作用させたとき、低分子のDP=1〜3の低重合度オリゴ糖を生成するが、本発明の酵素は、マルトオリゴ糖DP=3,4にはほとんど作用せず、マルトオリゴ糖DP=5には作用しにくい。また、DP=5以上のマルトオリゴ糖に作用させてもDP=1〜3の低重合度のオリゴ糖をほとんど生成しない。従って、本発明酵素は従来のマルトシルトランスフェラーゼとは異なる酵素である。
かように、本発明の酵素は、グルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖に作用して、マルトース単位を認識して加リン酸分解をするホスホリラーゼ活性とマルトース単位で伸長していくマルトース転移活性を有するこれまでに知られていない全く新しいタイプの酵素である。以上より、本発明酵素は、マルトデキストリン・マルトシルホスホリラーゼ、マルトデキストリン:オルトリン酸−α−1−マルトシルトランスフェラーゼ、又はマルトシルトランスフェラーゼのように命名できる。
上記基質の濃度は特に規定しないが、リン酸類及びリン酸塩は50mM〜2Mが好ましく、さらに100mM〜1200mM、特に400〜1000mMが好ましい。グルコース重合度5以上α−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖は、1〜70質量%が好ましい。
リン酸類又はその塩との存在下で、グルコース重合度6以上のα−1,4グルコシド結合を含むオリゴ糖、多糖又はそれらの分解物によく作用してマルトース−1−リン酸を生成する。グルコース重合度5のオリゴ糖に若干作用し、重合度2〜4のオリゴ糖には殆ど作用しない。ここで、多糖としては、例えばアミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、デキストリン、澱粉等が挙げられる。
ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)による分子量は約75kDa(但し、SDS−PAGE法では測定条件により5kDa程度上下することがある)である。
基質としてpH5.5〜8.5の各pHの700mMリン酸緩衝液及び2%マルトヘプタオース(G7:生化学工業)を用い、精製酵素を0.28U/mLとなるように加え、37℃、1時間反応させ、酵素活性を測定した場合、至適pHは6.5〜8.0付近であり、pH5.5〜8.5範囲で、pH7.5(最大活性)との相対活性50%を示す。
基質として1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7)及び2%マルトヘプタオース(G7:生化学工業)を用い、精製酵素0.168U/mLとなるように加え、30℃〜70℃の各温度にて1時間反応させ、95℃で10分間処理し酵素を失活させ、反応液を101倍希釈して酵素活性を測定した場合、至適温度は35〜50℃であり、30℃〜55℃の広い範囲で活性を有する。
本発明のタンパク質は、上述したマルトース−1−リン酸生成能を有するタンパク質であり、具体的には、以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のタンパク質をいう。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)(a)のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つマルトース−1−リン酸生成能を有するタンパク質
(c)(a)のアミノ酸配列と60%以上の同一性を有し、且つマルトース−1−リン酸生成能を有するタンパク質
(d)(a)のアミノ酸配列と38%以上の同一性を有し、且つマルトース−1−リン酸生成能を有するタンパク質であって、Ara-Glu-Asn-Pro-Pro-Lys-Lys(又はArg)-Tyr-Gln(又はGlu)-Asp-Ile又はPhe-Arg-Val(又はIle)-Asp-Asn-Pro-His-Thr-Lys-Proで示されるアミノ酸配列を有するタンパク質
なお、当該等価のアミノ酸配列をコードする塩基配列は、自然界から得ることも可能ではあるが、更に部位特異的突然変異誘発法等の公知の手法を利用して調製することもできる。例えば、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット[Mutan-super Express Km キット(タカラ)]等を用いて変異を導入し調製することができる。
また、本発明酵素遺伝子を含む組換えベクターを作製するには、宿主菌体内で複製維持が可能であり、該酵素を安定に発現させることができ、該遺伝子を安定に保持できるベクターに当該酵素遺伝子を組込めばよい。かかるベクターとしては大腸菌を宿主とする場合、pUC18、pBR322、pHY300PLK等が挙げられ、枯草菌を宿主にする場合、pUB110、pHSP64(Sumitomoら、Biosci. Biotechnol. Biocem., 59, 2172-2175, 1995)あるいはpHY300PLK(タカラ バイオ)等が挙げられる。
