以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳述する。
図1〜3に示すのは本発明の一実施形態であって、図示の加工用ヘッド10は、工具が取り付けられるスピンドル21を有するスピンドルユニット20と、スピンドルユニット20を支持する第1の支持ヘッド30と、第1の支持ヘッド30を支持する第2の支持ヘッド50とを含む(図3)。なお、本実施例における第1の支持ヘッド30(本発明の「支持ヘッド」に相当)は、図示のように、支持部30cに一対の脚部30a、30bを組み付けたフォーク形に構成されていて、その脚部30a、30b間で前記のスピンドルユニット20を支持するものであり、さらに、スピンドルユニット20を回転駆動するためのDDモータ(本発明の「駆動モータ」に相当)が、一対の脚部30a、30bのうちの一方にのみ設けられた構成となっている。
スピンドルユニット20は、駆動モータ内蔵型のスピンドルヘッドであって、内蔵された駆動モータ25によってスピンドル21を高速回転駆動するものである。
このスピンドルユニット20のハウジング23内には、スピンドル21が挿通配置されており、このスピンドル21を囲繞するようにして駆動モータ25が内蔵されている。駆動モータ25は、スピンドル21に外嵌固定されたロータ25aと、このロータ25aの外周面に対向するように設けられたステータ25bとから成っている。スピンドル21は、駆動モータ25の前後(図の上下)に複数列配置された軸受(例えば、アンギュラコンタクトベアリング)27によって回転自在に支持されている。そして、ステータ25bに励磁電流を供給すると、ロータ25aとの間に励磁力が発生し、その励磁力によってロータ25aが回転してスピンドル21が回転駆動される。
第1の支持ヘッド30は、上記のスピンドルユニット20を支持すると共に、スピンドルユニット20を、前記スピンドル21の回転軸線と直交する軸線(以下、「A軸」という)を中心に回転させてその角度位置を割り出すためのものである。
上記のように、第1の支持ヘッド30は、支持部30cに一対の脚部30a、30bを組み付けたフォーク形に構成されており、脚部30a、30bのそれぞれの内部に回転自在に組み込まれた支持軸によってスピンドルユニット20が支持されている。また、第1の支持ヘッド30は、スピンドルユニット20を回転駆動するためのDDモータが、一対の脚部30a、30bのうちの脚部30aにのみ設けられた構成となっている。従って、以下では、両脚部30a、30bの各支持軸について、脚部30a側の支持軸を駆動支持軸(本発明の「支持軸」に相当)といい、脚部30b側の支持軸を従動支持軸という。
以下に、脚部30aの構成を詳細に説明する。
脚部30aは、ハウジング31aを主体とし、その内部に、DDモータ33を構成するロータ(モータロータ)33a及びステータ(モータステータ)33b、スピンドルユニット20を支持する駆動支持軸、この駆動支持軸を回転自在に支持するための軸受(例えば、クロスローラベアリング)35、及びスピンドルユニット20へ流体を供給するためのロータリジョイント37等が組み込まれている。
ハウジング31aは、DDモータ33及び後述の回転軸を挿入するため、脚部30b側が大きく開口している。また、ハウジング31aには、反脚部30b側の側面からA軸方向に伸びる円筒部31a1が形成されている。そして、この円筒部31a1には、ロータリジョイント37が挿入される貫通孔31a2が形成されている。
ハウジング31aの反脚部30b側の端面には、後述の流体供給用のパイプや電流を供給するためのケーブルが通される凹部31a3が形成されている。また、脚部30aの反脚部31b側には、側面カバー18aが取り付けられており、凹部31a3がこの側面カバー18aによって覆われている。なお、図2は、この側面カバー18aを外した状態を示している。
ロータリジョイント37は、ハウジング31aに固定されたディストリビュータ37aと、ディストリビュータ37aの円筒部37a1の外側に回転可能に嵌装されたシャフト37bとで構成されている。
ディストリビュータ37aは、ハウジング31aの貫通孔31a2に挿入された状態で、そのフランジ部37a2において、円周方向に配設された複数のネジ部材37cによってハウジング31aに取り付けられている。また、ディストリビュータ37aの中心には、スピンドルユニット20に向けてのケーブル等の通過を許容するための貫通孔37a4が形成されている。
