JP5032097B2 - 快適感評価システム - Google Patents

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Description

本発明は、医療・健康・美容・娯楽産業分野のみならず、日常生活の様々な場面において、個人(ユーザー)の主観的感情である快適感を、快適感を構成する質の異なる複数の感情的側面から計測・評価し、評価結果を測定者、回答者、及び第三者が容易に理解できるように得点化し、図を用いて可視化することができる、評価システム、プログラム及び評価方法に関するものである。また本発明は、快適感評価システムによって得られた評価結果を基に、回答者が快適感を生ずる前に潜在的に抱えていた不快感を推定する推定システム、プログラム及び推定方法に関するものである。
従来、日常生活や作業環境で経験される快適感を、快適感を構成する複数の感情的側面に分けて捉える試みがなされてきた。非特許文献1には、回答者に感情を示す多くの言葉を示し、その中から快適感をイメージさせる言葉を選択させ、得られたデータに対してクラスター分析を行うことによって、快適感が14個の異なる感情的側面(爽快、愉快・開放、温和、安息、新鮮、和合、光彩、麗・可憐、華麗、合一、果敢、勇壮、期待、思いつき)から構成されることが報告されている。同様に、主観的な感情を複数の側面から捉えようとした非特許文献2では、快適感に相当する肯定的感情を4因子(動的快、静的快、喜び、爽快感)に分け、各因子に対応した感情語に対して、全く感じていない場合の1から、はっきり感じている場合の5までの間の数字を回答者に答えさせる方法(リッカート法)によって、快適感を評価する方法が実施されていた。
この場合において、従来の快適感の評価方法を、社会調査やマーケティング調査、又は官能評価において利用しようとする場合、複数因子にわたる全ての感情語への回答を求めると、快適感の中でも調査対象とは無関係な側面を表す感情語までを質問に含み、質問数が多くなるといった問題点があった。この問題は、回答者の作業負担が増すばかりではなく、充分な回答時間が確保できない調査の場合に、快適感の評価そのものを諦めなければならないという弊害が生じる可能性もあった。また、社会調査やマーケティング調査では、回答者が質問に対してより自由に反応でき、本音を聞きだしやすいとして、自由筆記やインタビューに対する口頭回答といった自由回答形式の質問が頻繁に利用されるが、従来の評価方法では、自由回答形式で得たデータと、定量的な回答形式によるデータとの処理方法の間には互換性が小さく、自由回答データの解析は実験者の勘も含めて定性的な方法に頼りがちであった。
羽根義・室恵子「感性計測先端技術集成:人間工学的アプローチ サイエンスフォーラム,第III篇,感性計測による新しい製品開発,第1章,建築・住環境,第1節,言語による快適環境の評価」,栗山洋四・江原勝夫・山根木正人(編),p.183-189,1991年 寺下裕美・下野太海・大須賀美恵子「主観的感情状態の因子分析による多面的評価」,第8回ヒューマン・インターフェース・シンポジウム講演集,p.217-222,1992年
本発明は、回答形式及び質問に用いる因子や感情語の組み合わせを調査対象に合わせて柔軟に変化させて最適化し、回答者の作業負担を減少させ、回答時間を短縮化することで、快適感評価及び潜在的不快感の推定を心理実験、社会調査及びマーケティング調査を含む種々の主観調査に容易に導入できるようにすること、並びに異なる回答形式で得たデータを定量的に解析できる快適感の評価方法及び潜在的不快感の推定方法を確立することを目的とする。
本発明は、次の手段(1)、(3)〜(5)及びデータベース(2)を有する快適感評価システムを提供するものである。
質問作成手段(1):快適感を評価する際の回答形式を選択する回答形式選択手段(1-a)と、質問語を決定する質問語決定手段(1-b)を有する、質問を作成する手段。
感情語データベース(2):質問語決定の際に利用する快適感に関連する感情語を記録したデータベース。
回答入出力手段(3):質問を回答者に呈示する質問出力手段(3-a)と、回答者の回答入力手段(3-b)と、回答を取り込む回答収集手段(3-c)を有する、回答を入出力する手段。
演算手段(4):回答結果から快適感の質と大きさを快適感の下位概念としての複数の快適感因子に分けて得点を算出する手段。
結果出力手段(5):結果を出力する手段。
また、本発明は、上記のデータベース(2)を備えたコンピュータを、上記の手段(1)、(3)〜(5)として機能させるための快適感評価用プログラムを提供するものである。
更に、本発明は、次の(a)〜(i)のステップを順に行う快適感評価方法を提供するものである。
(a) 測定者が快適感評価に使用する回答形式を選択する回答形式選択ステップ。
(b) ステップ(a)にて選ばれた回答形式に適した教示文を選択する教示文決定ステップ。
(c) 必要に応じ、感情語データベースを参照して、ステップ(a)にて選ばれた回答形式に適した感情語を選択する感情語抽出ステップ。
(d) 教示文、又は教示文と感情語との組み合わせからなる質問を回答者に呈示する質問出力ステップ。
(e) 回答者が回答を入力する回答入力ステップ。
(f) 回答者が入力した回答をシステムにデータとして取り込む回答収集ステップ。
(g) 回答者からの回答を基に、快適感をその下位概念としての複数の快適感因子に分けて得点化する演算ステップ。
(h) 回答者の回答とステップ(g)で算出した快適感の得点情報を記録する回答・演算結果記録ステップ。
(i) 算出された快適感を表示する結果出力ステップ。
更に、本発明は、次の手段(6)〜(8)、(10)及びデータベース(9)を有する不快感推定システムを提供するものである。
快適感得点取込手段(6):前記の快適感評価システムにおける演算手段(4)によって算出された、複数の快適感因子の個々の得点をシステムに取り込む手段。
快適感グループの得点算出手段(7):快適感得点取込手段(6)によって取り込んだ複数の快適感因子の個々の得点を、2つの快適感グループに分類し、各グループの総合得点を算出する手段。
不快感推定手段(8):快適感グループの得点算出手段(7)によって算出された2つの快適感グループの総合得点を用いて、複数の不快感因子から構成される2つの不快感グループのうち、いずれのグループに属する不快感が回答者に経験されていた可能性が高いかを推定する不快感グループの保有確率推定手段(8-a)を有する、不快感を推定する手段。
感情語データベース(9):不快感に関連する感情語を、各語の所属する不快感因子の情報と共に保有するデータベース。
推定結果出力手段(10):推定結果を出力する手段。
更に、本発明は、上記のデータベース(9)を備えたコンピュータを、上記の手段(6)〜(8)、(10)として機能させるための不快感推定用プログラムを提供するものである。
本発明における快適感評価システム及び評価方法を用いれば、複数の回答形式から調査に使用する回答形式を選択できるので、心理実験のみならず、社会調査やマーケティング調査を含む種々の主観調査において快適感の評価を簡便に使用することができる。
また、質問に使用する感情語を選択して絞り込むことができるので、回答者の作業負担が軽減し、回答時間を短縮化することができる。
