JP5207564B2 - ニューロピリンのフラグメントおよびニューロピリン−抗体複合体の結晶構造 - Google Patents

ニューロピリンのフラグメントおよびニューロピリン−抗体複合体の結晶構造 Download PDF

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発明の分野
本発明は、ニューロピリン1(Nrp1)およびニューロピリン2(Nrp2)のフラグメント単独の結晶構造、ならびに抗ニューロピリン抗体との複合体での結晶構造、そしてそれらの使用を提供する。本発明は、Nrp1および/またはNrp2に結合する抗体、ならびにそれらの使用方法をさらに提供する。
発明の背景
脈管系の発生は、多くの生理学的および病理学的プロセスに対する基本的な必要条件である。胚および腫瘍などの活発に成長している組織は、十分な血液の供給を必要とする。それらの組織は、一般に新脈管形成と呼ばれるプロセスを介して新しい血管の形成および維持を促進する新脈管形成促進(pro−angiogenic)因子を産生することによって、この要求に応える。脈管形成は、以下の工程:a)内皮細胞(EC)が、既存のECから増殖するか、または前駆細胞から分化する工程;b)ECが、遊走し、そして癒合することにより、索様構造が形成される工程;c)次いで、脈管の索が管形成を起こすことにより、中央が管腔になっている管が形成される工程、d)既存の索または管が出芽することにより、二次管が形成される工程;e)初期の脈管叢が、さらに再造形および再形成を起こす工程;そしてf)周囲の内皮細胞が補充されて、内皮の管が被われることにより、その管に対して維持および調節性の機能がもたらされる工程のすべてまたは多くを含む、複雑であるが整然とした生物学的事象である;そのような細胞としては、小さい毛細管に対する周皮細胞、大きい管に対する平滑筋細胞および心臓における心筋細胞が挙げられる。Hanahan,D.Science 277:48−50(1997);Hogan,B.L.& Kolodziej,P.A.Nature Reviews Genetics.3:513−23(2002);Lubarsky,B.& Krasnow,M.A.Cell.112:19−28(2003)。
現在、新脈管形成が種々の障害の病原に関係することは、十分に立証されている。これらの障害としては、固形腫瘍および転移、アテローム性動脈硬化症、水晶体後線維増殖症、血管腫、慢性炎症、眼内血管新生疾患(例えば、増殖性網膜症、例えば、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症(AMD)、血管新生緑内障、移植された角膜組織および他の組織の免疫拒絶)、関節リウマチおよび乾癬が挙げられる。Folkmanら、J.Biol.Chem.,267:10931−10934(1992);Klagsbrunら、Annu.Rev.Physiol.53:217−239(1991);およびGarner A.“Vascular diseases”:Pathobiology of Ocular Disease.A Dynamic Approach,Garner A.,Klintworth GK,eds.,2nd Edition(Marcel Dekker,NY,1994),pp1625−1710。
腫瘍成長の場合、新脈管形成は、過形成から新形成への移行、ならびに腫瘍の成長および転移のための栄養物の供給にとって重大であるとみられる。Folkmanら、Nature 339:58(1989)。この新血管形成によって、腫瘍細胞は、正常細胞と比べて、成長優位性および増殖自律性を獲得することができる。腫瘍は、通常、利用可能な毛細管床からの距離に起因して、たった数立方ミリメートルのサイズに増殖することができる単一の異常な細胞として始まり、長時間にわたってさらに成長および内転移することなく「休眠」のままでいることができる。そして、いくつかの腫瘍細胞が、新脈管形成の表現型に切り換わり、内皮細胞を活性化し、その内皮細胞が、増殖して新しい毛細血管に成熟する。これらの新しく形成された血管は、原発腫瘍の成長の継続だけでなく、転移性腫瘍細胞の内転移および再転移増殖も可能にする。したがって、腫瘍部分における微小な管の密度と、乳癌ならびに他のいくつかの腫瘍において生存している患者との間に、相関が観察された。Weidnerら、N.Engl.J.Med 324:1−6(1991);Horakら、Lancet 340:1120−1124(1992);Macchiariniら、Lancet 340:145−146(1992)。新脈管形成の切り換えを制御する正確なメカニズムは、十分に理解されていないが、腫瘤の新血管形成は、多数の新脈管形成の刺激物質およびインヒビタの正味のバランスに起因すると考えられている(Folkman,1995,Nat Med 1(1):27−31)。
脈管発生のプロセスは、厳重に制御されている。現在までに、周囲の細胞によって産生される主に分泌型の因子であるかなりの数の分子が、ECの分化、増殖、遊走および索様構造への癒合を制御すると示されている。例えば、血管内皮成長因子(VEGF)は、新脈管形成の刺激および脈管透過性の誘導に関与する鍵となる因子と同定されている。Ferraraら、Endocr.Rev.18:4−25(1997)。VEGF対立遺伝子が、単一であっても喪失されると胚致死をもたらすという知見は、脈管系の発生および分化においてこの因子が果たす、代わりがきかない役割を指摘している。さらに、VEGFは、腫瘍および眼内障害に関連する新血管形成の鍵となるメディエータであると示されている。Ferraraら、Endocr.Rev.前出。VEGFのmRNAは、調べられたヒト腫瘍の大部分によって過剰発現されている。Berkmanら、J.Clin.Invest.91:153−159(1993);Brownら、Human Pathol.26:86−91(1995);Brownら、Cancer Res.53:4727−4735(1993);Matternら、Brit.J.Cancer 73:931−934(1996);Dvorakら、Am.J.Pathol.146:1029−1039(1995)。
また、眼の体液中のVEGFの濃度レベルは、糖尿病性網膜症および他の虚血関連網膜症を有する患者における血管の活発な増殖の存在に高度に相関する。Aielloら、N.Engl.J.Med.331:1480−1487(1994)。さらに、研究によって、AMDに罹患した患者における血管新生脈絡膜におけるVEGFの局在化が証明されている。Lopezら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.37:855−868(1996)。
抗VEGF中和抗体は、ヌードマウスにおいて種々のヒト腫瘍細胞株の成長を抑制し(Kimら、Nature 362:841−844(1993);Warrenら、J.Clin.Invest.95:1789−1797(1995);Borgstroemら、Cancer Res.56:4032−4039(1996);Melnykら、Cancer Res.56:921−924(1996))、また、虚血性網膜障害のモデルにおいて、眼内の新脈管形成を阻害する。Adamisら、Arch.Ophthalmol.114:66−71(1996)。ゆえに、抗VEGFモノクローナル抗体またはVEGF作用の他のインヒビタは、腫瘍および様々な眼内血管新生障害を処置するための有望な候補である。そのような抗体は、例えば、1998年1月14日公開のEP817,648;ならびにWO98/45331およびWO98/45332(両方とも1998年10月15日公開)に記載されている。抗VEGF抗体の1つであるベバシズマブ(bevacizumab)は、転移性直腸結腸癌(CRC)および非小(non−samll)細胞肺癌(NSCLC)を処置するために化学療法レジメンと組み合わせて使用するためにFDAによって承認されている。そして、ベバシズマブは、様々な癌の徴候を処置するために、多くの進行中の臨床試験において調査されている。
神経系の発生中、ニューロンは、それらの標的に到達するために、長距離にわたって移動する太索様の軸索を送り出す。非特許文献1による概説を参照のこと。伸長している軸索の先頭端は、成長円錐と呼ばれる高度に運動性で知覚性の構造である。その成長円錐は、糸状仮足の伸長の、伸長と退縮とのダイナミックなサイクルを通じて、その空間的な環境における無数のガイダンスキューを絶えず感知して評価し、その最終的な標的に向かって伸長するための正確な進路を正確に選択する。
過去10年間で、軸索ガイダンスメカニズムの理解は、かなり進歩した。Dickson(2002)Science 298:1959−64による概説を参照のこと。ガイダンスのキューは、4種類ある:誘引物質(attractants)および反発物質(repellents);これらは、短い範囲(すなわち、細胞−またはマトリックス−会合型)または長い範囲(すなわち、拡散性)のいずれかにおいて作用し得る。今までのところ、軸索誘導分子の4つの主要なファミリー:ネトリン、セマフォリン、エフリンおよびスリット(slits)が同定されている。Huberら(2003)Annu Rev Neurosci 26:509−63による概説を参照のこと。
セマフォリン(Sema)(コラプシンとも呼ばれる)は、系統的に保存された分泌型および膜結合型のタンパク質の大きなファミリーに属している。セマフォリンファミリーのメンバーは、神経発生中において、反発する軸索ガイダンス事象と、誘引する軸索ガイダンス事象との両方を媒介することができる。Raper(2000)Curr Opin Neurobiol 10:88−94。現在までに同定された30個を超えるセマフォリンのすべてが、約500アミノ酸の保存されたN末端Semaドメインを共有している。セマフォリンメンバーは、それらの構造的な類似度および起源となる種に応じて、8つのサブファミリーに分類される。セマフォリンに対する統合された名称についての詳細は、Semaphorin Nomenclature Committee(1999)Cell 97:551−552を参照のこと。
ニューロピリン(NRP)ファミリーは、2つの相同タンパク質であるニューロピリン−1(NRP1)およびニューロピリン−2(NRP2)を含む。NRP1は、成長中の軸索の成長円錐において発現される130kDaのI型膜貫通型糖タンパク質として初めて同定された。続いて、NRP2が、発現クローニングによって同定された。非特許文献2。NRPは、クラス3セマフォリンであるセマフォリンのサブセットに対するレセプターであると見出されている。NRPは、別のセマフォリンレセプターファミリーであるプレキシン(plexins)とともに非シグナル伝達コレセプターとして機能すると示唆された。
NRPは、軸索ガイダンスのメディエータとして最初に報告されたが、脈管発生においても重大な役割を果たすと見出されている。非特許文献1。NRPは、腫瘍細胞および内皮細胞上で発現されるアイソフォーム特異的VEGFレセプターとして同定され、これにより、脈管および腫瘍の生物学におけるNRPの役割を理解するためのかなりの試みが促されている。非特許文献3;非特許文献4。遺伝的研究から、Nrp1が、脈管の形態形成に必要であるという強力な証拠がもたらされた。Nrp1の機能が喪失することにより、血管リモデリングおよび分枝に欠陥がもたらされ、これは、Nrp2機能の喪失によってさらに増強されうる表現型である。非特許文献5;非特許文献6。これらの結果は、発生の初期において、Nrp1およびNrp2が、重複した機能を有し得ることを示唆している。しかしながら、各Nrpの発現は、発生の後期では分配されるようになり、Nrp1は、主に動脈において発現し、Nrp2は、静脈およびリンパ管において発現する。非特許文献7;非特許文献8。特に、Nrp2機能の喪失だけで、リンパ管の発生が明確に損なわれる。
Nrp1は、発生中の他の多くの細胞型において発現されるので、EC特異的ノックアウトを作製することによって、脈管Nrp1の役割に取り組んだところ、ヌル対立遺伝子に見られるものと同様の脈管の欠陥がもたらされた。非特許文献9。興味深いことに、この研究は、NRP1へのSema3Aの結合が、脈管発生に必要ないことも示した。別の研究では、Nrp1 KO胚における菱脳の発生の際の内皮端細胞(endothelial tip cell)のガイダンスにおいて欠陥が観察された。非特許文献10。
脈管発生におけるNRP1の役割に関して広く研究されているにもかかわらず、NRP1が、VEGF−VEGFレセプター2(VEGFR2)へのVEGFの結合に対するエンハンサーとしてもっぱらVEGFR2経路を介してVEGFR2シグナル伝達のためにその脈管の機能を果たすのか、VEGFR2とは無関係のシグナル伝達経路を介してその脈管の機能を果たすのか、またはその両方の組み合わせを介してその脈管の機能を果たすのかに関しては不明なままである。
モノクローナル抗体は、組換えDNA技術を用いて作られ得る。モノクローナル抗体、特に、げっ歯類由来のモノクローナル抗体が広範に使用されているが、しかしながら、非ヒト抗体は、ヒトにおいて頻繁に抗原性である。当該技術は、非ヒト抗原結合ドメインがヒト定常ドメインに結合されている、「キメラ」抗体(Cabillyら、米国特許第4,816,567号)を構築することによって、この問題を克服するように試みている。ヒト定常ドメインのアイソタイプは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害に関与するためのキメラ抗体を作るように選択され得る。抗体の抗原結合機能を解析し、ヒト抗体における異種配列の使用を最小にするためのさらなる試みでは、実質的にインタクトでないヒト可変ドメインが領域において非ヒト種由来の対応配列で置換されている、様々な抗原に対するヒト化抗体が作製されている。例えば、げっ歯類残基が、ヒト抗体の対応するセグメントに対して置換されている。実際に、ヒト化抗体は、代表的には、いくつかの相補性決定領域(CDR)残基およびおそらくいくつかのフレームワーク領域(FR)残基が、げっ歯類抗体中の類似の部位由来の残基で置換されている、ヒト抗体である。Jonesら(1986)Nature 321:522−525;Riechmannら(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyenら(1988)Science 239:1534−1536。
治療用抗体をヒトに投与する前の、非ヒト哺乳動物における前臨床試験は、通常、その抗体の有効性および/または毒性を評価することを目的とする。理想的には、これらの研究に供される抗体は、マウスまたは非ヒト霊長類などの宿主動物にとって内因性の標的抗原を認識することができ、その標的抗原と高力価で反応することができるものである。
ファージディスプレイ技術は、抗原などのリガンドに結合する新規タンパク質を生成および選択するための強力なツールを提供した。ファージディスプレイの手法を用いると、タンパク質バリアントの大きなライブラリを作製することができ、そして、高親和性で標的抗原に結合する配列を迅速に選別することができる。バリアントポリペプチドをコードする核酸は、遺伝子IIIタンパク質または遺伝子VIIIタンパク質などのウイルスのコートタンパク質をコードする核酸配列に融合される。タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸配列が遺伝子IIIタンパク質の一部をコードする核酸配列に融合された一価のファージディスプレイシステムが開発された(Bass,S.(1990)Proteins 8:309;Lowman and Wells(1991)Methods:A Companion to Methods in Enzymology 3:205)。一価のファージディスプレイシステムでは、遺伝子融合物が、低レベルで発現され、野生型遺伝子IIIタンパク質も、粒子の感染性を保持するように発現される。ペプチドライブラリを生成する方法およびそれらのライブラリをスクリーニングする方法は、多くの特許(例えば、米国特許第5,723,286号、米国特許第5,432,018号、米国特許第5,580,717号、米国特許第5,427,908号および米国特許第5,498,530号)に開示されている。
繊維状ファージの表面上でのペプチドの発現およびE.coliのペリプラズム中での機能性抗体フラグメントの発現の実証は、抗体ファージ・ディスプレイ・ライブラリの開発の際に重要であった(Smithら(1985)Science 228:1315;Skerra and Pluckthun(1988)Science 240:1038)。抗体または抗原結合ポリペプチドのライブラリは、ランダムなDNA配列を挿入することによって単一遺伝子を変化させること、または関連遺伝子のファミリーをクローニングすることによる方法をはじめとした、いくつかの方法で調製される。ファージディスプレイを用いて抗体または抗原結合フラグメントをディスプレイするための方法は、米国特許第号5,750,373号、同第5,733,743号、同第5,837,242号、同第5,969,108号、同第6,172,197号、同第5,580,717号および同第5,658,727号に記載されている。次いで、そのライブラリを所望の特徴を有する抗体または抗原結合タンパク質の発現についてスクリーニングする。
ファージディスプレイ技術は、所望の特徴を有する抗体を調製するための従来のハイブリドーマ法および組換え法に対していくつかの利点を有する。この技術では、多種多様な配列を有する抗体の大きなライブラリを、長い時間をかけず、かつ動物を使用せずに、開発することができる。ハイブリドーマの調製またはヒト化抗体の調製は、たいてい数ヶ月間の調製を必要とし得る。さらに、免疫化が必要ないので、毒性であるかまたは抗原性の低い抗原に対するファージ抗体ライブラリを作製することができる(Hogenboom(1988)Immunotechniques 4:1−20)。ファージ抗体ライブラリはまた、新規の治療抗体を作製し、同定するためにも使用され得る。
ファージ・ディスプレイ・ライブラリは、免疫されたヒト、免疫されていないヒト、生殖系列配列、またはナイーブB細胞Igレパートリーからヒト抗体を作製するために使用されていた(Barbas & Burton(1996)Trends Biotech 14:230;Griffithsら(1994)EMBO J.13:3245;Vaughanら(1996)Nat.Biotech.14:309;Winter EP0368684B1)。ナイーブまたは非免疫の抗原結合ライブラリは、種々のリンパ(lymphoidal)組織を用いて作製されてきた。これらのライブラリのいくつか(例えば、Cambridge Antibody TechnologyおよびMorphosysによって開発されたもの)(Vaughanら(1996)Nature Biotech 14:309;Knappikら(1999)J.Mol.Biol.296:57)が、市販されている。しかしながら、これらのライブラリの多くは、多様性が限られている。
ファージ・ディスプレイ・ライブラリから高親和性抗体を同定する能力および単離する能力は、治療的に使用するための新規抗体を単離する際に重要である。ライブラリからの高親和性抗体の単離は、ライブラリのサイズ、細菌細胞における産生効率およびそのライブラリの多様性に左右される。例えば、Knappikら(1999)J.Mol.Biol.296:57を参照のこと。ライブラリのサイズは、抗体または抗原結合タンパク質の不適当な折り畳みおよび終止コドンの存在に起因して、産生が効率的でないことによって小さくなる。細菌細胞における発現は、その抗体または抗原結合ドメインが正しく折り畳まれない場合に、阻害され得る。発現は、可変/定常界面の表面、または選択されたCDR残基において順に残基を変異させることによって改善され得る(Dengら(1994)J.Biol.Chem.269:9533、Ulrichら(1995)PNAS,92:11907−11911;Forsbergら(1997)J.Biol.Chem.272:12430)。抗体ファージライブラリが細菌細胞において産生されるとき、フレームワーク領域の配列は、正しい折り畳みをもたらす際の1つの因子である。
抗体または抗原結合タンパク質の多種多様なライブラリを作製することもまた、高親和性抗体の単離にとって重要である。限定されたCDRにおいて多様化を有するライブラリは、種々のアプローチを用いて作製される。例えば、Tomlinson(2000)Nature Biotech.18:989−994を参照のこと。1つには、CDR3領域は、しばしば抗原結合に関与すると見出されているという理由で、CDR3領域が興味深い。重鎖上のCDR3領域のサイズ、配列および構造の立体配座は、広く多様である。
他の研究者らも、各位置において20個すべてのアミノ酸を用いて可変重鎖および可変軽鎖のCDR領域をランダム化することによって、多様性を作製している。20個すべてのアミノ酸を用いることが、バリアント抗体の配列の大きな多様性をもたらし得、新規抗体を突きとめる可能性を増加させ得ると考えられた(Barbas(1994)PNAS 91:3809;Yelton,DE(1995)J.Immunology 155:1994;Jackson,J.R.(1995)J.Immunology 154:3310およびHawkins,RE(1992)J.Mol.Biology 226:889)。
CarmelietおよびTessier−Lavigne、Nature(2005)436:193−200 FujisawaおよびKitsukawa、Curr Opin Neurobiol(1998)8:587−592 Sokerら、Cell(1998)92:735−745 Klagsbrunら、Adv Exp Med Biol(2002)515:33−48 Kawasakiら、Development(1999)126:4895−4902 Takashimaら、Proc Natl Acad Sci USA(2002)99:3657−3662 Yuanら、Development(2002)129:4797−4806 Herzogら、Mech Dev(2001)109:115−119 Guら、Dev Cell(2003)5:45−57 Gerhardtら、Dev Dyn(2004)231:503−509
発明の要旨
本発明は、ニューロピリン−1およびニューロピリン−2(Nrp1およびNrp2)のフラグメント単独の結晶構造、ならびにセマフォリンまたはVEGFの結合を選択的に阻止する抗体との複合体での結晶構造を提供する。Nrpは、a2、b1およびb2ドメインが密に詰め込まれたコアを形成する予想外のドメイン配置をとる。インビトロでの実験とともに、その抗体エピトープの位置は、VEGFおよびセマフォリンが、Nrp結合について直接競合しないことを示している。a1ドメインによって媒介される結晶学的なNrp二量体に基づいて、本発明は、レセプターの二量体化およびリガンドの結合に対するモデルをさらに提供する。
これらの結果に基づいて、1つの局面では、本発明は、Nrp1b1b2フラグメントの3次元構造を表す回折パターンを生成するX線放射線を回折し、以下のおおよそのセル定数a=65.9Å、b=66.7Å、c=74.7ÅおよびP2という空間群を有する、前記フラグメントによって形成される結晶を提供する。
別の局面では、本発明は、Nrp1a2b1b2フラグメントの3次元構造を表す回折パターンを生成するX線放射線を回折し、以下のおおよそのセル定数a=53.2Å、b=68.2Å、c=66.6ÅおよびP2という空間群を有する、前記フラグメントによって形成される結晶に関する。
なおも別の局面では、本発明は、Nrp1b1フラグメントと、Nrp1への血管内皮成長因子(VEGF)の結合を阻害する抗Nrp1抗体(YW107.4.87)のFabフラグメントとの間で形成される複合体の結晶に関し、ここで、前記結晶は、前記複合体の3次元構造を表す回折パターンを生成するX線放射線を回折し、以下のおおよそのセル定数a=213Å、b=213Å、c=45.3ÅおよびH3という空間群を有する。
さらなる局面では、本発明は、Nrp2b1b2フラグメントの3次元構造を表す回折パターンを生成するX線放射線を回折し、以下のおおよそのセル定数a=36.5Å、b=70.5Å、c=122ÅおよびP2という空間群を有する、前記フラグメントによって形成される結晶に関する。
なおもさらなる局面では、本発明は、Nrp2a2b1b2フラグメントの3次元構造を表す回折パターンを生成するX線放射線を回折し、以下のおおよそのセル定数a=50.1Å、b=193Å、c=66.2ÅおよびP2という空間群を有する、前記フラグメントによって形成される結晶に関する。
別の局面では、本発明は、Nrp2a1a2b1b2フラグメントと、Nrp2へのセマフォリンの結合を阻害する抗panNrp抗体のFabフラグメントとの間で形成される複合体の結晶に関し、ここで、前記結晶は、前記複合体の3次元構造を表す回折パターンを生成するX線放射線を回折し、以下のおおよそのセル定数a=148Å、b=106Å、c=92.4ÅおよびC2という空間群を有する。
本発明は、Nrp2a1a2b1b2フラグメントと、Nrp2へのセマフォリンの結合を阻害する抗panNrp抗体のFabフラグメントとの間で形成される複合体の結晶にさらに関し、ここで、前記結晶は、前記複合体の3次元構造を表す回折パターンを生成するX線放射線を回折し、以下のおおよそのセル定数a=121Å、b=121Å、c=203ÅおよびP3という空間群を有する。
別の局面では、本発明は、図7に示される軽鎖可変ドメイン配列および/もしくは図8に示される重鎖可変ドメイン配列を含む抗panNrp抗体、またはそのフラグメントに関する。
なおも別の局面では、本発明は、図9Aに示される配列を含む抗panNrpYW68.11抗体Fabフラグメントに関する。
さらなる局面では、本発明は、図9Bに示される配列を含む抗panNrpYW68.11.26抗体Fabフラグメントに関する。
なおもさらなる局面では、本発明は、Nrpの結合について抗panNrp抗体と競合する抗Nrp抗体に関する(cocerns)。
1つの実施形態において、抗Nrp抗体は、抗panNrp抗体と同じエピトープに本質的に結合する。
別の実施形態では、抗Nrp抗体は、Nrp2a1a2b1b2アミノ酸配列のアミノ酸残基Y39、Y45、P46、Q47、F72、N73、P74、H75、F76、A133およびR138によって定義される界面の少なくとも一部を含むエピトープに結合する。
さらに別の実施形態では、抗Nrp抗体は、Nrp1とNrp2との両方に結合する。
さらなる実施形態では、抗Nrp抗体は、Nrp1とNrp2との両方に対して少なくとも約0.10nM、またはNrp1とNrp2との両方に対して少なくとも約0.15nM、またはNrp1とNrp2との両方に対して少なくとも約0.20nM、またはNrp1とNrp2との両方に対して少なくとも約0.25nM、またはNrp1とNrp2との両方に対して少なくとも約0.30nMの結合親和性を有する。
別の実施形態では、抗Nrp抗体は、Nrp1とNrp2との両方へのSema3の結合を阻止する。
さらに別の実施形態では、抗Nrp抗体は、Nrp1またはNrp2へのVEGFの結合を阻止しない。
異なる実施形態では、抗Nrp抗体は、インビトロにおいて、セマフォリンの生物学的活性を阻害する。
さらなる実施形態では、抗Nrp抗体は、インビボにおいて、セマフォリンの生物学的活性を阻害する。
別の局面では、本発明は、セマフォリンアンタゴニストを調製する方法に関し、この方法は、Nrp2a1a2b1b2アミノ酸配列のアミノ酸残基Y39、Y45、P46、Q47、F72、N73、P74、H75、F76、A133およびR138によって定義される界面の少なくとも一部を含む部位に結合する分子を設計する工程、その化合物を合成する工程、およびその化合物がNrp1およびNrp2へのセマフォリンの結合を阻止することを確認する工程を包含する。
1つの実施形態において、上記アンタゴニストは、Nrp1またはNrp2へのVEGFの結合を妨げず、上記方法は、前記アンタゴニストがNrp1またはNrp2へのVEGFの結合を妨げないことを確認するさらなる工程(ste)を包含し得る。
別の実施形態では、上記方法は、上記アンタゴニストがVEGFの生物学的活性を妨げないことを確かめる工程をさらに包含する。
