JP5242124B2 - 微細炭素繊維及び複合材料 - Google Patents

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本発明は、微細炭素繊維、その製造方法及び複合材料に関し、更に詳しくは複合材料を製造する際に、微細炭素繊維を表面改質処理するための工程を必要とせず、熱処理により粗い表面を持ち、且つ反応触媒由来の鉄を微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%含み、そのうち5〜100%の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっていることによって複合材料の力学特性等の物性を向上させることのできる微細炭素繊維に関するものである。
カーボンナノチューブに代表される微細炭素繊維は優れた力学特性や高い導電性や熱伝導性などの特性を有するため、例えば、合成樹脂、ゴム、セラミックス、金属等の各種材料に配合されるフィラー材として用いられ、複合材料の力学特性、電気伝導性、熱伝導性などの物性を向上することが期待されている。しかし多数の研究結果からわかったように、表面に欠陥が少ないカーボンナノチューブはマトリックス材(例えば合成樹脂、ゴム、セラミックス、金属等)との界面接着力が弱いため、プル−アウト(Pull−out)現象は発生し、十分な物性値が得られない(非特許文献1〜2参照)。
炭素原子が網状に結合したシート一層が筒状になったカーボンナノチューブを含有する複合材料については、次のことが指摘されている(非特許文献2〜3参照)。すなわち、機械的強度を発現させる際に重要なのがカーボンナノチューブとマトリックス材料との接着強度である。 また、炭素繊維複合材料における界面構造はマトリックス材料との結合力への影響が重大であり、炭素繊維の界面構造の制御が重要であることが一般的に知られている(非特許文献4参照)。マトリックス材としては金属、セラミック、ポリマー、炭素などが考えられるが、カーボンナノチューブの欠陥の少ないグラフェンシートによりなる表面構造が構造材料用複合材料に用いられるマトリックスポリマーや金属などとのぬれ性を悪くする方向に働くと推定され、期待した強度の高い複合材料を得るにはカーボンナノチューブとマトリックスの界面結合を強化する必要がある。通常はカーボンナノチューブ表面を改質するか複合材料の調整法を工夫する。
上記したような観点から、カーボンナノチューブの表面欠陥を増加することでマトリックス材との接着強度を改善する、例えば、カーボンナノチューブ表面への官能基導入といった化学表面改質、又は酸素プラズマ(Oxygen plasma)等での酸化処理などの方法でカーボンナノチューブの表面欠陥を増やすことによって、マトリックス材との界面接着強度を改善する報告がある(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、このような改質法によれば、カーボンナノチューブの表面欠陥の増加によりカーボンナノチューブ自身の物性も落ちるため、複合材の物性改善の面からは望ましくない。
また、マトリックス材に応じたカーボンナノチューブ表面の被覆処理も、よく検討されている方法である。例えば金属複合材にはカーボンナノチューブ表面を金属被覆層で覆う方法(例えば、特許文献4〜6参照)、セラミックス基複合材にはゾルーゲル法、CVD法あるいはSiOガスを用いたコンバージョン法によって、SiCの被膜を形成する方法(例えば、特許文献7、8参照)、また、樹脂基複合材の場合、ポリマーラッピングなどの方法(例えば、非特許文献5参照)が提唱されている。
以上の例では、カーボンナノチューブの被覆効果は、又さまざまな問題点が残っている、例えば、特許文献4、5には、特に高温での後処理も行われていないので、このままではカーボンナノチューブ表面への金属被覆は、強度面での不安が残る。特許文献6には、被覆用金属及びマトリックス金属の種類は制限され、しかもカーボンナノチューブではなくカーボンナノチューブの凝集体が被覆される。特許文献7、8には、カーボンナノチューブと被覆されたSiCとの熱膨張差に基づく層間剥離現象が生じてしまう。さらにカーボンナノチューブ自体がSiC生成の為炭素源として消費されてしまう。
また、カーボンナノチューブを表面改質する処理はカーボンナノチューブの生成工程、精製工程及び複合材料製造工程以外に表面改質処理工程が増え、しかも表面改質工程は少なくとも被覆材とカーボンナノチューブの混合、電気化学反応処理や加熱反応また乾燥処理などのプロセスが必要になり、操作は複雑で経済の面も望ましくない等の理由により、なかなか実用レベルに到達していない。
一方、反応生成工程や熱処理工程を行う際に工程条件の制御により平滑ではない表面を持つカーボンナノチューブが得られる報告がある。例えば気相法反応で炭素繊維を生成する際に、反応ガスの分解温度や導入経路など条件を制御し900〜3,000℃の熱処理により層状炭素構造は長手方向で分断されて、表面が平滑でない炭素繊維が製造できる(例えば、特許文献9参照)。また、反応ガスまたは触媒粒子の制御で平滑ではない表面、且つ結晶構造も欠陥を持つカーボンナノチューブを得られた(例えば、非特許文献6参照)。そのほかに、反応生成後、熱処理により遷移金属反応触媒を除く際にカーボンナノチューブの密度が急激に減るため、カーボンナノチューブの構造内部に応力を生じた為、内部構造を変形することで表面構造も粗くなる(例えば、非特許文献7参照)。
以上の例では、表面改質処理を使わず、平滑でない表面構造を持つカーボンナノチューブが造れるが、カーボンナノチューブの結晶構造も欠陥が生じるため、カーボンナノチューブ自身の物性に不利な影響がある恐れがあり、フィラーとしてマトリックス材に添加したら複合材料の物性向上には十分な効果が得られるか、疑問は残る。さらに、これらのカーボンナノチューブはマトリックスとの接着性を改善できると予測しているが、その改善効果についての報告はなされていない。もう一つは、遷移金属反応触媒、例えばFe,Ni,Co類など、通常に、気相生成反応後カーボンナノチューブ内に残り、熱処理後、特に1800℃以上の温度領域熱処理後、不純物として除去され、カーボンナノチューブとマトリックスとの界面接着性の向上には役に立つことを報告した例がない。
一方、炭素繊維集合体を三次元的構造とすることによって、機械的強度や導電性や熱伝導性を向上させることが報告されている。例えば、炭素繊維を600℃以上で熱処理し、絡み合った繊維の接点がタール、ピッチなどの炭化物によって固着されて接着された炭素繊維集合体を、マトリックスに配合することによって導電性や熱伝導性を向上させた複合材料を得ている(例えば、特許文献10参照)。また、繊維状炭素系物質と熱硬化性樹脂と易黒鉛化物質を含む組成物を易黒鉛化物質が黒鉛化する温度よりも低い温度で加熱して成形体とし、さらに成形体を焼成して機械的強度を向上させた焼結体を得ている。この場合、焼成工程によって易黒鉛化物質が黒鉛化する際に、繊維状炭素系物質同士を接合している(例えば、特許文献11参照)。
さらに炭素繊維集合体の三次元的構造は、含浸材料として合成樹脂、ゴム、金属、カーボン系材料が選択可能で、応用範囲が広いナノカーボンコンポジット材が報告されている。カーボンナノチューブと熱硬化性樹脂を混練し、乾燥して、所定の圧力、所定の温度で成形し、この成形体を加熱して樹脂分を炭化させ、ナノカーボンが炭素で三次元的に繋がった多孔質体を得ている。炭化工程後に各種含浸材料を含浸させてナノカーボンコンポジット材を得ている(例えば、特許文献12参照)。
以上の例では炭素繊維に三次元的構造を付与することによって、最終的に得られる複合材料の熱伝導性、導電性、機械的強度を向上させている。しかしこの炭素繊維の三次元的構造は後から付与して得られるもので、反応生成した三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体では無い。また、これらの報告では、例えば含浸材料である合成樹脂、ゴム、セラミックス、金属とカーボンナノチューブとの接着の重要性については言及されていない。
一方、三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体に関する報告もなされている(例えば、特許文献13参照)。外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維構造体、というものであるが、複合材料を製造する際に、炭素繊維の表面状態とマトリックスとの接着性についての報告はなされていない。
鉄含量が3.2質量%であり、平均直径は15nmであり、X線回折法により決定されたd002は0.345nmであり、アスペクト比は100以上である微細炭素繊維が記載されている(例えば、特許文献14参照)。しかし、この微細炭素繊維には鉄の存在形態や存在位置などについての記載はない。
特開2003−300716号公報 特表2004−535349号公報 特表2003−505332号公報 特許第2953996号公報 特公昭63−60152号公報 特表2004−10978号公報 特開2005−75720号公報 特開平05−229886号公報 特許第3841684号 特開2004−119386号公報 特開2005−178151号公報 特開2004−315297号公報 特許第3776111号公報 特開2003−138432号公報 Pulickel M. Ajayan, Linda S. Schadler, Cindy Giannaris, Angel Rubio, Adv. Mater. 2000, 12, No.10, 750−753 Rupesh Khare, Suryasarathi Bose, Journal of Minerals& Materials Characterization & Engineering, 2005, vol.4, No.1, 31−46 「カーボンナノチューブ」化学同人、2001年、p.115 「複合材料と界面−素材の高機能化と制御」材料技術研究協会、1988年、p.251 A. Star, J.F.Stoddart, D. Steuerman, M. Diehl, A. Boukai, E.W.Wong, X.Yang, S.−W. Chung, H. Choi, J.R.Heath, Angew. Chem. Int. Ed. 2001,40,1721−1725. M. Jose−Yacaman, H. Terrones, L. Rendon, Carbon, vol.33,669−678, 1995 J. Chen, J.Y. Shan, T. Tsukada, F. Munekane, A. Kuno et al., Carbon, vol.45,274−280,2007
以上のように、最終的に得られる複合材料の機械的強度、熱伝導性、導電性を向上させるためには、炭素繊維に三次元的構造を付与することが求められているが、複合材料を製造していく段階で、炭素繊維に後から三次元的構造を付与するための工程が求められる場合には、複合材料を製造する上で各種の制約を受け、しかもその三次元的構造付与工程を付加する必要が生じてしまう。一方、カーボンナノチューブ表面への金属やセラミック(SiC)やポリマーなど被覆の場合、物理的な結合力だけに依存するので被覆物に強度面での不安が残り、特に高温での応用には低い耐熱性や熱膨張差などによって生じる被覆層の剥離や炭化反応などにより、表面改質効果がなくなる恐れがある。また、カーボンナノチューブに化学反応させてチューブ表面に官能基を導入し、化学表面改質及び低温熱処理によりカーボンナノチューブの表面に欠陥を増やす方法は、カーボンナノチューブの構造に不良な影響を起こす恐れがあるため、最終的に複合材料の性能を向上させる効果が十分に得られない。複数のカーボンナノチューブと炭化物形成用金属およびマトリクス金属をマトリクス金属の融点以上の温度で加圧焼結することで、複数のカーボンナノチューブ表面に金属炭化物を形成させ、マトリクス金属とカーボンナノチューブとの間に良好な密着性を得る方法では、金属マトリックスと金属炭化物源の異種金属を同時に仕込まなければならず、マトリックス材料が一部の金属に限定されてしまう。さらにカーボンナノチューブの凝集体を被覆することにおいては、カーボンナノチューブの表面構造が改質されず、マトリックス金属とのぬれ性を改善することがなく、マトリックス材料との接着に工夫が求められている。また、カーボンナノチューブの凝集体を被覆することで、マトリクス材中の分散が問題点になるため、金属以外の応用範囲例えば合成樹脂、ゴム、セラミック、カーボン系材料に広げることが困難である。さらに、カーボンナノチューブ表面改質処理はカーボンナノチューブの生成工程、精製工程及び複合材料製造工程以外に表面改質処理工程を増やさなければいけない、しかも表面改質工程の操作は複雑で、経済の面も望ましくない。反応生成工程や熱処理工程の条件の制御により平滑ではない表面を持つカーボンナノチューブには、結晶構造も欠陥が生じるため、カーボンナノチューブ自身の物性に不利な影響がある恐れがあり、複合材料の物性向上には十分な効果が得られるか、疑問は残る。