また、自由回答形式によって得たデータを、定量調査と同じ感情語データベースに基づいて得点化できるので、回答形式の異なる調査の間で同一の視点に立った定量的な測定や結果解釈が可能である。
また、快適パターン判定手段とグラフ作成手段が付加される場合、快適感得点が数値として算出されるのみならず、グラフによって図示でき、更に快適感パターンのいずれかに分類されるため、回答者、測定者、及び第三者にとって、回答者の快適感が理解しやすくなる。
また、実在する刺激や事象に対して経験される主観的快適感のみならず、刺激や事象に期待している快適感を回答者に尋ねることによって、商品開発時の快適感の目標値や目標パターンを定めるなど、商品コンセプトの設計時に利用することができ、ユーザーの快適感を高める商品開発が容易になる。
更に、上記快適感評価システムによって得られた評価結果に基づき、回答者が潜在的に保有している不快感を推定することができ、これによって、ある商品によって快適感を経験した人の潜在的な不快感を推定し、商品のターゲットとなる消費者の理解を深め、次回の商品開発に役立てることが可能となる。
〔快適感評価システム及び快適感評価用プログラム〕
図1は、本発明に係る快適感評価システムの構成要素を示したブロック図である。図1において、(1)は質問作成手段であり、回答形式選択手段(1-a)、質問語決定手段(1-b)を有している。(2)は感情語データベースである。(3)は回答入出力手段であり、質問出力手段(3-a)、回答入力手段(3-b)、回答収集手段(3-c)を有している。(4)は演算手段である。そして、(5)は結果出力手段である。
本発明の快適感評価システムは、手段(1)、(3)〜(5)及びデータベース(2)を有するものであり、本発明の快適感評価用プログラムは、データベース(2)を備えたコンピュータを、上記の手段(1)、(3)〜(5)として機能させるためのものである。
・質問作成手段(1)
質問作成手段(1)は、後述のステップ(a)、(b)及び(c)に対応する。
質問作成手段(1)における回答形式選択手段(1-a)では、測定者により、快適感評価に使用される回答形式が選択される。回答形式としては、例えば、感情語データベース(2)に含まれる感情語を回答者に呈示して、それらの言葉の表す感情を感じている程度を回答させるリッカート法や、呈示された感情語の中から、感じている感情語を一つあるいは複数個選択させる強制選択法、自然文で回答させる自由回答法などが挙げられる。回答形式は、マグニチュード推定法や、「はい・いいえ・どちらでもない」に類する選択肢を用いた強制選択法、線分に対して感情強度を評定するビジュアル・アナログ・スケールによる回答方法を含めてもよい。
質問語決定手段(1-b)は、回答形式選択手段(1-a)によって選ばれる回答形式に対応した教示文を記録した教示文データベース(1-b-1)と、回答形式に相応しい感情語の組み合わせ情報を参照して感情語データベース(2)より感情語を抽出する感情語抽出手段(1-b-2)を有することが、最適な質問内容の選択と、全体の質問数を減らす観点より好ましい。
また、本発明の快適感評価システムにおいて、質問作成に際して、測定者が任意に教示文及び/若しくは感情語の取捨選択、並びに/又は追記を行うことができるカスタマイズ情報入力手段(1-c)を有することが、質問内容の最適化と、測定者が特に注目する快適感の側面を評価に反映させるという観点より好ましい。
・感情語データベース(2)
感情語データベース(2)は、快適感に係る多くの感情語を、快適感を構成する質の異なる複数の主観的側面の、どの因子に属するかという情報と共に保有している。感情語データベース(2)に含まれる感情語として、快適感を表現する16種類の因子(「熱中・興味」、「対人的好感情」、「強さ」、「やる気・前向き」、「豪華さ」、「ときめき」、「自信」、「感動」、「安静・リラックス」、「満足・幸福」、「爽快・リフレッシュ」、「親和・愛情」、「活気・陽気」、「気楽・気軽」、「開放感」、「達成感」)に属する感情語が例示される。感情語抽出手段(1-b-2)により抽出される感情語は、上記16種類の因子に属する2個以上の組み合わせであることが好ましい。
上記16種類の因子に属する感情語として、例えば以下のような語が挙げられる。
1.熱中・興味: 熱中した、面白い、興味を感じる
2.対人的好感情: 良心的な、親切な、共感した
3.強さ: 強い、力強い、勇敢な
4.やる気・前向き: やる気に満ちた、はりきった、前向きな
5.豪華さ: 豪勢な、豪華な、ぜいたくな
6.ときめき: わくわくした、どきどきした、興奮した
7.自信: 自信がある、誇らしい、得意な
8.感動: 感動した、感銘した、賞賛した
9.安静・リラックス: リラックスした、落ち着いた、おだやかな
10.満足・幸福: 幸せな、うれしい、満足な
11.爽快・リフレッシュ: すっきりした、さっぱりした、すがすがしい
12.親和・愛情: 愛しい、かわいい、愛らしい
13.活気・陽気: 活発な、活気のある、楽しい
14.気楽・気軽: 気楽な、気軽な、のんきな
15.開放感: 解き放たれた、自由な、開放感
16.達成感: 達成感、がんばった、やりとげた
この感情語の組み合わせを用いた場合、安らかな状態から活発な状態まで、かつ、自分のみに関係する状態から自分と他者との関わりが生じる状態までの様々な快適感を正確に測定できる利点がある。また、この感情語の組み合わせは、非特許文献1における語の組み合わせが主観的な経験と美的印象を示す語を混在させていることに対して、主観的な経験を測定する語に特化しており、回答者が実感する快適感を適切に測定できる利点がある。また、この感情語の組み合わせは、非特許文献2における快適感の4因子が主観的な活性度の高低の違いを主に測定することに対し、活性度の高低の違いに加え、社会性や対人関係を反映する因子が加わっていることから、より詳細な快適感の把握ができ、かつ、測定対象も、商品評価のみならず対人関係の評価も含めて、広い範囲で扱えるという利点がある。
・回答入出力手段(3)
回答入出力手段(3)は、後述のステップ(d)、(e)及び(f)に対応する。
回答入出力手段(3)は、質問出力手段(3-a)、回答入力手段(3-b)、回答収集手段(3-c)を有している。質問出力手段(3-a)では、質問作成手段(1)で作成され、カスタマイズ情報入力手段(6)によって最終的な質問内容として承認を受けた質問内容が回答者に呈示される。質問内容には教示文と回答欄があり、回答欄はステップ(a)において決定された回答形式に従った形態で出力される。質問内容は、パーソナル・コンピュータの画面や評定用紙によって文字情報として出力されるほか、音声によって出力されてもよい。また、携帯電話やPDAを含む情報端末に出力することもできる。
次に回答入力手段(3-b)では、質問出力手段(3-a)により出力された快適感についての質問内容に対し、回答者により回答が入力される。回答は、パーソナル・コンピュータのキーボード、タッチパネル、マウスを用いた入力や、音声による口頭入力、評定用紙への筆記回答が利用できる。そして、回答入力手段(3-b)において入力された回答情報は、回答収集手段(3-c)によって、快適感評価システムに取り込まれる。