上記アンタゴニストは、例えば、抗体、抗体フラグメント、結合ポリペプチド、ペプチドおよび非ペプチド小分子からなる群より選択され得、好ましくは、抗体または抗体フラグメントであり、ここで、抗体フラグメントとしては、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、(scFv)、dAb、線状抗体(linear antibody)、一本鎖抗体分子、ミニボディ(minibodies)、ダイアボディ、および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられるがこれらに限定されない。
別の局面では、本発明は、VEGFアンタゴニストを調製する方法に関し、この方法は、Nrp1b1フラグメントと、抗Nrp1抗体(YW107.4.87)のFabフラグメントとの間で形成される複合体の結晶から得られる3次元構造(その結晶は、前記複合体の3次元構造を表す回折パターンを生成するX線放射線を回折し、以下のおおよそのセル定数a=213Å、b=213Å、c=45.3ÅおよびH3という空間群を有する)を使用することにより、前記Nrp1抗体によって結合されるエピトープの少なくとも一部を含む部位に結合する分子を設計する工程、その化合物を合成する工程、およびその化合物がNrp1へのVEGFの結合を阻害することを確認する工程を包含する。
1つの実施形態において、上記アンタゴニストは、Nrp1へのセマフォリンの結合を妨げず、上記方法は、これを確認する工程をさらに包含し得る。
別の実施形態では、上記アンタゴニストは、VEGFの生物学的活性を阻害する。
さらに別の実施形態では、上記方法は、上記アンタゴニストがVEGFの生物学的活性を阻害することを確認する工程をさらに包含する。
さらなる実施形態では、上記アンタゴニストは、血管リモデリングを阻害する。
なおもさらなる実施形態では、上記アンタゴニストは、抗体、抗体フラグメント、結合ポリペプチド、ペプチドおよび非ペプチド小分子からなる群より選択され、好ましくは、抗体または抗体フラグメントであり、ここで、抗体フラグメントは、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、(scFv)、dAb、線状抗体、一本鎖抗体分子、ミニボディ、ダイアボディ、または抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体であり得る。
本発明は、さらに、癌を処置するための方法に関し、この方法は、その必要のある哺乳動物被験体に、本発明の前述の方法によって調製される有効量のVEGFアンタゴニストを投与する工程を包含する。癌は、例えば、乳癌、直腸結腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎癌、前立腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、メラノーマ、卵巣癌、中皮腫および多発性骨髄腫からなる群より選択され得る。
別の実施形態では、上記処置は、第2の治療薬をさらに含み、ここで、その第2の治療薬は、さらなるVEGFアンタゴニストなどの、抗新脈管形成剤、抗腫瘍性組成物、化学療法剤および細胞傷害剤からなる群より選択される薬剤であり得るが、これらに限定されない。
さらなる実施形態では、上記さらなるVEGFアンタゴニストは、抗hVEGF抗体またはそのフラグメントである。
抗hVEGF抗体は、例えば、抗体A4.6.1、具体的には、ベバシズマブまたはラニビズマブ(ranibizumab)と同じVEGFエピトープに結合することができる。
他の実施形態では、第2の治療薬は、バタラニブ(vatalanib)(PTK787)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、OSI−7904、ZD6474(ZACTIMA(登録商標))、ZD6126(ANG453)、ZD1839、スニチニブ(sunitinib)(SUTENT(登録商標))、セマキサニブ(semaxanib)(SU5416)、AMG706、AG013736、イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、MLN−518、CEP−701、PKC−412、ラパチニブ(lapatinib)(GSK572016)、VELCADE(登録商標)、AZD2171、ソラフェニブ(sorafenib)(NEXAVAR(登録商標))、XL880およびCHIR−265からなる群より選択されるレセプターチロシンキナーゼインヒビタである。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば以下の結晶などが提供される:
(項目1)
X線放射線を回折して、Nrp1b1b2フラグメントの3次元構造を表す、以下のおおよそのセル定数a=65.9Å、b=66.7Å、c=74.7ÅおよびP2という空間群を有する回折パターンを生成する、該フラグメントによって形成される結晶。
(項目2)
X線放射線を回折して、Nrp1a2b1b2フラグメントの3次元構造を表す、以下のおおよそのセル定数a=53.2Å、b=68.2Å、c=66.6ÅおよびP2という空間群を有する回折パターンを生成する、該フラグメントによって形成される結晶。
(項目3)
Nrp1b1フラグメントと、Nrp1への血管内皮成長因子(VEGF)の結合を阻害する抗Nrp1抗体(YW107.4.87)のFabフラグメントとの間で形成される複合体の結晶であって、ここで、該結晶は、X線放射線を回折して、該複合体の3次元構造を表す、以下のおおよそのセル定数a=213Å、b=213Å、c=45.3ÅおよびH3という空間群を有する回折パターンを生成する、複合体の結晶。
(項目4)
X線放射線を回折して、Nrp2b1b2フラグメントの3次元構造を表す、以下のおおよそのセル定数a=36.5Å、b=70.5Å、c=122ÅおよびP2という空間群を有する回折パターンを生成する、該フラグメントによって形成される結晶。
(項目5)
X線放射線を回折して、Nrp2a2b1b2フラグメントの3次元構造を表す、以下のおおよそのセル定数a=50.1Å、b=193Å、c=66.2ÅおよびP2という空間群を有する回折パターンを生成する、該フラグメントによって形成される結晶。
(項目6)
Nrp2a1a2b1b2フラグメントと、Nrp2へのセマフォリンの結合を阻害する抗panNrp抗体のFabフラグメントとの間で形成される複合体の結晶であって、ここで、該結晶は、X線放射線を回折して、該複合体の3次元構造を表す、以下のおおよそのセル定数a=148Å、b=106Å、c=92.4ÅおよびC2という空間群を有する回折パターンを生成する、複合体の結晶。
(項目7)
Nrp2a1a2b1b2フラグメントと、Nrp2へのセマフォリンの結合を阻害する抗panNrp抗体のFabフラグメントとの間で形成される複合体の結晶であって、ここで、該結晶は、X線放射線を回折して、該複合体の3次元構造を表す、以下のおおよそのセル定数a=121Å、b=121Å、c=203ÅおよびP321という空間群を有する回折パターンを生成する、複合体の結晶。
(項目8)
図7に示される軽鎖可変ドメイン配列および/もしくは図8に示される重鎖可変ドメイン配列を含む、抗panNrp抗体、またはそのフラグメント。
(項目9)
図9Aに示される配列を含む、抗panNrpYW68.11抗体Fabフラグメント。
(項目10)
図9Bに示される配列を含む、抗panNrpYW68.11.26抗体Fabフラグメント。
(項目11)
抗panNrp抗体と、Nrpへの結合について競合する、抗Nrp抗体。
(項目12)
前記抗panNrp抗体と同じエピトープに本質的に結合する、項目11に記載の抗Nrp抗体。
(項目13)
前記Nrp2a1a2b1b2アミノ酸配列のアミノ酸残基Y39、Y45、P46、Q47、F72、N73 P74、H75、F76、A133およびR138によって定義される界面の少なくとも一部を含むエピトープに結合する、項目11に記載の抗Nrp抗体。
(項目14)
Nrp1とNrp2との両方に結合する、項目11に記載の抗Nrp抗体。
(項目15)
Nrp1とNrp2との両方に対して少なくとも約0.10nMの結合親和性を有する、項目14に記載の抗Nrp抗体。
(項目16)
Nrp1とNrp2との両方に対して少なくとも約0.15nMの結合親和性を有する、項目14に記載の抗Nrp抗体。
(項目17)
Nrp1とNrp2との両方に対して少なくとも約0.20nMの結合親和性を有する、項目14に記載の抗Nrp抗体。
(項目18)
Nrp1とNrp2との両方に対して少なくとも約0.25nMの結合親和性を有する、項目14に記載の抗Nrp抗体。
(項目19)
Nrp1とNrp2との両方に対して少なくとも約0.30nMの結合親和性を有する、項目14に記載の抗Nrp抗体。
(項目20)
Nrp1とNrp2との両方へのSema3の結合を阻止する、項目14に記載の抗Nrp抗体。
(項目21)
Nrp1またはNrp2へのVEGFの結合を阻止しない、項目20に記載の抗Nrp抗体。
(項目22)
インビトロにおいてセマフォリンの生物学的活性を阻害する、項目20または項目21に記載の抗Nrp抗体。
(項目23)
インビボにおいてセマフォリンの生物学的活性を阻害する、項目20または項目2に記載の抗Nrp抗体。
(項目24)
セマフォリンアンタゴニストを調製する方法であって、Nrp2a1a2b1b2アミノ酸配列のアミノ酸残基Y39、Y45、P46、Q47、F72、N73、P74、H75、F76、A133およびR138によって定義される界面の少なくとも一部を含む部位に結合する分子を設計する工程、化合物を合成する工程、および該化合物がNrp1およびNrp2へのセマフォリンの結合を阻止することを確認する工程を包含する、方法。
(項目25)
前記アンタゴニストが、Nrp1またはNrp2へのVEGFの結合を妨げない、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記アンタゴニストがNrp1またはNrp2へのVEGFの結合を妨げないことを確認する工程をさらに包含する、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記アンタゴニストがVEGFの生物学的活性を妨げないことを確認する工程をさらに包含する、項目25に記載の方法。
(項目28)
前記アンタゴニストが、抗体、抗体フラグメント、結合ポリペプチド、ペプチドおよび非ペプチド小分子からなる群より選択される、項目24に記載の方法。
(項目29)
前記アンタゴニストが、抗体または抗体フラグメントである、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記抗体フラグメントが、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、(scFv)、dAb、線状抗体、一本鎖抗体分子、ミニボディ、ダイアボディ、および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体からなる群より選択される、項目29に記載の方法。
(項目31)
VEGFアンタゴニストを調製する方法であって、Nrp1b1フラグメントと、抗Nrp1抗体(YW107.4.87)のFabフラグメントとの間で形成される複合体の結晶から得られる3次元構造を使用することにより、該Nrp1抗体によって結合されるエピトープの少なくとも一部を含む部位に結合する分子を設計する工程であって、ここで、該結晶は、X線放射線を回折して、該複合体の3次元構造を表す、以下のおおよそのセル定数a=213Å、b=213Å、c=45.3ÅおよびH3という空間群を有する回折パターンを生成する、工程、化合物を合成する工程、および該化合物がNrp1へのVEGFの結合を阻害することを確認する工程を包含する、方法。
(項目32)
前記アンタゴニストが、Nrp1へのセマフォリンの結合を妨げない、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記アンタゴニストが、Nrp1へのセマフォリンの結合を妨げないことを確認する工程をさらに包含する、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記アンタゴニストが、VEGFの生物学的活性を阻害する、項目31に記載の方法。
(項目35)
前記アンタゴニストがVEGFの生物学的活性を阻害することを確認する工程をさらに包含する、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記アンタゴニストが、血管リモデリングを阻害する、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記アンタゴニストが、抗体、抗体フラグメント、結合ポリペプチド、ペプチドおよび非ペプチド小分子からなる群より選択される、項目35に記載の方法。
(項目38)
前記アンタゴニストが、抗体または抗体フラグメントである、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記抗体フラグメントが、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、(scFv)、dAb、線状抗体、一本鎖抗体分子、ミニボディ、ダイアボディ、および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体からなる群より選択される、項目38に記載の方法。
(項目40)
癌を処置するための方法であって、その必要のある哺乳動物の被験体に、項目31に記載の方法によって調製される有効量のVEGFアンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
(項目41)
前記癌が、乳癌、直腸結腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎癌、前立腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、メラノーマ、卵巣癌、中皮腫および多発性骨髄腫からなる群より選択される、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記処置が、第2の治療薬をさらに含む、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記第2の治療薬が、抗新脈管形成剤、抗腫瘍性組成物、化学療法剤および細胞傷害剤からなる群より選択される薬剤である、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記抗新脈管形成剤が、さらなるVEGFアンタゴニストである、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記さらなるVEGFアンタゴニストが、抗hVEGF抗体またはそのフラグメントである、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記抗hVEGF抗体が、抗体A4.6.1と同じVEGFエピトープに結合することができる、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記抗hVEGF抗体が、ベバシズマブまたはラニビズマブである、項目45に記載の方法。
(項目48)
前記第2の治療薬が、バタラニブ(PTK787)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、OSI−7904、ZD6474(ZACTIMA(登録商標))、ZD6126(ANG453)、ZD1839、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、セマキサニブ(SU5416)、AMG706、AG013736、イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、MLN−518、CEP−701、PKC−412、ラパチニブ(GSK572016)、VELCADE(登録商標)、AZD2171、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、XL880およびCHIR−265からなる群より選択されるレセプターチロシンキナーゼインヒビタである、項目42に記載の方法。
表1−データ収集および精密化統計量。 図1−VEGFはDRGニューロンのSema3A誘導性成長円錐崩壊を阻止しない。A)軸索成長円錐の像。未処置のDRGは、Sema3Aが加えられると著しく縮小するアクチンが豊富な大きな成長円錐(矢頭)を有する。抗Nrp抗体を50μg/mlで加えた。B)Sema3A誘導性の成長円錐崩壊の定量化。崩壊した成長円錐のパーセンテージを、崩壊した成長円錐および崩壊していない成長円錐を数えることによって計算した(1条件あたりN=4つの外植片)。エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。 図2−ニューロピリン結晶構造の要約。A)Nrp外部ドメインは、タンデム型CUB(a1a2)、タンデム型凝固因子V/VIII(b1b2)および1つのMAM(c1)ドメインを含む。この報告に示される7つの結晶構造の絵による描写の下に解像度限界を列挙した。橙色の球は、a2ドメイン内の結合しているカルシウムイオンを示している。B)ヒトNrp1およびNrp2のa1a2b1b2ドメインの配列アラインメント。二次構造エレメントとは、Nrp2−a1a2b1b2構造のことを指し(青色、a1;緑色、a2;黄色、b1;赤色、b2)、この二次構造エレメントは、精子アドヘシン(spermadhesin)CUBドメイン(Romero,A.ら、Nat Struct Biol 4,783−8(1997))および凝固因子VC2ドメインMacedo−Ribeiro,S.ら、Nature 402,434−9(1999))に対して採用されている慣習に従って命名される。青色および黄色で囲まれている残基は、それぞれ抗panNrpおよび抗Nrp1に対する抗体エピトープを表している。橙色で強調されたアミノ酸は、a2におけるCa2+結合部位を示しており、赤色で強調された残基は、a1ドメインにおける推定上のCa2+結合部位を表している。緑色で影がかけられている残基は、Sema3AとNrp1との相互作用を妨害するアミノ酸置換の位置を強調している(Gu,C.ら、J Biol Chem 277,18069−76(2002))。このアラインメントは、EsPript(Gouet,P.ら、Nuclei Acids Res 31,3320−3(2003))を用いて生成した。 図2−ニューロピリン結晶構造の要約。A)Nrp外部ドメインは、タンデム型CUB(a1a2)、タンデム型凝固因子V/VIII(b1b2)および1つのMAM(c1)ドメインを含む。この報告に示される7つの結晶構造の絵による描写の下に解像度限界を列挙した。橙色の球は、a2ドメイン内の結合しているカルシウムイオンを示している。B)ヒトNrp1およびNrp2のa1a2b1b2ドメインの配列アラインメント。二次構造エレメントとは、Nrp2−a1a2b1b2構造のことを指し(青色、a1;緑色、a2;黄色、b1;赤色、b2)、この二次構造エレメントは、精子アドヘシン(spermadhesin)CUBドメイン(Romero,A.ら、Nat Struct Biol 4,783−8(1997))および凝固因子VC2ドメインMacedo−Ribeiro,S.ら、Nature 402,434−9(1999))に対して採用されている慣習に従って命名される。青色および黄色で囲まれている残基は、それぞれ抗panNrpおよび抗Nrp1に対する抗体エピトープを表している。橙色で強調されたアミノ酸は、a2におけるCa2+結合部位を示しており、赤色で強調された残基は、a1ドメインにおける推定上のCa2+結合部位を表している。緑色で影がかけられている残基は、Sema3AとNrp1との相互作用を妨害するアミノ酸置換の位置を強調している(Gu,C.ら、J Biol Chem 277,18069−76(2002))。このアラインメントは、EsPript(Gouet,P.ら、Nuclei Acids Res 31,3320−3(2003))を用いて生成した。 図3−ニューロピリンの全体的なドメイン構成。A)抗panNrpのFabフラグメント(淡橙色、重鎖;灰色、軽鎖)との複合体での、Nrp2のドメイン組成(青色、a1;緑色、a2;黄色、b1;赤色、b2)。N−グリコシル化された残基は、赤紫色で示されている。B)Nrp1およびNrp2のa2b1b2構造のリボン表示;橙色の球は、結合したカルシウムイオンを強調している。C)a2b1b2ドメインに基づいた、2つの異なる結晶型のNrp2/Fab複合体の重ね合わせ。a2b1b2領域と比較すると、a1ドメインの重ね合わせは不良であることに注目されたい。すべての構造図は、PyMol(http://www.pymol.org)を用いて作成した。 図4−ニューロピリンCUBドメインの分子の詳細。A)a2b1b2構造では、a2ドメインは、結合しているカルシウムイオン(橙色)を含む。Nrp a1ドメイン(パネルCを参照のこと)およびa2ドメインは、精子アドヘシンに見られるb1ストランド(Romeroら、前出)を欠く。B)Nrp1 a2ドメインのカルシウムイオンは、3つの負に帯電したアミノ酸、2つの主鎖カルボニル酸素および水分子によって配位される。これらの相互作用は、Nrp間で高度に保存されている(図S2〜S3を参照のこと)。C)(左のパネル)Nrp2/Fab界面において埋もれている溶媒接触表面(solvent accessible surface)のパーセンテージに従ってアミノ酸に色を付けた(赤色、75〜100%;橙色、50〜74%;黄色、25〜49%)。抗panNrpは、Nrp1およびNrp2に交差反応し、この構造エピトープ内の14残基中11残基が、同一である(黒文字、同一;白文字、非保存;星印は、側鎖がa1タンパク質コアに向かっている残基を示す)。緑色で示された残基は、Nrp1とSema3A23との相互作用に必要なアミノ酸置換の位置を表している。(右のパネル)これらのアミノ酸置換のCα原子が、緑色の球として示されている。紫色で影がかけられたCα原子は、推定上のカルシウム結合部位を表している。D)抗panNrp/Nrp2の界面。Nrp2は、静電ポテンシャルに従って分子表面として示されている(赤色、酸性;青色、塩基性)。抗体接触残基は、CDR H2、H3およびL3からの芳香族の残基によって支配されている。 図5−Nrp VEGF−およびヘパリン−結合ドメインの特徴。A)Nrp b1b2結晶構造の重ね合わせ(Nrp1、黄色(b1)および赤色(b2);Nrp2、灰色)。青色(Nrp1)および緑色(Nrp2)の残基は、b1ではなくb2の「スパイク」における立体配座の相違を強調している。B)ラット(PDBアクセッション番号2ORZ)(Vancer Kooi,C.W.ら、Proc Natl Acad Sci USA(2007))およびヒトのb1b2結晶構造の分子表面に、静電ポテンシャルによって色を付けた。黄色の矢印は、b1ドメインにおける「スパイク」によって形成され、ラットの構造ではタフトシン結合部位である酸性の溝を示している(Vander Kooiら、前出)。緑色の矢印は、ヘパリン結合パッチのおおよその位置を示している。C)12個のNrp間におけるb1b2ドメインの相対的配列保存(緑色、100%;黄色、≧75%)(図S3)は、ヒトNrp1 b1b2構造の表面上にマッピングされた。2つの高度に保存されたパッチは、橙色で表されている。青緑色で示された残基は、抗Nrp1−Fab/b1複合体におけるFabと接触する残基を示している。a2ドメイン(淡黄色)は、Nrp1由来のb1b2構造とa2b1b2構造との重ねあわせを用いることによって示されている。D)抗Nrp1−Fab/b1複合体のリボン表示(黄色、b1;橙色、重鎖;灰色、軽鎖)。E)抗Nrp1/b1の界面。b1ドメインは、静電ポテンシャルに従って分子表面として描かれている;黄色の矢印は、VEGFテイルに結合する溝を示している。CDR H3およびL1だけが、b1と接触する。 図6−Nrp2の結晶学的な二量体が、VEGF結合およびセマフォリン結合についてのモデルを提唱する。A)Nrp2は、Nrp2/Fab複合体の両方の結晶型において鞍形二量体を形成する。この図は、Fab複合体の単斜晶型からのNrp2 a1a2b1b2ドメインを強調している。推定上のVEGFテイル結合部位、ヘパリン結合部位およびセマフォリン結合部位が示されている。B)結晶構造におけるNrp a1介在性二量体に基づいた、VEGF/Nrp複合体およびセマフォリン/Nrp複合体の潜在的なモデル。 図7−抗panNrpクローンYW68.11およびYW68.11.26の軽鎖可変ドメイン配列アラインメント。 図8−抗panNrpクローンYW68.11およびYW68.11.26の重鎖可変ドメイン配列アラインメント。 図9A−ヒト抗panNrpIgG1抗体YW68.11の完全な配列。図9B−ヒト抗panNrpIgG1抗体YW68.11.26の完全な配列。 表S1−結晶化および凍結保護に使用した条件。 図S1−抗Nrp抗体結合動態の解析。抗panNrp抗体のBIAcore動態解析。IgG固定化BIAcoreセンサーチップに対する25℃での500nMの各ヒトNRPタンパク質の注入についてのセンソグラム(sensograms)は、結合特異性を証明している。抗panNrpは、Nrp1およびNrp2のa1a2b1b2に結合するが、Nrp2のb1b2ドメインに結合しない。 図S2−Nrp CUBドメインは、保存されたカルシウム結合部位を含む。A)Nrp1 a2b1b2構造におけるカルシウムイオンの周りの電子密度(1.5σで線が引かれている最終的な2F−Fマップ。B)Nrp2 a2ドメインのカルシウムイオン。C)カルシウム結合部位を表している3つの負に帯電したアミノ酸(橙色で影がかけられている)は、Nrp1およびNrp2由来のCUBドメインにおいて保存されている。 図S2−Nrp CUBドメインは、保存されたカルシウム結合部位を含む。A)Nrp1 a2b1b2構造におけるカルシウムイオンの周りの電子密度(1.5σで線が引かれている最終的な2F−Fマップ。B)Nrp2 a2ドメインのカルシウムイオン。C)カルシウム結合部位を表している3つの負に帯電したアミノ酸(橙色で影がかけられている)は、Nrp1およびNrp2由来のCUBドメインにおいて保存されている。 図S3−ニューロピリンの配列アラインメント。ヒト、マウス、ラット、ゼブラフィッシュ(BRARE)、カエル(XENLA)およびニワトリのNrp1およびNrp2由来のa1a2b1b2ドメインの完全長配列アラインメント。この図は、図2Bと同じスキームを用いて色がつけられており、EsPript(Gouet P.ら、前出)を用いて作成された。 図S3−ニューロピリンの配列アラインメント。ヒト、マウス、ラット、ゼブラフィッシュ(BRARE)、カエル(XENLA)およびニワトリのNrp1およびNrp2由来のa1a2b1b2ドメインの完全長配列アラインメント。この図は、図2Bと同じスキームを用いて色がつけられており、EsPript(Gouet P.ら、前出)を用いて作成された。 図S3−ニューロピリンの配列アラインメント。ヒト、マウス、ラット、ゼブラフィッシュ(BRARE)、カエル(XENLA)およびニワトリのNrp1およびNrp2由来のa1a2b1b2ドメインの完全長配列アラインメント。この図は、図2Bと同じスキームを用いて色がつけられており、EsPript(Gouet P.ら、前出)を用いて作成された。 図S3−ニューロピリンの配列アラインメント。ヒト、マウス、ラット、ゼブラフィッシュ(BRARE)、カエル(XENLA)およびニワトリのNrp1およびNrp2由来のa1a2b1b2ドメインの完全長配列アラインメント。この図は、図2Bと同じスキームを用いて色がつけられており、EsPript(Gouet P.ら、前出)を用いて作成された。 図S4−Nrp1/タフトシンとb1/Fab構造との比較。A)nrp1−b1/抗Nrp1−Fab複合体において、対称関連分子由来の重鎖のC末端のテイル(紫色)は、タフトシン結合部位を占有する(Nrp2、静電ポテンシャルによる分子表面;橙色、抗体重鎖;灰色、抗体軽鎖)。B)ラットNrp1 b1b2(PDBアクセッション番号2ORZ)(Vander Kooiら、前出)との複合体でのタフトシンの位置(緑色)。C)パネルAにおいて強調された2つの構造の重ね合わせ。抗体およびタフトシンペプチドは、先のパネルと同様に色が付けられており、ヒトNrp1 b1は、黄色が付けられており、ラットNrp1 b1b2は、青緑色が付けられている。 図S5−Nrp2二量体の界面。A)この構造の単斜晶型において見られるようなNrp2−a1a2b1b2/Fab二量体のリボン表示。B)Nrp2/Fab結晶構造上へのNrp1−b1/抗Nrp1−Fab構造の重ね合わせ。C)二量体化時に埋もれる溶媒接触表面のパーセンテージに従って、a1/a1界面に埋もれているアミノ酸に色をつけている(赤色、75〜100%;橙色、50〜74%;黄色、25〜49%)。
