JP4821038B2 - 除草剤耐性植物 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、除草剤耐性植物に関する。
【0002】
【従来の技術】
雑草防除は作物の収量向上や高品質化を図るうえで重要な作業であり、雑草防除作業の効率化の為に主として除草剤が使用されている。防除の対象となる雑草は種類も多く、発生も長期間にわたるため、必要に応じて、異なる除草作用機構で作用する複数の化合物が雑草防除に用いられることがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような除草剤の使用場面において、作物と近縁の雑草とを明確に区別して、雑草のみを選択的に防除することは困難な場合があることから、異なる除草作用機構で作用する複数の化合物に対して耐性を示す作物の開発が切望されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような状況下、本発明者らは鋭意検討を行った結果、ある種のタンパク質を植物の細胞で産生させることにより、グリフォセートおよびその塩に対する耐性とプロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼ阻害型除草剤に対する耐性とを有する植物を作出することが可能であることを見出し本発明に至った。
即ち、本発明は、
1)下記(1)および(2)のうちから選ばれる1以上の酵素活性を有し、該酵素活性によって、植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を阻害する量の除草剤に対して耐性を示す植物であって、
(1)植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性とは実質的に異なる5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性。
(2)植物の天然のグリフォセートオキシドリダクターゼ活性とは実質的に異なるグリフォセートオキシドリダクターゼ活性。
かつ、下記(3)、(4)および(5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子が導入されてなり該遺伝子を発現する植物(以下、本発明植物1と記す。)、
(3)プロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼ阻害型除草剤の殺草活性に関わる物質に特異的に結合する。
(4)当該タンパク質が特異的に結合する物質に対する変性能を実質的に持たない。
(5)免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない。
2)タンパク質が、プロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼ阻害型除草剤に有効成分として含まれる物質に特異的に結合する性質を有するタンパク質である前項1)記載の植物、
3)タンパク質が、植物細胞内でプロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼ阻害型除草剤の雑草防除活性発現に関わる植物細胞内因性物質に特異的に結合する性質を有するタンパク質である前項1)記載の植物、
4)タンパク質が、プロトポルフィリンIXに特異的に結合する性質を有するタンパク質である前項1)または3)記載の植物、
5)タンパク質が、マグネシウムケラターゼのプロトポルフィリンIX結合サブユニットタンパク質であるか、または該タンパク質の改変タンパク質であってプロトポルフィリンIXに特異的に結合する性質を有するタンパク質である前項1)、3)または4)記載の植物、
6)タンパク質が、プロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合する性質を有するタンパク質である前項1)または3)記載の植物、
7)タンパク質が、プロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼの改変タンパク質であって、プロトポルフィリノーゲンIXに対する酸化能を持たずプロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合する性質を有するタンパク質である前項1)、3)または6)記載の植物、
8)タンパク質が、プロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼの改変タンパク質であって、プロトポルフィリノーゲンIXに対する酸化能を持たずプロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼ阻害型除草剤に有効成分として含まれる物質に特異的に結合する性質を有するタンパク質である前項1)、2)または6)記載の植物、
9)下記(1)および(2)のうちから選ばれる1以上の酵素活性を有し、該酵素活性によって、植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を阻害する量の除草剤に対して耐性を示す植物であって、
(1)植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性とは実質的に異なる5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性。
(2)植物の天然のグリフォセートオキシドリダクターゼ活性とは実質的に異なるグリフォセートオキシドリダクターゼ活性。
かつ、下記(3)、(4)および(5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子が導入されてなり該遺伝子を発現する植物(以下、本発明植物2と記す。)、
(3)プロトポルフィリンIXに特異的に結合する。
(4)プロトポルフィリノーゲンIXに対する変性能を持たない。
(5)免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない。
10)タンパク質がフェロケラターゼであるか、または該タンパク質の改変タンパク質であってプロトポルフィリンIXに特異的に結合する性質を有するタンパク質である前項9)記載の植物、
11)下記(1)および(2)のうちから選ばれる1以上の酵素活性を有し、該酵素活性によって、植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を阻害する量の除草剤に対して耐性を示す植物であって、
(1)植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性とは実質的に異なる5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性。
(2)植物の天然のグリフォセートオキシドリダクターゼ活性とは実質的に異なるグリフォセートオキシドリダクターゼ活性。
かつ、下記(3)、(4)および(5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子が導入されてなり該遺伝子を発現する植物(以下、本発明植物3と記す。)、
(3)プロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合する。
(4)コプロポルフィリノーゲンIIIに対する変性能を持つ。
(5)免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない。
12)タンパク質がコプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼであるか、または該タンパク質の改変タンパク質であってプロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合する性質を有するタンパク質である前項11)記載の植物、
13)前項1)〜12)のいずれかに記載の植物を増殖させることを特徴とする除草剤耐性植物の製造方法、
14)前項1)〜12)のいずれかに記載の植物の栽培域に除草剤を散布する雑草防除方法、
15)前項1)〜12)のいずれかに記載の植物の栽培域に除草剤を散布する除草剤耐性植物の選抜方法、
16)前項1)〜12)のいずれかに記載の植物の細胞の培養域に除草剤を添加する除草剤耐性植物細胞の選抜方法、
17)下記(1)および(2)のうちから選ばれる1以上のタンパク質をコードする遺伝子を植物細胞に導入し発現させる工程と、
(1)5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を実質的に有するタンパク質。
(2)グリフォセートオキシドリダクターゼ活性を実質的に有するタンパク質。
下記(3)、(4)および(5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を植物細胞に導入し発現させる工程とを含むことを特徴とする除草剤耐性植物の作製方法、
(3)プロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼ阻害型除草剤の殺草活性に関わる物質に特異的に結合する。
(4)当該タンパク質が特異的に結合する物質に対する変性能を実質的に持たない。
(5)免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない。
18)下記(1)および(2)のうちから選ばれる1以上の酵素活性を有し、該酵素活性によって、植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を阻害する量の除草剤に対して耐性を示す植物の細胞に、
(1)植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性とは実質的に異なる5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性。
(2)植物の天然のグリフォセートオキシドリダクターゼ活性とは実質的に異なるグリフォセートオキシドリダクターゼ活性。
下記(3)、(4)および(5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を植物細胞に導入し発現させる工程を含むことを特徴とする除草剤耐性植物の作製方法、
(3)プロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼ阻害型除草剤の殺草活性に関わる物質に特異的に結合する。
(4)当該タンパク質が特異的に結合する物質に対する変性能を実質的に持たない。
(5)免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない。
19)下記(1)、(2)および(3)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子が導入されてなり該遺伝子を発現する植物細胞に、
(1)プロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼ阻害型除草剤の殺草活性に関わる物質に特異的に結合する。
(2)当該タンパク質が特異的に結合する物質に対する変性能を実質的に持たない。
(3)免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない。
下記(4)および(5)のうちから選ばれる1以上のタンパク質をコードする遺伝子を導入し発現させる工程を含むことを特徴とする除草剤耐性植物の作製方法、
(4)5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を実質的に有するタンパク質。
(5)グリフォセートオキシドリダクターゼ活性を実質的に有するタンパク質。
20)下記(1)および(2)のうちから選ばれる1以上のタンパク質をコードする遺伝子を植物細胞に導入し発現させる工程と、
(1)5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を実質的に有するタンパク質。
(2)グリフォセートオキシドリダクターゼ活性を実質的に有するタンパク質。