・演算手段(4)
演算手段(4)は、後述のステップ(g)に対応する。
演算手段(4)では、回答入出力手段(3-b)、回答収集手段(3-c)を経てシステムに取り込まれた回答情報を基に快適感についての得点が算出される。
演算手段(4)は、回答形式選択手段(1-a)によって選ばれた回答形式の違いによって、複数の異なる解析手段を有することが複数の回答形式を最適に利用して定量的な得点化を行うという観点より好ましい。
例えば、回答形式選択手段(1-a)によって選ばれた回答形式がリッカート法の場合、回答者に呈示された各感情語が快適感の下位概念である複数の因子のうち、どの因子に所属しているのかという情報が、感情語データベース(2)から抽出される。そして、同じ因子に所属している感情語の間で、回答者が各感情語に与えた評定点を取りまとめて処理し、各因子に関する得点が算出される。回答者に呈示された感情語の数が各因子について同数である場合は、単純加算による得点算出がなされるが、各因子について感情語の数が違う場合や、特に重要視する感情語が実験者によって設定されている場合は、平均値の算出や、特定の感情語に対して重み付けをした得点算出を行う。
また、回答形式選択手段(1-a)によって選ばれた回答形式が自由回答形式の場合、自然文である回答に対して、感情語データベース(2)に含まれる感情語の出現頻度の計測が行われる。感情語ごとに計測された出現頻度は、出現頻度が1回であれば1点というように、それぞれ各感情語の得点とされる。各感情語の得点は、感情語データベース(2)に含まれるその感情語が所属する因子の情報に従って、同じ因子に含まれる感情語間で加算され、因子に関する得点が算出される。
また、回答形式選択手段(1-a)によって選ばれた回答形式が強制選択法の場合、回答者によって選択された感情語に対して例えば1点、選択されなかった感情語に対しては例えば0点を与えて、感情語データベース(2)の持つ所属因子情報に従って、各因子に含まれる感情語に与えられた点数を加算して、因子に関する得点を算出する。この場合において、回答者が感情語を選択する順番を得点化に利用することもでき、最初に選択された感情語を3点、2番目に選択された感情語を2点といった重み付け処理を行うことも可能である。
更に、演算手段(4)は、複数の質の異なる快適感パターンについてのモデル情報をもつパターン判定基準情報を参照し、算出された快適感の得点から快適感のパターンを特定する快適パターン判定手段を有することが、システムから出力される評価結果の理解を容易にするという観点より好ましい。
この場合において、快適感のパターンは、(イ)やすらぎ・癒し型、(ロ)娯楽・エネルギー型、(ハ)満足・充足型、(ニ)親和・愛情・優しさ型、(ホ)ときめき・誇り・耽美型、及び(ヘ)達成型といったパターンが考えられる。これらのパターンは、経験される主観的な快適感の内容が、快適感の下位尺度である16個の因子が示す感情の特徴を感じられる程度において異なっており、例えば(イ)やすらぎ・癒し型パターンにおいては安静・リラックス得点、満足・幸福得点、爽快・リフレッシュ得点、開放感得点、及び気楽・気軽得点における高得点と、熱中・興味得点、活気・陽気得点などその他の活性的特長を示す因子における低得点に特徴付けられるといった具合になっている。また、例えば(ロ)娯楽・エネルギー型のパターンでは、安静・リラックス得点は低得点となり、熱中・興味得点、活気・陽気得点、ときめき得点といった活性的特長を示す因子での得点が高くなる。このような快適感のパターンによって異なる16因子の得点の高低に関する情報は、感情語データベース(2)において保有されており、この情報が参照されて、1回の快適感評定ごとに、回答がどの快適パターンに最も近いかを判定することができる。
更に、本発明の快適感評価システムにおいて、演算手段(4)によって算出された快適感をグラフ化するグラフ作成手段を有することが好ましい。この場合において、グラフで用いる数値は、演算手段(4)において算出された16因子の得点である。
また、作成されるグラフは、図3に示すような、16因子の得点を放射線状に配置した形式であることが望ましい。16因子の得点のグラフ内での配列は、満足・幸福得点を時計の12時方向の頂点として、時計回りに達成感得点、ときめき得点、熱中・興味得点、活気・陽気得点、やる気・前向き得点、豪華さ得点、自信得点、強さ得点、感動得点、対人的好感情得点、親和・愛情得点、安静・リラックス得点、気楽・気軽得点、開放感得点、及び、爽快・リフレッシュ得点とすることができる。この得点の配列は、隣り合う因子同士が類似した概念であるように決定されている。即ち、グラフの右半分の空間には、活性的な感情として特徴付けられる因子が主に配置され、左半分の空間には、脱活性的な感情として特徴付けられる因子が主に配置される。
また、質問作成手段(1)において決定された、快適感評定に用いる質問語が16因子のうちの一部であった場合は、使用しなかった因子を表記から削除することもできる。
更に、質問に用いた因子が2種類であった場合は、棒グラフでの表記もできる。
また、演算手段(4)が、算出された快適感の得点情報(得点、判定された快適感タイプ、及びグラフ)を回答者の回答と共に記録する記録手段を有することが、多人数の評定結果を社会調査及びマーケティング調査の結果として比較分析する上での利便性や、同一人物への複数回の快適感評価の結果を比較する上での利便性の観点より好ましい。この記録手段により、得点情報は、例えばハードディスク、CD-R、CD-RW、DVD-R、DVD-R、DVD-RAM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体などに記録される。
・評価結果出力手段(5)
評価結果出力手段(5)は、後述のステップ(i)に対応する。
評価結果出力手段(5)において、得点情報が、パーソナル・コンピュータの画面や紙面に出力され、回答者、測定者、及び第三者がその内容を把握することができる。
〔快適感評価方法〕
本発明に係る快適感評価方法について、図2に示したフローチャートに従って説明する。
・ステップ(a)
図2におけるステップ(a)は快適感評価に使用する回答形式を選択する回答形式選択ステップである。ステップ(a)において、図1における回答形式選択手段(1-a)によって、快適感評価に使用される回答形式が選択される。回答形式選択手段(1-a)では、感情語データベース(2)に含まれる感情語を回答者に呈示して、それらの言葉の表す感情を感じている程度を回答させるリッカート法や、感じている感情語を一つあるいは複数個選択させる強制選択法、及び自然文で回答させる自由回答法といった複数の回答形式が測定者に提案される。回答形式は、マグニチュード推定法や、「はい・いいえ・どちらでもない」に類する選択肢を用いた強制選択法、線分に対して感情強度を評定するビジュアル・アナログ・スケールによる回答方法を含めてもよい。提案された回答形式の中から、測定者が使用したい回答形式を一つ選択し、選択情報をシステムに入力する。回答形式の選択情報は、次のステップ(b)に送られる。
