上記の問題点に対し、1人の加入者に複数のSIMカードを提供することが考えられる。しかしながら、上記複数のSIMカードを複数の携帯電話端末にそれぞれ装着すると、同じ電話番号を有する複数の携帯電話端末が存在することになり、携帯電話サービスの利用に不都合が生じる。
また、特許文献1に記載の通信端末装置は、加入者情報カードが挿入されているときに、公衆回線網を通じて通信できるものである。2台の上記通信端末装置のうち、加入者情報カードが挿入されている通信端末装置が親機として機能し、加入者情報カードが挿入されていない通信端末装置が子機として機能する。親機および子機は、上記公衆回線網を介さずに直接通信し、子機は、親機および上記公衆回線網を介して外部と通信する。これにより、加入者情報カードが挿入されていない通信端末装置でも、公衆回線網を通じて外部と通信することができる。
しかしながら、上記子機が上記外部と通信する場合、上記親機は、上記子機との直接通信と、上記公衆回線網を介する外部との通信とを継続する必要があり、電池の消耗が増大することになり、通話時間および待受時間が短くなる結果となる。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、SIMカード等の加入者カードを或る装置から取り外すことなく、該装置とは別の装置で、携帯電話サービス等のサービスを不都合無く利用できる加入者カードの代替物などを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る加入者カードの代替物は、或るサービスの加入者に提供され、該サービスを利用するために必要な情報である利用必須情報が記録された加入者カードの代替物であって、前記加入者カードが設けられた外部装置と無線通信を行う第1通信部と、前記利用必須情報を記憶する記憶部と、前記サービスを利用するためのサービス利用装置と通信を行う第2通信部と、前記サービス利用装置から第2通信部を介しての要求に応じて、前記記憶部に記憶された前記利用必須情報を、第2通信部を介して前記サービス利用装置に出力する出力手段と、第1通信部が前記外部装置と通信不能である場合、前記出力手段が前記利用必須情報を出力することを禁止する出力制御手段とを備えることを特徴としている。
また、上記課題を解決するため、本発明に係る加入者カードの代替物の制御方法は、上述の加入者カードの代替物の制御方法であって、前記加入者カードが設けられた外部装置と無線通信を行う第1通信部が前記外部装置と通信不能である場合、前記サービスを利用するためのサービス利用装置から、該サービス利用装置と通信を行う第2通信部を介しての要求に応じて、記憶部に予め記憶された前記利用必須情報を、第2通信部を介して前記サービス利用装置に出力することを禁止する出力制御ステップを含むことを特徴としている。
ここで、利用必須情報の例としては、加入者カードを識別する識別情報、加入者を識別する識別情報などが挙げられる。
上記の構成および方法によると、加入者カードが設けられた外部装置との無線通信が不能である場合、サービス利用装置に利用必須情報を出力することが禁止されるので、サービス利用装置がサービスを利用することが禁止される。従って、上記外部装置が上記代替物の1つと通信することにより、該代替物と通信するサービス利用装置のみにサービスを利用させることができる。すなわち、上記加入者カードを上記外部装置から取り外すことなく、上記外部装置とは別の装置である上記サービス利用装置で、上記サービスを不都合無く利用することができる。
なお、上記加入者カードの代替物は、上記加入者カードと同一形状であることが好ましいが、その他の形状であってもよいし、カードでなくてもよい。また、上記加入者カードの代替物は、上記加入者カードの近くで利用されることが好ましいので、第1通信部が上記外部装置と行う無線通信は、近距離無線通信であることが好ましい。また、上記記憶部に記憶される利用必須情報は、外部装置その他の装置から通信で予め取得してもよいし、着脱可能な記録媒体から予め取得してもよいし、ユーザが操作部を操作することにより予め取得してもよい。
また、上記加入者カードの代替物は、上記サービス利用装置と一体となって利用されることが好ましい。このため、第2通信部とサービス利用装置との通信は、電気的に接続した各接続端子を介して行ったり、短距離無線通信で行ったりすることが好ましい。
本発明に係る加入者カードの代替物では、前記サービス利用装置が前記サービスの利用を終了したことを示す利用終了情報を前記サービス利用装置から第2通信部を介して取得する利用終了取得手段と、前記出力手段が前記利用必須情報を出力してから、前記利用終了取得手段が前記利用終了情報を取得するまでの間、前記外部装置と通信を行うように第1通信部を制御する通信制御手段とをさらに備えることが好ましい。