下記(3)、(4)および(5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を植物細胞に導入し発現させる工程とを含むことを特徴とする除草剤耐性植物の作製方法、
(3)プロトポルフィリンIXに特異的に結合する。
(4)プロトポルフィリノーゲンIXに対する変性能を持たない。
(5)免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない。
21)下記(1)および(2)のうちから選ばれる1以上の酵素活性を有し、該酵素活性によって、植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を阻害する量の除草剤に対して耐性を示す植物の細胞に、
(1)植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性とは実質的に異なる5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性。
(2)植物の天然のグリフォセートオキシドリダクターゼ活性とは実質的に異なるグリフォセートオキシドリダクターゼ活性。
下記(3)、(4)および(5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を植物細胞に導入し発現させる工程を含むことを特徴とする除草剤耐性植物の作製方法、
(3)プロトポルフィリンIXに特異的に結合する。
(4)プロトポルフィリノーゲンIXに対する変性能を持たない。
(5)免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない。
22)下記(1)、(2)および(3)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子が導入されてなり該遺伝子を発現する植物細胞に、
(1)プロトポルフィリンIXに特異的に結合する。
(2)プロトポルフィリノーゲンIXに対する変性能を持たない。
(3)免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない。
下記(4)および(5)のうちから選ばれる1以上のタンパク質をコードする遺伝子を導入し発現させる工程を含むことを特徴とする除草剤耐性植物の作製方法、
(4)5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を実質的に有するタンパク質。
(5)グリフォセートオキシドリダクターゼ活性を実質的に有するタンパク質。
23)下記(1)および(2)のうちから選ばれる1以上のタンパク質をコードする遺伝子を植物細胞に導入し発現させる工程と、
(1)5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を実質的に有するタンパク質。
(2)グリフォセートオキシドリダクターゼ活性を実質的に有するタンパク質。
下記(3)、(4)および(5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を植物細胞に導入し発現させる工程とを含むことを特徴とする除草剤耐性植物の作製方法、
(3)プロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合する。
(4)コプロポルフィリノーゲンIIIに対する変性能を持つ。
(5)免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない。
24)下記(1)および(2)のうちから選ばれる1以上の酵素活性を有し、該酵素活性によって、植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を阻害する量の除草剤に対して耐性を示す植物の細胞に、
(1)植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性とは実質的に異なる5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性。
(2)植物の天然のグリフォセートオキシドリダクターゼ活性とは実質的に異なるグリフォセートオキシドリダクターゼ活性。
下記(3)、(4)および(5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を植物細胞に導入し発現させる工程を含むことを特徴とする除草剤耐性植物の作製方法、
(3)プロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合する。
(4)コプロポルフィリノーゲンIIIに対する変性能を持つ。
(5)免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない。
25)下記(1)、(2)および(3)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子が導入されてなり該遺伝子を発現する植物細胞に、
(1)プロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合する。
(2)コプロポルフィリノーゲンIIIに対する変性能を持つ。
(3)免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない。
下記(4)および(5)のうちから選ばれる1以上のタンパク質をコードする遺伝子を導入し発現させる工程を含むことを特徴とする除草剤耐性植物の作製方法、
(4)5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を実質的に有するタンパク質。
(5)グリフォセートオキシドリダクターゼ活性を実質的に有するタンパク質。
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、さらに詳細に本発明を説明する。
プロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼ阻害型除草剤とは、プロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼ(protoporphyrinogen IX oxidase; EC 1.3.3.4。以下、PPOと記す。)の活性を阻害する化合物(以下、PPO阻害型除草性化合物と記す。)を有効成分として含む除草剤を意味する。
【0006】
本発明において、PPO阻害型除草剤の殺草活性に関わる物質(以下、本物質と記す。)とは、PPO阻害型除草性化合物、および、PPO阻害型除草剤が植物に施用された際に植物細胞内で該除草剤の殺草活性発現に関わる植物細胞内因性物質を意味する。
PPO阻害型除草剤に有効成分として含まれる化合物としては、Duke, S.O., Rebeiz, C.A. ACS Symposium Series 559, Porphyric Pesticides, Chemistry, Toxicology, and Pharmaceutical Applications. American Chemical Society, Washington DC (1994)等に記載の化合物等があげられる。
PPO阻害型除草性化合物は多くの異なる構造の分子種を包含し[Duke et al., Weed Sci. 39: p465(1991); Nandihalli et al.、Pesticide Biochem. Physiol. 43: p193(1992); Matringe et al., FEBS Lett. 245: p35(1989); Yanase, Andoh, Pesticide Biochem. Physiol. 35: p70(1989)]、具体的には、ジフェニルエーテル〔例えばクロルメトキシニル、ビフェノックス、クロルニトロフェン(CNP)、アシフルオルフェン{5-[2-クロロ-4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]-2-ニトロ安息香酸}、アシフルオルフェンのエチルエステル、アシフルオルフェン-ソディウム、オキシフルオルフェン[2-クロロ-1-(3-エトキシ-4-ニトロフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンゼン]、オキサジアゾール〔例えばオキサジアゾン{3-[2,4-ジクロロ-5-(1-メチルエトキシ)フェニル]-5-(1,1-ジメチルエチル)-1,3,4-オキサジアゾール-2 (3H)-オン)}〕、環状イミド〔例えば S-23142[N-(4-クロロ-2-フルオロ-5-プロパギルオキシフェニル)-3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド]、クロロフタリム[N-(4-クロロフェニル)-3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド]〕、フェニルピラゾール〔例えば TNPP-エチル{エチル 2-[1-(2,3,4-トリクロロフェニル)-4-ニトロピラゾリル-5-オキシ]プロピオネート}〕、ピリジン誘導体〔例えば LS82-556[N3-(1-フェニルエチル)-2,6-ジメチル-5-プロピオニルニコチンアミド]〕、フェノピレート、フェノピレートの O-フェニルピロリジノカルバメート類似体、フェノピレートのピペリジノカルバメート類似体等である。
【0007】
特に重要なジフェニルエーテルとしては、下記 化1記載の構造式1〜7で示される化合物等があげられる[構造式4: Maigrot et al.、Brighton Crop Protection Conference-Weeds:47-51(1989) 参照; 構造式5: Hayashi et al.、Brighton Crop Protection Conference-Weeds: 53-58(1989) 参照; 構造式6: ビフェノックス、Dest et al.、Proc. Northeast Weed Sci. Conf. 27:31(1973) 参照]。
【化1】
【0008】
さらに、その他の特に重要なPPO阻害型除草性化合物として、下記 化2記載の一般式で示される化合物等をあげることができ、より具体的には、下記 化7〜化10記載の構造式8〜37で示される化合物などがあげられる。
【化2】
J−G
ここで、Gとしては下記 化3記載のG−1〜9で示される基があげられ、Jとしては下記 化4〜6記載のJ−1〜30で示される基があげられる。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0009】
ここで、式 J-5、J-6、J-12 および J-24 における破線は、左側の環が一重結合のみを含むことまたは環内のひとつの結合が炭素原子間の二重結合であることを表し、
X は酸素原子または硫黄原子を表し、
Y は酸素原子または硫黄原子を表し、
R1 は水素原子またはハロゲン原子を表し、
R2 は水素原子、C1-C8 アルキル基、C1-C8 ハロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、-OR27 基、-SH 基、-S(O)pR27 基、-COR27 基、-CO2R27 基、-C(O)SR27 基、-C(O)NR29R30 基、-CHO 基、-CR27=NOR36 基、-CH=CR37CO2R27 基、-CH2CHR37CO2R27 基、-CO2N=CR31R32 基、ニトロ基、シアノ基、-NHSO2R33 基、-NHSO2NHR33 基、-NR27R38 基、-NH2 基、または、1つ以上の同種もしくは異種の C1-C4アルキル基で置換されていてもよいフェニル基を表し、
p は 0、1 または 2 を表し、
R3 は C1-C2 アルキル基、C1-C2 ハロアルキル基、-OCH3 基、-SCH3 基、-OCHF2基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表し、
R4 は水素原子、C1-C3 アルキル基、C1-C3 ハロアルキル基、またはハロゲン原子を表し、