この場合において、感情語としては、前述の16種類の因子(「熱中・興味」、「対人的好感情」、「強さ」、「やる気・前向き」、「豪華さ」、「ときめき」、「自信」、「感動」、「安静・リラックス」、「満足・幸福」、「爽快・リフレッシュ」、「親和・愛情」、「活気・陽気」、「気楽・気軽」、「開放感」、「達成感」)に属する2個以上の感情語の組み合わせが好ましく例示される。
・ステップ(b)
ステップ(b)は、ステップ(a)にて選ばれた回答形式に適した教示文を選択する教示文決定ステップである。図1における質問語決定手段(1-b)は、教示文データベース(1-b-1)が持つ教示文情報の中から、ステップ(a)で選ばれた回答形式に最も相応しい教示文を選択し、選択した情報の内容は、測定者による承認と調整が行われるステップ(j)を経た後、回答入出力手段(3)の質問出力手段(3-a)へと送られる。
・ステップ(c)
次にステップ(c)は、ステップ(a)で選ばれた回答形式に適し、かつ、刺激、商品、状況を含む測定対象に適した感情語を選択する感情語抽出ステップである。ステップ(a)で選ばれた回答形式が、自由記述(OA)法など、感情語の呈示を行わない形式である場合には、ステップ(c)は省略される。ステップ(a)で選ばれた回答形式が、リッカート法、強制選択法など、感情語の呈示を伴うものである場合には、質問語決定手段(1-b)の持つ、測定対象となる商品や場面に最適な快適感因子の組み合わせ情報を参照して、感情語データベース(2)より必要な感情語を抽出する。ステップ(c)における感情語抽出の際には、自動選択された感情語のみを質問語に採用する場合と、全ての因子の感情語を利用する場合が選択できる。
・ステップ(j)
次にステップ(j)において、ステップ(b)で決定された教示文と、ステップ(c)で決定された感情語の情報は組み合わせられ、最終的な質問内容が決定される。この決定の際、測定者はカスタマイズ情報入力手段(1-c)を利用することで、感情語と教示文の取捨選択や、追加、修正などの調整を行うことができる。ステップ(j)によって最終的に決定された、快適感評価に使用される教示文と感情語は、次のステップ(d)へと送られる。
・ステップ(d)
ステップ(d)は、質問出力ステップであり、ステップ(b)と(c)で作成され、ステップ(j)によって最終的な質問内容として承認を受けた質問内容が回答者に呈示される。質問は、回答形式が、自由記述(OA)法など、感情語の呈示を行わない形式である場合には、教示文からなり、回答形式が、リッカート法、強制選択法など、感情語の呈示を伴うものである場合には教示文と感情語との組み合わせからなる。ステップ(d)は、図1における回答入出力手段(3)に属する質問出力手段(3-a)において実行される。質問内容には教示文と回答欄があり、回答欄はステップ(a)において決定された回答形式に従った形態で出力される。
・ステップ(e)
次にステップ(e)は、ステップ(d)にて回答出力手段(3)により出力された快適感についての質問内容に対し、回答者が回答を行う回答入力ステップであり、回答入力手段(3-b)において実行される。回答者は、呈示された質問内容に対して、対象となる刺激や商品から感じた主観的な快適感や、期待する快適感を、与えられた回答形式に従って回答する。
・ステップ(f)
ステップ(f)は、ステップ(e)において回答された情報を、快適感評価システムに取り込み、演算処理が行われるステップ(g)へと送る回答収集ステップであり、図1における回答収集手段(3-c)において実行される。
・ステップ(g)
次にステップ(g)は、図1における演算手段(4)において実行される、快適感についての得点を算出するものである。ステップ(f)より送られてきた回答情報は、ステップ(a)において選ばれた回答形式に対応する解析手段へと送られ、図1における感情語データベース(2)を参照して、快適感についての得点が算出される。快適感についての得点は、快適感を構成する質の異なる複数の主観的側面のそれぞれに対して算出されるため、複数個の得点が算出される。
なお、ステップ(a)にて選ばれた回答形式がリッカート法の場合は、感情語データベース(2)より、使用した感情語が、快適感の複数の主観的側面の中の、どの因子に属するかといった所属因子情報を参照し、同じ因子に属する感情語間で評定点を加算し、その結果を快適感の得点とすることができる。また、回答形式が強制選択法の場合は、リッカート法と同様に感情語データベース(2)の所属因子情報を参照し、選択された感情語に対して1点を付与し、選択されなかった場合は0点を付与し、各因子内で選択された感情語の数、あるいはそれらに付与された点数の和を快適感の得点とすることができる。また、回答形式が自由回答法の場合は、回答された自然文に対して、感情語データベース(2)の中で、測定したい対象に合った感情語を選択し、その語をターゲットとしてテキストマイニングを実施し、感情語の出現頻度を快適感得点として集計することができる。このように算出された快適感に係る得点は、次の処理ステップへと送られる。
この場合において、ステップ(g)として、ステップ(a)で選択された回答形式に対応した回答処理方法を複数の選択肢から自動選択して快適感の得点化をする方法を行うことが、複数の回答形式を最適に利用して定量的な得点化を行うという観点より好ましい。
・ステップ(l)
本発明の快適感評価方法は、ステップ(g)で算出された快適感の得点にしたがって、回答者の感じている快適感を複数の快適感パターンの中から特定する快適感タイプの判定ステップ(l)を含むことが、システムから出力される評価結果の理解を容易にするという観点より好ましい。
ステップ(l)は、快適感の得点から、代表的な快適感パターンの得点との比較によって、測定された快適感のパターン分類を行うステップである。このステップ(l)は、演算手段(4)に属する快適パターン判定手段において実行される。
快適パターンの判定は、ステップ(g)で得られた快適感の複数の主観的側面についての得点の中から、最大値の情報や、これら得点に基づいて作成されたグラフの形状に基づいて行われる。ここで、ステップ(g)の処理結果から得られた快適感の得点をグラフ化するグラフ作成ステップ(k)を含むことが、評定結果の理解を容易にするという観点より好ましい。
・ステップ(k)
ステップ(k)は、図1におけるグラフ作成手段で実行される。解析手段から送られた得点情報は、複数の快適感の主観的側面のそれぞれについて、複数個の得点が算出されているので、これを用いてレーダーチャートを含むグラフ化を行う。
この場合において、作成されるグラフは、図3に示すような、快適感に関する主観的側面を示す16因子の得点を放射線状に配置した形式であることが望ましい。16因子の得点のグラフ内での配列は、満足・幸福得点を時計の12時方向の頂点として、時計回りに達成感得点、ときめき得点、熱中・興味得点、活気・陽気得点、やる気・前向き得点、豪華さ得点、自信得点、強さ得点、感動得点、対人的好感情得点、親和・愛情得点、安静・リラックス得点、気楽・気軽得点、開放感得点、及び、爽快・リフレッシュ得点となる。この得点の配列は、隣り合う因子同士が類似した概念であるように決定されている。即ち、グラフの右半分の空間には、活性的な感情として特徴付けられる因子が主に配置され、左半分の空間には、脱活性的な感情として特徴付けられる因子が主に配置される。