本発明は、複合材料を製造する際に微細炭素繊維に三次元的構造を付与するための工程及び表面改質処理するための工程を必要とせず、マトリックス材との接着性向上できる微細炭素繊維、特に三次元ネットワーク状の炭素繊維及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を続けた結果、900〜2200℃の熱処理条件下で処理することにより、カーボンナノチューブの表面に括れがあり、且つ触媒由来の鉄を少なくとも構成元素とし、そのうち一部の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっていることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、反応触媒由来の鉄を構成成分とする微細炭素繊維であって、前記鉄成分は微細炭素繊維に接合しており、蛍光X線法で測定された合計の鉄含有量が微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%であり、かつ前記鉄成分のうち5〜100%の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっていることを特徴とする微細炭素繊維である。
また本発明は、前記した鉄成分の形態は炭化物、硫化物もしくは純鉄であることを特徴とする微細炭素繊維である。
さらに本発明は、前記微細炭素繊維が、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものであることを特徴とする微細炭素繊維である。
本発明は、前記した微細炭素繊維は、ラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2以上であることを特徴とする微細炭素繊維である。
本発明は、前記した微細炭素繊維は、X線回折法で求めた黒鉛としての結晶性を示すd002が3.42Å以上の範囲内にあることを特徴とする微細炭素繊維である。
また本発明は、前記した微細炭素繊維は、繊維表面の一部に括れがあり、かつ繊維表面が粗いことを特徴とする微細炭素繊維。
さらに本発明は、前記した微細炭素繊維が、炭素繊維に対してホウ素換算で0.001〜30質量%のホウ素化合物を含有することを特徴とする微細炭素繊維である。
また本発明は、反応触媒由来の鉄を構成成分とする前記微細炭素繊維であって、前記鉄成分は微細炭素繊維に接合しており、蛍光X線法で測定された合計の鉄含有量が微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%であり、かつ前記鉄成分のうち5〜100%の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっている微細炭素繊維が、熱間プレスを経て予備成形されたことを特徴とする微細炭素繊維の予備成形体である。
また本発明は、前記微細炭素繊維が、その製造工程途中で熱間プレスを経て予備成形され、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記微細炭素繊維の成長過程において形成されてなるものであることを特徴とする微細炭素繊維の予備成形体である。
本発明は、触媒および炭化水素の混合ガスを800℃〜1300℃の一定温度で加熱して炭素物質を、繊維状に成長させて微細炭素繊維の中間体を得、得られた炭素繊維の中間体を900〜2200℃の範囲の温度で熱処理する工程から成ることを特徴とする、粗い表面があり、かつ反応触媒由来の鉄成分を含み、前記鉄成分は微細炭素繊維に接合しており、蛍光X線法で測定された合計の鉄含有量が微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%であり、かつそのうち5〜100%の鉄が希塩酸で溶出可能な状態になっている微細炭素繊維の製造方法である。
すなわち本発明は、前記触媒ガスは、硫黄または硫黄化合物と、鉄または鉄化合物からなり、かつ前記硫黄源中の硫黄原子/前記鉄源中の鉄原子のモル比は0.01〜10であることを特徴とする微細炭素繊維の製造方法である。
また本発明は、触媒および炭化水素の混合ガスを800℃〜1300℃の一定温度で加熱する際に、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させて、三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を得る、得られた炭素繊維構造体の中間体を900〜2200℃の範囲の温度に熱処理によりなる、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維構造体は、その表面は粗く、且つ反応触媒由来の鉄を含み、蛍光X線法で測定された合計の鉄含有量が微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%であり、かつそのうち5〜100%の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっていることを特徴とする微細炭素繊維の製造方法である。
前記微細炭素繊維の中間体を熱処理する方法において、微細炭素繊維の自重による流動を許容する流路を構成する炉本体を備え、前記流路内の炭素繊維を加熱して熱処理する微細炭素繊維の熱処理装置を用いることを特徴とする微細炭素繊維の製造方法である。
さらに本発明は、前記した微細炭素繊維の中間体を得た後熱処理する前に、ホウ素化合物の有機溶媒溶液もしくは水溶液または微細固体粉を混合することにより、前記した微細炭素繊維に対してホウ素換算で0.001〜30質量%のホウ素化合物を含有させることを特徴とする微細炭素繊維の製造方法である。
また本発明は、前記微細炭素繊維の製造方法において、その製造工程途中で熱間プレスを経て予備成形され、かつ、触媒鉄を構成成分とする微細炭素繊維であって、蛍光X線法で測定された合計の鉄含有量が微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%であり、かつそのうち5〜100%の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっていることを特徴とする微細炭素繊維の予備成形体の製造方法。
すなわち本発明は、前記微細炭素繊維の製造方法において、その製造工程途中で熱間プレスを経て予備成形され、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維構造体は、その表面は粗く、且つ反応触媒由来の鉄を微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%含み、そのうち5〜100%の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっていることを特徴とする微細炭素繊維の予備成形体の製造方法である。
さらに本発明は、前記した微細炭素繊維を、全体の0.1〜30質量%の割合でマトリックス中に配合したことを特徴とする複合材料である。
さらに本発明は、前記した予備成形体を、全体の0.1〜30質量%の割合でマトリックス中に配合したことを特徴とする複合材料である。
また本発明は、前記マトリックスが、少なくとも有機ポリマーを含むものである複合材料である。
また本発明は、前記マトリックスが、少なくとも無機材料を含むものである複合材料である。
また本発明は、前記マトリックスが、少なくとも金属を含むものである複合材料である。
また本発明は、前記マトリックス中に、金属微粒子、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、ガラス繊維および炭素繊維からなる群から選ばれた少なくとも一種の充填剤をさらに含むことを特徴とする複合材料である。
本発明の微細炭素繊維は粗い表面があり、且つ反応触媒由来の鉄を微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%含み、そのうち5〜100%の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっている為、触媒鉄成分は微細炭素繊維の表に存在することによって、複合材料を製造する際に表面改質など工程が必要とせず、粗い表面構造を持つこと及び反応触媒鉄成分はチューブの表に存在することで、更にマトリックス材との接着性を強化することが期待できる。また、反応触媒鉄成分は粒や層などの形でカーボンナノチューブの表面部分に存在することではなく、形を観察しにくい状態で、例えば、原子の形態でチューブの表に存在し、カーボンナノチューブとの結び付きが強固であり、物理的な外力では剥がれないため、より良いマトリックス材料との接着性、特に金属系マトリックスとの濡れ性の改善には期待できる。また、本発明の微細炭素繊維において、基幹となる炭素繊維が、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものであると、本発明の微細炭素繊維は、三次元ネットワーク状に形成されているので、さらに表面の粗さと表面に存在する触媒鉄成分によりマトリックス材との接着性を改善されるため、最終的に複合材料を製造した場合、その熱伝導性、導電性、機械的強度が良好なものとなる。また、三次元的構造を後から付与するための工程が不要である。本発明の微細炭素繊維は、マトリックスの材料として、金属および金属以外のセラミックス、ゴム、合成樹脂、カーボン系材料等が使用可能である。
以下本発明を実施形態に基づき詳細に説明する。
まず、本発明に係る微細炭素繊維に関して説明する。
本発明に係る微細炭素繊維は、反応触媒由来の鉄を構成成分とする微細炭素繊維であって、前記鉄成分は微細炭素繊維に接合しており、蛍光X線法で測定された合計の鉄含有量が微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%であり、かつ前記鉄成分のうち5〜100%の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっていることを特徴とする微細炭素繊維である。
本発明の微細炭素繊維は、特に限定されるものではく、各種の態様を取り得る。
具体的には、微細炭素繊維としては、例えば、一枚のグラフェンシートが筒状に丸まってできる直径数nm程度の単層カーボンナノチューブや、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した多層カーボンナノチューブ(多壁カーボンナノチューブ)、単層カーボンナノチューブの端部が円錐状で閉じたカーボンナノホーン等各種のものが包含され、さらにこれらの微細炭素繊維は単繊維状のものに限られず、分岐状のもの、三次元構造のものであっても良い。なお、本発明においてこれらの微細炭素繊維は、上記したような種類の単独体とすることも、あるいは、2種以上の混合体とすることも可能である。
さらに、微細炭素繊維の繊維径、繊維長、アスペクト比といった繊維的特性としても特に限定されるものではないが、本発明に係る微細炭素繊維が、複合材料を構成する上でマトリックス中に均一に分散され得ることのできるような特性を有するものであることが望ましい。特に限定されるものではないが、例えば、その繊維径が(0.5〜120)nm程度、微細炭素繊維のアスペクト比が、(5〜5,000)程度のものであるものを例示することができる。