この場合、上記代替物と通信する上記サービス利用装置が上記サービスを利用している間、他の上記代替物は上記外部装置と通信できないので、上記他の代替物と通信する上記サービス利用装置は上記サービスが利用することができない。従って、1つの加入者カードで複数のサービス利用装置が上記サービスを同時に利用することを確実に防止できる。なお、第1通信部と上記外部装置との通信は、常時行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。
一般に、上記サービス利用装置は、上記加入者カードと共に利用されるので、上記加入者カードを着脱可能に取り付けられる取付部を備えている。このことから、上記加入者カードの代替物は、上記加入者カードと同一形状であることが好ましい。この場合、上記加入者カードの代替物を上記取付部に取り付けることができるので、新たな取付部が不要となる。
なお、上記構成の加入者カードの代替物が取り付けられたサービス利用装置であれば、上述と同様の効果を奏することができる。なお、上記加入者カードの代替物は、上記サービス利用装置に対し、固定されてもよいし、着脱可能に取り付けられてもよい。
ところで、サービス利用装置によっては、上記サービスの一部のみを利用するものが存在する。例えば、携帯電話サービスを利用する携帯型通信端末の中には、データ通信機能を有するが、通話機能を有さない携帯型データ端末や、通話機能を有するがデータ通信機能を有さない携帯電話端末が存在する。
そこで、本発明に係るサービス利用装置では、前記サービスを利用するのに必要な処理である利用必須処理を実行するサービス利用処理手段を備えており、該サービス利用処理手段は、上記利用必須処理の一部を実行してもよい。この場合、上記サービス利用装置は、上記利用必須処理の一部のみを実行する機能を有すればよいので、装置規模を抑えることができる。
ところで、上記利用必須処理の中には、ユーザに関係なく装置内で行われる処理である装置内処理もあれば、ユーザに対し入出力を行うための処理であるユーザ関連処理もある。例えば、携帯電話サービスであれば、待ち受け中に携帯電話端末と基地局との間で送受信される位置情報に関する処理は、上記装置内処理に該当し、着信処理および通話処理は、上記ユーザ関連処理に該当する。また、上記サービス利用装置は、ユーザが利用するものであることが多い。
そこで、上記サービス利用装置が上記ユーザ関連処理を実行する一方、上記外部装置の側が上記装置内処理を実行することが好ましい。この場合、上記利用必須処理を複数の装置に分散させることができるので、各装置の処理負担を軽減することができる。
本発明に係る通信装置は、或るサービスの加入者に提供され、該サービスを利用するために必要な情報である利用必須情報が記録された加入者カードが着脱可能に設けられた通信装置であって、上記課題を解決するために、前記加入者カードが着脱可能に取り付けられる取付部と、前記加入者カードの代替物と無線通信を行う通信部と、前記取付部に前記加入者カードが取り付けられているかを判定する判定手段と、前記取付部に前記加入者カードが取り付けられていると前記判定手段が判定する場合、前記代替物との無線通信を許可するように前記通信部を制御する通信制御手段とを備えることを特徴としている。
また、本発明に係る通信装置の制御方法は、上記加入者カードが着脱可能に設けられた通信装置の制御方法であって、上記課題を解決するために、前記加入者カードが着脱可能に取り付けられる取付部に、前記加入者カードが取り付けられているかを判定する判定ステップと、該判定ステップによって、前記取付部に前記加入者カードが取り付けられていると判定された場合、前記加入者カードの代替物と無線通信を行う通信部を、前記代替物との無線通信を許可するように制御する通信制御ステップとを含むことを特徴としている。
上記の構成および方法によると、取付部に加入者カードが取り付けられると、該加入者カードの代替物と通信部との無線通信が許可される。反対に言えば、上記加入者カードが上記取付部に取り付けられていない場合、上記無線通信が許可されない。従って、上記加入者カードの代替物と無線通信を行って、該代替物を上記加入者カードとして機能させることを、上記加入者カードとは無関係に行うことを防止できる。
なお、上記加入者カードの代替物は、上記加入者カードの近くで利用されることが好ましいので、通信部が上記代替物と行う無線通信は、近距離無線通信であることが好ましい。
本発明に係る通信装置では、前記通信部は、同時に1つの前記代替物のみと無線通信可能であることが好ましい。この場合、上記通信装置と通信する唯一の上記代替物を上記加入者カードとして機能させることができるので、複数の上記代替物が上記加入者カードとして機能して、上記複数の代替物がそれぞれ関連する複数のサービス利用装置が上記サービスを同時に利用することを防止できる。
なお、上記通信部は、同時に1つの外部装置のみと無線通信可能な無線通信デバイスを1台のみ備えていれば、上記の場合を実現することができる。或いは、上記通信部は、上記無線通信デバイスを複数台有しており、その中の1台のみを動作させるように制御すれば、上記の場合を実現することができる。