また、ステップ(c)において決定された、快適感評定に用いる質問語が16因子のうちの一部であった場合は、使用しなかった因子を表記から削除することもできる。更に、質問に用いた因子が2種類であった場合は、棒グラフでの表記もできる。
・ステップ(h)
次にステップ(h)において、ステップ(e)にて回答者が答えた回答データと、ステップ(g)にて算出された快適感得点、ステップ(k)にて作成されたグラフ、及びステップ(l)にて判定された快適感パターンについての情報を記録保存する。ステップ(h)は、図1における演算手段(4)内の記録手段において実行される。
・ステップ(j)
また、快適感評価方法において、ステップ(a)で測定者が快適感評価の回答形式を選択し、ステップ(b)及びステップ(c)で質問用の教示文及び/又は感情語が選択された後、測定者の希望によって、質問に用いる教示文及び/又は感情語を調整できる測定者によるカスタマイズステップ(j)を有することが、質問内容の最適化と、測定者が特に注目する快適感の側面を評価に反映させるという観点より好ましい。
・ステップ(i)
最後にステップ(i)において、快適感得点と、判定された快適感タイプ、及びグラフを、パーソナル・コンピュータの画面や紙面に出力し、回答者、測定者、及び第三者がその内容を把握する。
〔不快感推定システム及び不快感推定用プログラム〕
本発明者らは、社外の成人男女878名を対象としたインターネット調査の結果から、ある不快感の解決後に、ある快適感が生じやすい傾向があることを見出した。この快適感と不快感の関連性に従えば、現在、ある快適感を経験している人が、直前に特定の不快感を経験していた、あるいは、その不快感に過敏に反応する人である可能性は高い。従って、前述の快適感の評価結果を元にして、ある商品によって快適感を経験した人の潜在的な不快感を推定し、商品のターゲットとなる消費者の理解を深め、次回の商品開発に役立てることが可能となる。
図4は、本発明に係る不安感推定システムの構成要素を示したブロック図である。図4において、(6)は快適感得点取込手段である。(7)は快適感グループの得点算出手段である。(8)は不快感推定手段であり、保有確率推定手段(8-a)を有する。(9)は感情語データベースである。(10)は推定結果出力手段である。
本発明の不安感推定システムは、手段(6)〜(8)、(10)及びデータベース(9)を有するものであり、本発明の不安感推定用プログラムは、データベース(9)を備えたコンピュータを、上記の手段(6)〜(8)、(10)として機能させるためのものである。
・快適感得点取込手段(6)
快適感評価システムの演算手段(4)によって、特定の生活場面や、特定の商品を利用したときの、回答者の快適感が得点化されている。この快適感は、例えば、快適感の下位概念である前述の16種類の快適感因子の各々について得点化されている。快適感得点取込手段(6)は、これら複数の快適感因子の個々の得点をシステムに取り込む手段である。
・快適感グループの得点算出手段(7)
快適感グループの得点算出手段(7)では、快適感得点取込手段(6)によって取り込んだ複数の快適感因子の個々の得点を、2つの快適感グループに分類し、各グループの総合得点を算出する。
例えば、16種類の快適感因子は、次の2つの快適感グループに分けることができる。すなわち、第1の快適感グループ(グループA)は、「満足・幸福」、「安静・リラックス」、「爽快・リフレッシュ」、「気楽・気軽」、「開放感」の5因子からなり、第2の快適感グループ(グループB)は、「熱中・興味」、「対人的好感情」、「強さ」、「やる気・前向き」、「豪華さ」、「ときめき」、「自信」、「感動」、「親和・愛情」、「活気・陽気」、「達成感」の11因子からなる。
各快適感グループの総合得点は、取り込まれた快適感得点の大きさと、不快感推定における実際上の意義の大きさとの較差を考慮して、各グループの中で、得点が0点ではない快適感因子の得点の平均値に重み係数をかけて算出されることが好ましい。現在までに、一般的な調査では、グループBは、得られる得点の実質的な重要度に対する相対的大きさが、グループAよりも小さくなることが知られている。このため、グループAへの重み係数は×1.0、グループBには×2.0というように、重み係数による補正を加えることが好ましい。
・不快感推定手段(8)
不快感推定手段(8)は、快適感得点算出手段(7)によって算出された、2つの快適感グループの総合得点を、不快感グループの保有確率推定手段(8-a)によって比較し、その大小関係を手がかりに、不快感グループの保有確率を示す対応表を参照して、回答者が潜在的に経験していた可能性の高い不快感グループを推定する。不快感グループは、内容の異なる複数の不快感の因子をまとめたものであり、前記の2つの快適感グループに対応する2つのグループがある。
第1の不快感グループ(グループC)は、「怒り」、「疲労」、「嫌悪」、「倦怠」の4因子からなり、第2の不快感グループ(グループD)は、「落胆」、「妬み」、「混乱」、「心配」の4因子からなる。
前記対応表に基づく推定では、快適感についてのグループA(満足・幸福因子ほか)の得点がグループB(熱中・興味因子ほか)の得点よりも大きい場合は、不快感グループC(怒りほか)の保有確率が高いと推定される。また、グループBの得点がグループAの得点よりも大きい場合は、不快感グループD(落胆ほか)の保有確率が高いと推定される。グループAとグループBの得点が同等であるときは、グループCとグループDの保有確率は、中程度で同等と推定される。
快適感グループAとグループBの得点の大小判断の基準は、快適感の測定に使用した回答形式に準じて決定される。快適感グループAの得点から快適感因子グループBの得点を減算した差分値が、0を中心として一定の範囲に収まった場合を、2つの快適感グループの得点が同等であるケースと見なすことができる。ここで、「一定の範囲」の基準は、例えば、両得点の差分値が、0を中心として正負両方向に、快適感の測定に使用した回答形式において期待される各快適感因子グループの最大値の5%以内の範囲とすることができる。快適感グループAの得点からグループBの得点を減じた差分値が、正の数であり、かつ、両得点が同等と見なされる範囲を超えていた場合に、快適感グループAの得点は、Bの得点よりも大きいと判断される。逆に、快適感グループAの得点からグループBの得点を現じた差分値が負の値であり、かつ、両グループが同等と見なされる範囲を超えていた場合に、快適感グループBの得点は、Aの得点よりも大きいと判断される。
なお、不快感推定手段(8)は、更に、不快感因子の保有確率推定手段(8-b)を有することが好ましく、これにより、不快感グループごとの推定に留まらず、個別の不快因子の喚起確率についても推定できる。
不快感因子の保有確率推定手段(8-b)は、快適感得点取込手段(6)によって取り込んだ複数の快適感因子の個々の得点から、最大の得点を持つ快適感因子を一つ決定し、対応表に照合して、個別の不快感因子の中から関連の深い上位3位までの不快感因子を推定する。例えば、快適感得点取込手段(6)によって取り込まれた複数の得点が、前述の16種類の快適感因子に関するものである場合、不快感因子の保有確率推定手段(8-b)は、16個の得点を比較し、最大値を持つ快適感因子をひとつ決定する。次に、16種類の快適感因子と8種類の不快感因子(「怒り」、「疲労」、「嫌悪」、「倦怠」、「落胆」、「妬み」、「混乱」、「心配」)の関連性の深さを示す対応表に基づいて、最大値を持つ快適感因子と関連の深い不快感因子を上位3個まで選択し、回答者が潜在的に保有する確率の高い不快感因子と決定する。また、感情語データベース(9)より、回答者が保有する確率が高いと決定された不快感因子に関連する感情語の情報を抽出する。