R5 は水素原子、C1-C3 アルキル基、ハロゲン原子、C1-C3 ハロアルキル基、シクロプロピル基、ビニル基、C2 アルキニル基、シアノ基、-C(O)R38 基、-CO2R38 基、-C(O)NR38R39 基、-CR34R35CN 基、-CR34R35C(O)R38 基、-CR34R35CO2R38基、-CR34R35C(O)NR38R39 基、-CHR34OH 基、-CHR34OC(O)R38 基、または -OCHR34OC(O)NR38R39 基を表すか、あるいは、G が G-2 もしくは G-6 の場合に R4 とR5とはこれらが結合している炭素原子とで C=O 基を表していてもよく、
R6 は C1-C6 アルキル基、C1-C6 ハロアルキル基、C2-C6 アルコキシアルキル基、C3-C6 アルケニル基、または C3-C6 アルキニル基を表し、
X1 は直接結合、酸素原子、硫黄原子、-NH基、-N(C1-C3 アルキル)基、-N(C1-C3
ハロアルキル)基、または -N(アリル)基を表し、
R7 は水素原子、C1-C6 アルキル基、C1-C6 ハロアルキル基、ハロゲン原子、-S(O)2(C1-C6アルキル)基、または -C(=O)R40 基を表し、
R8 は水素原子、C1-C8 アルキル基、C3-C8 シクロアルキル基、C3-C8 アルケニル基、C3-C8 アルキニル基、C1-C8 ハロアルキル基、C2-C8 アルコキシアルキル基、C3-C8 アルコキシアルコキシアルキル基、C3-C8 ハロアルキニル基、C3-C8 ハロアルケニル基、C1-C8 アルキルスルホニル基、C1-C8 ハロアルキルスルホニル基、C3-C8 アルコキシカルボニルアルキル基、-S(O)2NH(C1-C8 アルキル)基、-C(O)R41 基、またはフェニル環上で R42 で置換されていてもよいベンジル基を表し、
n および m はそれぞれ独立して 0、1、2 または 3 であり、かつ m + n が 2 または 3 を表し、
Z は -CR9R10 基、酸素原子、硫黄原子、-S(O) 基、-S(O)2 基、または -N(C1-C4 アルキル)基を表し、
それぞれの R9 は独立して水素原子、C1-C3 アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、C1-C6 アルコキシ基、C1-C6 ハロアルキル基、C1-C6 ハロアルコキシ基、C2-C6 アルキルカルボニルオキシ基、または C2-C6 ハロアルキルカルボニルオキシ基を表し、
それぞれの R10 は独立して水素原子、C1-C3 アルキル基、ヒドロキシ基、またはハロゲン原子を表し、
R11 および R12 はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1-C6 アルキル基、C3-C6 アルケニル基、または C1-C6 ハロアルキル基を表し、
R13 は水素原子、C1-C6 アルキル基、C1-C6 ハロアルキル基、C3-C6 アルケニル基、C3-C6 ハロアルケニル基、C3-C6 アルキニル基、C3-C6 ハロアルキニル基、HC(=0)基、(C1-C4 アルキル)C(=O) 基、または -NH2 基を表し、
R14 は C1-C6 アルキル基、C1-C6 アルキルチオ基、C1-C6 ハロアルキル基、または -N(CH3)2 基を表し、
W は窒素原子または -CR15 基を表し、
R15 は水素原子、C1-C6 アルキル基、ハロゲン原子、または、C1-C6 アルキル基、1 ないし 2 個のハロゲン原子、C1-C6 アルコキシ基もしくは -CF3 基で置換されていてもよいフェニル基を表し、
それぞれの Q は独立して酸素原子または硫黄原子を表し、
Q1 は酸素原子または硫黄原子を表し、
Z1 は -CR16R17 基、酸素原子、硫黄原子、-S(O) 基、-S(O)2 基、または -N(C1-C4 アルキル)基を表し、
それぞれの R16 は独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、C1-C6 アルコキシ基、C1-C6 ハロアルキル基、C1-C6 ハロアルコキシ基、C2-C6 アルキルカルボニルオキシ基、または C2-C6 ハロアルキルカルボニルオキシ基を表し、
それぞれの R17 は独立して水素原子、ヒドロキシ基、または ハロゲン原子を表し、
R18 は C1-C6 アルキル基、ハロゲン原子、または C1-C6 ハロアルキル基を表し、
R19 および R20 はそれぞれ独立して水素原子、C1-C6 アルキル基、または C1-C6 ハロアルキル基を表し、
Z2 は酸素原子、硫黄原子、-NR9 基、または-CR9R10 基を表し、
R21 および R22 はそれぞれ独立して C1-C6 アルキル基、C1-C6 ハロアルキル基、C3-C6 アルケニル基、C3-C6 ハロアルケニル基、C3-C6 アルキニル基、または C3-C6 ハロアルキニル基を表し、
R23 は水素原子、ハロゲン原子、またはシアノ基を表し、
R24 は C1-C6 アルキルスルフォニル基、C1-C6 アルキル基、C1-C6 ハロアルキル基、C3-C6 アルケニル基、C3-C6 アルキニル基、C1-C6 アルコキシ基、C1-C6 ハロアルコキシ基、またはハロゲン原子を表し、
R25 は C1-C6 アルキル基、C1-C6 ハロアルキル基、C3-C6 アルケニル基、または C3-C6 アルキニル基を表し、
R26 は C1-C6 アルキル基、C1-C6 ハロアルキル基、または、環上で C1-C6 アルキル基、1 ないし 2 個のハロゲン原子、1 ないし 2 個のニトロ基、C1-C6 アルコキシ基、および CF3 基からなるグループの中から選択される置換基で置換されていてもよいフェニル基を表し、
W1 は窒素原子または CH 基を表し、
T は下記の一般式T-1、T-2、またはT-3 のいずれかの基を表し、
(式中、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、E9、E10、E11、およびE12 はそれぞれ水素原子または C1-C3 アルキル基を表す。)
R27 は C1-C8 アルキル基、C3-C8 シクロアルキル基、C3-C8 アルケニル基、C3-C8 アルキニル基、C1-C8 ハロアルキル基、C2-C8 アルコキシアルキル基、C2-C8アルキルチオアルキル基、C2-C8 アルキルスルフィニルアルキル基、C2-C8 アルキルスルフォニルアルキル基、C1-C8 アルキルスルフォニル基、
フェニル環上でハロゲン原子および C1-C4 アルキル基からなるグループの中から選択される少なくともひとつの置換基で置換されていてもよいフェニルスルフォニル基、
C4-C8 アルコキシアルコキシアルキル基、C4-C8 シクロアルキルアルキル基、C6-C8 シクロアルコキシアルキル基、C4-C8 アルケニルオキシアルキル基、C4-C8 アルキニルオキシアルキル基、C3-C8 ハロアルコキシアルキル基、C4-C8 ハロアルケニルオキシアルキル基、C4-C8 ハロアルキニルオキシアルキル基、C6-C8 シクロアルキルチオアルキル基、C4-C8 アルケニルチオアルキル基、C4-C8 アルキニルチオアルキル基、
環上でハロゲン原子、C1-C3 アルキル基および C1-C3 ハロアルキル基からなるグループの中から選択される少なくともひとつの置換基で置換されていてもよいフェノキシ基で置換された C1-C4 アルキル基、環上でハロゲン原子、C1-C3 アルキル基および C1-C3 ハロアルキル基からなるグループの中から選択される少なくともひとつの置換基で置換されていてもよいベンジルオキシ基で置換された C1-C4 アルキル基、
C4-C8トリアルキルシリルアルキル基、C3-C8 シアノアルキル基、C3-C8 ハロシクロアルキル基、C3-C8 ハロアルケニル基、C5-C8 アルコキシアルキニル基、C5-C8 ハロアルコキシアルキニル基、C5-C8 アルキルチオアルケニル基、C3-C8 ハロアルキニル基、C5-C8 アルコキシアルキニル基、C5-C8 ハロアルコキシアルキニル基、C5-C8 アルキルチオアルキニル基、C2-C8 アルキルカルボニル基、
環上でハロゲン原子、C1-C3 アルキル基および C1-C3 ハロアルキル基からなるグループの中から選択される少なくともひとつの置換基で置換されていてもよいベンジル基、
-CHR34COR28 基、-CHR34COOR28 基、-CHR34P(O)(OR28)2 基、-CHR34P(S)(OR28)2基、-CHR34C(O)NR29R30 基、または -CHR34C(O)NH2 基を表し、
R28 は C1-C6 アルキル基、C2-C6 アルケニル基、C3-C6 アルキニル基、またはテトラヒドロフラニル基を表し、
R29 および R31 は独立して水素原子、または C1-C4 アルキル基を表し、
R30 および R32 は独立して C1-C4 アルキル基、または環上でハロゲン原子、C1-C3 アルキル基および C1-C3 ハロアルキル基からなるグループの中から選択される少なくともひとつの置換基で置換されていてもよいフェニル基を表し、
あるいは、
R29と R30とで -(CH2)5-、-(CH2)4-、または -CH2CH2OCH2CH2- を表していてもよく、このようにして形成されるそれぞれの環では、 C1-C3 アルキル基、フェニル基およびベンジル基からなるグループの中から選択される置換基で置換されていてもよい、
あるいは、
R31と R32とはこれらが結合している炭素原子とで C3-C8 シクロアルキル基を表していてもよく、
R33 は C1-C4 アルキル基、C1-C4 ハロアルキル基、または C3-C6 アルケニル基を表し、
R34 および R35 は独立して水素原子または C1-C4 アルキル基を表し、
R36 は水素原子、C1-C6 アルキル基、C3-C6 アルケニル基、または C3-C6 アルキニル基を表し、
R37 は水素原子、C1-C4 アルキル基、またはハロゲン原子を表し、
R38 は水素原子、C1-C6 アルキル基、C3-C6 シクロアルキル基、C3-C6 アルケニル基、C3-C6 アルキニル基、C2-C6 アルコキシアルキル基、C1-C6 ハロアルキル基、環上でハロゲン原子、C1-C4 アルキル基および C1-C4 アルコキシ基からなるグループの中から選択される少なくともひとつの置換基で置換されていてもよいフェニル基、-CH2CO2(C1-C4 アルキル)基、または -CH(CH3)CO2(C1-C4 アルキル)基を表し、
R39 は水素原子、C1-C2 アルキル基、または C(O)O(C1-C4 アルキル)基を表し、R40 は水素原子、C1-C6 アルキル基、C1-C6 アルコキシ基、または NH(C1-C6 アルキル)基を表し、
R41 は C1-C6 アルキル基、C1-C6 ハロアルキル基、C1-C6 アルコキシ基、NH(C1-C6 アルキル)基、R42 基で置換されていてもよいフェニル基、ベンジル基、または C2-C8 ジアルキルアミノ基を表し、
R42 は C1-C6 アルキル基、1 ないし 2 個のハロゲン原子、C1-C6 アルコキシ基、または CF3 基を表す。
【0010】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0011】
さらに、PPO阻害型除草性化合物として、下記 化11記載の一般式で示される N-置換ピラゾール(国際特許公開 WO 94/08999、WO 93/10100 および Schering に対する米国特許第5405829参照)等があげられる。
【化11】
ここで、R43 は C1-C4 アルキル基を表し、
R44 は C1-C4 アルキル基、 C1-C4 アルキルチオ基、 C1-C4 アルコキシ基、 C1-C4ハロアルキル基、 C1-C4 ハロアルキルチオ基、または C1-C4 ハロアルコキシ基を表し、
あるいは、
R43 とR44とで-(CH2)3- または -(CH2)4- を表していてもよく、
R45 は水素原子またはハロゲン原子を表し、
R46 は水素原子または C1-C4 アルキル基を表し、
R47 は水素原子、ニトロ基、シアノ基、-COOR49 基、-C(=X)NR50R51 基、または -C(=X2)R52 基を表し、
