JP5010090B2 - 低流動点を有するディーゼル油 - Google Patents

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    • Y02E50/10Biofuels, e.g. bio-diesel

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  • Liquid Carbonaceous Fuels (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、添加剤を含まない低温での流動特性が改善された生物燃料(biofuel)に関するものである。特に、本発明は、石油ディーゼルの代わりに使用できるパーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物由来の改良された生物燃料、特にディーゼル用の燃料(油)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
環境への意識が高まってきたことにより、燃料として植物油を使用する考えが近年提案されてきている。マレイシアでは、生物燃料(biofuel)をパーム油より得ることに成功した(例えば、特許文献1参照)。上記公報には、パーム油からパーム油のメチルエステル(パーム油由来のディーゼル油)を製造する方法が記載されている。上記公報では、パーム油をエステル交換によりパーム油のメチルエステルに変換したところ、このパーム油のメチルエステルやパーム油由来のディーゼル油は良好な燃料特性を示し、従来のディーゼル油の代替品として使用できることが分かった(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、パーム油のメチルエステルは、流動点が+15〜+18℃と比較的高いため、使用の時期や場所が限定され、特に寒冷気候の国では燃料として使用または消費されるには制限があるという欠点があった。このように、パーム油由来のディーゼル油は良好な燃料特性を有し、燃料の仕様に合っているものの、パーム油のメチルエステルの流動点が+15〜+18℃であるため、低い操作温度で使用される場合には問題があった。なお、流動点は、試験サンプルが水平から傾けた際に移動しない温度より3℃高い温度である。
【0004】
エンジンまたは機械における燃料の流動性は、どんな場合においても非常に重要である。例えば、エンジンを冷たい環境から動かし始める際には、機械部品が自由に動くことができ、ラインやポンプに燃料を容易に輸送できることが重要である。上記条件が満たされない場合には、閉塞が起こったり、エンジンまたは機械の効率が悪くなったり、エンジンまたは機械が操作不可能になったりする。
【0005】
燃料を低温に冷却すると、燃料は、様々な変化、即ち、固化、巨視的結晶の沈殿物の形成による固化及び微結晶の形成による固化が生じて、これらの結晶は、膨張して、残りの油をトラップする結晶構造をとってしまう。このような状況では、燃料の流動性が制限されてしまう。ゆえに、燃料の低温での良好な流動特性(流動点)は、スムーズな操作を確保するために、さらには様々な用途に適するために必須である。燃料は、油が水平から傾けた際に移動しない温度より3℃高い温度である、良好な流動点を有することが必要である。この際、すべてのサンプルの流動点は、ASTM D97の標準的な方法によって測定された。流動点は、操作温度を下回る必要がある。
【0006】
前記した低温特性を改良するために、流動点降下剤が一般的に使用される。流動降下剤は、ワックス結晶への表面吸着を介して作用する。流動降下剤のこのようにして得られた表面層は、ワックス及びパラフィン結晶の成長を阻害する。これにより、長い固着した結晶または膨張した粒子が存在しないので、燃料は自由に移動できる。しかしながら、これらの添加剤が少量であっても燃料に添加されているため、コスト高となってしまう。
【0007】
【特許文献1】
マレイシア国特許第PJ1105/88号明細書
【非特許文献1】
‘Production and Evaluation of Palm Oil Methyl Esters as Diesel Substitute’, Elaeis Special Issue, November 1995, pp.15−25
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされ、流動点降下剤等の添加剤を使用せずに低温での流動特性が改善された生物燃料を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、以下に制限されるものではないが、石油ディーゼルとしての代替品となりうるパーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物由来の改良された生物燃料を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、低流動点を有するディーゼル油の製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、良好な低温での流動性を有する優れたパームディーゼル組成物を開示するものである。パーム油のメチルエステルとは異なり、本発明による優れたディーゼル油(生物燃料)は、寒冷気候の国でも好適に使用できる。
【0012】
上記諸目的は、下記(1)〜(22)によって達成される。
【0013】
(1)C18メチルエステル、C18エチルエステル、C18:1メチルエステル、C18:1エチルエステル、C18:2メチルエステル、及びC18:2エチルエステルからなる群より選択される少なくとも一種のエステルを含む、バイオディーゼル油、好ましくはパーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物由来のバイオディーゼル油。なお、本明細書において、「パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物由来のバイオディーゼル油」を、パームディーゼル油とも称する。
【0014】
(2)エステルは、−12〜−21℃の範囲の流動点を有するまたは−12〜−21℃の範囲の流動点を有するように混合される、好ましくは−12〜−21℃の範囲の流動点を有するように混合される、前記(1)に記載のバイオディーゼル油。
【0015】
(3)エステルは、15〜−33℃の範囲の流動点を有するまたは15〜−33℃の範囲の流動点を有するように混合される、好ましくは15〜−33℃の範囲の流動点を有するように混合される、前記(1)に記載のバイオディーゼル油。
【0016】
(4)エステルは、15〜−24℃の範囲の流動点を有するまたは15〜−24℃の範囲の流動点を有するように混合される、好ましくは15〜−24℃の範囲の流動点を有するように混合される、前記(3)に記載のバイオディーゼル油。
【0017】
(5)10質量%以下の飽和メチルエステル若しくはエチルエステルまたはこれらの混合物および90質量%以上のC18:1またはC18:2の不飽和メチルエステル若しくはエチルエステルまたはこれらの混合物からなる、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のバイオディーゼル油。
【0018】
(6)ミリスチン酸のメチルエステル、パルミチン酸のメチルエステル、オレイン酸のメチルエステル及びリノール酸のメチルエステルを含む、前記(1)〜(5)のいずれかに記載のバイオディーゼル油。
【0019】
(7)0.5質量%のミリスチン酸のメチルエステル、4.9質量%のパルミチン酸のメチルエステル、83.6質量%のオレイン酸のメチルエステル及び11.0質量%のリノール酸のメチルエステルからなり、−21℃の流動点を有する、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のバイオディーゼル油。
【0020】
(8)0.6質量%のミリスチン酸のメチルエステル、5.7質量%のパルミチン酸のメチルエステル、2.0質量%のステアリン酸のメチルエステル、79.0質量%のオレイン酸のメチルエステル及び12.7質量%のリノール酸のメチルエステルからなり、−15℃の流動点を有する、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のバイオディーゼル油。
【0021】
(9)0.6質量%のミリスチン酸のメチルエステル、6.3質量%のパルミチン酸のメチルエステル、2.9質量%のステアリン酸のメチルエステル、74.6質量%のオレイン酸のメチルエステル及び15.7質量%のリノール酸のメチルエステルからなり、−12℃の流動点を有する、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のバイオディーゼル油。
【0022】
(10)0.7質量%のミリスチン酸のメチルエステル、6.7質量%のパルミチン酸のメチルエステル、0.4質量%のステアリン酸のメチルエステル、75.5質量%のオレイン酸のメチルエステル及び16.7質量%のリノール酸のメチルエステルからなり、−9℃の流動点を有する、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のバイオディーゼル油。
【0023】
(11)1.6質量%のミリスチン酸のメチルエステル、5.0質量%のパルミチン酸のメチルエステル、0.7質量%のステアリン酸のメチルエステル、72.9質量%のオレイン酸のメチルエステル、19.4質量%のリノール酸のメチルエステル及び0.4質量%のアラキン酸のメチルエステルからなり、−33℃の流動点を有する、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のバイオディーゼル油。
【0024】
(12)パーム油、パーム核油、パーム油製品、パーム核油製品及びこれらの混合物からなる群より選ばれる一種由来のメチルエステルおよび/またはエチルエステルを含み、飽和メチルエステルおよび/またはエチルエステルの合計含量が7質量%以下であり、C18:1のメチルエステルおよび/またはエチルエステルの合計含量が70質量%以上である、パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物由来のバイオディーゼル油。
【0025】
(13)飽和メチルエステルまたはエチルエステルは、C14のメチルエステル及びエチルエステル、C16のメチルエステル及びエチルエステルならびにC18のメチルエステル及びエチルエステルからなる群より選択される少なくとも一種のエステルを含む、前記(12)に記載のバイオディーゼル油。
【0026】
(14)(ア)C18、C18:1及びC18:2からなる群より選ばれる少なくとも一種の脂肪酸をメタノールまたはエタノールでエステル化する工程;
(イ)パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物からメチルまたはエチルエステルを分留する工程;
(ウ)パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物からメチルまたはエチルエステルを結晶化する工程;
(エ)パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物からメチルまたはエチルエステルを分留し、その後に結晶化を行なう工程;および
(オ)パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物からメチルまたはエチルエステルを結晶化し、その後に分留を行なう工程、
からなる群より選択される少なくとも一の工程を有する、C18、C18:1及びC18:2のメチルまたはエチルエステルを含むバイオディーゼル油の製造方法。
【0027】
(15)工程(ア)において、エステル化工程は、液体または固体形態の酸触媒の存在下で110〜160℃の温度で、C18:1及びC18:2からなる群より選ばれる少なくとも一種の脂肪酸を少なくとも用いて行なわれる、前記(14)に記載の方法。
【0028】
(16)酸触媒は、濃硫酸、濃塩酸、スルホン酸及び固体酸触媒からなる群より選択される少なくとも一種であり、酸触媒の添加量は、全混合物に対して、0.5〜1質量%である、前記(15)に記載の方法。
【0029】
(17)工程(イ)および/または(エ)において、分留工程は、5〜30Paの圧力下で行なわれる、前記(14)〜(16)のいずれかに記載の方法。
【0030】
(18)工程(ウ)および/または(エ)において、結晶化工程は、乾式分別または溶剤分別を用いて行なわれる、前記(14)〜(17)のいずれかに記載の方法。
【0031】
(19)工程(ウ)および/または(エ)において、結晶化工程は溶剤分別を用いて行なわれ、かつメタノール、エタノール及びイソプロパノールからなる群より選択される少なくとも一種のアルコールが該溶剤分別工程に使用される、前記(18)に記載の方法。
【0032】
(20)バイオディーゼル油はメチルエステルおよび/またはエチルエステルを含み、パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物のメタノールおよび/またはエタノールによるエステル化によって製造される、パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物由来のバイオディーゼル油の製造方法。
【0033】
(21)エステル化工程は、パーム油、パーム核油、パーム油製品及びパーム核油製品から選ばれる少なくとも一種を、全混合物に対して、0.25〜1質量%の、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド及び水酸化カリウムから選ばれる少なくとも一種のアルカリ触媒の存在下で、45分〜1時間、60〜65℃の温度で、メタノールおよび/またはエタノールでエステル化することによって行なわれる、前記(20)に記載の方法。
【0034】
(22)1〜2%のミリスチン酸のメチルおよび/またはエチルエステル、4〜7%のパルミチン酸のメチルおよび/またはエチルエステル、0〜3%のステアリン酸のメチルおよび/またはエチルエステル、70〜85%のオレイン酸のメチルおよび/またはエチルエステル、10〜22%のリノール酸のメチルおよび/またはエチルエステル及び0〜1%のアラキン酸のメチルおよび/またはエチルエステルからなる、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のバイオディーゼル油。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の態様によると、C18メチルエステル、C18エチルエステル、C18:1メチルエステル、C18:1エチルエステル、C18:2メチルエステル、及びC18:2エチルエステルからなる群より選択される少なくとも一種のエステルを含む、好ましくはパーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物由来のバイオディーゼル油が提供される。なお、以下の説明において、特記しない限り、「%」は、「質量%」を表わし、「部」は、「質量部」を表わすものとする。
【0036】
本明細書において、「パーム油製品」とは、中和パーム油、中和・脱色パーム油、精製・脱色・脱臭(RBD)/中和・脱色・脱臭(NBD)パーム油;未精製パームオレイン(palm olein)、中和パームオレイン、中和・脱色パームオレイン、精製・脱色・脱臭(RBD)/中和・脱色・脱臭(NBD)パームオレイン;未精製パームステアリン(palm stearin)、中和パームステアリン、中和・脱色パームステアリン、精製・脱色・脱臭(RBD)/中和・脱色・脱臭(NBD)パームステアリン;酸性パーム油(palm acid oil);およびパーム油由来の脂肪酸留出物(palm fatty acid distillate)を、意味する。また、本明細書において、「パーム核油製品」とは、中和パーム核油、中和・脱色パーム核油、精製・脱色・脱臭(RBD)/中和・脱色・脱臭(NBD)パーム核油;未精製パーム核油オレイン(palm kernel olein)、中和パーム核油オレイン、中和・脱色パーム核油オレイン、精製・脱色・脱臭(RBD)/中和・脱色・脱臭(NBD)パーム核油オレイン;未精製パーム核油ステアリン(palm kernel stearin)、中和パーム核油ステアリン、中和・脱色パーム核油ステアリン、精製・脱色・脱臭(RBD)/中和・脱色・脱臭(NBD)パーム核油ステアリン;酸性パーム核油(palm kernel acid oil);およびパーム核油由来の脂肪酸留出物(palm kernel fatty acid distillate)を、意味する。
【0037】
本発明において、C18メチルまたはエチルエステルは、パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物由来の飽和脂肪酸のメチルまたはエチルエステルであり、この際、C18の脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸がある。また、C18:1メチルまたはエチルエステルは、パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物由来の二重結合を1個有する脂肪酸のメチルまたはエチルエステルであり、この際、C18:1の脂肪酸としては、例えば、オレイン酸がある。さらに、C18:2メチルまたはエチルエステルは、パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物由来の二重結合を2個有する脂肪酸のメチルまたはエチルエステルであり、この際、C18:2の脂肪酸としては、例えば、リノール酸がある。本発明において、上記脂肪酸のメチルまたはエチルエステルの純度は、十分な低温流動特性が得られるものであれば特に制限されないが、例えば、90%以上、より好ましくは98%以上であることが好ましい。
【0038】
本発明のバイオディーゼル油は、上記C18、C18:1、C18:2のメチルおよび/またはエチルエステルを少なくとも1種含むものであればよく、上記脂肪酸のメチルエステルやエチルエステルに加えて他の飽和および/または不飽和脂肪酸のメチルエステルやエチルエステルを含むものであってもよい。具体的には、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ラウリン酸(C12)、カプリン酸(C10)、カプリル酸(C8)、アラキン酸(C20)等のメチルエステル及びエチルエステルなどが挙げられる。これらのうち、好ましくはミリスチン酸、パルミチン酸及びアラキン酸のメチルエステル及びエチルエステル、より好ましくはミリスチン酸及びパルミチン酸のメチルエステル及びエチルエステル、特に好ましくはミリスチン酸及びパルミチン酸のメチルエステルである。
【0039】
上記した脂肪酸のうち、本発明のバイオディーゼル油は、不飽和脂肪酸のメチルまたはエチルエステル、より好ましくは不飽和脂肪酸のメチルエステル、最も好ましくはオレイン酸のメチルエステル(98%以上の純度)若しくはリノール酸のメチルエステル(98%以上の純度)またはオレイン酸のメチルエステル及びリノール酸のメチルエステルを高含量(90%以上)含むこれらの混合物を含むことが好ましい。すなわち、本発明のバイオディーゼル油は、ミリスチン酸のメチルエステル、パルミチン酸のメチルエステル、オレイン酸のメチルエステル及びリノール酸のメチルエステルを少なくとも含むことが好ましい。
【0040】
本発明において、バイオディーゼル油における飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の割合は、十分な低温流動特性を示すものであれば特に制限されないが、飽和メチルエステル若しくはエチルエステルまたはこれらの混合物の含量が、全体の7質量%以下、より好ましくは10質量%以下であることが好ましい。また、C18:1またはC18:2の不飽和メチルエステル若しくはエチルエステルまたはこれらの混合物の含量が、70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることが好ましい。このような特定の組成を有する本発明の高付加価値のパームディーゼル油は、従来のパーム油のメチルエステル(例えば、C16(45%)、C18(5%)、C18:1(39%)及びC18:2(11%))を寒冷気候の国に使用する際に起こった流動点の問題を解決できるものである。
【0041】
すなわち、オレイン酸のメチルエステルは、パーム油のメチルエステルの一成分であるが、これは、パーム油のメチルエステルとほぼ同様の良好な燃料特性を有するのみでなく、−18℃という低い流動点を有する。また、リノール酸のメチルエステルは、−39℃の流動点を有する。上記流動点は、上記した従来のパーム油のメチルエステル(C16、C18、C18:1及びC18:2の混合物)に比して非常に低い値となっている。ゆえに、上述したような、不飽和脂肪酸エステル、特にオレイン酸のメチルエステル及びリノール酸のメチルエステルを高含量で含む混合物は、流動点が低く、ゆえに寒冷気候の国でまたは低い操作温度でもディーゼル油として好適に使用できる。
【0042】
本発明のバイオディーゼル油の組成は、上記したように、C18メチルエステル、C18エチルエステル、C18:1メチルエステル、C18:1エチルエステル、C18:2メチルエステル、及びC18:2エチルエステルからなる群より選択される少なくとも一種のエステルを含み、適当な流動点を有するものであれば特に制限されない。本発明のバイオディーゼル油の組成の好ましい一例としては、1〜2%のミリスチン酸のメチルおよび/またはエチルエステル、4〜7%のパルミチン酸のメチルおよび/またはエチルエステル、0〜3%のステアリン酸のメチルおよび/またはエチルエステル、70〜85%のオレイン酸のメチルおよび/またはエチルエステル、10〜22%のリノール酸のメチルおよび/またはエチルエステル及び0〜1%のアラキン酸のメチルおよび/またはエチルエステルからなるものがある(この際、上記組成の全量は100%である)。また、本発明のバイオディーゼル油の組成のより好ましい例を、下記に記載する。C14(0.5%)、C16(4.9%)、C18:1(83.6%)及びC18:2(11.0%)の混合物、即ち、0.5質量%のミリスチン酸のメチルエステル、4.9質量%のパルミチン酸のメチルエステル、83.6質量%のオレイン酸のメチルエステル及び11.0質量%のリノール酸のメチルエステルの混合物は、−21℃という低い流動点を示す。また、C14(0.6%)、C16(5.7%)、C18(2.0%)、C18:1(79.0%)及びC18:2(12.7%)のメチルエステルの混合物、即ち、0.6質量%のミリスチン酸のメチルエステル、5.7質量%のパルミチン酸のメチルエステル、2.0質量%のステアリン酸のメチルエステル、79.0質量%のオレイン酸のメチルエステル及び12.7質量%のリノール酸のメチルエステルの混合物は、−15℃という低い流動点を示す。また、C14(0.5%)、C16(6.3%)、C18(2.9%)、C18:1(74.6%)及びC18:2(15.7%)のメチルエステルの混合物、即ち、0.5質量%のミリスチン酸のメチルエステル、6.3質量%のパルミチン酸のメチルエステル、2.9質量%のステアリン酸のメチルエステル、74.6質量%のオレイン酸のメチルエステル及び15.7質量%のリノール酸のメチルエステルの混合物は、−12℃という低い流動点を示す。さらに、C14(0.7%)、C16(6.7%)、C18(0.4%)、C18:1(75.5%)及びC18:2(16.7%)のメチルエステルの混合物、即ち、0.7質量%のミリスチン酸のメチルエステル、6.7質量%のパルミチン酸のメチルエステル、0.4質量%のステアリン酸のメチルエステル、75.5質量%のオレイン酸のメチルエステル及び16.7質量%のリノール酸のメチルエステルの混合物は、−9℃という低い流動点を示す。さらに、C14(1.6%)、C16(5.0%)、C18(0.7%)、C18:1(72.9%)、C18:2(19.4%)及びC20(0.4%)のメチルエステルの混合物、即ち、1.6質量%のミリスチン酸のメチルエステル、5.0質量%のパルミチン酸のメチルエステル、0.7質量%のステアリン酸のメチルエステル、72.9質量%のオレイン酸のメチルエステル、19.4質量%のリノール酸のメチルエステル及び0.4質量%のアラキン酸のメチルエステルの混合物は、−33℃という低い流動点を示す。
【0043】
本発明において、バイオディーゼル油は、C18メチルエステル、C18エチルエステル、C18:1メチルエステル、C18:1エチルエステル、C18:2メチルエステル、及びC18:2エチルエステルからなる群より選択される少なくとも一種のエステルを含むものである。このような特定のエステルを含むことにより、低温時の流動特性に優れるからである。この際、バイオディーゼル油の流動点は、特に寒冷地で十分な流動性を確保できるものであれば特に制限されないが、例えば、15〜−33℃の範囲内であり、より好ましくは12〜−33℃、さらにより好ましくは12〜−24℃である、または例えば、−9〜−33℃の範囲内であり、より好ましくは−12〜−21℃である。なお、本明細書において、「流動点」は、試験サンプルが水平から傾けた際に移動しない温度より3℃高い温度を意味し、ASTM D97に従って測定された値である。
【0044】
従来のディーゼル油(例えば、C16(45%)、C18(5%)、C18:1(39%)及びC18:2(11%))は、+15℃の流動点を示すものであった。このため、このようなディーゼル油では、寒冷気候の国では固化してしまうため、このような国では使用に適さない。これに対して、上述したように、本発明のパームディーゼル油は、C18、C18:1及びC18:2のメチルまたはエチルエステル混合物を含み、上述したような十分低い流動点を示すため、寒冷気候の国であっても好適に使用できる。
【0045】
本発明の第二の態様は、パーム油、パーム核油、パーム油製品、パーム油核製品及びこれらの混合物からなる群より選ばれる一種由来のメチルエステルおよび/またはエチルエステルを含み、飽和メチルエステルおよび/またはエチルエステルの合計含量が7質量%以下であり、C18:1のメチルエステルおよび/またはエチルエステルの合計含量が70質量%以上である、パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物由来のバイオディーゼル油に関するものである。上述したように、上記したように、飽和メチル/エチルエステルの含量を7質量%以下としかつC18:1の不、飽和メチル/エチルエステルの含量を70質量%以上とした組成を有するバイオディーゼル油は、優れた低温流動性(低い流動点)を有する。
【0046】
本発明の第二の態様において、飽和メチルエステル、エチルエステルは、パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物由来の飽和脂肪酸のメチルまたはエチルエステルであり、例えば、ミリスチン酸のメチル及びエチルエステル等の、C14のメチル及びエチルエステル;パルミチン酸のメチル及びエチルエステル等の、C16のメチル及びエチルエステル;ステアリン酸のメチル及びエチルエステル等の、C18のメチル及びエチルエステルなどがある。これらのエステルは、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0047】
低流動点を示す本発明によるメチルまたはエチルエステルの混合物は、公知の方法を単独であるいは組み合わせることによって製造でき、その製造方法は特に制限されるものではない。具体的には、(a)C18、C18:1及びC18:2からなる群より選ばれる少なくとも一種の脂肪酸をメタノールまたはエタノールでエステル化する工程;(b)パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物からメチルまたはエチルエステルを分留する工程;(c)パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物からメチルまたはエチルエステルを分留し、その後に結晶化を行なう工程;(d)パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物からメチルまたはエチルエステルを結晶化する工程;(e)パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物からメチルまたはエチルエステルを結晶化し、その後に分留を行なう工程などが挙げられる。これらの工程は、単独で使用されてもあるいは2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0048】
したがって、本発明の第三の態様は、(ア)C18、C18:1及びC18:2からなる群より選ばれる少なくとも一種の脂肪酸をエステル化する工程;(イ)パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物からメチルまたはエチルエステルを分留する工程;(ウ)パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物からメチルまたはエチルエステルを結晶化する工程;(エ)パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物からメチルまたはエチルエステルを分留し、その後に結晶化を行なう工程;および(オ)パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物からメチルまたはエチルエステルを結晶化し、その後に分留を行なう工程からなる群より選択される少なくとも一の工程を有するC18、C18:1及びC18:2のメチルまたはエチルエステルを含むバイオディーゼル油の製造方法に関するものである。
【0049】
本発明によるメチル及びエチルエステルは、パーム油、パーム核油、パーム油製品及びパーム核油製品のメチルまたはエチルエステルの分留および/または結晶化によりまたはそれぞれの脂肪酸のメタノールまたはエタノールによるエステル化によって得られる。以下、上記(a)〜(e)を、工程毎に説明する。
【0050】
脂肪酸はパーム油の油脂分解から容易に得られるので、それぞれの脂肪酸(または脂肪酸混合物)をメタノールまたはエタノールにより酸触媒を用いてエステル化反応を行なうことによって、それぞれ、所望のメチルまたはエチルエステルが得られる(工程(a))。上記エステル化工程では、上記したいずれの脂肪酸を使用してもよいが、好ましくはC18:1及びC18:2の脂肪酸が好ましく使用される。この際、脂肪酸は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、上記エステル化工程において使用できる酸触媒は、特に制限されず公知の酸触媒が使用でき、また、これは液体または固体のいずれの形態であってもよい。例えば、濃硫酸、硫酸、濃塩酸、塩酸及びスルホン酸、ならびに固体酸触媒などが挙げられる。これらのうち、濃硫酸、濃塩酸、スルホン酸及び固体酸触媒が好ましく使用される。酸触媒の添加量は、脂肪酸の所望のメチル/エチルエステルに変換できる量であれば特に制限されず公知の量が使用できる。具体的には、酸触媒の添加量は、全混合物に対して、0.5〜1質量%である。さらに、上記エステル化反応条件は、脂肪酸の所望のメチル/エチルエステルに変換できる条件であれば特に制限されず公知の条件が使用できるが、例えば、エステル化反応温度は、110〜160℃である。
【0051】
また、C16のメチルまたはエチルエステルならびにC18、C18:1及びC18:2のメチルまたはエチルエステル混合物は、圧力や温度を制御して分留若しくは結晶化または分留及び結晶化の組み合わせ、即ち、分留後に結晶化または結晶化後に分留のいずれかによって、パーム油、パーム核油、パーム油製品及びパーム核油製品のメチルまたはエチルエステルの分別によって得ることができる(工程(b)〜(e))。C16のメチルエステル画分は、油化学(oleochemical)用途で販売されうる。これらは、高品質のホワイトソープ(white soap)の原料等として使用でき、また、さらにゆるやかに水素化工程で、α−スルホン化メチルエステルの原料としても使用できる。所定の必要条件を満たす流動点(例えば、15〜−33℃、15〜−24℃、0〜−33℃、−9〜−33℃、−12〜−21℃)を有するC18、C18:1及びC18:2のメチルまたはエチルエステルの混合物画分は、温和な国や寒冷な国で生物燃料として使用できる。
【0052】
パーム油のメチルエステルから低流動点のパームディーゼル油を製造する以外では、本発明に開示される方法は、パーム核油のメチルまたはエチルエステルからの低流動点のパームディーゼル油の製造に適用できる。なお、パーム核油のメチル/エチルエステルは、C6(0.3%)、C8(4.4%)、C10(3.6%)、C12(48.3%)、C14(15.6%)、C16(7.8%)、C18(2.0%)、C18:1(15.1%)及びC18:2(2.9%)の脂肪酸のメチル/エチルエステルから構成される。分留及び結晶化の組み合わせ、即ち、分留後に結晶化または結晶化後に分留によって、低流動点のパームディーゼル油が製造できる。
【0053】
工程(b)において、分留工程の条件は、パーム油、パーム核油、パーム油製品及びパーム核油製品から所望のメチル/エチルエステルを分別できる条件であれば特に制限されないが、好ましくは5〜30Paの圧力下で行なわれる。
【0054】
工程(d)において、パーム油、パーム核油、パーム油製品及びパーム核油製品からのメチルまたはエチルエステルの結晶化は、特に制限されず公知の方法によって行なわれる。例えば、徐々に冷却し、また条件を制御しながら、乾式分別(dry fractionation)及び溶剤分別(solvent fractionation)する方法がある。
【0055】
上記(d)結晶化工程において、乾式分別方法は、特に制限されず、公知の方法によって行なわれる。以下に、本発明による乾式分別方法の特に好ましい一実施態様を説明する。すなわち、飽和メチルまたはエチルエステル、即ち、パルミチン酸のメチルまたはエチルエステル及びステアリン酸のメチルまたはエチルエステル、は、不飽和メチルまたはエチルエステル、即ち、オレイン酸のメチルまたはエチルエステル及びリノール酸のメチルまたはエチルエステルから、乾式分別(結晶化)によって分別できる。パーム油のメチルまたはエチルエステルを徐々に冷却してゆっくり攪拌すると、微結晶が形成される。微結晶の懸濁液を膜瀘過にかけると、少なくとも80%の純度を有するC16及びC18のメチルまたはエチルエステルが製造できる。得られた画分を第二の分別段階にかけると、飽和メチルまたはエチルエステルの純度がさらに上がる。同様の方法を、第一の分別段階で得られた濾液に使用することにより、低流動点を有するパームディーゼル油を製造するために、オレイン酸(C18:1)のメチルまたはエチルエステル及びリノール酸(C18:2)のメチルまたはエチルエステルの組成比が高くパルミチン酸(C16)のメチルまたはエチルエステル及びステアリン酸(C18)のメチルまたはエチルエステルの組成比が低いものが製造できる。不飽和メチルまたはエチルエステル含量の多い濾液に数回第二の結晶化段階を行なうことにより得られる残渣画分は、混合して、さらに結晶化することが好ましい。飽和メチルまたはエチルエステル含量の多い残渣を数回第二の結晶化段階を行なうことにより得られる濾液画分は、混合して、さらに結晶化することが好ましい。ゆえに、このようにすれば、出発材料(パーム油、パーム核油、パーム油製品及びパーム核油製品のメチルまたはエチルエステル)のロスがほとんど認められないからである。
【0056】
本発明ではまた、上記(d)結晶化工程において、他の分別工程、即ち、溶剤分別を行なってもよい。この方法によると、飽和メチルまたはエチルエステル、即ち、パルミチン酸のメチルまたはエチルエステル及びステアリン酸のメチルまたはエチルエステルが、不飽和メチルまたはエチルエステル、即ち、オレイン酸のメチルまたはエチルエステル及びリノール酸のメチルまたはエチルエステルから効率よく分別できる。上記(d)結晶化工程において、溶剤分別方法は、特に制限されず、公知の方法によって行なわれる。以下に、本発明による溶剤分別方法の特に好ましい一実施態様を説明する。溶剤分別に使用できる溶剤は、特に制限されず公知の溶剤が使用できる。例えば、上記のような分別が効率的に行なわれる溶剤が適宜選択できる。メタノール、エタノール及びイソプロパノールが、不飽和のメチルまたはエチルエステルから飽和のメチルまたはエチルエステルを溶剤分別による結晶化するための特に好ましい溶剤である。この際、上記アルコールは、単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。上記態様により得られる不飽和メチルまたはエチルエステル画分の好ましい組成は、1〜2%のミリスチン酸のメチルまたはエチルエステル、4〜6%のパルミチン酸のメチルまたはエチルエステル、0〜1%のステアリン酸のメチルまたはエチルエステル、70〜72%のオレイン酸のメチルまたはエチルエステル、20〜22%のリノール酸のメチルまたはエチルエステル及び0〜1%のアラキン酸のメチルまたはエチルエステルである。また、飽和メチルまたはエチルエステル画分の好ましい組成は、0〜0.4%のミリスチン酸のメチルまたはエチルエステル、86〜89%のパルミチン酸のメチルまたはエチルエステル、6〜7%のステアリン酸のメチルまたはエチルエステル、3〜5%のオレイン酸のメチルエステル、1〜2%のリノール酸のメチルエステル及び0〜2%のアラキン酸のメチルまたはエチルエステルである。
【0057】
本発明の第三の態様において、工程(c)及び(e)は、結晶化工程及び分留工程の順番が逆であり、上記工程(エ)に相当するものである。工程(c)及び(e)における、結晶化工程及び分留工程の詳細については、それぞれ、工程(b)及び(d)に記載したのと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0058】
上述したように、本発明は、特定の炭素鎖長及び流動点を有するメチルまたはエチルエステル(C8、C10、C12、C14、C16、C18、C18:1、C18:2及びC20のメチルまたはエチルエステル)の組成物が開示される。流動点は、異なる炭素鎖長のメチルまたはエチルエステルの割合に非常に依存する。オレイン酸のメチルまたはエチルエステル及びリノール酸のメチルまたはエチルエステルを高含量で含む混合物、例えば、C14(0.5%)、C16(4.9%)、C18:1(83.6%)及びC18:2(11.0%)のメチルエステル混合物は、−21℃という低い流動点を示すことが判明した。また、C14(0.6%)、C16(5.7%)、C18(2.0%)、C18:1(79.0%)及びC18:2(12.7%)のメチルエステル混合物は、−15℃の流動点を示す。さらに、C14(0.5%)、C16(6.3%)、C18(2.9%)、C18:1(74.6%)及びC18:2(15.7%)のメチルエステル混合物は、−12℃の流動点を示す。C14(0.7%)、C16(6.7%)、C18(0.4%)、C18:1(75.5%)及びC18:2(16.7%)のメチルエステル混合物は、−9℃の流動点を示す。パーム油、パーム核油、パーム油製品及びパーム核油製品のメチルまたはエチルエステルの混合物が、(1)10%以下の飽和メチルエステル若しくはエチルエステルまたはこれらの混合物、特に、C14のメチルまたはエチルエステル、C16のメチルまたはエチルエステル及びC18のメチルまたはエチルエステル、ならびに(2)90%以上のC18:1及びC18:2のメチルまたはエチルエステル混合物を含む際に、低流動点のパームディーゼル油が達成されうる。
【0059】
低流動点に加えて、C18、C18:及びC18:2のメチルまたはエチルエステル混合物はまた、石油ディーゼル油(petroleum diesel)に類似する他の燃料特性(粘度、引火点、硫黄含量、全燃焼熱量(gross heat of combustion)、残留炭素分、比重及び沸点)を示すため、石油ディーゼル油の代替品として適することが示唆される。C18のメチルまたはエチルエステル混合物の全体的な性能は、定置機関及び現地試験で試験される。
【0060】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。なお、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を示す。
【0061】
実施例1
工業銘柄のオレイン酸(約80%の純度)をメタノールで酸触媒により直接エステル化することによって、ミリスチン酸のメチルエステル(0.5%)、パルミチン酸のメチルエステル(4.9%)、オレイン酸のメチルエステル(83.6%)及びリノール酸のメチルエステル(11.0%)を含むメチルエステルの混合物を得た。このメチルエステル混合物は、−21℃の流動点を示す。これから、これらのC18、C18:1及びC18:2のメチルエステルの混合物は、操作温度が寒冷気候の国などでのように低い、例えば、15℃より低い場合であっても使用できると考えられる。
【0062】
実施例2
0.6%のミリスチン酸のメチルエステル、5.7%のパルミチン酸のメチルエステル、2.0%のステアリン酸のメチルエステル、79.0%のオレイン酸のメチルエステル及び12.7%のリノール酸のメチルエステルからなるメチルエステルの混合物を製造したところ、このメチルエステル混合物は、−15℃の流動点を示す。これから、これらのC18、C18:1及びC18:2のメチルエステルの混合物は、操作温度が寒冷気候の国などでのように低い、例えば、15℃より低い場合であっても使用できると考えられる。
【0063】
実施例3
C18、C18:1及びC18:2のメチルエステルの混合物を、パーム油のメチルエステル(C16(45%)、C18(5%)、C18:1(39%)及びC18:2(11%)から構成される)を真空分留することによって得る。30Paの圧力で、90%のパルミチン酸のメチルエステルを139℃で分別した後、154〜156℃でC18、C18:1及びC18:2のメチルエステルの混合物を分別した。このメチルエステル混合物画分は、0℃以下の流動点を示した。
【0064】
実施例4
本実施例では、異なるグレードのパームディーゼル油の他の製造方法として、パーム油のメチルエステルを部分真空分別法を用いる。25Paの圧力及び145〜154℃の温度で、6.0%のパルミチン酸のメチルエステル、8.5%のステアリン酸のメチルエステル、69.5%のオレイン酸のメチルエステル及び16.0%のリノール酸のメチルエステルからなるメチルエステル混合物を得た。このメチルエステル混合物画分は、0℃以下の流動点を示した。
【0065】
実施例5
パーム油のメチルエステルの結晶化を、パーム油のメチルエステル1質量部をメタノール2質量部中で用いることによって行なった。C16メチルエステルのバルクが、22℃から−12℃に2段階で冷却したところ、パーム油のメチルエステルから結晶化した。残りの不飽和(C18:1及びC18:2)メチルエステル混合物は、−33℃の流動点を示した。この不飽和メチルエステル混合物は、1.6%のミリスチン酸のメチルエステル、5.0%のパルミチン酸のメチルエステル、0.7%のステアリン酸のメチルエステル、72.9%のオレイン酸のメチルエステル、19.4%のリノール酸のメチルエステル及び0.4%のアラキン酸のメチルエステルから構成される。
【0066】
実施例6
パーム油のメチルエステルの結晶化を、パーム油のメチルエステル1質量部をメタノール2質量部中で用いることによって行なった。この混合物を、30分間、+5℃で冷却した。この混合物を吸引瀘過により瀘過し、残渣及び濾液双方を集めた。次に、濾液について第二の結晶化を行なった。この際、濾液を2.5時間、−11℃に冷却した。この段階後の濾液は、高含量の不飽和メチルエステルを含んでおり、具体的には、70〜72%のC18:1メチルエステル及び20〜22%のC18:2メチルエステルを含んでいた。このメチルエステル混合物画分は、−12℃の流動点を示した。また、第一の結晶化段階から集められた残渣を、冷メタノール(+5℃)で洗浄することによって、高含量の飽和メチルエステルを含む組成物を得た。
【0067】
実施例7
溶剤としてメタノールを用いて蒸留されたパーム油のメチルエステルの溶剤結晶化を、1段階チリングによって行なった。この混合物を、2時間、−9℃に冷却した。吸引瀘過後、集めた濾液は、68〜69%のC18:1メチルエステル及び18〜19%のC18:2メチルエステルを含んでいた。このメチルエステル混合物画分は、−9℃の流動点を示した。
【0068】
実施例8
パーム油のメチルエステルの結晶化を、パーム油のメチルエステル1質量部をエタノール2質量部中で用いることによって行なった。第一の結晶化段階では、混合物を30分間、+3℃に冷却した。第二の結晶化段階では、濾液を2.5時間、−9℃に冷却した。瀘過後、濾液は、高含量の不飽和メチルエステルを含んでおり、具体的には、63〜64%のC18:1メチルエステル及び15〜16%のC18:2メチルエステルを含んでいた。このメチルエステル混合物画分は、0℃の流動点を示した。
【0069】
実施例9
パーム油のメチルエステルの結晶化を、パーム油のメチルエステル1質量部をメタノール3質量部中で用いることによって行なった。第一の結晶化段階では、混合物を1時間、+2℃に冷却した。第二の結晶化段階では、濾液を2.5時間、−12℃に冷却した。瀘過により残渣を除去した後、濾液は、高含量の不飽和メチルエステルを含んでおり、具体的には、71〜72%のC18:1メチルエステル及び18〜19%のC18:2メチルエステルを含んでいた。このメチルエステル混合物画分は、−12℃の流動点を示した。なお、第一及び第二の結晶化段階で集められた残渣を冷メタノールで洗浄することによって、高純度の飽和メチルエステル、具体的には、91〜92%のC16メチルエステル及び6〜7%のC18:0メチルエステルが得られた。
【0070】
実施例10
結晶化を、部分分留により得られた画分について行なった。画分は、3.4%のC16メチルエステル、8.8%のC18メチルエステル、71.6%のC18:1メチルエステル及び16.2%のC18:2メチルエステルから構成され、これを30分で、+26℃から0℃に冷却し、−5℃の水浴中で結晶化を行なった。1質量部のメタノールを、この画分1質量部に対して使用した。残渣は、5.6%のC16メチルエステル、84.0%のC18メチルエステル、5.8%のC18:1メチルエステル、1.2%のC18:2メチルエステル及び3.4%C20メチルエステルから構成された。
【0071】
実施例11
0.3%のC12メチルエステル、2.2%のC14メチルエステル、64.5%のC16メチルエステル、2.1%のC18メチルエステル、24.7%C18:1メチルエステル及び6.2%C18:2メチルエステルからなる画分の結晶化を、−5℃の水浴中で行ない、+26℃から+5℃に20分冷却した。このプロセスにより、0.9%のC14メチルエステル、91.5%のC16メチルエステル、1.6%のC18メチルエステル、5.1%のC18:1メチルエステル及び0.9%のC18:2メチルエステルから構成される残渣が得られた。1質量部のメタノールを、1質量部の画分について使用した。
【0072】
実施例12
0.3%のC12メチルエステル、2.2%のC14メチルエステル、64.5%のC16メチルエステル、2.1%のC18メチルエステル、24.7%のC18:1メチルエステル及び6.2%のC18:2メチルエステルから構成される画分の結晶化を、−5℃の水浴中で行ない、+26℃から+5℃に3分で冷却した。このプロセスにより、0.9%のC14メチルエステル、91.4%のC16メチルエステル、2.1%のC18メチルエステル、4.7%のC18:1メチルエステル及び0.9%のC18:2メチルエステルの組成を有する残渣が得られた。2質量部のメタノールを、1質量部の画分について使用した。なお、濾液は、10.7%のC16メチルエステル、4.5%のC18メチルエステル、68.6%のC18:1メチルエステル、15.6%のC18:2メチルエステル及び0.6%のC20メチルエステルから構成された。このメチルエステル混合物画分は、−6℃の流動点を示した。
【0073】
実施例13
0.3%のC12メチルエステル、2.2%のC14メチルエステル、64.5%のC16メチルエステル、2.1%のC18メチルエステル、24.7%のC18:1メチルエステル及び6.2%のC18:2メチルエステルからなる画分の乾式分別による結晶化を、−5℃の水浴中で行ない、+25℃から+10℃に5分で冷却した。このプロセスにより、1.5%のC14メチルエステル、83.0%のC16メチルエステル、2.0%のC18メチルエステル、11.4%のC18:1メチルエステル及び2.1%のC18:2メチルエステルの組成を有する残渣が得られた。なお、濾液は、10.5%のC16メチルエステル、2.4%のC18メチルエステル、70.2%のC18:1メチルエステル、16.1%のC18:2メチルエステル及び0.8%のC20メチルエステルから構成された。このメチルエステル混合物画分は、−6℃の流動点を示した。
【0074】
実施例14
C14(1.0%)、C16(45.0%)、C18(4.1%)、C18:1(39.9%)、C18:2(9.7%)及びC20(0.3%)からなるパーム油のメチルエステルの乾式分別による結晶化を、15時間、+40℃から+8℃に徐々に冷却して行ない、この温度で3時間保持した。結晶懸濁液をメンブレンフィルタープレスで瀘過すると、得られた残渣は、C14(0.8%)、C16(86.0%)、C18(1.8%)、C18:1(8.8%)及びC18:2(2.6%)から構成され、換言すると、88.6%飽和メチルエステル及び11.4%不飽和メチルエステルから構成された。なお、濾液は、C12(0.7%)、C14(2.0%)、C16(25.0%)、C18(2.4%)、C18:1(53.6%)及びC18:2(15.9%)及びC20(0.4%)から構成され、換言すると、30.5%飽和メチルエステル及び69.5%不飽和メチルエステルから構成された。このメチルエステル混合物画分は、6℃の流動点を示した。
【0075】
実施例15
C14(1.0%)、C16(45.0%)、C18(4.1%)、C18:1(39.9%)、C18:2(9.7%)及びC20(0.3%)からなるパーム油のメチルエステルの乾式分別による結晶化を、6時間、+40℃から+9℃に徐々に冷却して行ない、この温度で12時間保持した。結晶懸濁液をメンブレンフィルタープレスで瀘過すると、得られた残渣は、C14(0.9%)、C16(79.7%)、C18(1.9%)、C18:1(13.5%)及びC18:2(4.0%)から構成され、即ち、82.5%飽和メチルエステル及び17.5%不飽和メチルエステルから構成された。なお、濾液は、C12(0.7%)、C14(2.1%)、C16(25.0%)、C18(2.4%)、C18:1(53.2%)及びC18:2(16.0%)及びC20(0.5%)から構成され、即ち、30.8%飽和メチルエステル及び69.2%不飽和メチルエステルから構成された。このメチルエステル混合物画分は、6℃の流動点を示した。
【0076】
実施例16
残渣または飽和メチルエステルの第二の乾式分別による結晶化段階を、実施例15に記載されるのと同様の方法から得られる残渣を用いて行ない、純度を上げた。濾液は、C14(0.9%)、C16(79.7%)、C18(1.9%)、C18:1(13.5%)及びC18:2(4.0%)から構成され、即ち、82.6%飽和メチルエステル及び17.4%不飽和メチルエステルから構成された。この濾液を、4.5時間、+40℃から+24℃に徐々に冷却し、この温度で2.5時間保持した。結晶懸濁液をメンブレンフィルタープレスで瀘過すると、得られた残渣は、C14(0.3%)、C16(95.2%)、C18(1.0%)、C18:1(2.7%)及びC18:2(0.8%)から構成され、即ち、96.5%飽和メチルエステル及び3.5%不飽和メチルエステルから構成された。このようにして得られた高含量(96.5%)の飽和メチルエステルを含む残渣を、さらにゆるやかに水素化した。この際、水素化工程は、ニッケル等の公知の触媒を用いて、50MPa以下の圧力及び300℃以下の温度で行なった。このようにして得られた産物は、ヨウ素価が0.5以下であったため、α−スルホン化メチルエステルの原料として使用できる。なお、濾液は、C12(0.3%)、C14(2.1%)、C16(69.4%)、C18(2.4%)、C18:1(20.6%)及びC18:2(6.0%)から構成され、即ち、73.4%飽和メチルエステル及び26.6%不飽和メチルエステルから構成された。
【0077】
実施例17
C14(1.0%)、C16(45.0%)、C18(4.1%)、C18:1(39.9%)、C18:2(9.7%)及びC20(0.3%)からなるパーム油のメチルエステルの乾式分別による結晶化を、15時間で、+40℃から+12℃に徐々に冷却して行ない、この温度で3時間保持した。結晶懸濁液をメンブレンフィルタープレスで瀘過すると、得られた残渣は、C14(0.7%)、C16(87.9%)、C18(1.6%)、C18:1(7.7%)及びC18:2(2.1%)から構成され、即ち、90.2%飽和メチルエステル及び9.8%不飽和メチルエステルから構成された。なお、濾液は、C12(0.7%)、C14(1.9%)、C16(32.1%)、C18(2.4%)、C18:1(48.3%)及びC18:2(14.3%)及びC20(0.3%)から構成され、即ち、37.4%飽和メチルエステル及び62.6%不飽和メチルエステルから構成され、9〜12℃の流動点を示した。この濾液を、実施例21及び22において第二の乾式分別による結晶化段階にかけた。
【0078】
実施例18
濾液または不飽和メチルエステルの第二の乾式分別による結晶化段階を、実施例17に記載されるのと同様の方法から得られる濾液を用いて行ない、純度を上げた。濾液は、C12(0.7%)、C14(1.9%)、C16(32.1%)、C18(2.4%)、C18:1(48.3%)及びC18:2(14.3%)及びC20(0.3%)から構成され、即ち、37.4%飽和メチルエステル及び62.6%不飽和メチルエステルから構成された。この濾液を、13時間、+40℃から+2℃に徐々に冷却し、この温度で6時間保持した。結晶懸濁液をメンブレンフィルタープレスで瀘過すると、得られた残渣は、C12(1.0%)、C14(1.6%)、C16(54.0%)、C18(2.8%)、C18:1(31.3%)及びC18:2(9.3%)から構成され、即ち、59.4%飽和メチルエステル及び40.6%不飽和メチルエステルから構成された。なお、濾液は、C12(0.8%)、C14(2.2%)、C16(17.8%)、C18(2.3%)、C18:1(58.9%)及びC18:2(17.7%)及びC20(0.3%)から構成され、即ち、23.4%飽和メチルエステル及び76.6%不飽和メチルエステルから構成された。このメチルエステル混合物画分は、3℃の流動点を示した。
【0079】
実施例19
1モルの工業銘柄のオレイン酸(0.5%のC14、5.5%のC16、80.2%のC18:1及び13.8%のC18:2の脂肪酸組成を有する)を、6モルのメタノールで160℃でエステル化した。0.5質量%の濃硫酸を、触媒として用いた。4.5時間反応させた後、未精製物を、傾瀉された水層が中性になるまで、水洗した。乾燥物について、第二のエステル化(再エステル化)を行なった。このエステル化段階は、触媒の使用量を0.3質量%に変更する以外は、第一のエステル化段階と同様であった。第一及び第二のエステル化段階から得られたメチルエステルは、それぞれ、−15℃及び−21℃の流動点を示した。
【0080】
実施例20
C14(0.3%)、C16(95.2%)、C18(1.0%)、C18:1(2.7%)及びC18:2(0.8%)、即ち、96.5%飽和メチルエステル及び3.5%不飽和メチルエステルの組成を有する画分を結晶化から得た。この画分をさらに分留したおよび/または水素化した(水素化工程は、ニッケル等の公知の触媒を用いて、50MPa以下の圧力及び300℃以下の温度で行なった)。この組み合わせ工程によって、97%以上の純度を有するC16メチルエステルおよび/またはC16及びC18メチルエステル混合物が得られ、また、この産物のヨウ素価は0.5以下であった。このため、このようにして得られた産物は、α−スルホン化メチルエステルの原料として使用できる。
【0081】
実施例21
純度を上げるために、実施例17に記載の方法と同様の方法によって得られた濾液を用いて、濾液または不飽和メチルエステルの第二の乾式分別による結晶化工程を行なった。なお、この濾液は、C12(0.7%)、C14(1.9%)、C16(32.1%)、C18(2.4%)、C18:1(48.3%)及びC18:2(14.3%)及びC20(0.3%)から構成され、即ち、37.4%飽和メチルエステル及び62.6%不飽和メチルエステルから構成された。この濾液を、16時間で、+40℃から−4℃に徐々に冷却し、この温度で6時間保持した。結晶懸濁液をメンブレンフィルタープレスで瀘過すると、得られた残渣は、C14(1.5%)、C16(46.5%)、C18(3.9%)、C18:1(37.5%)及びC18:2(10.6%)から構成され、即ち、51.9%飽和メチルエステル及び48.1%不飽和メチルエステルから構成された。なお、濾液は、C12(0.8%)、C14(2.0%)、C16(8.5%)、C18(1.6%)、C18:1(67.9%)及びC18:2(19.2%)から構成され、即ち、12.9%飽和メチルエステル及び87.1%不飽和メチルエステルから構成され、−9℃の流動点を示した。
【0082】
実施例22
純度を上げるために、実施例17に記載の方法と同様の方法によって得られた濾液を用いて、濾液または不飽和メチルエステルの第二の乾式分別による結晶化工程を行なった。なお、この濾液は、C12(0.7%)、C14(1.9%)、C16(32.1%)、C18(2.4%)、C18:1(48.3%)及びC18:2(14.3%)及びC20(0.3%)から構成され、即ち、37.4%飽和メチルエステル及び62.6%不飽和メチルエステルから構成された。この濾液を、16時間で、+40℃から−10℃に徐々に冷却し、この温度で6時間保持した。結晶懸濁液をメンブレンフィルタープレスで瀘過すると、濾液は、90.0%以上の不飽和メチルエステルを含み、−24℃の流動点を示した。
【0083】
実施例23
C12(0.7%)、C14(2.1%)、C16(25.1%)、C18(2.4%)、C18:1(53.2%)、C18:2(16.0%)及びC20(0.5%)のメチルエステルから構成される結晶化によって得られるメチルエステル混合物画分を、分留した。20〜50Paの圧力及び145℃以下の温度では、C16メチルエステルが留去された。残りのメチルエステル混合物画分は、90.0%以上のC18:1及びC18:2メチルエステルを含み、−21℃の流動点を示した。
【0084】
実施例24
本実施例では、C18、C18:1及びC18:2のメチルエステル混合物が、低い流動点を有するのみならず、パーム油のメチルエステルに匹敵する、良好な燃料特性を有することを示す。表1は、メチルエステル混合物の脂肪酸組成を示す。また、表2は、各々の燃料特性を示す。なお、表2に示されるように、比重は、ASTM D1290に従って;硫黄含量は、IP242に従って;粘度は、ASTM D445に従って;流動点は、ASTM D97に従って;全燃焼熱量は、ASTM D2332に従って;引火点は、ASTM D93に従って;残留炭素分は、ASTM D198に従って;さらに、蒸留の初留点は、ASTM D86に従って、それぞれ、測定した。
【0085】
【表1】
Figure 0005010090
【0086】
【表2】
Figure 0005010090
【0087】
【発明の効果】
本発明は、C18メチルエステル、C18エチルエステル、C18:1メチルエステル、C18:1エチルエステル、C18:2メチルエステル、及びC18:2エチルエステルからなる群より選択される少なくとも一種のエステルを含む、パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物由来のバイオディーゼル油に関するものである。本発明のバイオディーゼル油は、15未満の低い流動点を有するため、流動点降下剤等の添加剤を添加せずに、寒冷気候の国でまたは低い操作温度でもディーゼル油として好適に使用できる。加えて、本発明のバイオディーゼル油は、粘度、引火点、硫黄含量、全燃焼熱量、残留炭素分、比重及び沸点等の、良好な燃料特性を有するものである。したがって、従来のディーゼル油の代替品として使用できると期待される。

Claims (6)

  1. イ)パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物からメチルまたはエチルエステルを分留する工程;
    (エ)パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物からメチルまたはエチルエステルを分留し、その後に結晶化を行なう工程;および
    (オ)パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物からメチルまたはエチルエステルを結晶化し、その後に分留を行なう工程、
    からなる群より選択される少なくとも一の工程を有し、
    工程(イ)、(エ)および(オ)の少なくとも一において、分留工程は、5〜30Paの圧力下で行なわれ、工程(イ)、(エ)および(オ)の少なくとも一において、結晶化工程は、乾式分別または溶剤分別を用いて行なわれ
    前記溶剤分別において、メタノール、エタノール及びイソプロパノールからなる群より選択される少なくとも一種のアルコールが使用される
    1〜2質量%のミリスチン酸のメチルおよび/またはエチルエステル、4〜7質量%のパルミチン酸のメチルおよび/またはエチルエステル、0〜3質量%のステアリン酸のメチルおよび/またはエチルエステル、70〜85質量%のオレイン酸のメチルおよび/またはエチルエステル、10〜22質量%のリノール酸のメチルおよび/またはエチルエステル及び0〜1質量%のアラキン酸のメチルおよび/またはエチルエステルからなり(この際、上記組成の全量は100%である)、−12〜−33℃の範囲の流動点を有する、C18、C18:1及びC18:2のメチルまたはエチルエステルを含む、バイオディーゼル油の製造方法。
  2. 前記バイオディーゼル油が、0.5質量%のミリスチン酸のメチルエステル、4.9質量%のパルミチン酸のメチルエステル、83.6質量%のオレイン酸のメチルエステル及び11.0質量%のリノール酸のメチルエステルからなり、−21℃の流動点を有する、請求項1に記載の製造方法
  3. 前記バイオディーゼル油が、0.6質量%のミリスチン酸のメチルエステル、5.7質量%のパルミチン酸のメチルエステル、2.0質量%のステアリン酸のメチルエステル、79.0質量%のオレイン酸のメチルエステル及び12.7質量%のリノール酸のメチルエステルからなり、−15℃の流動点を有する、請求項1に記載の製造方法
  4. 前記バイオディーゼル油が、0.6質量%のミリスチン酸のメチルエステル、6.3質量%のパルミチン酸のメチルエステル、2.9質量%のステアリン酸のメチルエステル、74.6質量%のオレイン酸のメチルエステル及び15.7質量%のリノール酸のメチルエステルからなり、−12℃の流動点を有する、請求項1に記載の製造方法
  5. 前記バイオディーゼル油が、1.6質量%のミリスチン酸のメチルエステル、5.0質量%のパルミチン酸のメチルエステル、0.7質量%のステアリン酸のメチルエステル、72.9質量%のオレイン酸のメチルエステル、19.4質量%のリノール酸のメチルエステル及び0.4質量%のアラキン酸のメチルエステルからなり、−33℃の流動点を有する、請求項1に記載の製造方法
  6. 前記バイオディーゼル油が、パーム油、パーム核油、パーム油製品、パーム核油製品及びこれらの混合物からなる群より選ばれる一種由来のメチルエステルおよび/またはエチルエステルを含み、飽和メチルエステルおよび/またはエチルエステルの合計含量が7質量%以下であり、C18:1のメチルエステルおよび/またはエチルエステルの合計含量が70質量%以上である、パーム油、パーム核油、パーム油製品若しくはパーム核油製品またはこれらの混合物由来の請求項1に記載の製造方法
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