また、ディストリビュータ37aには、流体を供給又は排出するための複数の流体流路37a3が円周方向に位置をずらして形成されている。一方、シャフト37bには、ディストリビュータ37aの各流体流路37a3に対応する複数の流体流路37b1が形成されている。なお、図1では、複数の流体流路37a3及び流体流路37b1は、その1つのみが代表的に示されている。
そして、各流体流路37a3とそれに対応する各流体流路37b1とは、ディストリビュータ37aとシャフト37bとの嵌合周面に形成された環状溝を介して連通しており、シャフト37bが回転した場合でもその連通状態が維持されるように構成されている。また、各流体流路37b1は、スピンドルユニット20に形成された流体供給用又は排出用のポート24に連通されている。さらに、ディストリビュータ37aとシャフト37bとの間には、各環状溝の間に密封用のシール部材が介装されている。
さらに、ディストリビュータ37aには、円周方向に位置をずらして複数の流体供給用又は排出用のポート37dが形成されており、各ポート37dに流体供給用又は排出用のパイプ12が接続されている。そして、供給用のパイプ12から供給された流体が、ロータリジョイント37からポート24を介してスピンドルユニット20へ供給される。また、流体を循環させる場合には、スピンドルユニット20内を循環した流体が、ロータリジョイント37を介して排出用のパイプ12へ排出される。
DDモータ33は、ハウジング31aに対し固定的に配設されたステータ33bと、ステータ33の内周面に対向するように配設されたロータ33aとからなる。すなわち、図示のDDモータ33は、インナーロータ型のモータとして構成されている。
ステータ33bは、ハウジング31aに固定されたステータスリーブ33cの内周面に内嵌固定されている。また、ステータスリーブ33cの外周面には、環状溝33c1が形成されている。一方、ハウジング31aには、この環状溝33c1に連通する流体供給路31a4及び流体排出路31a5が形成されている。そして、この環状溝33c1に対し、流体供給路31a4からDDモータ33を冷却するための冷却用の流体(例えば、油)が供給され、ロータ33aの回転に伴うDDモータ33の発熱を抑えるようになっている。なお、環状溝33c1は、流体供給路31a4から供給された流体が、環状溝33c1を循環して流体排出路31a5から排出されるように、螺旋状に形成されている(図示略)。
ロータ33aは、ハウジング31a内に回転可能に設けられた回転軸32の外周面に外嵌固定されている。この回転軸32は、前述のロータリジョイント37のシャフト37bに対しその回転軸線について同心的に配置されており、円周方向に配設された複数のネジ部材によってシャフト37bに固定されている。そして、ロータ33aは、その外周面がステータ33bの内周面に対向する配置で、回転軸32に形成された円筒部32aの外周面に外嵌固定され、回転軸32に対し相対回転不能に設けられている。
また、回転軸32には、その脚部30b側の端面32bに対し、円周方向に配設された複数のネジ部材14によってスピンドルユニット20が固定される。すなわち、スピンドルユニット20は、回転軸32の端面32bに対して固定されることにより、回転軸32に支持される。従って、脚部30a側では、回転軸32及びこれと一体的に回転するロータリジョイント37のシャフト37bが、スピンドルユニット20のための駆動支持軸を構成している。
回転軸32の円筒部32aは、回転軸32をロータリジョイント37のシャフト37bに組み付けた状態で、僅かな隙間を介して前記したハウジング31aの円筒部31a1を囲繞するように形成されている。言い換えると、回転軸32をシャフト37bに組み付けた状態で、DDモータ33のロータ33aが外嵌固定された円筒部32aの内周面の半径方向内側には、ハウジング31aの円筒部31a1が存在している。
一方、ハウジング31aの円筒部31a1の貫通孔31a2内には、ロータリジョイント37の主要部分であるディストリビュータ37aの円筒部37a1及びシャフト37bが配設されている。さらに、ハウジング31aの円筒部31a1とロータリジョイント37のシャフト37bとの間には、シャフト37bをハウジング31aに対し回転自在に支持するための軸受35が介装されている。
