まず初めに本発明の理解を早めるため上述した従来技術(特許文献1〜4)について図を参照しながら説明する。
図34は特許文献1に開示された従来技術の要点を表す図である。本図は、例えば7人のユーザU1〜U7に対する周波数割り当てを示し(上段)、下段にはユーザU1およびU2について、一連のサブキャリアの割り当てを詳細に表す。横軸は周波数である。
本システムは、送信側で割り当てられた周波数帯域に複数のキャリアを連続的に配置し、ユーザ(U1〜U7)に応じて複数のサブキャリアを分割して連続的に配置することを特徴とする。
具体的には、例えば1つの通信システムで使用できる全周波数帯域を20MHzとし、そこに250本のサブキャリアを設定する。したがって各サブキャリアの帯域幅は、20[MHz]/250=80[kHz]となる。そしてこの250本のサブキャリアを、複数のユーザ(U1〜U7)間で動的に割り当てて使用する。
このとき、例えばユーザA(U2)には50本、別なユーザB(U1)には75本というように、動的に割り当てて、使用サブキャリアの本数を可変にする。
これに伴って、使用周波数帯域は、ユーザAについて50×80[kHz]=4[MHz]、ユーザBについて75×80[kHz]=6[MHz]となり、使用周波数帯域はユーザ毎に可変とされる。この場合、割り当てられるサブキャリアは周波数軸上で連続しているものとされている。なお、さらに周波数帯域の分割幅を可変にすることも可能である。
図35は特許文献2に開示された従来技術の要点を表す図である。本図は、周波軸上での共通制御チャネルとデータチャネルの割り当ての様子を表す図である。
本システムはマルチキャリアCDMAシステムにおいて、制御信号伝送専用のサブキャリアと、データ伝送(データチャネル)専用のサブキャリアとを分離して設定している。その共通制御チャネルは固有の拡散コードにより拡散されている。よって、この共通制御チャネルを受信する場合は、特定のサブキャリアを復調すればよく、その信号処理量を低減することができる。
図36は特許文献3に開示された従来技術の要点を表す図である。本図は、上記図35におけるデータチャネルの周波数帯域を、伝搬距離(基地局との間の通信距離)に応じて可変にすることを示している。ただし、送信電力も変更(大−中−小)する。
本システムは、1サブキャリア当たりの伝送速度を固定とし、ユーザに割り当てるサブキャリアの本数を可変にすることで可変速度の通信を実現するシステムであって、基地局と端末との間の距離が近い場合には、各サブキャリアの送信電力が小さくなるようにしながら多くのサブキャリアを割り当て、その距離が遠い場合には、各サブキャリアの送信電力が大きくなるようにしながら少ないサブキャリアを割り当てる。
また、共通制御チャネルに用いるサブキャリアを少数とする一方、データ通信用チャネル(データチャネル)に対しては多数のサブキャリアを割り当てて、両者を周波数軸上で完全に分離して配置する。なお、共通制御チャネル専用のサブキャリアを用いて、データチャネル用に割り当てたサブキャリアの中心サブキャリア番号、および使用するサブキャリアの数を、基地局から移動局に通知する。
図37は特許文献4に開示された従来技術の要点を表す図である。本図は、伝搬環境の良否に応じて、各サブキャリアの帯域幅を可変にすることを示す。
本システムは、無線伝送において伝搬環境の状況に応じてサブキャリアの合計本数を一定としつつ、各サブキャリアの帯域幅を変更する。例えば、その伝搬状況が悪くなったときには各サブキャリアの帯域を広くする。これにより、総サブキャリアは変化させることなく伝送を行うことができるので、伝送速度を伝搬環境の如何によらず一定に維持することができる。
本発明は、上述の図34〜図37により説明した従来技術(特許文献1〜4)がそれぞれ有する既述の諸問題点を解決するものであり、以下に図を参照しながら詳しく説明する。
図1は本発明に基づく通信装置(送信側)の基本構成を示す図であり、
図2は本発明に基づく通信装置(受信側)の基本構成を示す図である。
図1において、参照番号10が通信装置(送信側)を示し、図2において参照番号20が通信装置(受信側)を示し、これらは同じ通信システム(移動体通信システム)内に収容される。なお、既述したとおり通信装置10が基地局で通信装置20が端末でも、あるいはこの逆であってもよく、どちらにも本発明を適用することができるが、より理解しやすいように、以下の説明では特にことわらない限り、送信側の通信装置10を基地局と想定し、受信側の通信装置20を端末と想定する。
まず図1を参照すると、使用周波数帯域選択/設定部15の特に選択機能を用いて、相手方通信装置20との間で使用すべき使用周波数帯域を選択する。この選択に基づく「使用周波数帯域情報」If(frequency)は送信データ生成部11に入力され、ここで、通信装置20に伝送すべき伝送データ(ユーザデータ)Du(user)と一体になった送信データDt(transmission)が生成される。したがって送信データDtには、伝送データDuと使用周波数帯域情報Ifとが含まれるが、実際にはさらにその他の「通信制御情報」Ict(control)も含まれる。この情報Ictは例えば、QAM等の使用する変調方式に関する情報であり、また伝送データDuの1回の伝送データ量に関する情報等である。
上記送信データDtは、変調部12にて所定の変調が加えられてから、次段のマルチキャリア伝送送信処理部13に入力される。この処理部13に対しては、上記使用周波数帯域選択/設定部15の設定機能により、上記の選択された使用周波数帯域において送信処理すべきことを指示する帯域設定指示信号Sb(band)が印加されており、該処理部13は、この信号Sbに基づく周波数帯域にて、マルチキャリア伝送に準拠した信号送信処理を行う。
さらに無線部14にて、上記処理部13からの送信データ信号Stに対して周波数変換を行い、次段のアンテナATより相手方通信装置(端末)20に向けてこれを送信する。
一方図2を参照すると、上記のアンテナAT(図1)からの無線信号はアンテナAT(図2)にて受信され、さらに無線部21にて周波数変換されて受信データ信号Srとなり、マルチキャリア伝送受信処理部22に入力される。この処理部22にて、該受信データ信号Srに対しマルチキャリア伝送に準拠した信号受信処理が行われ、さらに次段の復調部23にて該信号受信処理後の信号を復調する。
その復調後の受信データDrは、受信データ復号部24にて復号されて、元の伝送データDuと、先に設定された前述の使用周波数帯域情報Ifとに分離される。またそのデータDrから、前述の通信制御情報Ictも分離される。なお、この情報Ictにより制御される部分は本発明の本質に直接関係しないので省略する。
上述のとおり受信データDrより分離して得られた元の使用周波数帯域情報Ifは、使用周波数帯域設定部25に入力される。該設定部25はこの情報Ifを受けて、前述した帯域設定指示信号Sbを再生する。この信号Sbは、前述したマルチキャリア伝送受信処理部22に印加され、この処理部22において、送信側で選択された周波数帯域にてマルチキャリア伝送に準拠した信号受信処理が行われる。なお、無線回線確立の当初には、予め定めた周波数帯域を選択するようにしてもよい。
本発明は、上述した帯域設定指示信号Sbによって、送信側(10)と受信側(20)とが同じ使用周波数帯域を使用することができる。さらにその信号Sbに基づいてその使用周波数帯域を、送信側(10)および受信側(20)の双方において同時に、拡張したり縮小したりまた変更したりすることができる。かくして前述した本発明の目的を達成することができる。
上述した本発明の基本構成を、前記の従来技術と対比しながらもう少し具体的に説明する。
本発明においては、通信システム全体で使用できる周波数帯域を複数の帯域に分割する。例えば、該通信システム全体の使用周波数帯域を20[MHz]とした場合、一つの帯域を5[MHz]とし、四つに分割する。この一つの帯域5[MHz]を用いて、使用周波数帯域情報を伝送する制御チャネルと、伝送データを伝送する伝送チャネル(データチャネル)の各情報を伝送する。
本発明によれば、前述したように、少なくとも該制御チャネルを伝送するための周波数帯域を「主帯域」とし、さらに拡張された周波数帯域を「拡張帯域」としている。例えばOFDM通信システムで考えると、上記の一つの帯域5[MHz]あたり、100本のサブキャリアを含むものとし、また各該サブキャリアの帯域幅を50[kHz]として、この100本の一連のサブキャリアを用いて、制御チャネルとデータチャネルの各情報を伝送する。両情報の多重方法は、時間多重でも周波数多重でも拡散コード多重でも構わない。