発明の詳細な説明
本発明は、NRP媒介性の生物学的活性を調節するための新規の結晶構造、組成物、方法、およびNRP媒介性の生物学的活性を調節することができる候補を同定するスクリーニングアッセイに関する。
定義
「ニューロピリン」またはNRPとは、Rossignolら(2000)Genomics 70:211−222に記載されているような、ニューロピリン−1(NRP1)、ニューロピリン−2(NRP2)ならびにそれらのアイソフォームおよびバリアントのことを集合的に指す。ニューロピリンは、120〜130kDaの非チロシンキナーゼレセプターである。複数のNRP−1およびNRP−2スプライスバリアントおよび可溶性アイソフォームが存在する。ニューロピリンの基本構造は、5つのドメイン:3つの細胞外ドメイン(a1a2、b1b2およびc)、膜貫通型ドメインおよび細胞質ドメインを含む。a1a2ドメインは、補体成分C1rおよびC1s(CUB)と相同であり、通常、2つのジスルフィド(disculfid)架橋を形成する4個のシステイン残基を含む。b1b2ドメインは、凝固因子VおよびVIIIと相同である。cドメインの中央の部分は、メプリン(meprin)、A5およびレセプターチロシンホスファターゼ(phosphotase)μタンパク質と相同性を示すことに起因して、MAMと命名されている。a1a2およびb1b2ドメインは、リガンド結合に関与する一方で、cドメインは、ホモ二量体化またはヘテロ二量体化にとって非常に重要である。Guら(2002)J.Biol,Chem.277:18069−76;He and Tessier−Lavigne(1997)Cell 90:739−51。
「ニューロピリン媒介性の生物学的活性」とは、一般に、ニューロピリン−1および/またはニューロピリン−2が実質的な役割を果たす生理学的または病理学的な事象のことを指す。そのような活性の非限定的な例は、胚の神経系発生中またはニューロン再生中の軸索ガイダンス、新脈管形成(血管モデリングを含む)、腫瘍形成(tumorgenesis)および腫瘍転移である。
用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体フラグメントを特に包含する。
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書中で使用されるとき、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体のことを指し、すなわち、その集団を構成する個別の抗体は、微量で存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。さらに、代表的には様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。修飾語「モノクローナル」とは、抗体の実質的に均一な集団から得られているという抗体の特性を示すものであり、任意の特定の方法による抗体の作製が必要であると解釈されるべきでない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975)Nature 256:495によって初めて報告されたハイブリドーマ法によって作製されてもよいし、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)によって作製されてもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clacksonら(1991)Nature,352:624−628:およびMarksら(1991)J.Mol.Biol.,222:581−597に記載されている手法を用いてファージ抗体ライブラリから単離され得る。
本明細書中のモノクローナル抗体は、特に、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体における対応配列、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応配列と同一であるか、あるいは相同でありながら、それらの鎖の残りの部分が、別の種に由来する抗体における対応配列または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応配列と同一であるか、あるいは相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびに所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体のフラグメントを包含する(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855)。
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ抗体である。ヒト化抗体は、大部分について、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)(例えば、マウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類)の超可変領域由来の残基で置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体に見られない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに洗練させるために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、代表的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、ここで、超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに相当し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、代表的には、ヒト免疫グロブリンの少なくとも一部を含む。さらなる詳細については、Jonesら(1986)Nature 321:522−525;Riechmannら(1988)Nature 332:323−329;およびPresta(1992)Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596を参照のこと。
「種依存性抗体」は、第1の哺乳動物種由来の抗原に対する結合親和性のほうが第2の哺乳動物種由来の抗原のホモログに対する結合親和性よりも強い抗体のことである。通常、種依存性抗体は、あるヒト抗原に「特異的に結合する」(すなわち、たった約1×10−7M、好ましくは、たった約1×10−8M、最も好ましくは、たった約1×10−9Mの結合親和性(K)値を有する)が、そのヒト抗原に対する結合親和性よりも、少なくとも約50倍または少なくとも約500倍または少なくとも約1000倍弱い、第2の非ヒト哺乳動物種由来のホモログに対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上で定義したような様々なタイプの抗体のうちのいずれでもあり得るが、好ましくは、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
本明細書中で使用されるとき、「抗体変異体」または「抗体バリアント」とは、種依存性抗体のアミノ酸配列バリアントのことを指し、ここで、その種依存性抗体のアミノ酸残基の1つ以上が改変されている。そのような変異体は、必然的に、種依存性抗体と100%未満の配列の同一性または類似性を有する。好ましい実施形態において、抗体変異体は、種依存性抗体の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインのいずれかのアミノ酸配列と、少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、最も好ましくは、少なくとも95%のアミノ酸配列の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を有する。この配列に関する同一性または類似性は、配列をアラインメントし、必要であれば、最大パーセント配列同一性を達成するようにギャップを導入した後に、種依存性抗体残基と、同一(すなわち、同じ残基)または類似(すなわち、共通の側鎖特性に基づいた同じ群由来のアミノ酸残基、以下を参照のこと)である、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと本明細書中で定義される。可変ドメインの外側の抗体配列へのN末端、C末端または内部の伸長、欠失または挿入は、配列の同一性または類似性に影響を及ぼすと解釈されてはならない。
「単離された」抗体は、同定されていて、そしてその天然の環境の成分から分離および/または回収されている抗体である。その天然の環境の夾雑物成分は、抗体に対する診断的または治療的な用途を妨げ得る材料であり、それらとしては、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が挙げられ得る。好ましい実施形態において、その抗体は、(1)Lowry法によって測定されるとき、抗体の95重量%超に、最も好ましくは、99重量%超に、(2)スピニングカップ配列決定装置を使用することによってN末端または内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度に、または(3)クマシーブルー、もしくは好ましくは、銀染色を用いる、還元条件下もしくは非還元条件下におけるSDS−PAGEによって均一に、精製される。単離された抗体は、組換え細胞内のインサイチュの抗体を包含する。なぜなら、そこには抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分が存在しないからである。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
本明細書中で使用されるとき、「抗体可変ドメイン」とは、相補性決定領域(CDR;すなわち、CDR1、CDR2およびCDR3)およびフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子の軽鎖および重鎖の部分のことを指す。Vとは、重鎖の可変ドメインのことを指す。Vとは、軽鎖の可変ドメインのことを指す。本発明において使用される方法によれば、CDRおよびFRに割り当てられるアミノ酸の位置は、Kabat(Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987および1991))に従って定義され得る。抗体または抗原結合フラグメントのアミノ酸のナンバリングもまた、Kabatに従う。
本明細書中で使用されるとき、用語「相補性決定領域(CDR;すなわち、CDR1、CDR2およびCDR3)とは、抗体可変ドメインのアミノ酸残基のことを指し、その存在は、抗原結合に必要である。各可変ドメインは、代表的には、CDR1、CDR2およびCDR3と識別される3つのCDR領域を有する。各相補性決定領域は、Kabatによって定義されるような「相補性決定領域」由来のアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインにおける残基約24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)、ならびに重鎖可変ドメインにおける31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3);Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))および/または「超可変ループ」由来の残基(すなわち、軽鎖可変ドメインにおける残基約26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメインにおける26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3);Chothia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901−917)を含み得る。いくつかの場合において、相補性決定領域は、Kabatに従って定義されるCDR領域と超可変ループとの両方由来のアミノ酸を含み得る。例えば、抗体4D5の重鎖のCDRH1は、アミノ酸26〜35を含む。
「フレームワーク領域」(本明細書中以後、FR)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。各可変ドメインは、代表的には、FR1、FR2、FR3およびFR4と識別される4つのFRを有する。CDRが、Kabatに従って定義される場合、軽鎖FR残基は、残基約1〜23(LCFR1)、35〜49(LCFR2)、57〜88(LCFR3)および98〜107(LCFR4)に位置し、重鎖FR残基は、重鎖残基における残基約1〜30(HCFR1)、36〜49(HCFR2)、66〜94(HCFR3)および103〜113(HCFR4)に位置する。CDRが、超可変ループ由来のアミノ酸残基を含む場合、軽鎖FR残基は、軽鎖における残基約1〜25(LCFR1)、33〜49(LCFR2)、53〜90(LCFR3)および97〜107(LCFR4)に位置し、重鎖FR残基は、重鎖残基における残基約1〜25(HCFR1)、33〜52(HCFR2)、56〜95(HCFR3)および102〜113(HCFR4)に位置する。いくつかの場合において、CDRが、Kabatによって定義されるようなCDRと、超可変ループとの両方に由来するアミノ酸を含むとき、FR残基は、しかるべく調整される。例えば、CDRH1が、アミノ酸H26〜H35を含むとき、重鎖FR1残基は、1〜25位であり、FR2残基は、36〜49位である。
本明細書中で使用されるとき、「コドンセット」とは、所望のバリアントアミノ酸をコードするために使用される様々なヌクレオチドトリプレット配列のセットのことを指す。オリゴヌクレオチドのセットは、例えば、固相合成法により合成され得、それは、コドンセットによって提供されるヌクレオチドトリプレットのすべての可能な組み合わせであり、かつ所望の群のアミノ酸をコードする配列を含む。コドン命名の標準的な形態は、当該分野で公知であり、本明細書中に記載されるIUBコードの形態である。コドンセットは、代表的には、斜体の3つの大文字で表される(例えば、NNK、NNS、XYZ、DVKなど)。したがって、「非ランダムコドンセット」とは、本明細書中で使用されるとき、本明細書中に記載されるようなアミノ酸選択に対する基準を部分的に、好ましくは、完全に満たす、選ばれたアミノ酸をコードするコドンセットのことを指す。ある特定の位置において、選択されたヌクレオチド「縮重」を有するオリゴヌクレオチドの合成は、当該分野で周知であり、例えば、TRIMアプローチである(Knappekら(1999)J.Mol.Biol.296:57−86);Garrard & Henner(1993)Gene 128:103)。ある特定のコドンセットを有するそのようなオリゴヌクレオチドのセットは、市販の核酸合成装置(例えば、Applied Biosystems,Foster City,CAから入手可能)を使用して合成され得るか、または商業的に(例えば、Life Technologies,Rockville,MDから)入手可能である。ゆえに、特定のコドンセットを有する合成されたオリゴヌクレオチドのセットは、代表的には、異なる配列を有する複数のオリゴヌクレオチドを含み、その相違は、配列全体の中のコドンセットによって確立される。オリゴヌクレオチドは、本発明に従って使用されるとき、可変ドメイン核酸鋳型へのハイブリダイゼーションが可能であり、そして例えばクローニング目的で有用な、制限酵素部位を含み得る(が、必ずしも含まなくてもよい)配列を有する。
「Fv」フラグメントは、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含む抗体フラグメントである。この領域は、天然において、例えば、scFvにおいて、共有結合であり得る堅固な会合での、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つのCDRがV−V二量体の表面上の抗原結合部位を定義するように相互作用する。この6つのCDRまたはそれらのサブセットは、一緒になって、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(または、抗原に特異的な3つのCDRだけを含むFvの半分)でさえも、抗原を認識し、抗原に結合する能力を有するが、結合部位全体よりも親和性は通常低い。
「Fab」フラグメントは、軽鎖の可変ドメインおよび定常ドメイン、ならびに重鎖の可変ドメインおよび第1定常ドメイン(CH1)を含む。F(ab’)抗体フラグメントは、一般にFabフラグメントのカルボキシ末端付近でそれらのフラグメント間のヒンジシステインによって共有結合されているFabフラグメントの対を含む。抗体フラグメントの他の化学結合もまた当該分野で公知である。
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVドメインおよびVドメインを含み、ここで、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖で存在する。一般に、Fvポリペプチドは、VドメインとVドメインとの間に、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvに関する概説として、Pluckthun The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照のこと。
用語「ダイアボディ」とは、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体フラグメントのことを指し、このフラグメントは、同じポリペプチド鎖において軽鎖可変ドメイン(V)に接続された重鎖可変ドメイン(V)を含む(VおよびV)。同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成することができないくらい短いリンカーを用いることにより、これらのドメインは、別の鎖の相補的なドメインと対形成せざるを得ず、2つの抗原結合部位が形成される。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;およびHollingerら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448に一層十分に記載されている。
表現「線状抗体」とは、Zapataら(1995 Protein Eng.,8(10):1057−1062)に記載されている抗体のことを指す。簡潔には、これらの抗体は、相補的な軽鎖ポリペプチドとともに抗原結合領域の対を形成するタンデム型のFdセグメント(V−C1−V−C1)の対を含む。線状抗体は、二重特異的または単一特異的であり得る。
本明細書中で使用されるとき、「ライブラリ」とは、複数の抗体配列もしくは抗体フラグメント配列(例えば、本発明のポリペプチド)またはこれらの配列をコードする複数の核酸のことを指し、これらの配列は、本発明の方法に従ってこれらの配列に導入されたバリアントアミノ酸の組み合わせが異なる。
「ファージディスプレイ」は、バリアントポリペプチドを、コートタンパク質の少なくとも一部との融合タンパク質としてファージ(例えば、繊維状ファージ)の粒子の表面上にディスプレイする手法のことである。ファージディスプレイの有用性は、ランダム化されたタンパク質バリアントの大きなライブラリを、高親和性で標的抗原に結合するそれらの配列について迅速かつ効率的に選別することができるという事実にある。ペプチドライブラリおよびタンパク質ライブラリのファージ上のディスプレイは、何百万ものポリペプチドを、特異的な結合特性を有するものについてスクリーニングするために使用されている。多価ファージディスプレイ法は、繊維状ファージの遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIのいずれかへの融合を介して小さなランダムペプチドおよび低分子タンパク質をディスプレイするために使用されている。Wells and Lowman(1992)Curr.Opin.Struct.Biol.3:355−362およびこれに引用されている参考文献。一価ファージディスプレイでは、タンパク質ライブラリまたはペプチドライブラリは、遺伝子IIIまたはその一部に融合されており、それらは、野生型遺伝子IIIタンパク質の存在下において低レベルで発現し、ファージ粒子は、融合タンパク質の1コピーをディスプレイするかまたはディスプレイしない。選別が、内因性リガンド親和性に基づくものであり、DNA操作を簡便にするファージミドベクターを使用しているために、アビディティー効果は、多価ファージと比べて低い。Lowman and Wells(1991)Methods:A companion to Methods in Enzymology,3:205−0216。
「ファージミド」は、細菌の複製起点、例えばCo1E1およびバクテリオファージの遺伝子間領域のコピーを有するプラスミドベクターである。ファージミドは、繊維状バクテリオファージおよびラムダバクテリオファージをはじめとした任意の公知のバクテリオファージにおいて使用され得る。このプラスミドはまた、通常、抗生物質耐性についての選択マーカーを含む。これらのベクターにクローニングされたDNAのセグメントは、プラスミドとして増殖され得る。これらのベクターを含む細胞は、ファージ粒子の産生に必要なすべての遺伝子が提供されると、プラスミドの複製様式をローリングサークル複製に変更することによって、プラスミドDNAの1本の鎖のコピーを生成し、そしてファージ粒子を包む。ファージミドは、感染性または非感染性のファージ粒子を形成し得る。この用語は、異種ポリペプチドがファージ粒子の表面上にディスプレイされるように遺伝子融合物として異種ポリペプチド遺伝子に連結されたファージコートタンパク質遺伝子またはそのフラグメントを含むファージミドを包含する。
用語「ファージベクター」は、異種遺伝子を含み、かつ複製することができる、バクテリオファージの二本鎖複製型を意味する。ファージベクターは、ファージの複製およびファージ粒子の形成を可能にするファージ複製起点を有する。ファージは、好ましくは、繊維状バクテリオファージ(例えば、M13、f1、fd、Pf3ファージまたはそれらの派生物)またはラムダファージ(例えば、ラムダ、21、phi80、phi81、82、424、434などまたはそれらの派生物)である。
本明細書中で使用されるとき、「溶媒接触位置」とは、潜在的に、溶媒の到達および/または抗体特異的抗原などの分子との接触に利用可能であるような、抗体または抗原結合フラグメントの構造、構造の集団および/またはモデル化された構造に基づいて決定される、起源の抗体または抗原結合フラグメントの重鎖および軽鎖の可変領域におけるアミノ酸残基の位置のことを指す。これらの位置は、代表的には、CDR内およびタンパク質の外面上に見られる。本明細書中に定義されるような、抗体または抗原結合フラグメントの溶媒接触位置は、当該分野で公知のいくつかのアルゴリズムのいずれかを使用して決定され得る。好ましくは、溶媒接触位置は、抗体の3次元モデルからの座標を使用して、好ましくは、InsightIIプログラム(Accelrys,San Diego,CA)などのコンピュータプログラムを使用して、決定される。溶媒接触位置はまた、当該分野で公知のアルゴリズムを使用しても決定され得る(例えば、Lee and Richards(1971)J.Mol.Biol.55,379およびConnolly(1983)J.Appl.Cryst.16,548)。溶媒接触位置の決定は、タンパク質モデリングに適したソフトウェアおよび抗体から得られる3次元構造情報を使用して行われ得る。これらの目的で利用され得るソフトウェアとしては、SYBYL Biopolymer Moduleソフトウェア(Tripos Associates)が挙げられる。一般に、および好ましくは、アルゴリズム(プログラム)が、ユーザーによって入力されるサイズパラメータを必要とする場合、その計算に使用されるプローブの「サイズ」は、約1.4オングストロームまたはそれより小さい半径のセットである。さらに、パーソナルコンピュータ用のソフトウェアを使用した、溶媒接触領域および面積法の決定は、Pacios(1994)Comput.Chem.18(4):377−386に記載されている。
「新脈管形成因子または新脈管形成剤」は、血管の発生を刺激する成長因子、例えば、新脈管形成、内皮細胞成長、血管の安定性(stabiliy)および/または脈管形成などを促進する成長因子である。例えば、新脈管形成因子としては、例えば、VEGFおよびVEGFファミリー、PIGF、PDGFファミリー、線維芽細胞成長因子ファミリー(FGF)のメンバー、TIEリガンド(アンジオポエチン)、エフリン、Del−1、線維芽細胞成長因子:酸性(aFGF)および塩基性(bFGF)、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、肝細胞成長因子(HGF)/分散因子(scatter factor)(SF)、インターロイキン−8(IL−8)、レプチン、ミッドカイン、ニューロピリン、胎盤成長因子、血小板由来内皮細胞成長因子(PD−ECGF)、血小板由来成長因子、特にPDGF−BBまたはPDGFR−ベータ、プレイオトロフィン(PTN)、プログラニュリン(Progranulin)、プロリフェリン(Proliferin)、トランスフォーミング成長因子−アルファ(TGF−アルファ)、トランスフォーミング成長因子−ベータ(TGF−ベータ)、腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−アルファ)などが挙げられるが、これらに限定されない。新脈管形成因子はまた、創傷治癒を加速させる因子(例えば、成長ホルモン、インスリン様成長因子−I(IGF−I)、VIGF、上皮成長因子(EGF)、CTGFおよびそのファミリーのメンバー、ならびにTGF−アルファおよびTGF−ベータ)を含み得る。例えば、Klagsbrun and D’Amore(1991)Annu.Rev.Physiol.53:217−39;Streit and Detmar(2003)Oncogene 22:3172−3179;Ferrara & Alitalo(1999)Nature Medicine 5(12):1359−1364;Toniniら(2003)Oncogene 22:6549−6556(例えば、公知の新脈管形成因子を列挙している表1);およびSato(2003)Int.J.Clin.Oncol.8:200−206を参照のこと。