R48 は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子および水酸基からなるグループの中から選択される少なくともひとつの置換基で置換されていてもよい C1-C4 アルキル基、 C1-C4 アルコキシ基、環上でハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、 C1-C4 アルキル基、 C1-C4 アルコキシ基およびハロ-C1-C4 アルキル基からなるグループの中から選択される少なくともひとつの置換基で置換されていてもよいフェニル基、ピローリル基、 C2-C8 アルキル基、 C3-C8 アルケニル基、 C3-C8 アルキニル基、 C3-C8 アルコキシ基、(該C2-C8 アルキル基、該 C3-C8 アルケニル基、 該C3-C8 アルキニル基および 該C3-C8 アルコキシ基には少なくともひとつ以上の酸素原子が挿入されていてもよい)、または以下に示す基を表し、
R49 R50 およびR51 は同じであっても異なってもよく、水素原子または C1-C4 アルキル基を表し、
あるいは、
R50 とR51とはこれらが結合する窒素原子とで5員もしくは6員の飽和した環を形成していてもよい、
R52 は水素原子、 C1-C4 アルキル基、または少なくとも1つ以上のハロゲン原子で置換された C1-C4 アルキル基を表し、
R53 は水素原子、 C1-C4 アルキル基、 C2-C6 アルケニル基、 C3-C6 アルキニル基、フェニル基(該 C1-C4 アルキル基、該 C2-C6 アルケニル基、該C3-C6 アルキニル基、および該フェニル基はハロゲン原子で置換されていてもよい)、 C3-C8 シクロアルキル基、シアノメチル基、または R63CO-基を表し、
R54 は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい C1-C6 アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい C2-C6 アルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい C3-C6 アルキニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、 C3-C8 シクロアルキル基、シアノメチル基、 C1-C4 アルコキシ C1-C6 アルキル基、 ジ C1-C4 アルキルアミノ C1-C4 アルキル基、テトラヒドロフルフリルメチル基、 C3-C6 アルキニルオキシ C1-C4 アルキル基、ベンジル基、環上でハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、 C1-C4 アルキル基、 C1-C4 アルコキシ基およびハロ C1-C4 アルキル基からなるグループの中から選択される置換基で置換されていてもよいベンジル基、-C(=X2)R63基、-(CH2)a-(O)d-R70 基、-(CH2)a-O-(CH2)b-R70 基、または-(CH2)a-X2-R76基を表し、
あるいは、
R53 とR54とはこれらが結合している窒素原子とで、3員、5員もしくは6員の飽和した環または5員もしくは6員の芳香環(該飽和した環および該芳香環においては1つの炭素原子が1つの酸素原子で置換されていてもよい)を形成していてもよい、
R55 は水素原子、 C1-C4 アルキル基、 C2-C6 アルケニル基、または C3-C6 アルキニル基を表し、あるいはR55 とR56 とで-(CH2)e-基を形成していてもよい、
R56 とR57 はそれぞれ C1-C4 アルキル基、 C2-C6 アルケニル基、 C3-C6 アルキニル基もしくはフェニル基(該C1-C4 アルキル基、 該C2-C6 アルケニル基、 該C3-C6 アルキニル基および該フェニル基はハロゲン原子で置換されていてもよい)、 水素原子、 C3-C6 シクロアルキル基、-X2R60 基、または-NR61R62基を表し、
R58 は水素原子、 C1-C6 アルキル基、 C2-C6 アルケニル基、 C3-C6 アルキニル基、 C1-C4 アルキルカルボニル基、シアノ C1-C3 アルキル基、 C1-C4 アルコキシカルボニル C1-C4 アルキル基、ジ C1-C4 アルコキシカルボニル C1-C4 アルキル基、ベンジル基、 C1-C4アルコキシ- C1-C4アルキニル基、-(CH2)a-R75基、-(CH2)a-X2-R72基、-(CH2)a-X2-(CH2)b-R72基、または-(CH2)a-X2-(CH2)b-X2-(CH2)c-R72基を表し、
R59 は水素原子、 C1-C4 アルキル基、 C2-C6 アルケニル基、 C3-C6 アルキニル基、シアノ C1-C3 アルキル基、 C1-C4 アルキルカルボニル C1-C3 アルキル基、またはフェニル基を表し、
R60 は少なくとも1つのハロゲン原子で置換されていてもよい C1-C4 アルキル基を表し、
R61 とR62 は同じであっても異なってもよく、水素原子、または C1-C4 アルキル基を表し、
R63 は少なくとも1つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよい C1-C4 アルキル基、 C1-C4 アルコキシ C1-C4 アルキル基、 C1-C4 アルキルチオ C1-C4 アルキル基、 C3-C6 シクロアルキル基、環上でハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、 C1-C4 アルキル基、 C1-C4 アルコキシ基およびハロ C1-C4 アルキル基からなるグループの中から選択されるひとつの置換基で置換されていてもよいフェニル基、-NR73R74基、または-(CH2)a-(O)d-R75基を表し、
R64 は C1-C4 アルコキシカルボニル基、またはカルボキシル基を表し、
R65 はクロロメチル基、シアノメチル基、少なくとも1つ以上の酸素原子が挿入されていてもよい C3-C6 シクロアルキル基、または C1-C4 アルコキシカルボニル C1-C4 アルキル基を表し、
R66 は水酸基、または-NR67R68を表し、
A は -NR67R68、または -S(O)f-R69基を表し、
R67 とR68 は同じであっても異なってもよく、水素原子、または C1-C4 アルキル基を表し、
R69 は C1-C4 アルキル基、または C1-C4 ハロアルキル基を表し、
R70 は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、少なくとも1つ以上の C1-C4 アルコキシ基で置換されていてもよい C1-C4 アルキル基、少なくとも1つ以上の酸素原子が挿入されていてもよい C3-C6シクロアルキル基、1もしくは2個のメチル基で置換されていてもよい C3-C6シクロアルキル基、フリル基、チエニル基、または -C(=O)R71基を表し、
R71 とR72 は同じであっても異なってもよく、 C1-C4 アルキル基、または C1-C4 アルコキシ基を表し、
R73 とR74 は同じであっても異なってもよく、 C1-C4 アルキル基、またはフェニル基を表し、
R75 は少なくとも1つ以上の酸素原子が挿入されていてもよい C3-C6シクロアルキル基、1または2個のメチル基で置換されていてもよい C3-C6シクロアルキル基、フリル基、チエニル基、または -C(=O)R71基を表し、
R76 は C1-C4 アルキル基を表し、
a、b、およびc はそれぞれ独立して1、2、または3を表し、
d は0または1を表し、
e は2または3を表し、
f は1または2を表し、
X2 は酸素原子または硫黄原子を表す。
【0012】
その他の N-置換ピラゾールとして、下記 化12記載の構造式38で示されるニピラクロフェン{"The Pesticide Manual",9th ed.、C. R. Worthing 編、British Crop Protection Council,Surrey (1991) の 621 頁参照}、および 3-置換-2-アリール-4,5,6,7-テトラヒドロインダゾール{Lyga et al., Pesticide Sci. 42: p29(1994)}をあげられる。
【化12】
【0013】
PPO阻害型除草剤が植物に施用された際に植物細胞内で該除草剤の殺草活性発現に関わる植物細胞内因性物質としては、例えば、PPO阻害型除草剤の有効成分が作用する標的酵素の基質または該基質の前駆体もしくは代謝物であって、植物細胞内で蓄積すると細胞の機能傷害を惹起する物質、あるいは、このような物質により植物細胞内で生成する物質であって細胞の機能傷害を惹起する物質等があげられる。より具体的には、PPO阻害型除草性化合物で植物を処理すると、該植物の細胞内にPPOの基質であるプロトポルフィリノーゲンIXが蓄積し、これが細胞内で代謝されてプロトポルフィリンIXを生じ、さらに、プロトポルフィリンIXと光の存在下に細胞内で活性酸素が生成し、その結果、細胞機能が傷害を受けることが知られており(宮本純之編、1993年、新しい農薬の科学 第3章 3.3節、p106、広川書店 東京)、この系におけるプロトポルフィリノーゲンIX、プロトポルフィリンIXおよび活性酸素をあげることができる。
【0014】
一方、グリフォセートとは、N-(ホスホノメチル)グリシンの一般名である。グリフォセートは、一般に、アンモニウム塩、ナトリウム塩、イソプロピルアミン塩、トリメシウム塩、カリウム塩等の各種塩類の形で除草剤の有効成分として利用されている。かかるグリフォセートおよびその塩(以下、一括してグリフォセート化合物という。)はアミノ酸生合成を阻害する活性を有し、具体的には、5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素(5-enolpyruvylshikimate-3-phosphate synthase。以下、EPSPSと記す。)の活性を阻害する。本発明において、グリフォセート耐性とは、上記のようなグリフォセート化合物に対する耐性を意味する。
【0015】
本発明植物1は、下記(1)および(2)のうちから選ばれる1以上の酵素活性を有し、該酵素活性によって、植物の天然のEPSPS活性を阻害する量の除草剤に対して耐性を示す。
(1)植物の天然のEPSPS活性とは実質的に異なるEPSPS活性。
(2)植物の天然のグリフォセートオキシドリダクターゼ(glyphosate oxidoreductase;以下、GOXと記す。)活性とは実質的に異なるGOX活性。
本発明において、「植物の天然のEPSPS活性」とは、直接、間接を問わず人為的操作を受けていない状態の植物が天然に有するEPSPS活性を意味する。また、「GOX活性」とは、グリフォセートをアミノメチルフォスフォネート(aminomethyl phosphonate)とグリオキシレート(glyoxylate)とに変換する活性を意味する。そして、「植物の天然のGOX活性」とは、直接、間接を問わず人為的操作を受けていない状態の天然の植物が示すGOX活性を意味する。本発明植物1は、上記(1)および(2)のうちから選ばれる1以上の酵素活性、即ち、(1)の活性もしくは(2)の活性、または(1)および(2)の活性を有することにより、植物の天然のEPSPS活性を阻害する量の除草剤に対して耐性を示す。ここで、「植物の天然のEPSPS活性を阻害する量の除草剤に対する耐性を示す。」とは、天然のEPSPS活性を阻害することにより通常の植物の生育に影響を及ぼし除草剤としての機能を果たしうる量の除草剤によって受ける生育阻害が、天然の同種の植物よりも小さいことを意味し、例えば、前記の量の除草剤によっても生育が実質的に影響されない状態をあげることができる。また、上記(1)および(2)における「実質的に異なる」とは、天然のEPSPS活性を阻害する量の除草剤に対する植物の耐性に何らかの寄与をし得る程度に異なることを意味する。
上記の(1)および(2)のうちから選ばれる1以上の酵素活性を植物に付与する方法としては、例えば、天然の野生型EPSPSをコードする遺伝子を植物の細胞において高発現させる方法、野生型EPSPSよりもグリフォセート耐性の高い変異型EPSPSをコードする遺伝子を植物の細胞で発現させる方法、植物のEPSPSよりもグリフォセート耐性の高いバクテリア由来のEPSPSをコードする遺伝子を植物の細胞で発現させる方法、葉緑体移行シグナル配列と連結されてなるEPSPSをコードする遺伝子を植物の細胞で発現させる方法、葉緑体移行シグナル配列と連結されてなるGOXをコードする遺伝子を植物の細胞で発現させる方法、または、EPSPSをコードする遺伝子とGOXをコードする遺伝子とを植物の細胞で発現させる方法等をあげることができる。