本発明に係る通信装置では、前記サービスを利用するのに必要な処理である利用必須処理を実行するサービス利用処理手段と、前記サービス利用処理手段からの要求に応じて、前記加入者カードに記憶された前記利用必須情報を前記サービス利用処理手段に送出する送出手段とをさらに備えており、前記サービス利用処理手段は、上記利用必須処理の一部を実行してもよい。
この場合、上述のように、上記通信装置が上記装置内処理を実行する一方、上記加入者カードの代替物と関連するサービス利用装置が上記ユーザ関連処理を実行することにより、上記利用必須処理を複数の装置に分散させることができ、各装置の処理負担を軽減することができる。
なお、上記構成の通信装置である親機と、上記構成の加入者カードの代替物である子機とを備える通信システムであれば、上述と同様の効果を奏することができる。また、上記サービスの例としては、携帯電話サービスなどの移動体通信サービス、銀行のオンラインシステム、流通業界のPOS(販売時点情報管理)システム、鉄道会社や航空会社のチケット予約システムなどが挙げられる。
なお、上記加入者カードの代替物の各手段を、代替物制御プログラムによりコンピュータ上で実行させることができる。また、上記通信装置の各手段を、通信装置制御プログラムによりコンピュータ上で実行させることができる。さらに、上記代替物制御プログラムおよび上記通信装置制御プログラムの少なくとも1つをコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶させることにより、任意のコンピュータ上で当該制御プログラムを実行させることができる。
以上のように、本発明に係る加入者カードの代替物では、加入者カードが設けられた外部装置と無線通信可能な代替物のみが、利用必須情報をサービス利用装置に出力してサービスが利用されるので、上記加入者カードを上記外部装置から取り外すことなく、上記外部装置とは別の上記サービス利用装置で上記サービスを不都合無く利用できるという効果を奏する。
また、本発明に係る通信装置は、加入者カードが取り付けられていないと、上記加入者カードの代替物との無線通信が許可されないので、該無線通信を行って、該代替物を上記加入者カードとして機能させることを、上記加入者カードとは無関係に行うことを防止できるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について図1〜図9を参照して説明する。本実施形態で利用されるサービスは、携帯電話サービスであり、携帯電話サービスの加入者に提供される加入者カードは、SIMカードである。図2および図3は、本実施形態の通信システムの概要を示している。図2に示すように、通信システム10は、SIMカード(加入者カード)11と、SIMカード11が着脱可能に設けられた親機(外部装置・通信装置)12と、親機12との無線通信が可能であり、SIMカード11の代替物として機能する子機13とを備える構成である。
SIMカード11は、ICカードであり、携帯電話サービスを利用するのに必要な利用必須情報、その他の情報が記録されている。上記利用必須情報の例としては、SIMカードを識別するための識別番号(IMSI(International Mobile Subscriber Identity))、ユーザの識別番号(PINコード)、位置情報、認証情報、パスワードなどが挙げられる。なお、以下では、SIMカード11の利用必須情報を「SIM情報」と称する。
親機12は、SIMカード11が装着されると、子機13との無線通信が可能となるものである。本実施形態では、親機12は、子機13からの要求に応じて、SIMカード11に記録されたSIM情報をSIMカード11から読み出して、子機13に送信している。
子機13は、上記携帯電話サービスを利用する移動体端末に取り付けられる。図3は、親機12と無線通信可能な複数の子機13が、複数の移動体端末(サービス利用装置)14にそれぞれ取り付けられている状態を示している。
なお、図3の例では、子機13および移動体端末14は、それぞれ4個であるが、1個でもよいし、2個、3個、および5個以上でもよい。このように、子機13をそれぞれ区別する場合には「第1子機13a」、「第2子機13b」などと記載し、総称する場合には「子機13」と記載する。また、移動体端末14をそれぞれ区別する場合には「第1移動体端末14a」、「第2移動体端末14b」などと記載し、総称する場合には「移動体端末14」と記載する。図3には、移動体端末14の例として、携帯電話機14a、PDA(Personal Digital Assistant)14b、カーナビゲーションシステム(Car Navigation System)における表示端末14c、および、携帯型データ通信端末14dが示されている。
