JP5137078B2 - 微細ミストを利用した空気冷却システムでの噴霧量の設計方法及び噴霧量の設計装置並びに微細ミストを利用した空気冷却システム - Google Patents
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非特許文献1は、街路空間に見立てた屋外の実験場所で微細ミストを噴霧する実験を行い、その噴霧時間中気温が急激に低下すること(平均で4.7℃、最大で7.4℃)を報告している。実験条件として、一般的なイチョウを100m2当り1本植えた場合の蒸散量を基準として倍水量、4倍水量を噴霧したとされている。
非特許文献1は、微細ミストによる冷却効果に関する有用な情報を提供しているが、微細ミストの噴霧量に関しては街路樹の元での蒸散量を目安にしているに過ぎない。
本発明の第1の目的は、適用エリアの状態において微細ミストを最大限に利用できる空調冷却システムの設計方法及び微細ミストを利用した空気冷却システムを提案する。これらの方法及びシステムを適切に運用することで噴霧量の最適化が可能となる。
本発明の第2の目的は、上記方法の実施に好適な噴霧量の設計装置を提案することである。
単位時間当たりの対象空間内の総発熱量H1を計算する第1の過程と、
単位時間当たりで対象空間内に流入する空気の温度を流入時点での温度Taから目標温度Tiへ下げるために必要な熱量H2を計算する第2の過程と、
H1及びH2の和で与えられる熱量総和Hallを計算する第3の過程と、
熱量総和を全て微細ミストが蒸発するときの潜熱で賄うときに必要となる単位時間当りの水量を計算する第4の過程とを含み、
第2の過程において対象空間を水平な複数の空間層に区分し、これら空間層のうち人の身体に接する高さにある一つの空間層を選択してターゲット層とし、
対象空間の外からターゲット層内へ流入する空気に限定して、上記H2を計算する。
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
第1の過程でH1を次の数式1で計算し、かつ第2の過程でH2を次の数式2で計算することを特徴としている。
[数式1]H1=[地表面顕熱]+[機器発熱]+[人体発熱]
[数式2]H2=(Cp×ρ/X)×(Ta−Ti)×u×Δh×A
(但し、Cpは空気の容量比熱、ρは空気の比重、Xは対象空間の通風方向の奥行き距離、uはターゲット層への空気の流入速度、Δhはターゲット層の厚さ、Aは対象空間の床面積である)
本手段では、対象空間内の発熱量の詳細を明らかにするとともに、ターゲット層に流入する空気の温度を下げるための方式を式に現している。
第1の手段又は第2の手段の空気冷却システムでの噴霧量の設計方法を実行するための微細ミストを利用した空気冷却システムでの噴霧量の設計装置であって、
対象空間内の気温を測定する気温計と、
対象空間内の発熱量を検知する発熱検知手段と、
対象空間内に設置された風量検知手段と、
これらの測定量から適正な噴霧量を計算する演算手段と
を有する。
「発熱検知手段」は、発熱量そのものを検知するだけでなく、発熱源(熱を発生する機器や人)をカウントするものでもよい。発熱源の種類としては、地表面顕熱、機器発熱、人体発熱がある。機器発熱としては、空間中の全ての機器を管理することが難しければ、空調機器の運転状況だけを検知してもよい。
「演算手段」は、たとえばマイクロコンピュータとしてもよい。本明細書では説明の便宜上から演算手段と後述の制御装置とを別々に説明しているが、いずれも演算処理を主目的とするものなので、一つのコンピュータとしてまとめてもよい。
濡れ感触の少ない微細ミストを対象空間の空気中に噴霧する空気冷却システムであって、
対象空間内に配置された微細ミスト噴出用の噴霧ノズル及びこの噴霧ノズルに給水するための少なくとも一本の給水管を含む給水機構と、
この給水管からの給水を噴霧量の適正値に応じて調整する制御装置と、
対象空間内の条件に応じて噴霧量の適正値を計算して、制御装置に指示する噴霧量設計装置とを具備し、