「抗新脈管形成剤」または「新脈管形成インヒビタ」とは、新脈管形成、脈管形成または望ましくない脈管透過性を直接または間接的のいずれかで阻害する、低分子量物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離されたタンパク質、組換えタンパク質、抗体またはそれらの結合体もしくは融合タンパク質のことを指す。抗新脈管形成剤は、新脈管形成因子またはそのレセプターに結合し、新脈管形成因子またはそのレセプターの脈管形成活性を阻止する物質を含むと理解されるべきである。例えば、抗新脈管形成剤は、上で定義したような脈管形成剤に対する抗体または他のアンタゴニスト、例えば、VEGF−AまたはVEGF−Aレセプター(例えば、KDRレセプターまたはFlt−1レセプター)に対する抗体、Gleevec(商標)(メシル酸イマチニブ)などの抗PDGFRインヒビタである。抗新脈管形成(Anti−angiogensis)剤は、天然の新脈管形成インヒビタ、例えば、アンジオスタチン、エンドスタチンなども含む。例えば、Klagsbrun and D’Amore(1991)Annu.Rev.Physiol.53:217−39;Streit and Detmar(2003)Oncogene 22:3172−3179(例えば、悪性黒色腫における抗新脈管形成の治療を列挙している表3);Ferrara & Alitalo(1999)Nature Medicine 5(12):1359−1364;Toniniら(2003)Oncogene 22:6549−6556(例えば、公知の抗新脈管形成因子を列挙している表2);およびSato(2003)Int.J.Clin.Oncol.8:200−206(例えば、臨床試験において使用されている抗新脈管形成剤を列挙している表1)を参照のこと。
用語「VEGF」または「VEGF−A」とは、本明細書中で使用されるとき、Leungら(1989)Science 246:1306およびHouckら(1991)Mol.Endocrin,5:1806に記載されているような165アミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子、ならびに関連の121、189および206アミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子、そして、それらの天然に存在する対立遺伝子型およびプロセシングされた型のことを指す。用語「VEGF」とは、非ヒト種(例えば、マウス、ラットまたは霊長類)由来のVEGFのことも指す。時折、特定の種由来のVEGFは、ヒトVEGFに対するhVEGF、マウスVEGFに対するmVEGFなどの用語として記載される。用語「VEGF」は、165アミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子のアミノ酸8〜109または1〜109を含むポリペプチドの切断型のことを指すためにも使用される。そのような形態のVEGFのいずれかに対する言及は、本願において例えば、「VEGF(8−109)」、「VEGF(1−109)」または「VEGF165」によって特定され得る。「切断型」天然VEGFに対するアミノ酸位置は、天然VEGF配列において示されるようにナンバリングされる。例えば、切断型天然VEGFにおけるアミノ酸17位(メチオニン)は、天然VEGFにおいても17位(メチオニン)である。切断型天然VEGFは、KDRおよびFlt−1レセプターに対して天然VEGFに匹敵する結合親和性を有する。
「抗VEGF抗体」は、十分な親和性および特異性で、VEGFに結合する抗体である。好ましくは、本発明の抗VEGF抗体は、VEGF活性が関わる疾患または状態を標的化する際および妨げる際に、治療薬として使用され得る。抗VEGF抗体は、通常、VEGF−BまたはVEGF−Cなどの他のVEGFホモログにも、他の成長因子(例えば、PIGF、PDGFまたはbFGF)にも結合しない。好ましい抗VEGF抗体は、ハイブリドーマATCC HB10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。より好ましくは、抗VEGF抗体は、Prestaら(1997)Cancer Res.57:4593−4599に従って作製される組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体であり、そのような抗体としては、ベバシズマブ(BV;Avastin(商標))として知られている抗体が挙げられるがこれに限定されない。
抗VEGF抗体である「ベバシズマブ(BV)」(「rhuMAb VEGF」または「Avastin(登録商標)としても知られる)は、Prestaら(1997)Cancer Res.57:4593−4599に従って作製される組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。これは、ヒトVEGFがそのレセプターに結合するのを阻止するマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1由来の変異されたヒトIgG1フレームワーク領域および抗原結合相補性決定領域を含む。ベバシズマブの約93%のアミノ酸配列(フレームワーク領域の大部分を含む)が、ヒトIgG1由来であり、約7%の配列が、マウス抗体A4.6.1由来である。ベバシズマブは、約149,000ダルトンの分子質量を有し、グリコシル化されている。
「VEGFアンタゴニスト」とは、VEGF活性(例えば、1つ以上のVEGFレセプターへのVEGFの結合が挙げられるがこれに限定されない)を中和することができるか、阻止することができるか、阻害することができるか、抑止することができるか、低下させることができるか、または妨げることができる分子のことを指す。VEGFアンタゴニストとしては、抗VEGF抗体およびその抗原結合フラグメント、VEGFに特異的に結合することにより、そのVEGFが1つ以上のレセプターに結合するのを抑えるレセプター分子および誘導体、抗VEGFレセプター抗体およびVEGFレセプターアンタゴニスト(例えば、VEGFRチロシンキナーゼの小分子インヒビタ)が挙げられるがこれらに限定されない。用語「VEGFアンタゴニスト」は、本明細書中で使用されるとき、ニューロピリン(neutropilin)−1および/またはニューロピリン−2(Nrp−1および/またはNrp−2)に結合し、VEGF活性を中和することができるか、阻止することができるか、阻害することができるか、抑止することができるか、低下させることができるか、または妨げることができる、抗体、抗体フラグメント、他の結合ポリペプチド、ペプチドおよび非ペプチド小分子を含む分子(例えば、抗Nrp1および抗Nrp2抗体、ならびにNrp1およびNrp2と交差反応する(ただし、VEGF活性を中和することができるか、阻止することができるか、阻害することができるか、抑止することができるか、低下させることができるか、または妨げることができる)抗体が挙げられるがこれらに限定されない)を特に包含する。したがって、用語「VEGF活性」は、ニューロピリン媒介性のVEGFの生物学的活性(本明細書中の上で定義したような活性)を特に包含する。
「セマフォリンアンタゴニスト」とは、セマフォリン活性(例えば、1つ以上のセマフォリンレセプターへのセマフォリンの結合が挙げられるがこれに限定されない)を中和することができるか、阻止することができるか、阻害することができるか、抑止することができるか、低下させることができるか、または妨げることができる分子のことを指す。セマフォリンアンタゴニストとしては、抗セマフォリン抗体およびその抗原結合フラグメント、セマフォリンに特異的に結合することにより、そのセマフォリンが1つ以上のレセプターに結合するのを抑えるレセプター分子および誘導体、抗セマフォリンレセプター抗体およびセマフォリンレセプターアンタゴニスト(例えば、セマフォリンの小分子インヒビタ)が挙げられるがこれらに限定されない。用語「セマフォリンアンタゴニスト」は、本明細書中で使用されるとき、ニューロピリン−1および/またはニューロピリン−2(Nrp−1および/またはNrp−2)に結合し、セマフォリン活性を中和することができるか、阻止することができるか、阻害することができるか、抑止することができるか、低下させることができるか、または妨げることができる、抗体、抗体フラグメント、他の結合ポリペプチド、ペプチドおよび非ペプチド小分子を含む分子(例えば、抗Nrp1および抗Nrp2抗体、ならびにNrp1およびNrp2と交差反応する(ただし、セマフォリン活性を中和することができるか、阻止することができるか、阻害することができるか、抑止することができるか、低下させることができるか、または妨げることができる)抗体が挙げられるがこれらに限定されない)を特に包含する。したがって、用語「セマフォリン活性」は、ニューロピリン媒介性のクラス3セマフォリンの生物学的活性(本明細書中の上で定義したような活性)を特に包含する。そのような生物学的活性としては、例えば、胚の神経系発生中およびニューロン再生中の神経突起成長の阻害効果が挙げられる。
「処置」とは、治療的な処置と、予防的または防止的な措置の両方のことを指す。処置の必要な者としては、障害をすでに有している者、ならびに障害が予防されるべき者が挙げられる。
「障害」は、処置の恩恵を受け得る任意の状態である。例えば、異常な新脈管形成(過剰か、不適当か、または調節されていない、新脈管形成)もしくは脈管透過性に苦しんでいるか、またはそれらを予防する必要のある、哺乳動物。これには、その哺乳動物をその対象の障害にさせる病理学的な状態を含む、慢性および急性の障害または疾患が包含される。本明細書中において処置される障害の非限定的な例としては、悪性および良性の腫瘍;非白血病およびリンパ系悪性疾患;ニューロンの障害、グリアの障害、アストロサイトの(astrocytal)障害、視床下部の障害および他の腺の障害、マクロファージの(macrophagal)障害、上皮の障害、間質の障害および胞胚腔の障害;ならびに炎症性障害、脈管形成の障害および免疫学的障害が挙げられる。
異常な新脈管形成は、病的状態または病的状態を引き起こすような状態において、新しい血管が、過剰か、不十分か、または不適切に成長するとき(例えば、新脈管形成の位置、タイミングまたは開始が、医学的な観点から望ましくないとき)に、生じる。過剰か、不適当か、または調節されていない新脈管形成は、上記病的状態の悪化に関与するか、またはある病的状態(例えば、癌、特に、脈管形成された固形腫瘍および転移性腫瘍(結腸癌、肺癌(特に、小細胞肺癌)または前立腺癌を含む)、眼球の血管新生、特に、糖尿病による失明、網膜症、主に糖尿病性網膜症または加齢性黄斑変性症(AMD)、乾癬、乾癬性関節炎、血管腫などの血管芽細胞腫(haemangioblastoma)によって引き起こされる疾患;炎症性腎疾患(例えば、糸球体腎炎、特に、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、溶血性尿毒症症候群、糖尿病性腎症または高血圧性腎硬化症);様々な炎症性(imflammatory)疾患(例えば、関節炎、特に、関節リウマチ、炎症性腸疾患)、乾癬(psorsasis)、サルコイドーシス、動脈硬化症および移植後に生じる疾患、子宮内膜症または慢性喘息、ならびに70を超える他の状態、におけるような病的状態)を引き起こす、新しい血管の成長が存在するとき、生じる。その新しい血管は、罹患組織を養い得、正常組織を破壊し得、そして、癌の場合、新しい血管は、腫瘍細胞が循環中に漏れ出ること、および他の器官に留まること(腫瘍転移)を可能にし得る。不十分な新脈管形成は、例えば、冠状動脈疾患、脳卒中などの疾患における病的状態の悪化および創傷治癒の遅延に関与する不適当な血管の成長が存在するとき、生じる。さらに、潰瘍、発作および心臓発作は、自然治癒に通常必要な新脈管形成が生じないことが原因であり得る。本発明は、上で述べた疾病を発症するリスクのある患者の処置を企図する。
本発明の抗体または他の分子を投与される候補である他の患者は、線維血管性(fibrovascular)組織の異常な増殖、酒さ性ざ瘡、後天性免疫不全症候群、動脈閉塞、アトピー性角膜炎、細菌性潰瘍、ベーチェット(Bechets)病、血液由来(blood borne)腫瘍、頚動脈閉塞性疾患、脈絡膜新生血管、慢性炎症、慢性網膜剥離、慢性ブドウ膜炎、慢性ブドウ膜炎、コンタクトレンズ過剰装用(contact lens overwear)、角膜移植片拒絶、角膜血管新生、角膜移植片血管新生、クローン病、イールズ病、流行性角結膜炎、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状疱疹感染、過粘稠度症候群、カポジ肉腫、白血病、脂質変性、ライム病、辺縁表皮剥離(marginal keratolysis)、モーレン潰瘍、ハンセン病以外のマイコバクテリア感染、近視、眼球血管新生疾患、視神経ピット(optic pits)、オスラー・ウェーバー症候群(オスラー・ウェーバー・ランデュ、変形性関節症、パジェット病、扁平部炎、類天疱瘡、フリクテン症(phylectenulosis)、多発性動脈炎、レーザー後合併症、原虫感染、弾性線維性仮性黄色腫、翼状片乾燥性角膜炎(pterygium keratitis sicca)、放射状角膜切開、網膜血管新生、未熟児網膜症、水晶体後線維増殖症、サルコイド、強膜炎、鎌状赤血球貧血、シェーグレン(Sogrens)症候群、固形腫瘍、シュタルガルト(Stargarts)病、スティーブンス・ジョンソン病、上輪部角膜炎、梅毒、全身性狼瘡、テリエン辺縁変性、トキソプラズマ症、外傷、ユーイング肉腫の腫瘍、神経芽細胞腫の腫瘍、骨肉腫の腫瘍、網膜芽細胞腫の腫瘍、横紋筋肉腫の腫瘍、潰瘍性大腸炎、静脈閉塞、ビタミンA欠乏およびウェゲナーサルコイドーシス、糖尿病に関連する望まれない新脈管形成、寄生虫病、異常な創傷治癒、外科術後、損傷後または外傷後の肥大、毛成長の阻害、排卵および黄体形成の阻害、着床の阻害ならびに子宮における胚発生の阻害を有しているか、またはそれらを発症するリスクがある。
抗新脈管形成治療は、移植片拒絶、肺の炎症、ネフローゼ症候群、子癇前症、心膜炎に関連するものなどの心内膜液浸出(pericardial effusion)および胸水、望ましくない脈管透過性を特徴とする疾患および障害、例えば、脳腫瘍に関連する浮腫、悪性疾患に関連する腹水症、メイグス症候群、肺の炎症、ネフローゼ症候群、心内膜液浸出、胸水、心筋梗塞後および発作後の状態などの循環器疾患に関連する透過性などの一般的な処置において有用である。
本発明の他の新脈管形成依存性疾患としては、血管線維腫(出血傾向がある異常な血管)、血管新生緑内障(眼における血管の成長)、動静脈奇形(動脈と静脈との異常な連絡)、偽関節骨折(治癒しない骨折)、動脈硬化巣(動脈の硬化)、化膿性肉芽腫(血管から構成される一般的な皮膚病変)、強皮症(結合組織疾患の一形態)、血管腫(血管から構成される腫瘍)、トラコーマ(第三世界における失明の主な原因)、血友病性関節、脈管の癒着および肥厚性瘢痕(異常な瘢痕形成)が挙げられる。
用語「癌」および「癌性」とは、代表的には、制御されていない細胞成長を特徴とする哺乳動物における生理学的状態のことを指すか、または記述する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫および白血病が挙げられるがこれらに限定されない。そのような癌のより詳細な例としては、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃(gastric)癌または胃(stomach)癌(消化器癌を含む)、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、直腸結腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、およびに様々なタイプの頭頸部癌、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大病変(bulky disease)NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ性白血病(ALL);ヘアリーセル白血病;慢性骨髄芽球白血病;および移植後リンパ球増殖障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連するもの)およびメイグス症候群に関連する異常な脈管増殖が挙げられる。
用語「抗腫瘍性組成物」とは、少なくとも1つの活性な治療薬、例えば、「抗癌剤」を含む、癌の処置に有用な組成物のことを指す。治療薬(抗癌剤)の例としては、例えば、化学療法剤、成長阻害剤、細胞傷害剤、放射線治療に使用される薬剤、抗新脈管形成剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、および癌を処置するための他の薬剤(例えば、抗HER−2抗体、抗CD20抗体、上皮成長因子レセプター(EGFR)アンタゴニスト(例えば、チロシンキナーゼインヒビタ)、HER1/EGFRインヒビタ(例えば、エルロチニブ(Tarceva(商標))、血小板由来成長因子インヒビタ(例えば、Gleevec(商標)(メシル酸イマチニブ))、COX−2インヒビタ(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR−ベータ、BlyS、APRIL、BCMAまたはVEGFレセプター、TRAIL/Apo2のうちの1つ以上に結合するアンタゴニスト(例えば、中和抗体)、ならびに他の生理活性剤および有機化学剤などが挙げられるが、これらに限定されない。それらの組み合わせもまた、本発明に包含される。
用語「細胞傷害剤」とは、本明細書中で使用されるとき、細胞の機能を阻害するか、もしくは妨害し、そして/または細胞の破壊を引き起こす、物質のことを指す。この用語は、放射性同位体(例えば、I131、I125、Y90およびRe186)、化学療法剤およびトキシン(例えば、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性なトキシン、またはそれらのフラグメント)を含むと意図される。
「化学療法剤」は、癌の処置に有用な化合物である。化学療法剤の例としては、癌の処置に有用な化合物が挙げられる。化学療法剤の例としては、アルキル化剤(例えば、チオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロスホスファミド;スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン(piposulfan));アジリジン(例えば、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)およびウレドパ);アルトレタミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド(triethiylenethiophosphoramide)およびトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含む、エチレンイミンおよびメチルアメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン(carzelesin)およびビゼレシン(bizelesin)合成アナログを含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログであるKW−2189およびCB1−TM1を含む);エレウセロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチイン(sarcodictyin);スポンギスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベンビキン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード);ニトロソ尿素(nitrosureas)(例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムヌスチン(ranimnustine));抗生物質(例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンガンマlIおよびカリケアマイシンオメガlI)(例えば、Agnew(1994)Chem Intl.Ed.Engl.33:183−186を参照のこと);ジネマイシン(dynemicin)Aを含むジネマイシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン(esperamicin);ならびにネオカルチノスタチン発色団および関連色素タンパク質のエンジイン抗菌性(antiobiotic)発色団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)などの抗代謝産物;葉酸アナログ(例えば、デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート);プリンアナログ(例えば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン);ピリミジンアナログ(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン);アンドロゲン(例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン);抗副腎剤(anti−adrenals)(例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン);フロリン酸(frolinic acid)などの葉酸補給剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デホファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン;エルホルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシンおよびアンサミトシン(ansamitocins)などのメイタンシノイド(maytansinoids);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクォン(triaziquone);2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテシン(特に、T−2トキシン、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridin)Aおよびアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol−Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、パクリタキセルのCremophor非含有アルブミン操作ナノ粒子処方物のABRAXANE(商標)(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、Illinois)およびTAXOTERE(登録商標)ドキセタキセル(Rhone−Poulenc Rorer、Antony、France);クロランブシル(chloranbucil);GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金アナログ;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン(novantrone);テニポシド;エダトレキセート(edatrexate);ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ(xeloda);イバンドロネート;イリノテカン(カンプトサール(Camptosar)、CPT−11)(5−FUおよびロイコボリンを用いたイリノテカンの処置レジメンを含む);トポイソメラーゼインヒビタRFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylornithine)(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン(combretastatin);ロイコボリン(LV);オキサリプラチン処置レジメン(FOLFOX)を含むオキサリプラチン;細胞増殖を減少させる、PKC−アルファ、Raf、H−Ras、EGFR(例えば、エルロチニブ(Tarceva(商標)))およびVEGF−Aのインヒビタ、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体が挙げられる。
腫瘍に対するホルモンの作用を制御または阻害するように作用する抗ホルモン剤(例えば、抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体調節因子(selective estrogen receptor modulators)(SERM))もまた上記の定義に包含され、それらとしては、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)およびFARESTON・トレミフェン;副腎におけるエストロゲン産生を制御する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼインヒビタ(例えば、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタニ(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール(vorozole)、FEMARA(登録商標)レトロゾールおよびARIMIDEX(登録商標)アナストロゾール);および抗アンドロゲン(例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリン)を含む);ならびにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な(abherant)細胞増殖に関わる、シグナル伝達経路中の遺伝子(例えば、PKC−アルファ、RafおよびH−Ras)の発現を阻害するもの;VEGF発現インヒビタ(例えば、ANGIOZYME(登録商標)リボザイム)およびHER2発現インヒビタなどのリボザイム;ワクチン(例えば、遺伝子治療ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチンおよびVAXID(登録商標)ワクチン);PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1インヒビタ;ABARELIX(登録商標)rmRH;ビノレルビンおよびエスペラミシン(Esperamicins)(米国特許第4,675,187号を参照のこと)、および上記のもののいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体が挙げられる。
用語「プロドラッグ」とは、本願において使用されるとき、親薬物と比べて腫瘍細胞に対する細胞傷害性が低く、酵素的に活性化されるか、またはより活性な親型に変換されることが可能な、薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体の型のことを指す。例えば、Wilman(1986)“Prodrugs in Cancer Chemotherapy”Biochemical Society Transactions,14,pp.375−382,615th Meeting BelfastおよびStellaら(1985).“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery”,Directed Drug Delivery,Borchardtら(ed.),pp.247−267,Humana Pressを参照のこと。本発明のプロドラッグとしては、より活性な細胞傷害剤非含有薬物に変換され得る、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、スルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸改変プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β−ラクタム含有プロドラッグ、必要に応じて置換されるフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ、または必要に応じて置換されるフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシン、および他の5−フルオロウリジンプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。本発明において使用するためのプロドラッグ型に誘導体化され得る細胞傷害性薬物の例としては、上に記載した化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。