本実施形態では、子機13は、親機12に要求してSIM情報を受信して記憶する。そして、子機13は、移動体端末14の要求に応じて、SIM情報を移動体端末14に出力する。これにより、移動体端末14は、SIMカード11の挿抜を行うこと無く、上記携帯電話サービスを利用することができる。
さらに、本実施形態では、子機13は、親機12と通信不能である場合、SIM情報を移動体端末14に出力することを禁止している。これにより、親機12と通信可能な子機13のみが、SIM情報を出力することができ、該子機13が取り付けられた移動体端末14のみが、上記携帯電話サービスを利用することができる。従って、複数の子機13がそれぞれ取り付けられた複数の移動体端末14が、上記携帯電話サービスを同時に利用することを防止できる。
なお、本実施形態では、子機13は、SIMカード11の代替物として機能するため、SIMカード11と同一形状となっている。これにより、子機13は、移動体端末14に、SIMカード11と同様に装着することができる。
また、親機12が他のユーザの子機13と混信したり、親機12と子機13との通信が第三者に傍受されたりすることを回避するため、親機12と子機13との無線通信は、近距離無線通信であることが望ましい。近距離無線通信の例としては、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)、ジグビー(ZigBee)、UWB(Ultra WideBand)、無線LAN(IEEE802.11)などが挙げられる。また、上記近距離無線通信のデータ伝送媒体の例としては、光、電波などが挙げられる。しかしながら、赤外線などの光を利用する場合、照射方向を送信先の受光部に合わせる必要がある。従って、データ伝送媒体としては電波が望ましい。
また、ユーザが移動体端末14を操作し、移動体端末14に取り付けられた子機13が親機12と近距離無線通信を行うことから、ユーザは親機12を携帯することが望ましい。従って、親機12は、ユーザが所持しやすい形状であることが望ましい。図2および図3の例では、親機12は、移動体端末14よりも小型であり、装身具の一つであるペンダントの形状であり、かつ、ネックストラップ15を有している。この場合、ユーザは、親機12をポケットに収容したり、首からぶら下げたりすることができる。
次に、親機12、子機13、および移動体端末14の概要について、図1、図4、および図5を参照して説明する。図4は、親機12の概略構成を示している。図示のように、親機12は、制御部20、記憶部21、ソケット部(取付部)22、近距離通信用アンテナ部23、近距離通信部(通信部)24、および電源部25を備える構成である。
制御部20は、親機12内の各種構成を統括的に制御するものである。制御部20の機能は、例えばRAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリなどの記憶素子に記憶されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)が実行することによって実現される。なお、制御部20の詳細については後述する。
記憶部21は、各種データおよびプログラムを記憶するものである。記憶部21の例としては、制御部20が動作するときに必要なプログラムや、通信制御データなどの固定データを記憶する読出し専用の半導体メモリであるROM(Read Only Memory)と、通信に関するデータ、演算に使用するデータ、および演算結果などを一時的に記憶する、いわゆるワーキングメモリとしてのRAMと、各種の設定データなどを記憶する書換え可能な不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリ)とが挙げられる。
ソケット部22は、SIMカード11が挿抜可能に取り付けられるものである。ソケット部22には、SIMカード11と電気的に接続するための端子が設けられている。
近距離通信用アンテナ部23は、近距離無線通信用の電波を外部に送り出すとともに外部から近距離無線通信用の電波を受け取るためのものである。例えば、近距離無線通信としてブルートゥース(登録商標)を利用する場合、近距離通信用アンテナ部23は、2.45GHz帯の電波を送受することになる。
近距離通信部24は、制御部20から受信したデータを近距離無線送信に適した形式に変換し、変換した無線信号を、近距離通信用アンテナ部23を介して外部に送信するとともに、外部から近距離通信用アンテナ部23を介して受信した無線信号を元の形式に変換し、変換したデータを制御部20に送信するものである。具体的には、近距離通信部24では、データの変復調処理、RF処理などが行われる。
電源部25は、親機12内の各種構成に適当な電力を供給するものである。電源部25は、例えば、リチウムイオン電池などの充電可能な2次電池、電源回路などによって構成される。
