しかしながら、路面上には、例えば、路面の補修跡や局所的な影が存在する場合がある。そして、補修跡は周囲の路面とは局所的に色が相違することが多い。また、局所的な影の部分も、散乱光によってのみ照射され色味が加わって、周囲の路面と色が乖離してしまう。このため、特許文献1の装置では、ウィンドウ内で局所的な補修跡や影に相当する部分が、基準色から乖離して非路面領域として分離されてしまい、その境界に応じて白線を検出するため、誤検出の可能性がある。そして、これは色ではなく輝度についても同様である。
また、路面の色は、例えば、経時変化等により路面領域内で分布が生じてしまう場合や、国によっては元々一定に作られず路面領域内で分布を有する場合がある。このため、路面領域内に、周囲と色が相違する広範囲の部分領域があることが想定される。このような部分領域がある場合、特許文献1の装置のように、ウィンドウの下端部分の色を路面の基準色として路面領域と非路面領域とを分離することは難しい。すなわち、路面領域内で色が一定でない場合、基準色及び基準色と色が近似する条件を適切に設定することが難しく、設定が緩いとレーンマークまで路面領域に含まれてしまう一方、設定が厳しいとこの部分領域が非路面領域として分離されてしまう。そして、このように路面領域と非路面領域との境界が誤って得られてしまうと、この誤って得られた境界に応じて白線や先行車両を検出するため、誤検出の可能性がある。そして、これは色ではなく輝度についても同様である。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、車両の周辺を撮像した画像を、路面上の輝度や色の変動の影響を低減するように処理して、該画像から車両が走行している道路上のレーンマークを精度良く検出可能な車両用画像処理装置、車両、及び車両用画像処理プログラムを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明の車両用画像処理装置は、車両に搭載された撮像手段を介して取得された画像を処理して、該車両が走行している道路上のレーンマークを検出する車両用画像処理装置において、前記撮像手段を介して取得された画像に対して、所定方向の幅が、レーンマークの画像部分の該所定方向の幅よりも大きい所定範囲内となるカーネルのサイズを設定するカーネル設定手段と、前記取得された画像を、前記カーネル設定手段により設定されたサイズの平滑化用のカーネルを用いたフィルタ処理により平滑化する平滑化手段と、前記平滑化手段により平滑化された後の画像に対する、前記取得された画像の各画素の画素値の変化度合を算出する変化度合算出手段と、前記取得された画像の、前記変化度合が所定値以下となる画素の画素値を、予め定められた一定値に置換する画素値置換手段と、前記画素値置換手段により画素値が置換された後の画像から前記レーンマークを検出するレーンマーク検出手段とを備えたことを特徴とする(第1発明)。
第1発明の車両用画像処理装置によれば、カーネル設定手段によりカーネルのサイズを設定し、平滑化手段により、取得された画像を、この設定されたサイズの平滑化用のカーネルを用いたフィルタ処理により平滑化する。平滑化手段による平滑化では、画像内の各画素について、当該画素を中心画素として平滑化用のカーネルを配置し、平滑化用のカーネルの範囲に含まれる全画素の画素値の平均を、中心画素の画素値とする処理が行われる。これにより、画像内の画素値の変化の幅が狭まって、低コントラストの画像が得られる。
このとき、カーネル設定手段により所定方向の幅がレーンマークの画像部分の該所定方向の幅よりも大きい所定範囲内となるように設定されたサイズのカーネルを用いて道路の画像を平滑化することで、レーンマークや局所的な補修跡や影等の画像部分の画素を中心画素としてカーネルを配置した場合、カーネルの範囲に、周囲の路面の画像部分が多く含まれることとなる。よって、平滑化された後の画像では、路面上の局所的な補修跡や影の画像部分やレーンマークの画像部分を構成する画素の画素値は、周囲の路面の画像部分を構成する画素の画素値と近い画素値となる。また、路面の画像部分については、路面領域内に周囲と画素値が相違する広範囲の部分領域がある場合も含めて、路面の画像部分及び部分領域のサイズは、レーンマークの画像部分に比べて大きいと想定されるため、路面の画像部分及び部分領域の画素を中心画素としてカーネルを配置した場合、カーネルの範囲に路面の画像部分及び部分領域が多く含まれることとなる。よって、路面の画像部分及び部分領域については平滑化の影響が小さく、平滑化された後の画像でも、平滑化される前の画像における画素値が保持される。