ここで、培地に添加される糖類としては、好ましくはグルコース重合度5以上のα−1、4グリコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖、例えばデンプン、アミロース、デキストリン、マルトース、マルトオリゴ糖、アミロペクチン、グリコーゲン、デンプン分解物等が挙げられる。また、リン酸類又はその塩としては、例えばリン酸、メタリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、二リン酸、ポリメタリン酸及びこれらの塩類が挙げられ、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。
尚、ここで用いられる培地、培養方法、培養条件等は、既に述べた本発明酵素を微生物から採取する場合と同様のものを用いることができる。
マルトース−1−リン酸生成酵素の活性測定を検討し、次の反応条件を設定した。
基質には2%デキストリンマックス1000(松谷化学)及び1Mリン酸緩衝液(pH7)の条件下、適宜希釈した酵素を加え、37℃にて1時間保温後、生成したマルトース−1−リン酸をHPLCにて定量した。すなわち、マルトース−1−リン酸は、DIONEX社のDX500クロマトグラフィシステムにて定量した。カラム:CarboPac PA1(4×250 mm)、検出器:ED40パルスドアンペロメトリー検出器、溶離液:A液;100mM水酸化ナトリウム溶液B液;1M酢酸ナトリウムを含む100 mM水酸化ナトリウムを用いた。注入から初期濃度A液90%:B液10%、0〜17分A液18.5%:B液81.5%のリニアグラジエントにより分析した。標準として100mM、50mMのSIGMA社マルトース−1−リン酸を用いた。約15.5分にピークが現れた。1分間で1μMのマルトース−1―リン酸を生成する量を1U(ユニット)とした。
使用菌株はCorynebacterium glutamicum JCM1321を使用した。菌をSCD寒天培地(日本製薬)に塗末し、30℃にて一晩生育させた。種培養としては、0.5%酵母エキス、4%アミノ酸調味液K(味の素)、3%液糖マルトリッチ(昭和産業)、100mMリン酸緩衝液(pH7)の培地をヒダ付き三角フラスコに50mL仕込み、生育した菌株を1白金耳接種し、30℃、210rpmで一晩振とう培養を行った。主培養としては、0.5% 酵母エキス、1%アミノ酸調味液K(味の素)、0.5%硫酸アンモニウム、10%デキストリンマックス1000(松谷化学)、10%塩化カルシウム2水和物、200ppm 硫酸マグネシウム、25ppm塩化第二鉄、400 mMリン酸緩衝液(pH7)の培地を160本のヒダ付き三角フラスコに50 mL仕込み、種菌を1%植菌し、30℃、210rpmで一晩振とう培養を行った。
培養上清中にマルトース−1−リン酸生成酵素が240U/L生産された。
実施例2で得られた本培養液6Lを遠心分離後、上清を限外ろ過モジュールACP-13000(旭化成)により濃縮し、10 mMリン酸緩衝液(pH8)にて透析を行った。濃縮透析液をDEAE−Toyopearl 650Mカラム(東ソー;φ5×15cm)に吸着させ、同緩衝液2Lで洗浄した後、1M塩化ナトリウム1.5Lにて溶出させ、粗酵素液を得た。
粗酵素液は、BIO-CAD60システム(パーセプティブ)により精製を進めた。まず、粗酵素液1580mLに1M硫酸アンモニウムを加え、1M硫酸アンモニウムと50mMリン酸緩衝液にて平衡化した疎水クロマトカラムPOROS PE/M(φ10×100mm)に添着させ、50mMリン酸緩衝液(pH8)中で1000 mMから360mMの硫安の濃度勾配で150mLを、次いで360 mM〜0 mMまでの硫安濃度勾配で375mLを流速12mL/分にて流した。その結果、約360mM硫安で溶出されたフラクションにマルトース−1−リン酸生成酵素のピークが認められた。活性フラクションは10mMリン酸緩衝液(pH8)中で透析し、酵素液74mLを得た。
透析酵素溶液はさらに、20mMリン酸緩衝液(pH8)で平衡化された陰イオン交換カラムPOROS HQ/M(φ10×100mm)に添着させ20mMリン酸緩衝液(pH8)中で0から50mMまでの塩化ナトリウムの濃度勾配で450mLを流速12mL/分で流した。その結果、非吸着画分から濃度勾配が始まった直後に活性画分が現れ、その画分を10mMリン酸緩衝液(pH8)中で透析を行い、9.3mLの酵素液を得た。
再度本酵素液を同様な条件で陰イオン交換カラムPOROS HQ/M(φ10×100mm)処理を行った結果、塩化ナトリウムの濃度勾配が始まった直後にマルトース−1−リン酸生成酵素と思われるピークを検出した。