この場合において、快適感因子グループの総合得点算出時と同様に、快適感グループBに所属する11因子の得点に対しては、重み係数による補正を行うことが好ましい。たとえば重み係数を2.0とし、各因子の得点×2.0を因子の得点として比較に使うことができる。
また、不快感推定手段(8)は、決定された不快感の推定情報を記録する記録手段を有することが、多人数の評定結果を社会調査及びマーケティング調査の結果として比較分析する上での利便性や、同一人物への複数回の不快感推定の結果を比較する上での利便性の観点より好ましい。この記録手段により、推定情報は、例えばハードディスク、CD-R、CD-RW、DVD-R、DVD-R、DVD-RAM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体などに記録される。
・感情語データベース(9)
感情語データベース(9)は、不快感に関連する感情語を、各語の所属する不快感因子の情報と共に保有している。感情語データベース(9)に含まれる感情語としては、例えば不快感を表現する8種類の因子(「怒り」、「疲労」、「嫌悪」、「倦怠」、「落胆」、「妬み」、「混乱」、「心配」)に属する、以下の感情語が例示される。
1.怒り:腹立たしい、いらいらした、むっとした
2.疲労:だるい、くたくたな、へとへとな
3.嫌悪:気持ち悪い、苦しい、逃げ出したい
4.倦怠:ひまな、退屈な、つまらない
5.落胆:落ち込んだ、くよくよした、がっかりした
6.妬み:嫉妬した、妬ましい、くやしい
7.混乱:あわてた、焦った、そわそわした
8.心配:心配な、うろたえた、気がかりな
・推定結果出力手段(10)
推定結果出力手段(10)は、不快感グループの保有確率推定手段(8-a)による推定結果、すなわち回答者が潜在的に保有する確率の高い不快感グループの名前を、パソコンの画面への表示、印刷物への印字、電子ファイルへの出力といった、回答者や測定者とコミュニケーションできる媒体に出力する。ここで、推定結果は、推定された不快感グループに関連が深く、推定された不快感グループを測定する際における質問語として提案できる感情語と共に出力することができる。また、不快感推定システムが、不快感因子の保有確率推定手段(8-b)も有する場合は、その推定結果、すなわち回答者が保有する確率が高い不快感因子も合わせて出力される。更に、感情語データベース(9)を参照して、この不快感因子に関連する感情語を抽出し、併せて出力することができる。
本発明の不快感推定システムにより不快感を推定する方法について、図5に示したフローチャートに従って説明する。
・ステップ(m)
図5におけるステップ(m)は、不快感推定において参照される快適感に係る得点を、不快感推定システムに取り込む快適感得点の取込ステップである。快適感の得点は、図2に示した快適感評価方法の演算ステップ(g)によって算出されたものである。ステップ(m)は、快適感評価方法のステップ(g)より、快適感の下位概念としての各因子について算出された、回答者が経験した快適感の得点を読み出し、これを次のステップ(n)へと引き渡す。
・ステップ(n)
ステップ(n)は、ステップ(m)より渡された快適感の因子についての得点を材料として、複数の快適感因子より構成されたグループである快適感グループの得点を算出する。快適感グループは2つあり、快適感グループ得点は、それぞれを構成する快適感因子の総合得点として算出される。
例えば、16種類の快適感因子は、次のように2つの快適感グループに分けることができる。すなわち、第1の快適感グループ(グループA)は、「満足・幸福」、「安静・リラックス」、「爽快・リフレッシュ」、「気楽・気軽」、「開放感」の5因子からなり、第2の快適感グループ(グループB)は、「熱中・興味」、「対人的好感情」、「強さ」、「やる気・前向き」、「豪華さ」、「ときめき」、「自信」、「感動」、「親和・愛情」、「活気・陽気」、「達成感」の11因子からなる。
まず最初にステップ(n)は、2つの快適感グループに対して初期値として、各グループを構成する快適感因子の得点から総合得点を算出する。次に、この初期値に対しては、小さくなりがちな快適感グループBの得点(初期値)に重み係数による補正を加えることが好ましい。重み係数は、たとえば、×2.0を用いることができる。そして、算出された2つの快適感グループ得点間を比較し、その結果は、次のステップ(o)へと送られる。
・ステップ(o)
ステップ(o)は、ステップ(n)において実施された快適感グループの得点比較の結果を基に、不快感グループの保有確率を示す対応表を参照して、回答者が潜在的に保有する確率の高い不快感グループを推定する。不快感グループは、内容の異なる複数の不快感の因子をまとめたものであり、前記の2つの快適感グループに対応する2つのグループがある。
第1の不快感グループ(グループC)は、「怒り」、「疲労」、「嫌悪」、「倦怠」の4因子からなり、第2の不快感グループ(グループD)は、「落胆」、「妬み」、「混乱」、「心配」の4因子からなる。
前記対応表に基づく推定では、快適感についてのグループA(満足・幸福因子ほか)の得点がグループB(熱中・興味因子ほか)の得点よりも大きい場合は、不快感グループC(怒りほか)の保有確率が高いと推定される。また、グループBの得点がグループAの得点よりも大きい場合は、不快感グループD(落胆ほか)の保有確率が高いと推定される。グループAとグループBの得点が同等であるときは、グループCとグループDの保有確率は同等と推定される。
・ステップ(r)
ここで、更に以下のステップ(r)を行うことにより、不快感グループの推定にとどまらず、不快感の内容をより詳細に不快感の因子にまで細分化して推定を行うことができる。
ステップ(r)は、ステップ(m)によって取り込んだ、複数の快適感因子の個々の得点から、最大の得点を持つ快適感因子をひとつ決定し、対応表に照合して、個別の不快感因子の中から関連の深い上位3位までの不快感因子を推定するステップである。例えば、ステップ(m)によって取り込まれた複数の得点が、前述の16種類の快適感因子に関するものである場合、ステップ(r)では、16個の得点を比較し、最大値を持つ快適感因子をひとつ決定する。なお、個々の快適感因子の得点を比較する際、グループBに所属する11種類の因子には、重み係数をかけた補正値を用いることが好ましい。次に、16種類の快適感因子と8種類の不快感因子(「怒り」、「疲労」、「嫌悪」、「倦怠」、「落胆」、「妬み」、「混乱」、「心配」)の関連性の深さを示す対応表にもとづいて、最大値を持つ快適感因子と関連の深い不快感因子が上位3個まで選択され、回答者が潜在的に保有する確率の高い不快感因子として決定される。
・ステップ(p)