このため、変化度合算出手段により、平滑化手段により平滑化された後の画像に対する、取得された画像の各画素の画素値の変化度合を算出すると、変化度合は、路面の画像部分より画素値が大きいレーンマークの画像部分では正の大きい値となり、路面の画像部分より画素値が小さい局所的な補修跡や影の画像部分では小さい値(負の値も含む)となる。また、路面の画像部分は、周囲と画素値が相違する広範囲の部分領域も含めて、平滑化前後で画素値の変化が小さく、変化度合は小さい値(負の値も含む)となる。そこで、画素値置換手段により、取得された画像の、変化度合が所定値以下となる画素の画素値を、予め定められた一定値に置換する。なお、一定値は、例えば、レーンマークの画像部分の画素値が取り得る値より十分小さい値(例えば0)である。これにより、周囲と画素値が相違する部分領域も含めた路面の画像部分や、局所的な補修跡や影の画像部分の画素の画素値は、一定値に置換され、レーンマークの画像部分の画素の画素値のみがそのまま保持されることとなる。よって、画素値置換手段により画素値が置換された後の画像では、レーンマークの画像部分のみが残るので、レーンマーク検出手段により、この置換された後の画像を用いてレーンマークを検出することで、レーンマークを精度良く検出することが可能となる。
また、第1発明の車両用画像処理装置において、前記カーネル設定手段は、前記道路の所定領域の前記車両からの距離が遠いほど、前記画像上の該所定領域の画像部分に対して設定される前記カーネルのサイズが小さくなるように、該カーネルのサイズを設定することが好ましい(第2発明)。
第2発明の車両用画像処理装置によれば、実空間における道路の所定領域の車両からの距離が遠いほど、画像上で該所定領域の画像部分のサイズは小さくなる。よって、道路の所定領域の車両からの距離が遠いほど、画像上の該所定領域の画像部分に対して設定されるカーネルのサイズが小さくなるように、該カーネルのサイズを設定することで、画像上の各位置で、レーンマークや局所的な補修跡や影等の画像部分の画素を中心画素としてカーネルを配置した場合、カーネルの範囲に、周囲の路面の画像部分が多く含まれるようにすることができる。
また、第1又は第2発明の車両用画像処理装置において、前記カーネル設定手段は、前記カーネルの形状を長方形又は台形に設定することが好ましい(第3発明)。
第3発明の車両用画像処理装置によれば、車両が走行している道路上の白線や黄線等のレーンマークの形状は線状である。よって、平滑化用のカーネルを長方形又は台形に設定することで、レーンマークの画像部分の形状に合致するように平滑化用のカーネルを配置することができる。
また、第3発明の車両用画像処理装置において、前記カーネル設定手段は、前記車両の進行方向に対応する画像上の方向に対する、前記カーネルの長辺の中心線の傾きが所定角度となるように、該カーネルの向きを設定することが好ましい(第4発明)。
第4発明の車両用画像処理装置によれば、車両が走行している道路上のレーンマークは、画像上で車両の進行方向に対応する画像上の方向にある消失点に向かうように撮像されると想定される。よって、車両の進行方向に対応する画像上の方向に対する、前記カーネルの長辺の中心線の傾きが所定角度となるように、カーネルの向きを設定することで、レーンマークの画像部分の向きに合致するように平滑化用のカーネルを設定することができる。
また、第1〜第4発明のうちいずれかの車両用画像処理装置において、前記変化度合算出手段は、前記変化度合として、前記取得された画像から前記平滑化された後の画像を減算して得られる各画素の画素値の差、又は該取得された画像を該平滑化された後の画像で除算して得られる各画素の画素値の比を用いることが好ましい(第5発明)。
第5発明の車両用画像処理装置によれば、取得された画像から平滑化された後の画像を減算して得られる各画素の画素値の差、又は取得された画像を平滑化された後の画像で除算して得られる各画素の画素値の比は、画素値の変化度合を示す値であるので、これらの差又比を用いて、画素値置換手段により画像の画素値の置換を適切に行うことができる。
また、第1〜第5発明のうちいずれかの車両用画像処理装置において、前記平滑化手段により平滑化される前記画像は、輝度を画素値とする画像であることが好ましい(第6発明)。