図1は、子機13の概略構成を示している。図示のように、子機13は、制御部30、記憶部31、近距離通信用アンテナ部32、近距離通信部(第1通信部)33、および接続部(第2通信部)34を備える構成である。なお、制御部30、記憶部31、近距離通信用アンテナ部32、および近距離通信部33の機能は、それぞれ、制御部20、記憶部21、近距離通信用アンテナ部23、近距離通信部24の機能と同様であるので、その説明を省略する。また、SIMカード11の構成は、子機13の構成から、近距離通信用アンテナ部32および近距離通信部33を省略した構成と同様である。
接続部34は、子機13が移動体端末14に取り付けられたときに、移動体端末14と電気的に接続するためのものである。本実施形態では、子機13はSIMカード11と同様に電源部を備えていないので、移動体端末14から接続部34を介して子機13の各構成に電力が供給されている。
図5は、移動体端末14の概略構成を示している。図示のように、移動体端末14は、制御部40、記憶部41、携帯電話用アンテナ部42、携帯電話用通信部43、操作部44、表示部45、電源部46、およびカード収容部47を備える構成である。なお、制御部40、記憶部41、および電源部46の機能は、それぞれ、制御部20、記憶部21、および電源部25の機能と同様であるので、その説明を省略する。
携帯電話用アンテナ部42は、携帯電話網の基地局に電波を送り出すとともに該基地局から電波を受け取るためのものである。具体的には、携帯電話用アンテナ部42は、800MHz帯、1.5GHz帯などの携帯電話用電波を送受するためのものである。
携帯電話用通信部43は、制御部40から受信したデータを、上記基地局への無線送信に適した形式に変換し、変換した無線信号を携帯電話用アンテナ部42を介して外部に送信するものである。また、携帯電話用通信部43は、外部から携帯電話用アンテナ部42を介して受信した無線信号を元の形式に変換し、変換したデータを制御部40に送信するものである。さらに、携帯電話用通信部43は、他の電話機と通話するための回線接続処理および回線切断処理を行うものである。具体的には、携帯電話用通信部43では、チャネルコーデック処理、ベースバンド信号処理、データの変復調処理、RF(Radio Frequency)処理などが行われる。
操作部44は、移動体端末14の表面に設けられた操作ボタンなどの入力デバイスをユーザが操作することにより、操作データを作成して制御部40に送信するものである。入力デバイスの例としては、ボタンスイッチの他にタッチパネルなどが挙げられる。
表示部45は、制御部40から画像データを受信し、受信した画像データに基づいて表示画面に画像を表示するものである。具体的には、表示部45は、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、EL(Electroluminescence)ディスプレイなどの表示素子と、受信した画像データに基づいて表示素子を駆動するドライバ回路とを備える構成である。
カード収容部47は、子機13またはSIMカード11を挿抜可能に収容するものである。カード収容部47には、子機13またはSIMカード11と電気的に接続するための端子が設けられている。なお、該端子の一部は、電源部46からの電力を子機13またはSIMカード11に供給するためのものである。
なお、移動体端末14は、機種に応じて必要な構成が追加される。例えば、携帯電話機14aの場合、音声処理部、音声入力部、音声出力部などの音声に関する各種構成が追加される。
次に、親機12の制御部20と、子機13の制御部30および記憶部31と、移動体端末14の制御部40との詳細について、図1、図4、および図5を参照して説明する。親機12の制御部20は、図4に示すように、取付検知部(判定手段)50、SIM情報取得部51、および通信制御部(通信制御手段)52を備える構成である。
取付検知部50は、ソケット部22へのSIMカード11の取付けを検知するものである。取付検知部50は、検知結果を通信制御部52に送出する。
SIM情報取得部51は、ソケット部22に取り付けられたSIMカード11からソケット部22を介してSIM情報を取得するものである。また、SIM情報取得部51は、近距離通信用アンテナ部23および近距離通信部24を介して、子機13からの要求に基づきSIM情報を送信している。なお、SIM情報取得部51は、SIM情報を、子機13からの要求に基づいて取得してもよいし、取付検知部50の検知結果に基づいて取得してもよい。
通信制御部52は、近距離通信部24の通信を制御するものである。本実施形態では、通信制御部52は、取付検知部50が上記取付けを検知している場合、近距離通信部24が子機13と近距離無線通信を行うことを許可する。反対に言えば、通信制御部52は、取付検知部50が上記取付けを検知していない場合、近距離通信部24が子機13と近距離無線通信を行うことを禁止する。これにより、親機12にSIMカード11が装着されていない場合、親機12と子機13との近距離無線通信が禁止されるので、子機13が取り付けられた移動体端末14において携帯電話サービスが利用されることを確実に防止する。
