JP5094121B2 - 電子デバイス及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自立性(free-standing)金属フィルムを有する電子デバイスであって、該金属フィルムがアルミニウムの合金を有する電子デバイスに関する。特に、本発明は、自立性金属フィルムがマイクロマシン技術(MEMS)素子の一部であるそのようなデバイスに関する。
多くのMEMS構造は、あるデバイスの仕様により必要とされるような改善された機械的又は電気的特性の目的のために純金属ではなく合金を用いている。参考文献Zhang P.、 Lee H.J.及びBravman J.C.の「Mechanical Tests of Free-Standing Aluminum Microbeams for MEMS Application」、C. Muhlstein及びS.B. Brown Eds.のMechanical Properties of Structural Films, ASTM STP 1413(米国材料試験協会(ペンシルヴェニア州ウェストコンショホッケン))において、チタン(Ti)合金アルミニウム薄膜の機械的特性が特に研究されている。この参考文献の研究の下における自立性マイクロビームは、2%のチタン(原子百分率)を含んでおり、純Alマイクロビームの同等のセットと同じ寸法で形成され、同様のやり方で製造されたので、これらの機械的挙動は直接比較され得る。合金サンプルに関する機械的試験の結果を純Alサンプルに関する機械的試験の結果と比較することにより、著者はMEMSデバイスに合金材料として(具体的に)Tiを用いることの利点を示した。
AlとTiとの合金の自立性フィルムはクリープに非常に影響を受けやすいことが分かっていることが、そのような既知の電子デバイスの欠点である。
従って、本発明の目的は、クリープに影響を受けにくい冒頭の段落において述べられた種類の電子デバイスを提供することにある。
この目的は、上記フィルムがアルミニウムとマグネシウムと自由選択の任意の他の元素との合金を有することにより達成される。
自立性フィルムの機械的特性は、RF−MEMSデバイスの適切な機能にとって非常に重要である。その弾性率及び残留応力が必要な作動電圧を決定するのに対して、その降伏強さ及びクリープ特性は最終的なデバイスの信頼性を大いに決定する。降伏強さの低い値又はクリープに対する高い感度は加工中及び動作中の両方の間に塑性(すなわち永久的な)変形を引き起こし、これは、いつかは変化するデバイスの性能を招くか又は正しく作動しない大きく変形したMEMSデバイスとなることさえもある。
より詳細に調べると、これらの機械的特性(及び結果として得られる熱機械的挙動)は、加工及び使用の異なるステージにおいてデバイスに関連することが分かった。第1に、使用中の広範の作動(荷重)のために、緩和/クリープ効果により、すなわち変形によりやがて開放される取り込まれた応力により機械的特性が変化し得る。
自立性金属フィルムの部品の広範の不可逆的な(塑性)変形は加工中に生じ得るので、加工中の挙動は更により重要である。とりわけそのような変形を引き起こす3つのステージが存在する。すなわち、第1に上昇した温度において犠牲層上にフィルムを設けることであり、これは材料間の熱膨張の差の結果として応力を招く。第2に、犠牲層の除去であり、これらの層は任意の応力の解放のためにもはや用いられない。第3に、高温でデバイスをリフローオーブンに通すことであり、これは降伏強さを超える可能性を与える。
その結果、材料が自立性フィルムとして用いられるのに好適であるために、降伏強さ及びクリープ抵抗の両方が十分に良好であることが必要であることが本発明に至った洞察である。それに伴う複雑なファクタは電気抵抗及び損失を制限するように必要である良好な導電性である。
それに加えて、自立性フィルムの機械的挙動は、バルク材料の機械的挙動又は更に従来の基板上の薄膜の機械的挙動と同じであるようには予想され得ない。自立性薄膜では、粒径が典型的には非常に小さく、基板が存在しないことは上面及び下面の両方が拘束されないことをもたらす。
本発明に至った実験において分かったように、Al−Mg合金は高い降伏強さ及び良好なクリープ抵抗を有し、その特性はCu,Mn及びSiのような他の合金元素を与えることにより最適化され得る。対照的に、他のよく知られている合金は、そのような優れた結果を与えていない。Al−Cuの場合、銅の濃度とともに硬度は大きくなるが、クリープ抵抗は減少する。Al−Tiの場合、Tiの濃度とともに硬度及びクリープ抵抗が増大する。しかしながら、低いTi濃度(例えば1ないし2%)では、クリープ抵抗は純アルミニウムよりも小さい。Ti濃度が高すぎると、電気伝導率が低減するように思われる。Al−Zn及びAl−Liのような合金はクリーンルームの条件の下では使用することができず、従っていずれにしても不適切である。