噴霧量設計装置は、対象空間内の気温を測定する気温計と、対象空間内の発熱量を検知する発熱検知手段と、対象空間内に設置された風量検知手段と、これらの測定量から適正な噴霧量を計算する演算手段とを有し、
対象空間を水平な複数の空間層に区分し、これら空間層のうち人の身体に接する高さにある一つの空間層を選択してターゲット層として、このターゲット層内の風量を測定するように風量検知手段を配置し、
制御装置は、発熱検知手段からの入力信号で対象空間内の総発熱量H1を、気温計及び風量検知手段からの入力信号で対象空間内のターゲット層内に流入する空気の流入時点での温度Taを目標温度Tiに下げることに要する熱量H2をそれぞれ算出し、両熱量の総和を、微細ミストが蒸発するときの潜熱で賄う場合に必要となる単位時間当りの水量を決定するように構成されている。
第5の手段は、第4の手段を有し、かつ
給水設備は、水のみを噴霧する一流体方式とするとともに、
噴霧ノズルからターゲット層への噴霧水量の調整方式として、個々の噴霧ノズルからの噴霧量を一定とし、噴霧するノズルの個数を制御している。
前述の一流体方式は、エネルギー消費が少ない反面、発停時の圧力変化時に、ミストになりきれない水がノズル先端からこぼれ落ちることである(非特許文献2)。微細ミスト用の噴出ノズルでは、粒径を一定に揃えるために各噴出ノズル毎の噴出速度を調整することがむずかしいことから、その代わりに使用する噴出ノズルの個数を調整している。具体的な制御方法として、対象空間の全範囲に微細ミストを供給する2以上の給水管を設けておき、総排熱量Hallの大きさに応じて給水をオンにする給水管の数を増やしていくように制御することができる。各給水管毎の噴霧ノズルの数は一定数とすることができる。
○発熱量を処理するための熱と、流入空気を目標温度まで下げるための熱量とから、必要とする水蒸気の量を計算するから、対象空間の状況に応じて必要な水量を割り出すことができる。
○ターゲット層に流入する空気を対象として、この空気を所定温度まで下げるための所要熱量を求めたから、対象空間のうち人の居ない領域までミストを供給する必要がなく、省エネルギーに資する。
[数式3]H1=dc(Ts−Tb)×A+n×HA+m×HP
[数式4]H2=(Cp×ρ/X)×∫0 h(Ta−Ti)×u×dz×A=(Cp×ρ/X)×(Ta−Ti)×u×h×A
水の蒸発潜熱をlwとして、必要な水蒸気の量Eは次式で与えられる。
[数式5]E=Hall/lwA (g/hr・m2)
この水量の微細ミストを噴霧するように給水設備を設計すればよい。その具体的な構成については、システムの実施態様の欄で説明する。
以上の検討結果を用いてミストを噴霧した場合の快適性について、温熱快適性指標SET*(℃)を用いて評価を試みる。なお、平均放射温度MRT(℃)については、日射量や大気放射量の測定地を用い、上向き放射分は地表面がアスファルト舗装面であることを仮定した場合の日射反射率及び表面温度の値から算出した。人体の日射(短波放射)吸収率は0.4、着衣量については半袖、長ズボンを想定した0.7、代謝量は歩行時を想定して2.0とした。
このシステムは、給水機構2と、噴霧量設計装置11と、制御装置20とを具備する。
給水機構2は、外部の水源から高圧ポンプ4を経由して対象空間の上方へ少なくとも一本の給水管6を延設するとともに、この給水管から分岐する複数の分岐管8にそれぞれ噴霧ノズル10を付設してなる。この給水システムは、1流体型であり、噴霧ノズルからの液垂れを防止するために噴霧ノズルを斜めに配置している。
噴霧量設計装置11は、気温計12及び湿度計18と、発熱検出手段16と、風量検知手段18と、演算手段19とで形成されている。
上記発熱検知手段16は、対象空間S内の熱源の数乃至発熱量を検知する手段である。図示例では、人感センサー16a及び表面温度計16bが該当する。人感センサー16aは対象空間内の人数をカウントし、これに後述の制御装置で一人当たりの発熱量を乗じて発熱量に換算する。表面温度計16bは、地表面や空調機などの表面温度を測定する。
制御装置20は、演算手段19が決定した噴霧ミストの適正値に対応して給水管又は各分岐管8に付設した弁を開閉する。開閉の方式は一流体式の場合には、オン・オフ方式とし、オンになっている噴霧ノズルの数を制御するとよい。制御装置は、マイクロコンピュータとして構成することができる。
