JP4904755B2 - 画像識別用タグおよび画像識別システム - Google Patents
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このような種々のシステムを実施するためには、特定のタグの画像を識別装置側にテンプレートとして保存しておき、識別装置では、撮像した対象画像全体の中から部分的な画像を部分画像として順次切り出し、その部分画像毎にテンプレートと照合し、両者が一致した場合にタグを識別したという処理(テンプレートマッチング法)を実行することになる(例えば、特許文献1参照)。
一方、非特許文献1、2に記載されるような「方向符号法」も公知である。即ち、「方向符号法」によれば、局所的及び大域的な照明変動にも対応可能であり、部分的な遮蔽にも対応可能である。但し、処理の一層の高速化が求められる。
(1)物流システムや在庫管理システムでは、個々の製品や部品に識別コードを付け、その識別コードを読み取ることにより、製品毎に搬送先を仕分けたり、部品の有無・在庫場所・生産加工履歴などを管理したりしている。
(2)自動化機械やロボットは、対象物の位置と種別などを認識するために特定の識別コードを保持したタグを画像の中から識別している。
(3)薬品などに識別コードを付け、その識別コードを読み取ることにより、投薬ミスを防止している。
(4)家畜や農作物に識別コードを付け、個々の産地・行動範囲・加工過程などを管理してトレーサビリティを確保している。
(5)製品や文書などに印刷されたバーコードなどの識別コードを読み取り、インターネットなどを介して追加情報にアクセスしている。
(1)バーコードによる識別コード
・1次元または2次元の2値パターン(白と黒)として識別コードを表現している。
・読み取り機をバーコードに近付けて、識別コードを読み取る。
(2)特定パターンによる識別コード
・丸、三角、格子模様など特定の模様や標識で識別コードを表現している。
・カメラを模様に向けて、識別コードを読み取る。
(3)RFID(無線タグ)による識別コード
・メモリ内に識別コードを保持している。
・専用読み取り機をRFIDに近付け、識別コードを読み取る。
電波に基づくRFIDの場合は、当該コードが発信する電波が、電波障害を受けずに届く範囲内に読み取り機を近付けなくてはならない。例えば、高電圧機器の付近など電波障害のある場所では使えないという問題がある。また、RFIDの設置位置を正確に検出できないという問題がある。
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたものであって、カメラによる撮像時の照明状態やカメラと撮像対象との相対位置等の影響を受けずに識別することが可能な画像識別用タグおよびそれを用いた画像識別システムを提供することを目的としている。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか1項に記載された画像識別用タグと、この画像識別用タグが付された対象物の画像を撮像可能な撮像手段と、この撮像手段が撮像した画像である対象画像から前記タグを識別するタグ識別手段と、を備えたことを特徴とする画像識別システムを提供する。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記特徴情報を生成するのに用いた画像領域と同じ大きさの部分画像を前記対象画像から順次抽出し、この抽出された部分画像毎に前記比較情報を取得することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の画像識別システムにおいて、前記タグ識別手段は、前記対象画像の各画素毎に、その画素の輝度値と、それに隣接する他の画素の輝度値との差を演算し、その演算結果に基づいて各画素毎の前記比較情報としての前記方向符号を求めることを特徴とする。
請求項13に記載の発明は、請求項11に記載の画像識別システムにおいて、前記特定の信号パターンは、前記所定方向に沿った輝度変化率の変化を表すグラフに現れた波数であることを特徴とする。
請求項15に記載の発明は、請求項11に記載の画像識別システムにおいて、前記信号パターン抽出手段は、前記所定方向に沿った区間での輝度変化率に関する値が所定の閾値の何倍かを示す値を特定の信号パターンとして抽出することを特徴とする。
そして、本発明に係る画像識別システムは、撮像時の照明条件や画像識別用タグと撮像手段との相対位置関係に関係なく、画像識別用タグをより確実で高速に識別することができる。
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。本実施の形態は、本発明に係る画像識別システムをバーコードリーダのシステムに適用したものである。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像識別システムの構成を示す図である。バーコードリーダ1は、倉庫の商品を管理する者が所持し、対象物としての商品10の包装等に印刷されているバーコード11から光学的に情報を読み取る装置であり、撮像手段としてのカメラ2と、このカメラ2が撮像した画像である対象画像が供給されるタグ識別手段としてのタグ識別装置3と、同じく対象画像が供給されるバーコード識別装置4と、を備えている。
なお、タグ識別装置3及びバーコード識別装置4は、この実施の形態ではそれぞれ独立した装置として説明しているが、バーコードリーダ1のカメラ2以外の部分は実際にはコンピュータ及びそれにインストールされたソフトウェアによって実現されるものであり、タグ識別装置3及びバーコード識別装置4も実際にはソフトウェアであってもよい。
ここで、本実施の形態では、商品10の包装には、図3(a)又は(b)に示すような画像識別用のグラデーションタグ12が、バーコード11の一方の対角線上にある二つの角に近接した二箇所に印刷により付されている。
ここで、方向符号とは、例えば、図6に示すように、任意の画素P0を考えたとき、その画素P0に隣接して包囲する八つの画素P1〜P8の各輝度値と、画素P0の輝度値とをそれぞれ比較し、画素P0の輝度値からの増加(又は減少)幅が最も大きな方向を符号化してなる情報である。この場合であれば、紙面に向かって、右方向、斜め右上方向、上方向、斜め左上方向、左方向、斜め左下方向、下方向、斜め右下方向の8方向に、例えば、当該8方向に0〜7の番号を付すことで符号化してなる情報である。そして、この方向符号をグラデーションタグ12の元データ全体に対して求めてそれを2次元データとして保存したものが、タグ方向符号33となる。なお、ここでは画素P0に隣接する8つの画素に注目して8方向としたが、これに限定されることはなく、より多くの方向に、例えば周囲8つの画素の配置された方向それぞれの中間方向も含めて細分化し、この場合は各方向に0〜15の番号を付して、より詳細な符号化をしても構わない。
そして、タグ識別装置3の上記部分画像抽出部31は、タグ方向符号33を生成する際に用いた画像サイズと同じ大きさの部分画像を抽出するようになっており、上記方向符号演算部32は、抽出された部分画像に対してタグ方向符号33を生成する際と同様の手順で演算を行なって部分画像の方向符号を求めるようになっている。