本発明の好ましい形態では、マグネシウムが0.1%と20%との間の原子重量百分率で存在する。マグネシウムの量は、0.5%と10%との間であることが好ましく、最も好ましくは1%から5%までの範囲内である。
他の形態では、上記自立性フィルムの材料が他の合金元素を有する。それとともに、機械的及び電気的特性が更に最適化され得る。三元合金が従来技術のAl−Ti合金よりも良好な電気伝導性を有するという測定値が示された。
上記他の合金元素は、周期律表のII族、III族、IV族及びV族からの任意の元素並びに遷移金属から選択され得る。水素及びリチウムのような非常に小さい元素も好適である。周期律表のマグネシウム及びカルシウムの行の元素が特に好ましい。実施例は、アンチモン、ヒ素、バリウム、ベリリウム、ホウ素、カドミウム、カルシウム、炭素、セリウム、クロム、コバルト、銅、ガリウム、金、水素、インジウム、鉄、鉛、リチウム、マグネシウム、マンガン、水銀、モリブデン、ニッケル、ニオブ、パラジウム、リン、スカンジウム、ケイ素、銀、硫黄、タンタル、スズ、チタン、タングステン、バナジウム、亜鉛、ジルコニウムを含んでいる。
AlCuMgMn、AlMnMg、AlSiMgCuNi、AlMgCu、AlCuMgSi、AlZnMgCuCr、AlLiCuMgのような銅又はマンガンを更に含む合金において、良好な結果が得られた。ここで、v、w、x、y及びzは、合金における各元素の相対的な量を示している。好適な形態では、vは80%から99.8%までの範囲内であり、w,x,y及びzの全て又は任意の1つ若しくはそれ以上は、0.1%ないし20%の範囲内である。Mg,Cu及び/又はMnからの合金元素の合計が3%と8%との間である場合に良好な結果が得られ、その際、個々の元素はかなり異なった(銅に関しては0.1%から4.4%までであり、マグネシウムに関しては1%から5%まで)。それに加えて、三元合金及びより高次元の合金は、元素Mn及びCuの濃度が0.1%と10%との間で変化するようなより広い範囲においても存在することが考えられる。
上記自立性フィルムは、集積回路における空隙のある相互接続構造の一部であってもよく、またRF−MEMS素子の一部であってもよい。更に、センサ又はアクチュエータとして用いられるMEMS素子用のメンブランに好適である。これらの用途の自立性フィルムは、良好な導電性、高いクリープ抵抗、良好な強度及び犠牲層の製造性の要求を満たす必要がある。最初の用途はRF−MEMS素子に関して考えられる。
設計の自由度がかなり大きくなることが、本発明の自立性フィルムの他の利点である。実際には、自立性の梁部を含む素子の設計は加工から切り離され得る。
基板上の層として用いる場合にも好適であることが、本発明の自立性フィルムの更に他の利点である。これは、デバイスにおける層の減少及びそれに伴うマスク工程及びコストの低減のために好ましい。上記自立性フィルムは、一般に相互接続部として又はインダクタの定義(definition)に関して該フィルムを好適にする厚さ及び導電性を有することがより重要である。受動素子のネットワークに本発明の自立性フィルムを備えたMEMS素子を含むことが特に好ましい。MEMS素子は、一般に少なくともCMOSトランジスタよりも大きいオーダーである寸法を有する。このサイズの違いは、1つの同じ薄膜堆積デバイスにおける費用効果の高い集積化に寄与しない。しかしながら、MEMS素子は、相互接続部、インダクタ及び薄膜キャパシタ等とうまく集積化され、高度化された集積回路の加工にはあまりにも時代遅れであると分類されるウェハ製造において加工される。
薄膜ネットワークにおける好適なMEMS素子は、自立性薄膜が水平方向及び垂直方向の相互接続部並びにインダクタの定義にも用いられる点で実現される。その場合、他のベース金属層は、自立性フィルム又は自立性フィルムに接続された第2の電極と対向するMEMS素子の第1の電極と、薄膜キャパシタの第1の電極とを有する。その場合、自立性フィルムの加工中に必要である犠牲層は、MEMS素子の第1の電極と自立性フィルムとの間に空隙を作るように専ら局所的に除去される。同じ犠牲層が、薄膜キャパシタ用の誘電体として並びにインダクタ及び垂直方向の相互接続部用の基板として用いられ得る。Al−Mg合金の熱膨張係数は純アルミニウムの熱膨張係数と同等であるので、用いられる犠牲層の変更は不要である。好ましい犠牲層は、リフローはんだ付けの間に用いられる温度に耐えることが可能な無機材料を含んでいる。無機材料の例は、ペロブスカイト、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化タンタル等を含んでいる。