セマフォリンアンタゴニストを用いて処置され得る疾患および状態としては、神経疾患、および神経再生を必要とするかまたは神経再生の恩恵を受ける疾患が挙げられるがこれらに限定されない。
「小分子」は、約500ダルトン未満の分子量を有すると本明細書中で定義される。
「単離された」核酸分子は、同定されていて、そしてその抗体核酸の天然の起源において通常関連する少なくとも1つの夾雑物の核酸分子から分離されている、核酸分子である。単離された核酸分子は、それが天然において見られる形態以外または状況以外のものである。ゆえに、単離された核酸分子は、それが天然の細胞中に存在するときは、核酸分子と区別されている。しかしながら、単離された核酸分子は、例えば、その核酸分子が天然の細胞の核酸分子とは異なる染色体位置に存在する場合に、抗体を通常発現する細胞中に含まれる核酸分子を包含する。
表現「調節配列」とは、特定の宿主生物において作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列のことをいう。原核生物に適した調節配列は、例えば、プロモーター、必要に応じてオペレーター配列およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを利用することが知られている。
核酸が、別の核酸配列と機能的な関連性をもって配置されているとき、その核酸は、「作動可能に連結されている」。例えば、あるポリペプチドに対するDNAが、そのポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、プレ配列または分泌リーダーに対するDNAが、そのポリペプチドに対するDNAに作動可能に連結されている;そのポリペプチドに対するDNAが、その配列の転写に影響を与える場合、プロモーターまたはエンハンサーが、コード配列に作動可能に連結されている;またはそのポリペプチドに対するDNAが、翻訳を促進するように位置されている場合、リボソーム結合部位が、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結されている(された)」とは、連結されているDNA配列が、隣接していることを意味し、分泌リーダーの場合は、隣接的かつ読み枠(reading phase)であることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、隣接的である必要はない。連結は、好都合な制限酵素認識部位におけるライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、従来の慣例に従って使用される。
本明細書中で使用されるとき、表現「細胞」、「細胞株」および「細胞培養物」は、交換可能に使用され、そのような呼称のすべてが、子孫を包含する。したがって、単語「形質転換体」および「形質転換された細胞」は、初代被験細胞、および継代の回数に関係なくそれらに由来する培養物を包含する。すべての子孫のDNA含有量は、故意または偶然の変異に起因して、正確には同じでないかもしれないことも理解される。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされるのと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫が包含される。異なる呼称が意図されるが、それは、文脈から明らかである。
本発明を実施するための形態
Nrpの細胞外ドメインは、ドメイン構造および機能特性に基づいて、代表的には、3つの機能単位:a1a2、b1b2およびcに分けられ、これらはそれぞれ主要なセマフォリン結合領域、VEGF結合領域および二量体化領域である(Ellis,L.M.,Mol Cencer Ther 5,1099−107(2006))。構造機能研究によって、ニューロピリン機能は全部のドメインが必要であることが示されているが、これらのレセプター/リガンド複合体の分子の詳細は、十分に理解されていないままである。現在までに(o date)、Nrpの構造情報は、Nrp1のb1b2ドメインに限られている(Vander Kooiら、前出;Lee,C.ら、J Biol Chem 281,5702−10(2006))。VEGF165のC末端に相同なテトラペプチドであるタフトシンとの複合体のNrp1 b1b2の結晶構造は、Nrpとその結合パートナーであるVEGFとの相互作用についての最初の構造情報を提供した(Vander Kooiら、前出;von Wronski,M.A.ら、J.Biol Chem 281,5702−10(2006))。
本発明は、インビトロにおいてNrp1とNrp2との両方にSema3が結合するのを阻止し得る抗体のFabフラグメントとの複合体でのNrp2 a1a2b1b2の結晶構造を提供する。両方のNrpアイソフォームのa2b1b2およびb1b2フラグメントの構造も比較し、対比する。さらに、インビボにおいてNrp1へのVEGF165の結合を特異的に阻害する最近報告されたファージ由来抗体のFabフラグメントと結合したNrp1のb1ドメインの構造(Liang,W.C.ら、J Mol Biol 366,815−29(2007);Pan,Qら、Cancer Cell 11,53−67(2007)もまた提供し、評価する。あわせて、これらの構造は、Nrp細胞外ドメインの大部分の詳細な像をもたらし、VEGFとセマフォリンとの結合についてのモデルを提唱する。2つの異なる結晶型で存在するNrp2二量体に基づいて、Nrp二量体化およびリガンド結合についての新規メカニズムを提唱する。
結晶学的(crystallograhic)研究の詳細は、下記の実施例に提供される。抗NRP抗体を作製するための一般的な方法は、本明細書中および実施例1に記載される。
抗NNP抗体の作製
本明細書中の本発明は、抗Nrp抗体の作製および使用を包含する。抗体を作製するための例示的な方法は、以下の節に詳細に記載される。
抗Nrp抗体は、哺乳動物種由来のNRP(例えば、NRP1および/またはNRP2)抗原を用いて選択される。好ましくは、抗原は、ヒトNRP(hNRP)である。しかしながら、他の種由来のNRP(例えば、マウスNRP(mNRP))も標的抗原として使用することができる。様々な哺乳動物種由来のNRP抗原が、天然の起源から単離され得る。他の実施形態では、抗原は、組換え的に生成されるか、または当該分野で公知の他の合成方法を用いて作製される。
選択された抗体は、通常、NRP抗原に対して十分に強い結合親和性を有する。例えば、その抗体は、たった約5nM、好ましくは、たった約2nM、より好ましくは、たった約500pMのK値でhNRPに結合し得る。抗体親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴に基づくアッセイ(例えば、実施例に記載されるようなBIAcoreアッセイ);酵素結合免疫吸着(enzyme−linked immunoabsorbent)アッセイ(ELISA);および競合アッセイ(例えば、RIA)によって測定され得る。
また、本抗体は、例えば、治療薬としてのその有効性を評価するために他の生物学的活性アッセイに供され得る。そのようなアッセイは、当該分野で公知であり、標的抗原および本抗体に対して意図される用途に依存する。例としては、HUVEC阻害アッセイ(下記の実施例に記載されるようなもの);腫瘍細胞成長阻害アッセイ(例えば、WO89/06692に記載されているようなもの);抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体媒介性細胞傷害(CDC)アッセイ(米国特許第5,500,362号);ならびにアゴニスト活性または造血アッセイ(WO95/27062を参照のこと)が挙げられる。
目的の抗原上の特定のエピトープに結合する抗体についてスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されているアッセイなどの日常的なクロスブロッキング(cross−blocking)アッセイが行われ得る。あるいは、例えば、Champeら(1995)J.Biol.Chem.270:1388−1394に記載されているようなエピトープマッピングを行うことにより、その抗体が目的のエピトープに結合するか否かを判定することができる。
合成抗体ファージライブラリからの抗NRP抗体の作製
好ましい実施形態において、抗NRP抗体は、独特のファージ・ディスプレイ・アプローチを用いて選択される。そのアプローチは、単一のフレームワーク鋳型に基づいた合成抗体ファージライブラリの作製、可変ドメイン内の十分な多様性の設計、多様化させた可変ドメインを有するポリペプチドのディスプレイ、標的NRP抗原に対して高親和性を有する候補抗体の選択、および選択された抗体の単離を包含する。
ファージディスプレイ法の詳細は、例えば、2003年12月11日公開のWO03/102157に見られる。
1つの局面において、抗体ライブラリは、抗体可変ドメインの少なくとも1つのCDRにおける、溶媒接触位置および/または高度に多様な位置を変異させることによって作製され得る。CDRの一部または全部が、本明細書中に提供される方法を用いて変異され得る。いくつかの実施形態では、CDRH1、CDRH2およびCDRH3中の位置を変異させて単一のライブラリを形成するか、またはCDRL3およびCDRH3中の位置を変異させて単一のライブラリを形成するか、またはCDRL3ならびにCDRH1、CDRH2およびCDRH3中の位置を変異させて単一のライブラリを形成することによって、多様な抗体ライブラリを作製することが好ましい場合がある。
例えば、CDRH1、CDRH2およびCDRH3の溶媒接触位置および/または高度に多様な位置に変異を有する抗体可変ドメインのライブラリを作製し得る。CDRL1、CDRL2およびCDRL3中に変異を有する別のライブラリを作製し得る。これらのライブラリを互いに組み合わせて使用することによって、所望の親和性の結合物が作製され得る。例えば、標的抗原に対する結合について重鎖ライブラリを1回以上選択した後、さらなる回の選択にむけて重鎖の結合物の集団に軽鎖ライブラリを戻すことにより、その結合物の親和性を高めることができる。
好ましくは、重鎖配列の可変領域のCDRH3領域中のもとのアミノ酸をバリアントアミノ酸で置換することによってライブラリを作製する。得られたライブラリは、複数の抗体配列を含み得、ここで、その配列の多様性は、主に重鎖配列のCDRH3領域に存在する。
1つの局面において、ヒト化抗体4D5配列、すなわち、ヒト化抗体4D5配列のフレームワークアミノ酸の配列の状況において、ライブラリを作製する。好ましくは、そのライブラリは、重鎖の少なくとも残基95〜100aを、DVKコドンセット(DVKコドンセットを使用することにより、これらの位置のうちのすべての位置に対するバリアントアミノ酸のセットがコードされる)によってコードされるアミノ酸で置換することによって作製される。これらの置換の作製に有用なオリゴヌクレオチドセットの例は、配列(DVK)を含む。いくつかの実施形態において、ライブラリは、残基95〜100aを、DVKコドンセットとNNKコドンセットとの両方によってコードされるアミノ酸で置換することによって作製される。これらの置換の作製に有用なオリゴヌクレオチドセットの例は、配列(DVK)(NNK)を含む。別の実施形態では、ライブラリは、少なくとも残基95〜100aをDVKコドンセットとNNKコドンセットの両方によってコードされるアミノ酸で置換することによって作製される。これらの置換の作製に有用なオリゴヌクレオチドセットの例は、配列(DVK)(NNK)を含む。これらの置換の作製に有用なオリゴヌクレオチドセットの別の例は、配列(NNK)を含む。適当なオリゴヌクレオチド配列の他の例は、本明細書中に記載される基準に従って当業者によって決定され得る。
別の実施形態では、様々なCDRH3の設計を利用することにより、高親和性の結合物が単離され、種々のエピトープに対する結合物が単離される。このライブラリにおいて作製されるCDRH3の長さの範囲は、11〜13アミノ酸であるが、これとは異なる長さのものも作製され得る。H3の多様性は、NNK、DVKおよびNVKコドンセットを用いることによって拡大され得、ならびにN末端および/またはC末端における多様性は、より限定され得る。
CDRH1およびCDRH2においても多様性が作製され得る。CDR−H1およびH2の多様性の設計は、記載されるような天然の抗体レパートリーを模倣する標的化ストラテジー(以前の設計よりも天然の多様性により一致した多様性に焦点を合わせた改変を行うもの)に従う。
CDRH3における多様性について、異なる長さのH3を含む複数のライブラリを、別々に構築し、次いで、標的抗原に結合するものを選択するためにそれらを組み合わせることができる。その複数のライブラリは、以前に記載されているような、および本明細書中の下記に記載するような、固体支持体選択法および溶液選別法を用いて、プールされ、選別され得る。複数の選別ストラテジー(satrategies)が使用され得る。例えば、1つの変法は、固体に結合した標的に対する選別の後、融合ポリペプチド上に存在し得るタグ(例えば、抗gDタグ)について選別し、その後、固体に結合した標的に対してもう一度選別することを包含する。あるいは、まず、上記ライブラリを、固体表面に結合した標的に対して選別し、次いで、標的抗原の濃度を減少させながら溶相結合を使用して、溶出された結合物を選別し得る。異なる選別方法を組み合わせることにより、高度に発現する配列だけの選択の最小化およびいくつかの異なる高親和性クローンの選択がもたらされる。
標的のNRP抗原に対する高親和性結合物が、ライブラリから単離され得る。多様性をH1/H2領域に限定することにより、縮重が約10〜10倍減少し、H3の多様性を一層許容にすることにより、より高親和性の結合物がもたらされる。CDRH3中に様々なタイプの多様性を有するライブラリを利用することにより(例えば、DVKまたはNVTを利用して)、標的抗原の様々なエピトープに結合し得る結合物が単離される。
上に記載したようにプールされたライブラリから単離された結合物のうち、限られた多様性を軽鎖に提供することによって、親和性がさらに改善され得ることが見出されている。この実施形態では、軽鎖多様性は、以下のとおり、CDRL1において作製される:アミノ酸28位は、RDTによってコードされ;アミノ酸29位は、RKTによってコードされ;アミノ酸30位は、RVWによってコードされ;アミノ酸31位は、ANWによってコードされ;アミノ酸32位は、THTによってコードされ;必要に応じて、アミノ酸33位は、CTGによってコードされ;CDRL2において:アミノ酸50位は、KBGによってコードされ;アミノ酸53位は、AVCによってコードされ;そして必要に応じて、アミノ酸55位は、GMAによってコードされ;CDRL3において:アミノ酸91位は、TMTもしくはSRTまたはその両方によってコードされ;アミノ酸92位は、DMCによってコードされ;アミノ酸93位は、RVTによってコードされ;アミノ酸94位は、NHTによってコードされ;そしてアミノ酸96位は、TWTもしくはYKGまたはその両方によってコードされる。
別の実施形態では、CDRH1、CDRH2およびCDRH3領域に多様性を有する単数あるいは複数のライブラリが作製される。この実施形態では、CDRH3における多様性は、種々の長さのH3領域を使用し、そして主にコドンセットXYZおよびNNKまたはNNSを使用して、作製される。個別のオリゴヌクレオチドを用いてライブラリが形成され、プールされ得るか、またはオリゴヌクレオチドをプールすることにより、ライブラリのサブセットが形成され得る。この実施形態のライブラリは、固体に結合した標的に対して選別され得る。複数の選別物から単離されたクローンは、ELISAアッセイを用いて、特異性および親和性についてスクリーニングされ得る。特異性については、所望の標的抗原ならびに他の非標的抗原に対して、クローンをスクリーニングし得る。次いで、標的のNRP1抗原に対して結合したものを、溶液結合競合ELISAアッセイまたはスポット競合アッセイにおいて、親和性についてスクリーニングし得る。高親和性で結合したものを、上に記載したように調製されたXYZコドンセットを利用して、ライブラリから単離し得る。これらの結合物は、細胞培養において抗体または抗原結合フラグメントとして容易に高収率で生成され得る。
いくつかの実施形態では、CDRH3領域の長さがより多様性であるライブラリを作製することが望ましい場合がある。例えば、約7〜19アミノ酸の範囲のCDRH3領域を有するライブラリを作製することが望ましい場合がある。
これらの実施形態のライブラリから単離される高親和性結合物は、細菌および真核細胞の培養物中において容易に高収率で生成される。それらのベクターは、ウイルスのコートタンパク質成分配列であるgDタグなどの配列を容易に除去し、そして/または、定常領域配列に加えることにより、完全長抗体または抗原結合フラグメントの高収率の生成をもたらすように設計され得る。
CDRH3中に変異を含むライブラリが、他のCDRの、例えば、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1および/またはCDRH2の、バリアントバージョンを含むライブラリと組み合わされ得る。したがって、例えば、1つの実施形態において、CDRH3ライブラリは、所定のコドンセットを使用して、28、29、30、31および/または32位にバリアントアミノ酸を有する、ヒト化4D5抗体配列の状況において作製されたCDRL3ライブラリと組み合わされる。別の実施形態では、CDRH3に変異を含むライブラリが、バリアントCDRH1および/またはCDRH2重鎖可変ドメインを含むライブラリと組み合わされ得る。1つの実施形態において、CDRH1ライブラリは、28、30、31、32および33位にバリアントアミノ酸を有するヒト化抗体4D5配列を用いて作製される。CDRH2ライブラリは、所定のコドンセットを使用して、50、52、53、54、56および58位にバリアントアミノ酸を有するヒト化抗体4D5の配列を用いて作製され得る。
抗NRPp抗体変異体
ファージライブラリから作製された抗NRP抗体は、親抗体に対して物理的、化学的およびまたは生物学的特性が改善された抗体変異体が得られるようにさらに改変され得る。用いられるアッセイが、生物学的活性アッセイである場合、抗体変異体は、好ましくは、最適なアッセイにおいて、親抗体のそのアッセイにおける生物学的活性よりも少なくとも約10倍良好な、好ましくは、少なくとも約20倍良好な、より好ましくは、少なくとも約50倍良好な、時折、少なくとも約100倍または200倍良好な、生物学的活性を有する。例えば、抗NRP1抗体変異体は、好ましくは、親抗NRP抗体の結合親和性よりも、少なくとも約10倍強い、好ましくは、少なくとも約20倍強い、より好ましくは、少なくとも約50倍強い、時折、少なくとも約100倍または200倍強い、NRPに対する結合親和性を有する。
抗体変異体を作製するために、1つ以上のアミノ酸の変更(例えば、置換)を親抗体の超可変領域の1つ以上に導入する。あるいは、またはさらに、フレームワーク領域残基の1つ以上の変更(例えば、置換)が、親抗体に導入され得るが、これらによって、第2の哺乳動物種由来の抗原に対する抗体変異体の結合親和性が改善される。改変するフレームワーク領域残基の例としては、抗原に直接非共有結合する残基(Amitら(1986)Science 233:747−753);CDRの立体配座と相互作用する残基/CDRの立体配座に影響する残基(Chothiaら(1987)J.Mol.Biol.196:901−917);および/またはV−V界面に関与する残基(EP239400B1)が挙げられる。ある特定の実施形態において、そのようなフレームワーク領域残基の1つ以上の改変によって、第2の哺乳動物種由来の抗原に対する抗体の結合親和性が増大する。例えば、約1〜約5個のフレームワーク残基が、本発明のこの実施形態において変更され得る。時折、これは、超可変領域のいずれの残基も変更されない場合でさえも、前臨床試験における使用に適した抗体変異体を得るのに十分であり得る。しかしながら、通常は、抗体変異体は、さらなる超可変領域の変更を含む。
特に、親抗体の開始結合親和性が、ランダムに作製された抗体変異体が容易にスクリーニングされ得るようなものである場合、変更される超可変領域残基は、そのようにランダムに変更され得る。
そのような抗体変異体を作製するための有用な手順の1つは、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる(Cunningham and Wells(1989)Science 244:1081−1085)。この場合、超可変領域残基の1つ以上が、アラニンまたはポリアラニン残基で置換されることにより、それらのアミノ酸と、第2の哺乳動物種由来の抗原との相互作用に影響を及ぼす。次いで、その置換に対して機能的な感度を示す超可変領域残基を、置換の部位において、または置換の部位に対して、さらなる変異または他の変異を導入することによって、洗練させる。したがって、アミノ酸配列バリエーションを導入するための部位が予め決められている場合、変異の性質は本質的に予め決められている必要はない。この方法で作製されたala−変異体は、本明細書中に記載されるような生物学的活性についてスクリーニングされる。
通常、以下で「好ましい置換」という標題のもとに示されるようなものなどの保存的置換を用いて開始し得る。そのような置換が、生物学的活性(例えば、結合親和性)の変化をもたらす場合、以下の表において「例示的な置換」と称されるか、またはアミノ酸クラスを参照して以下にさらに記載されるような、より実質的な変化が、導入され、その生成物がスクリーニングされる。
好ましい置換:
抗体の生物学的特性のなおもより実質的な改変は、(a)例えば、シートまたはらせん状の立体配座のような、置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における当該分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩高さの維持に対する作用が著しく異なる置換を選択することによって達成される。天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて以下の群に分けられる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性の親水性:cys、ser、thr、asn、gln;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly、pro;および
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
非保存的置換は、これらのクラスの中の1つのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することを伴う。
別の実施形態では、改変のために選択される部位は、ファージディスプレイ(上記を参照のこと)を用いて親和性成熟される。
アミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当該分野で公知の種々の方法によって調製される。これらの方法としては、親抗体の先に調製された変異体または非変異バージョンの、オリゴヌクレオチド媒介性(または部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発およびカセット突然変異誘発が挙げられるが、これらに限定されない。変異体を作製するための好ましい方法は、部位特異的突然変異誘発である(例えば、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488を参照のこと)。
ある特定の実施形態において、抗体変異体は、単一の超可変領域残基だけが置換されている。他の実施形態では、親抗体の超可変領域残基の2つ以上が、置換され、例えば、約2〜約10個の超可変領域が置換される。
通常、生物学的特性が改善された抗体変異体は、親抗体の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインのいずれかのアミノ酸配列と、少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、最も好ましくは、少なくとも95%のアミノ酸配列の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を有する。この配列に関する同一性または類似性は、配列をアラインメントし、必要であれば、最大パーセント配列同一性を達成するようにギャップを導入した後に、親抗体残基と、同一(すなわち、同じ残基)または類似(すなわち、共通の側鎖特性に基づいた同じ群由来のアミノ酸残基、上記を参照のこと)である、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと本明細書中で定義される。可変ドメインの外側の抗体配列へのN末端、C末端または内部の伸長、欠失または挿入は、配列の同一性または類似性に影響を及ぼすと解釈されてはならない。
抗体変異体を作製した後、その分子の生物学的活性を親抗体と比べて測定する。上で述べたように、これは、抗体の結合親和性および/または他の生物学的活性の測定を包含し得る。本発明の好ましい実施形態において、抗体変異体のパネルを調製し、NRP1またはそのフラグメントなどの抗原に対する結合親和性についてスクリーニングする。この最初のスクリーニングから選択される抗体変異体の1つ以上を、必要に応じて1つ以上のさらなる生物学的活性アッセイに供することにより、結合親和性が増大した抗体変異体が、例えば、前臨床試験に対して実際に有用であることを確認する。
そのように選択された抗体変異体は、しばしばその抗体の意図される用途に応じて、さらなる改変に供され得る。そのような改変は、アミノ酸配列のさらなる変更、異種ポリペプチドへの融合、および/または以下で詳述するものなどの共有結合性の改変を包含し得る。アミノ酸配列の変更に関して、例示的な改変は、上で詳述した。例えば、抗体変異体の適切な立体配座の維持に関与しない任意のシステイン残基が、一般にセリンで置換されることにより、その分子の酸化安定性が改善され得、そして異常な架橋が妨害され得る。逆に、システイン結合を抗体に付加することにより、その安定性を改善してもよい(特に、その抗体が、Fvフラグメントなどの抗体フラグメントである場合)。別のタイプのアミノ酸変異体は、変更されたグリコシル化パターンを有する。これは、抗体内に見られる1つ以上の炭水化物部分を欠失させること、および/またはその抗体に存在しない1つ以上のグリコシル化部位を付加することによって、達成され得る。抗体のグリコシル化は、代表的には、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合のことを指す。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−トレオニン(Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)が、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合に対する認識配列である。したがって、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在することによって、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合型グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸(最も通常ではセリンまたはトレオニンであるが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンも使用され得る)への糖のN−アセチルガラクトサミン(aceylgalactosamine)、ガラクトースまたはキシロースのうちの1つの結合のことを指す。抗体へのグリコシル化部位の付加は、その抗体が上記のトリペプチド配列のうちの1つ以上を含むように、アミノ酸配列を変更することによって都合よく達成される(N結合型グリコシル化部位の場合)。もとの抗体の配列に対する1つ以上のセリンまたはトレオニン残基の付加またはそれらによる置換によっても変更が行われ得る(O結合型グリコシル化部位の場合)。