この実施の形態の場合、商品10の包装には二つのグラデーションタグ12が付されているから、タグ座標演算部35は、二つの中心座標(x1,y1),(x2,y2)を取得することになり、それら二つの中心座標(x1,y1),(x2,y2)を、バーコード識別装置4に供給するようになっている。
なお、カメラ2が撮像対象に対して回転した場合でも、360度すべての方向に対して同じように変化する円形のパターンをグラデーションタグ12に持たせているので、タグ識別装置3の処理は影響を受けない。
このため、テンプレートマッチングの際に、1つのテンプレート(タグ方向符号33)を用意することでカメラ2での撮像状況に広く対応でき、計算コストを削減して画像識別処理を高速化できるという効果が得られる。
また、上記記載の理由により、グラデーションタグ12とカメラ2との位置関係及び撮像状況に制約を受けずにグラデーションタグ12を識別できるという効果が得られる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図7は、第2の実施の形態に係るタグ識別装置3の別の機能構成を示すブロック図である。なお、上記実施の形態に記載されている、タグ識別装置3の構成における説明において、既述の部分の説明は適宜省略する。
方向符号比較部34によるテンプレートマッチング処理に先立ち、上記実施の形態における画像識別の処理時間を短縮するために、方向符号演算部32と部分画像抽出部31との間にマスク生成処理部36を配することにより、グラデーションタグ12を照合する範囲が限定されるようになっている。
Min{G,8−G}≦c
但し、G=|OC1−OC2|
すなわち、2つの方向符号の差の絶対値G=|OC1−OC2|を算出し、このG及び(8−G)の内どちらか小さい方の値を、当該2つの画素の方向符号の差として定義し、それが所定の値c以内であれば、同一グループとして分類するようになっている。例えば、OC1=0,OC2=7の場合、上記方向符号の差は1と計算され、c=1の場合には、当該2つの画素P1及びP2は同一グループとして分類される。
こうして得られた全てのグループの中から、予め定めた選出基準によってマスクを選出する。なお、選出基準としては、例えば、グループの占める面積、真円度等が挙げられる。
マスクの生成処理が終了した後に、対象画像データDのうち当該マスクに属する画素に限り、対応する方向符号を部分画像抽出部31によって抽出し、上記方向符号比較部34によるテンプレートマッチング処理を行い、タグ方向符号33との方向符号の照合を行う。
な用途に用いることが可能である。
上記タグ座標演算部35により算出されるグラデーションタグ12の位置情報を得て、アプリケーションに対する“ランドマーク”として利用する。例えば、移動ロボットの進行目標として走行機構を制御する。また、空間的に分割して撮影された画像や時系列的に分割して撮影された画像を重ね合わせる際の、基準点とする。あるいは、複数のカメラやプロジェクタを相互にキャリブレーションする際の、基準点とする。
画像識別用タグは、次のように生成することができる。画像識別用タグの生成処理にあたり、まず画像識別用タグの大きさ(中心点O からの距離r)、パターンの輝度変化曲線(グラデーショングラフ)、パターンの色などに基づいて、画像識別用タグ情報を生成する。また特徴量の指定を受け、その値を算出するために生成する複数の画像識別用タグそれぞれの配置位置を決定する。そして、指定された媒体の上に当該画像識別用タグ情報に基づいて画像識別用タグを印刷する。なお、前記指定された媒体には、紙、ねじのプレート部、シール、電化製品の表面、透明シート等が挙げられる。
このように、安定して識別される高品質の画像識別用タグ情報を、印刷機器の印刷特性に応じて手軽に生成できるという効果が得られる。また、所定の特徴量を算出するための複数の画像識別用タグの配置位置を、煩雑な計算をせずに特定できるという効果が得られる。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図8には、第3の実施の形態に係る画像識別システムの構成を示す。同図に示すように、本実施の形態に係る画像識別システムは、グラデーションタグ12と、カメラ2と、タグ識別装置3とで構成される。
本実施の形態においては、タグ識別装置3は、グラデーションタグ12における所定の方向に沿った輝度変化パターンに基づいて、グラデーションタグ12に予め対応付けられている識別コードを判別する。これにより、グラデーションタグ12やグラデーションタグ12が付された対象物を一意に識別することが可能となる。
信号パターン抽出部37は、グラデーションタグ12の所定方向に沿った輝度変化パターンから特定の信号パターンを抽出する。ここで、所定方向とは、グラデーションタグ12の半径方向と円周方向との少なくとも一方の方向をいう。
識別コード判別部38は、信号パターン抽出部37により抽出された特定の信号パターンに基づいて、グラデーションタグ12と対応付けられている識別コードを特定する。なお、信号パターンと識別コードとを対応付けるための情報は予め記憶部33Aに記憶されている。
次に、タグ識別装置3が備える上記の機能の詳細について、数式を用いて説明する。まず、グラデーションタグ12内の点Pの直交座標(x、y)及び極座標(r、θ)を図9に示すように定義する。この場合、次の関係式が成り立つ。
グラデーションタグ12内の点Pにおける輝度Intは、半径rにのみ依存するので、次のように表せる。
Int(x、y)=I(r) ・・・(3)
そして、半径方向の輝度変化率の符号は正あるいは負の何れかであるが、ここでは正として説明する。このため、次の制約式が成り立つ。
I’(r)=Int(x0+r+1、y0)−Int(x0+r、y0)
また、半径Rのグラデーションタグ12について、グラデーションタグ12の中心(r=0)での輝度をInt(0)、グラデーションタグ12の周縁(r=R)での輝度をInt(R)とすると、次の制約式が成り立つ。
Tの分子=Int(x−1、y+1)+2*Int(x、y+1)+Int(x+1、y+1)−Int(x−1、y−1)−2*Int(x、y−1)−Int(x+1、y−1) (“*”は乗算を表す、以下同様)
Tの分母=Int(x+1、y−1)+2*Int(x+1、y)+Int(x+1、y+1)−Int(x−1、y−1)−2*Int(x−1、y)−Int(x−1、y+1)
点P(x、y)における輝度の最大変化方向θMAXは、式(6)のTを計算して式(7)に代入することにより得られる。
θMAX=tan-1T ・・・(7)
グラデーションタグ12の場合には、式(6)に式(3)を代入し、式(1)及び(2)を使うと、量T及び最大変化方向θMAXは次のようになる。
[半径方向に識別コードに対応した信号パターンを埋め込む方式]
さて、ここで、以下の各実施例において、識別コードに対応する特定の信号パターンを関数I’(r)の中に埋め込むことを考える。