以上のように、図示の例では、DDモータ33によって回転駆動される駆動支持軸(ロータリジョイント37のシャフト37b+回転軸32)に関連するロータリジョイント37、及びこの駆動支持軸をハウジング31aに対し回転自在に支持するための軸受35は、いずれもDDモータ33の半径方向内側に配設されている。また、軸受35のA軸方向に関する配置は、図示のように、A軸方向におけるDDモータ33の存在範囲内となっている。
次に、図示の例で、脚部30aと対向する位置でスピンドルユニット20を支持する脚部30bの構成について、以下で詳細に説明する。
脚部30bは、ハウジング31bを主体とし、その内部に、スピンドルユニット20の角度位置を保持するクランプ機構34、スピンドルユニット20を支持する従動支持軸、この従動支持軸を回転自在に支持するための軸受36、及びロータリジョイント38等が組み込まれている。
ハウジング31bは、A軸方向に貫通する貫通孔31b1が形成されており、その貫通孔31b1内に上記クランプ機構34、従動支持軸、軸受36、及びロータリジョイント38が組み込まれている。また、ハウジング31bの反脚部30a側の端面には、脚部30aと同様に凹部が形成されており(図示略)、これが側面カバー18bによって覆われている。
ロータリジョイント38は、脚部30a側のロータリジョイント37と同様のものであって、ハウジング31bに固定された軸受ホルダ70の円筒部70a1に固定されたディストリビュータ38aと、ディストリビュータ38aの円筒部38a1の外側に回転可能に嵌装されたシャフト38bとで構成されている。
ディストリビュータ38aは、上記の円筒部38a1と、円筒部38a1の反脚部30a側の端部で半径方向に広がるように形成されたフランジ部38a2とからなっている。そして、ディストリビュータ38aは、軸受ホルダ70の貫通孔70a4に挿入された状態で、フランジ部38a2において、円周方向に配設された複数のネジ部材38cによって軸受ホルダ70に組み付けられている。また、ディストリビュータ38aの中心には、A軸方向に貫通する貫通孔38a4が形成されている。
このディストリビュータ38aには、円周方向に位置をずらして複数の流体流路38a3が形成されている。一方、シャフト38bには、ディストリビュータ38aの各流体流路38a3に対応する複数の流体流路38b1が形成されている。なお、図1では、この複数の流体流路38a3及び流体流路38b1について、その1つのみが代表的に示されている。
そして、各流体流路38a3とそれに対応する各流体流路38b1とは、ディストリビュータ38aとシャフト38bとの嵌合周面に形成された環状溝を介して連通しており、シャフト38bが回転した場合でもその連通状態が維持されるように構成されている。また、ディストリビュータ38aとシャフト38bとの間には、各環状溝の間に密封用のシール部材が介装されている。さらに、流体流路38b1は、スピンドルユニット20に形成された流体供給用又は排出用のポート24に連通されている。
軸受ホルダ70は、上記の円筒部70a1と、円筒部70a1の反脚部70a側の端部で半径方向に広がるように形成されたフランジ部70a2とからなっている。そして、軸受ホルダ70は、このフランジ部70a2において、円周方向に配設された複数のネジ部材70bによってハウジング31bに組み付けられている。また、軸受ホルダ70の中心には、上記の貫通孔70a4がA軸方向に貫通するように形成されている。
脚部30bにおいて、脚部30aの回転軸32に対応する回転軸39は、フランジ部材39bと、このフランジ部材39bに組み付けられたロータリジョイント38のシャフト38bとで構成されている。この回転軸39(ロータリジョイント38のシャフト38b+フランジ部材39b)は、その回転軸線が、脚部30aの回転軸32の回転軸線(=A軸)と一致するように配設される。そして、回転軸39は、軸受36によって軸受ホルダ70に回転自在に支持されており、A軸に関し軸受ホルダ70の円筒部70a1と同心的に配設された状態となっている。
また、フランジ部材39bは、脚部30a側に、脚部30aにおける回転軸32の端面32bと平行な端面39b1を有しており、この端面39b1に対し、円周方向に配設された複数のネジ部材15によってスピンドルユニット20が固定される。従って、この回転軸39が、脚部30bにおけるスピンドルユニット20を支持するための従動支持軸として機能する。なお、回転軸39には、フランジ部材39bの外周部において、円筒状のブレーキ部材71が固定されており、このブレーキ部材71も回転軸39と一体的に回転する。従って、ブレーキ部材71も従動支持軸の一部に相当する。
