JP4838968B2 - 薬物−ポリエチレングリコール結合体を含有する眼組織内注入剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、長期間眼組織に滞留する、薬物−ポリエチレングリコール結合体を含有する眼組織注入剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
虹彩毛様体、網膜、視神経、硝子体等の眼組織における疾患には難治性疾患が多く、その効果的な治療法の開発が望まれている。眼疾患に対しては、薬物を点眼投与して治療するのがもっとも一般的であるが、眼組織によっては薬物の移行が困難で、特に硝子体や網膜等の内眼部へは薬物はほとんど移行しない。このことが、内眼部における疾患の治療をより困難にしている。また、点眼投与では薬物の持続性を得るのは困難であり、頻回の投与が必要である。
【0003】
そこで、薬物を眼組織内に直接投与する方法が試みられ、例えば、薬物を含有させたリポソームやマイクロスフェアーを硝子体等の内眼部へ投与する技術が報告されている(特許文献1および2など参照)。
【0004】
しかし、リポソームを用いて薬物の放出を制御することは容易でなく、また、リポソームやマイクロスフェアーでは粒子径が大きいために、例えば、硝子体などの内眼部に投与する場合には透明性を維持できなくなることがある。
【0005】
一方、薬物とポリエチレングリコール(PEG)とを共有結合させた結合体を用いると体内での薬物の滞留性が向上し、薬物−PEG結合体が薬物デリバリーシステムとして有用であることが知られている。具体的な薬物−PEG結合体も種々合成されており、インシュリン−PEG結合体(特許文献3参照)、タキソール−PEG結合体(特許文献4参照)、インターフェロン−PEG結合体(特許文献5参照)、アスパラギナーゼ−PEG結合体(特許文献6参照)、尿酸オキシダーゼ−PEG結合体(特許文献7参照)等が知られている。しかしこれらの中に眼科領域での使用を目的としているものはない。
【0006】
眼科領域での薬物−PEG結合体の応用に関しては、ハイドロコルチゾン−PEG結合体の強膜透過性がハイドロコルチゾン単体に比べ向上することが報告されている(非特許文献1参照)。また、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)−PEG結合体をラットの静脈内に投与することによりSODの滞留性が向上し、虚血による網膜の浮腫を抑制したとの報告がある(非特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、薬物−PEG結合体の眼組織内注入技術についての報告はなく、当然その眼組織内注入による効果は全く知られていない。
【0008】
【特許文献1】
特表平6−508369号公報。
【0009】
【特許文献2】
特開平4−221322号公報。
【0010】
【特許文献3】
米国特許4179337号明細書。
【0011】
【特許文献4】
国際公開WO93/24476号パンフレット。
【0012】
【特許文献5】
国際公開WO99/48535号パンフレット。
【0013】
【特許文献6】
国際公開WO99/39732号パンフレット。
【0014】
【特許文献7】
国際公開WO00/7629号パンフレット。
【0015】
【非特許文献1】
Int.J.Pharm.,182(1),79-92,1999)。
【0016】
【非特許文献2】
Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,32,1471-1478,1991)。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような、薬物−PEG結合体は薬物デリバリーシステムとして有用であることは知られているものの、それを静脈内投与、経口投与、点眼投与する従来の方法では、種々の眼組織、特に内眼部の疾患を治療するには多くの問題がある。例えば、静脈内投与された薬物−PEG結合体は血流にのって全身へ行き渡るので眼組織へ到達する薬物量は、投与量に比べると極めて少量となる。したがって眼組織へ有効量の薬物を到達させるには大量に投与しなければならないが、そうなると全身での副作用が大きな問題となる。さらに、静脈内投与された薬物−PEG結合体は血中で代謝を受ける問題もあるので、治療の際は頻繁な投与が必要となる。経口投与では、肝臓での代謝過程が加わるので眼組織への到達量はさらに少なくなる。