さらに、微細炭素繊維のラマン分光分析法で測定されるI/I比が、0.2以上、より好ましくは1.0〜0.40であることが望ましい。ここで、ラマン分光分析では、大きな単結晶の黒鉛では1580cm−1付近のピーク(Gバンド)しか現れない。結晶が有限の微小サイズであることや格子欠陥により、1360cm−1付近にピーク(Dバンド)が出現する。このため、DバンドとGバンドの強度比(R=I1360/I1580=I/I)が小さい程、炭素繊維を構成するグラフェンシート中における欠陥量が少ないことを意味し、I/I比が上記所定の値のものであると、本発明に係る微細炭素繊維が、より高いマトリックス材との接着強度を発揮し得るためである。
さらに、微細炭素繊維としては、以下に詳述するような所定構造を有する三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であることが好ましい。
すなわち、本発明の好ましい実施形態においては、微細炭素繊維が、外径15〜100nmの微細炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は微細炭素繊維が複数延出する態様で、前記微細炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該微細炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記微細炭素繊維の成長過程において形成されてなるものであり、当該炭素繊維構造体を構成する微細炭素繊維が、反応触媒由来の鉄を構成元素とする微細炭素繊維であって、蛍光X線法で測定された合計の鉄含有量が微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%であり、かつ前記鉄のうち10〜100%の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっていることを特徴とする微細炭素繊維である。
本発明に係る微細炭素繊維の好ましい実施形態において、基幹となる三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体を構成する微細炭素繊維の外径を、15〜100nmの範囲のものとする、特に、20〜70nmの範囲内にあることが、より望ましい。この外径範囲のもので、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層したもの、すなわち多層であるものは、曲がりにくく、弾性、すなわち変形後も元の形状に戻ろうとする性質が付与されるため、樹脂等のマトリックスに配された後において、より高い機械特性を持つ複合材料を得る。
加えて、該微細炭素繊維は、その外径が軸方向に沿って変化するものであることが望ましい。このように微細炭素繊維の外径が軸方向に沿って一定でなく、変化するものであると、樹脂等のマトリックス中において当該炭素繊維にアンカー効果が生じるものと思われ、マトリックス中における移動が生じにくく分散安定性が高まるものとなる。
さらにこの微細炭素繊維においては、このような所定外径を有する微細炭素繊維が三次元ネットワーク状に存在するが、これら微細炭素繊維は、当該微細炭素繊維の成長過程において形成された粒状部において互いに結合され、該粒状部から前記微細炭素繊維が複数延出する形状を呈しているものである。このように、微細炭素繊維同士が単に絡合しているものではなく、粒状部において相互に強固に結合されているものであることから、樹脂等のマトリックス中に配した場合に当該構造体が微細炭素繊維単体として分散されることなく、嵩高な構造体のままマトリックス中に分散配合されることができる。また、本発明に係る微細炭素繊維構造体においては、当該微細炭素繊維の成長過程において形成された粒状部によって微細炭素繊維同士が互いに結合されていることから、その構造体自体の電気的特性等も非常に優れたものであり、例えば、一定圧縮密度において測定した電気抵抗値は、微細炭素繊維の単なる絡合体、あるいは微細炭素繊維同士の接合点を当該炭素繊維合成後に炭素質物質ないしその炭化物によって付着させてなる構造体等の値と比較して、非常に低い値を示し、マトリックス中に分散配合された場合に、良好な導電パスを形成できる。
当該粒状部は、上述するように炭素繊維の成長過程において形成されるものであるため、当該粒状部における炭素間結合は十分に発達したものとなり、sp結合およびsp結合の混合状態を含むと思われる。そして、生成後(後述する中間体および第一中間体)においては、粒状部と繊維部とが、炭素原子からなるパッチ状のシート片を貼り合せたような構造をもって連続しており、その後の熱処理後においては、粒状部を構成するグラフェン層の少なくとも一部は、当該粒状部より延出する微細炭素繊維を構成するグラフェン層に連続するものとなる。当該炭素繊維構造体において、粒状部と微細炭素繊維との間は、上記したような粒状部を構成するグラフェン層が微細炭素繊維を構成するグラフェン層と連続していることに象徴されるように、炭素結晶構造的な結合によって(少なくともその一部が)繋がっているものであって、これによって粒状部と微細炭素繊維との間の強固な結合が形成されているものである。
なお、本願明細書において、粒状部から炭素繊維が「延出する」するとは、粒状部と炭素繊維とが他の結着剤(炭素質のものを含む)によって、単に見かけ上で繋がっているような状態をさすものではなく、上記したように炭素結晶構造的な結合によって繋がっている状態を主として意味するものである。
この粒状部の粒径は、前記微細炭素繊維の外径よりも大きいことが望ましい。具体的には、例えば、前記微細炭素繊維の外径の1.3〜250倍、より好ましくは1.5〜100倍、さらに好ましくは2.0〜25倍である。なお、前記値は平均値である。このように微細炭素繊維相互の結合点である粒状部の粒径が微細炭素繊維外径の1.3倍以上と十分に大きなものであると、当該粒状部より延出する微細炭素繊維に対して高い結合力がもたらされ、樹脂等のマトリックス中に当該炭素繊維構造体を配した場合に、ある程度のせん断力を加えた場合であっても、三次元ネットワーク構造を保持したままマトリックス中に分散させることができる。一方、粒状部の大きさが微細炭素繊維の外径の250倍を超える極端に大きなものとなると、炭素繊維構造体の繊維状の特性が損なわれる恐れがあり、例えば、各種マトリックス中への添加剤、配合剤として適当なものとならない恐れがあるために望ましくない。なお、本明細書でいう「粒状部の粒径」とは、炭素繊維相互の結合点である粒状部を1つの粒子とみなして測定した値である。
その粒状部の具体的な粒径は、炭素繊維構造体の大きさ、炭素繊維構造体中の微細炭素繊維の外径にも左右されるが、例えば、平均値で20〜5000nm、より好ましくは25〜2000nm、さらに好ましくは30〜500nm程度である。
さらにこの粒状部は、前記したように微細炭素繊維の成長過程において形成されるものであるため、比較的球状に近い形状を有しており、その円形度は、平均値で0.2〜<1、好ましくは0.5〜0.99、より好ましくは0.7〜0.98程度である。
加えて、この粒状部は、前記したように微細炭素繊維の成長過程において形成されるものであって、例えば、微細炭素繊維同士の接合点を当該微細炭素繊維合成後に炭素質物質ないしその炭化物によって付着させてなる構造体等と比較して、当該粒状部における、微細炭素繊維同士の結合は非常に強固なものであり、炭素繊維構造体における微細炭素繊維の破断が生じるような条件下においても、この粒状部(結合部)は安定に保持される。
また、当該炭素繊維構造体は、面積基準の円相当平均径が50〜1000μm、好ましくは50〜500μm、より好ましくは60〜250μm程度であることが望ましい。ここで面積基準の円相当平均径とは、炭素繊維構造体の外形を電子顕微鏡などを用いて撮影し、この撮影画像において、各炭素繊維構造体の輪郭を、適当な画像解析ソフトウェア、例えばWinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各繊維構造体の円相当径を計算し、これを平均化したものである。
複合化される樹脂等のマトリックス材の種類によっても左右されるため、全ての場合において適用されるわけではないが、予備成形体に適用する場合は、円相当平均径が大きい方が導電性、機械特性、熱特性にとって好ましいが、1000μmを超えると予備成形体中の炭素繊維構造体の分布が不均質になり、上記特性が得られなくなるためであり、また、この円相当平均径は、樹脂等のマトリックス中に配合する場合において当該炭素繊維構造体の最長の長さを決める要因となるものであり、概して、円相当平均径が50μm未満であると、機械特性や導電性が十分に発揮されない恐れがある。
また当該炭素繊維構造体は、三次元ネットワーク状に存在する微細炭素繊維が粒状部において互いに結合され、該粒状部から前記微細炭素繊維が複数延出する形状を呈しているが、1つの炭素繊維構造体において、微細炭素繊維を結合する粒状部が複数個存在して三次元ネットワークを形成している場合、隣接する粒状部間の平均距離は、例えば、0.5μm〜300μm、より好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは1〜50μm程度となる。なお、この隣接する粒状部間の距離は、1つの粒状体の中心部からこれに隣接する粒状部の中心部までの距離を測定したものである。粒状体間の平均距離が、0.5μm未満であると、微細炭素繊維が三次元ネットワーク状に十分に発展した形態とならないため、例えば、マトリックス中に分散配合された場合に、良好な導電パスを形成し得ないものとなる恐れがあり、一方、平均距離が300μmを越えるものであると、マトリックス中に分散配合させる際に、粘性を高くさせる要因となり、炭素繊維構造体のマトリックスに対する分散性が低下する恐れがあるためである。
さらに、当該炭素繊維構造体は、上記したように、三次元ネットワーク状に存在する微細炭素繊維が粒状部において互いに結合され、該粒状部から前記微細炭素繊維が複数延出する形状を呈しており、このため当該構造体は微細炭素繊維が疎に存在した嵩高な構造を有するが、具体的には、例えば、その嵩密度が0.0001〜0.05g/cm、より好ましくは0.001〜0.02g/cmであることが望ましい。嵩密度が0.05g/cmを超えるものであると、フィラーとして分散性が悪くなり、マトリックス材中凝集し易く傾向があるので、少量添加によって、樹脂等のマトリックスの物性を改善することが難しくなるためである。
また、当該炭素繊維構造体は、ラマン分光分析法で測定されるI/I比が、0.2以上、より好ましくは1.0〜0.4であることが望ましい。ここで、ラマン分光分析では、大きな単結晶の黒鉛では1580cm−1付近のピーク(Gバンド)しか現れない。結晶が有限の微小サイズであることや格子欠陥により、1360cm−1付近にピーク(Dバンド)が出現する。このため、DバンドとGバンドの強度比(R=I1360/I1580=I/I)が小さい程、炭素繊維構造体を構成するグラフェンシート中における欠陥量が少ないことを意味し、I/I比が上記所定の値のものであると、本発明に係る微細炭素繊維は、適当な結晶構造を持つ、且つ平滑ではない表面状態があり、より高いマトリックスとの接着強度を発揮し得るためである。
前記した微細炭素繊維を構成するグラフェンシート中における欠陥量がラマン分光分析法で測定されるI/I比を用いて評価する際に0.2以上、より好ましくは1.0〜0.4であることが望ましい。I/I比は0.2以下である微細炭素繊維の表面と比較し、前記微細炭素繊維の表面が平滑でないことを意味している。
本発明の微細炭素繊維においては、特に、上記したような三次元ネットワーク構造を有する炭素繊維構造体が、反応触媒由来の鉄を含み、蛍光X線法で測定された合計の鉄含有量が微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%であり、かつそのうち5〜100%の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっている為、触媒鉄成分は微細炭素繊維の表に存在することによって、複合材料を製造する際に表面改質など工程が必要とせず、マトリックス材との接着性を強化することが期待できる。また、反応触媒鉄成分は粒や層などの形でカーボンナノチューブの表面部分に存在することではなく、形を観察しにくい状態で、例えば、原子の形態でチューブの表に存在し、カーボンナノチューブとの結び付きが強固であり、物理的な外力では剥がれないため、より良いマトリックス材料との接着性、特に金属系マトリックスとの濡れ性の改善には期待できる。