まず、第1の実施例では、識別コードに対応する特定の信号パターンとして、「I’(r)の傾き」を採用する。
即ち、図10に示すような3種類のI’’(r)を用意する。但し、I’’(r)はI’(r)を更にrで微分したものである。それぞれのI’’(r)をrで2回積分すると各々のI(r)が得られる。但し、制約式(4)及び(5)を満たすものとする。そして、それぞれを式(3)に代入して生成される輝度Int(x、y)をもつ3種類のグラデーションタグ12を作成する。このようにして作成されたグラデーションタグ12の一例を図15(a)に示す。
そして、各々を以下のような3種類の識別コード「0」、「1」、「2」に対応付ける。
I’’(r) = 0 ・・・ 「0」
I’’(r) = +c > 0 ・・・ 「1」
I’’(r) = −c < 0 ・・・ 「2」
I’’(r) = I’(r+1)−I’(r) = Int(r+2)−Int(r+1)−Int(r+1)+Int(r) = Int(r+2)−2*Int(r+1)+Int(r)
この実施例のメリットは、識別コードをグラデーションタグ12の検出サイズ(半径R)に依存しないで検出できることである。
次に、第2の実施例について説明する。第2の実施例では、識別コードに対応する特定の信号パターンとして、「I’(r)の形態」を採用する。即ち、図11に示すような5種類のI’(r)の形態を用意する。それぞれのI’(r)をrで1回積分すると各々のI(r)が得られる。但し、制約式(4)及び(5)を満たすものとする。そして、それぞれを式(3)に代入して生成される輝度Int(x、y)をもつ5種類のグラデーションタグ12を作成する。また、グラデーションタグ12の外周の輝度を”0(黒)”にして、そこが当該グラデーションタグ12の周縁であることを明示しておく。このようにして作成されたグラデーションタグ12の一例を図15(b)に示す。
・I’(r)の形態が「平坦」 ・・・「0」
・I’(r)の形態が「矩形波(低→高)」・・・「1」
・I’(r)の形態が「矩形波(高→低)」・・・「2」
・I’(r)の形態が「三角波(低→高)」・・・「3」
・I’(r)の形態が「三角波(高→低)」・・・「4」
なお、I’(r)の形態は上記のものに限られず、例えば三角関数(SIN、COS)やパルス波などでもよい。
あるいは、グラデーションタグ12の中心から周縁まで、例えば水平方向に順次I’(r)の変化率I’’(r)を計算することにより「I’(r)の形態」を得るようにしてもよい。即ち、I’’(r)の値の符号の変化が0、0→+→0、0→−→0、+、−ならば、識別コードはそれぞれ「0」、「1」、「2」、「3」、「4」と判別できる。
なお、上記のいずれの水平方向もこれに限らず、上下左右などいくつかの方向に順次I’(r)の変化率を計算し、各方向の多数決をとるようにしてもよい。複数の方向について計算することにより、検出されたグラデーションタグ12に視覚歪があった場合でも、その影響を受けにくくなるというメリットがある。また、グラデーションタグ12の一部に汚れなどが付着し、グラデーションタグ12が部分的に遮蔽された場合でも、複数の方向について計算することによりその影響を受けにくくなるというメリットがある。
この実施例のメリットは、カメラ2によるグラデーションタグ12の撮像条件に影響されず、安定して識別コードが検出できることである。
第3の実施例では、識別コードに対応する特定の信号パターンとして、「I’(r)の波数」を採用する。即ち、グラデーションタグ12の半径Rを1周期とする波形を考える。このような波形として例えば、矩形波(低→高)あるいは三角波(低→高)などから選択すればよい。但し、I’(r)>0の制約は満たすようにする。この波形の周期を1/2にすると、半径Rの中に2つの波形が入る。一般に、この波形の周期を1/nにすると、半径Rの中にn個の波形が入る。
あるいは、グラデーションタグ12の中心から周縁まで、例えば水平方向に順次I’(r)の変化率を計算することにより低→高の変化を検出しその回数を計数して「I’(r)の波数」を得るようにしてもよい。
グラデーションタグ12の周縁までの半径Rは、グラデーションタグ12の中心から、例えば水平方向に順次I’(r)の値を計算し、正から負に大きく変化するときのrとして検出できる。
この実施例のメリットは、識別コードの種類を増やせることである。
第4の実施例では、識別コードに対応する特定の信号パターンとして、「I’(r)のビット列」を採用する。即ち、まず、グラデーションタグ12の半径RをN等分する。そして、これらN個の区間において、それぞれ所定の閾値G0に比べて大きな値G+あるいは閾値G0に比べて小さな値G−の何れかをI’(r)に割り付ける。但し、I’(r)>0の制約は満たすようにする。また、閾値G0は例えば、125(0〜255の中間値)に設定する。
半径Rの中に1個のG0と(N−1)個のG+ないしはG−の値を含むような2(N-1)種類のI’(r)を用意する。それぞれのI’(r)をrで1回積分すると各々のI(r)が得られる。但し、制約式(4)及び(5)を満たすものとする。そして、それぞれを式(3)に代入して生成される輝度Int(x、y)をもつ2(N-1)種類のグラデーションタグ12を作成して、各々を2(N-1)種類の識別コード「n」(n=0〜2(N-1)−1)に対応付ける。また、グラデーションタグ12の外周の輝度を“0(黒)”にして、そこが当該グラデーションタグ12の周縁であることを明示しておく。図15(d)には、このようにして作成されたグラデーションタグ12の一例を示す。
この実施例のメリットは、識別コードの種類を大幅に増やせることである。
第5の実施例では、識別コードに対応する特定の信号パターンとして、「I’(r)の数値列」を採用する。即ち、グラデーションタグ12の半径RをN等分する。そして、これらN個の区間において、それぞれ所定の閾値G0に対してk倍(k=1、2,・・・,K−1,K)の大きさの値Gkの何れかをI’(r)に割り付ける。但し、I’(r)>0の制約は満たすようにする。また、閾値G0は例えば、50に設定する。そして、I’(r)の最初の区間(0<=r<R/N)には基準となる閾値G0を必ず割り付ける。
半径Rの中に1個のG0とN−1個のGkの値を含むようなK(N-1)種類のI’(r)を用意する。それぞれのI’(r)をrで1回積分すると各々のI(r)が得られる。但し、制約式(4)及び(5)を満たすものとする。そして、それぞれを式(3)に代入して生成される輝度Int(x、y)をもつK(N-1)種類のグラデーションタグ12を作成して、各々をK(N-1)種類の識別コード「n」(n=0〜K(N-1)−1)に対応付ける。また、グラデーションタグ12の外周の輝度を”0(黒)”にして、そこが当該グラデーションタグ12の周縁であることを明示しておく。図15(e)には、このようにして作成されたグラデーションタグ12の一例を示す。
この実施例のメリットは、識別コードの種類を格段に増やせることである。