スピンドルユニット20の回転位置(角度位置)を保持するためのクランプ機構34は、主としてクランプスリーブ34aで構成される。クランプスリーブ34aは、圧力室を形成するための環状溝34a1が形成された円筒部34a2と、この円筒部34a2の脚部30a側の端部で半径方向に広がるように形成されたフランジ部34a3とからなっている。円筒部34a2は、回転軸39と一体的に回転するブレーキ部材71を、その回転を許容する状態で囲繞している。
クランプスリーブ34aの円筒部34a2とハウジング31bとの間には、環状の受圧部材34bが介装されている。より詳しくは、ハウジング31bの貫通孔31b1に受圧部材34bが内嵌固定されており、さらに、この受圧部材34bの内周面にクランプスリーブ34の円筒部34a2が内嵌固定されている。そして、フランジ部34a3に螺挿したネジ部材により、クランプスリーブ34がハウジング31bに固定され、さらに、受圧部材34bがフランジ部34a3に対し固定されている。
また、クランプスリーブ34aの円筒部34a2には、受圧部材34b側に開口する環状溝34a1が形成されており、この環状溝34a1と受圧部材34bの内周面とにより圧力室が形成される。さらに、この圧力室には、受圧部材34bに形成された流体流路34b1が連通している。この流体流路34b1は、クランプスリーブ34aのフランジ部34a3に形成された流体流路34a4を介し、ハウジング31bに形成された流体流路31b2に連通している。
そして、このクランプ機構34では、これらの流体流路を介して圧力流体(例えば、圧油)が圧力室に供給されることにより、クランプスリーブ34aにおいて、円筒部34a2の環状溝34a1に対応する薄肉部が縮径方向に変形する。その結果、ブレーキ部材71に対し縮径方向の締付け力が作用し、ブレーキ部材71及びこれに組み付けられた回転軸39の回転が阻止された状態(クランプ状態)となる。また、圧力室への圧力流体の供給を停止することにより、円筒部34a2の薄肉部の変形状態が解消され、シャフト38aに対する締付け力が消失してクランプ状態が解除される。
また、図示の例では、脚部30b内に、回転軸39の回転角度(=スピンドルユニット20の角度位置)を検出するための回転検出器41が設けられている。
回転検出器41は、軸受ホルダ70の貫通孔70a4内に設けられ、貫通孔70a4の内周面から半径方向に突出する円盤状の支持部の所定位置に取り付けられた一対の検出ヘッド41a、41aと、検出器ヘッド41a、41aの内側に対向する配置で、回転軸39の端部に取り付けられた検出リング41bとで構成されている。この回転検出器41によるスピンドルユニット20の角度位置の検出信号は、本発明の加工用ヘッド10が搭載される工作機械の制御装置(図示せず)に送られ、スピンドルユニット20の回転制御(数値制御)に用いられる。
次に、図示の加工用ヘッド10における第2の支持ヘッド50について、その詳細を以下に説明する。
前述のように、本実施例における加工用ヘッド10は、上記で説明した第1の支持ヘッド30に加え、この第1の支持ヘッド30を支持する第2の支持ヘッド50を備えている。そして、第1の支持ヘッド30は、第2の支持ヘッド50を介し、前述の工作機械のラム等に支持される。この第2の支持ヘッド50は、第1の支持ヘッド30を鉛直方向の軸線(工作機械のZ軸と平行な軸線/以下、「C軸」という)を中心に回転駆動させるために設けられている(図3)。
第2の支持ヘッド50は、C軸方向に貫通する貫通孔51aを有するハウジング51を主体としており、軸部52aが貫通孔51a内に配設された回転軸52を備えている。そして、第1の支持ヘッド30は、この回転軸52を介して第2の支持ヘッド50に対し組み付けられている。また、図示の例では、第2の支持ヘッド50は、そのフランジ部51bに螺挿された複数のネジ部材によって工作機械1のラム8に取り付けられている。
第2の支持ヘッド50は、ハウジング51の貫通孔51a内に、回転軸52を回転駆動するためのDDモータ53、回転軸52の回転位置を保持するためのクランプスリーブ54、及び第1の支持ヘッド30へ流体を供給するためのロータリジョイント55を備えている。