このような微細炭素繊維の表に存在する触媒鉄成分は、後述するように、反応工程においてCVD反応を施した後、触媒粒子の形で微細炭素繊維の中空間に存在するが、熱処理工程において加熱効果により中空にある鉄触媒成分が拡散され、微細炭素繊維の表面部分に到達することとなるものである。
本発明において微細炭素繊維中に触媒由来の鉄の化学形態は、FeC(鉄と炭素からなる化合物)、Fe1−xS(鉄と硫黄からなる化合物)、α鉄及びγ鉄が主である。なお、本発明の鉄の存在形態は上記のものに限定されるものではなく、硫化鉄や酸化鉄などその他の化学形態でもよい。さらに複数の鉄化合物が組み合わせて存在していてもよい。
前記した微細炭素繊維の表面に存在する触媒鉄成分は、特に形や大きさなど限定されるものではない、TEMやSEMなどの観察法では観察できるものではないが、蛍光X線解析では0.5wt%以上の鉄が検出され、XPS分光法では微細炭素繊維の表面部分に鉄元素の存在が検出される、更に前記した反応工程においてCVD反応直後に得た微細炭素繊維から希塩酸に溶けないが、前記した熱処理工程において熱処理後溶けることになる触媒鉄成分である。
さらに、前記した微細炭素繊維の表面に存在する触媒鉄成分は、前記した微細炭素繊維全体に存在する触媒鉄成分に対する割合は下記の方法で計れる。前記した熱処理工程において熱処理後微細炭素繊維を、1〜5%塩酸に25時間浸漬け、この酸に漬ける処理前後の微細炭素繊維中に残る触媒鉄の量を蛍光X線解析法で計り、下記の計算式から前記微細炭素繊維の表面に存在する触媒鉄成分の割合を得られる。
表面に存在する触媒鉄成分(%)
=(1−酸に漬けた後の鉄残存量/酸に漬ける前の鉄残存量)×100%
本発明の微細炭素繊維において、触媒由来の鉄の存在位置は、微細炭素繊維の表面部分にあってもよく、また表層部分に存在してもよい。900〜2200℃の温度範囲でアニール処理をすることで、処理前と比較して触媒鉄成分の量はほとんど減少せず、鉄成分は炭素繊維の外側に拡散度合いを高めていることが望ましい。
さらに、前記した微細炭素繊維の全体に存在する触媒鉄に対して表面に存在する触媒鉄の割合は、特に限定されるものではないが、十分な機械的強度を発揮しかつ所期の割合は例えば、5〜100%、好ましくは5〜90%、より好ましくは5〜70%程度であることが、より高いマトリックスとの接着効果等を付与し力学的特性の面から特に優れた複合材料を得る上から望ましい。
さらに、特に限定されるものではないが、前記した酸漬け処理において使用する酸は塩酸、硫酸、硝酸など無機酸である、酸の濃度はできるだけ薄いほうが望ましいが、例えば、塩酸の場合、濃度が1〜5%であることが適当である。濃度は5%以上の塩酸を使うと、酸化効果により前記微細炭素繊維の表面欠陥を増加することにより微細炭素繊維自身の物性も落ちる恐れがあるため、複合材の物性改善の面からは望ましくない。1%以下の塩酸を使うと、前記微細炭素繊維の表面に存在する触媒鉄成分は十分に溶けないため、正しい測り結果が得られない。
本発明の微細炭素繊維において、表面に存在する触媒鉄成分が粒や層などの形で存在することではなく、形をTEMやSEMなどの観察法では観察しにくい状態で存在するので、基幹となる微細炭素繊維との結び付きが強固である。例えば、後述する実施例において示すように、当該微細炭素繊維を液状媒体中に分散させ、これに一定出力で所定周波数の超音波をかけて、当該触媒鉄の脱落率を調べたところ、処理後における触媒鉄成分の脱落率は、0%であって、当該触媒鉄成分は、微細炭素繊維に安定に結合されていることが判る。
また、当該触媒鉄成分は微細炭素繊維の表面に存在し、且つこの微細炭素繊維の表面は平滑ではないことから、本発明に係る微細炭素繊維を用いて最終的に製造された複合材料において、微細炭素繊維とマトリックスとの接着状況が改善され、それは、アンカー効果により強固なものになる。一般的な微細炭素繊維をフィラーとしてマトリックスに配合した場合、当該フィラー表面が比較的平滑であるため、マトリックスとの界面方向に歪み応力が加わった場合、マトリックスとフィラーとの間で比較的容易にずれが生じてしまう、プルーアウト(Pull out)問題が発生する。一方、本発明に係る微細炭素繊維を用いた場合、前記したように、フィラー表面が平滑ではないため、且つ表面に触媒鉄成分は存在するので、マトリックス特に金属類のマトリックスとの界面において濡れ性が改善され、マトリックスとの界面方向に歪み応力が加わった場合においても、マトリックスとフィラーとの間でずれが生じにくいというものである。
なお、本発明の微細炭素繊維がその表面に有している触媒鉄成分は、微細炭素繊維の構造に悪い影響が無く、炭素繊維の物性を劣化する恐れが無い。
鉄の蒸発開始温度である1800℃以下であれば前記した微細炭素繊維の表面にある触媒鉄成分は安定し、一定な耐熱性はある。
本発明の微細炭素繊維は、上記したように基幹となる微細炭素繊維の表面は平滑ではなく触媒鉄成分を有してなるものであり、特に、微細炭素繊維が前記したような三次元ネットワーク構造を有し、しかもそのネットワーク構造は微細炭素繊維同士が単に絡合しているものでは無く、微細炭素繊維同士を強固に結合する粒状部を有してなるものである態様においては、最終的に複合材料を製造した場合には、その複合材料の熱伝導性、導電性、機械的強度が良好なものとなる。また、表面改質や三次元的構造を付与するための工程を付加する必要が無い。
なお、本願明細書において、微細炭素繊維に存在する「括れ」とは、微細炭素繊維の外層部分において、グラフェンレイヤーに層の厚さにバラツキが生じ、凹みをもった部分や、外層部分の一部が欠損している状態を主として意味するものである。
なお、本願明細書において、微細炭素繊維が「粗い」とは、外層部分に起伏があり、繊維表面が平滑でない状態を主として意味するものである。
本発明に係る微細炭素繊維はまた、空気中での燃焼開始温度が600℃以上、好ましくは650℃以上、より好ましくは680〜700℃であることが望ましい。
さらに、本発明の微細炭素繊維の好ましい一実施形態においては、微細炭素繊維に対してホウ素換算で0.001〜30質量%、好ましくは0.01〜3.0質量%のホウ素化合物を含有することもできる。この場合、微細炭素繊維中のホウ素化合物の存在する部位、ホウ素化合物の化合物種については特に限定されない。微細炭素繊維中にホウ素化合物が存在することによって、構造に多少の欠陥を含んでいる場合であっても、高い導電性を得ることができる。
(微細炭素繊維の製造方法)
次に上記したような本発明に係る微細炭素繊維の製造方法について説明する。
本発明に係る微細炭素繊維は、特に限定されるものではないが、基本的には、触媒および炭化水素の混合ガスを800〜1300℃の一定温度で加熱して炭素物質を、繊維状に成長させて微細炭素繊維の中間体を得る反応工程、得られた微細炭素繊維の中間体を900〜2200℃で加熱する熱処理工程からなる。
なお、基幹となる微細炭素繊維が、前記したように外径15〜100nmの微細炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は微細炭素繊維が複数延出する態様で、前記微細炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該微細炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記微細炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである実施形態においては、触媒および炭化水素の混合ガスを800℃〜1300℃の一定温度で加熱する際に、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させて、三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を得る反応工程、得られた炭素繊維構造体の中間体を900〜2200℃で加熱する熱処理工程を経ることにより、製造可能である。
まず、微細炭素繊維の中間体を得る反応工程について説明する。この反応工程においては、基本的には、遷移金属超微粒子を触媒として炭化水素等の有機化合物をCVD法で化学熱分解して微細炭素繊維(中間体)を形成する。
原料有機化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素、一酸化炭素、エタノール等のアルコール類などが使用できる。特に限定されるわけではないが、上記したような三次元ネットワーク構造の炭素繊維構造体の中間体を得る上においては、炭素源として、分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることが好ましい。なお、本明細書において述べる「少なくとも2つ以上の炭素化合物」とは、必ずしも原料有機化合物として2種以上のものを使用するというものではなく、原料有機化合物としては1種のものを使用した場合であっても、繊維構造体の合成反応過程において、例えば、トルエンやキシレンの水素脱アルキル化(hydrodealkylation)などのような反応を生じて、その後の熱分解反応系においては分解温度の異なる2つ以上の炭素化合物となっているような態様も含むものである。
なお、熱分解反応系において炭素源としてこのように2種以上の炭素化合物を存在させた場合、それぞれの炭素化合物の分解温度は、炭素化合物の種類のみでなく、原料ガス中の各炭素化合物のガス分圧ないしモル比によっても変動するものであるため、原料ガス中における2種以上の炭素化合物の組成比を調整することにより、炭素化合物として比較的多くの組み合わせを用いることができる。
例えば、メタン、エタン、プロパン類、ブタン類、ペンタン類、へキサン類、ヘプタン類、シクロプロパン、シクロヘキサンなどといったアルカンないしシクロアルカン、特に炭素数1〜7程度のアルカン;エチレン、プロピレン、ブチレン類、ペンテン類、ヘプテン類、シクロペンテンなどといったアルケンないしシクロオレフィン、特に炭素数1〜7程度のアルケン;アセチレン、プロピン等のアルキン、特に炭素数1〜7程度のアルキン;ベンゼン、トルエン、スチレン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、インデン、フェナントレン等の芳香族ないし複素芳香族炭化水素、特に炭素数6〜18程度の芳香族ないし複素芳香族炭化水素、メタノール、エタノール等のアルコール類、特に炭素数1〜7程度のアルコール類;その他、一酸化炭素、ケトン類、エーテル類等の中から選択した2種以上の炭素化合物を、所期の熱分解反応温度域において異なる分解温度を発揮できるようにガス分圧を調整し、組み合わせて用いること、および/または、所定の温度領域における滞留時間を調整することで可能であり、その混合比を最適化することで効率よく本発明に係る炭素繊維構造体を製造することができる。
このような2種以上の炭素化合物の組み合わせのうち、例えば、メタンとベンゼンとの組み合わせにおいては、メタン/ベンゼンのモル比が、>1〜600、より好ましくは1.1〜200、さらに好ましくは3〜100とすることが望ましい。なお、この値は、反応炉の入り口におけるガス組成比であり、例えば、炭素源の1つとしてトルエンを使用する場合には、反応炉内でトルエンが100%分解して、メタンおよびベンゼンが1:1で生じることを考慮して、不足分のメタンを別途供給するようにすれば良い。例えば、メタン/ベンゼンのモル比を3とする場合には、トルエン1モルに対し、メタン2モルを添加すれば良い。なお、このようなトルエンに対して添加するメタンとしては、必ずしも新鮮なメタンを別途用意する方法のみならず、当該反応炉より排出される排ガス中に含まれる未反応のメタンを循環使用することにより用いることも可能である。
