JP5103642B2 - ポリエチレングリコール多孔質粒子及びその製造方法 - Google Patents
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平均分子量が200〜600のポリエチレングリコールは液体であり、1,000以上の高分子量ポリエチレングリコールは固体であって、通常ワックス状又は粉末状の形態で市販されている。平均分子量200のものはグリセリンに匹敵する吸湿性を示すが、平均分子量が4,000になると殆ど吸湿性を示さない。また、高分子量ポリエチレングリコールは、刺激が少ないので、クリーム、乳液、石けん、ローション等の皮膚用化粧料や、シャンプー、リンス等の毛髪用化粧料等向けの増粘剤等の用途で用いられている。さらに、単体としての利用だけでなく、他のモノマー成分との共重合、末端変性等を行うことにより、エネルギーデバイス、画像表示素子等にも用いられている。
このポリアミド多孔質球状粒子は、多孔質で粒子表面の無数の細孔が中心付近にまで達しているため、比表面積が大きく、優れた光散乱特性や偏光解消特性等の光学特性を有しており、ファンデーション、クリーム等の皮膚用化粧料や、ヘアクリーム、ヘアワックス、ヘアジェル等の毛髪用化粧料等に有用である(特許文献4参照)。
そこで、高分子量ポリエチレングリコールを、上記ポリアミド多孔質球状粒子のように多孔質粒子化することができれば、ポリアミド多孔質球状粒子に類似した用途展開が期待できる。
(1)重量平均分子量が3,000〜50,000であり、かつ結晶化度が10%以上であることを特徴とするポリエチレングリコール多孔質粒子。
(2)ポリエチレングリコールとその溶媒とからなるポリエチレングリコール溶液において、上記ポリエチレングリコールの溶解状態を変化させることにより、ポリエチレングリコール粒子を析出させることを特徴とする、上記(1)のポリエチレングリコール多孔質粒子の製造方法。
(3)ポリエチレングリコールとその良溶媒(A)とからなるポリエチレングリコール溶液(a)と、ポリエチレングリコールの貧溶媒(B)とを混合することにより、ポリエチレングリコール溶液(a)におけるポリエチレングリコールの溶解状態を変化させて、ポリエチレングリコール粒子を析出させる上記(2)の方法。
(4)ポリエチレングリコールとその溶媒とからなるポリエチレングリコール溶液の温度を変化させることにより、ポリエチレングリコール溶液の溶解状態を変化させて、ポリエチレングリコール粒子を析出させる上記(2)の方法。
[ポリエチレングリコール多孔質粒子]
本発明のポリエチレングリコール多孔質粒子(以下、単に「多孔質粒子」ということがある)は、重量平均分子量が3,000〜50,000であり、かつ結晶化度が10%以上であることを特徴とする。
当該多孔質粒子を構成するポリエチレングリコールは、その製造方法に特に制限はなく、従来公知のいずれの方法によって得られたものであってもよいが、工業的には、エチレングリコールにエチレンオキシドを、アルカリ触媒の存在下で付加重合させて得られたものが好ましい。
このような方法で得られたポリエチレングリコールは、通常単一化合物ではなく、重合度の異なる高分子重合体の混合物であるが、本発明の多孔質粒子は、後述の製造方法により得られ、それを構成するポリエチレングリコールは、ほぼ単一重合体である。
本発明の多孔質粒子を構成するポリエチレングリコールの重量平均分子量(Mw)は、3,000〜50,000の範囲である。このMwが、3,000未満であれば、多孔質粒子は吸湿性を示し、用途が制限されるのを避けられず、一方、50,000を超えると良溶媒への溶解度が低くなる傾向があり、生産効率が低下する場合がある。好ましいMwは5,000〜40,000の範囲である。また分子量分布〔重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比〕は、通常1〜1.5程度であり、ほぼ単一重合体を示す。
本発明においては、上記重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下に示す方法により測定される値である。
<平均分子量の測定>
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、高速液体クロマトグラフィーを使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定する。この場合、標準サンプルとして分子量106、194、440、600、1470、4100、7100、10300、12600、23000の10種のポリエチレングリコールを用いて較正曲線を求め、その較正曲線を基に、ポリエチレングリコールの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求め、分子量分布(Mw/Mn比)を求める。
本発明の多孔質粒子を構成するポリエチレングリコールの結晶化度は10%以上である。この結晶化度が10%未満では、当該多孔質粒子の形態が熱的に不安定となる。結晶化度は好ましくは15%以上、より好ましくは18%以上、特に好ましくは20〜75%である。
上記結晶化度は、X線回折より求める方法、DSC(示差走査熱量分析計)測定法により求める方法及び密度より求める方法があるが、本発明においては、DSC測定法により求める方法が好適である。
DSC法による結晶化度(χ)は、下記式より算出することができる。
ΔHobs;サンプルの融解熱(cal/g)
ΔHm;単一ポリエチレングリコールの融解熱(cal/g)