局所投与である点眼投与でも、角膜上皮のバリアー機構のため、角膜を透過して網膜等の内眼部へ到達する薬物量は投与量の1万分の1程度である。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、薬物−PEG結合体を直接眼組織内に投与すれば、虹彩毛様体、硝子体、網膜、視神経等の眼組織に直接薬物を到達させることができる上に、眼組織における薬物の長期間の滞留を可能にし、種々の眼組織における疾患の治療に有用であることを見出した。薬物−PEG結合体を眼組織内に直接投与すれば、同結合体は全身循環に入ることがないため、投与量のほぼ全てが眼組織における疾患の治療に利用され、また、全身の副作用も軽減される。薬物はPEGに結合した状態で投与されるが、その結合は眼組織内に注入後徐々に切れて薬物の放出を制御することができ、長期に渡って疾患の治療効果を発揮する。また、薬物−PEG結合体は眼組織内での滞留性に優れ、仮に薬物とPEGとの結合が眼組織内で切れず結合を保った形でも、各種眼組織における疾患の治療効果を発揮することもできる。したがって、本発明の眼組織内注入は、特にこれまで治療の困難であった各種眼組織における疾患を1回の投与で長期に渡って治療することを可能とする。
すなわち、本発明は、
(1)ベタメサゾン−ポリエチレングリコール結合体を含有する眼組織内注入剤であって、
眼組織内への投与方法が硝子体内投与であり、該ポリエチレングリコールの分子量が5000〜200000である眼組織内注入剤、
(2)ポリエチレングリコールの分子量が5000〜50000である上記(1)記載の眼組織内注入剤、
である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、薬物とPEGが共有結合した物質を含有する眼組織内注入剤である。薬物−PEG結合体を眼組織内に注入すれば、虹彩毛様体、網膜、視神経、硝子体等の眼組織内に長期間滞留するので、1回の投与で長期に渡り薬効を持続させることが可能となる。
【0020】
本発明において、PEGは鎖状型、星型、枝分かれ型のいずれでもよい。鎖状型PEGには一般に両末端の水酸基を利用して薬物を結合させるので、薬物とPEGの結合比は1:1または2:1となる。星型、枝分かれ型のPEGには水酸基が複数存在するので複数個の薬物を共有結合させることができる。PEGの分子量には特に制限はなく、共有結合する薬物の種類・性質、薬物を滞留させる期間等を考慮して適宜選択できるが、通常300〜200000であり、より好ましくは1000〜50000である。
【0021】
PEGの末端に位置する水酸基を利用して、カルボキシル基等の官能基を有する薬物とPEGを直接共有結合させることができる。PEGは、また、薬物の種類に応じて、薬物との共有結合を容易に形成できるよう、アミノ基、チオール基、カルボキシル基等の官能基を有する形に前もって誘導しておいてもよい。即ち、薬物の種類に応じて、PEG側の水酸基を利用し、アミノ基、チオール基、カルボキシル基等の官能基を有する形にPEGを誘導した後、得られた誘導体に薬物を共有結合させることもできる。
【0022】
また、PEGの末端に位置する水酸基の両方を共有結合形成に利用してもよいが、一方だけを利用するときには、結合に関与しない水酸基はアルキル基、アシル基等の保護基で保護されていてもよく、PEGを官能基を有する形に誘導したときには、両方の官能基を共有結合形成に利用してもよいが、一方だけを利用することもできる。
【0023】
これらの結合を下記に模式的に示す(下記の各式中、Xは薬物を、Rは水素原子若しくはアルキル基、アシル基等の保護基、またはカルボキシアルキル基、アミノアルキル基等をそれぞれ表す)。
【0024】
・薬物が結合していない状態(PEGのみ):
【化1】
【0025】
・PEGの水酸基に薬物が1個結合:
【化2】
【0026】
・PEGの水酸基に薬物が2個結合:
【化3】
【0027】
・PEGのアミノ誘導体に薬物が1個結合
【化4】
【0028】
・PEGのカルボキシル誘導体に薬物が1個結合
【化5】
【0029】
・PEGのチオール誘導体に薬物が1個結合
【化6】
【0030】
上記に示した共有結合の形成には汎用される方法を用いればよく、例えばPEGのカルボン酸誘導体と薬物の水酸基をエステル化する方法などが用いられる。
【0031】