ステップ(p)は、推定結果の記録ステップであり、ステップ(o)で推定された、回答者が保有している確率の高い不快感グループの名前と、その不快感グループを構成する不快感因子の名称を記録する。記録媒体は、例えば、ハードディスク、CD-R、CD-RW、DVD-R、DVD-RAM等のコンピュータ読み取りが可能な記録媒体が挙げられる。
ステップ(p)は、ステップ(r)によって、保有確率の高い不快感因子の上位3因子が推定されている場合は、この名称についても記録することができる。
・ステップ(q)
ステップ(q)は、推定結果の出力ステップである。ステップ(q)では、ステップ(o)において推定された、回答者が保有している確率の高い不快感グループの名前と、その不快感グループを構成する不快感因子の名前を、パーソナル・コンピュータの画面、印刷物、電子ファイルといった、回答者や測定者とコミュニケーションができる媒体に出力する。ここで、ステップ(q)は、不快感に関する感情語を保存している感情語データベース(9)を参照することにより、推定された不快感グループと関連が深い感情語を選択し、不快感測定のための質問語として出力して提案することもできる。また、不快感グループからさらに細分化して、不快感因子の推定が行われた場合は、その推定結果を出力することもできる。
実施例1 快適感の評価
日常生活の中で経験される快適感について、快適感評価システムを用いた測定を行った。20代〜30代の女性72名に対し、入浴場面での快適感と、テレビでスポーツ観戦をしていて、応援しているチームが勝った時の快適感を想定させて、快適感評価システムを用いて回答させた。回答形式はリッカート法を採用し、質問語の示す感情を全く感じない場合を0点、はっきり感じる場合を3点とする4件法を用いた。
快適感評価システムの感情語データベースから、16因子の各因子に対して3語の質問語を抽出し、合計48語をランダムな呈示順序で、パーソナル・コンピュータの画面上に呈示した。キーボードを用いて回答された回答者の反応を元に、16因子の快適感得点が算出され、図3のようにグラフ化された。
グラフ及び素点の特徴から、入浴時の快適感は、安静・リラックス得点が最高点となり、活性的特徴を持つ因子の得点が低いことから、やすらぎ・癒し型と判定された。また、テレビによるスポーツ観戦は、安静・リラックス得点は低得点となり、熱中・興味得点、活気・陽気得点、ときめき得点といった活性的特徴を示す因子での得点が高くなったことから、娯楽・エネルギー型と判定された。この調査によって、日常生活において経験される快適感が、定量的に測定でき、その感情的な特徴の違いをグラフ化して示せることが確認された。
実施例2 不快感の推定
日常生活における快適な場面について想像し、快適感を評定したデータから回答者が潜在的に有している不快感を推測した場合について例示する。
生活場面「朝に、誰にも邪魔されずにゆっくり眠れたとき」について、快適感評価システムによって評価された快適感の得点が、次のようであったとする。
Figure 0005032097
最初の処理として、不快感推定システムは、快適感得点取込手段(6)によって、快適感評価システムから、上記の16種類の快適感因子の得点を取り込む。
第2の処理として、快適感グループの得点算出手段(7)によって、16種類の快適感因子を、AとBの2つの快適感グループに分け、それぞれの総合得点を算出する。
各快適感グループの総合得点は、各快適感グループの中で、得点が0点ではない快適感因子の得点の平均値に重み係数をかけて算出される。
グループAの平均値は1.30、グループBの平均値は0.51となり、さらにグループBの値に重み係数2.0をかけてグループの得点を算出する。この結果、グループAの総合得点は1.30、グループBの総合得点は1.02となる。
第3の処理として、不快感推定手段(8)は、得点算出手段(7)によって算出された、グループA(1.30)とグループB(1.02)の総合得点を、不快感グループの保有確率推定手段(8-a)によって比較する。この場合、グループAの総合得点がグループBの総合得点よりも大きいため、不快感グループC(怒り、疲労、嫌悪、倦怠)の保有確率が高いと推定される。
最後に、推定結果出力手段(10)は、不快感グループの保有確率推定手段(8-a)による推定結果を、パソコンの画面への表示、印刷物への印字、電子ファイルへの出力といった、回答者や測定者とコミュニケーションできる媒体に出力する。
快適感評価システムの構成要素を示すブロック図である。 快適感評価方法の処理の流れを示すフローチャートである。 16因子を用いて快適感を評価した場合におけるグラフである。 不快感推定システムの構成要素を示すブロック図である。 不快感推定方法の処理の流れを示すフローチャートである。
符号の説明
(1) 質問作成手段
(1-a) 回答形式選択手段
(1-b) 質問語決定手段
(1-b-1) 教示文データベース
(1-b-2) 感情語抽出手段
(1-c) ユーザーによるカスタマイズ情報入力手段
(2) 感情語データベース
(3) 回答入出力手段
(3-a) 質問出力手段
(3-b) 回答入力手段
(3-c) 回答収集手段
(4) 演算手段
(5) 評価結果出力手段
(6) 快適感得点取込手段
(7) 快適感グループの得点算出手段
(8) 不快感推定手段
(9) 感情語データベース
(10) 推定結果出力手段
(a) 回答形式の選択ステップ
(b) 教示文決定ステップ
(c) 感情語抽出ステップ
(d) 質問出力ステップ
(e) 回答入力ステップ
(f) 回答収集ステップ
(g) 演算ステップ
(h) 記録ステップ
(i) 結果出力ステップ
(j) 測定者によるカスタマイズステップ
(k) グラフ作成ステップ
(l) 快適感タイプ判定ステップ
(m) 快適感得点の取り込みステップ
(n) 快適感グループ得点の算出及び比較ステップ
(o) 不快感グループの保有確率推定ステップ
(p) 推定結果記録ステップ
(q) 推定結果出力ステップ
(r) 不快感因子の保有確率推定ステップ

Claims (16)

  1. 次の手段(1)、(3)〜(5)及びデータベース(2)を有する快適感評価システム。
    質問作成手段(1):測定者が快適感を評価する際の回答形式を選択する回答形式選択手段(1-a)と、前記選択された回答形式に適した教示文を教示文データベースが持つ教示文情報の中から選択して、回答形式が感情語の呈示を行わない形式である場合には教示文からなる質問を決定し、また回答形式が感情語の呈示を伴う場合には更に測定者が感情語データベース(2)より感情語を抽出して教示文と感情語との組み合わせからなる質問を決定する、質問語決定手段(1-b)を有する、質問を作成する手段。
    感情語データベース(2):快適感に関連する感情語、快適感を構成する質の異なる複数の因子のどの因子に前記感情語が属するかの所属因子情報、及び各因子の得点の高低によって特定される快適感パターンに関する情報を記録したデータベース。
    回答入出力手段(3):質問を回答者に呈示する質問出力手段(3-a)と、回答者の回答入力手段(3-b)と、回答を取り込む回答収集手段(3-c)を有する、回答を入出力する手段。
    演算手段(4):回答収集手段(3-c)によって取り込まれた回答結果から、感情語データベース(2)に含まれる所属因子情報を参照して、複数の快適感因子に分けて得点を算出すると共に、感情語データベース(2)に含まれる快適感パターンに関する情報を参照し、快適感パターンを特定する手段。