第6の実施例では、識別コードに対応する特定の信号パターンとして、「I’(r)に基づく複比」を採用する。即ち、I’(r)として3個所(r=R1、R2、R3)の変化点をもつ波形を用意する。このような波形として例えば、矩形波(低→高→低→高)あるいは階段波(低→中→高→より高)などから選択すればよい。但し、I’(r)>0の制約は満たすようにする。図12の右端に示したものは、3個所の変化点(低→高、高→低、低→高)をもつ矩形波の一例である。
ここで一直線上の4点0,1,2,3に関する複比は、次の式で計算される。
(L12*L03)/(L02*L13)
よく知られているように、上記の複比は幾何学的不変量である。即ち、一直線上に並んだ4点0,1,2,3を如何なる距離や方向から撮像しても、その画像から当該4点を検出し、それらで挟まれた区間の長さLijを計算し、上記の複比を計算すると、その値は一定(不変)である。
{(R2−R1)*R3}/{R2*(R3−R1)}
半径R1、R2、R3の3個所に変化点をもつ波形を含むようなI’(r)を用意する。このI’(r)をrで1回積分するとI(r)が得られる。但し、制約式(4)及び(5)を満たすものとする。そして、それぞれを式(3)に代入して生成される輝度Int(x、y)をもつグラデーションタグ12を作成して、上記の複比の値を識別コードとして対応付ける。
{(r2−r1)*r3}/{r2*(r3−r1)}
あるいは、グラデーションタグ12の中心から、例えば水平方向に順次I’(r)の変化率を計算することにより低→高或いは高→低に変化する3個所のr(r1、r2、r3)を検出し、「I’(r)に基づく複比」を得るようにしてもよい。
識別コード=[CR/Q]
但し、[a]は、実数aの小数点以下を切り捨てた整数を表す。
この実施例のメリットは、グラデーションタグ12の検出サイズ(半径R)に依存せず、またグラデーションタダ12撮影時の視覚歪の影響を受けずに、識別コードを安定して検出できることである。更に、3つの半径R1、R2、R3の組み合わせにより.識別コードを大幅に増やせることである。
なお、上述した各実施例においては、半径方向の輝度変化率I’(r)が正であるとして説明したが、負の場合も同様に説明できることは明らかである。
次に、グラデーションタグ12の円周方向に識別コードに対応した特定の信号パターンを埋め込む方式について説明する。
グラデーションタグ12の輝度Intは、主に半径rに依存するが、円周角θにも依存するようにする。即ち、
Int(r、θ)=I(r)+α*J(θ) ・・・(9)
そして、半径方向の輝度変化率の符号は正あるいは負の何れかであるが、ここでは正として説明するので、上述した式(4)の制約式が成り立つ。
J(θ+2π)=J(θ) ・・・(10)
なお、係数αは、輝度Int(x、y)が円周方向の輝度変化により所定の値域(例えば0〜255)を超えないようにすると共に、円周方向の輝度変化がグラデーションタグ12の検出を妨げないようにするためのものであり、グラデーションタグ12の使用環境や撮像条件に応じて調整できるようにしている。
グラデーションタグ12内の点Pにおける円周方向の輝度変化率J’(θ)は、グラデーションタグ12の画像から次のようにして計算できる。中心角θの刻み幅をΔθとする。例えば、Δθを1度(0.017ラジアン)とする。
一方、J’(θ)を使うと、照明変動の影響が少なくなり、J(θ)の特徴的なパターンを抽出し易くなるというメリットがある。
なお、中心が(x0、y0)のグラデーションタグ12において、輝度Int(r、θ)は、上述した式(1)及び(2)の関係を使うと、次のx’、y’をアドレスにもつ画素P(x’、y’)の輝度Int(x’、y’)を読み出せばよい。
x’ = x0+r*COSθ
y’ = y0+r*SINθ
<第1の実施例>
第1の実施例では、識別コードに対応する特定の信号パターンとして、「J(θ)の形態」を採用する。即ち、以下のような5種類のJ(θ)を用意する。そして、それぞれを式(9)に代入して生成される輝度Int(r、θ)をもつ5種類のグラデーションタグ12を作成する。図21(a)には、このようにして作成されたグラデーションタグ12の一例を示す。なお、半径方向のグラデーションとして、例えばI’(r)=c(定数)、即ち、I(r)は一定の割合cで単調増加するようにしておく。但し、I’(r)は定数に限られることはなく、I’(r)>0であれば任意の関数でよい。
J(θ)の形態が「平坦」・・・「0」
J(θ)の形態が「周期2πの矩形波(低→高)」・・・「1」
J(θ)の形態が「周期2πの矩形波(高→低)」・・・「2」
J(θ)の形態が「周期2πの三角波(低→高)」・・・「3」
J(θ)の形態が「周期2πの三角波(高→低)」・・・「4」
なお、J(θ)の形態は上記のものに限られず、例えば三角関数(SIN、COS)やパルス波などでもよい。
この実施例のメリットは、カメラ2によるグラデーションタグ12の撮像条件に影響されず安定して識別コードが検出できることである。
第2の実施例においては、識別コードに対応する特定の信号パターンとして、「J(θ)の波数」を採用する。即ち、J(θ)の波形として例えば、三角関数(SINまたはCOS)あるいは矩形波(低→高)あるいは三角波(低→高)などから選択すればよい。但し、J(θ+2π)=J(θ)の制約は満たすようにする。
この波形の周期を1/2にすると、円周の中に2つの波形が入る。一般に、この波形の周期を1/nにすると、円周の中にn個の波形が入る。
さて、タグ識別装置3により当該グラデーションタグ12が検出されたとき、その「J(θ)の波数」は、グラデーションタグ12内の半径r0において、例えば、水平方向をθ=0として順次Int(r0、θ)の値を0<=θ<=2πにおいて比較することにより、低→高の変化の回数を計数することにより得られる。
なお、上記のいずれの水平方向もこれに限らず、上下左右などいくつかの方向にθ=0を設定し、Int(r0、θ)の値あるいはJ’(θ)の変化率を順次計算し、各方向の多数決をとるようにしてもよい。
また、上記の説明では、読み出す半径をr0に固定したが、これに限られない。複数の半径r1、r2、・・・について、上記のような計算を行い、各半径の多数決をとるようにしてもよい。グラデーションタグ12の一部に汚れなどが付着し、グラデーションタグ12が部分的に遮蔽された場合でも、複数の半径について計算することによりその影響を受けにくくなるというメリットがある。
この別の実施例のメリットは、識別コードの種類を増やせることである。
第3の実施例においては、識別コードに対応する特定の信号パターンとして、「J(θ)のビット列」を採用する。
即ち、グラデーションタグ12の円周をN等分する。そして、これらN個の区間において、それぞれ所定の閾値G0に比べて大きな値G+あるいは閾値G0に比べて小さな値G−の何れかをJ(θ)に割り付ける。但し、ビット列の先頭を明示するために、G0を1つだけ割り付ける。そして、例えば、そこから反時計回りに第1ビット、第2ビット、・・・、とする。なお、J(θ+2π)=J(θ)の制約は満たされている。また、閾値G0は例えば、125(0〜255の中間値)に設定する。