本発明は、更に、自立性薄膜を有する電子デバイスの製造方法であり、犠牲剥離層の上に物質の上部層を設けるステップと、梁部を規定するように上記上部層を構造化するステップと、上記梁部を自立させるために上記剥離層を除去するステップとを含む電子デバイスの製造方法であって、上記上部層がアルミニウムと少なくともマグネシウムとの合金を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法にも関する。
上記剥離層は、該剥離層上に上記上部層を設ける前に有利にパターニングされる。上記上部層は、例えばフォトリソグラフィ及び/又はエッチング、例えばウェット化学エッチングにより好ましく構造化される。上記剥離層は、ウェット又はドライ化学エッチングにより除去され得る。ドライエッチングの場合には、フッ素の化学作用が用いられ得る。これは、基板を保護するようにエッチストップ層が設けられると、犠牲層の局所的な除去を可能にし、上記基板は、好ましくは半導体基板であり、高いオーム値であるシリコン基板が最も適切である。
上記電気デバイスは、RF−MEMS素子を含み得る。そのような素子に関して、しっかりと密閉パッケージされることが重要である。デバイスを密閉パッケージするステップは、リングはんだを用いて実現され、はんだを与えるステップと、その後のリフローオーブンにデバイスを通すことによってはんだをリフローするステップとを含み得る。
本発明のこれらの観点及びその他の観点は、本明細書において説明される実施の形態から明らかであり、本明細書において説明される実施の形態を参照して理解されるであろう。
本発明の実施の形態が、単なる例として添付の図面を参照して説明される。
RF−MEMSのスイッチ及びキャパシタは、種々の技術プラットフォーム及び材料を用いて広く研究開発されている。RF−MEMSの使用は従来の技術と比較して幾つかの著しい利点(例えば、低挿入損失,低消費電力及び良好な絶縁)を有する。しかしながら、RF−MEMSデバイスの商品化の成功への主な障害の1つは、熱機械的信頼性である。
RF−MEMSにおける熱機械的信頼性の問題は、種々の点で現れる。第1に、加工中に自立性金属フィルムの部品の大規模な不可逆性の(塑性)変形が生じ得る。これに関する理由は、構造内に存在する他の材料との熱膨張のずれによるフィルム内における大きな機械的応力及び/又は当該金属の降伏強さを超える析出(deposition)応力の発生である。これは、大きく変形したデバイスの原因となる。言い換えれば、ある材料がその降伏強さよりも低い応力を与えられると、その材料は変形するが、専ら可逆的である。上記力が取り除かれた後、材料は元のサイズに戻る。しかしながら、降伏強さよりも大きい応力を与えられると、永久的な又は塑性の変形が生じ、これは材料の寸法を変える。当該材料の硬度は、降伏強さに直接的に関係がある。
第2に、使用中の大きな動き(ローディング)のために、緩和/クリープ作用、すなわち変形によってやがて開放される取り込まれた応力により機械的特性が変化し得る。
図10は本発明のデバイスの断面図を模式的に示しており、このデバイスでは自立性フィルムはMEMS素子10の部分である。このデバイスは、薄膜キャパシタ50と垂直相互接続部60とを更に有している。このデバイスは基板14の上に存在しており、基板14は、このケースではシリコンよりなる本体部141と熱酸化面142とを有している。この図は、3つの電極20,30,220を備えたMEMS素子が、いかなる追加の金属層又は犠牲層も与える必要もなく、他の構成要素も有する受動回路内に埋め込まれた有利な実施の形態を示している。実際には、第1の犠牲層16は薄膜キャパシタ50の誘電体としても機能する。電極20,220,30は、空隙26により互いに分離されている。薄膜キャパシタ50の電極51,52は、MEMS素子10の第2及び第3の電極と同じ金属層に規定されている。機械層12は、第2の電極30であるだけではなく、相互接続部でもある。ここで、第1及び第2の犠牲層16,17が選択的にエッチング除去されていることが特に重要である。それに加えて、機械層12に単に1つの開口部が存在するのではなく、複数の開口部が存在する点、及び支持構造がかなりの広がりを持っている点、すなわち本質的に壁形状であり、柱形状ではない点で改善されている。
図11は、製造途中の本発明のデバイスの断面図を模式的に示している。この加工例では、犠牲層16,17のCFプラズマを用いたドライエッチングが使用される。例えばAlよりなるエッチストップ層18は、このケースでは酸化面142を伴うSi本体部141を有する基板14の表面をフッ素プラズマから保護する。このMEMS素子は、このケースにおいても基層13に第1の電極20を含んでいる。犠牲層16と、中間金属層11と、第2の犠牲層17と、機械層12とが更に存在している。