    評価結果出力手段(5):演算手段(4)によって得られた評価結果を出力する手段。
  2. 回答形式選択手段(1-a)で選択された感情語の呈示を行わない回答形式が自由回答形式であって、演算手段(4)において、回答された自然文に対して感情語データベース(2)に含まれる感情語の出現頻度の計測を行い、感情語データベース(2)に含まれる所属因子情報を参照して、快適感因子ごとの得点を算出する、請求項1に記載の快適感評価システム。
  3. 回答形式選択手段(1-a)で選択された感情語の呈示を伴う回答形式がリッカート法であって、演算手段(4)において、回答者に呈示された各感情語に回答者が与えた評定点に基づき、感情語データベース(2)に含まれる所属因子情報を参照して、快適感因子ごとの得点を算出する、請求項1に記載の快適感評価システム。
  4. 回答形式選択手段(1-a)で選択された感情語の呈示を伴う回答形式が強制選択法であって、演算手段(4)において、回答者によって選択された感情語に対して得点を与え、感情語データベース(2)に含まれる所属因子情報を参照して、快適感因子ごとの得点を算出する、請求項1に記載の快適感評価システム。
  5. 演算手段(4)が、算出された快適感の得点情報を回答者の回答と共に記録する記録手段を有するものである、請求項1〜4のいずれかに記載の快適感評価システム。
  6. 演算手段(4)によって算出された快適感をグラフ化するグラフ作成手段を有するものである、請求項1〜5のいずれかに記載の快適感評価システム。
  7. 質問作成手段(1)における質問作成に際して、測定者が任意で教示文及び/若しくは感情語の取捨選択、並びに/又は追記を行うカスタマイズ情報入力手段(1-c)を有するものである、請求項1〜6のいずれかに記載の快適感評価システム。
  8. 感情語データベース(2)から抽出される感情語が、快適感の中での異なる質を表現する16種類の因子(「熱中・興味」、「対人的好感情」、「強さ」、「やる気・前向き」、「豪華さ」、「ときめき」、「自信」、「感動」、「安静・リラックス」、「満足・幸福」、「爽快・リフレッシュ」、「親和・愛情」、「活気・陽気」、「気楽・気軽」、「開放感」、「達成感」)に属する2個以上の感情語の組み合わせである、請求項1〜7のいずれかに記載の快適感評価システム。
  9. 下記の(e)〜(i)のステップを含む快適感評価方法
    (e) 回答入力手段が、快適感評価に関する質問に対する回答を回答者に入力させる回答入力ステップ。
    (f) 回答収集手段が、回答者が入力した回答をシステムにデータとして取り込む回答収集ステップ。
    (g) 演算手段が、回答者からの回答を基に、感情語データベースに含まれる所属因子情報を参照して、回答に含まれる感情語を複数の快適感因子に分け、各因子に関する得点を算出し、感情語データベースに含まれる快適感パターンに関する情報を参照し、算出した得点から快適感パターンを特定する演算ステップ。
    (h) 記録手段が、回答者の回答とステップ(g)で算出した快適感の得点情報を記録する回答・演算結果記録ステップ。
    (i) 評価結果出力手段が、算出された快適感を表示する結果出力ステップ。
  10. ステップ(e)における質問の回答形式が自由回答形式であって、演算ステップ(g)において、回答された自然文に対して感情語データベースに含まれる感情語の出現頻度の計測を行い、感情語データベースに含まれる所属因子情報を参照して、快適感因子ごとの得点を算出する、請求項9に記載の快適感評価方法。
  11. ステップ(e)における質問の回答形式がリッカート法であって、演算ステップ(g)において、回答者に呈示された各感情語に回答者が与えた評定点に基づき、感情語データベースに含まれる所属因子情報を参照して、快適感因子ごとの得点を算出する、請求項9に記載の快適感評価方法。
  12. ステップ(e)における質問の回答形式が強制選択法であって、演算ステップ(g)において、回答者によって選択された感情語に対して得点を与え、感情語データベースに含まれる所属因子情報を参照して、快適感因子ごとの得点を算出する、請求項9に記載の快適感評価方法。
  13. ステップ(g)の処理結果から得られた快適感の得点をグラフ化するグラフ作成ステップ(k)を含む、請求項10〜12のいずれかに記載の快適感評価方法。
  14. 感情語が、快適感の中での異なる質を表現する16種類の因子(「熱中・興味」、「対人的好感情」、「強さ」、「やる気・前向き」、「豪華さ」、「ときめき」、「自信」、「感動」、「安静・リラックス」、「満足・幸福」、「爽快・リフレッシュ」、「親和・愛情」、「活気・陽気」、「気楽・気軽」、「開放感」、「達成感」)に属する2個以上の感情語の組み合わせである、請求項10〜13のいずれかに記載の快適感評価方法。
  15. 次の手段(6)〜(8)及び(10)を有する不快感推定システム。
    快適感得点取込手段(6):請求項1〜8のいずれかに記載の快適感評価システムにおける演算手段(4)によって算出された、複数の快適感因子の個々の得点をシステムに取り込む手段。
    快適感グループの得点算出手段(7):快適感得点取込手段(6)によって取り込んだ複数の快適感因子の個々の得点を、下記の快適感グループA及びBの2つに分類し、各グループの総合得点を算出する手段。
    快適感グループA:「満足・幸福」、「安静・リラックス」、「爽快・リフレッシュ」、「気楽・気軽」及び「開放感」の5因子からなるグループ
    快適感グループB:「熱中・興味」、「対人的好感情」、「強さ」、「やる気・前向き」、「豪華さ」、「ときめき」、「自信」、「感動」、「親和・愛情」、「活気・陽気」及び「達成感」の11因子からなるグループ
    不快感推定手段(8):快適感グループの得点算出手段(7)によって算出された2つの快適感グループの総合得点を用いて、下記不快感グループC及びDのうち、いずれのグループに属する不快感が回答者に経験されていた可能性が高いかを、グループAの得点がグループBの得点よりも大きい場合はグループCの保有確率が高く、グループBの得点がグループAの得点よりも大きい場合はグループDの保有確率が高く、グループAとグループBの得点が同等である場合はグループCとグループDの保有確率が同等と推定する不快感グループの保有確率推定手段(8-a)を有する、不快感を推定する手段。
    不快感グループC:「怒り」、「疲労」、「嫌悪」及び「倦怠」の4因子からなるグループ
    不快感グループD:「落胆」、「妬み」、「混乱」及び「心配」の4因子からなるグループ
    推定結果出力手段(10):推定結果を出力する手段。
  16. 不快感推定手段(8)が、快適感得点取込手段(6)によって取り込んだ複数の快適感因子の個々の得点から、最大の得点を持つ快適感因子を一つ決定し、対応表に照合して、個別の不快感因子の中から関連の深い上位3位までの不快感因子を推定する不快感因子の保有確率推定手段(8-b)を有するものである請求項15に記載の不快感推定システム。
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