PEGと共有結合させる薬物の化学構造には特に制限はなく、PEGと結合し得る官能基を有しておればよい。具体例を挙げると、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、アルケニル基等を有する薬物である。PEGとの共有結合を容易に形成できるよう、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、イソチオシアネート基等の官能基を有する形に前もって誘導することもできる。薬物の種類としては、眼疾患に対して治療効果若しくは予防効果を有する薬物であれば特に制限はなく、例えば抗炎症薬、免疫抑制薬、抗ウイルス薬、抗菌薬、抗真菌薬、抗腫瘍薬、神経保護薬、血流改善薬、抗緑内障薬、鎮痛薬、麻酔薬、血管新生阻害薬、検査薬などが挙げられる。特に虹彩毛様体、網膜、視神経、硝子体などの内眼部の疾患には、種々の原因による内眼部炎症、ウイルスや細菌の感染症、新生血管や網膜細胞の増殖変化を伴った増殖性硝子体網膜症、種々の原因による網膜出血、網膜剥離、網膜芽細胞種などに有効な薬物が挙げられる。例えば、内眼部手術に伴う炎症の場合にはリン酸ベタメタゾン等の抗炎症薬が、自己免疫性ブドウ膜炎の場合にはシクロスポリン等の免疫抑制薬が、ウイルス性感染症の場合にはガンシクロビル等の抗ウィルス薬が、術後感染症の場合にはオフロキサシン等の抗菌薬が、増殖性硝子体網膜症の場合には塩酸ドキソルビシン、カルムスチン等の抗腫瘍薬、各種検査には眼科用の検査薬などが用いられる。
【0032】
薬物−PEG結合体を眼組織内へ注入する方法には、網膜下注射、硝子体内注射、強膜内注射、前房内注射、テノン嚢注射等が挙げられる。
【0033】
本発明の効果は、後述の眼内動態試験および薬理試験で詳細に説明する。ここで簡単に説明すると、眼内動態試験では、フルオレセイン−PEG結合体について、硝子体内注入後の内眼部(硝子体および網膜)における薬物−PEG結合体の滞留性を検討した。その結果、本発明の眼組織内注入剤により、硝子体および網膜において、薬物が長期間に渡って滞留することが明らかとなった。さらに薬理試験では、ベタメサンゾン−PEG結合体を硝子体内または結膜下に1回注入し、クリプトン・レーザー誘発脈絡膜血管新生に対する効果を検討した。その結果、本発明の眼組織内注入剤により脈絡膜血管新生が抑制され、薬物−PEG結合体が眼疾患の治療に有用であることが明らかになった。
【0034】
これらの試験結果より、PEGと結合させる薬物を適宜選択することにより、眼内の種々の疾患を少ない投与回数で有効に治療することが可能であることがわかる。また、本発明の眼組織内注入剤を用いると、虹彩毛様体、網膜、視神経、硝子体等の眼内組織に薬物を効率よく滞留させることができるので、薬物の量を低減することが可能となり、副作用の軽減効果も期待できる。
【0035】
本発明の眼組織内注入剤における薬物−PEG結合体の製剤形態は液剤が好ましい。例えば、薬物−PEG結合体をBSS(Balanced Salt Solution)溶液、グリセリン溶液、ヒアルロン酸溶液などに溶解させて調製することができ、必要に応じ安定化剤、等張化剤、緩衝剤、pH調節剤、無痛化剤、保存剤などを適量添加することができる。
【0036】
安定化剤としては、エデト酸ナトリウム等を挙げることができる。等張化剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ソルビトール、マンニトール等を挙げることができる。緩衝剤としては、クエン酸、リン酸水素ナトリウム、氷酢酸、トロメタモール等を挙げることができる。pH調節剤としては、塩酸、クエン酸、リン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール等を挙げることができる。防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、クロロブタノール等を挙げることができる。
【0037】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、これらの実施例は本発明の理解を助けるためのものであって、発明の範囲を限定するものではない。
【0038】
(合成例)
ベタメサゾン−PEG結合体の合成
窒素雰囲気下、メトキシ−PEG−プロピオン酸[Shearwater Polymers社製、平均分子量約5000](1.00g;約0.20mmol)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(49.2mg;0.23mmol)に塩化メチレン(7mL)を加え、0℃で20分攪拌した。次いで、ベタメタゾン(59.3mg;0.15mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(12.6mg;0.10mmol)を加え、全体を室温下一夜攪拌した。反応液を30倍量のジエテルエーテル中に投じ、沈殿物を濾取し、少量の冷アセトンおよびジエテルエーテルで洗浄すると、下記式に示す標的化合物1.02mgが白色結晶で得られた。収率は約70%であった。