第6発明の車両用画像処理装置によれば、明るい白色や黄色のレーンマークの画像部分と、暗いグレーやブラウンの路面の画像部分と、さらに暗い局所的な補修跡や影の画像部分とでは、輝度が相違すると想定されるので、輝度を画素値とする画像について、局所的な補修跡や影の画像部分は除去され、レーンマークの画像部分はそのまま残るように、画素値を置換することで、この置換された後の画像からレーンマークの画像部分を精度良く検出することができる。
或いは、第1〜第5発明のうちいずれかの車両用画像処理装置において、前記平滑化手段により平滑化される前記画像は、カラー画像のカラー成分から算出される輝度又は彩度を画素値とする画像であることが好ましい(第7発明)。
第7発明の車両用画像処理装置によれば、明るい白色や黄色のレーンマークの画像部分と、暗いグレーやブラウンの路面の画像部分と、さらに暗い局所的な補修跡や影の画像部分とでは、輝度や彩度が相違することとなるので、輝度又は彩度を画素値とする画像について、局所的な補修跡や影の画像部分は除去され、レーンマークの画像部分はそのまま残るように、画素値を置換することで、この置換された後の画像からレーンマークの画像部分を精度良く検出することができる。
また、第1〜第7発明のうちいずれかの車両用画像処理装置において、前記画素値置換手段により置換された後の画像の、画素値が前記一定値でない画素からなる領域を、前記車両が走行している道路上のレーンマークの画像部分として検出するレーンマーク検出手段を備えることが好ましい(第8発明)。
第8発明の車両用画像処理装置によれば、置換された後の画像では、レーンマーク以外の画像部分の画素値は一定値に置換されているので、レーンマーク検出手段により、この置換された後の画像の、画素値が一定値でない画素からなる領域を、レーンマークの画像部分として検出できる。よって、レーンマーク検出手段により、エッジ抽出処理等をさらに行うことなく、車両が走行している道路上のレーンマークを容易に検出することができる。
次に、本発明の車両は、撮像手段を備え、該撮像手段を介して取得された画像を処理して、走行している道路上のレーンマークを検出する機能を有する車両であって、前記撮像手段を介して取得された画像に対して、所定方向の幅が、レーンマークの画像部分の該所定方向の幅よりも大きい所定範囲内となるカーネルのサイズを設定するカーネル設定手段と、前記取得された画像を、前記カーネル設定手段により設定されたサイズの平滑化用のカーネルを用いたフィルタ処理により平滑化する平滑化手段と、前記平滑化手段により平滑化された後の画像に対する、前記取得された画像の各画素の画素値の変化度合を算出する変化度合算出手段と、前記取得された画像の、前記変化度合が所定値以下となる画素の画素値を、予め定められた一定値に置換する画素値置換手段と、前記画素値置換手段により画素値が置換された後の画像から前記レーンマークを検出するレーンマーク検出手段とを備えたことを特徴とする(第9発明)。
第9発明の車両によれば、第1発明の車両用画像処理装置に関して説明したように、カーネル設定手段により、所定方向の幅がレーンマークの画像部分の該所定方向の幅よりも大きい所定範囲内となるようにカーネルのサイズを設定し、取得された画像を、この設定されたサイズの平滑化用のカーネルを用いたフィルタ処理により平滑化することにより、平滑化される前の画像に対して、平滑化された後の画像では、路面上の局所的な補修跡や影の画像部分や、レーンマークの画像部分の画素値と、その周囲の路面の画像部分の画素値と近い値となる。また、路面の画像部分については、路面の画像部分内の周囲と画素値が相違する広範囲の部分領域も含めて、平滑化された後の画像でも、平滑化される前の画像における画素値が保持される。したがって、画素値置換手段により画素値が置換された後の画像では、周囲と画素値が相違する部分領域も含めた路面の画像部分や、局所的な補修跡や影の画像部分の画素の画素値は、一定値に置換され、レーンマークの画像部分のみが残るので、この置換された後の画像を用いてレーンマークを検出することで、レーンマークを精度良く検出することが可能となる。