上述のように特許文献3(特開2004−214746号)と異なり、「主帯域」の情報を受信して復号することにより、使用周波数帯域(または使用周波数帯域の数)が分かるため、使用周波数帯域の拡張や縮小や変更が容易に行える。またこれにより特許文献1(特開平9−205411号)や特許文献3(特開2004−214746号)と異なり、受信部の構成も簡易化される。
また、一つの周波数帯域当たりのサブキャリアの数を一定とすれば、使用周波数帯域の数が変更されるのに伴ってサブキャリアの数が整数の比で変化する。よって、サブキャリアが動的に変化する特許文献3(特開2004−214746号)と比較すると、受信部の構成が簡易化される。
また、事前に使用周波数帯域を基地局から端末に対して指定することにより、上記拡張帯域の変更および追加を容易に行うことができ、また主帯域の変更も行うことができる。
さらに、上述のように各サブキャリアの帯域幅を固定とすれば、特許文献4(特開2002−330467号)のように他のユーザに対して影響を与えることなく、使用周波数帯域を変更することができる。以下に本発明に基づく各種実施態様を説明する。
〔実施態様1:使用周波数帯域の設定〕
初めに本実施態様1で開示するいくつかの特徴を掲記すると次のとおりである。この特徴の主要点は既に掲記したとおりであり、次の三点(i)〜(iii)にある。
(i)通信システムに割り当てられた全周波数帯域を分割してなる複数の周波数帯域の中から特定の周波数帯域を設定し、その特定の周波数帯域を用いて、残りのいずれの周波数帯域を通信装置相互(10,20)間で使用すべきかを定めた「使用周波数帯域情報」Ifを伝送することであり、(ii)その特定の周波数帯域を全周波数帯域の中の「主帯域」として設定し、この主帯域は使用周波数帯域情報Ifに加えてデータ情報(Du)をも伝送することであり、(iii)上記の複数の周波数帯域のうち、上記の「主帯域」を除く周波数帯域の中から設定された少なくとも1つの周波数帯域を「拡張帯域」となし、この拡張帯域は主としてさらなるデータ情報(Du)を伝送することである。
そして本実施態様1でさらに開示するいくつかの要点は次の四点(iv)〜(vii)にある。
(iv)上記の「主帯域」は、通信装置相互(10,20)間での無線回線確立時に、固定的に設定するようにし、
(v)通信装置(20)が複数あるとき、上記の複数の周波数帯域の各々にそれぞれ個別に「主帯域」を設定すると共に、これら複数の通信装置(20)の各々に対応させてそれぞれ主帯域を割り付けるようにし、
(vi)2以上の通信装置(20)が、同一の「主帯域」を、時間多重および/または拡散コード多重によって同時に使用するようにし、
(vii)また、データ情報(Du)の所要伝送速度に応じて、拡張帯域の数を増減することである。
図3は本発明に基づく通信装置(送信側)10の一具体例を示す図であり、
図4は本発明に基づく通信装置(受信側)20の一具体例を示す図である。なお全図を通じて同様の構成要素には同一の参照番号または記号を付して示す。また図3および図4に示す具体例は、本実施態様1のみならず、後述する他の実施態様2〜10においても共通に適用される。
まず図3の通信装置(送信側)10を参照すると、図1に示した構成要素11〜15およびDu,Dt,St,Sbに対応する部分には、これらの参照番号や記号11〜15およびDu,Dt,St,Sbを付して示す。
送信データ生成部11は本図の例によれば、データブロック作成部31、符号化部32、伝送データ量算出部33、符号化部34および多重化部(Mux)35から構成される。
上記使用周波数帯域選択/設定部15からの使用周波数帯域情報Ifをもとに、まず伝送データ量算出部33により送信データ長を算出し、データブロック作成部31において、伝送データ長毎にデータブロックとしてまとめる。さらにその伝送データ長を用いて、符号化部32にて、伝送データの符号化を行う。
上記の使用周波数帯域情報Ifは使用する変調方式等を示す通信制御情報Ictと共に、符号化部34にて符号化される。なお、符号化部32および34は1つの符号化部として、DuとIfをまとめて符号化してもよい。
両符号化部32および34からの各符号化出力は多重化部(Mux)35にて多重化されて、既述の送信データDtとなる。このデータDtはさらに前述のとおり変調部12にて変調される。この多重化の方法としては、サブキャリアを分けて使用する周波数多重や、時間多重(例えば図16に示すフレームフォーマットを用いて)や拡散コード多重等がある。また変調部12による変調方式としては、QPSK,16QAM,64QAM等がある。
次にマルチキャリア伝送送信処理部13について見ると、本図に示す例では、構成要素36,37,38,39および40から構成される。ただし、OFDMによる通信を前提とした例で示す。その他のMC−CDMAによる通信を前提とした例は図7(図8)に示す。
分離部(DeMux)36では、「主帯域」に属する情報と、「拡張帯域」に属する情報とに分離する。「主帯域」に属する情報は、シリアル/パラレル変換部(S/P)37にてパラレル信号に変換した後、逆高速フーリエ変換部(IFFT)38においてそのパラレル信号に対し時間−周波数変換を行う。この周波数に変換されたパラレル信号は再びパラレル/シリアル変換部(P/S)39にてシリアル信号に変換される。さらにガードインターバル(GI)挿入部40において、そのシリアル信号に対し、シンボル間干渉を防止するためのガードインターバルGIを挿入する。
かくして得られた送信データ信号Stは、無線部14に入力される。この無線部14は、本図の例によると、一般的なミキサ41、ローカルオシレータ42、電力増幅器44から構成され(D/Aコンバータやフィルタ等は省略)、アンテナATより該送信データ信号Stを送出する。この場合、加算部43が途中に設けられている。
加算部43は、前述のように分離部(DeMux)36で分離された上記の「拡張帯域」に属する情報に対して、上述した構成要素37,38,39,40,41および42による「主帯域」用の処理と同様の処理を、構成要素37′,38′,39′,40′,41′および42′によって施し「拡張帯域」側の送信データ信号Stを得て、既述の「主帯域」側の送信データ信号Stと一体にする。
上記の「拡張帯域」側の送信データは、「拡張帯域」によるデータ伝送を必要とするときだけ生成されるが、その必要があるか否かは、既述の選択/設定部15からの帯域設定指示信号Sbの内部によって決定される。
次に図4を参照すると、図2に示した構成要素21〜25およびSr,Dr,Du,If,Sbに対応する部分には、これらの参照番号や記号21〜25およびSr,Dr,Du,If,Sbを付して示す。
無線部21は本図の例によれば、バンドパスフィルタ(BPF)51によりアンテナATからの受信信号のうち不要な帯域の信号を除去し、ミキサ52およびローカルオシレータ53により所要の受信周波数に変換して受信データ信号Srを得る。
この受信データ信号Srは、マルチキャリア伝送受信処理部22に入力されて処理される。この処理部22は本図の例によると、図示する構成要素54,55,56,57および58からなる。
まずガードインターバル(GI)除去部54にて、送信側で挿入されたガードインターバルが除去される。GI除去後の信号はさらにシリアル/パラレル変換部(S/P)55にてパラレル信号に変換され、高速フーリエ変換部(FFT)56においてそのパラレル信号に対し周波数−時間変換を行う。この時間変換されたパラレル信号は、再びパラレル/シリアル変換部(P/S)57にてシリアル信号に変換される。
一方アンテナATからの受信信号の中に、「拡張帯域」に属する情報があるときは、ミキサ52′およびローカルオシレータ53′によって該「拡張帯域」情報の信号が抽出され、上述した構成要素55〜57による処理と同様の処理が同様の構成要素S/P55′,FFT56′およびP/S57′によって施され、時間変換されたシリアル信号となる。
上記のパラレル/シリアル変換部57および57′からの各シリアル信号は多重化部(Mux)58にて多重化され、さらに復調部23にて復調される。なお、「主帯域」に属する情報のみしか送信されてこないときは、上記多重化部58は多重化は行わず、単に信号を通過させるのみである。