DDモータ53は、ステータスリーブ53cを介してハウジング51に固定されたステータ53aと、スタータ53aの内周面に対向する配置で、回転軸52に固定されたロータ53bとで構成されている。また、DDモータ53を駆動するための励磁電流の供給は、コネクタ17aを介してDDモータ53に接続されたケーブル17によって行われる。
回転軸52は、ハウジング51の貫通孔51a内で回転可能に設けられた軸部材52aと、軸部材52aの第1の支持ヘッド30側の端部に取り付けられて半径方向(C軸と直交する方向)へ広がるフランジ部材52bとを含んでいる。また、回転軸52には、ロータリジョイント55が挿通される貫通孔52cが形成されている。
なお、図示の例では、回転軸52の軸部材52aとフランジ部材52bとの間に軸受ハウジング52dが形成されている。そして、この軸受ハウジング52dとハウジング51との間に軸受56が介装され、この軸受56により、回転軸52がハウジング51に対し回転自在に支持された状態となっている。因みに、図示の例における軸受56は、複合ころ形式の旋回軸受の1つである3列円筒ころ軸受(3列ローラベアリング/アキシアル・ラジアルローラベアリング)であって、アキシアル方向及びラジアル方向の大きい荷重を受けることができるものである。
軸部材52aの外周面には、DDモータ53のロータ53bが外嵌固定されており、ロータ53bの回転に伴って軸部材52aがC軸を中心として回転駆動される。また、フランジ部材52bは、円周方向に配設された複数のネジ部材52eによって軸部材52aに組み付けられており、軸部材52aと一体的に回転する。さらに、フランジ部材52bには、円周方向に複数のネジ部材19が螺挿されており、このネジ部材19によって、第1の支持ヘッド30の支持部30cが、フランジ部材52bに組み付けられる。従って、回転軸52がDDモータ53によって回転駆動されることにより、第1の支持ヘッド30が回転軸52と共に回転する。
ロータリジョイント55は、第1の支持ヘッド30のロータリジョイント37、38と同様のものであって、ハウジング51に固定されたディストリビュータ55aと、ディストリビュータ55aに形成された貫通孔55a1内に回転可能に嵌装されたシャフト55bとで構成されている。
ディストリビュータ55aは、回転軸52の貫通孔52c内に配置される円筒部55a2と、円筒部55a2の反第1の支持ヘッド30側の端部で半径方向に広がるように形成されたフランジ部55a3とからなっており、そのフランジ部55a3において、円周方向に配設された複数のネジ部材により、ハウジング51に組み付けられている。
また、シャフト55bには、第1の支持ヘッド30側の端部に、円盤状のフランジ部材57が組み付けられており、シャフト55bは、このフランジ部材57を介して回転軸52のフランジ部材52bに対し組み付けられている。従って、回転軸52の回転に伴い、シャフト55bも共に回転する。なお、フランジ部材57は、第1の支持ヘッド30の支持部30cに形成された円形の凹部30c1に嵌め込まれる形状となっており、このフランジ部材57と支持部30cの凹部30c1とにより、第1の支持ヘッド30と第2の支持ヘッド50とを組み付ける際の位置決めが行われる。
ディストリビュータ55aには、外部から流体を取り入れるための流体流路55a4が、円周方向に位置をずらして複数形成されている。一方、シャフト55bにも、ディストリビュータ55aの各流体流路55a4に対応する複数の流体流路55b1が、円周方向に位置をずらして形成されている。
そして、各流体流路55a4とそれに対応する各流体流路55b1とは、ディストリビュータ55aとシャフト55bとの嵌合周面に形成された環状溝を介して連通しており、シャフト55bが回転した場合でもその連通状態が維持されるように構成されている。また、シャフト55bに形成された複数の流体流路55b1は、それぞれ第1の支持ヘッド30におけるロータリジョイント37又は38のディストリビュータ37a、38aに形成された対応する流体流路37a3又は38a3に連通されている。従って、外部からロータリジョイント55のディストリビュータ55aに供給された流体は、シャフト55bを介し、第1の支持ヘッド30のロータリジョイント37、38へ供給される。
