JP5217664B2 - 感温型光制御素子及びその作製方法 - Google Patents

感温型光制御素子及びその作製方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5217664B2
JP5217664B2 JP2008153605A JP2008153605A JP5217664B2 JP 5217664 B2 JP5217664 B2 JP 5217664B2 JP 2008153605 A JP2008153605 A JP 2008153605A JP 2008153605 A JP2008153605 A JP 2008153605A JP 5217664 B2 JP5217664 B2 JP 5217664B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
light
diffraction
transmission
control
pdlc
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2008153605A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009300629A (ja
Inventor
洋 垣内田
昭文 荻原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Institute of National Colleges of Technologies Japan
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Institute of National Colleges of Technologies Japan
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST, Institute of National Colleges of Technologies Japan filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2008153605A priority Critical patent/JP5217664B2/ja
Publication of JP2009300629A publication Critical patent/JP2009300629A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5217664B2 publication Critical patent/JP5217664B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Liquid Crystal (AREA)
  • Diffracting Gratings Or Hologram Optical Elements (AREA)
  • Optical Modulation, Optical Deflection, Nonlinear Optics, Optical Demodulation, Optical Logic Elements (AREA)

Description

本発明は、高分子分散液晶型ホログラフィック回折素子(以下、H−PDLC回折素子と記載することがある。)を用いた光透過・回折制御素子及び当該光透過・回折制御素子を含む光透過・回折制御部材に関するものであり、更に詳しくは、上記H−PDLC回折素子を用いた、自動調光窓材等に好適に使用される光透過・回折制御素子、ある特定の波長範囲で透過率制御できる性質を有し、この波長範囲を用途に応じて自在に変えることができる光透過・回折制御素子、及び当該光透過・回折制御素子を含む光透過・回折制御部材、例えば、自動調光遮熱窓材、このような窓材を用いた調光及び空調の方法及び装置等に関するものである。
本発明は、例えば、建築物や自動車、列車、船舶、飛行機などの移動体に、省エネルギー、快適住居性能、採光性能などの機能を付加することを可能とする新しい光透過・回折制御素子、当該光透過・回折制御素子を用いた機能性自動調光遮熱窓材及びその応用技術等を提供するものである。
従来、サーモクロミック(熱着色型)材料が種々提案されている。その中でも、VOが、環境応答型調光材料として、有力候補であり、このVOを用いたサーモクロミック窓材が、種々提案されている。これを、単独あるいは他の材料と組み合わせることで、可視波長域において、透明性を保持しつつ、主として近赤外、赤外波長域で、光透過率を温度によって制御することが実現化されている(特許文献1、2参照)。
また、先行技術として、温度に対して、可逆的に透明状態と白濁遮光状態との間を変わる曇天現象を利用した調光技術が報告されている。例えば、ある温度を上回ると白濁化する水溶性化合物を溶解した水性組成物を、調光ガラスに積層した窓材が開発されている。この材料は、低温では透明状態であるが、高温になると白濁し、散乱体となって可視波長域を含む広い波長範囲にわたって遮光する。そのため、この窓材は、調光性能が高く、かつ調光温度も生活温度を含めて広い範囲で設定できるという利点を有する(特許文献3参照)。
しかし、VOによるサーモクロミック窓材では、太陽光の室内への光量を調整する性能として、1)可視透過性能が、窓材としては低い、2)調光性能に改善の余地がある、3)調光温度が、生活温度範囲より高い、という問題がある。
上記1)の問題は、VOの光学バンドギャップが狭く、光吸収端の裾が波長500nm付近まで迫っていることに起因する。また、これが要因で、可視透過率が全体に低いだけでなく、短波長側での透過率がより小さいため、茶黄色に着色する傾向がある。また、上記2)の問題は、VOのサーモクロミズムによる透過率変化が主に波長1000nmより長波長側にあることが理由である。
地上に届く太陽光の強度は、可視から赤外にわたって波長とともに緩やかに減少する分布を持つ。したがって、太陽光の輻射が大きい1000nmより短波長側で調光する方が、近赤外及び赤外域で調光するより効果的であるが、VOの本質的な特徴であるサーモクロミック特性を変えることは容易ではない。上記1)と2)の問題を改善するためには、VO薄膜を、適切な屈折率を持つ媒質(例えば、TiO)の膜によって挟んで、可視光反射防止とし、調光性能をできるだけ弱めずに、可視域の透明度を上げることなどが行われている。しかし、このような手法では、多様な要望に沿うには不十分な場合がある(特許文献4、非特許文献1参照)。
更に、上記3)の問題は、VOの相転移温度が70℃付近と、実生活の温度範囲、例えば、日本では、−10から40℃の範囲、より高い点であるが、これについては、不純物添加を始めとして、種々の方法で転移温度を低減する試みがなされている。しかし、転移温度の低下とともに、サーモクロミズムによる透過率変化も減少する、といった課題が残されている(非特許文献2、3参照)。