【0039】
【化7】
【0040】
(眼内動態試験)
ウサギにおけるフルオロフォトメトリー法による眼内動態試験
実際に上記で製造した薬物−PEG結合体を用いて微量の組織移行を追跡することは測定技術上困難である。そこで、蛍光を有し高感度に測定できるフルオレセインをモデル薬物として、フルオレセイン−PEG結合体(以下FL−PEGとする)を合成して眼内動態試験を行った。比較物質としてフルオレセインナトリウム(以下FLとする)を用いた。
【0041】
FL−PEGの合成:
窒素雰囲気下、NH2−PEG−プロピオン酸[Shearwater Polymers社製](1.00g;約0.20mmol)およびトリエチルアミン(55.6μL;0.40mmol)をメタノール(100mL)に溶解させた。PEGは平均分子量約5000のものを用いた。次いで、フルオレセインイソチオシアネート(233mg;0.60mmol)を加え、全体を室温下一夜攪拌した。反応溶液を減圧乾固した後、固形物をクロロホルム/メタノール(1/1,v/v)に溶解させ、カラムクロマトグラフィーにより未反応フルオレセインイソチオシアネートを除去した。分画留分を濃縮し、濃縮物を30倍量のジエテルエーテル中に投じ、生じた沈殿物を濾取し、少量のジエテルエーテルで洗浄すると、下記式に示す標的化合物0.86gが薄黄色結晶で得られた。
【0042】
【化8】
【0043】
薬液の調製:
FL−PEG18mgに滅菌した2.6%グリセリン溶液10mLを加え、この液を攪拌しながらFL−PEGを溶解させて注射液を調製した。同様の操作をして、FLの10μg/mLの注射液を調製した。
【0044】
投与方法および測定方法:
1)塩酸ケタミン水溶液(50mg/mL)と塩酸キシラジン水溶液(50mg/mL)の7:3混合溶液を白色家ウサギに筋肉内投与しウサギを麻酔した。
【0045】
2)トロピカミド(0.5%)/塩酸フェニレフリン(0.5%)点眼液を点眼し散瞳させた。
【0046】
3)塩酸オキシブプロカイン(0.5%)点眼液で眼表面を麻酔した。
【0047】
4)眼毛様体扁平部より30G針の注射器を用いて、片眼に上記FL−PEGまたはFL薬液を硝子体中央部に100μLずつ注入した。
【0048】
5)硝子体内投与直後、投与後1、2、4、7、15、18、23、28、35、42、49および56日後にフルオロフォトメトリー装置を用いて、経時的に眼内蛍光強度を測定し、検量線を作成して硝子体および網膜における濃度推移を求めた。次に濃度推移から、モーメント法によりそれぞれの半減期を算出した。なお、眼内蛍光強度を測定する前に、上記2)の操作を行った。
【0049】
結果:
図1に硝子体中の濃度推移を示す。FLは投与後2日目以降は検出されなかったのに対し、FL−PEGは56日目でも検出され硝子体中に存在することがわかる。図2に網膜中の濃度推移を示す。FLは投与後1日目しか検出されなかったのに対し、FL−PEGでは56日目でも検出され網膜に存在することがわかる。
【0050】
次にFLおよびFL−PEGの硝子体中および網膜中の半減期を表1に示す。FL−PEGの硝子体内における半減期は3.4日であるのに対し、FLでは4時間未満にすぎないことから、FL−PEGは硝子体内における滞留期間を顕著に延長したといえる。網膜におけるFL−PEGの半減期は11.0日であった。FLは網膜への投与直後の1時点でしか検出されなかったため、半減期の計算はできなかったが、かなり短時間であることは明らかである。従って、FL−PEGが硝子体から網膜に移行して網膜内で長期間滞留していることが窺える。
【0051】
【表1】
【0052】
(表中の数値は、各3例の平均値を示す。FL−PEGの硝子体中半減期は4〜28日目の測定値を、FL−PEGの網膜中半減期は1〜56日目の測定値を、FLの硝子体中の半減期は投与直後および投与後1日目の測定値をそれぞれ用いて計算した。)
【0053】
(薬理試験)
1.ラットにおけるクリプトン・レーザー誘発脈絡膜血管新生に対する硝子体内投与ベタメサゾン−PEG結合体の効果
実施例に従って製造したベタメサゾン−PEG結合体(以下BM−PEGとする)をラットに硝子体内投与してクリプトン・レーザー誘発脈絡膜血管新生に対する効果を調べた。
【0054】
薬液の調製:
BM−PEG100mgに滅菌した生理食塩水1mLを加え、この液を攪拌しながらBM−PEGを溶解させて硝子体内投与用注射液を調製した。