ハウジング51に固定されたディストリビュータ55aと回転軸52の軸部材52aとの間には、回転軸52の回転位置を保持するためのスリーブクランプ54が設けられている。このスリーブクランプ54は、そのフランジ部54aにおいて、複数のネジ部材によってディストリビュータ55aに組み付けられると共に、回転軸52との相対回転が許容されるように設けられている。また、スリーブクランプ54の円筒部54bには、ディストリビュータ55aの円筒部55a2側に開口する環状溝54cが形成されており、この環状溝54cとディストリビュータ55aの円筒部55a2の外周面とにより圧力室が形成される。
そして、この圧力室に対し、ディストリビュータ55aに形成された流体流路54dを介して圧力流体を供給することにより、円筒部54bの環状溝54cに対応する薄肉部が拡径方向に変形する。その結果、回転軸52に対し拡径方向の締付け力が作用し、回転軸52の回転が阻止された状態(クランプ状態)となる。
また、図示の例では、ロータリジョイント55の上端部に、回転軸52の回転量、すなわち、第1の支持ヘッド30の回転量を検出するための回転検出器44が設けられている。この回転検出器44は、ハウジング51に固定されたディストリビュータ55a上の所定位置に配置された一対の検出器ヘッド44a、44aと、この検出ヘッド44a、44aの内側に対向する配置で、回転軸52と共に回転するシャフト55bに取り付けられた検出リング44bとからなっている。この回転検出器44の検出信号は、第1の支持ヘッド30における回転検出器41と同様に、工作機械の制御装置に送られ、第1の支持ヘッド30の回転制御に用いられる。
以上の構成からなる加工用ヘッド10では、スピンドルユニット20を支持するための第1の支持ヘッド30は、スピンドルユニット20を、一対の脚部30a、30bの各支持軸に挟み込むかたちで、両支持軸に相対回転不能に固定して支持している。そして、脚部30a側の駆動支持軸をDDモータ33によって回転駆動することにより、スピンドルユニット20を、支持軸の回転軸線(=スピンドル21の回転軸線に直交する軸線/A軸)を中心として、所望の角度位置へ向けて回転駆動する。
DDモータ33の駆動は、予め設定されたプログラムに基づく数値制御に従って行われ、ロータ33aの回転制御により、駆動支持軸を介してスピンドルユニット20の角度位置が制御される。従って、図示の例では、脚部30a内に設けられたDDモータ33及びDDモータ33に連結された駆動支持軸(回転軸32+シャフト37b)が、スピンドルユニット20のための割出し機構として機能する。なお、DDモータ33を駆動するための励磁電流は、コネクタ16aによってDDモータ33に接続されたケーブル16によって供給される。
そして、本発明に基づく上記第1の支持ヘッド30では、スピンドルユニット20のための脚部30a側の支持軸(駆動支持軸)を回転自在に支持する軸受35を、A軸方向におけるDDモータ33の存在範囲内で、DDモータ33の半径方向内側に配設する構成とし、且つ、DDモータ33が設けられる脚部30a側に配設されると共に回転駆動されるスピンドルユニット20に対し流体を供給するためのロータリジョイント37を、DDモータ33の半径方向内側に配設する構成としたため、軸受35及びロータリジョイント37は、DDモータ33の半径方向内側の空間に収容されるかたちとなり、脚部30aのA軸方向の寸法が大きくなることはない。
また、脚部30bについては、そのA軸方向の寸法は、支持軸(従動支持軸)の長さ(A軸方向の寸法)に基づいて定められるものであり、その支持軸の長さは、加工時に掛かる負荷のバランスを考慮して、脚部30aの支持軸の長さとより等しくするのが好ましいとされている。従って、脚部30bのA軸方向の寸法は、脚部30aのそれに左右されるものであり、脚部30aのA軸方向の寸法をより小さくすることにより、脚部30bのA軸方向の寸法もより小さいものとすることができる。その結果、第1の支持ヘッド30は、全体としてA軸方向の寸法が小さいものとなり、加工用ヘッド10のコンパクト化を図ることができる。
また、本実施例の支持ヘッドのように、軸受35が、インナーロータ型のDDモータ33のロータ33aの半径方向内側、すなわち、DDモータ33の半径方向内側に配設される構成とすることにより、より小径の軸受を採用することが可能となる。軸受は、径が大きくなる程に振れ精度の低下を招いて加工精度を低下させる要因となってしまうが、この本実施例の構成によれば、このような軸受の大径化に伴う加工精度の低下という問題は発生しない。