次に、本発明の車両用画像処理プログラムは、車両に搭載された撮像手段を介して取得された画像を処理して、該車両が走行している道路上のレーンマークを検出する処理をコンピュータに実行させる車両用画像処理プログラムであって、前記撮像手段を介して取得された画像に対して、所定方向の幅が、レーンマークの画像部分の該所定方向の幅よりも大きい所定範囲内となるカーネルのサイズを設定するカーネル設定処理と、前記取得された画像を、前記カーネル設定処理により設定されたサイズの平滑化用のカーネルを用いたフィルタ処理により平滑化する平滑化処理と、前記平滑化処理により平滑化された後の画像に対する、前記取得された画像の各画素の画素値の変化度合を算出する変化度合算出処理と、前記取得された画像の、前記変化度合が所定値以下となる画素の画素値を、予め定められた一定値に置換する画素値置換処理と、前記画素値置換処理により画素値が置換された後の画像から前記レーンマークを検出するレーンマーク検出処理とをコンピュータに実行させる機能を有することを特徴とする(第10発明)。
第10発明の車両用画像処理プログラムによれば、第1発明に関して説明した効果を奏し得る処理をコンピュータに実行させることができる。
本発明の一実施形態を、図1〜図7を参照して説明する。図1を参照して、本発明の実施形態である車両用画像処理装置10は自車両1(本発明の車両)に搭載して使用され、自車両1の前方を撮像するカメラ2により撮像される画像から、自車両1の走行している道路上のレーンマークを検出するものである。なお、カメラ2(本発明の撮像手段)はCCDカメラ等であり、自車両1のフロント部分に取り付けられている。
また、車両用画像処理装置10により検出されたレーンマークの位置データは、車両1のECU(Electronic Control Unit)20に出力される。ECU20は、レーンマークの位置データに基いて、自車両1が走行している道路の車線を認識し、自車両1が車線から逸脱する可能性を判定する車線逸脱判定処理と、自車両1が車線から逸脱する可能性がある状況となったときに、注意喚起出力(図示しないスピーカからの音声出力等による)を行なう注意喚起出力処理と、自車両1の車線からの逸脱が回避されるように、自車両1のブレーキやステアリングをアシスト駆動する車線逸脱回避制御処理とを実行する。
次に、図2を参照して、車両用画像処理装置10は、その機能として、画像取得手段11と、カーネル設定手段12と、平滑化手段13と、変化度合算出手段14と、画素値置換手段15と、レーンマーク検出手段16とを備えている。
画像取得手段11は、カメラ2から出力される画像信号を入力し、入力した画像信号から、画素データにより構成されるカラー画像を取得する。このとき、画素データは、R値、G値、B値からなるカラー成分で構成されている。そして、画像取得手段11は、取得されたカラー画像の画素のカラー成分(R,G,B)から画素の輝度Yを算出し、この輝度Yを画素値とする輝度画像を取得する。これと共に、画像取得手段11は、取得されたカラー画像の画素のカラー成分(R,G,B)から画素の彩度Sを算出し、この彩度Sを画素値とする彩度画像を取得する。
カーネル設定手段12は、カメラ2を介して取得された画像に対して、所定方向の幅が、レーンマークの画像部分の該所定方向の幅よりも大きい所定範囲内となるカーネルのサイズを設定する。平滑化用のカーネルの設定の詳細については後述する。
平滑化手段13は、カメラ2を介して取得された輝度画像及び彩度画像を、それぞれ、カーネル設定手段12により設定されたサイズの平滑化用のカーネルを用いたフィルタ処理により平滑化する。平滑化手段13による平滑化では、画像内の各画素について、当該画素を中心画素として平滑化用のカーネルを配置し、カーネルの範囲に含まれる全画素の画素値の平均を、中心画素の画素値とする処理が行われる。
変化度合算出手段は14は、輝度画像を用いて、平滑化手段13により平滑化された後の輝度画像に対する、カメラ2を介して取得された輝度画像の各画素の画素値の変化度合を算出する。これと共に、変化度合算出手段は14は、彩度画像を用いて、平滑化手段13により平滑化された後の彩度画像に対する、カメラ2を介して取得された彩度画像の各画素の画素値の変化度合を算出する。具体的には、変化度合算出手段は14は、変化度合として、取得された輝度画像(彩度画像)から平滑化された後の輝度画像(彩度画像)を減算して得られる各画素の画素値の差を用いる。