犠牲層16,17の窓部は、専ら上記第2の犠牲層を設けた後に作られたものである。これは、反応性イオンエッチングによりもたらされる。金属層13,11はエッチストップ層としての役割を果たし、機械層12は、あるステージにおいて中間金属層11に接続され、他のステージでは基層13に接続される。
上記機械層12は、高温(例えば400℃)におけるアルミニウム合金層のスパッタリング又はCVD堆積により設けられる。この機械層12は、薄膜の通常の厚さと比較してかなり厚く、一般に1ないし10μmである。この層は、任意の相互接続部と基板に対する支持構造とを含んでいる(しかしながら、この点において幾つかの異なる構成が考えられ、本発明はこの点で制限されるように意図されてはいない。)。次に、梁部を規定するようにフォトリソグラフィ及びエッチング、例えばウェット化学エッチングを用いて上部層12が構造化される。
上記機械層12の上にマスク22が塗布される。このマスク22は、犠牲層17への窓部21を含んでいる。約5μmの厚さのポリイミドが使用される。これは、機械層12の厚さ(例えば1μm)を考慮すると適切であり、フッ素プラズマから十分に保護する。その後、(図10に示されているような)空隙26を作るように犠牲層16,17が局所的にエッチングされる。マスク22は、除去されず、MEMS素子の梁構造の一部を構成する。また、このマスクはデバイスの他の素子に対して不動態化層としての役割を果たし得る。
この後、水分等が当該デバイスの機能に悪影響を及ぼす傾向があるので、上記MEMS素子及び場合によっては完成したデバイスは密閉パッケージされる。そのようなパッケージングは、一般にリングはんだを用いてデバイスを覆うように密閉キャップを配することにより実現され、まずはんだを与え、その後、約250〜300℃でリフローオーブンにデバイスを通すことによって上記はんだをリフローすることにより実行される。
上述のプロセスにおいて梁部の変形を生じさせる少なくとも3つのステージが存在する。第1に、上昇した温度における上記上部層の堆積である。これは、ある表面に層を設けることを含んでおり、母材の熱的に引き起こされる膨張又は収縮は上記層の膨張又は収縮とは異なる傾向にあり、これは層の堆積後の冷却ステージの間に応力を招く。従って、上記層を形成するために用いられる材料が塑性変形を防止するのに十分に硬いことがある程度重要である。
第2に、上記犠牲層の除去である。すなわち、(この加工工程に従う)自立性の梁部が表面に存在する場合の梁部の挙動とは異なる機械的挙動を有し、犠牲層の除去までに梁部に存在する応力が犠牲層の除去後クリープにより解放される。制御されない変形が、対応する電気的な作用と共に生じ得る。
第3に、MEMSデバイスをリフローオーブンに通すことである。すなわち、この加工工程に用いられる高い温度が降伏強さを超えることにより変形を引き起こす。
上述したように、自立性フィルムの機械的特性は、RF−MEMSデバイスの適切な機能のために非常に重要である。自立性フィルムの弾性率及び残留応力は必要な作動電圧を決定するのに対して、その降伏強さ及びクリープ特性が最終的なデバイスの信頼性を大いに決定する。低い値の降伏強さ及びクリープに対する高い感度が加工中及び使用中の両方の間において塑性の(すなわち永久的な)変形を引き起こし、これは、時間が経つにつれて変化するデバイスの性能又は適切に作動しない大きく変形したMEMSデバイスさえをもたらす。自立性薄膜の機械的特性を調べる種々の技術が存在する。降伏強さ、弾性率及びクリープ特性を評価するために、ナノインデンテーション、バルジ試験及び基板反り(curvature)実験が用いられ得る一方で、機械的応力を測定するために特別な機械試験体系が用いられ得る。
しかしながら、アルミニウム合金は、一見、類似した性質及び微細構造を持ち、本質的に1種類から成っているように見えるが、そうではない。異なるAl合金の微細構造は大きく異なり、その結果(とりわけ)それらの機械的特性も大きく異なる。特に、2つの主なグループが存在し、これらは、合金元素が結晶構造にほぼ均一的に分散し、取り込まれた固溶体と、アルミニウムの粒子の周り又は内部に金属間化合物が存在する構造とである。これらの組み合わせもまた可能である。
ここで、上記合金は良好な電気伝導率を有する必要があり、Al−Si合金は使用することができないことも注目に値する。