より具体的には例えば、EPSPS本来のプロモーターに比して植物体内でのプロモーター活性が強いカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター(以下、CaMV35Sと記す。)の下流にペチュニア(Mitchell diploid petunia)のEPSPSをコードする遺伝子が連結されてなるキメラ遺伝子を栽培植物に導入する方法[EP218571]や、アミノ酸置換によってグリフォセート耐性が高められたEPSPSをコードする遺伝子を栽培植物に導入する方法[Hinchee,M.A.W. et al., BIO/TECHNOLOGY, 6: p915 (1988)、EP389066、EP409815、WO9206201、US5312910など]や、植物のEPSPSよりもグリフォセート耐性が高いアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens sp.strain CP4)のEPSPS(class II)をコードする遺伝子が、ペチュニア(Petunia hybrida)のEPSPSの葉緑体移行シグナル配列をコードする塩基配列の下流に連結されてなるキメラ遺伝子を、CaMV35Sの下流に連結して栽培植物に導入する方法[WO9204449、US5633435など]や、2連のCaMV35S配列の下流に、ヒマワリのリブロース−1,5−ビスフォスフェートカルボキシダーゼ(以下、ルビスコと記す。)小サブユニットの葉緑体移行シグナル配列をコードする塩基配列、トウモロコシのルビスコ小サブユニットのN末端側22アミノ酸をコードする塩基配列、トウモロコシのルビスコ小サブユニットの葉緑体移行シグナル配列をコードする塩基配列、およびサルモネラ菌(Salmonella typhymurium)のEPSPSをコードする遺伝子が連結されてなるキメラ遺伝子を栽培植物に導入する方法[EP508909]や、シロイヌナズナのルビスコの葉緑体移行シグナル配列をコードする塩基配列に、グリフォセート分解酵素であるGOXをコードする遺伝子が連結されてなるキメラ遺伝子を、アルコールによって発現誘導がかかる真菌類(Aspergillus nidulans)由来のアルコールデヒドロゲナーゼAのプロモーターの下流に連結して栽培植物に導入する方法[WO9706269]や、アグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens sp.strain CP4)のEPSPS(class II)をコードする遺伝子が、ペチュニア(Petunia hybrida)のEPSPSの葉緑体移行シグナル配列をコードする塩基配列の下流に連結されてなるキメラ遺伝子を、タバコモザイクウイルスのオメガ配列によってプロモーター活性が高められたCaMV35Sの下流に連結して、前記GOXとともに栽培植物に導入する方法[WO9706269]などをあげることができる。
【0016】
上記(1)および(2)のうちから選ばれる1以上の酵素活性を植物に付与する上述のような方法に使用され得る遺伝子は、いずれも「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子である。「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子としては、例えば、ペチュニア Petunia x hybrida(Genebank accession M37029)、トマト Tomato (strain VF36) pistil(Genebank accession M21071)、シロイヌナズナ Arabidopsis thaliana(Genebank accession X06613)、ダイズ、トウモロコシ Zea mays.(Genebank accession X63374)、大腸菌(Genebank accession X00557)、アグロバクテリウム等由来のEPSPS遺伝子をあげることができる。このような塩基配列既知の遺伝子は、目的の遺伝子を持つ生物のゲノムDNAまたはcDNAを鋳型にして、その遺伝子にコードされるタンパク質のアミノ末端付近に相当する塩基配列およびカルボキシ末端付近に相当する塩基配列をもとに作製したプライマーを用いてPCRを行うことにより増幅しこれを単離することができる。また、上記以外の生物から、EPSPSをコードする遺伝子を取得することもできる。まず、目的とする生物からmRNAを調製し、該mRNAを鋳型として逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、これをZAPIIなどのファージベクターまたはpUCなどのプラスミドベクターに組み込んでcDNAライブラリーを作製する。このcDNAライブラリーを鋳型にして、上記のような塩基配列既知の遺伝子間で良好に保存された塩基配列に基づき設計し合成されたプライマーを用いてPCRを行うことによって、EPSPS遺伝子の少なくとも一部を含むDNA断片を増幅することができる。このDNA断片をプローブにしてcDNAライブラリーをスクリーニングし、陽性クローンを選抜する。選抜したクローンの有するDNAの塩基配列を決定することによって、目的とするEPSPSの遺伝子であることを確認することができる。
変異によりグリフォセート耐性が高まったEPSPSをコードする遺伝子を取得するには、例えば、EPSPSをコードする遺伝子に塩基の置換変異を導入し、得られた改変遺伝子を、芳香族アミノ酸を含まないMOPS最小栄養培地で増殖が阻害されるEPSPS遺伝子(aroA遺伝子座)欠損突然変異系統大腸菌に導入する。改変遺伝子の導入された該大腸菌を、変異の無いEPSPS遺伝子を導入した前記大腸菌の生育を阻害する程度の濃度のグリフォセート存在下に培養し、生育可能なクローンを選抜することにより、変異によりグリフォセート耐性が高まったEPSPSをコードする遺伝子を得ることができる。さらに、このようにして得られた改変遺伝子を大腸菌等の宿主細胞で発現させて該遺伝子のコードするタンパク質を調製し、得られたタンパク質の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成能を、例えば、EP409815等に記載の方法に準じて測定することにより、グリフォセート耐性が高く、かつ5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成能の高いタンパク質の遺伝子を選抜することもできる。
【0017】
「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子としては、例えば、Pseudomonas sp.strains LBAA、Pseudomonas sp.strains LBr、アグロバクテリウム Agrobacterium sp.strain T10等由来の遺伝子をあげることができる。このような塩基配列既知の遺伝子は、目的の遺伝子を持つ生物のゲノムDNAまたはcDNAを鋳型にして、その遺伝子にコードされるタンパク質のアミノ末端付近に相当する塩基配列およびカルボキシ末端付近に相当する塩基配列をもとに作製したプライマーを用いてPCRを行うことにより増幅しこれを単離することができる。また、上記以外の生物から、GOXをコードする遺伝子を取得することもできる。まず、目的とする生物からmRNAを調製し、該mRNAを鋳型として逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、これをZAPIIなどのファージベクターまたはpUCなどのプラスミドベクターに組み込んでcDNAライブラリーを作製する。このcDNAライブラリーを鋳型にして、上記のような塩基配列既知の遺伝子間で良好に保存された塩基配列に基づき設計し合成されたプライマーを用いてPCRを行うことによって、GOXをコードする遺伝子の少なくとも一部を含むDNA断片を増幅することができる。このDNA断片をプローブにしてcDNAライブラリーをスクリーニングし、陽性クローンを選抜する。選抜したクローンの有するDNAの塩基配列を決定することによって、目的とするGOXの遺伝子であることを確認することができる。
GOXをコードする遺伝子を取得するか、または該遺伝子がコードするGOXのグリフォセート分解能を確認するには、例えば、Pseudomonas sp.strains LBAAのコスミドベクターcDNAライブラリーまたはGOXをコードする遺伝子を、りん酸化合物を唯一の窒素源とするMOPS最小栄養培地で増殖することが出来る突然変異系統大腸菌(E.coli SR2000 Mpu+)に導入する。遺伝子導入された該大腸菌を、GOXをコードする遺伝子を導入していない前記大腸菌の生育を阻害する程度の濃度のグリフォセートを唯一の窒素源とする条件下に培養して、生育可能なクローンを選抜することにより、GOXをコードする遺伝子を得ることができる。また、このようにして生育可能な大腸菌においては、該大腸菌に導入された遺伝子のコードするタンパク質が、グリフォセートをアミノメチルフォスフェートに分解し、このりん酸化合物を唯一の窒素源として該大腸菌が生育していると考えられる。実際に、該大腸菌を、放射性3-14Cで標識したグリフォセートを添加した培地で培養し、培養後の大腸菌および培地の成分をHPLCで解析することにより、放射性3-14Cで標識されたグリフォセートが大腸菌に取り込まれ分解されていることを確認することができる。
【0018】
本発明植物1は、また、下記の(1-3)、(1-4)および(1-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子が導入されてなり該遺伝子を発現する。
(1-3)本物質に特異的に結合する。
(1-4)当該タンパク質が特異的に結合する物質に対する変性能を実質的に持たない。
(1-5)免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない。
本発明において、タンパク質が物質に「特異的に結合する」とは、例えば、酵素と基質、または、酵素と阻害剤もしくは活性調節因子との間の酵素化学的結合、受容体とリガンドとの間の受容体化学的結合等において示されるような親和性と特異性に基いて、タンパク質が物質に結合することを意味する。
「当該タンパク質が特異的に結合する物質に対する変性能を実質的に持たない」とは、該物質との酵素化学的な反応性が不活性である{但し、上記の性質(1)でいう本物質との特異的結合性を除く}ことを意味し、例えば、該物質を、該物質を示す化学構造式とは異なる化学構造式で示される物質に変換する酵素化学的反応を触媒する能力を実質的に持たない場合をあげることができる。「変性能を実質的に持たない」タンパク質は、例えば、該タンパク質をコードする遺伝子を、当該変性能を有するタンパク質をコードする遺伝子が欠失し通常の条件では生育できなくなった微生物に、発現可能な状態で導入した場合に、該微生物の生育が相補されないことを指標に選択してもよい。
本発明において、「免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない」とは、免疫グロブリンの可変領域に特有の立体構造を形成しないことを意味する。ここで、「免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域」とは、免疫グロブリン分子を構成するH鎖およびL鎖の可変領域のうち、超可変領域(hypervariable region)を除いた残りの領域であって、アミノ酸配列の保存性が比較的高く、可変領域の高度に保存された立体構造の保持に働く領域である。可変領域が前記の立体構造をとることにより、H鎖およびL鎖のそれぞれ3ヶ所に散在する超可変領域が該立体構造上の1か所にまとまり、抗原結合部位が形成される[Alberts, B., et al. ed. (1983) Molecular Biology of the Cell p979, Garland Publishing, Inc. New York]。「免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない」タンパク質は、例えば、該タンパク質のアミノ酸配列に基づいて選び出すことができ、このようなタンパク質として具体的には例えば、免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域の既知のアミノ酸配列と約60%以上の相同性を示す約30アミノ酸以上からなるアミノ酸配列を含まないタンパク質をあげることができる。また、上記のフレームワーク領域を含むか否かは、例えば、該タンパク質をコードする遺伝子を鋳型にして、免疫グロブリンのH鎖もしくはL鎖由来の可変領域をコードする塩基配列を有するDNAを増幅可能なプライマー、具体的には例えば、Clackson, T. et al., Nature 352; p624(1991)に記載されるプライマーVH1BACKとVH1FOR-2、もしくは、VK2BACKとVK4FOR、または、組換え抗体遺伝子のクローニングのための市販のキット、例えばRecombinant Phage Antibody System(Pharmacia Biotech社製)に含まれるプライマーHeavy primers mixもしくはLight primer mixなどを用いてPCRを行い、特定の長さのDNAの増幅の有無を分析することによって確認することもできる。