円周の中に1個のG0と(N−1)個のG+ないしはG−の値を含むような2(N-1)種類のJ(θ)を用意する。そして、それぞれを式(9)に代入して生成される輝度Int(r、θ)をもつ2(N-1)種類のグラデーションタグ12を作成する。なお、半径方向のグラデーションとして、例えばI’(r)=c(定数)即ち、I(r)は一定の割合cで単調増加するようにしておく。但し、I’(r)は定数に限られることはなく、I’(r)>0であれば任意の関数でよい。図21(c)には、このようにして作成されたグラデーションタグ12の一例を示す。
さて、当該グラデーションタグ12が検出されたとき、その「J(θ)のビット列」は、図18に示すように、グラデーションタグ12内の半径r0において円周をN等分し、例えば、水平方向をθ=0として順次Int(r0、θ)の値をθ=k*2π/N(k=0,1,2、・・・N−1)において閾値G0と比較することにより得られる。
但し、グラデーションタグ12の画像から読み出されるInt(r0、θ)にはI(r0)が含まれている。しかし、これはすべての0<=θ<=2πについて一定である。従って、上記のように閾値G0はN個の内、唯1度だけ現れる値として或いは中間値として識別でき、閾値G0の区間のInt(r0、θ)の値を他の区間のものと順次比較することにより、ビット(G+かG−か)の判定はできる。
この変形例では、先頭ビットの並びから1ビットの角度を算出するようにしたので、ビット数Nを予め固定する必要がなく、任意のビット数の信号パターンを同一の処理で検出できるというメリットがある。
この実施例のメリットは、識別コードの種類を大幅に増やせることである。
第4の実施例においては、識別コードに対応する特定の信号パターンとして、「J(θ)の数値列」を採用する。
即ち、グラデーションタグ12の円周をN等分する。そして、これらN個の区間において、それぞれ所定の閾値G0に対してk倍(k=1,2,3,・・・,K−1,K)の大きさの値Gkの何れかをJ(θ)に割り付ける。但し、ビット列の先頭を明示するために、J(θ)=0を1つだけ割り付け、続く区間にG0を1つだけ割り付ける。そして、例えばそこから反時計回りに第1ビット、第2ビット、・・・とする。なお、J(θ+2π)=J(θ)の制約は満たされている。また、閾値G0は例えば、50に設定する。
さて、当該グラデーションタグ12が検出されたとき、その「J(θ)の数値列」は、グラデーションタグ12内の半径r0において円周をN等分し、例えば水平方向をθ=0として順次Int(r0、θ)の値をθ=k*2π/N(k=0,1,2、・・・N−1)において読み出し、それを閾値G0で除することにより得られる。
なお、上記の水平方向はこれに限らず、上下左右などいくつかの方向にθ=0を設定し、Int(r0、θ)の値を順次計算し、各方向の平均をとるようにしてもよい。複数の方向について計算することにより、J(θ)を設計したときのθ=0の方向と、検出されたグラデーションタグ12に対して計算するときのθ=0の方向とがズレた場合でも、その影響を受けにくくなるというメリットがある。
この実施例のメリットは、識別コードの種類を格段に増やせることであるというメリットがある。
第5の実施例においては、識別コードに対応する特定の信号パターンとして、「J(θ)の周波数成分」を採用する。
即ち、J(θ)の波形として、三角関数の合成波を採用する。例えば、J(θ)を基本周期2πの1/N倍までの周期をもつN個のSIN波を合成したものとする。即ち、
なお、ここでは、SIN波のみを合成してJ(θ)を作成したが、これに限られることはなく、COS波のみあるいはSIN波とCOS波を合成してJ(θ)を作成してもよい。なお、J(θ+2π)=J(θ)の制約は満たされている。
さて、当該グラデーションタグ12が検出されたとき、その「J(θ)の周波数成分」は、グラデーションタグ12内の半径r0において、例えば水平方向をθ=0として順次Int(r0、θ)の値を0<=θ<=2πにおいて読み出し、次のように計算することにより得られる。
周期2π/kのSIN波の周波数成分ak(k=1〜N)は、Int(r0、θ)とSIN(kθ)の積を円周に渡って積和すれば求められる。積和をとるとき、θの刻み幅は、例えば1度(0.017ラジアン)とする。即ち、
別の計算方法として、グラデーションタグ12内の半径r0において、例えば水平方向をθ=0として順次J’(θ)とCOS(kθ)の積を円周に渡って積和することにより「J(θ)の周波数成分」を得るようにしてもよい。即ち、
輝度自体Int(r、θ)ではなく、円周方向の輝度変化率J’(θ)を用いることにより、グラデーションタグ12を撮像する際に照明変動(部分的なハイライトや陰影など)があっても、その影響を受けにくくなるというメリットがある。
なお、上記のいずれの水平方向もこれに限らず、上下左右などいくつかの方向にθ=0を設定し、Int(r0、θ)の値あるいはJ’(θ)の値を順次計算し、各方向の平均をとった後{A0,A1,...,AM−1}に量子化するようにしてもよい。複数の方向について計算することにより、J(θ)を設計したときのθ=0の方向と、検出されたグラデーションタグ12に対して計算するときのθ=0の方向とがズレた場合でも、その影響を受けにくくなるというメリットがある。
この実施例のメリットは、信号パターンの先頭位置を意識することなく識別コードを計算でき、また識別コードの種類を増やせることである。
第6の実施例では、識別コードに対応する特定の信号パターンとして、「J(θ)の周波数成分の有無」を採用する。
即ち、J(θ)の波形として、三角関数の合成波を採用する。例えば、上述した式(12)に示すような、基本周期2πの1/N倍までの周期をもつN個のSIN波を合成したものとする。
ここで、ak(k=1〜N)はそれぞれ周期2π/kのSIN波の周波数成分である。そして、akが取り得る値を{0,1}の2種類とする。即ち、{a1,a2,・・・、aN}はN桁の2進数と見なせる。
それぞれ2個の値を取り得る周波数成分をもったN個のSIN波を合成した2N種類のJ(θ)を用意する。そして、それぞれを式(9)に代入して生成される輝度Int(r、θ)をもつ2N種類のグラデーションタグ12を作成する。なお、半径方向のグラデーションとして、例えばI’(r)=c(定数)即ち、I(r)は一定の割合cで単調増加するようにしておく。但し、I’(r)は定数に限られることはなく、I’(r)>0であれば任意の関数でよい。図21(f)には、このようにして生成されたグラデーションタグ12の一例を示す。
さて、当該グラデーションタグ12が検出されたとき、その「J(θ)の周波数成分の有無」は、グラデーションタグ12内の半径r0において、例えば水平方向をθ=0として順次Int(r0、θ)の値を0<=θ<=2πにおいて読み出し、次のように計算することにより得られる。
周期2π/kのSIN波の周波数成分ak(k=1〜N)は、Int(r0、θ)とSIN(kθ)の積を円周に渡って積和すれば求められる。即ち、
ak<Aならば、k番目の周波数成分は「無」