多重化部58からの信号は次段の復調部23にて復調された受信データDrとなった後、受信データ復号部24に入力される。この復号部24は本図の例によれば、分離部(DeMux)59、データチャネル復号部60、制御チャネル復号部61および伝送データ量算出部62からなる。
上記分離部24は、受信データDrをデータチャネル側データと制御チャネル側データとに分離して、それぞれを復号部60と復号部61とに分配する。復号部60からは、後述する伝送データ量に基づき、元の伝送データDuが再生される。一方、復号部61からは、「使用周波数帯域情報」Ifが再生される。
復号部61からの上記情報Ifは、一方において伝送データ量算出部62に入力され、ここでそのIfに基づき受信伝送データのデータ長を算出し、このデータ長に基づいて上記の復号部60による伝送データの復号を行う。
復号部61からの上記情報Ifは、他方において、既述の使用周波数帯域設定部25に与えられ、ここで前述の帯域設定指示信号Sbが生成される。そしてこの信号Sbの内容によって、選択された周波数帯域に対応した設定を、図示する点線の経路にて、それぞれの回路部分(22,58,59)に対して行う。なお、図4の受信データ復号部24の構成は、最初に一つの復号部(復号部60と61の共通化)に受信データDrを入力して復号した後で、分離部59にてデータチャネルと制御チャネルとに分離するようにしてもよい。
上述した図3および図4の構成では、「主帯域」の周波数帯域は固定で、「拡張帯域」の周波数帯域のみが可変である。しかし本発明のある実施態様では「拡張帯域」のみならず「主帯域」の方もその周波数帯域を可変にすることができる。これを実現する構成例を図に示す。
図5は本発明に基づく通信装置(送信側)10の変形例を示す図であり、
図6は本発明に基づく通信制御装置(受信側)20の変形例を示す図である。
これらの図5および図6に示す構成と、前述した図3および図4に示す構成との相違は、図5において、使用周波数帯域選択/設定部15からの帯域設定指示信号Sbによる指示範囲が、「拡張帯域」側(37′〜42′)のみ(図3の場合)ならず、「主帯域」側(37〜42)にも及んでいることである。また図6において、使用周波数帯域設定部25からの帯域設定指示信号Sbによる指示範囲が、「拡張帯域」側(52′〜57′)のみ(図4の場合)ならず、「主帯域」側(52〜57)にも及んでいることである。かくして、「主帯域」の周波数帯域の変更も可能となる。
また、上述の具体例の説明はOFDMによる通信を前提として行ったが、この他にもMC−CDMAによる通信を前提とすることも可能である。この後者の場合(MC−CDMAベース)における通信装置の一例についてもここで示しておく。
図7は本発明に基づく通信装置(送信側)10の他の変形例を示す図であり、
図8は本発明に基づく通信装置(受信側)20の他の変形例を示す図である。
例えば前述した図5および図6と、本図7および図8とを比較すると、送信側(10)では、マルチキャリア伝送送信処理部13の構成が異なり、また受信側(20)では、マルチキャリア伝送受信処理部22の構成が異なる。
すなわち、図7に示す処理部13においては、コピア部(Copier)46と乗算部47とが用いられている点が異なる。また、図8に示す処理部22においては、乗算部65と合成部(Σ)66とが用いられている点が異なる。
まず、送信動作について図7を用いて説明する。生成された送信データを変調し、コピア部(Copier)46でサブキャリア数分コピーする。乗算部47にてそのコピーされた信号に拡散コード(C1,C2…Cn)を掛ける。この結果をIFFT部(38,38′)でIFFTを行い時間−周波数変換を行う。続いて、GI挿入部40で、GIを挿入後、周波数変換しアンテナATより送信する。また、使用周波数帯域選択部15で選択した使用周波数帯域を基に、マルチキャリア伝送送信処理部13の設定を変更する。
次に受信動作について、図8を用いて説明する。まず、受信信号を周波数変換してベースバンド信号を得、GI除去部54で、GIを除去する。続いて、シリアル/パラレル変換し(55,55′)、それぞれに拡散コード(C1,C2…Cn)を乗算部65にて掛け逆拡散する。その結果をFFT部(56,56′)でFFTし、周波数−時間変換を行った後、合成部66にて和をとる。この結果を復調部23で復調する。以後前述と同様に処理し、使用周波数帯域情報Ifを抽出する。そして、その抽出した使用周波数帯域情報Ifを基に、マルチキャリア伝送受信処理部22の設定を変更する。なお、図7と図8において、使用周波数帯域を変更する場合は、周波数拡散のコード数nを可変とすればよい。上記のようにMC−CDMAを用いた場合、OFDMと比較して装置構成を簡易にできる。しかし一方で、FFTおよびIFFTのポイント数を動的に可変する必要が生じるため、制御が煩雑になる。
以下、周波数帯域の配置構成図を参照しながら、さらに本実施態様1を説明する。
OFDM等を用いた使用周波数帯域を変更できる通信システムにおいて、使用周波数帯域情報Ifを特定の周波数帯域で伝送する。そして、特定の周波数帯域を復調および復号することにより、使用帯域情報Ifを得ることができる。この情報Ifにより、拡張された帯域での通信が可能となる。その前提として、本発明では次のように全周波数帯域の分割を行う。
図9は通信システム内における周波数分割の様子を示す図である。本図の一連のサブキャリアは、通信システムに割り当てられた全周波数帯域を示す。そしてこの全周波数帯域を、複数の周波数帯域に分割する。本図では4分割の例を示しており、四つの周波数帯域、すなわち「帯域1」、「帯域2」、「帯域3」および「帯域4」に分割する。そしてこれらの「帯域1」〜「帯域4」のいずれかを選択して上記「主帯域」とし、さらにそれ以外の帯域を選択して上記「拡張帯域」とする。
図10は「主帯域」と「拡張帯域」とを一つずつ選択した様子を示す図である。「主帯域」として例えば上記帯域1を選択し、また「拡張帯域」として例えば上記帯域2を選択する。前述のとおり、「主帯域」は制御チャネル(CH)とデータチャネル(CH)の伝送に割り当て、「拡張帯域」はさらなるデータチャネルの伝送に割り当てる。ある端末が使用する主帯域は、例えば基地局またはその上位の基地局制御装置が決定する。あるいはこの逆に、端末側から基地局側に対して主帯域を指定してもよい。
上記主帯域は、通信システムとして予め固定としてもよいし、また、通信装置相互(基地局と端末)間での無線確立時に設定し、その通信が完了するまでその設定を固定としてもよい。
さらに通信装置(ユーザ端末)が複数あるときは、ユーザ端末毎に異なる主帯域を設定してもよい。この様子を図で示す。
図11は複数ユーザに対する主帯域の割り当て態様の第一例を示す図であり、
図12は複数ユーザに対する主帯域の割り当て態様の第二例を示す図である。なおこの割り当て態様は、拡張帯域に対して適用することができる。
まず図11を参照すると、複数の周波数帯域、すなわち帯域1〜帯域4の各々にそれぞれ個別に各ユーザU1〜U4の主帯域を割り当てる。ただしこの場合は、ユーザ数が帯域の数によって制限されてしまう。
そこで図12に示すように、同一の主帯域を複数の通信装置(ユーザ端末)に対して同時に割り当てる。これはユーザ多重によって可能となる。この多重方法としては、時間多重や拡散コード多重があり、あるいはこれらを複合した多重でも構わない。
さらに本実施態様1では、データ情報(伝送データDu)の所要伝送速度に応じて、使用周波数帯域(帯域1〜帯域4)を増減することもできる。
すなわち、基地局において、通信中である他の端末の通信状況や伝搬環境および使用周波数帯域等を考慮し、他の周波数帯域を使用可能と判断した際には、使用周波数帯域の拡張を行う。なお、拡張に際して、端末間の通信の優先度や、所要伝送速度などの送信データ属性(QoS:Quality of Service)により、優先的に使用周波数の拡張を行ってもよい。
このように、使用周波数帯域情報Ifが特定の周波数帯域(主帯域)にて伝送されるので、受信側は、まずその主帯域を受信するだけでよく、他の周波数帯域まで受信して復調および復号する必要はない。また、拡張帯域を用いることにより、伝送速度の一層の高速化が可能となって、周波数利用効率の改善が図れる。
〔実施態様2:主帯域の動的な変更〕
初めに本実施態様2で開示するいくつかの特徴を掲記すると次のとおりである。