【0019】
本発明植物1においてその遺伝子が発現することにより産生される上記(1-3)、(1-4)および(1-5)の性質を有するタンパク質としては、天然に存在するタンパク質であってもよく、天然のタンパク質にアミノ酸置換、付加、欠失等が導入されてなるタンパク質であってもよく、ランダムなアミノ酸配列を有する人為的に作出されたタンパク質の中から本物質との結合性を指標に選抜されたタンパク質であってもよい。尚、本発明において、「タンパク質」とは、2個以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合した物質をいい、例えば、4〜100個程度のアミノ酸がペプチド結合によって結合してなる物質も含まれる。
上記の性質(1-3)、(1-4)および(1-5)を有するタンパク質の具体例として、下記のようなタンパク質をあげることができる。
プロトポルフィリンIXに特異的に結合するタンパク質として、例えば、マグネシウムケラターゼ(magnesium protoporphyrin IX chelatase)のプロトポルフィリンIX結合サブユニットタンパク質、または該タンパク質の改変タンパク質であってプロトポルフィリンIXに特異的に結合するタンパク質をあげることができ、より具体的には、該サブユニットタンパク質からオルガネラ移行シグナル配列が除去されたタンパク質等があげられる。
また、フェロケラターゼ(protoheme ferrolyase; EC 4.9.9.1)の改変タンパク質であって、プロトポルフィリンIXに対する変性能を持たずプロトポルフィリンIXに特異的に結合するタンパク質をあげることもでき、より具体的には、フェロケラターゼにおいて鉄イオンとの結合部位と推定される領域が改変されてなりプロトポルフィリンIXに対する変性能を持たないタンパク質等をあげることができる。
さらに、コバルトケラターゼ(cobaltochelatase)の基質結合サブユニットタンパク質、または該タンパク質の改変タンパク質であってプロトポルフィリンIXに特異的に結合するタンパク質をあげることもできる。
プロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合するタンパク質としては、PPOの改変タンパク質であって、プロトポルフィリノーゲンIXを酸化する能力を持たずプロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合するタンパク質をあげることができ、より具体的には、PPOにおいてFAD結合部位と推定される領域(アミノ酸配列GXGXXGを有する領域であって、ここでXは任意のアミノ酸を示す。例えば、シロイヌナズナ葉緑体局在型PPOのアミノ末端から63〜68番目のアミノ酸からなり、アミノ酸配列GGGISGを有する領域)が欠失したタンパク質等をあげることができる。
また、プロトポルフィリノーゲンIXに結合するタンパク質としては、コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ(coproporphyrinogen III oxidase; EC 1.3.3.3)の改変タンパク質であって、プロトポルフィリノーゲンIXおよびコプロポルフィリノーゲンIIIを酸化する能力を持たずプロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合するタンパク質をあげることもできる。
上記のようなタンパク質が、細胞内で本物質と結合することにより、該物質によって惹起される細胞機能傷害が防がれ、除草剤耐性が発現され得る。かかるタンパク質をコードする遺伝子は、例えば次のようにして得ることができる。
【0020】
マグネシウムケラターゼのプロトポルフィリンIX結合サブユニットタンパク質をコードする遺伝子としては、光合成細菌Rhodobacter capsulatus (Genebank accession M74001)、シロイヌナズナ(Genebank accession Z68495)、オオムギ(Genebank accession U96216)、キンギョソウ(Genebank accession X73144)、Synechocystis P.C.C.6803(Genebank accession U29131)等由来の遺伝子の塩基配列が知られている。このような塩基配列既知の遺伝子は、目的の遺伝子を持つ生物のゲノムDNAまたはcDNAを鋳型にして、その遺伝子にコードされるタンパク質のアミノ末端付近に相当する塩基配列およびカルボキシ末端付近に相当する塩基配列をもとに作製したプライマーを用いてPCRを行うことにより増幅しこれを単離することができる。また、上記以外の光合成生物から、マグネシウムケラターゼのプロトポルフィリンIX結合サブユニットタンパク質をコードする遺伝子を取得することもできる。まず、目的とする光合成生物からmRNAを調製し、該mRNAを鋳型として逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、これをZAPIIなどのファージベクターまたはpUCなどのプラスミドベクターに組み込んでcDNAライブラリーを作製する。このcDNAライブラリーを鋳型にして、上記のような塩基配列既知の遺伝子間で良好に保存された塩基配列に基づき設計し合成されたプライマーを用いてPCRを行うことによって、マグネシウムケラターゼのプロトポルフィリンIX結合サブユニットタンパク質遺伝子の少なくとも一部を含むDNA断片を増幅することができる。このDNA断片をプローブにしてcDNAライブラリーをスクリーニングし、陽性クローンを選抜する。選抜したクローンの有するDNAの塩基配列を決定することによって、目的とするマグネシウムケラターゼのプロトポルフィリンIX結合サブユニットタンパク質の遺伝子であることを確認することができる。
マグネシウムケラターゼのプロトポルフィリンIX結合サブユニットタンパク質の改変タンパク質であってプロトポルフィリンIXに特異的に結合するタンパク質をコードする遺伝子を取得するには、例えば、該サブニユットタンパク質の遺伝子に塩基の置換、欠失、付加等の変異を導入し、該遺伝子をGibson, L.C.D. et al., Proc. Acad. Sci. USA, 92; p1941(1995)に記載の方法に準じて大腸菌BL21(DE3)株に導入して形質転換株を取得し、導入した遺伝子が高発現する条件で該形質転換株を培養する。培養菌体が赤色化し、プロトポルフィリンIXの蓄積を示す蛍光吸収(励起波長405nm、蛍光波長630nm)が観察される株を選抜することにより、該サブユニットタンパク質の改変タンパク質であってプロトポルフィリンIXに特異的に結合するタンパク質をコードする遺伝子を得ることができる。
【0021】
フェロケラターゼをコードする遺伝子としては、これまでに大腸菌Esherichia coli (Genebank accession D90259)、枯草菌Bacillus subtilis (Genebank accession M97208)、Bradyrhizobium japonicum (Genebank accession M92427)、酵母Saccharomyces cerevisiae (Genebank accession J05395)、マウス(Genebank accession J05697)、ヒト(Genebank accession D00726)、オオムギ(Genebank accession D26105)、キュウリ(Genebank accession D26106)等由来の遺伝子の塩基配列が知られている。このような塩基配列既知の遺伝子は、目的の遺伝子を持つ生物のゲノムDNAもしくはcDNAを鋳型にして、その遺伝子にコードされるタンパク質のアミノ末端付近に相当する塩基配列およびカルボキシ末端付近に相当する塩基配列をもとに作製したプライマーを用いてPCRを行うことにより、増幅し単離することができる。また、塩基配列の知られていないフェロケラターゼ遺伝子を取得するには、まず、目的とする生物からmRNAを調製し、該mRNAを鋳型として逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、これをZAPIIなどのファージベクターまたはpUCなどのプラスミドベクターに組み込んでcDNAライブラリーを作製する。このcDNAライブラリーを、Miyamoto,K.,et al. Plant Physiol., 105; p769 (1994)に記載の大腸菌のフェロケラターゼ欠失変異株VS200に導入し相補試験を行うことによって、該cDNAライブラリーから目的の生物由来のフェロケラターゼ遺伝子を有するクローンを選抜することができる。また、前記cDNAライブラリーを鋳型にして、上記のような塩基配列既知の遺伝子間で良好に保存された塩基配列に基づき作製されたプライマーを用いてPCRを行うことによってDNA断片を増幅し、該DNA断片をプローブにして前記cDNAライブラリーをスクリーニングし、陽性クローンを選抜してもよい。このようにして選抜されたクローンの有するDNAの塩基配列を決定することによって、目的とするフェロケラターゼ遺伝子であることを確認することができる。
フェロケラターゼの改変タンパク質であってプロトポルフィリンIXに対する変性能を持たずプロトポルフィリンIXに特異的に結合するタンパク質、例えば、フェロケラターゼにおいて鉄イオンとの結合部位と推定される領域が改変されてなりプロトポルフィリンIXに対する変性能を持たないタンパク質をコードする遺伝子を取得するには、該領域付近のアミノ酸配列をコードする塩基配列に基づき、該領域に変異を導入するためのプライマーを作製し、この変異導入プライマーを用いて、市販の部位特異的変異導入キット(Mutan-Super Express Km、宝酒造製)を用いたPCRを行うことにより、上記領域の変異体をコードする遺伝子を調製することができる。具体的には、野生型のフェロケラターゼ遺伝子をプラスミドベクターpKF19kのクローニング部位に挿入し、得られたプラスミドのDNAを鋳型に、前述の変異導入プライマーとpKF19kのカナマイシン耐性遺伝子上にあるアンバー変異を復帰させるための選抜プライマーとを用いてPCRを行う。該PCRで増幅された遺伝子を大腸菌MV1184株(サプレッサーフリー)に導入し、遺伝子導入株をカナマイシン耐性で選抜することにより、目的の領域を構成するアミノ酸に相当する塩基配列が改変されたフェロケラターゼ遺伝子を持つ大腸菌を単離することができる。該大腸菌の有するプラスミドDNAの塩基配列を解析することによって、単離した遺伝子が目的とする改変タンパク質をコードする遺伝子であることを確認することができる。
【0022】