ベクター、宿主細胞および組換え法
本発明の抗NRP抗体は、容易に利用可能な手法および容易に入手可能な材料を用いて、組換え的に作製され得る。
抗Nrp抗体を組換え作製する場合、それをコードする核酸を単離し、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現に向けて、複製可能なベクターに挿入する。本抗体をコードするDNAは、容易に単離されるか、または従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードするDNAに特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)合成される。多くのベクターが利用可能である。一般に、ベクター成分としては、以下のもの:シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーターおよび転写終結配列の1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
(i)シグナル配列成分
本発明の抗体は、直接、組換え的に作製され得るだけでなく、好ましくは、シグナル配列、または成熟タンパク質もしくは成熟ポリペプチドのN末端において特異的な切断部位を有する他のポリペプチドである異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても、組換え的に作製され得る。選択される異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識され、プロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。天然抗体のシグナル配列を認識せず、プロセシングしない原核生物宿主細胞の場合、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppまたは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物のシグナル配列によって置換される。酵母分泌の場合、天然シグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(SaccharomycesおよびKluyveromycesのα因子リーダーを含む)もしくは酸ホスファターゼリーダー、C.albicansグルコアミラーゼリーダー、またはWO90/13646に記載されているシグナルによって置換され得る。哺乳動物細胞での発現では、哺乳動物のシグナル配列ならびにウイルスの分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。
そのような前駆領域に対するDNAを、本抗体をコードするDNAに読み枠で連結する。
(ii)複製起点成分
発現ベクターとクローニングベクターとの両方が、1つ以上の選択された宿主細胞においてそのベクターが複製されることを可能にする核酸配列を含む。一般に、クローニングベクターでは、この配列は、そのベクターが宿主染色体DNAとは独立して複製することを可能にする配列であり、その配列としては、複製開始点配列または自律複製配列が挙げられる。そのような配列は、種々の細菌、酵母およびウイルスに対して十分に知られている。プラスミドpBR322由来の複製起点が、ほとんどのグラム陰性菌に適しており、2μプラスミド起点は、酵母に適しており、様々なウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)は、哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般に、哺乳動物の発現ベクターでは、複製起点成分は必要ない(SV40起点は、初期プロモーターを含むという理由だけで、代表的に使用され得る)。
(iii)選択遺伝子成分
発現ベクターおよびクローニングベクターは、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含み得る。代表的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他のトキシン、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートまたはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質、(b)栄養要求性欠乏を補うタンパク質、または(c)複合培地から利用可能でない重大な栄養分を供給するタンパク質をコードする(例えば、Bacilliに対するD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子)。
選択スキームの1つの例では、宿主細胞の成長を停止する薬物を利用する。異種遺伝子で首尾よく形質転換された細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を生成するので、選択レジメンを生き残る。そのような優性選択の例では、薬物のネオマイシン、ミコフェノール酸およびハイグロマイシンを使用する。
哺乳動物細胞に適した選択マーカーの別の例は、抗体核酸を取り込む細胞成分の同定を可能にするもの(例えば、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン−Iおよび−II、好ましくは、霊長類のメタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなど)である。
例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞は、まず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含む培養液中で形質転換体のすべてを培養することによって同定される。野生型DHFRが使用されるときの適切な宿主細胞は、DHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である。
あるいは、抗体、野生型DHFRタンパク質および別の選択マーカー(例えば、アミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH))をコードするDNA配列で形質転換されたか、または同時形質転換された宿主細胞(特に、内因性DHFRを含む野生型宿主)が、選択マーカーに対する選択物質(例えば、アミノグリコシドの抗生物質、例えば、カナマイシン、ネオマイシンまたはG418)を含む培地中での細胞成長によって選択され得る。米国特許第4,965,199号を参照のこと。
酵母における使用に適した選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7中に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcombら(1979)Nature 282:39)。trp1遺伝子は、トリプトファン中で成長する能力を欠いた酵母の変異株、例えば、ATCC No.44076またはPEP4−1に、選択マーカーを提供する。Jones(1977)Genetics 85:12。次いで、酵母宿主細胞ゲノム内のtrp1の破壊が存在することにより、トリプトファンの非存在下における成長による形質転換の検出に対して有効な環境が提供される。同様に、Leu2欠損酵母株(ATCC20,622または38,626)は、Leu2遺伝子を有する公知のプラスミドによって補完される。
さらに、1.6μmの環状プラスミドpKD1から得られるベクターは、Kluyveromyces酵母の形質転換に使用され得る。あるいは、組換え子ウシキモシンの大規模生産用の発現系が、K.lactisに対して報告された。Van den Berg(1990)Bio/Technology 8:135。Kluyveromycesの工業用菌株による成熟組換えヒト血清アルブミンの分泌のための、安定な多コピー発現ベクターもまた開示されている。Fleerら(1991)Bio/Technology 9:968−975。
(iv)プロモーター成分
発現ベクターおよびクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、抗体核酸に作動可能に連結されている、プロモーターを含む。原核生物の宿主とともに使用するために適したプロモーターとしては、phoAプロモーター、β−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。しかしながら、他の公知の細菌プロモーターも適している。細菌系において使用するためのプロモーターは、当該抗体をコードするDNAに作動可能に連結されたシャイン・ダルガノ(S.D.)配列も含む。
真核生物に対するプロモーター配列は、公知である。実質的にすべての真核生物の遺伝子が、転写が開始される部位から約25〜30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70〜80塩基上流に見られる別の配列は、CNCAAT領域(Nは、任意のヌクレオチドであり得る)である。ほとんどの真核生物の遺伝子の3’末端に、コード配列の3’末端にポリAテイルを付加するためのシグナルであり得るAATAAA配列が存在する。これらの配列のすべてが、真核生物の発現ベクター内に適切に挿入される。
酵母宿主とともに使用するための適当なプロモーター(promoting)配列の例としては、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素(例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホ−フルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼおよびグルコキナーゼ)に対するプロモーターが挙げられる。
成長条件によって調節される転写のさらなる利点を有する誘導性プロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ならびにマルトースおよびガラクトースの利用に関与する酵素に対するプロモーター領域である。酵母の発現における使用に適したベクターおよびプロモーターは、さらにEP73,657に記載されている。酵母エンハンサーもまた、酵母プロモーターとともに有利に使用される。
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの抗体転写は、例えば、ウイルス(例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、および最も好ましくは、サルウイルス40(SV40))のゲノムから得られるプロモーター、異種の哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターから得られるプロモーターによって、調節されるが、ただし、そのようなプロモーターは、宿主細胞系と適合している。
SV40ウイルスの初期プロモーターおよび後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含むSV40制限フラグメントとして都合よく得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限フラグメントとして都合よく得られる。ベクターとしてウシパピローマウイルスを用いた哺乳動物宿主におけるDNAの発現用の系は、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の改変は、米国特許第4,601,978号に記載されている。単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの支配下の、マウス細胞における、ヒトβ−インターフェロンcDNAの発現について、Reyesら(1982)Nature 297:598−601もまた参照のこと。あるいは、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列が、プロモーターとして使用され得る。
(v)エンハンサーエレメント成分
本発明の抗体をコードするDNAの高等真核生物による転写は、しばしば、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増加する。哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテインおよびインスリン)由来の多くのエンハンサー配列が、現在知られている。しかしながら、代表的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが、使用される。例としては、複製起点の後ろ側(bp100〜270)におけるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後ろ側におけるポリオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物プロモーターの活性化のためのエレメントの増強について、Yaniv(1982)Nature 297:17−18もまた参照のこと。エンハンサーは、抗体のコード配列に対する5’または3’位においてベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくは、プロモーターに対して5’部位に位置する。
(vi)転写終結成分
真核生物宿主細胞(酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞、ヒト細胞または他の多細胞生物由来の有核細胞)において使用される発現ベクターは、転写の終結およびmRNAの安定化に必要な配列も含む。そのような配列は、通常、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの非翻訳領域の5’から、たまに3’から、入手可能である。これらの領域は、当該抗体をコードするmRNAの翻訳されない部分に、ポリアデニル化されたフラグメントとして転写されるヌクレオチドセグメントを含む。有用な転写終結成分の1つは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026およびそこに開示されている発現ベクターを参照のこと。
(vii)宿主細胞の選択および形質転換
本明細書中のベクター内のDNAのクローニングまたは発現に適した宿主細胞は、上に記載した原核生物、酵母または高等真核生物の細胞である。この目的で適当な原核生物としては、真正細菌、例えば、グラム陰性生物またはグラム陽性生物、例えば、腸内細菌科(例えば、Escherichia、例えば、E.coli、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えば、Salmonella typhimurium、Serratia、例えば、Serratia marcescansおよびShigella)、ならびにBacilli(例えば、B.subtilisおよびB.licheniformis(例えば、1989年4月12日公開のDD266,710に開示されているB.licheniformis41P))、Pseudomonas(例えば、P.aeruginosa)およびStreptomycesが挙げられる。好ましいE.coliクローニング宿主の1つは、E.coli294(ATCC31,446)であるが、他の菌株(例えば、E.coli B、E.coli X1776(ATCC31,537)およびE.coli W3110(ATCC27,325))も適当である。これらの例は、限定ではなく、例示である。
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核生物の微生物も、抗体をコードするベクターに適したクローニングまたは発現の宿主である。Saccharomyces cerevisiae、すなわち、通常のパン酵母は、下等真核生物宿主微生物の中で最もよく使用される。しかしながら、いくつかの他の属、種および菌株(例えば、Schizosaccharomyces pombe;Kluyveromyces宿主(例えば、K.lactis、K.fragilis(ATCC12,424)、K.bulgaricus(ATCC16,045)、K.wickeramii(ATCC24,178)、K.waltii(ATCC56,500)、K.drosophilarum(ATCC36,906)、K.thermotoleransおよびK.marxianus);yarrowia(EP402,226);Pichia pastoris(EP183,070);Candida;Trichoderma reesia(EP244,234);Neurospora crassa;Schwanniomyces occidentalisなどのSchwanniomyces;および糸状菌(例えば、Neurospora、Penicillium、TolypocladiumおよびAspergillus宿主(例えば、A.nidulansおよびA.niger))が、市販されており、本明細書中において有用である。
グリコシル化される抗体の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞および昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株および変種、ならびに宿主(例えば、Spodoptera frugiperda(毛虫)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)およびBombyx mori)からの、対応する許容される昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクションのための種々のウイルス株(例えば、Autographa californica NPVのL−1変種およびBombyx mori NPVのBm−5株)は、公的に入手可能であり、そのようなウイルスは、本発明に従って本明細書中のウイルスとして、特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために使用され得る。ワタ、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマトおよびタバコの植物細胞培養物もまた、宿主として利用することができる。
しかしながら、脊椎動物細胞に最も関心が寄せられており、培養(組織培養)における脊椎動物細胞の増殖が、日常的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されるサル腎臓CV1株(COS−7、ATCC CRL1651);ヒト胎児腎株(懸濁培養物中での成長のためにサブクローン化される293または293細胞、Grahamら(1977)J.Gen Virol.36:59);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaubら(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather(1980)Biol.Reprod.23:243−251);サル腎臓細胞(CVl ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファローラット(buffalo rat)肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB8065);マウス乳腺腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら(1982)Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68);MRC5細胞;FS4細胞;およびヒトヘパトーマ株(HepG2)である。
宿主細胞は、抗体作製のための上記の発現ベクターまたはクローニングベクターを用いて形質転換され、そして、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切であるように改変された従来の栄養培地中で培養される。
(viii)宿主細胞の培養
本発明の抗体を作製するために使用される宿主細胞は、種々の培地中で培養され得る。市販の培地(例えば、Ham’s F10(Sigma)、基礎培地((MEM)、(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)およびダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma))が、宿主細胞の培養に適している。さらに、Hamら(1979)Meth.Enz.58:44、Barnesら(1980)Anal.Biochem.102:255、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;または同第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;または米国再発行特許第(U.S.Patent Re.)30,985号に記載されている培地のいずれかも、宿主細胞用の培養液として使用してもよい。必要に応じて、これらのいずれの培地にも、ホルモンおよび/もしくは他の成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリンまたは上皮成長因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN(商標)薬物)、微量元素(最終濃度がマイクロモルの範囲で通常存在する無機化合物として定義される)ならびにグルコースまたは等価なエネルギー源が補充され得る。また、他の任意の必要な補充物が、当業者に公知であり得る適切な濃度で含められてもよい。温度、pHなどの培養条件は、発現用に選択された宿主細胞とともにこれまで使用されてきたものであり、当業者には明らかであろう。
(ix)抗体精製
組換えの手法を用いる場合、抗体は、細胞内か、細胞周辺腔内に産生され得るか、または培地中に直接分泌され得る。抗体が細胞内に産生される場合、第1工程として、宿主細胞または溶解されたフラグメントのいずれかである粒状の破片を、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去する。Carterら(1992)Bio/Technology 10:163−167には、E.coliの細胞周辺腔に分泌された抗体を単離するための手順が記載されている。簡潔には、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTAおよびフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下において、約30分間にわたって細胞ペーストを溶かす。細胞残屑を遠心分離によって除去し得る。抗体が培地中に分泌される場合、一般に、まずそのような発現系からの上清を、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを用いて濃縮する。タンパク質分解を阻害するために、PMSFなどのプロテアーゼインヒビタが、前述の工程のいずれかにおいて含められていてもよく、外来性の夾雑物の増殖を妨害するために抗生物質が含められていてもよい。
上記細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析およびアフィニティークロマトグラフィを用いて精製され得、アフィニティークロマトグラフィが、好ましい精製手法である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、本抗体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに左右される。プロテインAを使用することにより、ヒトγ1、γ2またはγ4重鎖に基づいて抗体を精製することができる(Lindmarkら(1983)J.Immunol.Meth.62:1−13)。プロテインGは、すべてのマウスアイソタイプおよびヒトγ3に対して推奨されている(Gussら(1986)EMBO J.5:15671575)。親和性リガンドが付着しているマトリックスは、ほとんどの場合、アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。コントロールドポアガラス(controlled pore glass)またはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの力学的に安定なマトリックスは、アガロースで達成され得る流速および処理時間よりも速い流速および短い処理時間を可能にする。抗体が、C3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,NJ)が、精製に有用である。タンパク質精製のための他の手法(例えば、イオン交換カラムにおける分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカにおけるクロマトグラフィ、ヘパリンSEPHAROSE(商標)におけるクロマトグラフィ、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)におけるクロマトグラフィ、クロマトフォーカシング、SDS−PAGEおよび硫安塩析)もまた、回収される抗体に応じて利用可能である。
任意の予備的な精製工程の後、目的の抗体および夾雑物を含む混合物を約2.5〜4.5のpHの溶出緩衝液を用いて、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィに供してもよく、それは、好ましくは低塩濃度(例えば、約0〜0.25Mの塩)で行われ得る。
薬学的処方物
本抗体の治療的な処方物は、所望の純度を有する本抗体と、任意の生理的に許容可能なキャリア、賦形剤または安定剤とを混合することによって、凍結乾燥された処方物または水溶液の形態で貯蔵用に調製される(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))。許容可能なキャリア、賦形剤または安定剤は、使用される投薬量および濃度においてレシピエントにとって無毒性であり、それらとしては、緩衝液(例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸);アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシン);グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む、単糖類、二糖類および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;糖(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール);ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤(例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG))が挙げられる。