また、本実施形態では、通信制御部52は、近距離通信部24が同時に1台の子機13とのみ通信できるように制御している。これにより、親機12が複数の子機13と通信可能な状態となって、複数の子機13がそれぞれ取り付けられた複数の移動体端末14において携帯電話サービスが同時に利用されることを防止する。
子機13の制御部30は、図1に示すように、SIM情報要求部60、SIM情報出力部(出力手段)61、通信可否判断部62、出力制御部(出力制御手段)63、終了通知取得部(利用終了取得手段)64、および通信制御部(通信制御手段)65を備える構成である。
SIM情報要求部60は、近距離通信部33および近距離通信用アンテナ部32を介して、親機12にSIM情報を要求して取得するものである。SIM情報要求部60は、取得したSIM情報を記憶部31に記憶させる。
SIM情報出力部61は、接続部34を介して、移動体端末14からの要求に基づきSIM情報を記憶部31から読み出して出力するものである。また、SIM情報出力部61は、SIM情報を出力すると、その旨を通信制御部65に通知する。
通信可否判断部62は、近距離通信部33と親機12との近距離無線通信が可能であるか否かを判断するものである。通信可否判断部62は、判断結果を出力制御部63に通知する。
出力制御部63は、通信可否判断部62からの判断結果に基づいて、SIM情報出力部61におけるSIM情報の出力を制御するものである。具体的には、出力制御部63は、上記近距離無線通信が可能である旨の上記判断結果である場合、SIM情報の出力を許可する一方、上記近距離無線通信が不能である旨の上記判断結果である場合、SIM情報の出力を禁止している。これにより、子機13は親機12と通信可能である場合にのみSIM情報を出力することができる。
終了通知取得部64は、移動体端末14が上記移動体通信サービスの利用を終了した旨を示す利用終了通知を、移動体端末14から接続部34を介して取得するものである。終了通知取得部64は、取得した上記利用終了通知を通信制御部65に送出する。
通信制御部65は、近距離通信部33の通信を制御するものである。本実施形態では、通信制御部65は、SIM情報を出力した旨の通知をSIM情報出力部61から受け取ると、通信制御部65が親機12との近距離無線通信を開始または続行するように指示し、終了通知取得部64から上記利用終了通知を受け取ると、通信制御部65が親機12との近距離無線通信を終了するように指示している。これにより、移動体端末14が移動体通信サービスを利用している間、子機13と親機12との通信が維持されるので、親機12と他の子機13との通信が不能となり、他の子機13が取り付けられた移動体端末14による上記移動体通信サービスの重複利用を防止できる。
移動体端末14の制御部40は、図5に示すように、サービス利用処理部(サービス利用処理手段)70、SIM情報要求部71、および利用終了通知部72を備える構成である。
サービス利用処理部70は、携帯電話サービスを利用するための各種処理を行うものである。該処理の例としては、携帯電話サービスにおける音声入力処理および音声出力処理、携帯電話機用文字情報サービスにおける情報の符号化処理および復号化処理などが挙げられる。
サービス利用処理部70は、必要に応じてSIM情報要求部71に指示してSIM情報を取得する。また、サービス利用処理部70は、例えば通話の終了など、携帯電話サービスの利用を終了すると、その旨を利用終了通知部72に通知する。
SIM情報要求部71は、サービス利用処理部70からの指示に基づき、カード収容部47の端子を介して、子機13またはSIMカード11にSIM情報を要求して取得するものである。SIM情報要求部71は、取得したSIM情報をサービス利用処理部70に送出する。
利用終了通知部72は、サービス利用処理部70からの通知に基づき、上記利用終了通知を、カード収容部47の端子を介して子機13に送信するものである。
上記構成の通信システム10における処理動作について、図6を参照して説明する。図6は、親機12および子機13の制御部20・30において行われる制御処理を示している。
図示のように、まず、親機12では、ソケット部22へのSIMカード11の取付けを取付検知部50が検知するまで待機する(ステップS10(以下「S10」と略称することがある。他のステップについても同様である。))。その後、近距離通信部24が或る子機13と近距離無線通信を行うように通信制御部52が制御する(S11)。