従来、VOでは、ある程度まで調光性能が得られているが、これを実生活に導入するためには、更に改善の必要性が高く、VOを用いて、多様な要望に応えるには不十分な点が残されているのが実情である。一方、曇天現象を利用した調光材料では、温度上昇に伴う光散乱の発生により、可視波長域を含めて広い波長範囲で透過率が変わる。
そのため、調光性が非常に高く、また、調光温度についても、材料として生活温度域に合わせて設計されており、既に、実用化レベルに達している。しかしながら、調光の原理上、高温時には可視光においても不透明となるため、室外の景色を見る、あるいは採光するという、窓の基本機能が失われるという問題がある。
以上のように、従来の調光窓材には、例えば、熱、電場、ガスなどによって制御する方式があり、更には、応力、化学状態などによって制御する方式も提案されている(特許文献5、6参照)。その中でも、感温型の調光窓材は、装置の構成が単純にできるため、既存の窓材との置き換えの簡便性やコストなどにおいて利点を持つ。
また、温度に対して、透明状態と白濁遮光状態の間を可逆的に変化する、いわゆる曇天現象を利用した調光技術も提案されている。例えば、ある温度を上回ると白濁化する水溶性化合物を溶解した水性組成物をガラスに積層し、低温では透明状態であるのに対し、高温になると白濁し、散乱体となって可視波長域を含む広い波長範囲にわたって遮光する。
上記の曇天現象は、可視波長域も含めて広い波長で生じるため、高温時には室内への採光性が落ち、外景が全く見えなくなる、といった問題点があり、それらを改善する技術も開発されている。つまり、可視波長域において、透明性を保持したまま、それ以外の波長域(主に近赤外、赤外波長域)で光透過率を温度で制御するという、感温型調光窓材も提案されている。
一方、従来、ホログラフィック光学素子及びそれを用いた部材に関する研究/開発例が種々報告されており、先行技術として、例えば、ホログラフィック高分子分散液晶光学素子及び画像表示装置(特許文献7)、調光層がマトリックス樹脂と液晶材料からなる液晶光学素子(特許文献8)、第1及び第2の絶縁性基板間に液晶を挟持した調光層を有する反射型液晶表示素子(特許文献9)、が提案されている。
更に、先行技術として、例えば、光吸収基板上に調光層が積層されている高解像度のホログラフィック型高分子分散液晶光学素子(特許文献10)、調光層を挟持した高電荷保持率のホログラフィック高分子分散液晶光学素子(特許文献11)、ホログラフィック光学素子を用いた投影型液晶表示装置(特許文献12)、ホログラフィック表示装置(特許文献13)、が提案されている。これらの先行技術は、いずれも、ホログラフィック光学素子を液晶表示装置に利用するものである。
このように、液晶が持つサーモトロピック性、すなわち、ネマティック−等方(NI)相転移を利用した感温型光制御素子は、調光窓材への応用として、有力候補である。ネマティック液晶など、多くの液晶は、低温で屈折率異方性を示すが、温度が上昇し、ある温度付近で等方相に転移するという性質を有し、この光学的変化を原理として、透過光及び回折光の偏光や強度を制御する。
この液晶と高分子とを組み合わせて、周期構造を内部に形成し、屈折率空間変調を持たせたホログラフィック高分子分散型液晶(H−PDLC)回折格子では、上記の温度変化に伴うNI転移点前後で、透過・回折状態を変えられる。この技術は、これまで、空間光変調素子といった光情報処理や投影型ディスプレイなどの表示機器への応用が提案されてきたが、本発明者らは、特に、このような構造をシート状にするなどして窓材として付随させることで、室内への日射を温度変化とともに、自律的に制御することができる調光素子を開発している(特許文献14参照)。
H−PDLC回折素子の窓材への応用においては、高い光透過・回折特性が求められるが、これまでに提案されているH−PDLC回折格子の材料構成及び光学的構造では、室温での透過・回折特性の向上に制限があった。特に、H−PDLC回折格子を感温型光制御素子に応用する場合、温度変化に伴う透過・回折光強度変化の幅を広げて、性能を向上させることが要求される。しかし、この室温での光学特性の制限が、その向上の妨げとなっており、当技術分野では、温度変化に伴う透過・回折光強度変化の幅を広げて、更に性能を向上させることが可能な新しい光透過・回折制御素子を開発することが要請されていた。
特開2004−4795号公報 特開2002−86606号公報 特開2000−155345号公報 特開2003−94551号公報 特開2006−106343号公報 特開2003−335553号公報 特開2003−337298号公報 特開2000−147478号公報 特開平11−52364号公報 特開平11−38392号公報 特開平11−2802号公報 特開平10−104618号公報 特開平9−222583号公報 特願2007−279698号 M. H. Lee, "Betterthermochromic glazing of windows with anti-reflection coating", Thin SolidFilms 365, 5 (2000) W. Burkhardt, et al., "Tungstenand fluorine co-doping of VO2 films", Thin Solid Films 402, 226(2002) M. Soltani, et al., "Effectsof Ti-W codoping on the optical and electrical switching of vanadium dioxidethin films grown by a reactive pulsed laser deposition", Appl. Phys. Lett.85, 1958 (2004)
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、日射透過量制御の性能が高く、かつ可視波長域で良好な透明性を保持できる新しい調光素子を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、高分子分散液晶型ホログラフィック回折素子(H−PDLC回折素子)を用いて光透過・回折制御素子を構築する際に、ホログラフィック露光による相分離で形成された回折格子を構成する2つの相の内、一方の相に、ネマティック−等方(NI)相転移による屈折率変化及び光学異方−等方性変化を有する液晶相を用い、もう一方の相に、液晶相の複屈折性と同様の光学異方性を持たせた配向性の高い高分子相を用いることで、所期の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、H−PDLC回折素子の透過・回折特性を高度に制御し、感温型光制御素子としての性能を向上させた、光透過・回折制御素子を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記H−PDLC回折素子を調光に利用した、温度による日射透過量制御の性能が高く、かつ可視波長域で良好な透明性を保持できる新しい光透過・回折制御素子及び当該調光素子を用いた光透過・回折制御部材を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)高分子分散液晶型ホログラフィック回折素子(H−PDLC回折素子)を用いた光透過・回折制御素子であって、ホログラフィック露光による相分離で形成された回折格子を構成する2つの相の内、一方の相が、ネマティック−等方(NI)相転移による屈折率変化及び光学異方−等方性変化を有する液晶相であり、もう一方の相が、液晶相の複屈折性と同様の光学異方性を持たせた配向性の高い高分子相であり、入射する偏光状態に拘らず特定の温度範囲で光の伝播方向あるいは偏光状態を幅広く変え、光の透過率を制御して調光を行うようにしたことを特徴とする光透過・回折制御素子。