画素値置換手段15は、カメラ2を介して取得された輝度画像の、変化度合算出手段14により輝度画像を用いて算出された変化度合が所定値以下となる画素の画素値を、予め定められた一定値に置換する。これと共に、画素値置換手段15は、カメラ2を介して取得された彩度画像の、変化度合算出手段14により彩度画像を用いて算出された変化度合が所定値以下となる画素の画素値を、予め定められた一定値(例えば0)に置換する。
レーンマーク検出手段16は、画素値置換手段15により置換された後の輝度画像及び彩度画像から、自車両1が走行している道路上のレーンマークを検出する。具体的には、レーンマーク検出手段16は、置換された後の輝度画像及び彩度画像の、画素値が一定値でない画素からなる領域を、自車両1が走行している道路上のレーンマークの画像部分として検出する。このとき、レーンマーク検出手段16は、置換された後の輝度画像の、画素値が一定値でない画素で構成される点列データから、ハフ変換等により直線成分をレーンマーク候補として抽出する。これと共に、レーンマーク検出手段16は、置換された後の彩度画像の、画素値が一定値でない画素で構成される点列データから、ハフ変換等により直線成分をレーンマーク候補として抽出する。そして、レーンマーク検出手段16は、これらの抽出されたレーンマーク候補のうちから画像上の位置等に基づいて自車両1が走行している道路の車線を規定するレーンマークを検出する。
車両用画像処理装置10は、入力アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路と、デジタル化した画像信号を記憶する画像メモリと、画像メモリに記憶されたデータにアクセス(読み出し及び書き込み)するためのインタフェース回路を有して、該画像メモリに記憶された画像に対して各種の演算処理を行うコンピュータ(CPU,メモリ,入出力回路等からなる演算処理回路、或いはこれらの機能を集約したマイクロコンピュータ)等により構成された電子ユニットである。車両用画像処理装置10は、該コンピュータに本発明の車両認識用プログラムを実行させることによって、該コンピュータが、画像取得手段11と、カーネル設定手段12と、平滑化手段13と、変化度合算出手段14と、画素値置換手段15と、レーンマーク検出手段16として機能する。
次に、車両用画像処理装置10の作動(車両用画像処理)を、図3に示したフローチャートに従って説明する。図3に示したフローチャートによる処理は、車両用画像処理装置10の制御周期毎に繰り返し実行される。
図3のSTEP1で、画像取得手段11は、カメラ2を介してカラー画像を取得する。取得されたカラー画像はA/D変換されて画像メモリに格納される。図4に、ある制御周期の時刻においてカメラ2を介して取得されるカラー画像I1を例示する。カラー画像I1は、図4に例示するような、m×n個の画素からなる画像である。カラー画像I1の各画素P1は、カラー成分としてR値,G値,B値を有するものであり、P1(i,j)=(Rij,Gij,Bij)で表される。ただし、i,jは、各画素の座標であり、0≦i<m,0≦j<nとなる整数である。
図4の例では、自車両1が矢印方向に走行しており、自車両1が走行している道路の車線の左側を規定するレーンマークが実線の黄線A1であり、右側を規定するレーンマークが破線の白線A2である場合を示す。このとき、自車両1が走行している道路の車線の路面上には、周囲より暗い線状の補修跡(黒線)B1と、局所的な凹凸や汚れによる黒点群B2がある。また、路面領域内には、周囲と画素値が相違する、広範囲の部分領域C1がある。
次に、STEP2で、画像取得手段11は、STEP1で取得したカラー画像I1の画素のカラー成分(R,G,B)から、輝度を算出して輝度画像I2を取得すると共に、彩度を算出して彩度画像I5を取得する。
詳細には、画像取得手段11は、カラー画像I1の各画素P1(i,j)のカラー成分(Rij,Gij,Bij)から、Yij=α×Rij+β×Gij+γ×Bijにより輝度Yijを算出する。ただし、α,β,γは、α+β+γ=1となるような所定の係数である。これにより、図5(a)に例示するような、輝度Yijを各画素P2(i,j)のデータとする、m×n個の画素からなる輝度画像I2が取得される。輝度画像I2において、白線A2の画像部分は輝度が大きく、黄線A1の画像部分は白線A2より輝度が小さい。また、路面の画像部分はさらに輝度が小さく平均的な路面の輝度となり、部分領域C1は平均的な路面の輝度より輝度が若干大きい。さらに、補修跡B1,黒点群B2は平均的な路面より輝度が小さい。