なお、以上で説明した第1の支持ヘッド30では、軸受35のA軸方向に関する配置について、軸受35がA軸方向におけるDDモータ33の存在範囲内に収まる状態で配置されているが、本発明による加工用ヘッドでは、軸受35は、その少なくとも一部がA軸方向におけるDDモータ33の存在範囲内に位置するように配置されるものであればよい。
また、上記の第1の支持ヘッド30では、脚部30aにおける支持軸を支持する軸受35を、ロータリジョイント37のシャフト37bとハウジング31aの円筒部31a1との間に配置する構成としているが、これに代えて、回転軸32の円筒部32aとハウジング31aの円筒部31a1との間に軸受35を配置することも可能である(図4(a))。
また、上記の第1の支持ヘッド30では、ロータリジョイント37を最もA軸側に配置し、ロータリジョイント37(シャフト37b)の外周面に軸受35を外嵌固定する構成としたが、これに代えて、ロータリジョイント37を、軸受35の外周面側に設ける構成とすることも可能である(図4(b))。
すなわち、上記した第1の支持ヘッド30では、支持軸(ロータリジョイント37のシャフト37b+回転軸39)は、DDモータ33のロータ33aが外嵌固定される大径部と、この大径部の半径方向内側で軸受35によって回転自在に支持される軸部とを有しており、上記大径部が回転軸32の円筒部32aによって形成され、軸部がロータリジョイント37のシャフト37bで形成されている。しかし、これに代えて、上記大径部をロータリジョイント37のシャフト37bで形成し、その外周面にDDモータ33のロータ33aを外嵌固定するようにしてもよい。
このように、本発明では、ロータリジョイントの配置は、DDモータの半径方向内側であれば、上記実施例のような軸受の半径方向内側に限らず、軸受の外周面を囲繞するもの等であってもよい。
また、上記の第1の支持ヘッド30では、駆動支持軸を回転駆動するための駆動モータとして、ロータ33aがステータ33bの内周面に対向するように配設されたインナーロータ型のDDモータ33を採用しているが、本発明に用いられる駆動モータはこれに限らず、図5(a)に示すように、ロータ33aがステータ33bの外周面に対向するように配置されるアウターロータ型の駆動モータ(DDモータ33’)としてもよい。
さらに、上記では、第1の支持ヘッド30における軸受35が、DDモータ33(33’)の半径方向内側に配設される構成について説明したが、本発明における軸受の配置はこれに限定されるものではなく、図5(b)に示すように、軸受35’が、DDモータ33’よりも大径であって、DDモータ33’の外周面を囲繞する回転軸32の円筒部32aの外周面に外嵌固定されるものであってもよい。
次に、本発明の他の実施形態を、図6に基づいて説明する。
上記の実施例では、本発明が適用される加工用ヘッドにおける支持ヘッド(第1の支持ヘッド30)について、スピンドルユニット20を支持する一対の脚部のうちの一方の脚部のみが、スピンドルユニット20を回転駆動するための割出し機構(DDモータ)を備えたものとしたが、これに代えて、図6に示すように、両脚部に割出し機構(DDモータ)を備えた支持ヘッドの両割出し機構に対し本発明を適用してもよい。
また、図6に示す例では、図1等の実施例とは異なり、DDモータによって回転駆動される支持軸を支持する軸受が、ロータリジョイントを構成するディストリビュータとシャフトとの間に介装されている。すなわち、ロータリジョイントが上記軸受の半径方向内側に配設されている上記実施例とは異なり、上記軸受が、半径方向におけるロータリジョイントの存在範囲内に配設される構成となっている。
上記のように、図6に示す支持ヘッド60では、スピンドルユニット20を支持する一対の脚部60a、60bのそれぞれに対し、DDモータ63を含む割出し機構が設けられている。なお、図示の例では、脚部60aと60bの内部構造はほぼ同じである。従って、以下では、脚部60aについてのみ説明し、脚部60bについては、その説明及び図面における符号は省略する。
脚部60aは、A軸方向に貫通する貫通孔61aが形成されたハウジング61を主体としてなり、その貫通孔61a内に、DDモータ63、スピンドルユニット20を支持する支持軸、支持軸を回転自在に支持するための軸受65、及びロータリジョイント67等が組み込まれている。また、脚部60aには、前述の実施例と同様の回転検出器68が設けられている(回転検出器68は、脚部60a側のみ)。