(2)液晶の屈折率が、常光屈折率1.3〜1.6、異常光屈折率1.45〜1.8であり、異方性高分子の屈折率が、常光屈折率1.3〜1.6、異常光屈折率1.4〜1.9である、前記(1)に記載の光透過・回折制御素子。
(3)特定の温度範囲が、10〜80℃であり、光の波長範囲が、300〜1300nm(紫外、可視、又は近赤外波長域)である、前記(1)又は(2)に記載の光透過・回折制御素子。
(4)上記H−PDLC回折素子が、PあるいはS偏光のどちらか一方の回折光強度を優先的に温度で制御するように構成された、前記(1)から(3)のいずれかに記載の光透過・回折制御素子。
(5)0.04を上回る異方性屈折率を有し、ネマティック−等方(NI)相転移点を有する液晶材料からなるH−PDLC回折素子を用いてなる、前記(1)から(4)のいずれかに記載の光透過・回折制御素子。
(6)10〜0℃にNI相転移点を有する液晶材料からなるH−PDLC回折素子を用いてなる、前記(5)記載の光透過・回折制御素子。
(7)高分子分散液晶型ホログラフィック回折素子(H−PDLC回折素子)を用いた光透過・回折制御素子を製造する方法であって、ホログラフィック露光による相分離で形成された回折格子を構成する2つの相の内、一方の相に、ネマティック−等方(NI)相転移による屈折率変化及び光学異方−等方性変化を有する液晶相を用い、もう一方の相に、液晶相の複屈折性と同様の光学異方性を持たせた配向性の高い高分子相を用いて、ホログラフィック干渉での不均質光強度露光による光重合誘起の相分離過程で、上記2つの相の分子を同時に配向させて光学異方性を適切に発現させ、入射する偏光状態に拘らず特定の温度範囲で光の伝播方向あるいは偏光状態を幅広く変え、光の透過率を制御して調光を行うようにすることを特徴とする光透過・回折制御素子の作製方法。
(8)前記(1)から(6)のいずれかに記載の光透過・回折制御素子を含み、当該光透過・回折制御素子に対して、光の伝播方向あるいは偏光状態により透過率を変える役割を果たす光処理機能部が配置されたことを特徴とする光透過・回折制御部材。
(9)上記光処理機能部として、視野角制限部材あるいは偏光選択部材、又はこれら両部材が回折光と非回折光の内の一つの光の透過を制御するように配置された、前記(8)記載の光透過・回折制御部材。
(10)PあるいはS偏光のどちらか一方の回折光強度が優先的に、温度変化により変調されるH−PDLC回折素子を2つ組み合わせて、視野角制限部材あるいは偏光選択部材、又はこれら両部材がPとS両偏光の回折による光の透過を制御するように配置された、前記(9)記載の光透過・回折制御部材。
(11)H−PDLC回折素子が、可視光波長域の透過率(可視光透過能)及び日射透過制御能の両性能が高くなる条件として、H−PDLC厚2〜50μm、格子ピッチ0.3〜2.0μmの範囲で構成された、前記(8)から(10)のいずれかに記載の光透過・回折制御部材。
(12)可視光透過能及び日射透過制御能を高めるために、
(H−PDLC厚)=K×(格子ピッチ)
を満たす関係式(ここで、Kは、範囲4〜15μm−1を満たす定数を表わす。)に、H−PDLC厚と格子ピッチの値が設定されている、請求項11記載の光透過・回折制御部材。
(13)上記光透過・回折制御部材が、太陽光の透過を制御する太陽光透過・回折制御窓材である、前記(8)から(12)のいずれかに記載の光透過・回折制御部材。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、高分子分散液晶型ホログラフィック回折素子(H−PDLC回折素子)を用いた光透過・回折制御素子であって、ホログラフィック露光による相分離で形成された回折格子を構成する2つの相の内、一方の相が、ネマティック−等方(NI)相転移による屈折率変化及び光学異方−等方性変化を有する液晶相であり、もう一方の相が、液晶相の複屈折性と同様の光学異方性を持たせた配向性の高い高分子相であり、入射する偏光状態に拘らず特定の温度範囲で光の伝播方向あるいは偏光状態を幅広く変え、光の透過率を制御して調光を行うようにしたことを特徴とするものである。
本発明では、液晶の屈折率が、常光屈折率1.3〜1.6、異常光屈折率1.45〜1.8であり、異方性高分子の屈折率が、常光屈折率1.3〜1.6、異常光屈折率1.4〜1.9であること、特定の温度範囲が、10〜80℃であり、光の波長範囲が、300〜1300nm(紫外、可視、又は近赤外波長域)であること、が好ましい。
また、本発明は、高分子分散液晶型ホログラフィック回折素子(H−PDLC回折素子)を用いた光透過・回折制御素子を製造する方法であって、ホログラフィック露光による相分離で形成された回折格子を構成する2つの相の内、一方の相に、ネマティック−等方(NI)相転移による屈折率変化及び光学異方−等方性変化を有する液晶相を用い、もう一方の相に、液晶相の複屈折性と同様の光学異方性を持たせた配向性の高い高分子相を用いて、ホログラフィック干渉での不均質光強度露光による光重合誘起の相分離過程で、上記2つの相の分子を同時に配向させて光学異方性を適切に発現させ、入射する偏光状態に拘らず特定の温度範囲で光の伝播方向あるいは偏光状態を幅広く変え、光の透過率を制御して調光を行うようにすることを特徴とするものである。
また、本発明は、上記の光透過・回折制御素子を含み、当該光透過・回折制御素子に対して、光の伝播方向あるいは偏光状態により透過率を変える役割を果たす光処理機能部が配置された光透過・回折制御部材の点に特徴を有するものである。
H−PDLC回折素子の透過・回折特性は、回折格子の構造パラメータで決まり、その中で、特に、格子を形成する2つの相、液晶相と高分子相の屈折率が強く影響している。そして、この透過・回折特性の向上を妨げているのは、光回折の偏光制御性が不十分なことであり、これは、格子を形成する高分子相側の屈折率異方性の制御が従来の材料と方法では、難しいことが大きな要因である。