本発明によれば、自立性薄膜は、アルミニウムと少なくともマグネシウムとの合金を有している。これは、(クリープと関連がある特性のような)特性がTiの含有量の変化に依存しないのでより少なく敏感であるという点で、上述の参考文献において提案されているAl−Tiよりも著しい利点を示すことが見出された。さらに、実際の硬度及びクリープ抵抗が著しく改善されたことが見出された。
種々の自立性薄膜に関して行われた実験についてこれから述べられ、説明される。これらの実験では、種々のアルミニウム合金の薄膜の硬度及びクリープが決定された。実験がとりわけ薄膜に関してであることに注意することが重要である。バルクのアルミニウム合金の機械的特性は従来技術においてよく知られている。しかしながら、薄膜の異なる表面/体積比のため及び更に(境界部のみを持つ積層された層とは対照的に)自立性の梁部の大きな自由表面領域のために、薄膜の機械的特性はバルク材料の機械的特性と同じであると仮定されることはできない。
上述の技術の簡潔な説明がこれからなされる。
ナノインデンテーション
ナノインデンテーションは、自立性薄膜に用いられる種々の材料の降伏強さ及び(一次)クリープ特性を評価するために用いられ得る。ナノインデンテーションの原理は、図1に示されている。鋭いダイヤモンドチップ(インデンタ)がある荷重で材料に押し込まれ、同時に、チップの変位が測定される。荷重−無荷重のサイクルが、図2に示されているような荷重−変位曲線を生成する。この曲線の分析は、弾性率、硬度、クリープ特性及び(脆性材料についての)インデント材料の割れ性に関する情報を与える。上述したように、金属の場合、硬度は降伏強さに比例するので、硬度は本発明に関連して特に直接的に関係する。
硬度Hは、最大荷重Pと、インデンタと最大荷重における表面との間の接触領域Aとの比として定義される。
H=P/A (1)
上記領域Aは、従来技術において知られているように測定したインデンテーション曲線から得られる。クリープ実験では、ある期間最大荷重が固定されて保たれ(「保持期間」)、その間、変位の変化がクリープ特性についての情報を与える。従って、インデンテーション実験からのクリープの定性的測定量はΔhであり、上記保持期間における変位の変化はΔtである。
バルジ試験
ナノインデンテーションは「固定された」フィルム、すなわち基板に取り付けられたフィルムの特性を測定するために用いられる一方で、バルジ試験の技術は自立性フィルムの機械的特性を与える。その原理が図3に示されている。必要な試料は矩形のフィルムのメンブラン(サイズは16×4mm)により構成されており、これがバルジテスタに取り付けられる。このメンブランに圧力が加えられ、結果は、メンブランが変形する、すなわち「膨れる(bulge)」ことである。上記メンブランの最大の歪みは、メンブランにより反射されるレーザビームの偏向を測定することによって決定される。加えられた圧力P及び測定された偏向hから応力σと歪度εとが以下の等式の助けを受けて算出される。ここで、tはフィルムの厚さであり、aはフィルムの(最小の)幅である。
σ=Pa/(2ht) (2)
ε=2h /(3a) (3)
このようにして応力−歪度の関係は得られ、これは原則としてバルジ試験測定から弾性率及び降伏強さを決定することが可能であることを意味する。また、少なくともこれが引張応力である場合、(初期)残留応力が決定され得る。
基板反り測定
二次又は定常状態のクリープ特性を調べるために、基板反り測定が用いられ得る。この測定は、専ら初期の一次クリープを受け持つインデンテーション−クリープ測定に対して補完的である。従って、時間及び温度の関数としての薄膜の応力の発生が測定された。フィルムの応力を測定する最も正確かつ単純なやり方は、レーザ走査法を使用して基板の反りを測定することである。これは、反射したレーザビームの変位の測定される変化がウェハの表面に対する接線の傾きの変化に比例する点で誘導的な測定法である。
レーザ光のビームは、ある角度において湾曲した基板の表面で反射し、ある場所において検出される(図4)。レーザビームを新しい場所に移動させるとすぐに、上記光は異なる角度で反射し、フォトデコーダにより異なる場所で検出される。フォトデコーダにより検出される直線的な動きが、基板上の場所の関数として角度の変化に換算され、その結果基板の反りを求めるために用いられ得る。
ウェハの反りの変化(傾き=2/R)を測定し、以下の式(ストーニーの方程式)を用いることにより、薄膜の応力が計算される。
σfilm=Esub/[6(1−νsub)]・tsub /tfilm・(1/R−1R
ここで、σfilmは薄膜の応力であり、Esub及びνsubは基板に関する弾性率及びポアソン比であり、tsub及びtfilmは基板及びフィルムそれぞれの厚さであり、Rはフィルム堆積前又はフィルム除去後の反りの初期半径であり、Rは測定された径の反りである。