PPO遺伝子は、これまでに大腸菌Esherichia coli (Genebank accession X68660)、枯草菌Bacillus subtilis (Genebank accession M97208)、Haemophilus influnzae (Genebank accession L42023)、マウス(Genebank accession D45185)、ヒト(Genebank accession D38537)、シロイヌナズナ(Genebank accession D83139)、タバコ(Genebank accession Y13465, Y13466)等由来の遺伝子の塩基配列が知られている。このような塩基配列既知の遺伝子は、目的の遺伝子を持つ生物のゲノムDNAもしくはcDNAを鋳型にして、その遺伝子にコードされるタンパク質のアミノ末端付近に相当する塩基配列およびカルボキシ末端付近に相当する塩基配列をもとに作製したプライマーを用いてPCRを行うことにより増幅し、これを単離することができる。また、塩基配列の知られていないPPO遺伝子を取得するには、まず、目的の遺伝子を持つ生物から前述の方法でcDNAライブラリーを作製する。このcDNAライブラリーを、Narita,S., et al., Gene, 182; p169 (1996)等に記載の大腸菌のPPO欠失変異株VSR800に導入し相補試験を行うことによって、該cDNAライブラリーから目的の生物由来のPPO遺伝子を有するクローンを選抜することができる。また、前記cDNAライブラリーを鋳型にして、上記のような塩基配列既知の遺伝子間で良好に保存された塩基配列に基づき作製されたプライマーを用いてPCRを行うことによってDNA断片を増幅し、該DNA断片をプローブにして前記cDNAライブラリーをスクリーニングし、陽性クローンを選抜してもよい。選抜されたクローンの有する塩基配列を決定することによって、目的とするPPO遺伝子であることを確認することができる。
PPOの改変タンパク質であって、プロトポルフィリノーゲンIXを酸化する能力を持たずプロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合するタンパク質の遺伝子を取得するには、例えば、PPO遺伝子に塩基の置換、欠失、付加等の変異を導入し、該改変遺伝子をPPO阻害型除草剤処理によって光依存的に増殖が阻害される上述の大腸菌に導入する。該大腸菌をヘミン、アミノレブリン酸およびPPO阻害型除草剤存在下に培養して明所でも生育可能なクローンを選抜することにより、プロトポルフィリノーゲンIX結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子を選抜することができる。このようにして選抜された改変遺伝子を大腸菌等の宿主細胞で発現させて該遺伝子のコードするタンパク質を調製し、得られたタンパク質のプロトポルフィリノーゲンIXに対する酸化能を、例えば、Jacob,N.J.and Jacobs,J.M.(1982) Enzyme, 28, 206-219等に記載の方法に準じて測定することにより、プロトポルフィリノーゲンIXに対する酸化能を持たないタンパク質の遺伝子を選抜することができる。より具体的には、上記改変遺伝子を大腸菌用の発現ベクターに挿入して、Yamamoto,F.et al., Japanese J. Genet.,63; p237(1988)等に記載されている大腸菌BT3株のような、PPO遺伝子(hemG遺伝子座)欠損突然変異系統大腸菌に導入し、該大腸菌に導入したベクター上の選抜マーカーに対応する細胞生育阻害剤に加えヘミンおよびアミノレブリン酸を含む培地で該大腸菌を培養して形質転換株を取得し、該形質転換株から上記改変遺伝子のコードするタンパク質を調製してもよい。また、該形質転換株をヘミンおよびアミノレブリン酸を実質的に含まない培地で培養し、生育しない株を確認することにより、該形質転換株からその宿主細胞のPPO遺伝子欠損を相補しない遺伝子を得ることができ、かかる方法をプロトポルフィリノーゲンIXに対する酸化能を持たないタンパク質をコードする遺伝子の選抜に利用してもよい。
また、PPOにおいてFADとの結合部位と推定される領域(アミノ酸配列GXGXXGを有する領域であって、ここでXは任意のアミノ酸を示す。)を欠失したタンパク質をコードする遺伝子を取得するには、まず、該領域付近のアミノ酸配列をコードする塩基配列に基づき、該領域の欠失変異を導入するためのプライマーを作製する。この変異導入プライマーを用いて、前述のように市販の部位特異的変異導入キット(Mutan-Super Express Km、宝酒造製)を用いてPCRを行い該領域の欠失変異体をコードする遺伝子を調製することができる。
【0023】
コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼをコードする遺伝子としては、これまでに大腸菌Esherichia coli (Genebank accession X75413)、Salmonella typhimurium (Genebank accession L19503)、酵母Saccharomyces cerevisiae (Genebank accession J03873)、マウス(Genebank accession D16333)、ヒト(Genebank accession D16611)、ダイズ(Genebank accession X71083)、オオムギ(Genebank accession X82830)、タバコ(Genebank accession X82831)等由来の遺伝子の塩基配列が知られている。このような塩基配列既知の遺伝子は、目的の遺伝子を持つ生物のゲノムDNAもしくはcDNAを鋳型にして、その遺伝子にコードされるタンパク質のアミノ末端付近に相当する塩基配列およびカルボキシ末端付近に相当する塩基配列をもとに作製したプライマーを用いてPCRを行うことにより、増幅し単離することができる。また、塩基配列の知られていないコプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ遺伝子を取得するには、まず、目的とする生物からmRNAを調製し、該mRNAを鋳型として逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、これをSikorski, R.S. et al. Genetics, 122; p19 (1989)に記載のpRS313などのプラスミドベクターに組み込んでcDNAライブラリーを作製する。このcDNAライブラリーを、Troup, B. et al. J. Bacteriol., 176; p673 (1994)に記載の酵母コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ欠失変異株HEM13に導入して相補試験を行い、生育可能なクローンを選抜することによって、該cDNAライブラリーから目的の生物由来のコプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ遺伝子を有するクローンを選抜することができる。また、前記cDNAライブラリーを鋳型にして、上記のような塩基配列既知の遺伝子間で良好に保存された塩基配列に基づき作製されたプライマーを用いてPCRを行うことによってDNA断片を増幅し、該DNA断片をプローブにして前記cDNAライブラリーをスクリーニングし、陽性クローンを選抜してもよい。このようにして選抜されたクローンの有するDNAの塩基配列を決定することによって、目的とするコプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ遺伝子であることを確認することができる。
コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼの改変タンパク質であって、プロトポルフィリノーゲンIXおよびコプロポルフィリノーゲンIIIに対する酸化能を持たずプロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合するタンパク質の遺伝子を取得するには、例えば、コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ遺伝子に塩基の置換、欠失、付加等の変異を導入し、該改変遺伝子をPPO阻害型除草剤処理によって光依存的に増殖が阻害される上述の大腸菌に導入する。該大腸菌をヘミン、アミノレブリン酸およびPPO阻害型除草剤存在下に培養して明所でも生育可能なクローンを選抜することにより、プロトポルフィリノーゲンIX結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子を選抜することができる。このようにして選抜された改変遺伝子を、例えば、大腸菌等の宿主細胞で発現させて該遺伝子のコードするタンパク質を調製し、得られたタンパク質のプロトポルフィリノーゲンIXに対する酸化能を、例えば、Jacob,N.J.and Jacobs,J.M.(1982) Enzyme, 28, 206-219等に記載の方法に準じて測定することにより、プロトポルフィリノーゲンIXに対する酸化能を持たないタンパク質の遺伝子を選抜することができる。さらに、前記のようにして大腸菌から調製されたタンパク質について、コプロポルフィリノーゲンIIIをプロトポルフィリノーゲンIXに変換する能力(コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ活性)を、例えば、Yoshinaga, T.,Sano,S., J. Biol. Chem., 255; p4722(1980)等に記載の方法に準じて測定することにより、コプロポルフィリノーゲンIIIに対する酸化能を持たないタンパク質の遺伝子を選抜することができる。
【0024】
本物質に特異的に結合可能なタンパク質の遺伝子は、例えば、Sugimoto,N., Nakano,S., Chem. Lett., p939(1997)等に記載のように、コンビナトリアルケミストリー法を用いて合成されたペプチドライブラリーから本物質に対して結合性を示すペプチドを選抜し、選抜されたペプチドのアミノ酸配列をペプチドシークエンサーで解析し、該アミノ酸配列をコードする塩基配列を含む遺伝子を設計してこれをDNA合成装置等で合成することによっても、取得することができる。
また、ファージディスプレー法を用いて、本物質に対して結合性を有するタンパク質を提示するファージクローンをファージライブラリーから選抜し取得することもできる。具体的には、例えば、M13ファージ遺伝子のコートタンパク質pIIIをコードする領域の上流側に、ランダムなアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする塩基配列を挿入することによって、M13ファージ粒子表面にランダムなアミノ酸配列を有するタンパク質が提示されたファージライブラリーを構築する。一方、ビオチン標識化した本物質を、アビジンもしくはストレプトアビジンでコートしたプレートに結合させることにより、本物質でコートされた支持体を作製する。前述のファージライブラリーをこの本物質でコートされたプレート上でスクリーニングすると、本物質に結合性のある目的のタンパク質を提示したファージを単離することができ、単離されたファージから目的のタンパク質の遺伝子を取得することができる。
【0025】