i)複数の周波数帯域(帯域1〜帯域4)のうち主帯域が占有すべき周波数帯域を、時間経過と共に可変とすることであり、
ii)通信装置(10,20)間での伝搬環境の良否を判定し、上記複数の周波数帯域のうち最も良い伝搬環境の周波数帯域またはこれに準ずる周波数帯域を選択して主帯域として設定することであり、
iii)主帯域の新たな設定に際し、その周波数帯域の変更を事前に相手方通信装置に通知することであり、
iv)通信装置間で、送信したパイロットチャネルまたはパイロット信号に応答して得た伝送品質(CQI)の検出結果を用いて、上述した伝搬環境の良否の判定を行うことであり、
v)その伝搬環境の良否の判定は、上記複数の周波数帯域の全てについて順次または同時に行うことであり、
vi)またその伝搬環境の良否の判定結果を、特定の周波数帯域での制御チャネルにて相手方通信装置に伝送することである。
一般に制御チャネルの伝送特性は、データチャネルと比較してその伝送品質が良くなければならない。まず、データを伝送すべき回線を確実に設定しなければならないからである。すなわち、制御チャネルを含む主帯域は、拡張帯域と比較してその伝送品質が良くなるように、伝搬環境のより良い周波数帯域を選択する必要がある。そこで、伝搬環境の良否に応じて主帯域として設定する周波数帯域を自在に選択とする具体例について説明する。
図13は主帯域の周波数帯域を動的に変更する一例を示すフローチャートである。なお、基地局と端末との間における基本的な送受信動作は、前述の実施態様1において説明したとおりである。またこの図13において、実線のブロックはそれぞれ基地局の動作を表し、点線のブロックはそれぞれ端末の動作を表している。ただしこの逆であっても構わない(後述する他のフローチャートについても同様)。
ステップS11:各周波数帯域でパイロットチャネル信号を送信する。
ステップS12:全てのパイロットチャネル信号を受信し、
ステップS13:各SNR等を算出してCQIに変換し、
ステップS14:各CQIを上り制御チャネルで伝送する。
ステップS15:各CQIを受信し、
ステップS16:使用周波数帯域を選択すると共に、帯域の変更タイミングを決定し、 ステップS17:選択した使用周波数帯域と、決定した変更タイミングとを、下り制御チャネルで伝送する。
ステップS18:上記の使用周波数帯域と、変更タイミングとを受信し、
ステップS19:上記の変更タイミングに合せて、各回路部での設定を変更し、
ステップS20:その変更後の主帯域を用いて、受信動作を開始する。
なお上記のSNRは、Signal to Noise Ratio、CQIは、Channel Quality Indicatorである。なおCQIに関する定義は、3GPP(3rd Generation Partnership Project http://www.3gpp.org/)のTS25.212 Release 5等に記述されており、またこれらの仕様は、http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html-info/25-series.htmに登録されている。
図13に一例を示す上記フローチャートに従って主帯域を時間経過と共に可変にするための処理は、例えば次のような装置構成によって実現することができる。
図14Aおよび14Bはパイロット信号の送信側の装置構成例を示す図であり、
図15Aおよび15Bはパイロット信号に対する応答(CQI)情報の返送側の装置構成例を示す図である。
図14Aおよび14Bに示す構成は、前述した図3(または図5)の構成と実質的に同じであって、新たに注目すべき要素は、本図左端のパイロット信号Sp(またはパイロットチャネル)と、該パイロット信号Spおよび使用周波数帯域情報Ifを多重化する多重部(Mux)71であり、また、本図の下半分におけるCQI抽出部72である。この下半分の構成は、前述した図4(または図6)の構成と実質的に同じであり、新たに注目すべき構成要素は、本図中央下側のCQI抽出部72である。なお本図の下半分において、図4の中で対応する部分には図4に用いた参照番号52,53,54…に対し100を付加して、152,153,154…のように示す。
また図15Aおよび15Bに示す構成は前述した図4(または図6)の構成と同じであって、新たに注目すべき構成要素は、本図上半分におけるSNR測定部75、CQI算出部76であり、さらに折り返しパス77を経由した後の、本図下半分における符号化部78および加算部79である。なお本図の上半分において、図4(受信側)の中で対応する部分には図4に用いた参照番号52,53,54…を用いて示し、また本図の下半分において、図3(送信側)の中で対応する部分には図3に用いた参照番号12,37,38…に対し100を付加して、112,137,138…のように示す。
上記のパイロット信号Spは、実運用上は、他の送信情報と多重化されて伝送される。この多重化方法には例えば下記の2通りがある。
図16はパイロット信号の第1の多重例を示す図であり、
図17はパイロット信号の第2の多重例を示す図である。なお両図中、“P”はパイロット信号Spを表し、“C”は既述の通信制御情報Ictを表し、“D”は既述した伝送データDuを表す。
図16はパイロット信号Spを時間方向に多重化していることを示し、一方、図17はパイロット信号Spを時間方向と周波数方向の双方に多重化していることを示す。
図18は、上述した実施態様2における主帯域の動的変更例を分かりやすく示す図である。時間経過は本図の上から下へと向かう。この時間経過と共に、主帯域は、より良好な伝搬環境を追って、例えば「帯域1」→「帯域2」→「帯域1」→「帯域4」のように変遷する。
かくのごとく、基地局は、運用している周波数帯域すべてにおいて、伝搬環境を測定するための信号(パイロット)を多重化し制御チャネルとして伝送する。なお実運用上は、伝送データDuを含まない場合も想定される。またパイロット信号Spに代えてパイロットチャネルを設けてもよい。
端末は、すべての周波数帯域(帯域1〜帯域4)について、パイロットチャネル信号を受信し、例えばSNRやCIR(Carrier to Interference Ratio)等の受信状況や伝搬環境を測定し、その測定値から上記CQIを算出し、上り制御チャネルを用いて、各帯域毎に順次または同時に、基地局に伝送する。なお、上記CIRやSNR等の測定結果をそのまま伝送してもよい。
上り制御チャネル信号を受信し、CQIを復調および復号した基地局は、複数あるCQIの中から最もよいCQI値の周波数帯域を主帯域とし選択する。この選択結果と、主帯域の変更タイミングとを下り制御チャネルに乗せて端末に伝送する。
端末はこの下り制御チャネル信号を受信して復調および復号し、使用周波数帯域と変更タイミングの各情報を抽出する。続いて、その変更タイミングに合わせて、使用周波数帯域の変更を行う。なお、変更タイミングは、例えば絶対時間や相対時間あるいはスロット単位によって定めても良い。また、変更タイミングを伝送せず、下り制御チャネル信号の送信から5スロット後などとし、システム固定としてもよい。
上記では、最も伝搬環境の良い周波数帯域を主帯域として選択したが、他の端末の状況によっては一番目に良好な周波数帯域が選択できない場合も考えられる。そのような場合は、それに準ずる二番目に良い周波数帯域を選択してもよい。
なお、ここでは主帯域の選択を基地局の方が行ったが、端末において同様に最も伝搬環境の良い周波数帯域を選択して、基地局に伝送するようにしてもよい。
端末におけるSNRやCIR等の測定は、上述のように、各周波数帯域に対して同時に測定しても良いし、時間で分けて測定してもよい。また、周波数帯域幅の狭い帯域のものが連続している等の状況下では、伝搬環境が大きく変わることはないのでこのような場合は、一つの周波数帯域のみを測定することとしてもよい。また、その測定値は、一定時間測定した後の平均値としてもよい。
また、実施態様1では拡張帯域は伝送データDuのみ送信するものとして述べたが、各周波数帯域の伝搬環境を測定するために、伝送データDuに加えパイロットチャネルまたはパイロット信号を送信するようにしてもよい。
上記の説明では、基地局から端末への伝送として説明したが、この逆に端末から基地局への伝送としても同様に適用可能である。