このような範囲内の組成比とすることで、炭素繊維部および粒状部のいずれもが十分に発達した構造を有する炭素繊維構造体を得ることが可能となる。
なお、雰囲気ガスには、アルゴン、ヘリウム、キセノン等の不活性ガスや水素を用いることができる。
また、触媒としては、鉄、コバルト、モリブデンなどの遷移金属あるいはフェロセン、酢酸金属塩などの遷移金属化合物と硫黄あるいはチオフェン、硫化鉄などの硫黄化合物の混合物を使用する。本発明は主に鉄類触媒を使用する。
中間体の合成は、通常行われている炭化水素等のCVD法を用い、原料となる炭化水素および触媒の混合液を蒸発させ、水素ガス等をキャリアガスとして反応炉内に導入し、800〜1300℃の温度で熱分解する。これにより、外径が15〜100nmの繊維相互が、前記触媒の粒子を核として成長した粒状体によって結合した疎な三次元構造を有する炭素繊維構造体(中間体)が複数集まった数cm〜数十cmの大きさの集合体を合成する。
原料となる炭化水素の熱分解反応は、主として触媒粒子ないしこれを核として成長した粒状体表面において生じ、分解によって生じた炭素の再結晶化が当該触媒粒子ないし粒状体より一定方向に進むことで、繊維状に成長する。しかしながら、本発明に係る炭素繊維構造体を得る上においては、このような熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させる、例えば上記したように炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることで、一次元的方向にのみ炭素物質を成長させることなく、粒状体を中心として三次元的に炭素物質を成長させる。このような三次元的な炭素繊維の成長は、熱分解速度と成長速度とのバランスにのみ依存するものではなく、触媒粒子の結晶面選択性、反応炉内における滞留時間、炉内温度分布等によっても影響を受け、また、前記熱分解反応と成長速度とのバランスは、上記したような炭素源の種類のみならず、反応温度およびガス温度等によっても影響受ける。概して、上記したような熱分解速度よりも成長速度の方が速いと、炭素物質は繊維状に成長し、一方、成長速度よりも熱分解速度の方が速いと、炭素物質は触媒粒子の周面方向に成長する。従って、熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させ制御することにより、炭素物質の成長方向を一定方向ではなく多方向とし、本発明に係る三次元構造を形成することができる。この中間体において、繊維相互が粒状体により結合された三次元構造を容易に形成する上では、触媒等の組成、反応炉内における滞留時間、反応温度、およびガス温度等を最適化することが望ましい。
以上のようにして得られた中間体は、炭素原子からなるパッチ状のシート片を貼り合わせたような不完全な構造を有し、欠陥が多い。この中間体は、未反応原料、非繊維状炭化物、タール分および触媒金属を含んでいる。なお、触媒鉄のうち硫化鉄として存在する相対量は10〜90%が好ましく、さらに好ましくは30〜80%とすることができる。
粗い表面があり、触媒鉄を0.5〜5.0質量%含有し、且つそのうち一部の触媒鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっている微細炭素繊維を製造するためには、微細炭素繊維の中間体を反応生成する触媒成分を制御するのが好ましい。前記した微細炭素繊維の中間体を容易に生成する上では、触媒等の組成、反応炉内における滞留時間、反応温度、およびガス温度等を最適化することが望ましい。たとえば触媒として硫黄または硫黄化合物と、鉄または鉄化合物を使う場合は前記硫黄源中の硫黄原子/前記鉄源中の鉄原子のモル比は好ましくは0.01〜10、より好ましくは0.05〜5、さらに好ましくは0.1〜2とすることができる。
なお本発明でいう「微細炭素繊維の中間体」とは、触媒および炭化水素の混合ガスを所定の温度で加熱して炭素物質を繊維状に成長させたものであり、かつ熱処理をする前段階の微細炭素繊維を意味する。
本発明の炭素繊維構造体の製造方法では、必要に応じて予備的アニール処理工程を付加することができる。具体的には反応工程で得られた炭素繊維構造体の中間体を800℃〜1200℃で5〜20分間加熱する。この予備的アニール処理工程により、反応工程で得られた中間体が含んでいる未反応原料、非繊維状炭化物、タール分および触媒金属の一部または全部が除去される。
その後、熱処理工程として、反応工程の終了した微細炭素繊維の中間体ないし炭素繊維構造体の中間体に対し熱処理を行う。熱処理工程としては、微細炭素繊維の中間体ないし炭素繊維構造体の中間体のグラフェン構造を適当に発達させ、かつ前記したように微細炭素繊維表面に触媒鉄成分が存在し及び平滑でない表面を形成できるものであれば特に限定されず、例えば、900〜2200℃において熱処理を施すことによって行うことができる。
好ましい熱処理の一例としては、まず、反応工程の終了し、微細炭素繊維の中間体ないし炭素繊維構造体の中間体を、900〜2200℃、より好ましくは1500〜1800℃でアニール処理することを挙げることができる。
このように、アニール処理を1500〜1800℃の範囲の温度で行うと、得られる微細炭素繊維の結晶性がある程度高くなり、且つ触媒鉄成分は加熱効果により微細炭素繊維の表面まで拡散されることだけ、蒸発することなくことにより、平滑ではない表面を持つ微細炭素繊維の表に触媒鉄成分を存在することで、複合材料を製造する際に、電気伝導性、熱伝導性、機械的強度等において十分な性能が発揮される。
生成炉において触媒および炭化水素の混合ガスを800〜1300℃の範囲の温度で加熱生成して得られた中間体を、900〜2200℃の範囲の温度に加熱保持された加熱炉内を降下させることにより加熱精製して得られてもよい。
生成炉において触媒および炭化水素の混合ガスを800〜1300℃の範囲の温度で加熱して第1の中間体を生成し、該第1の中間体を800〜1200℃の範囲の温度に加熱保持された第1の加熱炉内を通過させながら加熱して第2の中間体を生成し、該第2の中間体を900〜2200℃の範囲の温度に加熱保持された第2の加熱炉内を降下させながら加熱精製して得られてもよい。
微細炭素繊維の中間体には、硫化鉄、炭化鉄、純鉄など各種鉄成分が含有する。この微細炭素繊維の中間体を熱処理する上で、微細炭素繊維の自重による流動を許容する流路を構成する炉本体を備え、前記流路内の炭素繊維を加熱して熱処理できる縦長の熱処理装置を用いれば、鉄成分が希塩酸溶出し易く、また表層部分の鉄成分を多く含有させた微細炭素繊維が製造できる。熱処理炉内に微細炭素繊維を自然落下する際に、微細炭素繊維の内部に存在していた触媒由来の鉄成分の一部を蒸発させ、該鉄成分を熱処理炉内で蒸気化させることができる。該蒸気化させた鉄成分を縦長の熱処理装置内で対流させることによって、鉄成分は微細炭素繊維表面と接触することを高めことができる。また、熱処理により微細炭素繊維内部から外部へ鉄の拡散を促進させてもよい。
熱処理時間としては、特に限定されるものではないが、5〜120分間程度、より好ましくは20〜60分間程度とすることができる。
なお、この際、物質構造を保護するために不活性ガス雰囲気中に還元ガスや微量の一酸化炭素ガスを添加してもよい。
なお、熱処理工程において1500℃〜2200℃でアニール処理すると得られる微細炭素繊維は、高温に対する耐久性が高くなる。またアニール処理されたことにより、微細炭素繊維の欠陥がある程度少なくなるので、空気中においても燃焼開始温度が660℃以上と、熱的安定性が高いものとなる。
本発明の微細炭素繊維として、上記したようにホウ素化合物を含有した微細炭素繊維を得ようとする実施形態においては、このホウ素化合物を含有させるための工程として、例えば、上記したような反応工程を有する製造プロセスに次のような工程を付加することにより行うことができる。
すなわち、前記した反応工程の後に、微細炭素繊維をホウ素化合物の有機溶媒溶液もしくは水溶液に混合する。
ここで使用するホウ素化合物としては、熱処理工程で採用する温度に到達する前に、分解等で蒸発しない物性を有しているところの、単体ホウ素、B、HBO、BC、BN等が挙げられる。ホウ素化合物の含有量は、微細炭素繊維に対してホウ素換算で0.001〜30質量%、好ましくは0.01〜3.0質量%である。微細炭素繊維中にホウ素化合物の存在する部位は、微細炭素繊維を構成する炭素原子の一部がホウ素に置換されている状態、微細炭素繊維の表面にホウ素が付着した状態、微細炭素繊維の表面近傍部に拡散された触媒鉄成分に取り込まれた状態がある。この時にホウ素化合物は種々の化合物種を採り得る。上述したように、微細炭素繊維中にホウ素化合物が存在することによって、構造に多少の欠陥を含んでいる場合であっても、高い導電性を得ることができる。
(微細炭素繊維の予備成形体)
次に本発明に係る微細炭素繊維の予備成形体につき説明する。
本発明の微細炭素繊維の予備成形体は、上記したように、微細炭素繊維、好ましくは、上述したような特定の三次元ネットワーク構造を有する炭素繊維構造体が、その製造工程途中で熱間プレスを経て予備成形され、かつ、アニール処理によりその表面を、触媒鉄成分を有する且つ平滑でない表面があることを特徴とするものである。
このような本発明に係る微細炭素繊維の予備成形体の形状、大きさは、この予備成形体を使用して最終的に形成される複合材の形状、大きさに基づいて決められる。こうして得られる微細炭素繊維の予備成形体は、前記したような本発明に係る微細炭素繊維の有する特性を有しつつ、ハンドリング性が向上し、かつさらに先の段階で複合材の成形体を作製する際に使用するマトリックスとの接触性が良好になる。その結果最終的に作製された複合材の成形加工を容易とすると共に、得られる成形体を強固なものにすることができる。
(微細炭素繊維の予備成形体の製造方法)
上記したような微細炭素繊維の予備成形体は、前記した「微細炭素繊維の製造方法」に関して説明したような反応工程を経て、微細炭素繊維の中間体ないし炭素繊維構造体の中間体の表面に、バインダーを付着させた状態で、炭素繊維の中間体ないし炭素繊維構造体の中間体を、100℃〜200℃で熱間プレスし、次に前記したと同様の熱処理工程の熱処理に付すことにより、調製することができる。
前述したものと同様であり、前記したような予備的アニール処理、ホウ素化合物を含有させるための工程といった付加工程を追加することはもちろん可能である。
熱間プレスによる成形には、金型を使用して上下からプレスする方法、ゴム型を使用して静水圧にて等方的にプレスする方法等が好ましい。プレス時における成形圧力は、1×10〜2×10Pである。
バインダーとして熱硬化性樹脂を使用した場合、プレス時には熱硬化性樹脂の硬化温度、例えば100〜200℃に加熱して、成形と同時に熱硬化性樹脂を硬化させることができる。
熱間プレスによる成形後、熱処理工程による熱処理を行う。熱処理工程についても前述したものと同様であり、説明が重複するために省略する。これら一連の工程により、微細炭素繊維の予備成形体を製造することができる。
なお、微細炭素繊維の予備成形体の形状、大きさは、この予備成形体を使用して最終的に形成される複合材の形状、大きさに基づいて決められる。こうして得られる微細炭素繊維の予備成形体は、内部に空隙部を有しているが、さらに先の段階でこの空隙部にマトリックス材料を含浸させて、複合材の成形体が作製される。含浸の際には、微細炭素繊維の予備成形体とマトリックスとの接触が良好になり、微細炭素繊維とマトリックスとの接着がアンカー効果により強固なものになる。その結果最終的に作製された複合材の成形体をより強固なものにすることができる。
(微細炭素繊維および微細炭素繊維の予備成形体の用途)
上述したような本発明に係る微細炭素繊維および微細炭素繊維の予備成形体、あるいは上述したような本発明に係る微細炭素繊維の製造方法および微細炭素繊維の予備成形体の製造方法により得られた微細炭素繊維および微細炭素繊維の予備成形体は、前記したように、力学特性、導電性、熱伝導性、マトリックスに対する分散性が良好かつ安定であるなどの特性があり、これらを活かして樹脂、セラミックス、金属等の固体材料に対する複合材料用フィラーとして広い範囲に好適に利用できる。
次に、本発明の係る微細炭素繊維および微細炭素繊維の予備成形体を用いた複合材料において、前述のごとき微細炭素繊維を分散させるマトリックスとしては、有機ポリマー、無機材料、金属等が好ましく使用することができる。