に関する値を得るために、試料は薄膜を伴うことなく測定されなければならない。この目的のために、フィルムはH/HSOの溶液を用いて実験後に除去され、温度の関数としての反りが再度測定される。
ウェハの反り試験の間、温度が一定に保たれると、応力の緩和が観測され得る。反りの半径の時間変動が測定され、応力緩和の発生のメカニズムはこれと同じであり、クリープを引き起こす。
試験片及び材料
ナノインデンテーション、バルジ試験及び基板反り試験に関して、特別な試料が用意された。ナノインデンテーション及び基板反り試験の場合、これらは、均一にスパッタされた金属のフィルムであり、シリコウェハ上の酸化ケイ素又は窒化ケイ素のフィルムに堆積された。上記金属に関して、異なる範囲のAl合金が作製された。(下記の)表1に概要が与えられている。上記基板反り測定では、AlCu(4wt%)、AlV(0.15wt%)Pd(0.1wt%)及びClCuMgMnのみが用いられた。
Figure 0005094121
バルジ試験の場合、薄膜金属メンブランが以下のやり方で作製された。PECVDを用いてシリコンウェハの両面に0.5μmのSiフィルムが堆積された。反応性イオンエッチングを用いて、ウェハの一方の面から窒化物層の最終的なメンブランのサイズ(4×16mm)の矩形領域が除去された。次のステップでは、窒化物がシリコンのKOHエッチングにおけるエッチングマスクとして用いられ、一方の面に窒化物メンブランを残して矩形の開口部が得られた。上記金属フィルムが、窒化シリコンメンブラン上に堆積された。このようにして、2つの層、すなわち窒化物層及び金属層よりなるメンブランが得られた。最後のステップは、反応性イオンエッチングにより窒化物層を除去することであり、その結果、自立性の金属メンブランが得られた。
金属及び厚さを変えて(全てAl合金の)多くのメンブランが準備された。表2に概要が与えられている。
Figure 0005094121
結果
ナノインデンテーション
ナノインデンテーション実験の結果は、図5及び図6にまとめられている。図5は、純アルミニウムに関して測定された硬度に対して正規化された測定硬度を示している。図6には、純アルミニウムに関する値により正規化された30秒の保持期間中の変位が示されている。これらの結果は、押し込み(indentation)深さがフィルムの厚さの約0.2倍であった測定値のみを表している。これは、全ての測定値がシリコン基板の存在により等しく影響を及ぼされることを確実にし、従って相互に直接比較され得る。上記合金の全てが純アルミニウムよりも大きい硬度、従って高い降伏強さを有することが明らかである。AlCuMgMn及びAlSiMgCuNiの場合に特に高い値が見出された。
図6は、ナノインデンテーションにより見出された種々のスパッタされたアルミニウム合金の正規化クリープ量のグラフである。機械的に安定なRF−MEMSデバイスを作製可能にするためには、高い降伏強さ(すなわち高い硬度)及び低いクリープの両方を有することが必要である。図5及び図6は、これら2つの特性が反対の傾向を示し得ることを示している。例えば、AlCu(1wt%)は非常に小さいクリープを示しているが、同時にかなり小さい硬度を有している。それに対して、AlCu(4wt%)は高い硬度を有しているが、大きなクリープを有している。AlCuMgMn及びAlMgCuは、高い硬度及び小さいクリープの両方を有している。この反対の傾向の理由は、クリープと硬度とが異なる(微細構造の)メカニズムにより決定され得ることである。
バルジ試験
図7は、バルジ試験の結果の概要を示している。
図7は、1μmのメンブランに関して見出されたメンブランの割れが発生するまでの応力−歪み曲線を示している。全ての試料は初期引張応力を有し、これは様々な試料では異なっている。全ての試料がわずかに小さい降伏を示すか又は降伏を全く示さず、逆に「脆い」挙動(すなわち、割れまで専ら塑性変形)を示していることに注目されたい。割れ歪みは、バルク合金に関する典型的な値と比較して非常に低い(3〜30%の範囲であり得る。)。バルク材料において、割れは大きな塑性変形が常に先行し、それがこの違いを説明する。それに対して、最終的な強度、すなわち割れの際の応力は、フィルムの場合バルク材料と比較してかなり大きい。上記曲線から算出されたヤング率が図7に示されている。この値は約50GPaであり、これは、70GPaであるバルクのAl合金に関して測定された値よりも著しく小さい。RF−MEMSの作動層として用いられるフィルムに関して、初期応力と可能な限り大きい最終的な強度との間の応力の範囲を有することが有利である。図7において分かるように、AlCu(4wt%)フィルムは最も大きい範囲を有する。これは、この合金に関して見出された大きい硬度の値と一貫性がある(図5参照)。