本明細書中の処方物は、必要に応じて、処置される特定の徴候に対する2つ以上の活性な化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない補完的な活性を有するものも含み得る。例えば、免疫抑制剤をさらに提供することが望ましい場合がある。そのような分子は、意図される目的に有効な量で組み合わされて適切に存在する。
上記活性成分は、例えば、コアセルベーションの手法または界面重合によって調製されたマイクロカプセル(例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタシレート)マイクロカプセル)中、コロイド性薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中、またはマクロエマルジョン中に封入されてもよい。そのような手法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
インビボ投与のために使用される処方物は、滅菌されていなければならない。これは、滅菌された濾過膜による濾過によって容易に達成される。
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の適当な例としては、本抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、そのマトリックスは、成形された物品の形態、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルである。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタメートとの共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸共重合体、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーは、100日を超えて分子を放出することができるが、ある特定のヒドロゲルは、それより短い期間にわたってタンパク質を放出する。被包された抗体が、長時間にわたって体内に残存するとき、その抗体は、37℃の水分に曝露した結果として、変性し得るか、または凝集し得、それにより、生物学的活性が低下し、免疫原性が変化する可能性がある。関与するメカニズムに応じて、安定化のために、合理的なストラテジーが工夫され得る。例えば、凝集メカニズムが、チオ−ジスルフィド交換を介した分子間のS−S結合形成であると見出される場合、安定化は、スルフヒドリル残基の改変、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の調節、適切な添加物の使用、および特定のポリマーマトリックス組成物の開発によって達成され得る。
治療的な使用
本発明の抗体は、哺乳動物を処置するために使用され得ると企図される。1つの実施形態において、本抗体は、例えば、前臨床データを得る目的で、非ヒト哺乳動物に投与される。処置される例示的な非ヒト哺乳動物としては、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、げっ歯類、および前臨床試験が行われる他の哺乳動物が挙げられる。そのような哺乳動物は、本抗体で処置される疾患に対する確立された動物モデルであり得るか、または目的の抗体の毒性を研究するために使用され得る。これらの実施形態の各々において、用量漸増研究が、その哺乳動物において行われ得る。その抗体が、抗NRP1抗体である場合、その抗体は、例えば、固形腫瘍モデルにおいて宿主のげっ歯類に投与され得る。
さらに、または代替として、本抗体は、ヒト、例えば、本抗体の投与の恩恵を受け得るある疾患または障害に罹患している患者を処置するために使用される。
本発明は、腫瘍成長を支える栄養分を供給するために必要な腫瘍の血管の発生を阻害することを目的としている新規の癌処置ストラテジーである、抗新脈管形成性の癌の治療を包含する。新脈管形成が、原発腫瘍の成長と転移との両方に関与するので、本発明によって提供される抗新脈管形成処置は、原発部位において腫瘍の腫瘍性の成長を阻害することができ、ならびに続発部位において腫瘍の転移を妨害することができ、ゆえに、他の治療によるその腫瘍の攻撃を可能にする。本明細書中で処置される癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫および白血病が挙げられるがこれらに限定されない。そのような癌のより詳細な例としては、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃(gastric)癌または胃(stomach)癌(消化器癌を含む)、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、直腸結腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、およびに様々なタイプの頭頸部癌、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ性白血病(ALL);ヘアリーセル白血病;慢性骨髄芽球白血病;および移植後リンパ球増殖障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連するもの)およびメイグス症候群に関連する異常な脈管増殖が挙げられる。より詳細には、本発明の抗体によって処置されやすい癌としては、乳癌、直腸結腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝臓癌、膵癌、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌腫、頭頸部癌、メラノーマ、卵巣癌、中皮腫および多発性骨髄腫が挙げられる。
本発明の抗体が、腫瘍などの様々な疾患を処置するために使用されるとき、本発明の抗体は、同じ疾患または類似の疾患に適した他の治療薬と併用され得ることが企図される。本発明の抗体が、癌を処置するために使用されるとき、本発明の抗体は、従来の癌治療(例えば、外科術、放射線治療、化学療法またはそれらの組み合わせ)と組み合わせて使用され得る。
ある特定の局面において、本発明の抗体と併用される癌治療に有用な他の治療薬としては、他の抗新脈管形成剤が挙げられる。Carmeliet and Jain(2000)によって列挙されているものをはじめとした多くの抗新脈管形成剤が同定されており、当該分野で公知である。
1つの局面において、本発明の抗体は、VEGFアンタゴニストまたはVEGFレセプターアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、VEGFバリアント、可溶性VEGFレセプターフラグメント、VEGFまたはVEGFRを阻止することができるアプタマー、中和抗VEGFR抗体、VEGFRチロシンキナーゼのインヒビタおよびそれらの任意の組み合わせ)と組み合わせて使用される。あるいは、またはさらに、2つ以上の抗NRP1抗体が、患者に共投与され得る。より好ましい実施形態では、相加効果または相乗効果をもたらすために、本発明の抗NRP1抗体または抗NRP抗体が、抗VEGF抗体と組み合わせて使用される。好ましい抗VEGF抗体としては、抗hVEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合する抗体が挙げられる。より好ましくは、抗VEGF抗体は、ベバシズマブまたはラニビズマブである。
いくつかの他の局面において、本発明の抗体と併用される腫瘍治療に有用な他の治療薬としては、腫瘍成長に関与する他の因子のアンタゴニスト(例えば、EGFR、ErbB2(Her2としても知られる)、ErbB3、ErbB4またはTNF)が挙げられる。好ましくは、本発明の抗NRP1抗体は、1つ以上のチロシンキナーゼレセプター(例えば、VEGFレセプター、FGFレセプター、EGFレセプターおよびPDGFレセプター)を標的化する小分子レセプターチロシンキナーゼインヒビタ(RTKI)と組み合わせて使用され得る。多くの治療的な小分子であるRTKIが、当該分野で公知であり、それらとしては、バタラニブ(PTK787)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、OSI−7904、ZD6474(ZACTIMA(登録商標))、ZD6126(ANG453)、ZD1839、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、セマキサニブ(SU5416)、AMG706、AG013736、イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、MLN−518、CEP−701、PKC−412、ラパチニブ(GSK572016)、VELCADE(登録商標)、AZD2171、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、XL880およびCHIR−265が挙げられるが、これらに限定されない。
単独か、または第2の治療薬(例えば、抗VEGF抗体)と組み合わされた、本発明の抗Nrp抗体は、さらに1つ以上の化学療法剤と組み合わされて使用され得る。種々の化学療法剤が、本発明の併用処置方法において使用され得る。企図される化学療法剤の例示的かつ非限定的なリストは、本明細書中の「定義」のもとに提供されている。
抗Nrp抗体が、第2の治療薬と共投与されるとき、その第2の治療薬が初めに投与された後に抗Nrp抗体が投与され得る。しかしながら、同時の投与または抗Nrp抗体が初めに投与されるのも企図される。第2の治療薬に対する適当な投薬量は、現在使用されている量であり、その薬剤と抗Nrp抗体との組み合わされる作用(相乗作用)に起因して、減少させてもよい。
疾患が予防または処置される場合、抗体の適切な投薬量は、処置される疾患のタイプ、その疾患の重症度および経過(本抗体が予防的な目的で投与されるのか、治療的な目的で投与されるのかに関係なく)、以前の治療、患者の病歴および本抗体に対する応答、ならびに主治医の裁量に左右される。本抗体は、1回、または一連の処置にわたって、患者に適切に投与される。
疾患のタイプおよび重症度に応じて、例えば、1回以上の別個の投与によるか、持続注入によるかに関係なく、抗体の約1μg/kg〜50mg/kg(例えば、0.1〜20mg/kg)が、患者に投与するための最初の候補投薬量である。代表的な1日投薬量は、上で述べた因子に応じて、約1μg/kg〜約100mg/kgの範囲またはそれ以上であり得る。数日またはそれ以上にわたる反復投与の場合、処置は、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が生じるまで継続される。しかしながら、他の投与レジメンも有用であり得る。好ましい局面では、本発明の抗体は、約5mg/kg〜約15mg/kgの範囲の用量で2〜3週間ごとに投与される。より好ましくは、そのような投薬レジメンは、転移性直腸結腸癌を処置するための一次治療としての化学療法レジメンと組み合わせて用いられる。いくつかの局面では、化学療法レジメンは、従来の高用量の間欠投与を含む。他のいくつかの局面では、化学療法剤は、計画的な中断を行わずに、より少ない用量およびより頻繁な投薬を用いて投与される(「メトロノミック(metronomic)化学療法」)。本発明の治療の進捗は、従来の手法およびアッセイによって容易にモニターされる。
本抗体組成物は、良好な医療行為と一致する様式で、製剤化され、調薬され、そして投与される。この文脈において考慮される因子としては、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個別の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、および開業医に公知の他の因子が挙げられる。投与される抗体の「治療有効量」は、そのような考慮すべき事項によって左右され、疾患または障害を予防するか、回復させるか、または処置するのに必要な最小量である。本抗体は、対象の障害を予防するか、または処置するために現在使用されている1つ以上の薬剤とともに製剤化される必要はないが、必要に応じて、そのように製剤化される。そのような他の薬剤の有効量は、その製剤中に存在する抗体の量、障害または処置のタイプ、および上で考察した他の因子に依存する。これらは、通常、同じ投薬量かつ、本明細書中の前で使用されたような投与経路を用いて、またはこれまで使用されていた投薬量の約1〜99%の投薬量で使用される。一般に、疾患または障害の軽減または処置は、その疾患または障害に関連する1つ以上の症状または医学上の問題の減少を含む。癌の場合、治療有効量の薬物は、以下のもの:癌細胞の数の減少;腫瘍サイズの縮小;末梢器官への癌細胞浸潤の阻害(すなわち、ある程度の減少および/または停止);腫瘍転移の阻害;腫瘍成長のある程度の阻害;および/または、癌に関連する症状の1つ以上のある程度の緩和のうちの1つまたはそれらの組み合わせを達成することができる。薬物が、成長を妨害し得、そして/または既存の癌細胞を殺滅し得る限り、その薬物は、細胞分裂抑制性および/または細胞傷害性であり得る。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、被験体または哺乳動物において上記疾患または障害の発生または再発を予防するために使用され得る。
非治療的な使用
本発明の抗体は、親和性の精製物質として使用され得る。このプロセスでは、当該分野で周知の方法を用いて、本抗体をSephadex樹脂または濾紙のような固相上に固定化する。固定化した抗体を、精製される抗原を含むサンプルと接触させ、その後、その支持体を、固定化された抗体に結合している精製される抗原以外の、サンプル中の実質的にすべての材料を除去する適当な溶媒で洗浄する。最後に、その支持体を、本抗体から抗原を放出するグリシン緩衝液,pH5.0などの別の適当な溶媒で洗浄する。
本発明の抗体は、例えば、特定の細胞、組織または血清における目的の抗原の発現を検出するための、診断アッセイにおいても有用であり得る。
診断的な適用の場合、本抗体は、代表的には、検出可能な部分で標識される。一般に、以下のカテゴリーに分類され得る多数の標識が利用可能である:
(a)放射性同位体(例えば、35S、14C、123I、Hおよび131I)。本抗体は、例えば、Current Protocols in Immunology,Volumes 1および2,Coligenら(1991)Ed.Wiley−Interscience,New York,New York,Pubsに記載されている手法を用いて放射性同位体で標識され得、放射能は、シンチレーション測定法を用いて測定され得る。
(b)蛍光標識(例えば、希土類キレート(ユウロピウムキレート)またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリンならびにテキサスレッド)が利用可能である。蛍光標識は、例えば、Current Protocols in Immunology,前出に開示されている手法を用いて、本抗体に結合体化され得る。蛍光は、蛍光光度計を使用して定量化され得る。
(c)様々な酵素−基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号は、これらのうちのいくつかの概説を提供している。上記酵素は、一般に、様々な手法を用いて測定され得る、色素生産性基質の化学変換を触媒する。例えば、上記酵素は、分光光度的に測定され得る、基質の色の変化を触媒し得る。あるいは、上記酵素は、基質の蛍光または化学発光を変化させ得る。蛍光の変化を定量化するための手法は、上に記載した。化学発光の基質は、化学反応によって電子的に励起されて、次いで、(例えば、ケミルミノメーターを使用して)測定され得るか、または蛍光性のアクセプターにエネルギーを供与する、光を発し得る。酵素的な標識の例としては、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌のルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖類酸化酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(例えば、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。抗体に酵素を結合体化するための手法は、O’Sullivanら(1981)Methods for the Preparation of Enzyme−Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay,Methods in Enzym.(ed J.Langone & H.Van Vunakis),Academic press,New York 73:147−166に記載されている。
酵素−基質の組み合わせの例としては、例えば:
(i)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)と、基質としての水素ペルオキシダーゼ(ここで、水素ペルオキシダーゼは、色素前駆体(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)または3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する);
(ii)アルカリホスファターゼ(AP)と、色素生産性基質としてのパラ−ニトロフェニルホスフェート;および
(iii)β−D−ガラクトシダーゼ(β−D−Gal)と、色素生産性基質(例えば、p−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質の4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシダーゼ
が挙げられる。
多数の他の酵素−基質の組み合わせもまた、当業者にとって利用可能である。これらの一般的な概説については、米国特許第4,275,149号および同第4,318,980号を参照のこと。
時折、標識は、間接的に本抗体と結合体化される。当業者は、これを達成するための様々な手法を承知している。例えば、本抗体は、ビオチンと結合体化され得、そして上で述べた3つの広範なカテゴリーのうちのいずれかが、アビジンと結合体化され得るか、またはその逆を行う。ビオチンは、アビジンに選択的に結合するので、その標識は、この間接的な様式で本抗体と結合体化され得る。あるいは、標識と本抗体との間接的な結合体化を達成するために、本抗体を小型のハプテン(例えば、ジゴキシン)と結合体化し、そして上で述べた様々なタイプの標識のうちの1つを抗ハプテン抗体(例えば、抗ジゴキシン抗体)と結合体化する。このようにして、その標識と本抗体との間接的な結合体化が達成され得る。
本発明の別の実施形態では、本抗体は、標識される必要がなく、その存在は、その抗体に結合する標識された抗体を用いて検出され得る。
本発明の抗体は、任意の公知のアッセイ方法(例えば、競合結合アッセイ、直接および間接サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイ)において使用され得る。Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147−158(CRC Press,Inc.1987)。
競合結合アッセイは、標識された標準物質が、被験サンプル検体(test sample analyze)と、限られた量の抗体との結合について競合する能力に依存する。被験サンプル中の抗原の量は、その抗体に結合される標準物質の量に反比例する。結合されている標準物質の量の測定を容易にするために、その抗体に結合している標準物質および検体(analyze)が、未結合のままの標準物質および検体から都合よく分離され得るように、その抗体を、通常、競合の前または後に不溶化する。
サンドイッチアッセイは、2つの抗体(各々が、検出されるタンパク質の異なる免疫原性部分、すなわちエピトープに結合することができる)の使用を含む。サンドイッチアッセイでは、被験サンプル検体が、固体支持体上に固定化されている第1抗体に結合し、その後、第2抗体が、その検体に結合するので、不溶性の3部の複合体が形成される。例えば、米国特許第4,376,110号を参照のこと。その第2抗体は、それ自体が検出可能な部分で標識されていてもよいし(直接サンドイッチアッセイ)、検出可能な部分で標識されている抗免疫グロブリン抗体を使用して測定されてもよい(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、1つのタイプのサンドイッチアッセイは、ELISAアッセイであり、この場合、検出可能な部分は、酵素である。
免疫組織化学の場合、腫瘍サンプルは、新鮮であり得るか、もしくは凍結されたものであり得るか、またはパラフィン内に包埋され、例えば、ホルマリンなどの保存剤で固定されているものであり得る。
本抗体はまた、インビボにおける診断アッセイにも使用され得る。一般に、本抗体は、放射性核種(例えば、111In、99Tc、14C、131I、125I、H、32Pまたは35S)または免疫シンチグラフィ(immunoscintiography)を用いて腫瘍の位置をつきとめ得る色素を用いて標識される。
1つの実施形態において、生物学的サンプル(例えば、組織、血液、血清、髄液)または調製された生物学的サンプル中のNRP1を検出する方法は、本発明の抗体を上記サンプルと接触させる工程、およびそのサンプル中のNRP1に結合した抗NRP1抗体を観察するか、またはそのサンプル中のNRP1に結合した抗NRP1抗体の量を測定する工程を包含し得る。別の実施形態では、被験体内のNRP1を検出する方法は、本発明の抗体を被験体に投与する工程、および被験体内のNRP1に結合した抗NRP1抗体を観察するか、または被験体(例えば、ヒト、マウス、ウサギ、ラットなど)内のNRP1に結合した抗NRP1抗体の量を測定する工程を包含する。
診断キット
便宜上、本発明の抗体は、キット、すなわち、診断アッセイを行うための指示書と所定の量の試薬とが組み合わされて包装されたものとして、提供され得る。本抗体が、酵素で標識されている場合、キットは、その酵素に必要な基質およびコファクター(例えば、検出可能な発色団またはフルオロフォアを提供する基質前駆体)を備える。さらに、安定剤、緩衝液(例えば、ブロッキング緩衝液または溶解緩衝液)などの他の添加物も備え得る。様々な試薬の相対量は、アッセイの感度を実質的に最適化する試薬溶液中の濃度を提供するために、大きく変化し得る。特に、試薬は、乾燥粉末として、通常は凍結乾燥されたものとして、提供され得、それは、溶解したときに適切な濃度を有する試薬溶液をもたらす賦形剤を含む。
製品
本発明の別の実施形態では、上に記載した障害の処置に有用な材料を備えた製品が提供される。その製品は、容器およびラベルを備える。適当な容器としては、例えば、ビン、バイアル、注射器および試験管が挙げられる。その容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成されたものであり得る。その容器は、上記状態を処置するために有効な組成物を保持しており、滅菌された接続口を有し得る(例えば、その容器は、皮下注射針で突き刺すことのできる栓を有する静脈内溶液用のバッグまたはバイアルであり得る)。上記組成物中の活性な薬剤は、本抗体である。上記容器上のラベルまたは上記容器に関連付けられているラベルは、その組成物が、最適な状態を処置するために使用されることを示している。本製品は、薬学的に許容可能な緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液)が入った第2の容器をさらに備え得る。本製品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、注射器および使用に関する指示を含む添付文書をはじめとした、商業的およびユーザーの観点から望ましい他の材料をさらに備え得る。
以下の実施例は、本発明の実施を例示することだけが意図されており、限定する目的で提供されない。本明細書中に引用されるすべての特許および科学文献の開示の全体が、明確に参考として援用される。
実施例1
抗(ani−)Nrp1抗体および抗panNrp抗体の構築および機能
セマフォリンまたはVEGFのいずれかがNrp1に結合するのを選択的に阻止するファージ由来抗体を得るためのストラテジーは、Liangら、J Mol Biol 366,815−29(2007)およびPanら、Cancer Cell 11,53−67(2007)によって報告されている。これらのモノクローナル抗体は、いずれかのリガンドに対するNrp1媒介性応答を区別するツールとして、およびマウス腫瘍モデルにおいて治療薬としての能力を評価するツールとして、設計された。
簡潔には、VH/VL多様性を有する単一のコンセンサススキャフォールドにおいて構築されるヒト合成抗体ファージライブラリを設計した。この抗体ライブラリの設計および選択の詳細は、Liangら、前出に記載されており、2003年12月11日公開のWO03/102157(これらの開示の全体が、本明細書中で参考として援用される)にも見られる。このライブラリから、ヒトおよびマウスのNRP1に対する機能的なブロッキング抗体を得た。NRP1のb1b2ドメインにマッピングする抗体は、VEGFとNRP1との結合およびVEGF誘導性のHUVEC細胞遊走を阻止し得る。同定された抗体は、0.2nMの親和性でNrp1に結合するVEGFブロッキング抗体(クローンYW107.4.87;抗Nrp1)を含んだ(Liangら、前出;Panら、前出)。この抗体は、VEGFとNrp1との相互作用を阻止するが、Sema3Aの機能と拮抗しない。インビボにおいて、抗Nrp1は、マウス網膜において血管リモデリングを減少させるだけでなく、腫瘍成長を遅延させる抗VEGF治療と相加的に働く(Liangら、前出およびPanら、前出)。
同じアプローチに従い、単一のコンセンサスフレームワークにおいて構築されたヒト合成抗体ファージライブラリを用いて、Nrp1とNrp2との両方と、それぞれ0.21および0.15nMの親和性で交差反応する抗体(クローンYW68.11.26、抗panNrp)を得た(図S1)。YW68.11.26および関連のYW68.11の軽鎖可変ドメイン配列および重鎖可変ドメイン配列をそれぞれ図7および8に示す。抗panNrpIgG1抗体であるYW68.11およびYW68.11.26のFabフラグメントのアミノ酸配列をそれぞれ図9Aおよび9Bに示す。
抗Nrp1とは対照的に、抗panNrpは、VEGF165またはVEGF−Cの結合に影響を及ぼさない(データ示さず)。両方の抗体の、マウス後根神経節(DRG)由来の軸索成長円錐のSema3A媒介性の崩壊を阻害する能力の評価(図1)。Sema3Aの添加によって、DRG成長円錐によるアクチンプロセスの後退がもたらされる;この作用は、抗panNrpによって完全に拮抗されるが、抗Nrp1によって拮抗されない。
実施例2
ニューロピリン/抗体複合体の構造の研究
材料および方法
機能アッセイおよび抗体結合親和性
崩壊アッセイおよび抗Nrp抗体結合親和性の測定を以前に報告されているとおりに行った(He,Z and Tessier−Lavigne,M.,Cell 90,739−51(1997);Liangら、前出およびPanら、前出。
結晶学研究のためのタンパク質発現および精製
Nrp1−b1、Nrp1−b1b2およびNrp2−b1b2(ドメインの境界線については表S1を参照のこと)をpET15b(Novagen)にクローニングし、37℃(Nrp1−b1および−b1b2)または16℃(Nrp2−b1b2)において誘導した後、E.coliにおいて発現させた。ニューロピリンタイプbフラグメントのすべてを、リフォールディングプロトコルの必要のない可溶性タンパク質として発現させる。細胞を溶解した後、タンパク質を、50mM Tris(pH8.0)、300〜500mM NaClおよび20mMイミダゾール中のニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni−NTA)樹脂を用いて精製し、同じ緩衝液+250mMイミダゾールで溶出した。his−タグを、トロンビンを用いて除去し、サンプルを、25mM Tris(pH8.0)および150mM NaCl中で平衡化したSuperdex−75カラムを用いるゲル濾過クロマトグラフィでさらに精製した。