有機ポリマーとして、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセテート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリビニルアルコール、ポリフェニレンエーテル、ポリ(メタ)アクリレート及び液晶ポリマー等の各種熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂およびユリア樹脂等の各種熱硬化性樹脂、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム、エチレンアクリルゴム、ノルボルネンゴム及び熱可塑性エラストマー等の各種エラストマーが挙げられる。
また、有機ポリマーは、接着剤、繊維、塗料、インキ等の各種組成物の形態であってもよい。
すなわち、マトリックスが、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、フェノール系接着剤、ポリエステル系接着剤、塩化ビニル系接着剤、ユリア系接着剤、メラミン系接着剤、オレフィン系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、ホットメルト系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ゴム系接着剤及びセルロース系接着剤等の接着剤、アクリル繊維、アセテート繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ノボロイド繊維、セルロース繊維、ビスコースレーヨン繊維、ビニリデン繊維、ビニロン繊維、フッ素繊維、ポリアセタール繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維及びポリプロピレン繊維等の繊維、さらにフェノール樹脂系塗料、アルキド樹脂系塗料エポキシ樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料、不飽和ポリエステル系塗料、ポリウレタン系塗料、シリコーン系塗料、フッ素樹脂系塗料、合成樹脂エマルジョン系塗料等の塗料であってよい。
無機材料としては、例えば、セラミック材料、無機酸化物ポリマー、カーボン系材料などが挙げられる。具体低に、は例えば、カーボンカーボンコンポジットなどの炭素材料、ガラス、ガラス繊維、板ガラス及び他の成形ガラス、ケイ酸塩セラミクス並びに他の耐火性セラミクス、例えば酸化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、窒化ケイ素及び窒化ホウ素が挙げられる。
また、マトリクスが金属である場合、例えば、アルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛、クロム、銅、銀、鉛、銅等の金属、またはこれらの金属の2種以上の合金及び混合物が挙げられる。
さらに複合材料には、上述した微細炭素繊維に加えて他の充填剤を含んでいてもよく、そのような充填剤としては例えば、金属微粒子、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられ、これらを一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
なお、複合材料は、前記のようなマトリックスに本発明に係る微細炭素繊維ないし炭素繊維の予備成形体を有効量含む。その量は、複合材料の用途やマトリックスによって異なるが、例えば、0.1%〜98%程度とすることができる。0.1%未満では、構造材としての強度の補強効果が小さかったり、電気導電性も十分でない。98%より多くなると、マトリックス材料の特性を十分発揮できなくなる。本発明の微細炭素繊維ないし微細炭素繊維の予備成形体を用いた複合材料においては、マトリックス中に、微細な炭素繊維を均一な広がりをもって配置することができ、また平滑でない表面且つその表面に触媒鉄成分を有することから、電気伝導性、熱伝導性、電波遮蔽性等に優れた機能材料、強度の高い構造材料等として有用な複合材料となるものである。
以下、本発明を実施例に基づき、更に具体的に説明する。なお、以下において、各物性値は次のようにして測定した。
<面積基準の円相当平均径>
まず、炭素繊維構造体の写真をSEMで撮影する。得られたSEM写真において、炭素繊維構造体の輪郭が明瞭なもののみを対象とし、炭素繊維構造体が崩れているようなものは輪郭が不明瞭であるために対象としなかった。1視野で対象とできる炭素繊維構造体(60〜80個程度)はすべて用い、3視野で約200個の炭素繊維構造体を対象とした。対象とされた各炭素繊維構造体の輪郭を、画像解析ソフトウェア WinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各繊維構造体の円相当径を計算し、これを平均化した。
<嵩密度の測定>
内径70mmで分散板付透明円筒に1g粉体を充填し、圧力0.1Mpa、容量1.3リットルの空気を分散板下部から送り粉体を吹出し、自然沈降させる。5回吹出した時点で沈降後の粉体層の高さを測定する。このとき測定箇所は6箇所とることとし、6箇所の平均を求めた後、嵩密度を算出した。
<ラマン分光分析>
堀場ジョバンイボン製Jobin Yvon LabRam HR−800−Horibaを用い、アルゴンレーザーの514nmの波長を用いて測定した。
<TG燃焼温度>
マックサイエンス製TG−DTAを用い、空気を0.1リットル/分の流速で流通させながら、10℃/分の速度で昇温し、燃焼挙動を測定した。燃焼時にTGは減量を示し、DTAは発熱ピークを示すので、発熱ピークのトップ位置を燃焼開始温度と定義した。
<X線回折分析>
粉末X線回折装置(JEOL−JDX−3532、日本電子製)を用いて、アニール処理後の微細炭素繊維ないし炭素繊維構造体を調べた。Cu管球で40kV、30mAで発生させたKα線を用いることとし、面間隔の測定は学振法(最新の炭素材料実験技術(分析・解析編)、炭素材料学会編)に従い、シリコン粉末を内部標準として用いた。
<粒状部の平均粒径、円形度、微細炭素繊維との比>
面積基準の円相当平均径の測定と同様に、まず、炭素繊維構造体の写真をSEMで撮影する。得られたSEM写真において、炭素繊維構造体の輪郭が明瞭なもののみを対象とし、炭素繊維構造体が崩れているようなものは輪郭が不明瞭であるために対象としなかった。1視野で対象とできる炭素繊維構造体(60〜80個程度)はすべて用い、3視野で約200個の炭素繊維構造体を対象とした。
対象とされた各炭素繊維構造体において、炭素繊維相互の結合点である粒状部を1つの粒子とみなして、その輪郭を、画像解析ソフトウェア WinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各粒状部の円相当径を計算し、これを平均化して粒状部の平均粒径とした。また、円形度(R)は、前記画像解析ソフトウェアを用いて測定した輪郭内の面積(A)と、各粒状部の実測の輪郭長さ(L)より、次式により各粒状部の円形度を求めこれを平均化した。
[式1]
R=A*4π/L
さらに、対象とされた各炭素繊維構造体における微細炭素繊維の外径を求め、これと前記各炭素繊維構造体の粒状部の円相当径から、各炭素繊維構造体における粒状部の大きさを微細炭素繊維との比として求め、これを平均化した。
<微細炭素繊維における触媒鉄成分の含有量>
蛍光X線測定装置(RigakuZSXmini、理学電機工業株式会社製)を使用して金属元素の分析を行った。なお、確認のために、別途、X線回折測定装置JEOL−JDX−3532(日本電子株式会社製)を使用して、触媒鉄成分を検出した。
<微細炭素繊維における触媒鉄成分の組成及び組成比>
57Feメスバウアー分光法(Austin Science S−600 Mossbauer spectrometer )を使用して微細炭素繊維における触媒鉄成分の組成及び組成比を解析した。
<触媒鉄成分の微細炭素繊維の表面存在率>
熱処理工程において熱処理後微細炭素繊維を、1〜5%塩酸に25時間浸漬し、この酸に侵漬する処理前後の微細炭素繊維中に残存する触媒由来の鉄量を蛍光X線解析法で測定し、下記の計算式から触媒鉄成分の微細炭素繊維の表面に存在率を得られる。
表面に存在する触媒鉄成分(%)
=(1−酸に漬けた後の鉄残存量/酸に漬ける前の鉄残存量)×100%
<微細炭素繊維表面に存在する触媒鉄成分の脱落試験>
蓋付バイアル瓶中に入れられたトルエン100mlに、10〜100μg/mlの割合で微細炭素繊維を添加し、微細炭素繊維の分散液試料を調製した。
このようにして得られた微細炭素繊維の分散液試料に対し、発信周波数38kHz、出力150wの超音波洗浄器((株)エスエヌディ製、商品名:USK−3)を用いて、超音波をかけ、超音波を負荷してから60分経過後において、分散液試料を乾燥させ、乾燥した微細炭素繊維を蛍光X線解析で鉄元素成分を検出し。脱落試験前後の鉄元素量を比較し、微細炭素繊維の表面に存在する鉄触媒の脱落性を検討した。
[実施例1]微細炭素繊維の中間体の製造(反応工程)
トルエンを原料としてCVD法で合成した。触媒としてフェロセンおよびチオフェンの混合物を使用し、水素ガスの還元雰囲気下で実施した。使用した循環ガスにおける組成比は、体積基準のモル比でCH 7.5%、 C 0.3%、C 0.7%、C 0.1%、CO 0.3%、N 3.5%、H 87.6%であり、新鮮な原料ガスとの混合によって、生成炉へ供給される原料ガス中におけるメタンとベンゼンとの混合モル比CH/C(なお、新鮮な原料ガス中のトルエンは予熱炉での加熱によって、CH:C=1:1に100%分解したものとして考慮した。)が、3.44となるように、混合流量を調整した。なお、最終的な原料ガス中には、混合される循環ガス中に含まれていた、C、CおよびCOも炭素化合物も含まれているが、これらの成分は、いずれもごく微量であり、実質的に炭素源としては無視できるものであった。そして、生成炉において、1250℃で熱分解して、3次元ネットワーク状の繊維構造体(中間体)を得た。この中間体のTEM写真を図1に示す。得られた中間体を、蛍光X線測定装置RigakuZSXmini(理学電機工業株式会社製)を使用して鉄元素の分析を行った。反応後得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体は、鉄を1.7wt%含有していた。また、57Feメスバウアー分光法(Austin Science S−600 Mossbauer spectrometer )を使用して57Feメスバウアースペクトルを測定した(図2に示す)。この57Feメスバウアースペクトルを解析して、反応後得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体に含めた触媒鉄成分の組成及び組成比は炭化物(24.74%)、硫化物(58.00%)及び純鉄(17.26%)である。
[実施例2]予備的アニール処理
実施例1で得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を、窒素中で900℃にて20分焼成して、タールなどの炭化水素を分離し、予備的アニール処理を行った。得られた炭素繊維構造体を、蛍光X線測定装置RigakuZSXmini(理学電機工業株式会社製)を使用して鉄元素の分析を行った。予備的アニール処理後得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体は、鉄を1.7wt%含有していた。また、57Feメスバウアー分光法(Austin Science S−600 Mossbauer spectrometer )を使用して57Feメスバウアースペクトルを測定し、解析した、予備的アニール処理後得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体に含めた触媒鉄成分の組成及び組成比は炭化物(57.44%)、硫化物(21.16%)及び純鉄(21.41%)である。