なお、画像取得手段11は、輝度Yijを、(Rij,Gij,Bij)のうちの最大値MAXij、最小値MINijを用いて、Yij=(MAXij+MINij)/2により算出してもよい。または、画像取得手段11は、輝度YijとしてGij値を用いるものとしてもよい。
これと共に、画像取得手段11は、カラー画像I1の各画素P1(i,j)のR値,G値,B値(Rij,Gij,Bij)から、Sij=(MAXij−MINij)/MAXijにより彩度Sijを算出する。これにより、図5(d)に例示するような、彩度Sijを各画素P5(i,j)のデータとする、m×n個の画素からなる彩度画像I5が取得される。彩度画像I5において、黄線A1の画像部分は彩度が大きく、白線A2の画像部分は黄線A1より彩度が小さい。また、路面の画像部分はさらに彩度が小さく平均的な路面の彩度となり、部分領域C1は平均的な路面より彩度が若干大きい。さらに、補修跡B1,黒点群B2は平均的な路面より彩度が小さい。
次に、STEP3で、カーネル設定手段12は、STEP2で取得した輝度画像I2と彩度画像I5に対して、複数のサイズの平滑化用のカーネルを設定する。
ここで、図6を参照して、平滑化用のカーネルの設定について説明する。図6に、輝度画像I2に対して設定された5つの平滑化用のカーネルK1〜K5を例示する。なお、彩度画像I5に対しても、輝度画像I2と同様に平滑化用のカーネルK1〜K5が設定される。平滑化用のカーネルK1〜K5は、それぞれ、輝度画像I2の領域R1〜R5に含まれる画素を中心画素として平滑化する際に用いられる。平滑化用のカーネルK1〜K5の縦方向のサイズYf[Pixel]は、いずれも数画素(例えば、1〜3[Pixel])とする。領域R1〜R5は、自車両1から離れるにしたがって、段階的に縦方向の幅を狭くしている。なお、サイズYfは、自車両1からの距離が離れるほど小さくなるような値を用いてもよい。また、平滑化用のカーネルK1〜K5の横方向のサイズXf[Pixel]は、実空間における所定幅ΔXに該当する値とする。所定幅ΔXとしては、レーンマークの幅と想定される値(例えば、0.1〜0.75[m])より大きい値(例えば、レーンマークの幅の数倍、具体的には0.5〜1[m])が用いられる。なお、所定幅ΔXは、道路の幅と想定される値よりは小さい値とする。平滑化用のカーネルK1〜K5の横方向のサイズXfは、例えば、それぞれ10,20,50,100,150[Pixel]となる。サイズXfは、図7に示すような自車両1の実空間座標系と画像座標系との関係から設定される。画像座標系は、図7(c)に示すように、左上を原点として座標(x,y)とする。また、1画素の物理的間隔を(δx,δy)とする。
このとき、図7(a)に示すように、路面上の対象物の自車両1に対する距離Z、カメラ2の焦点距離f、実空間上でのカメラ2の路面からの高さh、画像上に撮像された対象物の物理的高さYcには、下記式(1)
Yc=f×h/Z ・・・(1)
の関係がある。また、画像上に撮像された対象物の物理的高さYc、画像座標y、1画素辺りの物理的間隔δyには、下記式(2)
Yc=y×δy ・・・(2)
の関係がある。
また、図7(b)に示すように、路面上の対象物の自車両1に対する距離Z、カメラ2の焦点距離f、実空間上での対象物の幅ΔX、画像上に撮像された対象物の物理的幅Xcには、下記式(3)
Xc=f×ΔX/Z ・・・(3)
の関係がある。また、画像上に撮像された対象物の物理的幅Xc、画像座標x、1画素あたりの物理的間隔δxには、下記式(4)
Xc=x×δx ・・・(4)
の関係がある。
式(1)〜(4)から、サイズXfは、
Xf=(ΔX/h)×y ・・・(5)
となる。実空間上での対象物の幅ΔX、実空間上でのカメラ2の路面からの高さhは固定値なので、画像座標yが小さくなるほどサイズXfは小さくなる。さらに、式(1)(2)から、距離Zが大きくなるほど、画像座標yが小さくなるので、サイズXfも小さくなる。すなわち、サイズXfは、自車両1からの距離が離れるほど小さくなるような値に設定される。