既に述べたように、一般に制御チャネルの伝送特性はデータチャネルの伝送特性よりもその伝送品質において良好でなければならない。よって、制御チャネルを含む主帯域は、伝搬環境の良い周波数帯域を選択する必要があるが、上述した動作によって、最も良い伝搬環境にある周波数帯域を主帯域として選択することが可能となる。また、伝搬環境が時間経過と共に変動しても、常に最良の伝搬環境にある周波数帯域を、主帯域として選択することが可能となる。
これにより、制御チャネル情報の伝送誤りは減少するばかりでなく、受信側の装置設定が容易となり、かつ、伝送品質の改善も可能となる。さらに、伝送誤りに起因するデータ再送回数を低減することもできることから、伝送速度を一層高速にすることができる。
さらに、主帯域の設定が可変であることから、周波数帯域間の利用状況(負荷)の不均衡を避けることができ、周波数利用効率の改善が図れることになる。
〔実施態様3:拡張帯域の動的な変更〕
初めに本実施態様3で開示するいくつかの特徴を掲記すると次のとおりである。
i)複数の周波数帯域(帯域1〜帯域4)のうち拡張帯域として設定した周波数帯域を、時間経過と共に可変とすることであり、
ii)通信装置(10,20)間での伝搬環境の良否を判定し、上記複数の周波数帯域のうち最も良い伝搬環境の周波数帯域に準ずる周波数帯域を選択して拡張帯域として設定することである。
iii)また無線回線確立時に、当該通信装置(10,20)が使用可能な周波数帯域を限定し、その限定された周波数帯域内で主帯域および拡張帯域を動的に割り付けることである。
iv)さらにまた拡張帯域として設定すべき周波数帯域の設定情報を、事前に相手方通信装置に通知して拡張を実行することであり、
v)相手方通信装置から、拡張が可能なまたは変更可能な周波数帯域に関する周波数帯域設定情報を受信して、拡張帯域または主帯域の変更を行うことであり、
vi)さらにその変更のタイミングに関する変更タイミング情報をも受信することである。
vii)また伝搬環境の良否の判定結果を、特定の周波数帯域での制御チャネルにて相手方通信装置に伝送することであり、
viii)通信装置(10,20)間で、送信したパイロットチャネルまたはパイロット信号に応答して返送された伝送品質(CQI)の検出結果を用いて、伝搬環境の良否の判定を行うことであり、
ix)当該通信装置の使用可能周波数、各周波数帯域での伝搬環境の良否、各周波数帯域の使用状況およびデータ情報(Du)の所要伝送速度、の少なくとも1つに基づいて、拡張帯域の設定または変更の必要性を判断することであり、
x)上記の拡張帯域の新たな設定に際し、その周波数帯域の変更を事前に相手方通信装置に通知することである。
図19は拡張帯域の導入および変更の第1例を示すフローチャートであり、
図20は拡張帯域の導入および変更の第2例を示すフローチャートであり、
図21は拡張帯域の導入および変更の第3例を示すフローチャートである。
具体的には、図19は端末の使用可能周波数帯域と各周波数帯域のCQIとを用いて拡張帯域を選択する場合の制御フローを示す。また図20はその使用可能周波数帯域と、各周波数帯域の使用状況および伝送データの所要伝送速度とを用いて拡張帯域を選択する場合の制御フローを示す。さらに図21は端末の使用可能周波数帯域、各周波数帯域のCQI、各周波数帯域の使用状況および伝送データの所要伝送速度を用いて、拡張帯域を選択する場合の制御フローを示す。
図19において、
ステップS21:使用可能周波数帯域を送信する。
ステップS22:その使用可能周波数帯域を受信し、
ステップS23:その使用可能周波数帯域で、パイロットチャネル信号を送信する。
ステップS24:全てのパイロットチャネル信号を受信し、さらに各SNR等を算出すると共にCQIに変換して、
ステップS25:上記の各CQIを上り制御チャネルで伝送する。
ステップS26:上記の各CQIを受信し、
ステップS27:そのCQIから拡張の必要の有/無を選択し、拡張周波数帯域を選択すると共にその変更タイミングを決定し、
ステップS28:その拡張周波数帯域と変更タイミングとを、下り制御チャネルで伝送する。
ステップS29:上記の拡張周波数帯域と変更タイミングとを受信し、
ステップS30:その変更タイミングに合せて各回路部の設定を変更し、
ステップS31:その変更後の拡張帯域にて受信動作を開始する。
次に図20において、
ステップS41:使用可能周波数帯域を送信する。
ステップS42:上記使用可能周波数帯域を受信し、
ステップS43:各周波数帯域の使用状況と、伝送データDuの所要伝送速度とを確認し、
ステップS44:拡張の必要の有/無を選択し、拡張周波数帯域を選択すると共にその変更タイミングを決定し、
ステップS45:その拡張周波数帯域と変更タイミングとを、下り制御チャネルで伝送する。
ステップS46:上記拡張周波数帯域と変更タイミングとを受信し、
ステップS47:その変更タイミングに合せて各回路部の設定を変更し、
ステップS48:その変更後の拡張帯域にて受信動作を開始する。
さらに図21において、
ステップS51:各使用可能周波数帯域を送信する。
ステップS52:その使用可能周波数帯域を受信し、
ステップS53:その使用可能周波数帯域にてパイロットチャネル信号を送信する。
ステップS54:全てのパイロットチャネル信号を受信した後、各SNR等を算出すると共にCQIに変換し、
ステップS55:上記の各CQIを上り制御チャネルで伝送する。
ステップS56:上記の各CQIを受信し、
ステップS57:各周波数帯域の使用状況と伝送データDuの所要伝送速度とを確認し、
ステップS58:拡張の必要の有/無を選択し、拡張周波数帯域を選択すると共にその変更タイミングを決定し、
ステップS59:その拡張周波数帯域と変更タイミングとを、下り制御チャネルで伝送する。
ステップS60:上記の拡張周波数帯域と変更タイミングとを受信し、
ステップS61:その変更タイミングに合せて各回路部の設定を変更し、
ステップS62:その変更後の拡張帯域にて受信動作を開始する。
本実施態様3では拡張帯域の動的な変更について、説明している。一般に回線設定時(無線回線確立時)に、端末から基地局(または、基地局制御装置)に対してその端末が使用可能な周波数帯域を伝送する。これが上述した、端末使用可能周波数帯域である。なお、この使用可能周波数帯域を通知する場合を想定して説明するが、通信システムとして使用可能周波数帯域が予め決まっている等の場合は、通知を行わないことも考えられる。
上記の実施態様2の場合と同様に、基地局はパイロット信号Spを送信し、端末は受信した該パイロット信号Spを基に算出した前述のCQIを基地局に伝送する。次に、基地局は、端末の使用可能周波数帯域や、端末から伝送される各周波数帯域のCQIや、他の端末の利用状況や、伝送するデータDuの所要伝送速度等を考慮し、その端末に対して、周波数帯域の拡張(使用周波数帯域数の変更)を行う必要があるかどうか判断する。
拡張を行う場合は、周波数帯域を選択する。さらに、使用周波数帯域を拡張するときの上記変更タイミングを選択する。そしてこの拡張帯域の選択情報と上記の変更タイミングとを制御チャネルにて伝送する。この制御チャネル信号を受信した端末は、拡張帯域についての情報と変更タイミングとを基に、端末内の各回路部の設定を変更してから、その拡張帯域での受信を開始する。
かかる動作について説明を補足する。ただし前述した図21の制御フローを参照する。まず、端末が基地局またはその上位の基地局制御装置等に対して、その端末が使用可能な周波数帯域を送信する。これを受けた基地局は、使用可能な周波数帯域にてパイロットチャネル信号またはパイロット信号Spを送信する。なお、パイロットチャネル信号を端末共通の共通チャネルにて送信する場合は、使用周波数帯域の選択を必要としない。
各周波数帯域を介したパイロットチャネル信号を受信した端末は、前述のCIRやSNR等を基に前述のCQIを算出し、このCQI算出値を上り制御チャネルにて基地局に伝送する。これを受けた基地局は、CQIや各周波数帯域の利用状況や伝送データDuの所要伝送速度等のQoSを考慮し、拡張の必要の有/無、拡張する場合の使用周波数帯域を選択すると共にその帯域の変更タイミング等を決定し、下り制御チャネルにて端末に通知する。
これらの情報を受けた端末は、上記変更タイミングに合わせて、端末の各回路部を設定しまたは再設定し、上記変更タイミング以降はその変更後の拡張帯域にて受信を行う。