ここで、単一ポリエチレングリコールとは、サンプルの重量平均分子量と同じ分子量をもつ単一ポリエチレングリコールを意味する。
当該多孔質粒子は、好適態様においては、一つの単独粒子の中心付近の単数又は複数のコアから、高分子フィブリルが三次元等方ないし放射状に成長した球晶構造を有している。球晶成長時には、高分子フィブリルが折りたたまれて薄い板状に結晶化し、この板状結晶(ラメラ)がリボン状に束ねられ、これを核としてその隙間にさらに板状結晶が付着し、ないしは分岐成長して球状の結晶が形成されると考えられる。
当該多孔質粒子は、好ましくはバラ花弁状の形態を有しており、またその粒子径は0.1〜300μm程度、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは0.5〜50μmである。
なお、このようなバラ花弁状多孔質粒子の粒径とは、該多孔質粒子の投影図又は顕微鏡写真像における最大長さをいう。
当該多孔質粒子は、粒子径分布において、数平均粒子径(又は数基準平均粒子径)に対する体積平均粒子径(又は体積基準平均粒子径)の比が1〜2.5であることが好ましい。数平均粒子径に対する体積平均粒子径の比(粒子径分布指数(PDI))が2.5より大きいと、粉体としての取り扱い性が悪くなる。粒子径分布指数(PDI)は次式で表される。
[ポリエチレングリコール多孔質粒子の製造方法]
本発明のポリエチレングリコール多孔質粒子の製造方法は、ポリエチレングリコールとその溶媒とからなるポリエチレングリコール溶液において、上記ポリエチレングリコールの溶解状態を変化させることにより、ポリエチレングリコール粒子を析出させることを特徴とする。
本発明の製造方法には、以下に示す(1)及び(2)の2つの態様がある。
(1)ポリエチレングリコールとその良溶媒(A)とからなるポリエチレングリコール溶液(a)と、ポリエチレングリコールの貧溶媒(B)とを混合することにより、ポリエチレングリコール溶液(a)におけるポリエチレングリコールの溶解状態を変化させて、ポリエチレングリコール粒子を析出させる方法(以下、「製造方法I」という)。
(2)ポリエチレングリコールとその溶媒とからなるポリエチレングリコール溶液の温度を変化させることにより、ポリエチレングリコール溶液の溶解状態を変化させて、ポリエチレングリコール粒子を析出させる方法(以下、「製造方法II」という)。
当該製造方法Iにおいては、まず、分子量3,000〜50,000のポリエチレングリコールを含む高分子量ポリエチレングリコールとその良溶媒(A)とからなるポリエチレングリコール溶液(a)を調製する。
ここで、良溶媒(A)とは、測定対象となるポリエチレングリコール5gに、溶解性を測定しようとする溶媒を全量が100gになるように加え、温度25℃にてかきまぜた場合に、均一で透明性を有する溶液が得られたものをいう。良溶媒(A)の具体例としては、水、メタノール、エタノール等のアルコール類、ベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、エステル類等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよく、また、本発明の目的が損なわれない範囲で、後述の貧溶媒を適宜組み合わせて用いてもよいが、本発明においては、特にメタノールが好ましい。
ポリエチレングリコール溶液(a)を調製する際の温度は、通常40℃程度、好ましくは20〜60℃である。
ここで、貧溶媒(B)とは、測定対象となるポリエチレングリコール5gに、溶解性を測定しようとする溶媒を全量が100gになるように加え、温度25℃にてかきまぜた場合に、にごりが認められたり、分離が認められたものをいう。この貧溶媒(B)は、良溶媒(A)と少なくとも部分的に相溶するものが好ましい。貧溶媒(B)の具体例としては、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等のエーテル類、n−ヘキサン、ジオキサン等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合しても用いてもよいが、本発明においては特にジエチルエーテルが好ましい。
ポリエチレングリコール(a)と貧溶媒(B)との混合温度は通常0〜40℃程度である。また、ポリエチレングリコール(a)と貧溶媒との混合割合は、多孔質粒子を十分に形成させる観点から、ポリエチレングリコール(a)100質量部に対し、貧溶媒(B)を10〜1000質量部の割合で用いることが好ましく、10〜500質量部の割合で用いることがより好ましい。
このようにして形成されたポリエチレングリコール多孔質粒子を、デカンテーション、ろ過、遠心分離等の方法で固液分離したのち、貧溶媒(B)を用いて洗浄後、乾燥処理することにより、前記性状を有する本発明のポリエチレングリコール多孔質粒子を得ることができる。
本発明の製造方法IIにおいては、まず分子量3,000〜50,000のポリエチレングリコールを含む高分子量ポリエチレングリコールとその溶媒とからなるポリエチレングリコール溶液を調製する。この際使用する溶媒としては、製造方法Iで説明した良溶媒(A)、例えば水、エタノール等のアルコール類、ベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、エステル類等の中から選ばれる一種又は二種以上の混合物を挙げることができるが、これらの中では特にメタノールが好ましい。
ポリエチレングリコール溶液中のポリエチレングリコール濃度については、製造方法Iにおけるポリエチレングリコール溶液(a)において説明したとおりである。ポリエチレングリコール溶液を調製する際の温度は、通常20〜100℃程度、好ましくは30〜80℃である。