本発明は、この高分子相に、光学異方性を発現する材料を用い、H−PDLC回折素子を作製する工程で、分子配列を好適に方向付け、もともと光学異方性を持つ液晶相と組み合わせることで、光回折の偏光制御性の向上を図るものである。
すなわち、本発明では、光硬化性の液晶性モノマーといった異方性高分子化する光重合性モノマーを用いることで、回折光の温度変化に伴う偏光選択性を制御するようにしたことが重要である。高分子の分子配列を制御する手段としては、不均質光強度露光及び付加的なラビング処理により液晶及び光重合性モノマーの分子配列方向を制御する方法が好適に用いられる。
ラビング方向0°では、分子は水平方向に配列し、P偏光が回折される。また、ラビング方向90°では、分子は垂直方向に配列し、S偏光が回折される。
本発明は、液晶相の複屈折性と同様の光学異方性を持たせた配向性の高い特定の高分子相に非光重合性の液晶分子を分散させた構成とすることで、H−PDLC回折素子の透過・回折制御素子の透過・回折特性を高度に制御し、感温型光制御素子としての性能を向上させることを実現可能にしたことに特徴を有するものである。
本発明の形態は、適切に配向されて光学的異方性が制御された2つの相(液晶相と光学異方性を持たせた高配向性の高分子相)で構成される回折格子であり、更には、液晶が持つネマティック−等方相転移と高分子相の屈折率異方性を利用し、偏光方向を問わず、温度とともに効率的に透過・回折光強度を変えられる、いわゆる感温型の回折・透過光制御素子である。
本発明では、必要に応じて、この回折素子の後方に、回折光か、あるいは非回折光による光の進行方向によって透過率が異なる、いわゆる視野角制限部材(例えば、既存の製品では、マイクロルーバーフィルム:スリーエム社)を設置した構成とすることができる。
本発明の素子は、通常のガラスやプラスチックなどの透明基板間の薄いギャップ層に形成され、作製の際の不均質光強度露光に伴う光重合過程で、液晶及び高分子相に相分離する際に、分子が配向づけられて形成される。更に、補助的に、回折格子を形成する基板上に配向(ラビング)処理を施した薄膜をつけることで、液晶及び高分子相を任意の方向に安定に配向させられ、回折・透過光のP及びS偏光成分を、それぞれに制御できるように構成することができる。
本発明では、上記H−PDLC回折素子が、PあるいはS偏光のどちらか一方の回折光強度を優先的に温度で制御するように構成すること、0.04を上回る異方性屈折率を有し、ネマティック−アイソトロピック(NI)相転移点を有する液晶材料からなるH−PDLC回折素子を用いること、10〜90℃にNI相転移点を有する液晶材料からなるH−PDLC回折素子を用いること、を好ましい実施の態様としている。
本発明では、上記光透過制御素子を含み、当該光透過制御素子に対して、光の伝播方向あるいは偏光状態により透過率を変える役割を果たす光処理機能部が配置されたこと、上記光処理機能部として、視野角制限部材あるいは偏光選択部材、又はこれら両部材が回折光と非回折光の内の一つの光の透過を制御するように配置されたこと、PあるいはS偏光のどちらか一方の回折光強度が優先的に、温度変化により変調されるH−PDLC回折素子を2つ組み合わせて、視野角制限部材あるいは偏光選択部材、又はこれら両部材がPとS両偏光の回折による光の透過を制御するように配置されたこと、を好ましい実施の態様としている。
本発明では、H−PDLC回折素子が、可視光波長域の透過率及び日射透過制御能の両方が高くなる条件として、H−PDLC厚2〜50μm、格子ピッチ0.3〜2.0μmの範囲で構成すること、可視光透過能及び日射透過制御能を高めるために、(H−PDLC厚)=K×(格子ピッチ)を満たす関係式(ここで、Kは、範囲4〜15μm−1を満たす定数を表わす。)に、H−PDLC厚と格子ピッチの値が設定されていること、上記光透過制御部材が、太陽光の透過を制御する太陽光透過制御窓材であること、を好ましい実施の態様としている。
本発明では、調光原理として、液晶が持つサーモトロピック性、すなわち、ネマティック−アイソトロピック(NI)相転移での屈折率異方性と等方性の間での変化と、光学異方性を持たせた配向性の高い高分子相の光学異方性を利用する。このような液晶は、低温で屈折率異方性を示すが、温度が上昇し、NI相転移することによって、光学的に等方性となり、この変化と、光学異方性を持たせた配向性の高い高分子相の光学異方性を、本発明の調光作用の基本原理とする。
具体的には、液晶と光学異方性を持たせた配向性の高い高分子とを組み合わせて、これらの2つの分子を同時に配向させて光学異方性を適切に発現させ、屈折率の空間分布を適切に調整した光回折格子(高分子分散型液晶(H−PDLC)回折素子)を形成し、温度変化により、NI転移点前後で光の進行方向が変えられる構造とする。そして、このような構造をシート状にするなどして窓材として窓に付随させ、これを通して、外部から室内への日射光量が温度変化によって、自律応答的に制御されるようにする。
本発明は、高分子分散液晶型ホログラフィック回折素子(H−PDLC回折素子)を用いた光透過制御素子であって、H−PDLC回折素子内に含まれる液晶のネマティック−アイソトロピック(NI)相転移の屈折率異方性と等方性の変化を、光学異方性を持たせた配向性の高い高分子相と組み合わせて、光回折特性の変化として取り出すことを調光原理として、特定の温度範囲で光透過率が変わり、かつ可視光の高透過性能、あるいは好まれる着色具合を保持する点に特徴を有している。
本発明では、異方性高分子材料となるモノマーとして、例えば、メルク社製品の反応性メソゲンが例示されるが、この材料に限らず、基本的に、異方性高分子となり得る光重合性のモノマーであれば適宜使用することが可能であり、これを露光法や基板処理などによって、好適に配向させることで、本発明のH−PDLC回折格子が形成される。
異方性高分子材料としては、例えば、より紫外域側の光で露光することで高分子化させられる、UV硬化型液晶(大日本インキのULC−001、ULC−011、ULC−008)など、多くの製品がある(例えば、山岡亜夫著「フォトポリマーの基礎と応用(2003年:CMC出版)」の266ページの表を参照)。また、広くは、例えば、一般の光重合性液晶モノマー、その中には、アゾ、アゾキシ、ビフェニル、ターフェニル、エステル、シクロヘキサンといった系、あるいは他の例として、アクリラート、メタクリラート、ジエン、シアナート、アクリロイ、ビニル、エポキシといった光重合性基を含むものであっても使用することが可能である。
本発明では、光の伝播方向あるいは偏光状態により透過率を変える役割を果たす光処理機能部が配置される。また、H−PDLC回折素子は、PあるいはS偏光のどちらか一方の回折光強度を優先的に温度で制御するように構成される。また、本発明では、上記光処理機能部として、視野角制限部材あるいは偏光選択部材、又はこれら両部材が回折光と非回折光の内の一つの光の透過を制御するように配置される。