Hi5細胞からのNrp1−a2b1b2、Nrp2−a2b1b2、Nrp2−a1a2b1b2、および完全長Nrp2−ECD(表S1)の分泌を促進する組換えバキュロウイルスを作製した。Nrp2−a1a2b1b2および完全長Nrp2−ECDをNrp2天然分泌シグナルおよびC末端His−タグとともに、pENTR/D−TOPO(Invitrogen)にサブクローニングし、pDEST8(Invitrogen)に組み換えることにより、ウイルスバクミドを作製した。Nrp1−a2b1b2およびNrp2−a2b1b2をpAcGP67B(Clonetech)にクローニングした。感染後、培養液を回収し、50mM Tris(pH8.0)、5mM CaClおよび1mM NiClを補充した;細菌が発現するニューロピリン構築物について記載したように、Ni−NTAおよびゲル濾過クロマトグラフィを用いてタンパク質を精製した。
抗Nrp1(YW107.4.87)および抗panNrp(YW68.11.26)に対するFabフラグメントをE.coliにおいて発現させ、PBS中で平衡化されたプロテインGカラム上に捕捉し、0.58%酢酸で溶出した。タンパク質画分を20mM MES(pH5.5)中のイオン交換クロマトグラフィ(SP−セファロース)でさらに精製し、0〜250mM NaClの勾配を用いて溶出した。Fab/Nrp複合体を、代表的には1:1のモル比で混合し、25mM Tris−HCl(pH7.5)および200mM NaCl中で平衡化されたSuperdex−200カラムを用いてさらに精製した。結晶化に向けて、未結合のニューロピリンおよびNrp/Fab複合体サンプルのすべてを、表S1に詳述されているように濃縮した。
結晶化、構造決定および精密化
等容積のタンパク質+ウェル溶液を混合することによって、すべての結晶を19℃における蒸気拡散法によって得た(詳細については補表1を参照のこと)。凍結保護のために、通常、結晶を母液+20%グリセロールまたはエチレングリコールの溶液に移す(表S1)。Nrp1−b1/Fab複合体の結晶を10mM Hepes(pH7.2)、25%PEG1,500および10%エチレングリコールに移し;10mM Hepes(pH7.2)、25%PEG1,500および20%エチレングリコールに対して一晩脱水させ;液体窒素中で急速冷凍した。Advanced Light Source(ビームライン(beam−lines)5.0.1または5.0.2)またはStanford Synchrotron Radiation Laboratory(ビームライン9−2または11−1)においてデータセットを収集した。HKL Suite製のDenzoおよびScalepackを用いてデータを処理した(Otwinowski,Z & Minor,W.,Methods in Enzymology 276,307−326(1997)。細胞パラメータおよびデータの統計を表1に要約した。
すべての結晶構造を、Phaser(McCoyら、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 61,458−64(2005)を用いて分子置換によって解析した。各凝固因子ドメインに対する検索モデルとしてNrp1−b1結晶構造(pdbアクセッション番号lKEX)(Leeら、Structure 11,99−108(2003))を用いて、Nrp1−b1b2構造を解析した。Nrp1−b1b2構造の微細な座標は、Nrp2−b1b2構造のための探索プローブとして機能した。Nrp2 a1a2b1b2/抗panNrp−Fab複合体の単斜晶型を、Nrp2−b1b2構造、およびB20−4/VEGF複合体(pdbアクセッション番号2FJH)からの可変ドメイン(V/V)または定常ドメイン(CH1/C)のいずれかを含むFabフラグメントを用いて解析した。a2ドメインを、MASP−2由来のN末端のCUBドメインを用いる分子置換によって同定した;a1ドメインは、分子置換によって配置することができず、手動でその電子密度内に配置させた。Nrp1−b1/Fab複合体を、上に記載したNrp1−b1結晶構造およびB20−4Fabフラグメントを用いて解析した。残りのすべての構造を、Nrp2−a1a2b1b2/Fab複合体からのb1b2構造およびa2CUBドメインの微細な座標を用いて解析した。Coot(Emsley,P.& Cowtan,K.Coot,Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 60,2126−32(2004))を用いて原子模型を構築し、Refmac(Murshudovら、Acta Crystallographica D53,240−255(1997))を用いて精密化した。
Nrp1、Nrp2およびニューロピリン(Neurophilin)/Fab複合体の結晶化
2つの異なるストラテジーを用いて、構造研究用のタンパク質を生成した。タイプbドメインだけを含む小さいニューロピリンフラグメントは、E.coliにおいて発現されたが、大きいNrp構築物は、バキュロウイルス感染昆虫細胞からの分泌型タンパク質としての生成が必要だった。7つの構造の概要を図2に示す。簡潔には、Nrp1およびNrp2のVEGF結合部分(b1b2)の結晶は、それぞれ1.8および1.95Åという最大解像度まで回折した。Nrp1およびNrp2のa2b1b2ドメインの結晶をそれぞれ2.0および2.3Åという解像度まで精密にし、VEGF−ブロッキングFabである抗Nrp1との複合体でのNrp1のb1ドメインは、2.2Åという解像度まで回折した。最後に、Nrp2 a1a2b1b2ドメインの結晶構造を、セマフォリン−ブロッキングFabである抗panNrpとの複合体で解析した;2.75および3.1Åまで回折する、この複合体の2つの結晶型が同定された。すべての構造が、分子置換によって解析され、良好な立体化学を有する20/25%未満の最終的なRwork/Rfree値で報告される(表1)。Nrp1 a2b1b2構造は、a2ドメインの反対側に2つのN結合型グリコシル化部位を有する(図3B)。Nrp2/Fab複合体の単斜晶型もまた、a2ドメイン内に2つのグリコシル化部位を示す(図3A);しかしながら、これらの糖部分は、Nrp2−a2b1b2構造の電子密度において十分定義されないので、モデリングされない(図3B)。
ニューロピリン外部ドメインの全体的なドメイン構成
ニューロピリン細胞外領域は、それぞれ、主要なセマフォリン結合ドメイン(a1a2)、VEGF結合ドメイン(b1b2)および二量体化ドメイン(c)と記述される3つの単位に分けられることが多い(Ellis,L.M.,Mol Cancer Ther 5,1099−107(2006))。実際に、ラットNrp1 b1b2の最近の結晶構造(Vander Kooi,C.W.ら、Proc Natl Acad Sci USA 104,6152−6157(2007))では、b1ドメインとb2ドメインとの間の大きな界面が同定され、そしてドメイン間に埋もれている残基が、配列において保存されているので、このb1b2ドメインの配置が、Nrpファミリーの一般的な特徴として認識された。ここで、a2、b1およびb2ドメインを含むNrpの4つの結晶構造を、種々の結晶化条件(表S1)から解析した(図2,3)。2つのモデルは、Fabフラグメントに結合したa1ドメインを含み、他の2つは、a2ドメイン内にカルシウムイオンを含む。これらの相違にもかかわらず、これらの3つのドメイン(a2、b1およびb2)は、すべての結晶構造において同じ配置を共有し、偽3回軸のまわりに密に詰め込まれている(図3)。Nrp1およびNrp2のa2b1b2構造は、非常に似ており、317Cα原子に対して1.2Åというr.m.s.d.(根平均二乗変位)で重ね合わされる。b1とb2との間の界面は、両方のニューロピリン間で保存されており、約1200〜1500Åの溶媒接触表面が埋もれている。興味深いことに、a2ドメインとb1b2との間の界面は、すべての構造で同様に保存されており、2000Åを超える溶媒接触表面が埋もれており、これらのことから、3つすべてのドメインが堅い(rigid)構造単位を形成することが示唆される(図3)。
対照的に、a1とa2b1b2との間のドメイン配置は、Nrp2/抗panNrp−Fab複合体の2つの結晶型間で保存されていない。それらのレセプターのa2b1b2コアを重ね合わせるとき、a1ドメインは、互いに関して約7Åずれている。a1とa2b1b2との間の界面は、小さく(約800Åの埋もれた表面積)、保存されていない。強力な相互作用を欠くことから、a1ドメインの可撓性が確認され、このことは、溶液中で、またはレセプターと結合したときに、Nrpの残りの部分に関して立体配座を変化させ得ると示唆される(図3C)。
Nrp CUBドメインはカルシウム−およびセマフォリン−結合部位を含む
Nrp1およびNrp2のa1およびa2ドメインは、CUBドメインである(Ellis,L.M,Mol Cencer Ther 5,1099−107(2006))。CUBドメインの原型である精子アドヘシン(Romero,A.ら、Nat Struct Biol 4,783−8(1997)において、その折り畳みは、β−サンドイッチを形成する2つの5本鎖βシートを含む。ストランドβ2、β4、β9、β6およびβ7は、ストランドβ1、β3、β10、β5およびβ8を含む他のシートともに1つのβシートを形成する;しかしながら、ストランドβ1およびβ2は、いくつかの補体ファミリータンパク質由来のCUBドメインに存在しないことが多い(Feinberg,H.ら、EMBO J 22,2348−59(2003);Gregory,L.A.ら、J Biol Chem 278,32157−64(2003);Gregory,L.A.ら、J Bol Chem 279,29391−7(2004))。これらのタンパク質と同様に、Nrpのa1およびa2ドメインは、β1ストランドを欠く(図4)。概して、CUBドメインは、高度の類似性を示す。例えば、Nrp a2ドメインは、Nrp1 a2ドメイン(0.9Åというr.m.s.d.)、Nrp2 a1ドメイン(0.9Åというr.m.s.d.)および精子アドヘシン由来のCUBドメイン(Romero,A.ら、前出)(1.4Åというr.m.s.d.)と構造的に似ている。
補体ファミリータンパク質であるC1sおよびMASP−236,37由来のCUBドメインの結晶構造は、上記サンドイッチの一端にカルシウム結合部位を含む。Nrp1およびNrp2のa2b1b2構造もまた、ドメインa2内のこの位置に、結合したイオンを含む(図3B,4A)。Nrp1構造では、このイオンは、二価の陽イオンが結晶化中に含められていなかったとしても(表S1)、その電子密度内にはっきりと観察される(図S2)。Nrp1では、カルシウムイオンは、3つの負に帯電した側鎖(Glu195、Asp209およびAsp250)、2つのカルボニル酸素(Ala252およびIle253)および水分子によって配位される(図4B)。同様に、そのカルシウム配位は、Nrp2において3つの負に帯電したアミノ酸(Glu197、Asp211およびAsp252;図S2を参照のこと)を伴う;これらの3つの残基は、12個の遠縁種由来のa2ドメインにおいて絶対的に保存されている(図S3)。
Nrpのa1ドメインとa2ドメインとの配列アラインメント(図S2)は、この帯電した残基の3つ組もまた、Nrpのa1ドメイン内で厳格に保存されていることを示している。しかしながら、Nrp2/抗Nrp−Fab複合体では、結合したイオンは、a1ドメインにおいて示されていない。推定上のa1Ca2+結合部位を定義する残基を与えるループは、十分に配列されていないことから、Ca2+が、このドメインの折り畳みの安定化に関与すると示唆される。配列が高度に保存されていることに基づくと、カルシウム結合が、Nrp CUBドメインの共通の特徴である可能性がある。
ニューロピリンは、セマフォリンのクラス3ファミリーの選択されたメンバーに対するコレセプターとして機能する。そのN末端は、7枚β−プロペラである「Sema」というシグニチャー(signature)のドメインを含み(Antipenko,A.ら、Neuron 39,589−98(2003))、このドメインは、ニューロピリンのa1a2ドメインの結合に必要である。抗panNrpは、Sema3がNrp1とNrp2との両方に結合するのを阻止する(図1)が、VEGFへの結合には影響を及ぼさない(データ示さず)。Nrp2/抗panNrp−Fab複合体の構造(図4C)において、Fabフラグメントは、約1400Åの溶媒接触表面が埋もれている上記サンドイッチのβ8−5−10−3面上のNrp2のa1ドメインだけと接触する。この抗体によって認識される界面内に埋もれている接触表面の25%超である14個中11個のNrp2残基が、2つのレセプター間で同一であるので、その界面は、Nrp1とNrp2との間で十分に保存されている(図4C)。Nrp1とNrp2との間でエピトープの認識が保存されていることは、その抗体がナノモル以下の範囲の親和性で両方のレセプターに結合する能力を説明する(図S1)。
抗体側では、CDR L3、H2およびH3由来の11個の側鎖が、Nrp2と接触し、それらのうちの7つは、芳香族の性質である(図4D)。以前の研究では、部位特異的突然変異誘発を用いてNrp1のセマフォリン結合部位の境界線が明らかにされた(Gu,C.ら、J Biol Chem 277,18069−76(2002)。精子アドヘシンのモデルに基づいて、アミノ酸置換のために、a1ドメインの表面上の推定上の溶媒露出残基を選択した。このアプローチを用いて、Sema3AとNrp1との相互作用を妨害するいくつかの変異体を同定し(Guら、前出)、そしてそれらが、Npr1 a1のモデル上にマッピングされるとき、それらは、a1 β−サンドイッチの1極におけるループ上に配置される(図4C)。そのドメインの他方の端における置換は、Sema3A結合に影響を及ぼさない(Guら、前出)。Sema3A結合を妨害する変異は、Sema3A−ブロッキングFabによって認識されるエピトープと近接している(図4C)ことから、semaドメインが、Nrp2 a1ドメイン内の、ループおよびサンドイッチの8−5−10−3面に結合することが強く示唆される。セマフォリン結合部位の位置も、a1ドメインの推定上のカルシウム結合部位とも近接している(図4C)ことから、カルシウム結合が、そのリガンドとレセプターとの相互作用に関与し得ることが示唆される。
Nrpタイプbドメインは、ヘパリン結合部位およびVEGF結合部位を含む
ヒトニューロピリンb1b2構造由来のbドメイン(図5AおよびVander Kooら、前出,Leeら、前出)は、凝固因子VおよびVIII(F5/8)由来のリン脂質結合(C2型)モジュール(Macedo−Ribeiroら、Nature 402,434−9(1999);Pratt,K.P.ら、Nature 402,439−42(1999))および細菌のシアリダーゼのガラクトース結合ドメイン(Gaskell,A.ら、Structure 3,1197−205(1995))と著しい相同性を共有する。これらのドメインは、一緒になって、8つのコアβ−ストランドから構成されるゆがんだゼリーロールβ−バレルとして位相幾何学的に分類されるジスコイジンの折り畳みを定義する。このドメインの1極は、代表的にはジスコイジンファミリーメンバーに対するリガンド結合部位を構成する3つの広範囲の「スパイク」またはループを含む(Macedo−Ribeiroら、前出;Prattら、前出;Gaskellら、前出。Nrp1およびNrp2のb1b2フラグメントは、50%配列同一性を共有し、307Cα原子に対して2.3Åというr.m.s.d.で重ね合わされる(図5A)。Nrp1およびNrp2のb1ドメインは、ほぼ区別不能である(r.m.s.d=0.6Å)が、b2ドメインは、それほど十分に重ね合わされず(r.m.s.d.=2.7Å)、その相違は、その「スパイク」の立体配座が異なることが大きな原因である(図5A)。これらのスパイクが、ジスコイジンファミリー内の結合部位を定義することが多い(Vander Kooiら、前出;Leeら、前出;Macedo−Ribeiroら、前出;Prattら、前出;Gaskellら、前出)ので、Nrp1とNrp2との相違点は、Nrpが異なる結合パートナーを認識する1つの方法であり得る。
Nrp1とNrp2のb2ドメインが異なるにもかかわらず、それらのbドメインは、密に詰め込まれ、硬いスキャフォールドを形成する(図5)。ドメイン間ジャンクションは、この2つのbドメインの長軸に対してほぼ垂直に走る深い割れ目を形成する(図5)。b1のβ4:β5ループおよびb2のβ5:β6ループによって形成されるこの割れ目は、いくつかの正に帯電した残基に囲まれており、ラットNrp1における突然変異誘発実験に基づくと(Vander Kooら、前出)、それらは、Nrpのヘパリン結合部位である。その電気陽性のパッチは、両方のヒトNrpの構造中に同様に存在する(図5B)。VEGF165のC末端ドメイン(VEGF55としても知られる)(Fairbrotherら、Structure 6,637−48(1998))もまた、ヘパリン結合部位を含む。ヘパリンが、VEGF165に対するb1b2の親和性を最大100倍高める(Mamluk,R.ら、J Biol Chem 277,24818−25(2002);Fuh,G.ら、J Biol Chem 275,26690−5(2000))ので、Nrpがヘパリンを用いてこの領域にVEGF165をリクルートすることは、もっともらしいことである。
VEGF165のエキソン7とのヘパリン媒介性の相互作用に加えて、エキソン8によってコードされるVEGFのC末端テイル(CDKPRRCOOH)は、Nrpに直接結合することができる。VEGFテイルのテトラペプチド模倣物(TKPRCOOH)(von Wronski,M.A.ら、J Biol Chem 281,5702−10(2006))であるタフトシンとの複合体でのラットNrp1−b1b2の結晶構造において(Vander Kooiら、前出)、C末端のアルギニンは、b1ドメインの保存された「スパイク」からの残基によって形成される酸性の溝の中に密に押し込まれている。3つすべてのFab複合体を含む本発明者らの構造のいくつかにおいて、対称関連分子からのC末端の残基(ヒスチジン)は、タフトシンペプチドの同じ酸性のポケットを占有する(図S4)。
VEGF結合に関与する潜在的な残基をさらに詳述するために、b1b2表面上のNrp残基の表面保存を調べた(図5C)。2つの隣接するパッチが、12個のNrp1およびNrp2のタンパク質の間で保存されている(図S3)。これらの部位の1つは、タフトシン結合部位に直接マッピングされるが、第2の部位は、ヘパリン結合パッチの縁に残基を含むことから、NrpとVEGFとが相互作用するためのさらなる領域が示唆される。
Nrp1−b1/抗Nrp1−Fab複合体の結晶構造(図5D)において、Fabは、これらの2つの推定上のVEGF結合部位間に位置するエピトープと接触し、部分的にタフトシンに結合する割れ目と重なる。CDR L1およびH3由来の残基のみを含む、このVEGFブロッキング抗体のエピトープは、珍しい。平均して、Fab/抗原界面には、1680Åの溶媒露出表面が埋もれている(Lo Conteら、J Mol Biol 285,2177−98(1999))が、しかしながら、900Åだけが、Nrp1−b1/Fab界面において保護されている。この小さな界面にもかかわらず、抗Nrp1は、0.2nMの親和性でNrp1に堅固に結合する(Liangら、前出;Panら、前出)。
VEGFとSema3Aとは、Nrp結合について競合しない
本発明のNrp/Fab結晶構造では、VEGF結合およびセマフォリン結合を阻止する結合エピトープは、65Å離れており、Nrpの反対側の部位に位置する(図S5)。いくつかの研究は、VEGFとセマフォリンとが、細胞表面上で結合について競合し、この競合は、b1ドメイン上の部分的に重複する結合部位が関与すると報告している(Guら、前出;Miao,H.Q.ら、J Cell Biol 146,2177−98(1999);Narazaki,M.& Tosato,G.,Blood 107,3892−901(2006))。VEGF165およびクラス3セマフォリンのカルボキシルテイルは、両方とも塩基性残基が豊富なので、これらのテイルは、b1ドメインにおける「スパイク」によって形成される電気陰性の溝について競合し得ると示唆された(Vander Kooiら、前出;Leeら、前出)。最近のb1b2/タフトシン結晶構造は、おそらくVEGF165テイルがこの結合部位を占めると明らかにした。本発明者らは、以前に、抗NRP1が後根神経節(DRG)由来の軸索のSema3A媒介性の崩壊に拮抗しないことを示し(Liangら、前出;Panら、前出)、このことから、Sema3のC末端のテイルが同じ溝に結合しないことが示唆される。
以前の競合実験(Guら、前出;Miaoら、前出;Narazakiら、前出)では、そのタンパク質のC末端において異種タグ(例えば、アルカリホスファターゼ)を含む含むVEGFおよびセマフォリンを使用した。観察された競合は、VEGFとSema3テイルとの直接的な競合ではなく、タグによる立体的な不一致の結果である可能性がある。本発明者らは、VEGF165がDRG由来の軸索伸長のSema3媒介性の崩壊に拮抗する能力を調べた。100mMという濃度でさえも、VEGF165は、Sema3Aがアクチンプロセスを後退させる能力に影響を及ぼさなかった(図1)。これらのデータから、Sema3が、b1ドメインへの結合についてVEGFと競合せず、セマフォリンのテイルが、このドメイン内の異なる部位と接触することが証明される。
ニューロピリン二量体化についてのモデル
Nrp1およびNrp2は、リガンドの非存在下でもホモ−またはヘテロ−多量体を形成することができ(Takahashi,L.ら、Cell 99,59−69(1999);Chen,H.ら、Neuron 21,1283−90(1998);Giger,R.J.ら、Neuron 21,1079−92(1998);Takahashiら、Nat Neurosci 1,487−93(1998)))、ニューロピリン複合体の正確な化学量論は、まだ確立されていないが、Nrpは、リガンド結合時にはホモ二量体を形成すると広く推定されている。現在のデータは、cドメインを欠いている切断変異体が、完全長ECDと比べて多量体化(mutimerization)の低下を示すので、このドメインが、Nrpオリゴマー化に必要であるが、十分ではないことを示している(Takahashiら、Cell 99,59−69(1999);Chenら、前出;Gigerら、前出;Nakamuraら、Neuron 21,1093−100(1998))。a1a2およびb1b2ドメインを含むニューロピリン構築物は、a1a2ドメインがVEGFに結合しないにもかかわらず、いくつかのVEGFアイソフォームに対して、b1b2ドメインだけを含む構築物よりも高い親和性を有する(Mamluk,R.ら、J.Biol.Chem.277,24818−25(2002);Karpanen,T.ら、FASEB J 20,1462−72(2006);Giger,R.J.ら、Neuron 25,29−41(2000)。ゆえに、a1a2ドメインは、Nrp二量体化に直接寄与するので、2:2複合体を安定化させることによってNrpとVEGF二量体との相互作用を強めることは、ありうることである。興味深いことに、2つの異なる結晶型からのNrp2−a1a2b1b2の結晶構造(表1)は、a1が介在する、保存された結晶学的界面を含む。この二量体において、a1ドメインは、β7およびβ8ストランドに沿っておおよそ逆平行の配置で整列する。この界面には、約1200Åの溶媒接触表面積が埋もれており、この界面は、疎水性相互作用によって支配されている(図S5)。興味深いことに、同様の二量体が、他のCUBドメインファミリーメンバーについても観察されている(Romeroら、前出)。しかしながら、多角度光散乱によって3つのNrp2構築物(a2b1b2、a1a2b1b2およびa1a2b1b2c)の分子量を調べたところ、3つすべてのNrp2構築物が、溶液中で単量体であることが明らかになった(データ示さず)。これらのデータは、Nrpのホモ二量体化が、MAMドメインの存在下であっても溶液中では非常に弱く、レセプター二量体化は、リガンド結合時にだけ生じ得ることを示唆している。結晶学的Nrp2二量体の配向は、VEGF結合についてのモデルを提唱する。a1界面は、約35×60Åの寸法を有するVEGF109二量体を収容するのに十分大きい約70Åの幅の鞍形の二量体を形成する(図6)。重要なことに、タフトシン結合部位およびヘパリン結合パッチは、その鞍の内部表面上に見られる。ヘパリンは、Nrpのヘパリン結合部位とVEGFとの相互作用を安定化し得、VEGFテイルとb1の「スパイク」との会合をさらに促進し得る。この配置もまた、下流のシグナル伝達のためのVEGFレセプター結合ドメインを介するVEGFR結合を調整し得る。それゆえ、a1ドメインは、VEGFと直接関わらないが、Nrp二量体化を促進するので、NrpのVEGF結合を増大させ得る。この二量体は、Sema3結合をさらに調整し得る(図6)。Sema3A結晶構造(Antipenko,A.ら、Neuron 39,589−98(2003))では、2つの「sema」ドメインが、1つの界面において共に密に詰め込まれている。Sema3Aのsemaドメインは、Nrpと結合するとき、解離することにより、a1a2上の主要な結合部位との相互作用が可能になる(Antipenkoら、前出)。本明細書中に示されるa1介在性のNrp二量体のモデルにおいて、2つの推定上のSema3A結合部位は、反対側に位置し、2つの結合したSema3分子の大きなβ−プロペラを収容するのに十分離れている(図6およびS5)。
本発明の構造解析は、Nrp ECDのVEGF(b1b2)部分とセマフォリン結合(a1a2)部分との両方の最初の詳細な像を提供する。以前の突然変異誘発研究(Guら、前出;Vander Kooiら、前出)とともに、抗体複合体(図3〜5)は、セマフォリンのSemaドメインおよびVEGFのヘパリン結合ドメインに対するNrp結合部位を表している。これらの構造は、将来の突然変異誘発実験に対する基礎を提供し、それらのリガンドならびにシグナル伝達レセプターVEGF、VEGFR、セマフォリンおよびプレキシンとの複合体でのNrpの構造を解明するストラテジーを提供する。さらに、本発明によって提供された結晶構造および他の情報は、VEGFおよび/またはセマフォリンのアンタゴニストおよびアゴニストの設計を可能にし、そして、スクリーニングアッセイにおいて使用されることにより、そのようなアンタゴニストまたはアゴニストを同定することができる。
前述の説明では、ある特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、そのように限定されない。実際に、本明細書中に示され、記載されたものに加えて、本発明の様々な改変が、前述の説明から当業者に明らかになり、それらの改変は、添付の請求項の範囲内に包含される。
本明細書全体において引用されたすべての参考文献およびそれらの中で引用されている参考文献の全体が、本明細書によって明示的に参考として援用される。

Claims (2)

  1. Nrp2a1a2b1b2フラグメントと、Nrp2へのセマフォリンの結合を阻害する抗panNrp抗体のFabフラグメントとの間で形成される複合体の結晶であって、ここで、該結晶は、X線放射線を回折して、該複合体の3次元構造を表す、以下のおおよそのセル定数a=148Å、b=106Å、c=92.4ÅおよびC2という空間群を有する回折パターンを生成する、複合体の結晶。
  2. Nrp2a1a2b1b2フラグメントと、Nrp2へのセマフォリンの結合を阻害する抗panNrp抗体のFabフラグメントとの間で形成される複合体の結晶であって、ここで、該結晶は、X線放射線を回折して、該複合体の3次元構造を表す、以下のおおよそのセル定数a=121Å、b=121Å、c=203ÅおよびP321という空間群を有する回折パターンを生成する、複合体の結晶。
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