ak>=Aならば、k番目の周波数成分は「有」
別の計算方法として、グラデーションタグ12内の半径r0において、例えば、水平方向をθ=0として順次J’(θ)とCOS(kθ)の積を円周に渡って積和することにより「J(θ)の周波数成分の有無」を得るようにしてもよい。即ち、
このようにして得られたakを予め設定しておいた閾値Aと比較し、k番目の周波数成分の有無を次のように判定する。
ak<Aならば、k番目の周波数成分は「無」
ak>=Aならば、k番目の周波数成分は「有」
なお、J’(θ)は上述した式(11)によって計算される。
これまでの説明では、信号パターンとして基本周期2πの1/N倍までの周期をもつN個のSIN波を合成したが、これに限られない。信号パターンとして基本周期2πの1/Nmin倍から1/N倍までの周期をもつ(N−Nmin+1)個のSIN波を合成してもよい。例えば、Nmin=3と設定した場合、周期2π、πそれぞれをもつSIN(θ)、SIN(2*θ)は使わない。そして、SIN(3*θ)からSIN(4*θ)、SIN(5*θ)、・・・、SIN(N*θ)までの(N−2)個のSIN波を合成する。
低周波成分(1〜Nmin−1)を使用しないようにすることにより、グラデーションタグ12の中心位置の検出誤差やグラデーションタグ12の画像に視覚歪がある場合でも、その影響を受けにくくなるというメリットがある。
この実施例のメリットは、信号パターンの先頭位置を意識することなく計算でき、グラデーションタグ12の撮像条件が変動しても影響を受けにくく、また識別コードの種類を増やせることである。
第7の実施例においては、上述した円周方向に信号パターンを埋め込む方式の実施例である<第1の実施例>〜<第6の実施例>の各々について、信号パターンJ(θ)を半径に応じて増加させるようにする。即ち、
Int(r、θ)=I(r)+α*W(r)*J(θ) ・・・(15)
ここで、W(r)は半径rによって決まる重みである。
W(r)として、例えばグラデーションタグ12の半径Rに対するrの割合のK次多項式を採用する。即ち、
W(r)を掛けることを除いて、信号パターンJ(θ)の設定の仕方及び検出されたグラデーションタグ12からの算出の仕方は、それぞれ上記の<第1の実施例>〜<第6の実施例>と同一である。
上述した円周方向に信号パターンを埋め込む方式の実施例である<第1の実施例>〜<第6の実施例>の各々について、予め定めた半径R0以内では信号パターンJ(θ)を載せないようにする。即ち、式(15)において、W(r)として、例えば次のような折れ線型の関数を採用する。即ち、
W(r)を掛けることを除いて、信号パターンJ(θ)の設定の仕方及び検出されたグラデーションタグ12からの算出の仕方は、それぞれ上記の<第1の実施例>〜<第6の実施例>と同一である。
なお、上述した各実施例においては、半径方向の輝度変化率I’(r)が正であるとして説明したが、負の場合も同様に説明できることは明らかである。
次に、本発明の第4の実施の形態においては、グラデーションタグ12の輝度パターンに対して、予め輝度の上限値あるいは下限値あるいは上下限値を設定する。
半径Rのグラデーションタグ12において、その中心(r=0)で輝度Intは最小値Iminをとり、またその周縁(r=R)で輝度Intは最大値Imaxをとるものとすると、次の関係が成立する。
ところが、このグラデーションタグ12を撮像すると、一般にカメラ2の絞りが働くために、画像の輝度は補正される。ここでは簡単のために、画像の輝度Ic(r)が実際の輝度Int(r)の定数(k)倍されたものとする。即ち、
Ic(r) = k*I(r)
k>1(露出オーバー)の場合、グラデーションタグ12の周縁付近(r=〜R)でI(r)の値が大きいときは、Ic(r) = k*I(r) = 255(r>Ro)となることがある。この場合、Ic’(r) = 0となり、I’(r) > 0の制約を満たせないので、グラデーションタグ12を検出できない。
本実施の形態のメリットは、グラデーションタグ12の輝度パターンに対して、予め輝度の上限値あるいは下限値あるいは上下限値を設定することにより、グラデーションタグ12を撮像する時の絞りの影響を受けずに、グラデーションタグ12の検出性能が向上することである。
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。上述した第1〜第4の実施の形態においては、2次元の平面状のグラデーションタグ12について説明してきたが、3次元の球状のタグ(以下、「グラデーションボール120」という)においても本発明を適用可能であることを説明する。
以下では、グラデーションボール120について数式を用いて記述する。
まず、グラデーションボール120内の点Pの直交座標(x、y、z)及び極座標(r、Φ、θ)を図22に示すように定義する。
いま、グラデーションボール120の中に微粒子を分布させる。そして、微粒子の密度(体積当たりの濃度)は、球中心からの距離にのみ依存させるものとする。密度(体積当たりの微粒子濃度)をD(r)と記述する。
この円形の輝度が、第1〜第4の実施の形態において述べたグラデーションタグ12の要件、即ち輝度が円中心からの半径rのみに依存し、単調に増加または減少することを以下に説明する。
円中心から半径rにある点の輝度は、グラデーションボール120の中心から距離rにあって観測視線と平行な柱に含まれる微粒子の濃度(総数)N(r)に依存する。
ここでN(r)は、次の式で表される。但し、Rはグラデーションボール120の半径である。
そこで、D’(r)の符号を非正、即ち微粒子の密度を半径に治って一定に保つ(D’(r)=0)或いは減少させる(D’(r)<0)ようにすれば、式の第2項の符号は非正となる。
このとき、式(20)全体が表すN(r)の変化率N’(r)は常に負となる。即ち、グラデーションボール120を撮像して観測された円形の半径rにおける輝度を決める微粒子の濃度(総数)N(r)は、単調減少することになる。
次にグラデーションボール120の作製方法について説明する。
第1の実施例では、透明な媒体(例えばガラス)の中に、吸光性(光を吸収する性質)の微粒子(例えば炭素の微粒子)を均一の密度で溶かしたものを、球形に整形する。
均一密度をD(r)=C、従ってD’(r)=0と置くと、上記の式(19)及び(20)はそれぞれ以下のようになる。
式(22)に示すように、半径rが増加するとN(r)が単調減少するので、輝度Int(r)が単調増加するグラデーションの画像が観測される。この画像は、第1〜4の実施の形態におけるグラデーションタグ12の輝度変化パターンを有する。この観測された画像は、第1〜4の実施の形態で説明したタグ識別装置3により検出される。
なお、ここでは吸光性の微粒子を均一密度で分散させて作製する例について説明したが、これに限られることはない。
この場合、D’<0であるから、式(20)の符号は負となる。従って、当該グラデーションボール120をカメラ2で撮像すると輝度単調増加型のグラデーションの画像が観測され、タグ識別装置3により検出される。