また、本発明では、PあるいはS偏光のどちらか一方の回折光強度が、優先的に、温度変化により変調されるH−PDLC回折素子を2つ組み合わせて、視野角制限部材あるいは偏光選択部材、又はこれら両部材がPとS両偏光の回折による光の透過を制御するように配置される。H−PDLC回折素子が、可視光波長域の透過率及び日射透過制御能の両方が高くなる条件としては、好適には、例えば、H−PDLC厚2〜50μm、格子ピッチ0.3〜2.0μmの範囲の構成である。
可視光波長域の透過率及び日射透過制御能を高めるために、(H−PDLC厚)=K×(格子ピッチ)を満たす関係式(ここで、Kは、範囲4〜15μm−1を満たす定数を表わす。)に、H−PDLC厚と格子ピッチの値が設定することが好ましい。本発明では、0.04を上回る異方性屈折率を有し、ネマティック−アイソトロピック(NI)相転移点を有する液晶材料からなるH−PDLC回折素子を用いること、また、10〜90℃にNI相転移点を有する液晶材料からなるH−PDLC回折素子を用いることが好ましい。
H−PDLC回折素子は、温度変化に伴う光回折の発現・消失により、入射される光の一部の伝播方向を変える役割を有する。これは、回折格子を形成する液晶分子と高分子の屈折率を適切に選択し、光学設計することで、温度変化による回折光の強度や偏光状態が制御されることを意味する。H−PDLC回折素子は、回折という光の波の性質を利用し、光の伝播方向を変える機能のみを持つ。したがって、回折光あるいは非回折光を適切に処理する必要があり、素子の形状やH−PDLCの設計に応じて、視野角制限部材や偏光選択部材など、角度や偏光状態により透過光量が可変である素子を光処理機能部として別途配置させることが好ましい。
偏光選択部材としては、いわゆる偏光板と呼ばれる特定の角度の直線偏光のみを透過するフィルターを利用でき、また、視野角制限部材としては、いくつかの手法が考えられるが、これらも、例えば、既に、視野角制限透過フィルム(通称、プライバシーフィルターと呼ばれたりするフィルム。)などの市販品を利用でき、これらの従来技術を適宜流用することが可能である(特開2006−47550号公報)。
本発明では、上記光透過制御素子は、単独で、又は当該光透過制御素子に対して、視野角制限部材や偏光選択部材を配置して、光透過制御部材(調光制御装置)を構築し、これを、例えば、窓部材として使用することができる。H−PDLC回折素子は、例えば、NI相転移点以下の低温(以下、単に「低温」と記載する。)では、P偏光が回折し、S偏光が回折しないように、また、NI相転移点を超えた高温(以下、単に「高温」と記載する。)では、P、S偏光ともに回折しないようにしたり、あるいは低温では、P、S偏光とともに回折させず、また、高温では、PあるいはS偏光のみ回折させたりするように設計することで、斜入射する太陽光線に最も機能する回折格子を作製することができる。
また、本発明では、複数のH−PDLC回折素子を組み合わせて配置することで、例えば、低温では、2つのH−PDLC回折素子でP、Sの両偏光を回折させ、高温では、どちらも回折させずに、そのまま直進透過させることが可能である。これらに、更に、視野角制限部材や偏光選択部材を組み合わせて、例えば、太陽光のうち、P偏光を、第1のH−PDLC回折素子で回折させ、第2のH−PDLC回折素子をそのまま透過させて、その後方にある視野角制限部材に垂直に入射させ、透過制限を受けずに室内まで到達させることが可能である。
一方、S偏光は、第1のH−PDLC回折素子をそのまま透過させ、第2のH−PDLC回折素子で回折させて、その後方の視野角制限部材に垂直入射させて、透過制限を受けずに、室内まで到達させることが可能である。また、高温では、P、S偏光ともに、第1及び第2のH−PDLC回折素子のどちらにも回折させないで、直進透過させ、後方の視野角制限部材の視野角外に入射させ、ここで遮光させることが可能である。
また、本発明では、体積反射型格子を形成したH−PDLC回折素子を、単独で用いて、例えば、低温において、S偏光を室外方向に回折させ、P偏光をそのまま直進透過させ、室内に到達させ、また、高温において、P、S偏光ともに室外に回折させ、光を室内方向に到達させないようにすることができる。
本発明は、例えば、建築物や自動車、列車、船舶、飛行機などの移動体に、省エネルギー、快適住居性能、採光性能などの機能を付加することを可能とする新しい機能性自動調光遮熱窓材及びその応用技術を提供するものである。また、本発明は、調光窓材の分野に限らず、素子構造の設計を適切に変えることで、より広い意味での感温型光制御素子としての応用展開も可能である。例えば、本発明は、温度を感知して光回折強度及び偏光状態を変える素子、いわゆる感温型の偏光弁別制御素子や温度センサー、更には、投影型の表示装置、光情報処理の分野にも応用が見込まれる。
上述のP、S偏光の回折、非回折(透過)については、H−PDLC回折素子内部の液晶分子とポリマーの各偏光方向での屈折率を適宜選択して設定し、P、S偏光の回折、非回折の状態を当該H−PDLC回折素子と視野角制限部材あるいは偏光選択部材との組み合わせ、室外及び室内条件等を総合的に考慮して光学設計することで、任意に設定することができる。それにより、例えば、室外の温度が低いときには、太陽光を室内に入射させ、また、室外の温度が高いときには、遮光により、太陽光を室内に入射しないように設定することで、自立応答的な調光を行うことが可能となる。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)H−PDLC回折素子に関して、これまでの材料構成及び作製方法では、原理的に難しかった、回折光が互いに直交する、いわゆるPとS偏光成分それぞれを、同時に制御することを可能とするH−PDLC回折素子を用いた光透過・回折制御素子を提供することができる。
(2)H−PDLC回折素子の室温での透過・回折特性を、格子構造設計により、その制御性を向上させることが可能となる。
(3)これにより、特に、感温型光制御素子で重要となる温度変化に伴う透過・回折光特性の制御幅を拡大することが可能となる。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
原料として、ネマティック液晶(MLC7023:大日本インキ)と、異方性高分子の原料として、液晶性ジアクリレートモノマー(RM257:メルク)とを用いて、これらを、5から45重量%の範囲で種々の比率で混ぜ合わせて調べた。
この混合原料に、光重合開始剤を加え、更に、色素として、N−フェニルグリシンとジブロモフルオレセイン(両者ともに、共栄社化学)を、それぞれ0.4、0.2重量%ずつ加え、100℃に昇温して、均質になるまで撹拌混合した。ここで、上記材料の作製から以下に記載される露光終了時までの工程で、不要な光硬化を避けるために、外部からの光は、600nmより短波長側の範囲を遮蔽して使用した。
約100℃に加熱されたホットプレート上に、1mm程度の厚み、20×25mmの平面を持つ透明ガラス基板2枚を用いて、ギャップ調整用のスペーサー(ここでは、およそ10μm厚)とともに、上記の混合材料を挟んで、照射用の試料セルを作製した。