【0055】
投与方法および測定方法:
1)塩酸ケタミン水溶液(50mg/mL)と塩酸キシラジン水溶液(50mg/mL)の7:1混合液1mL/kgをラットに筋肉内投与することにより全身麻酔を行った。
【0056】
2)光凝固は、0.5%トロピカミド−0.5%塩酸フェニレフリン溶液により散瞳させたのち、クリプトンレーザー光凝固装置(赤色)を使用し、スポットサイズ100μm、出力100mW、凝固時間0.1secの凝固条件で行った。
【0057】
3)組織観察用カバーグラスをコンタクトレンズとして用い、眼底後局部へ太い網膜血管を避けて散在的に1眼につき8個の光凝固を行った。なお、このとき光凝固はブルッフ膜の断裂を目的に、焦点を網膜深層に合わせて行った。光凝固後、眼底撮影を行った。
【0058】
4)眼毛様体扁平部より33G針の注射器を用いて、両眼に上記BM−PEGまたは基剤(生理食塩水)を硝子体中央部に5μLずつ注入した。
【0059】
5)光凝固後14日目に10%フルオレセイン0.1mLを尾静脈から注入して、蛍光眼底造影を行った。
【0060】
6)蛍光眼底造影で、蛍光漏出が認められない光凝固部位を陰性、明らかな蛍光漏出が認められるものを陽性と判断した。また、若干の蛍光漏出が認められる光凝固部位は、それが2箇所存在した時に陽性とした。以下の式に従って新生血管発現率を算出した。
【0061】
【式1】
新生血管発現率(%)=(陽性光凝固部位数/全光凝固部位数)×100
【0062】
結果:
硝子体内投与したBM−PEGの脈絡膜血管新生に対する効果を表2に示す。基剤投与眼における新生血管発現率は75.0%であったのに対し、BM−PEG投与眼は35.4%であり、BM−PEGの硝子体内投与によって新生血管の発現が抑制された。
【0063】
【表2】
【0064】
(表中の数値は、基剤=7眼、BM−PEG=6眼の平均値を示す。)
【0065】
2.ラットにおけるクリプトン・レーザー誘発脈絡膜血管新生に対する結膜下投与ベタメサゾン−PEG結合体の効果
実施例に従って製造したベタメサゾン−PEG結合体(以下BM−PEGとする)をラットに結膜下投与してクリプトン・レーザー誘発脈絡膜血管新生に対する効果を調べた。比較物質としてリン酸ベタメサゾン(以下BPとする)を用いた。
【0066】
薬液の調製:
BM−PEG40mgに滅菌した生理食塩水1mLを加え、この液を攪拌しながらBM−PEGを溶解させて結膜下投与用注射液を調製した。同様の操作をして、BPの2.8mg/mLの注射液を調製した。
【0067】
投与方法および測定方法:
投与方法および測定方法は、上記硝子体内投与試験の4)項を以下のように変更して行った。
【0068】
4)30G針の注射器を用いて、両眼に上記BM−PEGまたはBPを結膜下に50μLずつ注入した。
【0069】
結果:
結膜下投与したBM−PEGの脈絡膜血管新生に対する効果を表3に示す。基剤投与眼における新生血管発現率は71.9%であったのに対し、BM−PEG投与眼は35.4%であり、BM−PEGの結膜下投与投与によって新生血管の発現が抑制された。また、PEGに結合していないBPの新生血管発現率は50.0%であり、抑制効果はみられたもののBM−PEGより抑制効果が弱かった。この結果から、PEG結合体にすることによって眼組織内での滞留期間が延長され、抑制効果が増大したことが示された。
【0070】
【表3】
【0071】
(表中の数値は、各8眼の平均値を示す。)
【0072】
【発明の効果】
本発明の薬物−PEG結合体を含有する眼組織内注入剤を用いることにより、虹彩毛様体、硝子体、網膜、視神経などの眼組織内に薬物を長期間滞留させることができる。したがって、本発明の眼組織内注入剤は、1回の投与で種々の眼組織における疾患を長期に渡って治療または予防することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】硝子体における濃度推移(56日間)を示すグラフである。
【図2】網膜における濃度推移(56日間)を示すグラフである。
Claims (2)
- ベタメサゾン−ポリエチレングリコール結合体を含有する眼組織内注入剤であって、眼組織内への投与方法が硝子体内投与であり、該ポリエチレングリコールの分子量が5000〜200000である眼組織内注入剤。
- ポリエチレングリコールの分子量が5000〜50000である請求項1記載の眼組織内注入剤。
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