図3に戻り、次に、STEP4で、平滑化手段13は、STEP3で設定した平滑化用のカーネルK1〜K5を用いて輝度画像I2を平滑化する。図5(b)に、平滑化後の輝度画像I3を示す。これにより、輝度画像I2内の画素値の変化の幅が狭くなって、低コントラストの画像が得られる。平滑化後の輝度画像I3では、補修跡B1、黒点群B2の画像部分の画素値が、平均的な路面の輝度に近い画素値となり、周囲の路面の画像部分から判別できなくなっている。また、平滑化後の画像I3では、黄線A1、白線A2の画像部分の画素値も、平均的な路面の輝度に近い画素値となっている。また、路面及び部分領域C1の画像部分については、カーネルのサイズより路面及び部分領域C1の画像部分のサイズが大きいため平滑化の影響が小さく、平滑化後の輝度画像I3で、輝度画像I2の路面及び部分領域C1の画素値が保持される。
次に、輝度画像2の全画素(i=1〜m,j=1〜n)について、STEP5〜7の処理が実行される。
まず、STEP5で、変化度合算出手段14は、STEP2で取得した輝度画像I2の画素値P2(i,j)から、STEP4の平滑化後の画像I3の画素値P3(i,j)を減算して、画素(i,j)の画素値の変化度合ΔIY(i,j)=P2(i,j)−P3(i,j)を算出する。
次に、STEP6で、画素値置換手段15は、画素値の変化度合ΔIY(i,j)が所定値IYth以下であるか否かを判断する。所定値IYthは、レーンマーク(白線)の画像部分の輝度の変化度合が取り得る範囲に応じて定められる値(例えば、0以下の値)である。STEP6の判断結果がYESの場合は、画素(i,j)が、画素値の変化度合ΔIth(i,j)が小さい画像部分、すなわち、輝度が白線A2より小さく平均的な路面の輝度に近い黄線A1の画像部分か、平滑化前後で輝度の変化が小さい路面(部分領域C1も含む)の画像部分か、輝度が路面より小さい補修跡B1、黒点群B2の画像部分であると想定される。よって、STEP7に進み、画素値置換手段15は、輝度画像I2の画素値P2(i,j)を一定値に置換し、STEP5に戻る。STEP6の判断結果がNOの場合は、画素(i,j)が輝度が大きい白線A2の画像部分であると想定される。よって、画素値置換手段15は、画素(i,j)の画素値を置換せずに、そのままSTEP5に戻る。
輝度画像I2の全画素についてSTEP5〜7の処理が実行された結果として得られる、置換後の輝度画像I4を図5(c)に示す。図5(c)に示すように、置換後の輝度画像I4では、黄線A1、補修跡B1、黒点群B2、路面(部分領域C1も含む)の画像部分は、一定値に置換され、白線A2の画像部分のみが輝度画像I2の画素値のまま保持される。よって、置換後の画像I4では、白線A2の画像部分のみが残る。
次に、STEP8で、平滑化手段13は、STEP3で設定した平滑化用のカーネルK1〜K5を用いて彩度画像I5を平滑化する。図5(e)に、平滑化後の彩度画像I6を示す。これにより、彩度画像I5内の画素値の変化の幅が狭くなって、低コントラストの画像が得られる。平滑化後の彩度画像I6では、補修跡B1、黒点群B2の画像部分の画素値が、平均的な路面の彩度に近い画素値となり、周囲の路面の画像部分から判別できなくなっている。また、平滑化後の画像I6では、黄線A1、白線A2の画像部分の画素値も、平均的な路面の彩度に近い画素値となっている。また、路面及び部分領域C1の画像部分については、カーネルのサイズより路面及び部分領域C1の画像部分のサイズが大きいため平滑化の影響が小さく、平滑化後の彩度画像I6で、彩度画像I5の路面及び部分領域C1の画素値が保持される。
次に、彩度画像I5の全画素(i=1〜m,j=1〜n)について、STEP9〜11の処理が実行される。
まず、STEP9で、変化度合算出手段14は、STEP2で取得した彩度画像I5の画素値P5(i,j)から、STEP8の平滑化後の彩度画像I6の画素値P6(i,j)を減算して、画素(i,j)の画素値の変化度合ΔIS(i,j)=P5(i,j)−P6(i,j)を算出する。
次に、STEP10で、画素値置換手段15は、画素値の変化度合ΔIS(i,j)が所定値ISth以下であるか否かを判断する。所定値ISthは、レーンマーク(黄線)の画像部分の彩度の変化度合が取り得る範囲に応じて定められる値(例えば、0以下の値)である。STEP10の判断結果がYESの場合は、画素(i,j)が、画素値の変化度合ΔIS(i,j)が小さい画像部分、すなわち、彩度が黄線A1より小さく平均的な路面の彩度に近い白線A2の画像部分か、平滑化前後で彩度の変化が小さい路面(部分領域C1も含む)の画像部分か、彩度が路面より小さい補修跡B1、黒点群B2の画像部分であると想定される。よって、STEP11に進み、画素値置換手段15は、彩度画像I5の画素値P5(i,j)を一定値に置換し、STEP9に戻る。STEP10の判断結果がNOの場合は、画素(i,j)が彩度が大きい黄線A1の画像部分であると想定される。よって、画素値置換手段15は、画素(i,j)の画素値を置換せずに、そのままSTEP9に戻る。
