JP5233039B2 - 銅酸化物高温超伝導体固有ジョセフソン接合を用いた量子ビット - Google Patents

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Description

この出願の発明は、銅酸化物高温超伝導体固有ジョセフソン接合を用いた量子ビットに関するものである。
従来の計算原理とは異なり量子力学に由来する重ね合せの原理を用いる量子計算の提案がなされている。量子計算では超並列計算が可能であり、インターネットなどで利用されている暗号が解読できるなど驚異的な計算能力を示すことが証明されている。
ところが、量子計算の実現には、最先端の加工技術を利用した極微細デバイス作成技術や、極低温環境下での微小信号測定技術などが必要であり、実現例はまだ数えるほどしかない。
その中で超伝導体を用いた量子計算機は、超伝導という現象がマクロスコピックな現象であることから比較的製作が容易であり、また超伝導体が固体デバイスであることから、その実現が強く期待されている。
このような状況のもとで、ジョセフソン接合の波動関数の位相差を量子数とする量子ビットの提案が非特許文献1になされている。しかしながら、量子ビットの動作温度は高いとはいえず、量子計算機の実現のためには、さらに高い動作温度の量子ビットが必要とされている。
J. M. Martinia, et al., Phys. Rev. Lett. 89. 117901 (2002)
そこで、この出願の発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、より高い動作温度で安定して動作し、量子計算機の実現に寄与できる量子ビットを提供することを課題とする。
この出願の発明は、上記課題を解決するため、第1には、銅酸化物高温超伝導体を用いて形成した固有ジョセフソン接合により構成され、かつ、量子トンネル効果を示すことを特徴とする量子ビットを提供する。
また、第2には、上記第1の発明において、銅酸化物高温超伝導体として、Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体を用いることを特徴とする量子ビットを提供する。
また、第3には、上記第2の発明において、Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体が、BiSrCaCu8+δであることを特徴とする量子ビットを提供する。
また、第4には、上記第2の発明において、Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体が、BiSrCaCu10+δであることを特徴とする量子ビットを提供する。
また、第5には、上記第2の発明において、Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体が、BiSrCuO6+δであることを特徴とする量子ビットを提供する。
また、第6には、上記第1の発明において、銅酸化物高温超伝導体として、Tl(タリウム)系銅酸化物高温超伝導体を用いることを特徴とする量子ビットを提供する。
また、第7には、上記第6の発明において、Tl(タリウム)系銅酸化物高温超伝導体が、TlBaCaCuであることを特徴とする量子ビットを提供する。
また、第8には、上記第1の発明において、銅酸化物高温超伝導体として、Y(イットリウム)系銅酸化物高温超伝導体を用いることを特徴とする量子ビットを提供する。
さらに、第9には、上記第8の発明において、Y(イットリウム)系銅酸化物高温超伝導体が、YBaCu7−δであることを特徴とする量子ビットを提供する。
この出願の発明によれば、上記構成を採用したので、従来の量子ビットに比べ動作温度が一桁以上高く、安定して動作する量子ビットが提供可能となる。したがって、量子計算機の実現への寄与が期待される。
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
この出願の発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、超伝導体としては金属である低温超伝導体と酸化物である高温超伝導体があるが、そのうちの酸化物である高温超伝導体において特定の銅酸化物高温超電導体を用いて形成された固有ジョセフソン接合を利用して量子ビットを構成すると、動作温度が従来の金属超伝導体に比べ1桁以上大きくなり、動作のばらつきも抑制できることを確認し、この出願の発明に至った。
すなわち、この出願の発明の量子ビットは、銅酸化物高温超伝導体を用いて形成した固有ジョセフソン接合により構成されることを特徴とする。
銅酸化物高温超伝導体としては、Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体、Tl(タリウム)系銅酸化物高温超伝導体、Y(イットリウム)系銅酸化物高温超伝導体のいずれかを用いることができる。
Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体としては、種々の材料を使用することができるが、たとえばBiSrCaCu8+δ、BiSrCaCu10+δ、BiSrCuO6+δ使用が好ましい。
Tl(タリウム)系銅酸化物高温超伝導体としても、種々の材料を使用することができるが、たとえばTlBaCaCuの使用が好ましい。
Y(イットリウム)系銅酸化物高温超伝導体としても、種々の材料を使用することができるが、たとえばYBaCu7−δの使用が好ましい。
この出願の発明において、上記の銅酸化物高温超伝導体を用いて固有ジョセフソン接合を形成する場合、ウィスカー結晶やバルク結晶の上に、公知の収束イオンビーム(FIB)法や両面加工法を用いて接合形成を行うことができる。
以下、BiSrCaCu8+δ(Bi−2212と記す)を用いた場合を例に具体例に説明を行うが、もちろんこの出願の発明はこれに限定されるものではない。
図1にこの出願の発明によるBi−2212を用いた固有ジョセフソン接合の走査型イオン顕微鏡写真像を示す。図中IJJsとして示されている部分が固有ジョセフソン接合部分であり、FIB法を用いて形成したものである。Bi−2212ではc軸方向に超伝導CuO層と絶縁BiO層又はSrO層が交互に積層されていることが知られている。
このサンプルを希釈冷凍機(He/He Oxford dilution refrigator)のチャンバー内に配置し、固有ジョセフソン接合の電流−電圧特性上におけるスイッチング電流分布P(Isw)の温度依存性を測定した。測定は四端子法により行った。このP(Isw)は固有ジョセフソン接合の第一電流ブランチ上において測定した。P(Isw)の分布幅σは、ジョセフソン接合の位相モデルにおいて接合間位相差のトンネル確立に相当し、σの温度依存性σ(T)はクロスオーバー温度とよばれる温度を境に、温度に対して独立に振る舞う。この振る舞いが量子トンネル効果(MQT)を裏付ける実験データであり、クロスオーバー温度は量子トンネル効果(MQT)が発現する温度である。
図2に、4.2Kにおける固有ジョセフソン接合の電流−電圧特性とスイッチング電流分布を示す。また、図3(a)に、スイッチング電流分布の温度依存性を示し、図3(b)にスイッチング電流分布幅σの温度依存性を示す。
この実験結果から、この出願の発明の実施例では、金属系の超伝導体を用いたジョセフソン接合の場合に比べて10倍程度高温である約1Kで量子トンネル効果(MQT)が発現することが確認された。量子トンネル効果(MQT)は量子ビットの量子状態を読み出すときに利用できる物理現象である。したがって、この接合を用いた構成される量子ビットの動作温度も約1Kとなる。
また、固有ジョセフソン接合は一般に多数のジョセフソン接合が直列に連なった構造となっているが、上記実施例により、このような接合においてもごく零バイアス近傍ではその特性が単一のジョセフソン接合と等価になることが確認された。
この出願の発明によるBi−2212を用いた固有ジョセフソン接合の走査型イオン顕微鏡写真像を示す図である。 4.2Kにおける固有ジョセフソン接合の電流−電圧特性とスイッチング電流分布を示す図である。 (a)はスイッチング電流分布の温度依存性を示す図、(b)はスイッチング電流分布幅σの温度依存性を示す図である。

Claims (9)

  1. 銅酸化物高温超伝導体を用いて形成した固有ジョセフソン接合により構成され、かつ、量子トンネル効果を示すことを特徴とする量子ビット。
  2. 銅酸化物高温超伝導体として、Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体を用いることを特徴とする請求項1記載の量子ビット。
  3. Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体が、BiSrCaCu8+δであることを特徴とする請求項2記載の量子ビット。
  4. Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体が、BiSrCaCu10+δであることを特徴とする請求項2記載の量子ビット。
  5. Bi(ビスマス)系銅酸化物高温超伝導体が、BiSrCuO6+δであることを特徴とする請求項2記載の量子ビット。
  6. 銅酸化物高温超伝導体として、Tl(タリウム)系銅酸化物高温超伝導体を用いることを特徴とする請求項1記載の量子ビット。
  7. Tl(タリウム)系銅酸化物高温超伝導体が、TlBaCaCuであることを特徴とする請求項6記載の量子ビット。
  8. 銅酸化物高温超伝導体として、Y(イットリウム)系銅酸化物高温超伝導体を用いることを特徴とする請求項1記載の量子ビット。
  9. Y(イットリウム)系銅酸化物高温超伝導体が、YBaCu7−δであることを特徴とする請求項8記載の量子ビット。
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