当該製造方法IIにおいては、このようにして調製されたポリエチレングリコール溶液の温度を変化させて、ポリエチレングリコール溶液の溶解状態を変化させることで、ポリエチレングリコール粒子を析出させる。具体的には、ポリエチレングリコール溶液を−70〜60℃程度、好ましくは−50〜50℃に徐冷することにより、ポリエチレングリコール多孔質粒子を析出させることができる。
このようにして形成されたポリエチレングリコール多孔質粒子を、製造方法Iと同様な方法により固液分離したのち、貧溶媒(B)を用いて洗浄後、乾燥処理することにより、前記性状を有する本発明のポリエチレングリコール多孔質粒子を得ることができる。
なお、各例における諸特性は、以下に示す方法により求めた。
(1)多孔質粒子を構成するポリエチレングリコールの結晶化度
示差走査熱量計[T.A.インスツルメンツ株式会社製、Q100型]を用いて、前記方法により測定した。
(2)ポリエチレングリコールの融点
ポリエチレングリコール多孔質粒子を構成するポリエチレングリコールの融点(Tm)は、前記の示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分の条件下で−50〜100℃の温度範囲で測定した。
(3)ポリエチレングリコール多孔質粒子の形態
走査型電子顕微鏡[日本電子株式会社製、JCM−5700]で観察し、バラ花弁状多孔質粒子の粒径を読みとった。
また、100個の数平均粒子径と体積平均粒子径を求め、前記方法により粒子径分布指数PDIを求めた。
メタノールにポリエチレングリコール(キシダ化学株式会社製、Mw:約6000)を加え、40℃にて溶解させ、5質量%のポリエチレングリコール/メタノール溶液を調製した。調製後、該溶液を室温(25℃)まで冷却した。
室温まで冷却した5質量%のポリエチレングリコール/メタノール溶液10mlに攪拌しながら、ジエチルエーテル10mlを添加した。添加後、攪拌を停止し、10分間静置して、ポリエチレングリコールからなる粒子を得た。得られた粒子を取り出し、ジエチルエーテルで洗浄、乾燥後、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、図1及び図2に示すようなバラ花弁状多孔質粒子が得られていることを確認した。この粒子の得率は、原料ポリエチレングリコールに対して、80質量%であった。
実施例1において、5質量%のポリエチレングリコール/メタノール溶液10mlに対し、ジエチルエーテル20mlを添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリエチレングリコールのバラ花弁状多孔質粒子を得た。この粒子の得率は、原料ポリエチレングリコールに対して、80質量%であった。
実施例1において、5質量%のポリエチレングリコール/メタノール溶液10mlに対し、ジエチルエーテル30mlを添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリエチレングリコールのバラ花弁状多孔質粒子を得た。この粒子の得率は、原料ポリエチレングリコールに対して、80質量%であった。
Claims (9)
- 重量平均分子量が3,000〜50,000であり、かつ結晶化度が10%以上であり、バラ花弁状の形態を有することを特徴とするポリエチレングリコール多孔質粒子。
- 粒子径が0.1〜300μmである請求項1に記載のポリエチレングリコール多孔質粒子。
- ポリエチレングリコールとその溶媒とからなるポリエチレングリコール溶液において、上記ポリエチレングリコールの溶解状態を変化させることにより、ポリエチレングリコール粒子を析出させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリエチレングリコール多孔質粒子の製造方法。
- ポリエチレングリコールとその良溶媒(A)とからなるポリエチレングリコール溶液(a)と、ポリエチレングリコールの貧溶媒(B)とを混合することにより、ポリエチレングリコール溶液(a)におけるポリエチレングリコールの溶解状態を変化させて、ポリエチレングリコール粒子を析出させる請求項3に記載のポリエチレングリコール多孔質粒子の製造方法。
- ポリエチレングリコール溶液(a)と、ポリエチレングリコールの貧溶媒(B)とを混合することにより、一時的に透明な溶液状態を経たのち、ポリエチレングリコール粒子を析出させる請求項4に記載のポリエチレングリコール多孔質粒子の製造方法。
- ポリエチレングリコールの良溶媒(A)が、水、メタノール、ベンゼン及びジクロロメタンの中から選ばれる少なくとも一種である請求項4又は5に記載のポリエチレングリコール多孔質粒子の製造方法。
- ポリエチレングリコールの貧溶媒(B)が、ジエチルエーテル及び/又はn−ヘキサンである請求項4〜6のいずれかに記載のポリエチレングリコール多孔質粒子の製造方法。
- ポリエチレングリコールとその溶媒とからなるポリエチレングリコール溶液の温度を変化させることにより、ポリエチレングリコール溶液の溶解状態を変化させて、ポリエチレングリコール粒子を析出させる請求項3に記載のポリエチレングリコール多孔質粒子の製造方法。
- 溶媒が、ポリエチレングリコールの良溶媒(A)であって、水、メタノール、ベンゼン及びジクロロメタンの中から選ばれる少なくとも一種である請求項8に記載のポリエチレングリコール多孔質粒子の製造方法。
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