彩度画像I5の全画素についてSTEP9〜11の処理が実行された結果として得られる、置換後の彩度画像I7を図5(f)に示す。図5(f)に示すように、置換後の彩度画像I7では、白線A2、補修跡B1、黒点群B2、路面(部分領域C1も含む)の画像部分は、一定値に置換され、黄線A1の画像部分のみが彩度画像I5の画素値のまま保持される。よって、置換後の彩度画像I7では、黄線A1の画像部分のみが残る。
次に、STEP12に進み、レーンマーク検出手段16は、STEP7で得られた置換後の輝度画像I4と、STEP11で得られた置換後の彩度画像I7から、レーンマークを検出する。置換後の輝度画像I4及び置換後の彩度画像I7では、黄線A1及び白線A2の画像部分のみが残っているので、レーンマーク検出手段16は、エッジ抽出処理等をさらに行うことなく、自車両1が走行している道路上のレーンマークを容易に検出することができる。このとき、置換後の輝度画像I4では、白線A2の画像部分のみが残っているので、レーンマーク検出手段16により、この置換後の輝度画像I4を用いてレーンマークを検出することで、白線A2が精度良く検出される。また、置換後の彩度画像I7では、黄線A1の画像部分のみが残っているので、レーンマーク検出手段16により、この置換後の彩度画像I7を用いてレーンマークを検出することで、黄線A1が精度良く検出される。
以上が、本実施形態の車両用画像処理装置10における車両用画像処理である。本実施形態によれば、自車両1の周辺を撮像した画像を、該画像内での輝度や色の変動の影響を低減するように処理して、該画像から自車両1が走行している道路上のレーンマークA1,A2を精度良く検出することができる。
なお、本実施形態では、変化度合算出手段14は、変化度合として画素値の差を用いたが、他の実施形態において、変化度合として、取得された画像を平滑化後の画像で除算して得られる各画素の画素値の比を用いるものとしてもよい(ΔIY(i,j)=P2(i,j)/P3(i,j)、ΔIS(i,j)=P5(i,j)/P6(i,j))。この場合、所定値IYth,ISthは、レーンマークの画像部分の画素値の変化度合が取り得る範囲に応じて定められる値(例えば、1以下の値)とする。
また、本実施形態において、図8に示すように、平滑化用のカーネルを、自車両1の進行方向に対応する画像上の方向Lcに対する、カーネルの長辺の中心線Lの傾きが所定角度(例えば45°)となるように、カーネルの向きを設定するものとしてもよい。
また、本実施形態では、平滑化用のカーネルの形状を長方形としたが、他の実施形態として、平滑化用のカーネルの形状を台形としてもよい。
また、本実施形態では、画像取得手段11は、画素データがR値、G値、B値からなるカラー成分で構成されるカラー画像を取得するものとしたが、他の実施形態として、画素データがCMY出力等からなるカラー成分で構成されるカラー画像を取得するものとしてもよい。
また、本実施形態では、輝度画像と彩度画像のそれぞれについて平滑化処理・画素値置換処理を行い、その置換後の輝度画像と彩度画像からレーンマークを検出するものとしたが、いずれか一方の画像について平滑化処理・画素値置換処理を行い、その置換後の画像からレーンマークを検出するものとしてもよい。
また、本実施形態では、カメラ2を介してカラー画像を取得するものとしたが、他の実施形態として、画素データが輝度で構成されるグレースケール画像(輝度画像)を取得するものとしてもよい。この場合、取得された輝度画像について平滑化処理・画素値置換処理を行い、その置換後の画像からレーンマークを検出する。
また、本実施形態では、カメラ2により自車両1の前方を撮像し、車両用画像処理装置10は自車両1の前方の道路の画像からレーンマークを検出するものとしたが、他の実施形態として、カメラにより自車両1の後方を撮像し、車両用画像処理装置10は自車両1の後方の道路の画像からレーンマークを検出するものとしてもよい。
1…車両(自車両)、2…カメラ(撮像手段)、10…車両用画像処理装置、11…画像取得手段、12…カーネル設定手段、13…平滑化手段、14…変化度合算出手段、15…画素値置換手段、16…レーンマーク検出手段。