ピークトップのフラクションをCentriprep YM-3(MILLIPORE)により0.6mLまで10倍濃縮し、SDS-PAGEを行った結果、ほぼ単一のバンドを検出し、分子量約75kDaと推定された。さらに、本サンプルのアミノ末端のアミノ酸配列を決定したところ、Gly-Arg-Leu-Gly-Ile-Asp-Asp-Val-Arg-Pro-Arg-Ile-Leu-Asp-Gly-Asn-Pro-Ala-Lys-Ala-Val-Val-Gly-Glu-Ile-Val-Pro-Val-Ser-Ala-Ile-Val-Trp-Arg-Gluであった(配列番号2の3番〜37番)。
菌株としては、Corynebacteriumglutamicum JCM1318、Corynebacterium hoagii JCM1319、Corynebacteriumglutamicum JCM1321、Corynebacterium vitaeruminis JCM1323、Corynebacteriumcallunae IFO15359を用いた。菌株をSCD寒天プレート(日本製薬)に塗末し、30℃にて一晩培養した。種培養には大試験管10mL仕込みの0.67%Yeast Nitrogen Base(Difco)に菌株を一白金耳植菌し、30℃で一晩、250rpmで振とう培養を行った。
主培養は0.67%Yeast Nitrogen Base(Difco)、10%デキストリンマックス1000(松谷化学)を含む培地にて400mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を添加した培地あるいは添加しない培地にて35℃で6日間、250rpm振とう培養を行った。
1mLの培養液は遠心分離を行い、菌体と培養上清に分離した。菌体外のM1P生成酵素活性は培養上清をそのまま用いた。一方、菌体内の酵素活性は集められた菌体を培養液と等量の50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁させ、遠心分離にて菌体を分離し洗浄した。さらに、培養液と等量の50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁させ、50μlのトルエンを加え強く攪拌することで、菌体を破壊し、活性測定用酵素液とした。活性測定は実施例1に従って行った。活性測定の結果を表1に示す。
基質としてpH5.5〜8.5の各pHの700 mMリン酸緩衝液及び2%マルトヘプタオース(G7:生化学工業)を用い、精製酵素を0.28U/mLとなるように加え、37℃、1時間反応させた。95℃で10分間処理することにより反応を停止させ、反応液を101倍希釈して実施例1のHPLC手法によりマルトース−1−リン酸を定量した。
その結果、図1に示すように、至適pHは6.5〜8.0付近であり、pH5.5〜8.5の範囲でpH7.5との相対活性50%を示し、広く反応することが判った。
基質として1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7)及び2%マルトヘプタオース(G7:生化学工業)を用い、精製酵素0.168U/mLとなるように加え、30℃〜70℃の各温度にて1時間反応させ、95℃で10分間処理し酵素を失活させ、反応液を101倍希釈して実施例1のHPLC手法によりマルトース−1−リン酸を定量した。その結果、図2に示すように、至適温度は35℃〜50℃であり、30℃〜55℃の広い範囲で活性を有していた。
(1)デキストリンとリン酸からマルトース−1−リン酸を生成する反応
0.16U/mLのマルトース−1−リン酸生成酵素と2.5%デキストリンマックス1000(松谷化学)及び250mMのリン酸緩衝液(pH7)を37℃にて15時間反応させ、実施例1に示す手法にてマルトース−1−リン酸を定量した。その結果、145μMのマルトース−1−リン酸を生成した。
(2)各種マルトオリゴ糖とリン酸からのマルトース−1−リン酸を生成する反応
0.16U/mLのマルトース−1−リン酸生成酵素と2.5%の各鎖長の異なった基質(グルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース(生化学工業))及び250mMのリン酸緩衝液(pH7)を37℃にて15時間反応させ、実施例1に示す手法にてマルトース−1−リン酸を定量した。その結果を表2に示す。
0.16U/mLのマルトース−1−リン酸生成酵素と2.0%の各鎖長の異なった基質(グルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース(生化学工業))を37℃にて1時間反応させ、実施例1に示す手法にてHPLC分析を行った(結果はピーク面積で示す)。マルトオリゴ糖(DP=1〜11)の保持時間はデキストリン(松谷化学)分析から推定した。その結果を表3に示す。