図示の例では、ロータリジョイント67のディストリビュータは、2つの部材67a(第1のディストリビュータ)及び67b(第2のディストリビュータ)によって構成されている。そして、第2のディストリビュータ67bが、そのフランジ部67b2において第1のディストリビュータ67aに組み付けられ、第1のディストリビュータ67aが、そのフランジ部67a2においてハウジング61に組み付けられることにより、第1、第2のディストリビュータ67a、67bが、ハウジング61に対し固定された状態となっている。
また、ロータリジョイント67のシャフト67cは、第1のディストリビュータ67aの円筒部67a1と第2のディストリビュータ67bの円筒部67b1との間に回転可能に嵌装される大径部67c1と、軸受65が外嵌固定される軸部67c2とからなっている。
そして、このロータリジョイント67では、第1、第2のディストリビュータ67a、67bのそれぞれに複数形成された流体流路67a3、67b3と、各流体流路67a3、67b3に対応してシャフト67cに形成された複数の流体流路67c3とが、第1、第2のディストリビュータ67a、67bの各円筒部67a1及び67b1とシャフト67cの大径部67c1との嵌合周面に形成された環状溝を介して連通されている。
シャフト67cの軸部67c2には、脚部60b側に、ハウジング61に対し回転可能に設けられた回転軸62が組み付けられている。この回転軸62は、ロータリジョイント67における第1のディストリビュータ67aの円筒部67a1を囲繞する円筒部62aを有している。また、回転軸62には、ロータリジョイント67のシャフト67cに形成された各流体流路67c3のそれぞれにに連通する複数の流体流路62cが形成されており、各流体流路67c3は、この流体流路62cを介してスピンドルユニット20のポート24に連通している。
図示のように、ハウジング61に固定されたロータリジョイント67における第1のディストリビュータ67aの円筒部67a1とシャフト67cの軸部67c2との間には、軸受65が介装されている。そして、この軸受65により、シャフト67cは、ハウジング61に対し回転自在に支持された状態となっている。また、回転軸62は、シャフト67cに組み付けられると共に、その脚部60b側の端面62bにスピンドルユニット20が取り付けられる。従って、ロータリジョイント67のシャフト67c及び回転軸62が、回転自在に設けられてスピンドルユニット20を支持する支持軸に相当する。
DDモータ63は、ステータスリーブ63cを介してハウジング61に固定されたステータ63aと、ステータ63aの内周面に対向する配置で、回転軸62の円筒部62aの外周面に外嵌固定されたロータ63bとで構成されており、インナーロータ型のDDモータである。
このように、図示の支持ヘッド60では、インナーロータ型のDDモータ63は、そのロータ63bによって、第1のディストリビュータ67aの円筒部67a1を囲繞する回転軸62の円筒部62aに外嵌固定されており、一方で、上記支持軸(ロータリジョイント67のシャフト67c+回転軸62)を回転自在に支持するための軸受65は、第1のディストリビュータ67aの円筒部67a1とこの円筒部67a1よりも半径方向内側に位置するシャフト67cの軸部67c2との間に介装されている。しかも、その軸受65のA軸方向の配置は、図示のように、A軸方向におけるDDモータ63の存在範囲内となっている。
すなわち、本実施例においても、DDモータ63によって回転駆動される支持軸を回転自在に支持するための軸受65が、A軸方向に関するDDモータ63の存在範囲内で、DDモータ63の半径方向内側に配設されており、且つ、ロータリジョイント67が、DDモータ63の半径方向内側に配設される構成となっている。よって、本実施例によっても、前述の図1等の実施例と同様の効果が得られる。特に、本実施例の支持ヘッド60のように、一対の脚部60a、60bのそれぞれにDDモータ33を含む割出し機構を設けた場合、図1等の実施例による支持ヘッドに比べてA軸方向の寸法がより大きなものとなってしまうため、本発明は、このような支持ヘッドの場合により有効である。
なお、本発明は上記のいずれの実施形態にも限定されるものではなく、本発明の請求範囲を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。