2…給水機構 4…高圧ポンプ 6…給水管 8…分岐管 10…噴霧ノズル
11…噴霧量設計装置 12…気温計 14…湿度計 16…発熱検知手段
16a…対人センサー 16b…表面温度計 18…風量検知手段
19…演算手段 20…制御装置
22…開閉弁 24…日射計 26…外部温湿度計 28…降雨計
Claims (5)
- 濡れ感触の少ない微細ミストを対象空間の空気中に噴霧する空気冷却システムでの噴霧量の設計方法であって、
単位時間当たりの対象空間内の総発熱量H1を計算する第1の過程と、
単位時間当たりで対象空間内に流入する空気の温度を流入時点での温度Taから目標温度Tiへ下げるために必要な熱量H2を計算する第2の過程と、
H1及びH2の和で与えられる熱量総和Hallを計算する第3の過程と、
熱量総和を全て微細ミストが蒸発するときの潜熱で賄うときに必要となる単位時間当りの水量を計算する第4の過程とを含み、
第2の過程において対象空間を水平な複数の空間層に区分し、これら空間層のうち人の身体に接する高さにある一つの空間層を選択してターゲット層とし、
対象空間の外からターゲット層内へ流入する空気に限定して、上記H2を計算することを特徴とする、微細ミストを利用した空気冷却システムでの噴霧量の設計方法。 - 第1の過程でH1を次の数式1で計算し、かつ第2の過程でH2を次の数式2で計算することを特徴とする、請求項1記載の微細ミストを利用した空気冷却システムでの噴霧量の設計方法。
[数式1]H1=[地表面顕熱]+[機器発熱]+[人体発熱]
[数式2]H2=(Cp×ρ/X)×(Ta−Ti)×u×Δh×A
(但し、Cpは空気の容量比熱、ρは空気の比重、Xは対象空間の通風方向の奥行き距離、uはターゲット層への空気の流入速度、Δhはターゲット層の厚さ、Aは対象空間の床面積である) - 請求項1又は請求項2の空気冷却システムでの噴霧量の設計方法を実行するための微細ミストを利用した空気冷却システムでの噴霧量の設計装置であって、
対象空間内の気温を測定する気温計と、
対象空間内の発熱量を検知する発熱検知手段と、
対象空間内に設置された風量検知手段と、
これらの測定量から適正な噴霧量を計算する演算手段と
を有することを特徴とする、空気冷却システムでの噴霧量の設計装置。 - 濡れ感触の少ない微細ミストを対象空間の空気中に噴霧する空気冷却システムであって、
対象空間内に配置された微細ミスト噴出用の噴霧ノズル及びこの噴霧ノズルに給水するための少なくとも一本の給水管を含む給水機構と、
この給水管からの給水を噴霧量の適正値に応じて調整する制御装置と、
対象空間内の条件に応じて噴霧量の適正値を計算して、制御装置に指示する噴霧量設計装置とを具備し、
噴霧量設計装置は、対象空間内の気温を測定する気温計と、対象空間内の発熱量を検知する発熱検知手段と、対象空間内に設置された風量検知手段と、これらの測定量から適正な噴霧量を計算する演算手段とを有し、
対象空間を水平な複数の空間層に区分し、これら空間層のうち人の身体に接する高さにある一つの空間層を選択してターゲット層として、このターゲット層内の風量を測定するように風量検知手段を配置し、
制御装置は、発熱検知手段からの入力信号で対象空間内の総発熱量H1を、気温計及び風量検知手段からの入力信号で対象空間内のターゲット層内に流入する空気の流入時点での温度Taを目標温度Tiに下げることに要する熱量H2をそれぞれ算出し、両熱量の総和を、微細ミストが蒸発するときの潜熱で賄う場合に必要となる単位時間当りの水量を決定するように構成されていることを特徴とする、微細ミストを利用した空気冷却システム。 - 給水設備は、水のみを噴霧する一流体方式とするとともに、
噴霧ノズルからターゲット層への噴霧水量の調整方式として、個々の噴霧ノズルからの噴霧量を一定とし、噴霧するノズルの個数を制御することを特徴とする、請求項4に記載の微細ミストを利用した空気冷却システム。
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