図22は本実施態様3における拡張帯域の動的変更例を分かりやすく示す図である。時間経過は本図の上から下へと向かう。この時間経過と共に、拡張帯域は、最も伝搬環境の良好な周波数帯域に準じて良好な周波数帯域を選択しながら、拡張の必要が生ずる毎に、図に例示する「帯域2」→「帯域2+帯域3+帯域4」のように、設定していく。後者のように、拡張帯域としては複数の帯域を組み合わせて設定することもできる。
このように、時間的に変動する伝搬環境に対しても、比較的伝搬環境の良好な周波数帯域を拡張帯域として選択していくことができる。これにより、制御チャネル情報の伝送誤りが減少し、受信側の装置設定が容易となり、かつ、伝送品質の改善も可能となる。さらに、データの再送回数を低減することができることから、伝送速度を改善することができる。また、受信側で設定を修正するための処理時間を考慮して、拡張帯域の変更を事前に相手方に通知することにより、装置に対する上記設定の変更が容易となる。
〔実施態様4:主帯域および拡張帯域の動的な変更〕
初めに本実施態様4で開示する特徴を以下に示す。
i)複数の周波数帯域(帯域1〜帯域4)のうち主帯域が占有すべき周波数帯域と、その複数の周波数帯域のうち拡張帯域が占有すべき周波数帯域の双方を、双方が重なり合うことなく、時間経過と共に可変とすることであり、
ii)また1つの主帯域と、少なくとも1つの拡張帯域とを同時に変更することである。
図23は主帯域と拡張帯域の双方を変更する一例を示すフローチャートである。
本図において、
ステップS71:使用可能周波数帯域を送信する。
ステップS72:その使用可能周波数帯域を受信し、
ステップS73:その使用可能周波数帯域を用いてパイロットチャネル信号を送信する。
ステップS74:全てのパイロットチャネル信号を受信し、各SNR等を算出すると共にCQIに変更して、
ステップS75:上記の各CQIを上り制御チャネルで伝送する。
ステップS76:上記の各CQIを受信し、
ステップS77:主帯域すなわち最も伝搬環境の良い周波数帯域を選択し、
ステップS78:さらに拡張帯域すなわち伝搬環境が2番目に良い周波数帯域を選択し、
ステップS79:上記の拡張周波数帯域とその変更タイミングとを、下り制御チャネルで伝送し、
ステップS80:その変更タイミングを選択する。
ステップS81:上記の拡張周波数帯域と変更タイミングとを受信し、
ステップS82:その変更タイミングに合せて、各回路部の設定を変更し、
ステップS83:その変更後の拡張帯域にて受信動作を開始する。
図23の制御フローについて説明を補足すると、ここでは、伝送データDuの所要伝送速度から、主帯域と拡張帯域とを1つずつ選択するものとする(図24参照)。端末から伝送された各周波数帯域における上記のCQIを基に最も伝搬環境が良い周波数帯域を主帯域として選択する。そしてその次に(二番目に)伝搬環境の良い周波数帯域を拡張帯域として選択する。続いて変更タイミングを選択し、これらを制御チャネルを介して相手方へ伝送する。
使用周波数帯域情報(主帯域と拡張帯域の双方)と変更タイミング情報とを受信した端末は、この変更タイミングに合せて受信側回路部の設定を変更した上で、主帯域と拡張帯域の双方の信号を受信する。
図24は本実施態様4における主帯域と拡張帯域の双方の動的変更例を分かりやすく示すフローチャートである。時間経過は図の上から下へと向かう。主帯域は本図に例示するように、「帯域1」→「帯域1」→「帯域3」→「帯域2」と設定されていくのに伴い、拡張帯域は、その主帯域の左右(本図の左側または右側)いずれかに対をなして設定されていく。ただし両帯域は常に対をなしている必要はなく、例えば図中三段目に着目すると、この拡張帯域(帯域4)が存在しない場合もあり、また例えば図中四段目に着目するとこの拡張帯域は、図示する帯域3ではなく、間をおいてその右隣りの帯域4に存在してもよい。
以上により、最も良いならびに次に良い伝搬環境となる周波数帯域をそれぞれ主帯域と拡張帯域にすることが可能となる。また、伝搬環境が時間変動しても、最も良いならびに次に良い伝搬環境の周波数帯域をそれぞれ主帯域および拡張帯域として選択することが可能となる。
これにより、前述の実施態様と同様、制御チャネル情報の伝送誤りは減少し、受信側の装置設定が容易となり、かつ、伝送品質の改善も可能となる。さらに、データの再送回数を低減することもできることから、伝送速度を改善することができる。また、受信側での設定を修正するための処理時間を考慮して、主帯域および拡張帯域の変更を事前に相手方に通知することにより、装置設定の変更が容易となる。
〔実施態様5:伝搬環境により主帯域および拡張帯域を選択〕
初めに本実施態様5で開示する特徴を以下に示す。
i)通信装置(10,20)間での伝搬環境の良否判定を、複数の周波数帯域(帯域1〜帯域4)の各々について個別に行い、その判定結果を各周波数帯域毎に個別に相手方通信装置に伝送することであり、
ii)あるいは通信装置(10,20)間での伝搬環境の良否判定を、複数の周波数帯域(帯域1〜帯域4)の各々について個別に行い、全ての周波数帯域についてのそれぞれの判定結果を多重化してまとめて相手方通信装置に伝送することであり、
iii)上記の判定結果を、主帯域、拡張帯域および伝搬環境の比較的良好な周波数帯域のうちのいずれかを使用して、相手方通信装置に伝送することである。
本実施態様5を実施するためには既述の図15の構成例を利用することができ、または図25の構成例を利用することができる。
図25はパイロット信号に対する応答(CQI)情報の返送側の装置構成例を示す図である。本図の構成例は、上記図15の構成例と近似しており、その相違点は、図15における下半分では複数の周波数帯域のそれぞれに対応させた個別処理になっているのに対し、図25における下半分では複数の周波数帯域についての各CQIを多重化しまとめて処理する構成となっていることである。つまり図25では一つの制御チャネルで伝送品質(CQI)を相手方に送信するようになっており、このために多重化部(Mux)80が折り返しパス72の出力側に導入される。
前述した各実施態様においては、各周波数帯域のCQIを端末から基地局へ伝送する場合に、周波数帯域毎の上り制御チャネルにて伝送してもよいし、また、例えば主帯域での上り制御チャネルにて全ての周波数帯域についての各CQIを伝送するようにしてもよい。
周波数帯域毎の上り制御チャネルを用いてCQIを伝送する場合は、図15の構成例を用いる。なお、本構成例では、上り伝送データDuについて記述していないが、このデータDuについては制御チャネルに多重して伝送することも可能である。また、本構成例は、複数の周波数帯域分について同時にパイロットチャネル信号を受信する場合を想定している。
図15に示す端末において、各周波数帯域の信号を受信し、それぞれの周波数帯域に対応させて周波数変換を行う。その後GI除去部54でGIを除去し、S/P部55、FFT部56およびP/S部57によって周波数−時間変換を行ったのち、復調部23にて復調する。この信号を用いてSNRやCIR等による伝搬状況の測定をした後、CQI値を算出する。
周波数帯域毎に算出された上記のCQI値を、それぞれの周波数帯域の制御チャネルにて伝送する。この際、他の制御チャネル信号も併せて伝送することも可能である。さらにまた、上り伝送データと併せて伝送することも可能である。
算出された上記のCQIは、折り返しパス77にて図15の下半分の部分に入り、符号化部78にてこれを符号化し、変調部112にて変調した後、S/P部137、IFFT部138およびP/S部139によって時間−周波数変換を行う。さらにGI挿入部140にてGIを挿入し、対応する周波数帯域にそれぞれ変換してアンテナATより送信する。
以上により、前述した実施態様と同様、各周波数帯域のCQI(伝搬状況)を基地局に伝送することが可能となる。また、端末より送られたCQI(伝搬状況)を基に、伝搬環境の良い周波数帯域を主帯域として選択することが可能となる。同様に、伝搬環境の比較的良い周波数帯域を、拡張帯域として選択することが可能となる。このように、前述の実施態様と同様、より良い周波数帯域を選択することにより、伝送特性は改善し、またデータ再送の回数が減少することから、伝送速度の改善も可能となる。
次に特定の周波数帯域の上り制御チャネルを用いてすべてのCQIを伝送する場合については、上記図25の構成例を採用する。上述した周波数帯域毎に上り制御チャネルを用いる場合と同様に、各周波数帯域でのCQIを算出する。これらの算出結果を上記多重化部(Mux)80で一つにまとめた後、符号化部78で符号化する。さらに変調部112で変調した後、S/P部137、IFFT部138およびP/S部139によって時間−周波数変換を行い、GI挿入部140でGIを挿入する。その後回路141,142によって周波数変換しアンテナATから送信する。