一方、子機13では、近距離通信部33と親機12との近距離無線通信が可能であると通信可否判断部62が判断するまで待機する(S20)。その後、記憶部31にSIM情報が記憶されていない場合(S21)、SIM情報要求部60は、親機12にSIM情報を要求する(S22)。このとき、親機12では、SIM情報取得部51が子機13からSIM情報の要求を取得すると(S12)、SIMカード11からSIM情報を取得して、子機13に送信する(S13)。そして、子機13では、SIM情報要求部60が親機12からSIM情報を取得して、記憶部31に記憶する(S22)。
次に、SIM情報出力部61は、移動体端末14からSIM情報の要求を取得すると(S24)、記憶部31からSIM情報を取得して移動体端末14に出力する(S25)。次に、近距離通信部33と親機12との近距離無線通信を継続するように通信制御部65が制御する(S26)。次に、移動体端末14が携帯電話サービスの利用を終了したか否か、すなわち、上記利用終了通知を終了通知取得部64が取得したか否かを判断する(S27)。上記利用終了通知を取得していない場合、ステップS24に戻って上記動作を繰り返す。一方、上記利用終了通知を取得した場合、ステップS28に進む。
ステップS28では、近距離通信部33と親機12との近距離無線通信を終了するように通信制御部65が制御する。その後、ステップS20に戻って上記動作を繰り返す。
一方、親機12では、近距離通信部24と子機13との近距離無線通信が終了したか、或いは、子機13が離れすぎたり、子機13の電源がオフになったりするなどして上記近距離無線通信が不能となったか否かを通信制御部52が判断する(S14)。上記近距離無線通信が可能である場合、ステップS12に戻って上記動作を繰り返す。
一方、上記近距離無線通信が終了または不能である場合、近距離通信部24が別の子機13と近距離無線通信を行うように通信制御部52が制御する(S15)。その後、ステップS12に戻って上記動作を繰り返す。
次に、親機12と複数の子機13a〜13cとの間で近距離無線通信を行うタイミングについて、図7および図8を参照して説明する。図7は、複数の子機13a〜13cがそれぞれ取り付けられた複数の移動体端末14a〜14cが携帯電話サービスを利用していない場合の上記タイミングを示している。また、図8は、第1子機13aが取り付けられた第1移動体端末14aが、例えば通話を行うなど、携帯電話サービスを利用する場合の上記タイミングを示している。
図7に示すように、親機12は、期間Tごとに子機13a〜13cとの近距離無線通信を行っている。親機12が問合せ信号D1を送信すると、該問合せ信号D1に対して、子機13a〜13cが応答信号D2a〜D2cをそれぞれ送信する。親機12は、子機13a〜13cから上記応答信号D2a〜D2cを受信することにより、子機13a〜13cの動作状況、さらには子機13a〜13cがそれぞれ取り付けられた移動体端末14a〜14cの動作状況を把握することができる。なお、この動作を行うための通信処理は公知であるので、その説明を省略する。
その後、第1移動体端末14aが携帯電話サービスを利用すると、第1子機13aは、図8に示すように、携帯電話サービスを利用している旨を示すサービス利用信号D3を、携帯電話サービスの利用が終了されるまで送信し続ける。この期間Ta中、親機12は、他の子機13b・13cと近距離無線通信を行うことができないので、他の子機13b・13cの状態を把握することができない。一方、他の子機13b・13cは、親機12と近距離無線通信を行うことができないので、自機13b・13cが取り付けられた移動体端末14b・14cが携帯電話サービスを利用できないことを把握でき、移動体端末14へのSIM情報の出力を停止することができる。
そして、第1移動体端末14aが携帯電話サービスの利用を終了して、第1子機13aがサービス利用信号D3の送信を停止すると、親機12は、問合せ信号D1の送信を再開する。これにより、親機12は、他の子機13b・13cからの応答信号D2b・D2cを受信して、他の子機13b・13cの状態を把握することができる。
なお、親機12は、特定の子機13が、他の子機13と比べて、優先的に近距離無線通信が可能となるように制御してもよい。この場合、上記特定の子機13が取り付けられた移動体端末14が、他の移動体端末14に比べて、携帯電話サービスを優先的に利用できるようになる。
また、図8の例では、第1子機13aがサービス利用信号D3を親機12に送信し続けているが、連続的に送信するよりも、間欠的に送信する方が消費電力の観点から有利である。さらに、第1子機13aは、サービス利用信号D3に代えて、第1移動体端末14aが携帯電話サービスの利用を開始する旨を示すサービス開始信号と、終了する旨を示すサービス終了信号とを親機12に送信してもよい。この場合、親機12は、サービス開始信号を受信してから、サービス終了信号を受信するまでの間、問合せ信号D1の送信を停止すればよい。