また、ラマン分光分析法(使用機器Jobin Yvon LabRam HR−800−Horiba製)でラマン分光測定のR値(I/I)は0.98であった。
また、得られた炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率が、前記した手順によって得られた。実施例2で得た炭素繊維構造体5.0gに85mgの鉄成分を蛍光X線で検出され、1.8%の塩酸に25時間浸漬した後蒸留水でpH値7.0まで洗浄、乾燥させた後、79.6mgの鉄成分が検出された。これらの結果から実施例2で得た炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率は6.3%であった。
[実施例3]
アニール処理(熱処理工程)
実施例2で得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を、窒素中で1200℃にて20分間アニール処理した。最終的に得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体を、蛍光X線測定装置RigakuZSXmini(理学電機工業株式会社製)を使用して鉄元素の分析を行った。最終的に得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体は、鉄を1.6wt%含有していた。また、57Feメスバウアー分光法(Austin Science S−600 Mossbauer spectrometer )を使用して57Feメスバウアースペクトルを測定した。この57Feメスバウアースペクトルを解析して、得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体に含めた触媒鉄成分の組成及び組成比は炭化物(27.01%)、硫化物(43.31%)及び純鉄(29.68%)である。
また、ラマン分光分析法(使用機器Jobin Yvon LabRam HR−800−Horiba製)で測定されるR値(I/I)は0.85であった。
また、得られた炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率が、前記した手順によって得られた。実施例3で得た炭素繊維構造体5.0gに80mgの鉄成分を蛍光X線で検出され、1.8%の塩酸に25時間浸漬した後蒸留水でpH値7.0まで洗浄、乾燥させた後、約74mgの鉄成分が検出された。これらの結果から実施例3で得た炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率は7.5%であった。
[実施例4]
アニール処理(熱処理工程)
実施例2で得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を、1500℃で20分間アニール処理した。このアニール処理した炭素繊維構造体のTEM写真を図3に示す。微細炭素繊維は、繊維表面の一部に括れがあり、かつ繊維表面が粗い様態であった。
最終的に得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体を、蛍光X線測定装置RigakuZSXmini(理学電機工業株式会社製)を使用して鉄元素の分析を行った。最終的に得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体は、鉄を1.6wt%含有していた。また、57Feメスバウアー分光法(Austin Science S−600 Mossbauer spectrometer )を使用して57Feメスバウアースペクトルを測定した(図4に示す)。この57Feメスバウアースペクトルを解析して、得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体に含めた触媒鉄成分の組成及び組成比は炭化物(30.13%)、硫化物(31.43%)及び純鉄(38.45%)である。
また、ラマン分光分析法(使用機器Jobin Yvon LabRam HR−800−Horiba製)で測定されるR値(I/I)は0.85であった。
さらに得られた炭素繊維構造体の円相当平均径は、180μm、嵩密度は0.0031g/cm、TG燃焼温度は665℃、面間隔は3.46オングストロームであった。
さらに炭素繊維構造体における粒状部の粒径は平均で、350nm(SD180nm)であり、炭素繊維構造体における微細炭素繊維の外径の5.8倍となる大きさであった。また粒状部の円形度は、平均値で0.69(SD0.15)であった。
また、得られた炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率が、前記した手順によって得られた。実施例4で得た炭素繊維構造体5.0gに80mgの鉄成分を蛍光X線で検出され、1.8%の塩酸に25時間浸漬した後蒸留水でpH値7.0まで洗浄、乾燥させた後、約47mgの鉄成分が検出された。これらの結果から実施例4で得た炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率は41%であった。
また、前記した手順によって微細炭素繊維の表面に存在する触媒鉄の脱落試験を行ったところ、脱落実験前後微細炭素繊維の触媒鉄成分の含有量は変化しないことから、触媒鉄成分は微細炭素繊維表面に安定して接合していることが明らかとなった。
[実施例5]
アニール処理(熱処理工程)
実施例2で得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を、1800℃で20分間アニール処理した。得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体を、蛍光X線測定装置RigakuZSXmini(理学電機工業株式会社製)を使用して鉄元素の分析を行った。最終的に得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体は、鉄を1.2wt%含有していた。
また、ラマン分光分析法(使用機器Jobin Yvon LabRam HR−800−Horiba製)で測定されるR値(I/I)は0.80であった。
また、得られた炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率が、前記した手順によって得られた。実施例5で得た炭素繊維構造体5.0gに60mgの鉄成分を蛍光X線で検出され、1.8%の塩酸に25時間浸漬した後蒸留水でpH値7.0まで洗浄、乾燥させた後、約15mgの鉄成分が検出された。これらの結果から実施例5で得た炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率は75%であった。
[実施例6]
アニール処理(熱処理工程)
実施例2で得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を、2000℃で20分間アニール処理した。得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体を、蛍光X線測定装置RigakuZSXmini(理学電機工業株式会社製)を使用して鉄元素の分析を行った。最終的に得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体は、鉄を0.87wt%含有していた。また、57Feメスバウアー分光法(Austin Science S−600 Mossbauer spectrometer )を使用して57Feメスバウアースペクトルを測定し、解析した、得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体に含めた触媒鉄成分の組成及び組成比は炭化物(13.11%)及び純鉄(86.89%)である。
また、ラマン分光分析法(使用機器Jobin Yvon LabRam HR−800−Horiba製)で測定されるR値(I/I)は0.40であった。
また、得られた炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率が、前記した手順によって得られた。実施例6で得た炭素繊維構造体5.0gに44mgの鉄成分を蛍光X線で検出され、1.8%の塩酸に25時間浸漬した後蒸留水でpH値7.0まで洗浄、乾燥させた後、約4mgの鉄成分が検出された。これらの結果から実施例6で得た炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率は91%であった。
[実施例7]
アニール処理(熱処理工程)
実施例2で得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を、2200℃で20分間アニール処理した。得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体を、蛍光X線測定装置RigakuZSXmini(理学電機工業株式会社製)を使用して鉄元素の分析を行った。最終的に得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体は、鉄を0.23wt%含有していた。
また、ラマン分光分析法(使用機器Jobin Yvon LabRam HR−800−Horiba製)で測定されるR値(I/I)は0.30であった。
また、得られた炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率が、前記した手順によって得られた。実施例7で得た炭素繊維構造体5.0gに12mgの鉄成分を蛍光X線で検出され、1.8%の塩酸に25時間浸漬した後蒸留水でpH値7.0まで洗浄、乾燥させた後、鉄成分が検出されなかった。これらの結果から実施例7で得た炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率は100%であった。
[比較例1]炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率
比較例として、実施例1で得た炭素繊維構造体5.0gに85mgの鉄成分を蛍光X線で検出され、1.8%の塩酸に25時間浸漬けた後蒸留水でpH値7.0まで洗浄、乾燥させた後、85mgの鉄成分が検出した。これらの結果から実施例1で得た炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率は0%であった。実施例1で得た炭素繊維構造体中に存在する鉄成分が多いが、炭素繊維構造体の表面には存在しなかった。
[比較例2]炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率
比較例として、実施例2で得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を、2500℃で20分間アニール処理した。得られた炭素繊維構造体含有触媒鉄の表面存在率を、前記した手順によって測定した。2500℃で20分間アニール処理した炭素繊維構造体5.0gに1.5mgの鉄成分が蛍光X線で検出され、1.8%の塩酸に25時間浸漬した後蒸留水でpH値7.0まで洗浄、乾燥させた後は、鉄成分は検出されなかった。これらの結果から比較例2で得た炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率は100%であったが、鉄成分の蒸発によって全体的に炭素繊維構造体中に存在する鉄成分の量が少なくなった。
実施例2〜7及び比較例1〜2で得た炭素繊維構造体中含有触媒鉄の表面存在率の結果は表1にまとめた。
Figure 0005242124
[実施例8]ホウ素添加
5.0gのB(高純度化学研究所株式会社製)を400mlのエタノールに溶解させた後、実施例1で得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体10gを、浸漬液に室温で30分間浸漬した後、100℃で12時間乾燥した。
アニール処理