なお、使用するCQIの伝送に使用する周波数帯域は、比較的伝送環境が良いものとして選択された主帯域でもよいし、あるいは最も伝搬環境のよい(CQIが最も良い)周波数帯域を選択してもよいし、他の周波数帯域を選択してもよい。また、通信システムとして予め設定した周波数帯域を用いてもよい。
以上により、前述した実施態様と同様、各周波数帯域のCQI(伝搬状況)を基地局に伝送することが可能となる。また、端末より送られたCQI(伝搬状況)を基に、伝搬環境の良い周波数帯域を主帯域として選択することが可能となる。同様に、伝搬環境の良い周波数帯域を拡張帯域として選択することが可能となる。このように、より良い周波数帯域を選択することにより、伝送特性は改善し、またデータの再送回数が減少することから、伝送速度の改善も図ることができる。
〔実施態様6:使用周波数帯域情報の高効率伝送〕
本実施態様6に開示する特徴は、複数の周波数帯域(帯域1〜帯域4)の各々について、(i)周波数帯域識別番号、(ii)主帯域としての使用/未使用、(iii)拡張帯域としての使用/未使用および(iv)現状維持中、の各情報(i〜iv)のうちの少なくとも1つを符号化して相手方通信装置へ伝送することにある。
図26は使用周波数帯域情報の高効率伝送を説明するための表を示す図である。表1は使用周波数帯域−帯域番号の対応の一例を示し、表2および表3は、使用周波数帯域−使用/未使用の設定の仕方について、それぞれ第1例および第2例を示す。
前述した各実施態様における前記使用周波数帯域情報の伝送において、例えば周波数帯域に番号を割り付けてその番号を伝送することによって、周波数の値そのものを伝送する場合に比較して制御チャネル情報量を削減することができる。上記の表1〜表3を用いて具体例を説明する。なおここでは、通信システム全体で使用できる周波数帯域を800[MHz]〜820[MHz]とし、これを図9のように4つの周波数帯域に分割して使用する例を示す。
まず、表1に示すような各帯域に対してそれぞれ帯域番号(1,2,3,4)を割り付ける。また、どの周波数帯域を主帯域として使用するか、どの周波数帯域を拡張帯域として使用するか(または使用しないのか)を、表2のように設定する。
このとき例えば、帯域1は「未使用」、帯域2を「主帯域」として使用、帯域3を「拡張帯域」として使用、帯域4は「未使用」とした場合、以下のような制御データ
“yy1100zz”ここでyyとzzは、“01”または“10”
となる。
なおここでは、帯域1、帯域2、帯域3および帯域4の順で上記制御データを作成したが、この順番は、送信側と受信側とで認識可能であれば、どのような順番でも構わない。また帯域の数を任意に増やすことも減らすこともできる。さらに、ここでは4連続した周波数帯域を例として説明したが、途中に未使用帯域を有する不連続な周波数帯域でもよい。
以上のように、符号化(テーブル化)することにより、例えば帯域の中心周波数の値そのものを伝送する場合に比較して情報量を削減することができる。
さらに表3に示すように、使用状況に変更がない場合すなわち「現状維持」の場合の設定を設けてもよい。
以上のように使用周波数帯域情報を符号化(テーブル化)することにより、制御信号のデータ長を圧縮することができる。よって、伝送データと制御チャネル情報との比率が後者について減少し、よって伝送データの伝送効率が向上する。
〔実施態様7:拡張帯域の連続設定および不連続設定〕
初めに本実施態様7に開示する特徴を掲記すると以下のとおりである。
i)1つの拡張帯域または2以上の連続する拡張帯域を、周波数軸上で、主帯域に連続した周波数帯域に割り付けることであり、
ii)あるいは上記周波数軸上で、拡張帯域のいずれにも連続しない孤立拡張帯域をさらに含むことであり、
iii)上記の孤立拡張帯域に付随する不使用周波数帯域の部分については無意味信号を挿入して相手方通信装置へ伝送することである。なお本実施態様7を好適に表す図としては、図27と既述の図22とがある。
図27は拡張帯域の動的変更例を示す図であり、上記図22が連続した拡張帯域を選択する場合を示すのに対し、図27は不連続な拡張帯域の選択(同図の第四段参照)が行われる場合を示す。なお図27の見方は、上記図22の見方と全く同じである。以下に具体的に説明する。
まず、拡張帯域が連続の場合について説明すると、既述の図22は拡張帯域が連続的に選択されていることをも表している。ただし一例として、主帯域に対をなして連続する帯域を、拡張帯域として選択している場合を示す。この図22の態様では、拡張帯域が主帯域に連続していることから、不連続の場合(図27)と比較し、信号処理が簡易となる。なお、送信動作および受信動作については、前述した各実施態様で説明したのと同様である。
一方図27では、上記のとおり拡張帯域が不連続な場合(第四段)も示している。このように、端末の使用可能周波数帯域や、伝搬環境および他の端末との兼ね合いから、拡張帯域を主帯域に対しまたは隣接の拡張帯域に対して不連続に選択することも可能である。
なお、これまでの説明では連続する周波数帯域をまたいだサブキャリア(図22の点線のSC参照)を設定していないが、他の端末の使用状況によっては、2つの周波数帯域をまたいだサブキャリアを設定してその分、伝送情報量を増やすことも可能である。
また、受信側端末において、上記の不連続となっている周波数帯域の信号は、受信しないか、または、当該信号を強制的に無意味信号として処理する。これにより、拡張帯域が不連続であっても、支障なく受信を行うことができる。
以上のように、不連続な拡張帯域を設定することにより、端末の使用可能周波数帯域や、伝搬環境および他の端末の使用状況を考慮して拡張帯域を柔軟に選択できるようになる。またこれにより、周波数利用効率がより一層向上する。
〔実施態様8:各周波数帯域内のサブキャリア数を一定とする〕
本実施態様8に開示する特徴は、複数の周波数帯域(帯域1〜帯域4)のそれぞれの帯域幅を所定の一定値とし、かつ、それぞれの帯域内における一連のサブキャリアの数も所定の一定値とすることである。
図28は帯域拡張パターンの第1例を示す図であり、
図29は帯域拡張パターンの第2例を示す図であり、
図30は帯域拡張パターンの第3例を示す図である。
なおこれらの図28〜図30の見方は、前述した図22や図24や図27等の見方とほとんど同じであり、図22、図24、図27等では実際の波形を用いて表しているのに対し、図28〜図30ではそのような実際の波形に代えてサブキャリアのブロックとして表しているだけである。これは本実施態様8の説明をしやすくするためである。すなわち「周波数帯域単位」という概念を視覚的に分かりやすく表したものである。なお、図28〜図30中に記載されている用語は、「処理遅延」を除いて、既に説明済みである。この処理遅延とは、例えば図4を参照すると、使用周波数帯域情報Ifが使用周波数帯域帯域設定部25に入力されてから、帯域設定指示信号Sbが生成されさらに各回路部でのパラメータ設定が完了するまでの処理に要する時間遅延を意味する。
一般に、マルチキャリア伝送方式(OFDMやMC−CDMA等)のような一連のサブキャリアを用いた通信方式において、帯域幅の変更を行う場合、サブキャリア単位で変更を行うのが普通である。この場合、サブキャリア単位で使用/未使用を設定しなければならない。また、送信処理においても受信処理においても、サブキャリア単位で使用/未使用を意識した信号処理が必要であり、帯域の設定が煩雑かつ複雑となる恐れがある。さらに、ユーザ多重を行うような場合には、ユーザ間で各サブキャリアの使用/未使用を制御する必要が生じ、その結果周波数利用効率の低下をもたらす。
そこで本実施態様8では、通信システム全体の使用可能周波数帯域を複数の帯域(帯域1〜帯域4)に分割すると共に、その分割された各周波数帯域における「サブキャリアの数を一定」とした上で、一つまたは複数の周波数帯域を用いて通信装置間での伝送を行う。これにより、周波数利用効率の改善が図れる。
具体的には、例えば一つの周波数帯域を5[MHz]とし、その周波数帯域内のサブキャリアの数を25本とする。このような周波数帯域を複数設定し、周波数帯域単位で上記使用周波数帯域を可変にする。上記図28〜図30には、帯域単位での帯域拡張の具体例を示す。それぞれの図の横軸は帯域幅を示しており、ハッチングを施したブロック一つが一つの周波数帯域を表し、その一つの周波数帯域の中には、複数のサブキャリアが入るものとする。図9と同様に左から帯域1、帯域2、帯域3、帯域4となっていると考えればよい。