ここで、ガラス基板三種類を、上記セルに用いた。一つは、ガラスの表面に処理を施していない素ガラス、二つ目は、水平方向(後記するP偏光方向に相当)に配向(ラビング)処理したポリイミド膜付ガラス、三つ目は、垂直方向(S偏光方向)にラビング処理したポリイミド膜付ガラスである。
照射には、波長532nmでシングルモード発振するレーザ(ここでは、半導体レーザ励起Nd:YVOレーザ)を用いた。上記手順で材料を注入し、挟み込んだ試料セルを100℃に温調しながら、二光束ホログラフィック干渉露光(開き角約30°)により試料内に約1μm周期の明暗パターンを形成し、約5mW/cmの光強度で、所定の時間(5分以上)、露光した。
この露光によって、試料セル内の反応性メソゲンが重合して、液晶相と高分子相に相分離し、その際に、液晶及び高分子の両相の分子が配向付けられた。図1は、本実施例で作製したH−PDLC回折格子の偏光顕微鏡像であり、液晶及び高分子の両相が配向して光学異方性となっていることを示している。
図1(a)は、室温で撮影された像であり、僅かにコントラストの違いはあるが、周期構造を成す液晶相と高分子相のどちらの部分も像が明るい。これは、両相ともに、分子が方向付けられ、光学異方性を形成していることを示す。更に、図1(b)に示すように、昇温すると格子を形成する一方の相が暗くなる。これは、昇温で、高分子相が異方性を保持しているのに対し、液晶相が等方相転移したことによるものであり、高分子相側が分子配向した構造であることの一つの直接的証拠である。
図2(a)は、異方性高分子相を用いて作製したH−PDLC回折素子の光回折効率を示す。これは、異方性高分子と液晶の出発原料の重量組成が、RM257:MLC7023=75:25のときの結果である。格子ベクトルに平行な偏光(P偏光)及び垂直な偏光(S偏光)で入射した場合の光回折効率(η、η)と、更に、回折効率の偏光度(η/η)が、ガラス基板に配向(ラビング)処理しない場合と、P及びS偏光方向に配向(ラビング)処理した場合の、三通りで示されている。
異方性高分子を使うと、両偏光での回折効率が高められ、更に、ラビング処理を施すことで、その処理方向によって、回折効率の偏光特性を制御することができる。図2(b)は、比較のために示した結果であり、等方性高分子を用いた場合の同様の光回折効率である。ここでは、上記の異方性高分子の代わりに、従来の等方性高分子の原料として、光重合性モノマーに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPHPA)を濃度75重量%用い、これに、光重合開始剤及び色素として、それぞれ、N−フェニルグリシンとジブロモフルオレセインを同様に加えた場合である。この場合、回折効率は、全体に小さく、ラビング処理も含めて、偏光特性の制御性が悪い。
このように、ホログラフィック露光により、液晶と異方性高分子の両相に光学異方性を持たせることで、PとSの両偏光の回折光強度を同時に制御でき、感温型光制御素子としての性能が向上する。図3及び図4に、それぞれ、従来技術及び本発明の方法で作製したH−PDLC回折素子の透過スペクトルを示す。どちらも、RM257を高分子相の原料として、上記の原料混合条件で作製した場合の透過スペクトルである。
図3は、積極的には配向されずに相分離させ、等方性高分子相になっている回折格子の結果である。これに対して、図4は、RM257を配向し(図1を参照)、異方性高分子相が形成された場合の結果である。図3に示すように、従来型の回折格子では、P偏光の透過率の最小値は10%程度と小さくなっているが、S偏光透過率は高く、S偏光の回折制御ができていない。このため、PとS偏光での透過率の平均値に相当する無偏光透過率の最小値は、50%程度までしか下がらない。
一方、高分子相にも光学異方性を持たせた場合、図4(a)に示すように、PとSの両偏光の透過率が低減されるため、無偏光透過率の最小値は20%程度まで下がる。更に、これにラビング処理を施すことで、分子配向をより安定に制御できるようになる。
図4(b)と(c)は、それぞれ、P及びS偏光方向に沿ってラビング処理した膜を付け、上記と同様の手順で形成した回折素子の分光透過率の結果である。P偏光方向にラビングした場合、各相の分子配向がより強められ、図4(b)にあるように、透過率の最小値は20%を下回る。一方、S偏光ラビング処理の場合、図4(c)に示すように、S偏光の透過率がP偏光のそれより小さくなるという、図4(a)や(b)とは、異なる挙動が得られる。
このように、H−PDLC回折格子内に異方性高分子相を形成する光重合性モノマーを導入し、液晶相とともに、その重合過程で光学異方性を適切に制御することにより、これまで難しかった、PとSの両偏光方向で、光回折ひいては透過率を制御することができることが実証された。
以上詳述したように、本発明は、感温型光制御素子及びその作製方法に係るものであり、本発明により、H−PDLC回折素子に関して、これまでの材料構成及び作製方法では、原理的に難しかった、回折光が互いに直交する、いわゆるPとS偏光成分それぞれを、同時に制御することを可能とするH−PDLC回折素子を用いた光透過・回折制御素子を提供することができる。また、本発明により、H−PDLC回折素子の室温での透過・回折特性を、格子構造設計により、その制御性を向上させることが可能となる。これにより、特に、感温型光制御素子で重要となる温度変化に伴う透過・回折光特性の制御幅を拡大することが可能となる。本発明は、H−PDLC回折素子の透過・回折特性を高度に制御し、感温型光制御素子としての性能を向上させた、光透過・回折制御素子を提供するものとして有用である。
異方性高分子相と液晶相とからなる実施例で作製の回折格子の偏光顕微鏡像において、相分離によって形成された約1μm間隔の周期構造の様子を示す。(a):室温では、格子を構成する高分子及び液晶の二層ともに明るい像となっていることから、両相ともに光学異方性が高いと言える。(b):これを、100℃に昇温して撮影すると、一方の相が暗くなる。液晶相は、温度上昇で等方相に転移するため、この暗い部分が、液晶相、明るい部分が、配向した高分子相に相当する。 P、S偏光での回折効率(それぞれ、黒塗と陰影柄の棒グラフ)及び回折効率の偏光度(白塗の棒グラフ)を示す。測定は、グリーンレーザを用いて行った。(a)は、異方性高分子を用いた場合、(b)は、従来技術で通常の等方性高分子を用いた場合である。測定は、「配向なし」の素ガラスと、P及びS偏光方向に配向(ラビング)処理したとき、で行った。 等方性高分子相と液晶相からなる従来型の回折格子のP、S偏光及びそれらの平均値である無偏光での透過スペクトルを示す。 異方性高分子相と液晶相からなる本発明の回折格子のP、S偏光及びそれらの平均値である無偏光での透過スペクトルを示す。(a)は、ラビング処理なし、(b)は、P偏光方向ラビング処理、(c)は、S偏光方向ラビング処理の場合である。