Corynebacterium glutamicum JCM1321をTrypticase Soy Broth培地(BBL)にて30℃で一晩培養した。培養液10mLを遠心分離し菌体を集め、Manual of Industrial Microbiology and Biotechnolory 379-391(1999) ASM press Washington DCに記されている手法にて染色体DNAを調製した。
実施例3にて明らかとなったN末アミノ酸領域のAsp-Gly-Asn-Pro-Ala-Lys-Ala-Valよりプライマー1(5’-GAYGGNAAYCCNGCNAARGCNGT(配列番号3))を、また、Ala-Val-Val-Gly-Glu-Ile-Val-Proよりプライマー2(5’-GCNGTNGTNGGNGARATHGTNCC(配列番号4))をデザインした。遺伝子の取得にはタカラバイオ社製のLA PCR in vitro cloning kitを用いた。すなわち、上記のように取得した染色体DNAを制限酵素HindIIIにて消化し、キットに付属のHindIIIカセットを連結した。プライマー1とカセットプライマーC1にてPCRを行った(94℃ 30sec→60℃ 30sec→72℃ 4minを30サイクル)。得られた反応溶液を100倍希釈したものを鋳型として、プライマー2及びカセットプライマーC2にてPCRを行った(94℃ 30sec→60℃ 30sec→72℃ 4minを30サイクル)。その結果、約2kbの断片が増幅されることがわかった。本断片中には実施例3のN末アミノ酸配列をコードする塩基配列が存在していた。さらに、2kb断片の上流を取得するために、染色体DNAをEcoRIにて消化し、EcoRIカセットを連結した。上流はプライマー3(5’-TGAATAGGCTCAGCCGCCACTGAAGAATCC(配列番号5))及びカセットプライマーC1を、一方、下流はプライマー4(5’-TCAGATCATCGCCTACTCCAAGGTTGAT(配列番号6))及びカセットプライマーC1を使用し、1回目のPCRを行った。得られた反応液を100倍希釈し鋳型として、上流はプライマー5(5’-ACGCCACACAATAGCCGAGACAGG(配列番号7))を、下流はプライマー6(5’-CTGTGGTCAGAGACGAACTTTGTCCGCCTC(配列番号8))及びカセットプライマーC2にて2回目のPCRを行った(94℃ 30sec→60℃ 30sec→72℃ 4minを30サイクル)。その結果、上流は約0.4kbの断片、また、下流は約1kbの断片が増幅されることがわかった。これらの得られた断片の配列を確認し、染色体DNAを鋳型として上流のセンス鎖からのプライマー7(5’-GGAGAGATTCGTCATTGAGTTCACTCG(配列番号9))及びアンチセンス鎖からのプライマー8(5’-TCAGCCCGCTCGCGGTGACCTAAGTC(配列番号10))を用いPyrobestポリメラーゼ(タカラバイオ)(94℃ 30sec→55℃ 30sec→72℃ 3minを25サイクル)により約2.6kbの断片を増幅した。本断片の全塩基配列の結果を配列番号1に示した。配列中には推定される675アミノ酸をコードする2025bpのオープンリーディングフレームが存在していた。
実施例8で得られた2.6kbの断片を大腸菌用発現ベクターpUC19のSmaI部位へ挿入した。すなわち、PCR断片(2.5μg)は、T4-ポリヌクレオチドキナーゼ(タカラバイオ)処理により末端をリン酸化し、pUC19(1μg)は、SmaIにて切断後、アルカリホスファターゼ(ロシュ)処理を行った。両断片を65℃で30分処理し酵素を失活させ、混合しエタノール沈殿を行った。減圧乾燥後、ライゲーションキットVer2(タカラバイオ)にて連結させた。形質転換は、Escherichiacoli JM109コンピテントセル(タカラバイオ)を用いて行い、LB寒天培地(1% 酵母エキス(Difco)、0.5% トリプトン(Difco)、1% 塩化ナトリウム、1% 寒天、25μg/mL アンピシリン)にて生育させた。得られたコロニーをLB培地(1% 酵母エキス(Difco)、0.5% トリプトン(Difco)、1% 塩化ナトリウム、25μg/mL アンピシリン)にて37℃で一晩振とう培養し、菌体を集め、プラスミドアイソレーションキット(ロシュ)にてプラスミドを調製した。その結果、pUC19のLacZプロモーターと同じ向きに挿入されたpUMP2及びLacZプロモーターと逆向きに挿入されたpUMP3を得た。
得られた両プラスミドの形質転換体を25μg/mLアンピシリンを含む2mLのLB培地にてまた、培養は1 mMのIPTG(isopropyl 1-thio-β-D-galactoside)の有り無しの2種類で37℃、一晩培養を行った。培養菌体を集め、0.5mLの50 mMリン酸緩衝液(pH7)に懸濁し、超音波破砕機にて細胞を破砕した。破砕液のマルトース−1−リン酸生成活性は実施例1の手法にて測定した。結果を表4に示す。
Claims (10)