第2の実施例では、透明な媒体(例えばガラス)の中に、撥光性(光を反射する性質)の微粒子(例えば金の微粒子)を均一の密度で溶かしたものを球形に整形する。
均一密度をD(r)=C、従ってD’(r)=0と置くと、上記の式(19)及び(20)はそれぞれ(21)及び(22)のようになる。
このグラデーションボール120に光を当て、その反射光をカメラ2で撮像すると、円形が観測される。そして、その中心からrにある点では、N(r)が増大すると撥光量が増大するので輝度Int(r)は増加する。また、N(r)が減少すると撥光量が減少するので輝度Int(r)は減少する。
なお、ここでは撥光性の微粒子を均一密度で分散させて作製する例について説明したが、これに限られることはない。
この場合、D’(r)<0であるから、式(20)の符号は負となる。従って.当該グラデーションボール120をカメラ2で撮像すると輝度単調減少型のグラデーションの画像が観測され、タグ識別装置3により検出される。
この場合、グラデーションボール120に光を当てなくても、自ら発光するのでそれをカメラ2で撮像するようにしてもよい。
また、第1および第2の実施例では、透明な媒体の中に微粒子を分布させる例について説明したが、これに限られることはない。
完全に透明ではない材料でグラデーションボール120を作製し、その透過光を観測すると輝度単調増加型のグラデーションタグ12の画像が観測され、タグ識別装置3により検出される。
これに対して、本実施の形態に係るグラデーションボール120は球なので、カメラ2でどの方向から撮像しても同じグラデーションが観測される。即ち、グラデーションボール120はカメラ2による撮像方向にまったく影響されずに,安定して検出することができるという効果がある。
ここで、グラデーションボール120を個々に識別することを考える。
グラデーションボール120に微粒子を分布させるときの密度関数D(r)の中に、識別コ一ドに対応する特定の信号パターンを埋め込む方法について説明する。なお、D’(r)は非正(0か負)とする。また、微粒子は吸光性とし、輝度単調増加型のグラデーションボール120について説明する。
本実施例では、識別コードに対応する特定の信号パターンとして、「D’(r)の波数」を採用する。グラデーションボール120の半径をRとする。
当該グラデーションボール120の中に内包され、中心を同じくする半径R1(R1<R)の球を設ける。
そして、当該の内包球に微粒子を一定密度D1(r)=C1(r=0〜R1)で分布させる。また、当該グラデーションボール120の残りの部分(内包球の外側。r=R1〜R)には微粒子を分布させないようにする。
このグラデーションボール120を観測すると、上記の式(19)及び(20)はそれぞれ以下のようになる。
また、当該グラデーションボール120の残りの部分(第2の内包球の外側。r=R2〜R)には微粒子を分布させないようにする。
このグラデーションボール120を観測すると、上記の式(23)及び(24)はそれぞれ以下のようになる。
即ち、N’(r)はrが第1の内包球の半径R1になったところ、及び第2の内包球の半径R2になったところで不連続に大きな負の値をとる。
従って、当該グラデーションボール120が検出されたとき、例えば水平方向の半径rに沿って輝度Int(r)の変化率Int’(r)を測定することにより、それと単調な関係で変化するN’(r)を推測できる。そして、もし当該グラデーションボール120に2つの同心の内包球が含まれていれば、その半径R1及びR2は、N’(r)が不連続に大きな負の値をとったとき、従ってInt’(r)が不連続に大きな正の値をとったときの各々のrとして検出できる。
当該グラデーションボール120が検出されたとき、その撮像であるグラデーションタグ12における「D’(r)の波数」は、グラデーションタグ12の中心から周縁まで、例えば水平方向に順次Int(r)の値を比較し、Int’(r)が急激に大きな正の値に変化する回数を計数することにより得られる。
なお、上記では水平方向に順次Int(r)を調べたがこれに限らず、上下左右などいくつかの方向に順次Int(r)の変化率を計算し、各方向で得られた「D’(r)の波数」の多数決をとるようにしてもよい。グラデーションボール120の一部に汚れなどが付着し、観測されたグラデーションタグ12が部分的に遮蔽された場合でも、複数の方向について計算することによりその影響を受けにくくなるというメリットがある。
この実施例のメリットは、N層のグラデーションボール120を作製する場合、各層の半径の精度を高めなくても容易に識別コードの種類Nを増やせることである。
第4の実施例では、識別コードに対応する特定の信号パターンとして、「D’(r)のビット列」を採用する。
即ち、グラデーションボール120の半径RをN等分し、各々の等分面を境界とするN層の同心球を設ける。各々の球の半径は、R/N,2R/N,・・・、Rである。
そして、これらN層の微粒子密度を、各々C1,C2,・・・、CNとする。
今、中心からn番目の球と、その球の外側にある(n+1)番目の球を見る。
もし、両者の微粒子密度が異なる(Cn>Cn+1)場合は、上記の式(26)からわかるように、両者の境界r=n*R/Nにおいて、N’(r)は不連続に大きな負の値をとる。
以上のことから、グラデーションボール120をN層の同心球(中心から順に1,2,・・・、N)で構成し、隣接する層の微粒子密度を違える(Cn>Cn+1)か同じにする(Cn=Cn+1)かによって、境界r=RnにおけるN’(r)の不連続に大きな負の値、従ってInt’(r)の不連続に大きな正の値の「有り」か「無し」かを設定することができる。
なお、N層の同心球の微粒子密度を違えるか同じにするかには関わりなく、N’(r)従ってInt’(r)が不連続に大きな値を少なくとも1回はとる。それは、グラデーションボール120の周縁(r=R)で起こる。
当該グラデーションボール120が検出されたとき、その撮像であるグラデーションタグ12における「D’(r)のビット列」は、グラデーションタグ12の中心から周縁まで、例えば水平方向に順次Int(r)の値を比較し、Int’(r)が急激に大きな正の値に変化する有無を判定することにより得られる。
そして、r=n*R/N(n=1,2,・・・,N−1)におけるInt’(r)の値を所定の閾値と比較して、急変の有/無を判定し、各々1/0に置き換えて並べることにより、2進数を得る。
第5の実施例では、識別コードに対応する特定の信号パターンとして、「D’(r)に基づく複比」を採用する。即ち、グラデーションボール120の中に、3つの同心球を設ける。各々の球の半径を内側から順にR1、R2、R3とする。そして、微粒子密度を、各々C1、C2、C3とする。但し、C1>C2>C3とする。
このグラデーションボール120を観測すると、上記の第3の実施例で述べたように、3つの同心球の半径R1、R2、R3は、輝度の変化率Int’(r)が不連続に大きな正の値をとるrとして検出できる。
ここで一直線上の4点0,1,2,3に関する複比は、次の式で計算される。
(L12*L03)/(L02*L13)