Claims (13)

  1. 高分子分散液晶型ホログラフィック回折素子(H−PDLC回折素子)を用いた光透過・回折制御素子であって、ホログラフィック露光による相分離で形成された回折格子を構成する2つの相の内、一方の相が、ネマティック−等方(NI)相転移による屈折率変化及び光学異方−等方性変化を有する液晶相であり、もう一方の相が、液晶相の複屈折性と同様の光学異方性を持たせた配向性の高い高分子相であり、入射する偏光状態に拘らず特定の温度範囲で光の伝播方向あるいは偏光状態を幅広く変え、光の透過率を制御して調光を行うようにしたことを特徴とする光透過・回折制御素子。
  2. 液晶の屈折率が、常光屈折率1.3〜1.6、異常光屈折率1.45〜1.8であり、異方性高分子の屈折率が、常光屈折率1.3〜1.6、異常光屈折率1.4〜1.9である、請求項1に記載の光透過・回折制御素子。
  3. 特定の温度範囲が、10〜80℃であり、光の波長範囲が、300〜1300nm(紫外、可視、又は近赤外波長域)である、請求項1又は2に記載の光透過・回折制御素子。
  4. 上記H−PDLC回折素子が、PあるいはS偏光のどちらか一方の回折光強度を優先的に温度で制御するように構成された、請求項1から3のいずれかに記載の光透過・回折制御素子。
  5. 0.04を上回る異方性屈折率を有し、ネマティック−等方(NI)相転移点を有する液晶材料からなるH−PDLC回折素子を用いてなる、請求項1から4のいずれかに記載の光透過・回折制御素子。
  6. 10〜0℃にNI相転移点を有する液晶材料からなるH−PDLC回折素子を用いてなる、請求項5記載の光透過・回折制御素子。
  7. 高分子分散液晶型ホログラフィック回折素子(H−PDLC回折素子)を用いた光透過・回折制御素子を製造する方法であって、ホログラフィック露光による相分離で形成された回折格子を構成する2つの相の内、一方の相に、ネマティック−等方(NI)相転移による屈折率変化及び光学異方−等方性変化を有する液晶相を用い、もう一方の相に、液晶相の複屈折性と同様の光学異方性を持たせた配向性の高い高分子相を用いて、ホログラフィック干渉での不均質光強度露光による光重合誘起の相分離過程で、上記2つの相の分子を同時に配向させて光学異方性を適切に発現させ、入射する偏光状態に拘らず特定の温度範囲で光の伝播方向あるいは偏光状態を幅広く変え、光の透過率を制御して調光を行うようにすることを特徴とする光透過・回折制御素子の作製方法。
  8. 請求項1から6のいずれかに記載の光透過・回折制御素子を含み、当該光透過・回折制御素子に対して、光の伝播方向あるいは偏光状態により透過率を変える役割を果たす光処理機能部が配置されたことを特徴とする光透過・回折制御部材。
  9. 上記光処理機能部として、視野角制限部材あるいは偏光選択部材、又はこれら両部材が回折光と非回折光の内の一つの光の透過を制御するように配置された、請求項8記載の光透過・回折制御部材。
  10. PあるいはS偏光のどちらか一方の回折光強度が優先的に、温度変化により変調されるH−PDLC回折素子を2つ組み合わせて、視野角制限部材あるいは偏光選択部材、又はこれら両部材がPとS両偏光の回折による光の透過を制御するように配置された、請求項9記載の光透過・回折制御部材。
  11. H−PDLC回折素子が、可視光波長域の透過率(可視光透過能)及び日射透過制御能の両性能が高くなる条件として、H−PDLC厚2〜50μm、格子ピッチ0.3〜2.0μmの範囲で構成された、請求項8から10のいずれかに記載の光透過・回折制御部材。
  12. 可視光透過能及び日射透過制御能を高めるために、
    (H−PDLC厚)=K×(格子ピッチ)
    を満たす関係式(ここで、Kは、範囲4〜15μm−1を満たす定数を表わす。)に、H−PDLC厚と格子ピッチの値が設定されている、請求項11記載の光透過・回折制御部材。
  13. 上記光透過・回折制御部材が、太陽光の透過を制御する太陽光透過・回折制御窓材である、請求項8から12のいずれかに記載の光透過・回折制御部材。
JP2008153605A 2008-06-11 2008-06-11 感温型光制御素子及びその作製方法 Expired - Fee Related JP5217664B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008153605A JP5217664B2 (ja) 2008-06-11 2008-06-11 感温型光制御素子及びその作製方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008153605A JP5217664B2 (ja) 2008-06-11 2008-06-11 感温型光制御素子及びその作製方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009300629A JP2009300629A (ja) 2009-12-24
JP5217664B2 true JP5217664B2 (ja) 2013-06-19