図28では、帯域1を主帯域とした場合を示し、図29では、帯域2を主帯域とした場合を示す。また、図30では、時間経過と共に拡張帯域の設定を変更する例を示し、かつ、その拡張帯域が不連続なものを含む場合(第6段目参照)を示している。なお、送受信の具体的な動作は、前述した実施態様において説明したとおりである。
以上により、使用周波数帯域を容易に可変にすることができ、かつ、周波数の利用効率を高めることが可能となる。さらにまた、サブキャリア単位で使用周波数帯域を可変にする場合と比較すると、上記の送受信動作が一層簡易となり、かつ、送受信機の構成も簡易なものとなる。
〔実施態様9:各周波数帯域内のサブキャリア数とサブキャリア帯域幅とを共に一定とする〕
本実施態様9に開示する特徴を掲記すると以下のとおりである。
i)複数の周波数帯域(帯域1〜帯域4)のそれぞれの帯域幅を所定の一定値とし、かつ、それぞれの帯域内における各サブキャリアの帯域幅も所定の一定値とすることであり、
ii)さらには、各サブキャリアの数も所定の一定値とすることである。これにより、周波数帯域単位で主帯域と拡張帯域が容易に設定できる。
前述の実施態様8においては、帯域当たりのサブキャリアの本数を一定としたが、本実施態様9ではさらに各サブキャリアの帯域幅も一定とする。
この結果、帯域相互間の違いはそれぞれの中心周波数の値だけとなる。これにより、ベースバンド信号処理は周波数帯域に関係なく均一化され、実施態様8と比較すると、送受信機の構成がさらに一層簡易なものとなる。
〔実施態様10:所要伝送速度と実伝送速度との差分に基づく帯域の設定〕
本実施態様10に開示する特徴を掲記すると以下のとおりである。
i)拡張帯域の要/不要を判断するために、情報の交換に必要と想定される所要伝送速度S1と実際に達成された実伝送速度S2との差分(S1−S2)を算出し、この差分の正負に応じてそれぞれ、拡張帯域が要および不要と判断することであり、
ii)ここに上記の実伝送速度は、使用する周波数帯域の数から算出される送信データ情報の数と、その送信データ情報の送信間隔とから求めることである。
図31は実施態様10に係る通信装置(送信側)の構成例を示す図であり、
図32は図31の装置における動作例を示すフローチャートである。
まず図31を参照すると、本図は前述した図5(図3も同じ)の構成とほとんど同じであるが、本図の左端に示す周波数帯域選択/設定部85(15の変形)と実伝送速度算出部86が導入された点が異なる。
また図32を参照するとその動作は、
ステップS91:所要伝送速度を確認し、
ステップS92:送信データ量を確認し、
ステップS93:実伝送速度を算出する。
ステップS94:ステップS91とS93の各速度値を基に、使用周波数帯域を拡張する必要があるかないか判定し、その必要があるとする。
ステップS95:拡張周波数帯域を選択し、また変更タイミングを決定し、
ステップS96:その拡張周波数帯域と、その変更タイミングとを、下り制御チャネルにて伝送する。
ステップS97:その拡張周波数帯域と変更タイミングとを受信し、
ステップS98:その変更タイミングに合せて、各回路部の設定を変更し、
ステップS99:変更後の拡張帯域にて受信を開始する。
さらに具体的に説明すると、前述の実施態様1では、所要伝送速度のみを基に、拡張帯域の使用/未使用および拡張帯域の数を決定したが、本実施態様8では、実際の実伝送速度と、所要伝送速度との差分を考慮して帯域の拡張または縮小を行う。
再び図31および図32を用いて、具体例を説明する。なお、実施態様1と同じ部分については説明を省略する。
ある伝送データDuの所要伝送速度Rdが10[Mbps]であるとし、主帯域と拡張帯域とを使用して伝送を行っているものとする。このとき、使用周波数帯域の数から算出した送信データの数とその送信間隔とから、実際の実伝送速度Raを、図31の実伝送速度算出部86により、算出することができる。この実伝送速度Raと所要伝送速度Rdとを、上記の選択/設定部85にて、比較して実伝送速度Raの方が低い場合は、使用周波数帯域を増やす(拡張)。また、例えば、実伝送速度Raが所要伝送速度Rdより大幅に上回り、使用周波数帯域を減らしても所要伝送速度Rdが順守できると判断した場合には、使用周波数帯域を削減(縮小)する。
以上により、所要伝送速度を満たしつつ、周波数利用効率の向上を図ることができる。なお、上記の方法のほかに、基地局から伝送したデータが端末に伝送できたかどうか(ACK/NACK)を基地局に返送してもらい、それを基に実伝送速度を算出し、使用周波数帯域を可変にするようにしてもよい。また端末において、基地局から伝送されたデータ量を基に伝送速度を算出し、基地局に返送してもらい、その値を基に使用周波数帯域を可変するようにしてもよい。
〔実施態様11:使用周波数帯域の拡大〕
図33は本実施態様11を説明するための図であり、特に注目すべき部分は「制限中の帯域」および「制限解除後の全周波数帯域」である。ここに本実施態様11に開示する特徴は以下に掲記するとおりである。
i)一連のサブキャリアによるマルチキャリア伝送方式にて通信装置(10,20)相互間で情報の交換を行う通信システムにおいて、この通信システムに将来割り当てられるべき全周波数帯域(図33の「制限解除後の全周波数帯域」参照)を分割してなる複数の分割周波数帯域(帯域a〜帯域d)のうち、現在はその一部の分割周波数帯域(「帯域a」)のみの使用が許可されている場合(「制限中の帯域」参照)、その使用が許可されている分割周波数帯域「帯域a」をさらに1または複数の周波数帯域に分けて(実施態様1〜10における帯域1〜帯域4のように)運用すると共に、現在制限されている他の分割周波数帯域(帯域bと帯域cと帯域d)の各々についても同様に1または複数の周波数帯域に分けておく。(実施態様1〜10における帯域1〜帯域4のように)。そして将来その制限が解除されたとき、全周波数帯域を分割してなる現在は未使用である複数の分割周波数帯域(帯域b〜帯域d)の各々に対して、前記の現在使用が許可されている分割周波数帯域(帯域a)を1または複数の周波数帯域に分けて運用したのと同様の運用を、即座に適用することであり、
ii)ここに上記の全周波数帯域を分割してなる複数の分割周波数帯域(帯域a〜帯域d)は、相互に一定の帯域幅を有し、かつ、その分割周波数帯域の各々におけるサブキャリアの数および帯域幅は、相互に一定値を有することである。
さらに具体的に説明すると、他の通信システムとの兼ね合いから、本通信システム(または基地局)が使用できる周波数帯域が制限されていて、その後、上記他の通信システムの使用周波数が他に移行された等の理由で、その制限が解除されるといったケースがあり得る。
このようなケースを想定するとき、上記制限中の使用周波数帯域(「制限中の帯域a」)を、前述の実施態様と同様に一つまたは複数の周波数帯域に分けて運用する。そしてこのとき、制限されている周波数帯域(帯域b、帯域c、帯域d)についてもそれぞれ一つまたは複数の周波数帯域に分けておく。なお、使用可能周波数帯域(帯域a)と制限中の各周波数帯域(帯域b〜d)を、同じ帯域幅で分割することが好ましい。図33はこのように同じ帯域幅で分割されているものとする。また図33では、使用周波数帯域が帯域aに制限されていて一つの周波数帯域として運用されており、制限中の周波数帯域を3つの帯域(帯域b〜帯域d)に分割しているがこれらの帯域b〜dは制限によって現在は使用できない。なお、それらの帯域におけるサブキャリア数およびサブキャリア帯域幅は一定であるのが好ましい。
なお制限中は、周波数帯域を一つ(帯域a)としているため、使用周波数帯域の拡張はできない。本実施態様11によれば上記の制限解除後は、使用周波数帯域が4つ(帯域a〜d)になり、前述した実施態様の運用に即座に移行できる。
以上のように周波数帯域を設定することにより、現在は使用周波数帯域が制限されているものの、その後制限が解除されたときには、本発明によるシステム運用して即座に移行できる。これは通信システムの柔軟な運用を可能とする。
以上詳述したとおり、本発明によると、容易に使用周波数帯域幅を可変にすることが可能となり、またこれにより、周波数の利用効率を大幅に改善することができる。