なお、親機12は、第1子機13aと通信不能になって、第1子機13aから上記サービス終了信号を受信できないことも考えられる。そこで、親機12は、第1子機13aとの通信が所定期間無い場合、第1子機13aに問合せを行い、それでも第1子機13aから応答信号を受信しないとき、上記サービス終了信号を受信したとみなして、問合せ信号D1の送信を再開してもよい。その他、本発明を適用できる任意の制御方法を利用することができる。
また、親機12は、図5に示すような、携帯電話用アンテナ部42、携帯電話用通信部43、サービス利用処理部(サービス利用処理手段)70、およびSIM情報要求部(送出手段)71と同様の機能ブロックを備えることにより、携帯電話サービスを利用できる移動体端末14として機能してもよい。この場合、親機12は、子機13と通信可能である場合には、携帯電話サービスを利用できないように制御される。
ところで、実際の携帯電話システムでは、携帯電話端末と携帯電話網の基地局との間で位置情報の送受信が頻繁に行われている。そこで、携帯電話サービスを利用するのに必要な処理のうち、着信処理、通話処理などのような、ユーザに対して入出力を行うための処理は、移動体端末14のサービス利用処理部70が行い、その他の処理は、親機12のサービス利用処理部が行うことが望ましい。この場合、携帯電話サービスを利用するのに必要な処理を、親機12と移動体端末14とに分散させることができるので、親機12と移動体端末14とにおける処理の負担を軽減することができる。
最後に、特許文献1の発明の通信方法と本願発明の通信方法との相違点を、図9を参照して説明する。図9は、特許文献1の発明にて利用される通信経路と、本願発明にて利用される通信経路とを示している。
特許文献1では、SIMカード11を装着した通信端末装置100のみが公衆網16と通信可能であるため、SIMカード11を装着していない携帯電話端末101で通話を行う場合、通話のための音声データは、携帯電話端末101と通信端末装置100との間の通信経路102と、通信端末装置100と公衆網16との間の通信経路103とを経由する必要がある。このため、通信端末装置100および携帯電話端末101との間で通話のための音声データを送受信する新たな処理部が必要となり、既存の携帯電話端末を利用することが困難である。また、音声データを中継する通信端末装置100の消費電力が増大することになる。
これに対し、本願発明では、通話のための音声データは、子機13を取り付けた携帯電話端末(移動体端末)14と公衆網16との間の通信経路17を経由すればよく、子機13と親機12との間では、上述の問合せ信号D1、応答信号D2、およびサービス利用信号D3を送受信すればよい。従って、特許文献1に比べて、親機12における処理負担を軽減することができる。また、本願発明は、子機13をSIMカード11と同一形状とすることにより、子機13が取り付けられる移動体端末14として、既存の移動体端末を利用することができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、本実施形態では、子機13は、SIM情報を、親機12から近距離無線通信を介して取得しているが、その他の装置から取得してもよいし、着脱可能な記録媒体から取得してもよい。また、子機13を取り付けた移動体端末14の操作部44をユーザが操作して、移動体端末14から子機13に出力することにより取得してもよい。
また、本実施形態では、本発明を携帯電話サービスに適用しているが、その他の移動体通信サービス、銀行のオンラインシステム、流通業界のPOS(販売時点情報管理)システム、鉄道会社や航空会社のチケット予約システムなどに適用可能であり、個人を識別する個人識別情報と、カードを識別するカード識別情報との少なくとも一方を記録したカードを利用する任意のサービスに適用可能である。
最後に、SIMカード11、親機12、子機13、および移動体端末14の各ブロック、特に制御部20・30・40は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
すなわち、SIMカード11、親機12、子機13、および移動体端末14は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM、上記プログラムを展開するRAM、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるSIMカード11、親機12、子機13、および移動体端末14の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記SIMカード11、親機12、子機13、および移動体端末14に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、SIMカード11、親機12、子機13、および移動体端末14を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。