Family

ID=41547605

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008153605A Expired - Fee Related JP5217664B2 (ja) 2008-06-11 2008-06-11 感温型光制御素子及びその作製方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5217664B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5890390B2 (ja) * 2010-03-29 2016-03-22 レイブンブリック,エルエルシー ポリマ安定化型サーモトロピック液晶デバイス
JP6066057B2 (ja) * 2011-12-27 2017-01-25 国立研究開発法人産業技術総合研究所 液晶と高分子の配向相分離構造とその製造方法
ES2581996B1 (es) * 2015-02-06 2017-08-10 Instituto Holografico Terrasun,S.L. Dispositivo holográfico para controlar la luminosidad y aumentar la eficiencia energética en edificios
CN113155333B (zh) * 2021-04-22 2023-05-26 浙江清华柔性电子技术研究院 应力检测系统、方法及装置
CN113568213B (zh) * 2021-08-16 2024-09-13 河北工业大学 一种聚合物蜂网液晶黑板的制造方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003270419A (ja) * 2002-03-18 2003-09-25 Sony Corp 回折光学素子及び画像表示装置
JP2006145970A (ja) * 2004-11-22 2006-06-08 Nissan Motor Co Ltd 調光材料、これを用いた車両、および調光材料の製造方法
JP5493073B2 (ja) * 2006-10-27 2014-05-14 独立行政法人産業技術総合研究所 太陽光透過制御素子
JP2008209932A (ja) * 2008-03-12 2008-09-11 Sony Corp 偏光選択性ホログラム光学素子

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009300629A (ja) 2009-12-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6073395B2 (ja) 屈折性光学構造を組み込んだ温度応答切換型光学フィルタ
US10718154B2 (en) LC modulator devices based on non-uniform electrode structures
US6633354B2 (en) Spectrum-controllable reflective polarizers having electrically-switchable modes of operation
KR101787767B1 (ko) 게스트-호스트 아키텍처를 포함하는 열적으로 스위칭되는 광학 필터
US20100315585A1 (en) Electro-optical device and method for controlling color
US8144275B2 (en) Thermal tuning glazing structures comprising a cholesteric liquid crystal
JP2001513908A (ja) 反射動作モード及び透過動作モードを有する電気光学グレージング構造
JP5217664B2 (ja) 感温型光制御素子及びその作製方法
WO1999063400A1 (en) Spectrum-controllable reflective polarizers having electrically-switchable modes of operation
Ogiwara et al. Thermally tunable light filter composed of cholesteric liquid crystals with different temperature dependence
Kakiuchida et al. Thermal control of transmittance/diffraction states of holographic structures composed of polymer and liquid crystal phases
CN110234834A (zh) 用于组合可见光和红外光衰减的热电开关窗
JP5493073B2 (ja) 太陽光透過制御素子
Li et al. 43‐1: Tri‐stable Cholesteric Liquid Crystal Smart Window
CN109085712B (zh) 一种温度响应型液晶材料、光调节器及其制作方法
JP6066057B2 (ja) 液晶と高分子の配向相分離構造とその製造方法
Liu et al. Dual diffraction bands of heliconical liquid crystal gratings
Lin et al. Enantiomorphic double-polymerized chiral polymer composite template for highly efficient energy-saving green window
US10830934B2 (en) Optical element
Zheng et al. Self-organized chiral liquid crystalline nanostructures for energy-saving devices
Chen et al. 59‐4: Fast‐response polarization volume gratings for AR/VR displays
Sun et al. Bandwidth Tunable Cholesteric Liquid Crystal
이상현 Chiral Surface-Driven Optical Image Selection by Polarization in Liquid Crystal Devices
De Sio et al. Dynamic Photonic Materials Based on Liquid Crystals (Postprint)
KR100213182B1 (ko) 마이크로 칼라 렌즈를 채용한 액정표시소자

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20101217

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20101217

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121220

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130117

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130204

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130218

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160315

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 5217664

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees