JP4988989B2 - 土壌浄化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は土壌浄化方法に関し、特に、浄化対象土壌に含まれる有機物を、この有機物を分解可能な微生物を用いて除去する土壌浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の土壌浄化方法においては、特に、土壌間隙に地下水等の水分が充満した状態の汚染土壌から有機物を分解除去しようとする場合、酸素不足を解消するために、前記土壌の内部、もしくは土壌下部に空気注入用のパイプや散気盤を埋設し、このパイプから前記土壌中に酸素を含む空気を供給していた。
しかしながら、上述した従来の土壌浄化方法によれば、前記パイプや散気盤から放出された酸素を含んだ気泡は水平方向へあまり拡散せず、又、進入が容易な比較的大きな径の土壌間隙に偏って地表方向に上昇する傾向があり、土壌内部或いは下方から空気を供給しても、浄化対象となる土壌全体に亘って、均一に酸素を供給することは困難であったので、前記微生物による前記有機物の分解を効率よく行なうことは困難であるという問題点があった。
【0003】
そこで、本願発明者らは、上述した問題点を解決すべく、前記土壌間隙中に酸素を含む気体或いは酸素を豊富に溶存する液体を広く流通させる通り道を確保して、浄化対象土壌全体に亘って酸素を行き亘らせる方法として、前記浄化対象土壌中の土壌間隙水を吸引する吸引工程を有する土壌浄化方法や、前記土壌浄化方法において、更に前記吸引工程で吸引した前記土壌間隙水に酸素を添加して前記浄化対象土壌に再供給する供給工程を有する土壌浄化方法を提唱した。
この土壌浄化方法によれば、前記浄化対象土壌中の土壌間隙水を吸引する吸引工程で、前記地下水等の土壌間隙水の移動と比べて前記土壌間隙水の吸引速度を大きくなるように吸引することによって、前記土壌間隙に負圧を形成し、地表や土壌の他の領域から酸素を豊富に含む空気や水を前記土壌間隙に浸透させて、前記土壌間隙に前記酸素供給水を積極的に供給し、浄化対象となる土壌全体に亘って均一に酸素を供給することができた。更に、前記供給工程において、前記吸引工程で吸引した前記土壌間隙水に酸素を添加して、前記負圧が生じた浄化対象土壌に供給することによって、前記土壌間隙に前記酸素供給水を積極的に供給し、浄化対象となる土壌全体に亘って均一に酸素を供給することができた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前掲した、本願発明者らが提唱した土壌浄化方法を用いても、前記浄化対象土壌中の有機物の分解の進行が比較的遅い場合があるという問題点があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記欠点に鑑み、浄化対象土壌に含まれる有機物を微生物を用いて除去する際に、微生物の活動を促進し、浄化対象土壌全体を均一に浄化する土壌浄化方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための本発明の土壌浄化方法の特徴手段は、請求項1に記載されているように、地下水で土壌間隙が満たされた飽和土壌中に、取水部を設けた回収部と前記回収部で回収された土壌間隙水を注入する注入部を備えた供給部とを離間して設け、浄化対象土壌に含まれる有機物を微生物を用いて除去する土壌浄化方法において、前記飽和土壌中にポンプから空気を注入される通気部を設け、前記浄化対象土壌中の土壌間隙水を前記通気部から空気を供給しつつ、前記回収部より吸引する吸引工程を行い、前記吸引工程で吸引した前記土壌間隙水を、前記微生物としてのタール分解微生物による前記有機物としてのタールの除去を阻害する阻害物質であるナフタレンを吸着する活性炭に接触させる吸着工程を行い、前記吸着工程で前記活性炭に接触させた前記土壌間隙水を、前記浄化対象土壌に供給し、前記供給部から前記回収部に向かう土壌間隙水を前記回収部から回収された土壌間隙水と比べて溶存酸素濃度の高い酸素供給用水とする供給工程を行い、土壌中から前記ナフタレンを含むタールを除去する点にある。
【0007】
上記特徴手段において、請求項2に記載されているように、前記土壌間隙水に酸素を添加する酸素添加工程を有することが好ましく、
請求項3に記載されているように、前記阻害物質に前記ナフタレンの誘導体が含まれることが好ましい。
そして、これらの作用効果は、以下の通りである。
【0008】
本願発明者らは、前記浄化対象土壌中の有機物の分解の進行が比較的遅い適用例における、微生物による有機物分解を阻害する機構について、種々の要因について鋭意検討を重ねた。この結果、前記浄化対象土壌が、前記微生物による前記有機物の除去を阻害する阻害物質を含むものであって、特に、前記阻害物質が前記土壌間隙水に溶出した場合に、微生物による有機物分解が抑制されることを明らかにした。
【0009】
詳細には、前述した本願発明者らが提案した土壌浄化方法を前記阻害物質が溶出している前記浄化対象土壌に適用すると、前記浄化対象土壌から吸引された前記土壌間隙水が再び前記浄化対象土壌に供給されるので、前記阻害物質が溶出した前記土壌間隙水に、前記微生物が繰り返し暴露されることになる。すると、酸素の供給が十分に行なわれていても、前記微生物の活動は阻害され或いは死滅し、前記有機物の分解が進行し難くなるものと考えられる。そこで、本願発明者らは、この様な阻害機構を回避すべく鋭意研究を行なった結果、本願発明に想到するに至った。
【0010】
即ち、請求項1に記載されているように、地下水で土壌間隙が満たされた飽和土壌中に、取水部を設けた回収部と前記回収部で回収された土壌間隙水を注入する注入部を備えた供給部とを離間して設け、浄化対象土壌に含まれる有機物を微生物を用いて除去する土壌浄化方法において、前記飽和土壌中にポンプから空気を注入される通気部を設け、前記浄化対象土壌中の土壌間隙水を前記通気部から空気を供給しつつ、前記回収部より吸引する吸引工程を行い、前記吸引工程で吸引した前記土壌間隙水を、前記微生物(タール分解微生物)による前記有機物(タール)の除去を阻害する阻害物質(ナフタレン)を吸着する吸着剤(活性炭)に接触させる吸着工程を行い、前記吸着工程で前記吸着剤に接触させた前記土壌間隙水を、前記浄化対象土壌に供給し、前記供給部から前記回収部に向かう土壌間隙水を前記回収部から回収された土壌間隙水と比べて溶存酸素濃度の高い酸素供給用水とする供給工程を行うと、前記吸引工程によって、吸引された土壌間隙水の体積と移動により他の領域から進入した土壌間隙水の体積の差に基づく負圧が生じ、前記土壌間隙内が前記浄化対象土壌の間隙に存在する流体(液体、気体)を、遠方から吸引箇所に向かって流動させることを促進することができる。そして、前記供給工程において、前記吸引工程で吸引した前記土壌間隙水を前記浄化対象土壌に再度供給することによって、前記吸引工程において負圧が形成された前記土壌間隙に、前記土壌間隙水を積極的に誘導し、前記土壌間隙内をより流動させ易くすることができる。このように、吸引工程と供給工程とを連動させることによって、前記浄化対象土壌の土壌間隙の中で前記土壌間隙水が循環する。ここで、前記土壌間隙水は、前記気泡とは異なって、浮力の影響をあまりうけないで負圧が形成された方向に向かうので、水平方向へも容易に移動し、又、前記浄化対象土壌の細かい間隙の中をも隈なく移動することができる。
このとき、前記供給部の近傍に設けられた通気部から空気が供給されることによって、前記供給部から前記回収部に向かう水流には、前記回収部から回収された土壌間隙水と比べて溶存酸素濃度の高い回収液、即ち、酸素供給用水が流れ、前記飽和土壌の広い範囲に亘って、前記酸素供給用水が浸透する。このようにすることによって、前記飽和土壌内を流動する前記土壌間隙水が酸素キャリアとなって前記土壌間隙の隅々に行きわたり、前記飽和土壌に存在する好気的微生物の生育及び活動を促進することができるので、微生物による有機物分解が促進される。
更に、本願発明者らは、PAH(多環芳香族炭化水素;polycyclic aromatic hydrocarbon)に含まれるクレオソート成分、特に、ナフタレンが、PAHの中でも水に対する溶解度が高く、PAHを分解する微生物の分解活性を阻害することを見出した。従って、阻害物質がナフタレンである場合に、本法を採用することで、高い微生物活性を得ることができる。
【0011】
更に、本法にあっては、吸着工程を設けて、前記吸引工程において吸引した土壌間隙水を、前記微生物による前記有機物の除去を阻害する阻害物質を吸着する吸着剤に接触させてあるので、前記阻害物質を除去した土壌間隙水を前記浄化対象土壌に還流させることができる。
【0012】
従って、前記土壌間隙水の移動に伴って、前記浄化対象土壌の細かい間隙の中からも前記阻害物質を前記処理対象土壌外に移動させ、この阻害物質を吸着剤に吸着させることによって前記土壌間隙水から前記阻害物質を除去した上で、再度、前記処理対象土壌に供給することによって、前記処理対象土壌全体に亘って前記阻害物質の除去を行なうことができる。
これにより、前記阻害物質が土壌間隙水に僅かでも溶出することによって微生物に対して毒性を発揮する物質である場合でも前記微生物による有機物分解を行なうことが出来、且つ、前記吸引工程で前記浄化対象土壌から取り出した前記土壌間隙水を廃棄する必要が無くなるので、廃水処理設備の建設・運転コストを削減することができる。
【0013】
更に、この土壌間隙水を、請求項2に記載してあるように、前記酸素添加工程において酸素を添加して酸素富化し、前記浄化対象土壌中を流動させると、従来法では酸素を運搬することが困難であった微細な土壌間隙や遠隔にある土壌間隙を通過し、酸素供給が困難であった領域にまで速やかに大量の酸素を供給することができる。特に、土壌間隙水の水平方向への移動が容易となることによって、地表から離れた深部や吸引箇所から水平方向に離れた領域にまで酸素を容易に供給することができるので、気泡のみを供給する曝気などの方法では酸素供給が困難であった領域にまで酸素を供給することができる。又、同時に、別個に酸素供給用の水を調達する必要が無くなるので、前記酸素供給用の水の採取、製造、運搬コストを削減することができる。
尚、この酸素添加工程は、酸素富化した流体を供給するという目的を達成するために、前記土壌間隙水が前記浄化対象土壌から吸引され、再供給されるまでの間に行なえばよい。
【0014】
更に,上記特徴手段において、請求項3に記載されているように、前記阻害物質にナフタレンの誘導体を含む場合に、本法を採用することで、高い微生物活性を得ることができる。
尚、前記ナフタレン誘導体とは、前記ナフタレンと類似した構造を有し、類似した性質を示すものをいい、例えば、メチルナフタレン、クロルナフタレン、ニトロナフタレン、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0016】
又、特に、土壌間隙に地下水等の水分が充満した状態の土壌は比重が高く、又、湧出する地下水の除去も同時に行なわなければならないので、掘削が困難であり、地中深くに存在する前記浄化対象土壌まで処理しようとすると、手間と費用が甚大である。従って、上述のように、地下水で土壌間隙が満たされた飽和土壌中に、取水部を設けた回収部と前記回収部で回収された土壌間隙水を注入する注入部を備えた供給部とを離間して設け、浄化対象土壌に含まれる有機物を、微生物を用いて除去することとすれば、前記浄化対象土壌を原位置で処理することができ、前記浄化対象土壌の処理を、迅速に低コストで行なうことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明に係る土壌浄化方法を実施するための原位置レメディエーション設備の一実施形態を示す。
【0018】
この設備が設置される浄化対象土壌1は、表層付近が土壌間隙が水分で飽和されていない不飽和土壌11となっており、この領域では、土壌間隙における酸素供給が比較的容易に行なわれる。この不飽和土壌11の下層には、地下水で土壌間隙が満たされた飽和土壌12が存在する。この飽和土壌12領域では、水の滞留によって前記土壌間隙内での空気の移動が起こり難く、微生物による有機物分解が行なわれ難い。
【0019】
前記原位置レメディエーション設備は、前記飽和土壌12中に取水部(図示省略)を設けた回収部2(例えば、細孔を多数穿設したパイプ、井戸)と、前記飽和土壌12中に注入部(図示省略)を設けた供給部3(例えば、細孔を多数穿設したパイプ、井戸)とを有し、これらを前記浄化対象土壌1中に離間して設けてある。
【0020】
又、前記回収部2と前記供給部3との間には吸着塔5が設けられていて、この吸着塔5の収容部51には、前記微生物の生育や有機物分解活性を阻害する阻害物質を吸着する吸着剤52が内装されている。
【0021】
前記回収部2と前記吸着塔5の収容部51とは回収管21で接続され、ポンプP1を駆動することによって前記回収部2から前記吸着塔5に前記飽和土壌12中の土壌間隙水が搬送されるように構成されている。又、前記収容部51と前記供給部3とは供給管31で接続され、ポンプP2を駆動することによって、前記収容部51を通過した回収液52(土壌間隙水)が前記供給部3に注入されるように構成されている。
【0022】
更に、前記供給部3の近傍の前記飽和土壌12には、ポンプP3から空気を注入される通気部4(例えば、細孔を多数穿設したパイプ)が穿設されており、前記飽和土壌12に対して、空気(気泡)を供給する。
【0023】
前記回収部2、供給部3、通気部4は、浄化対象である土壌に対して、同数ずつ設けてあってもよいが、何れかが他方に対して高い比率で設けられてもよく、これらの設置比率、基数は、土質、浄化範囲、浄化深度などを考慮して定めることができる。
【0024】
上述した原位置レメディエーション設備の前記ポンプP1を駆動すると、前記飽和土壌12中の土壌間隙水(回収液)は、前記回収管21を通じて、前記吸着塔5に移送される。これにより、前記飽和土壌12の土壌間隙は他の領域に比べると減圧状態になり、他の領域から水が流入し易くなる。他方、前記供給部3には、前記吸着塔5から供給管31を通じて前記回収液が流入し、他の領域に比べると加圧状態となり、前記回収液は前記供給部3から遠方に浸透し易くなる。よって、前記回収液は、図1の矢印に示すように、前記供給部3から前記回収部2に向かって略水平方向に流れることとなる。このとき、前記3の近傍に設けられた通気部4から空気が供給されることによって、前記供給部3から前記回収部2に向かう水流には、前記回収部2から回収された土壌間隙水と比べて溶存酸素濃度の高い回収液、即ち、酸素供給用水が流れ、前記飽和土壌12の広い範囲に亘って、前記酸素供給用水が浸透する。このようにすることによって、前記飽和土壌12内を流動する前記土壌間隙水が酸素キャリアとなって前記土壌間隙の隅々に行きわたり、前記飽和土壌12に存在する好気的微生物の生育及び活動を促進することができるので、微生物による有機物分解が促進される。
【0025】
ここで、前記回収液は、前記吸着塔5を一旦通過して前記供給部3に再供給されるものであって、前記吸着塔5を通過する際に、前記収容部51に内装された前記吸着剤52と接触する。このとき、前記処理対象土壌1の土壌間隙水に溶出している前記阻害物質は、前記吸着剤52に吸着される。そして、前記阻害剤52が除去された前記回収液が、酸素を富化された後に前記酸素供給用水として前記供給部3から前記浄化対象土壌1に再供給されるので、前記吸着塔5に土壌間隙水を繰り返し循環させることで、前記土壌間隙水中の前記阻害物質濃度が減少し、これによって、更に、前記微生物の生育、増殖、有機物分解活性等を増強し、浄化対象有機物の分解除去を促進することができる。
【0026】
尚、前記取水部及び前記注入部の設置面積を広くしたり、垂直方向の設置長さを調節することによっても、前記酸素供給用水の浸透範囲や速度を調整することができる。
【0027】
前記微生物は、土着のものでもよいが、特に除去対象となる有機物の分解能力の高い微生物を外部から導入することによって、更に、効率よく有機物の分解が進行する。前記微生物の導入方法としては、地表に散布して前記飽和土壌12への移住を待ってもよいし、前記供給部3、通気部4から、前記回収液や空気と共に前記飽和土壌12に送り込んでもよい。
この場合、添加する微生物の選択は、分解対象である有機物との関係で任意に選択することができる。例えば、分解対象有機物の分解速度が速い微生物、一般の微生物の生育を阻害する濃度の分解対象有機物に抵抗性を示す微生物、他の微生物と協働して有機物分解を促進する微生物などが好適であり、1種だけでなく複数種を混合し或いは浄化処理ステージに合わせて順次添加することができる。
【0028】
又、前述した酸素供給用液の供給は、連続的に行なって循環サイクルを常時形成しておいてもよいが、連続的に循環させなければならないほど酸素要求量が高くない場合、前記阻害物質の溶出速度が遅い場合には、間欠的に前記土壌間隙水を循環させることによって運転コストを削減することができる。
尚、前記供給工程は、前記吸引工程を行なうことによって生じた土壌間隙中の負圧が存在する間に行なうと、前記酸素供給用水の移動が促進されるので好ましい。
【0029】
又、前記浄化対象土壌は、掘削してリアクターに投入してもよい。しかし、地下水などの水分を多量に含んで前記浄化対象土壌の比重が重くなっていることや、湧出した地下水の処理の問題を考えると、掘削することなく原位置で有機物分解を行なうことが効率的であるので好ましい。
【0030】
更には、前記回収液52を前記飽和土壌12に再度供給する際に、除去対象有機物を分解する微生物が好む養分を供給すると、前記微生物による分解効果が高まる。
【0031】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を、浄化による除去対象たる有機物がタールであって、このタールに含まれるナフタレン類(ナフタレン及びその誘導体)が阻害物質である場合を例示して、図面に基づいて説明する。
【0032】
ナフタレン類を多く含むタールを人工的に含有させた浄化対象土壌(タール含浸土壌)を作製し、このタール含浸土壌とタール分解微生物との混合物62のうち50gを分取し、図2に示すように、収容部61を有するカラム6の前記収容部61内部に圧密して収容した。前記収容部61には、上下端に80〜100μmの孔径をもつ焼結ステンレスのフィルタ63、63を取り付けてあって、前記タール含浸土壌が前記収容部61から流出しないようにしてある。さらに、吸着剤としての活性炭71を10g充填した吸着カラム7を設け、この吸着カラム7と前記収容部61の上下端とを送水管81,82により連結して送液ポンプP3で前記送水管81,82内の水溶液を循環させる水溶液循環経路を形成すると共に、前記吸着カラム7と前記収容部61の下端とを連結する前記送水管81に空気供給管9を接続して、エアポンプP4からの酸素供給経路を形成した。このようにして、原位置でのバイオレメディエーション及びリアクターに浄化対象土壌を収容した非スラリー法による土壌処理系を模した実験系を構築し、以下に説明する実験に供した。
【0033】
〔実験例1〕
前記水溶液循環経路に、養分として、0.1%K2HPO4及び0.1%NH4NO3を含有する水溶液(以下、NP培地)を流通させることによって、前記NP培地を、前記カラム6の収容部61内を下部から上部に向かって移動する方向に浸入させ、前記タール含浸土壌の土壌間隙を前記NP培地で満たした。
【0034】
前記送液ポンプP3を駆動して、前記収容部61の内部に、下部から上部に向かって2.0mL/分の流速で前記NP培地を供給した。前記収容部61から放出された前記NP培地を、前記送水管82を通じて前記吸着カラム7に送り、ここで前記吸着カラム7に内装された活性炭71と接触させて、更に、前記送水管81を通じて前記カラム6の収容部61に再度供給した。
尚、このとき、前記エアポンプP4は駆動しておらず、上述した操作は、主として、前記混合物62から前記活性炭に吸着される物質を除去する、洗浄作業であるといえる。
【0035】
上述した洗浄作業を7日間続けた後、前記カラム6から前記混合物62を取り出し、5000rpmで10分間遠心分離して固液分離した。分離した固体(前記混合物52)12gと前記NP培地20mLを300mL容三角フラスコに収容し、通気性のある綿栓で封をして30℃、175rpmで12週間振とう培養した(スラリー処理)。培養開始時及び培養開始から1,2,4,8,12週間後の前記タール含浸土壌中におけるタールの残存量を、その主成分であるPAH濃度を測定してモニタした。
尚、前記PAH濃度は、次のようにして測定した。採取した前記タール含浸土壌をドラフト内で2日以上風乾した。この風乾した前記タール含浸土壌を粉砕し、前記タール含浸土壌1gに対して2mLのアセトニトリルを添加して、60℃で30分間湯浴した後、3000rpmで10分間遠心分離を行ない、これによって得られた上清をHPLCにて分析した。この結果を、図3に示す。
また、前記活性炭71に吸着した物質をトルエン−ソックスレー抽出法によって抽出し、活性炭が吸着したPAHの量と種類をHPLCにて分析した。この結果を、図4に示す。
【0036】
〔比較例1〕
比較のために、上述した洗浄作業を行なっていない前記混合物12gと前記NP培地とを300mL容三角フラスコに収容し、通気性のある綿栓で封をして、30℃、175rpmで、12週間振とう培養した。培養開始時及び培養開始から1,2,4,8,12週間後の前記タール含浸土壌中におけるタールの残存量を、その主成分であるPAHの濃度を測定してモニタした。この結果を、図5に示す。
【0037】
図3に示すように、前記活性炭71に前記NP培地を接触させて前記活性炭71に吸着される物質を除去した実験例1では、前記PAHの約10%が、前記タール含浸土壌から除去されていた。そして、この後のスラリー処理により、前記PAHの約63%が前記タール分解微生物によって分解されていた。
【0038】
一方、比較例1では、図5に示すように、12週間のスラリー処理を経ても、前記タール含浸土壌中のPAH濃度が殆ど変動していなかった。
【0039】
一般に、スラリー処理は培地を攪拌するので酸素供給が活発に行なわれるものであり、又、微生物が分解対象となる有機物と接触する機会が多いことから、微生物による有機物分解が速やかに進行することが知られている。このスラリー処理を施しても、前記比較例1では前記PAHの分解進まなかったことから、前記タールの分解抑制要因が、酸素不足や前記タール成分と前記タール分解微生物との接触不足ではないことが推測される。そして、前記実験例1と前記比較例1との実験条件の違いが前記洗浄作業の有無であることから、前記活性炭71に吸着された物質が、前記タール分解微生物によるタール分解を抑制していると考えられる。
【0040】
ここで、前記実施例1で使用した活性炭71に吸着したPAHは、図4に示すように、主として、2〜4環式PAHであって、特に2環式PAHであるナフタレンが約70%を占めていた。これらのPAHは、難溶性であるPAHのなかで、比較的水に対する溶解度が高いものである。よって、これらのPAHは、前記タール含浸土壌から前記NP培地中に溶出して前記水循環経路内を循環する過程で前記活性炭71に捕捉されたものと考えられる。
従って、実験例1では、ナフタレン等の比較的水溶性の高いPAH類を前記浄化対象土壌1から除去することによって、前記NP培地中のPAH濃度上昇を抑制し、これによって、前記タール分解微生物によるPAH分解が促進されたものと考えられる。
【0041】
〔実験例2〕
実験例2では、前記送液ポンプP3を駆動して、前記収容部61の内部に、下部から上部に向かって2mL/分の流速で前記NP培地を供給しながら、前記エアポンプP4を駆動して、前記空気供給管9から前記NP培地に対して300mL/分の流速で前記収容部61の下部から上部に向かって空気を供給した。