実施例8で得られた浸漬、乾燥後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体10gを、900℃に20分間加熱し、次に1800℃で20分間アニール処理した。最終的に得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体を、蛍光X線測定装置RigakuZSXmini(理学電機工業株式会社製)を使用して鉄元素の分析を行った。分析の結果、炭素繊維構造体は鉄を0.7wt%含有していた。また別に、また、ラマン分光分析法(使用機器Jobin Yvon LabRam HR−800−Horiba製)で測定されるR値(I/I)は0.80であった。
[実施例9]成形体作製例
実施例8で得られた浸漬、乾燥後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体8.0gを、別途60%フェノール樹脂溶液4.0gを、200mlのメタノールで希釈して調製した溶液中に添加し、30分間浸漬処理した後、100℃で12時間有機溶媒を乾燥した。その後、ホットプレス機を使用して、150℃で30分間熱間プレスし、成形体を得た。得られた成形体は質量7.7g、直径40mm、高さ7.5mm、密度0.81g/cmであった。
成形体作製後のアニール処理
実施例9で得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の成型体を、900℃で20分間加熱し、次に1800℃で20分間アニール処理した。最終的に得られたアニール処理後の三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の予備成形体は、質量5.33g、直径40mm、高さ14mm、密度0.30g/cmであった。得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の予備成形体を、蛍光X線測定装置RigakuZSXmini(理学電機工業株式会社製)を使用して鉄元素の分析を行った。分析の結果、炭素繊維構造体の予備成形体は鉄を0.7wt%含有していた。
[実施例10]微細炭素繊維を添加したエポキシ複合材の作製例
実施例4で得た炭素繊維構造体1wt%をビスフェノールA型エポキシ樹脂(硬化剤:ジシアンジアミド)に添加し、混錬、脱泡後、120℃で30分硬化成型してから、試験片を作製し、3点曲げ試験を行い、曲げ強度及び弾性率を測定した、その結果は表2に示している。
[比較例3]エポキシニート材の作製例
比較例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(硬化剤:ジシアンジアミド)だけを用いて実施例10と同様な混錬硬化条件で成型し、3点曲げ試験を行い、曲げ強度及び弾性率を測った、その結果は表2に示した。
[比較例4] 微細炭素繊維を添加したエポキシ複合材の作製例
比較例として、比較例2で得られた三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体1wt%をビスフェノールA型エポキシ樹脂(硬化剤:ジシアンジアミド)に添加し、実施例10と同様な混錬硬化条件で混錬、硬化成型後、3点曲げ試験を行い、曲げ強度及び弾性率を測定した。その結果は表2に示した。
Figure 0005242124
本発明の微細炭素繊維においては、特に、上記したような三次元ネットワーク構造を有する炭素繊維構造体は、触媒由来の鉄を微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%含有し、そのうち5〜100%の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっている為、触媒鉄成分は微細炭素繊維の表に存在することによって、複合材料を製造する際に表面改質など工程が必要とせず、マトリックス材との接着性を強化することが期待できる。また、反応触媒鉄成分は粒や層などの形でカーボンナノチューブの表面部分に存在することではなく、形を観察しにくい状態で、例えば、原子の形態でチューブの表に存在し、カーボンナノチューブとの結び付きが強固であり、物理的な外力では剥がれないため、より良いマトリックス材料との接着性、特に金属系マトリックスとの濡れ性の改善が期待できる。
本発明の炭素繊維複合体の利用用途の具体例としては、特に限定されるものではないが、例えば、次のようなものを挙げることができる。(1)機械的強度を利用する構造材として。(2)導電性、熱伝導性を利用するものとして、導電性樹脂、導電性成形体、熱伝導性樹脂、熱伝導性樹脂成形体、包装材、ガスケット、容器、抵抗体、電線等。(3)電磁波遮蔽材、(4)物理的特性を利用するものとして、家電、車両、航空機等のボディ、機械のハウジング、電池の極材等。
本発明の実施例において得られた、三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体のTEM写真である。 本発明の実施例において得られた、反応後の炭素繊維構造体に含めた触媒鉄の57Feメスバウアースペクトルである。 本発明の実施例において得られた、アニール処理した三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体のTEM写真である。 本発明の実施例において得られた、アニール処理後の炭素繊維構造体に含めた触媒鉄の57Feメスバウアースペクトルである。

Claims (18)

  1. 反応触媒由来の鉄を構成成分とする微細炭素繊維であって、該微細炭素繊維が、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であり、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものであることを特徴とし、前記鉄成分は微細炭素繊維に接合しており、蛍光X線法で測定された合計の鉄含有量が微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%であり、かつ前記鉄成分のうち5〜100%の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっていることを特徴とする微細炭素繊維。
  2. 前記した鉄成分の形態は炭化物、硫化物もしくは純鉄であることを特徴とする請求項1記載の微細炭素繊維。
  3. 前記した微細炭素繊維は、ラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の微細炭素繊維。
  4. 前記した微細炭素繊維は、X線回折法で求めた黒鉛としての結晶性を示すd002が3.42Å以上の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細炭素繊維。
  5. 前記した微細炭素繊維は、繊維表面の一部に括れがあり、かつ繊維表面が粗いことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の微細炭素繊維。
  6. 前記した微細炭素繊維が、炭素繊維に対してホウ素換算で0.001〜30質量%のホウ素化合物を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の微細炭素繊維。
  7. 反応触媒由来の鉄を構成成分とする微細炭素繊維であって、該微細炭素繊維が、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記微細炭素繊維の成長過程において形成されてなるものであることを特徴とし、前記鉄成分は微細炭素繊維に接合しており、蛍光X線法で測定された合計の鉄含有量が微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%であり、かつ前記鉄成分のうち5〜100%の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっている微細炭素繊維が、熱間プレスを経て予備成形されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の微細炭素繊維の予備成形体。
  8. 触媒および炭化水素の混合ガスを800℃〜1300℃の一定温度で加熱する際に、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることにより、炭素物質を、繊維状に成長させる一方で、使用される触媒粒子の周面方向に成長させて、三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体の中間体を得る、得られた炭素繊維構造体の中間体を900〜2200℃の範囲の温度に熱処理によりなる、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維構造体は、その表面は粗く、且つ反応触媒由来の鉄を含み、蛍光X線法で測定された合計の鉄含有量が微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%であり、かつそのうち5〜100%の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっていることを特徴とする微細炭素繊維の製造方法。
  9. 前記触媒ガスは、硫黄または硫黄化合物と、鉄または鉄化合物からなり、かつ前記硫黄源中の硫黄原子/前記鉄源中の鉄原子のモル比は0.01〜10であることを特徴とする請求項に記載の微細炭素繊維の製造方法。
  10. 前記微細炭素繊維の中間体を熱処理する方法において、微細炭素繊維の自重による流動を許容する流路を構成する炉本体を備え、前記流路内の炭素繊維を加熱して熱処理する微細炭素繊維の熱処理装置を用いることを特徴とする請求項8または9に記載の微細炭素繊維の製造方法。
  11. 前記した微細炭素繊維の中間体を得た後熱処理する前に、ホウ素化合物の有機溶媒溶液もしくは水溶液または微細固体粉を混合することにより、前記した微細炭素繊維に対してホウ素換算で0.001〜30質量%のホウ素化合物を含有させることを特徴とする、請求項8〜10いずれか1項に記載の微細炭素繊維の製造方法。
  12. 請求項8〜11に記載の微細炭素繊維の製造方法において、その製造工程途中で熱間プレスを経て予備成形され、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される三次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、当該炭素繊維構造体は炭素繊維が複数延出する態様で、前記炭素繊維の外径よりもその粒径が大きく当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維構造体は、その表面は粗く、かつ、触媒鉄を構成成分とする微細炭素繊維であって、蛍光X線法で測定された合計の鉄含有量が微細炭素繊維中0.5〜5.0質量%であり、かつそのうち5〜100%の鉄は希塩酸で溶出可能な状態になっていることを特徴とする微細炭素繊維の予備成形体の製造方法。
  13. 請求項1〜のいずれか1つに記載の微細炭素繊維を、全体の0.1〜30質量%の割合でマトリックス中に配合したことを特徴とする複合材料。
  14. 請求項に記載の予備成形体を、全体の0.1〜30質量%の割合でマトリックス中に配合したことを特徴とする複合材料。
  15. 前記マトリックスが、少なくとも有機ポリマーを含むものである請求項13または請求項14に記載の複合材料。
  16. 前記マトリックスが、少なくとも無機材料を含むものである請求項13または請求項14に記載の複合材料。
  17. 前記マトリックスが、少なくとも金属を含むものである請求項13または請求項14に記載の複合材料。
  18. 前記マトリックス中に、金属微粒子、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、ガラス繊維および炭素繊維からなる群から選ばれた少なくとも一種の充填剤をさらに含むことを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載の複合材料。
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