- 下記の酵素学的性質を有するマルトース−1−リン酸生成酵素。
1)作用 :グルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖及びリン酸類又はその塩からマルトース−1−リン酸を生成する。
2)基質特異性:リン酸類又はその塩との存在下で、グルコース重合度6以上のα−1,4グルコシド結合を含むオリゴ糖、多糖又はそれらの分解物によく作用してマルトース−1−リン酸を生成する。グルコース重合度5のオリゴ糖に若干作用し、重合度2〜4のオリゴ糖には殆ど作用しない。
3)分子量 :約75kDa(SDS−PAGE)
4)至適pH :6.5〜8.0
5)至適温度 :35〜50℃ - 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のタンパク質。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなり、且つグルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖及びリン酸類又はその塩からマルトース−1−リン酸を生成する活性を有するタンパク質
(b)(a)のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つグルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖及びリン酸類又はその塩からマルトース−1−リン酸を生成する活性を有するタンパク質
(c)(a)のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つグルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖及びリン酸類又はその塩からマルトース−1−リン酸を生成する活性を有するタンパク質
(d)(a)のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つグルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖及びリン酸類又はその塩からマルトース−1−リン酸を生成する活性を有するタンパク質であって、Ara-Glu-Asn-Pro-Pro-Lys-Lys(又はArg)-Tyr-Gln(又はGlu)-Asp-Ile又はPhe-Arg-Val(又はIle)-Asp-Asn-Pro-His-Thr-Lys-Proで示されるアミノ酸配列を有するタンパク質 - 請求項2記載のタンパク質をコードする遺伝子。
- 以下の(a)、(b)又は(c)のDNAからなるマルトース−1−リン酸生成酵素遺伝子。
(a)配列番号1に示す塩基配列で示され、且つグルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖及びリン酸類又はその塩からマルトース−1−リン酸を生成する活性を有するタンパク質をコードするDNA
(b)(a)の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つグルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖及びリン酸類又はその塩からマルトース−1−リン酸を生成する活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)(a)の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、且つグルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖及びリン酸類又はその塩からマルトース−1−リン酸を生成する活性を有するタンパク質をコードするDNA - 請求項3又は4記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
- 請求項5記載の組換えベクターを含む形質転換体。
- 宿主が微生物である請求項6記載の形質転換体。
- 請求項7記載の形質転換体を培養し、該培養物から酵素を採取することを特徴とするマルトース−1−リン酸生成酵素の製造法。
- 請求項7記載の形質転換体をグルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖及びリン酸類またはその塩を含有する培地中で培養し、該培養物からマルトース−1−リン酸を採取することを特徴とするマルトース−1−リン酸の製造法。
- 請求項1又は2記載の酵素又はタンパク質に、グルコース重合度5以上のα−1,4グルコシル結合を含むオリゴ糖又は多糖とリン酸類又はその塩を作用させることを特徴とするマルトース−1−リン酸の製造方法。
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