よく知られているように、上記の複比は幾何学的不変量である。即ち、一直線上に並んだ4点0,1,2,3を如何なる距離や方向から撮像しても、その画像から当該4点を検出し、それらで挟まれた区間の長さLijを計算し、上記の複比を計算すると、その値は一定(不変)である。
{(R2−R1)*R3}/{R2*(R3−R1)}
さて、半径R1、R2、R3で、微粒子密度C1,C2,C3の3同心球を含むようなグラデーションボール120を用意する。そして、上記の複比の値を識別コードとして対応付ける。
{(r2−r1)*r3/{r2*(r3−r1)}
識別コード=[CR/Q]
但し、[a]は、実数aの小数点以下を切り捨てた整数を表す。
量子化した複比の値を識別コードとして使用することにより、変化点の半径を計測する際に含まれる誤差の影響を低減できるというメリットがある。
なお、上記の第3〜第5の実施例では、輝度単調増加型のグラデーションボール120について説明したが、輝度単調減少型のグラデーションボール120についてもN’(r)の急変に伴うInt’(r)の急変の値が負の値となることを除き、同様に扱うことができる。
そして、本発明に係る画像識別システムは、撮像時の照明条件、或いは、グラデーションタグ12やグラデーションボール120と撮像手段との相対位置関係に関係なく、グラデーションタグ12やグラデーションボール120をより確実で高速に識別することができる。
なお、上述した各種実施例及び変形例を適宜組み合わせて多様なグラデーションタグ12やグラデーションボール120を作成することが可能である。
2 カメラ
3 タグ識別装置
4 バーコード識別装置
5 バーコード情報処理装置
10 商品
11 バーコード
12 グラデーションタグ
31 部分画像抽出部
32 方向符号演算部
33 タグ方向符号
33A 記憶部
34 方向符号比較部
35 タグ座標演算部
36 マスク生成処理部
37 信号パターン抽出部
38 識別コード判別部
120 グラデーションボール
Claims (16)
- 対象物に付され画像処理により識別される画像識別用タグであって、
撮像された場合の画像が円形を成し、この円の中心点を起点として半径方向に沿った輝度変化パターンが全半径方向で同一であり、且つ前記輝度変化パターンは、前記中心点から離れるに従って徐々に輝度が低くなる減少パターン及び徐々に輝度が高くなる増加パターンの何れか一方であって、さらに撮像された場合の円形の画像の半径方向に沿った輝度変化パターンには、識別コードに対応した信号パターンが埋め込まれ、当該信号パターンは前記半径方向に沿った輝度変化率で表されることを特徴とする画像識別用タグ。 - 自タグ内の輝度値は、当該輝度値として設定可能な最大輝度よりも小さい値に設定された上限値と、前記輝度値として設定可能な最小輝度よりも大きい値に設定された下限値と、の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の画像識別用タグ。
- 光を透過させる球体で構成され、この球体内に吸光性と撥光性と発光性との何れか1の性質を有する粒子が所定の密度で分布していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像識別用タグ。
- 請求項1から3の何れか1項に記載された画像識別用タグと、この画像識別用タグが付された対象物の画像を撮像可能な撮像手段と、この撮像手段が撮像した画像である対象画像から前記タグを識別するタグ識別手段と、を備えたことを特徴とする画像識別システム。
- 前記タグ識別手段は、前記タグを識別可能な特徴情報を記憶しており、前記対象画像から前記特徴情報と比較可能な比較情報を取得し、この比較情報と前記特徴情報とを比較し、その比較結果に基づいて前記タグを識別することを特徴とする請求項4に記載の画像識別システム。
- 前記タグ識別手段は、前記特徴情報を生成するのに用いた画像領域と同じ大きさの部分画像を前記対象画像から順次抽出し、この抽出された部分画像毎に前記比較情報を取得することを特徴とする請求項5に記載の画像識別システム。
- 前記特徴情報及び前記比較情報は、画素毎の輝度の最大増加方向及び最大減少方向の何れか一方を表す方向符号であることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像識別システム。
- 前記タグ識別手段は、前記対象画像の各画素毎に、その画素の輝度値と、それに隣接する他の画素の輝度値との差を演算し、その演算結果に基づいて各画素毎の前記比較情報としての前記方向符号を求めることを特徴とする請求項7に記載の画像識別システム。
- 前記タグ識別手段は、前記対象画像の各画素毎に輝度の最大増加方向及び最大減少方向の何れか一方を表す方向符号を計算し、その計算された方向符号に基づいてタグの候補領域を選択し、その選択されたタグの候補領域に対して前記比較を行うことを特徴とする請求項5から8の何れか1項に記載の画像識別システム。
- 前記タグの候補領域を選択する処理は、一の画素の方向符号とそれに隣接する他の画素の方向符号との差が所定しきい値以下である場合に、それら一の画素と他の画素とを同一のグループに分類するという分類処理を、前記対象画像全体に対して実行し、その分類処理の結果得られたグループのうち、予め定めた選出基準により選出されたグループの画像を前記タグの候補領域として選択する処理であることを特徴とする請求項9に記載の画像識別システム。
- 前記タグ識別手段は、
撮像された前記画像識別用タグの画像の、前記信号パターンが埋め込まれた方向である所定方向に沿った輝度変化パターンから、特定の信号パターンを抽出する信号パターン抽出手段と、
前記信号パターン抽出手段により抽出された特定の信号パターンに基づいて前記画像識別用タグと対応付けられている識別コードを判別する識別コード判別手段とを備えることを特徴とする請求項4から10の何れか1項に記載の画像識別システム。 - 前記特定の信号パターンは、前記所定方向に沿った輝度変化率の変化を表すグラフの形態であることを特徴とする請求項11に記載の画像識別システム。
- 前記特定の信号パターンは、前記所定方向に沿った輝度変化率の変化を表すグラフに現れた波数であることを特徴とする請求項11に記載の画像識別システム。
- 前記信号パターン抽出手段は、前記所定方向に沿った区間での輝度変化率に関する値と所定の閾値との比較結果に基づき、2値で表される特定の信号パターンを抽出することを特徴とする請求項11に記載の画像識別システム。
- 前記信号パターン抽出手段は、前記所定方向に沿った区間での輝度変化率に関する値が所定の閾値の何倍かを示す値を特定の信号パターンとして抽出することを特徴とする請求項11に記載の画像識別システム。
- 前記信号パターン抽出手段は、前記所定方向に沿った輝度変化率が所定の閾値を超えた巾で変化する点で区切られる区間の長さに関する比の値を特定の信号パターンとして抽出することを特徴とする請求項11に記載の画像識別システム。
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