前記収容部61上部から排出された前記NP培地は、前記送液管82を通じて吸着カラム7に運ばれてこれに内装された前記活性炭71に接触し、再び、前記吸着カラム7から前記送液管81を通じて前記収容部61に送られて前記タール含浸土壌に供給した。
【0042】
前記送液ポンプP3は、ここでは、前記NP培地を前記タール含浸土壌から吸引すると同時に、酸素富化した前記NP培地を前記タール含浸土壌に供給する働きがある。前記タール含浸土壌からの前記NP培地の吸引と供給がスムーズに行なわれることによって、前記NP培地は、酸素及び養分のキャリアとして前記タール含浸土壌中を隈なく移動する。
【0043】
この操作を2週間続けた結果、前記タール含浸土壌中の2〜4環式のPAHが約15%減少していた。
【0044】
〔比較例2〕
前記吸着カラム7を設けなかった以外は、実験例2と同じ条件とした比較例2では、2週間の処理後の2〜4員環式のPAHの減少率は約5%であった。
【0045】
実験例2と比較例2との間でも、やはり、吸着剤としての活性炭の有無によって、PAHの分解率が大幅に異なっており、前記活性炭によってナフタレン等を除去することによって、前記タール分解微生物によるタール分解を促進していることがわかる。
【0046】
〔別実施形態〕以下に別実施形態を説明する。
(イ)上記実施例においては、除去対象である有機物を分解する微生物を浄化対象土壌に外部より添加して、その浄化対象土壌に元来生息する土着の微生物の働きを補強したが、本法は、前記浄化対象土壌に生息する土着の微生物を活性化することによって、前記有機物の分解効率を向上させるために用いることもできる。
(ロ)又、前記実施例においては、微生物の栄養源となるNP培地を循環させたが、循環させる流体は、浄化対象となる有機物を分解するのに有用な微生物の栄養要求性を考慮して適宜変更することができる。或いは、浄化対象土壌の土壌間隙から回収した液体を、そのまま再利用してもよく、この液体に栄養分を補給して再供給してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本法の実施形態を表わす概略図
【図2】本法の実施例で使用した土壌浄化モデル系の概略図
【図3】本法によるタール分解結果を表わすグラフ
【図4】本法によるタール成分除去結果を表わすグラフ
【図5】従来法によるタール分解結果を表わすグラフ
【符号の説明】
1 浄化対象土壌
2 回収部
3 供給部
4 通気部
5 吸着塔
11 不飽和土壌
12 飽和土壌
52 吸着剤
Claims (3)
- 地下水で土壌間隙が満たされた飽和土壌中に、取水部を設けた回収部と前記回収部で回収された土壌間隙水を注入する注入部を備えた供給部とを離間して設け、浄化対象土壌に含まれる有機物を微生物を用いて除去する土壌浄化方法において、
前記飽和土壌中にポンプから空気を注入される通気部を設け、前記浄化対象土壌中の土壌間隙水を前記通気部から空気を供給しつつ、前記回収部より吸引する吸引工程を行い、前記吸引工程で吸引した前記土壌間隙水を、前記微生物としてのタール分解微生物による前記有機物としてのタールの除去を阻害する阻害物質であるナフタレンを吸着する活性炭に接触させる吸着工程を行い、前記吸着工程で前記活性炭に接触させた前記土壌間隙水を、前記浄化対象土壌に供給し、前記供給部から前記回収部に向かう土壌間隙水を前記回収部から回収された土壌間隙水と比べて溶存酸素濃度の高い酸素供給用水とする供給工程を行い、土壌中から前記ナフタレンを含むタールを除去する土壌浄化方法。 - 前記土壌間隙水に酸素を添加する酸素添加工程を有する請求項1に記載の土壌浄化方法。
- 前記阻害物質に前記ナフタレンの誘導体を含む請求項1又は2に記載の土壌浄化方法。
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