図8は、5個の2μmのメンブランに関しての結果を示している。
ヤング率は、70GPaであるバルクの値よりも低い。相当注目すべき挙動がAlCuMgMnにより示されており、初期応力と最終的な強度との間の非常に大きな値を有している。この挙動は、ナノインデンテーションにより見出されたような高い硬度及び低いクリープと一貫性があり(図5及び図6)、この合金が本発明の1つの好ましい具体的な実施の形態であることを示している。
ウェハ反り試験
図9は、ウェハ反り試験の結果を示している。AlCu(4wt%)及びAlCuMgMnに関して、77℃の温度において同時に長期間の応力発生が示されている。応力緩和は、クリープ特性と直接的に関係がある。この図は、長期間の応力緩和及び従って長期間のクリープがAlCu(4wt%)に関してよりもAlCuMgMn合金に関して大いに少なく顕著であることを示している。これは、図6のナノインデンテーションの結果と一貫性がある。
従って、以上のことをまとめると、上述した実験は以下のことを実証している。すなわち、Al−Cuの場合、銅の濃度とともに硬度が増大するが、クリープ抵抗は減少する。Al−Tiの場合、硬度及びクリープ抵抗がTiの濃度とともに増大する。しかしながら、低いTi濃度(例えば1〜2%)では、クリープ抵抗は純アルミニウムよりも小さい。Ti濃度が高すぎると、電気伝導率が低減するように思われる。Al−Zn及びAl−Liはクリーンルーム内において用いられ得ない。Al−Mg合金は高い降伏強さ及び良好なクリープ抵抗を有することが見出され、その特性はCu,Mn及びSiのような他の合金元素を与えることにより最適化され得る。表3において、本発明のAl−Mg合金の電気的伝導特性が既知のAl−Ti合金に対して明らかにされている。
Figure 0005094121
これらの結果から明らかであるように、純Al又はAlCu合金に対するAl−Mg合金の伝導率の増大はAl−Ti合金と比較してかなり制限されている。2倍の抵抗の増大は、RF−MEMSデバイスの使用に関する仕様の範囲内であるようである。
本発明の自立性薄膜はRF−MEMSデバイスに関連して具体的に説明されたが、他の用途、例えば集積回路における空隙のある相互接続部にも好適であることが理解されることに注意されたい。
上述した実施の形態は本発明を限定するものではなく、説明しており、当業者であれば後に付されている特許請求の範囲により定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく多くの他の実施の形態を設計することが可能であることに注意されたい。特許請求の範囲において、括弧内の任意の参照符号は特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきではない。「有する(comprising,comprise)」等の単語は、総じて任意の請求項又は明細書に列挙されている構成要素又はステップ以外の他の構成要素又はステップの存在を排除するものではない。構成要素の単数の記載はそのような構成要素の複数の記載を排除するものではなく、構成要素の複数の記載はそのような構成要素の単数の記載を排除するものではない。幾つかの手段を列挙しているデバイスのクレームにおいて、これらの手段の幾つかは、ハードウェアの1つの同じアイテムにより具現化され得る。ある方策が互いに異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの方策の組み合わせが有利に用いられないということを示すものではない。
ナノインデンテーションの原理を説明する模式図である。 荷重−変位曲線の模式的な略図である。 バルジ試験の装置の原理を説明する模式図である。 レーザ走査法の原理を説明する模式図である。 種々のスパッタされたアルミニウム合金のナノインデンテーションにより測定された正規化硬度のグラフである。 種々のスパッタされたアルミニウム合金のナノインデンテーションにより測定された正規化クリープ量のグラフである。 種々の1μmのフィルムに関するバルジ試験の結果(応力−歪み曲線)のグラフである。 2μmのフィルムに関するバルジ試験の結果(応力−歪み曲線)のグラフである。 ウェハ反り試験により測定されたAlCu(1wt%)フィルム(上側)及びAlCuMgMnフィルム(下側)の応力緩和のグラフである。AlCuMgMnフィルムは著しく小さい応力緩和を示している。 本発明のデバイスの一実施の形態の模式的な断面図を示している。 製造途中の本発明のデバイスの断面図を模式的に示している。

Claims (11)

  1. アルミニウムと少なくともマグネシウムを含有する合金で構成される、センサ又はアクチュエータとして用いられるMEMS素子用のメンブランを有し、
    前記メンブランは、アルミニウムとマグネシウムと少なくとも1つの他の物質とを含有する合金で構成され、
    前記少なくとも1つの他の物質は、銅、マンガン、ケイ素、ニッケル、クロム及びリチウムのうちの1つ又はそれ以上を有し、
    マグネシウム、銅及びマンガンの含有量の合計が2.5原子重量パーセントと10原子重量パーセントとの間である、電子デバイス。
  2. アルミニウムと少なくともマグネシウムを含有する合金で構成される、センサ又はアクチュエータとして用いられるMEMS素子用のメンブランを有し、
    前記メンブランは、アルミニウムとマグネシウムと少なくとも1つの他の物質とを含有する合金で構成され、
    前記少なくとも1つの他の物質は、銅、マンガン、ケイ素、ニッケル、クロム及びリチウムのうちの1つ又はそれ以上を有し、
    前記合金は、AlvMgwCuxMny、AlvMgwMny、AlvMgwCuxSiz1Niz2、AlvMgwCux、AlvMgwCuxSiz1、AlvMgwCuxZnz3Crz4、AlvMgwCuxLiz5(但し、80≦v≦99.8、0.1≦w≦8.0、0.1≦x≦8.0、0.1≦y≦4.0、z1,z2,z3,z4,z5はそれぞれ20よりも小さい。)よりなる群から選択された、電子デバイス。
  3. 前記少なくとも1つの他の物質が、0.1原子重量パーセントと8原子重量パーセントとの間の量の銅を含有する請求項1記載の電子デバイス。
  4. z1,z2,z3,z4,z5はそれぞれ5よりも小さい、請求項2に記載の電子デバイス。
  5. 前記電子デバイスは、第1電極と第2電極を有するスイッチまたはキャパシタであり、前記メンブランが前記第2電極である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子デバイス
  6. 前記メンブランは、空隙を有する相互接続構造の一部である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子デバイス。
  7. 犠牲剥離層の上に物質の機械層を設けるステップと、
    前記機械層を構造化して薄膜を規定するステップと、
    前記犠牲剥離層を除去して前記薄膜を、センサ又はアクチュエータとして用いられるMEMS素子用のメンブランにするステップと
    を含み、
    前記メンブランは、アルミニウムとマグネシウムと少なくとも1つの他の物質とを含有する合金で構成され、
    前記少なくとも1つの他の物質は、銅、マンガン、ケイ素、ニッケル、クロム及びリチウムのうちの1つ又はそれ以上を有し、
    マグネシウム、銅及びマンガンの含有量の合計が2.5原子重量パーセントと10原子重量パーセントとの間であることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
  8. 犠牲剥離層の上に物質の機械層を設けるステップと、
    前記機械層を構造化して薄膜を規定するステップと、
    前記犠牲剥離層を除去して前記薄膜を、センサ又はアクチュエータとして用いられるMEMS素子用のメンブランにするステップと
    を含み、
    前記メンブランは、アルミニウムとマグネシウムと少なくとも1つの他の物質とを含有する合金で構成され、
    前記少なくとも1つの他の物質は、銅、マンガン、ケイ素、ニッケル、クロム及びリチウムのうちの1つ又はそれ以上を有し、
    前記合金は、AlvMgwCuxMny、AlvMgwMny、AlvMgwCuxSiz1Niz2、AlvMgwCux、AlvMgwCuxSiz1、AlvMgwCuxZnz3Crz4、AlvMgwCuxLiz5(但し、80≦v≦99.8、0.1≦w≦8.0、0.1≦x≦8.0、0.1≦y≦4.0、z1,z2,z3,z4,z5はそれぞれ20よりも小さい。)よりなる群から選択されたことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
  9. 前記犠牲剥離層は、該犠牲剥離層上に前記機械層を設ける前にパターニングされる請求項7に記載の方法。
  10. 前記犠牲剥離層は、該犠牲剥離層上に前記機械層を設ける前にパターニングされる請求項8に記載の方法。
  11. z1,z2,z3,z4,z5はそれぞれ5よりも小さい、請求項8に記載の電子デバイスの製造方法。
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