本発明植物1は、例えば、上記ような「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」および「GOX活性を実質的に有するタンパク質」のうちから選ばれる1以上のタンパク質をコードする遺伝子を植物細胞に導入し発現させる工程と、上述の(1-3)、(1-4)および(1-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を植物細胞に導入し発現させる工程とを含む方法により作製することができる。具体的には例えば、「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子および/または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子と、(1-3)、(1-4)および(1-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子とを同時に植物細胞へ導入し、得られた細胞からこれらの遺伝子を発現する本発明植物1を作出してもよい。「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子および/または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子を導入した植物細胞に、(1-3)、(1-4)および(1-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を導入し、得られた細胞からこれらの遺伝子を発現する本発明植物1を作出してもよい。(1-3)、(1-4)および(1-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を導入した植物細胞に、「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子および/または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子を導入し、得られた細胞からこれらの遺伝子を発現する本発明植物1を作出してもよい。また、「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子および/または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子、ならびに、(1-3)、(1-4)および(1-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を、それぞれ植物細胞に導入して各々の遺伝子を発現する植物を作出し、得られた植物を交配することにより、これらの遺伝子を発現する本発明植物1を作製してもよい。さらに、上述の(1)および(2)のうちから選ばれる1以上の酵素活性を有し、該酵素活性によって、植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を阻害する量の除草剤に対して耐性を示す植物の細胞に、(1-3)、(1-4)および(1-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を導入し、得られた細胞から該遺伝子を発現する本発明植物1を作出してもよく、また、(1-3)、(1-4)および(1-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子が導入され該遺伝子を発現する植物細胞に、「「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子および/または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子を導入し、得られた細胞からこれらの遺伝子を発現する本発明植物1を作出してもよい。尚、いずれの場合も、「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子、「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子、(1-3)、(1-4)および(1-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子のうちの任意の遺伝子について、2種類以上の遺伝子を植物細胞に導入してもよい。
【0026】
本発明植物2は、本発明植物1と同様に上記(1)および(2)のうちから選ばれる1以上の酵素活性を有し、該酵素活性によって、植物の天然のEPSPS活性を阻害する量の除草剤に対して耐性を示す植物であって、かつ、下記の(2-3)、(2-4)および(2-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子が導入されてなり該遺伝子を発現する植物である。
(2-3)プロトポルフィリンIXに特異的に結合する。
(2-4)プロトポルフィリノーゲンIXに対する変性能を持たない。
(2-5)免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない。
ここで、「プロトポルフィリンIXに特異的に結合する」とは、前述のごとく、例えば、酵素と基質、または、酵素と阻害剤もしくは活性調節因子との間の酵素化学的結合、受容体とリガンドとの間の受容体化学的結合等において示されるような親和性と特異性に基いて、当該タンパク質がプロトポルフィリンIXに結合することを意味する。
また、「プロトポルフィリノーゲンIXに対する変性能を持たない」とは、プロトポルフィリノーゲンIXとの酵素化学的な反応性が不活性であることを意味し、例えば、プロトポルフィリノーゲンIXを、その化学構造式とは異なる化学構造式で示される物質に変換する酵素化学的反応を触媒する能力を実質的に持たない場合をあげることができる。
「免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない」とは、前述のとおり、免疫グロブリンの可変領域に特有の立体構造を形成しないことを意味する。
本発明植物2において、その遺伝子が発現することにより産生される上記(2-3)、(2-4)および(2-5)の性質を有するタンパク質としては、天然に存在するタンパク質であってもよく、天然のタンパク質にアミノ酸置換、付加、欠失等が導入されてなるタンパク質であってもよく、ランダムなアミノ酸配列を有する人為的に作出されたタンパク質の中から本物質との結合性を指標に選抜されたタンパク質であってもよい。
このようなタンパク質の具体例としては、例えば、マグネシウムケラターゼ、および、マグネシウムケラターゼの改変タンパク質であってプロトポルフィリンIXに特異的に結合しプロトポルフィリノーゲンIXを変性する能力を持たないタンパク質をあげることができる。
また、フェロケラターゼ、および、フェロケラターゼの改変タンパク質であって、プロトポルフィリンIXに特異的に結合しプロトポルフィリノーゲンIXを変性する能力を持たないタンパク質をあげることもできる。
【0027】
上記のタンパク質をコードする遺伝子は、例えば、以下のようにして取得することができる。
マグネシウムケラターゼは、プロトポルフィリンIXにマグネシウムイオンを配位しマグネシウムポルフィリンIXを生成する能力を有し、プロトポルフィリンIX結合サブユニットタンパク質、Iサブユニットタンパク質およびDサブユニットタンパク質で構成される。マグネシウムケラターゼを植物で発現させるには、これらの3つのサブユニットタンパク質をコードする遺伝子を取得する。
マグネシウムケラターゼのプロトポルフィリンIX結合サブユニットタンパク質をコードする遺伝子は、前記の方法で取得することができる。
マグネシウムケラターゼのIサブユニットタンパク質をコードする遺伝子として、光合成細菌Rhodobacter sphaerides (Genebank accession AF017642)、光合成細菌Rhodobacter capsulatus (Genebank accession Z11165)、シロイヌナズナ(Genebank accession D49426)、オオムギ(Genebank accession U26545)、ダイズ(Genebank accession D45857)、タバコ(Genebank accession AF14053)、Synechocystis P.C.C.6803(Genebank accession U35144)等由来の遺伝子が知られている。このような公知の遺伝子(塩基配列が公知)は、目的の遺伝子を持つ生物のゲノムDNAまたはcDNAを鋳型にして、その遺伝子にコードされるタンパク質のアミノ末端付近に相当する塩基配列およびカルボキシ末端付近に相当する塩基配列をもとに作製したプライマーを用いてPCRを行うことにより増幅しこれを単離することができる。また、上記以外の光合成生物から、マグネシウムケラターゼIサブユニットタンパク質をコードする遺伝子を取得することもできる。まず、目的とする光合成生物からmRNAを調製し、該mRNAを鋳型として逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、これをZAPIIなどのファージベクターまたはpUCなどのプラスミドベクターに組み込んでcDNAライブラリーを作製する。このcDNAライブラリーを鋳型にして、上記のような公知の遺伝子との間で良好に保存された塩基配列に基づき設計し合成されたプライマーを用いてPCRを行うことによって、マグネシウムケラターゼのIサブユニットタンパク質の遺伝子の少なくとも一部を含むDNAを増幅することができる。このDNAをプローブにしてcDNAライブラリーをスクリーニングし、陽性クローンを選抜する。選抜したクローンの有するDNAの塩基配列を決定することによって、目的とするマグネシウムケラターゼのIサブユニットタンパク質の遺伝子であることを確認することができる。
また、マグネシウムケラターゼのDサブユニットタンパク質をコードする遺伝子として、光合成細菌Rhodobacter sphaerides (Genebank accession AJ001690)、光合成細菌Rhodobacter capsulatus (Genebank accession Z11165)、エンドウ(Genebank accession AF014399)、タバコ(Genebank accession Y10022)、Synechocystis P.C.C.6803(Genebank accession X96599)等由来の遺伝子が知られている。マグネシウムケラターゼDサブユニットタンパク質をコードする遺伝子は、前記のマグネシウムケラターゼIサブユニットタンパク質をコードする遺伝子を取得する方法と同様の方法で取得することができる。
これらの3つのサブユニットタンパク質からなるマグネシウムケラターゼの活性の検出は、例えば、Gibson, L.C.D. et al., Proc. Acad. Sci. USA, 92; p1941(1995)等に記載の方法に準じて実施することができる。
フェロケラターゼをコードする遺伝子は前述の方法で取得することができる。フェロケラターゼの活性の検出は、例えば、Porra, R.J., Anal. Biochem., 68; p289(1975)等に記載の方法に準じて実施することができる。
【0028】
本発明植物2は、例えば、上記ような「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」および「GOX活性を実質的に有するタンパク質」のうちから選ばれる1以上のタンパク質をコードする遺伝子を植物細胞に導入し発現させる工程と、上述の(2-3)、(2-4)および(2-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を植物細胞に導入し発現させる工程とを含む方法により作製することができる。具体的には例えば、「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子および/または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子と、(2-3)、(2-4)および(2-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子とを同時に植物細胞へ導入し、得られた細胞からこれらの遺伝子を発現する本発明植物2を作出してもよい。「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子および/または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子を導入した植物細胞に、(2-3)、(2-4)および(2-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を導入し、得られた細胞からこれらの遺伝子を発現する本発明植物2を作出してもよい。(2-3)、(2-4)および(2-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を導入した植物細胞に、「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子および/または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子を導入し、得られた細胞からこれらの遺伝子を発現する本発明植物2を作出してもよい。また、「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子および/または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子、ならびに、(2-3)、(2-4)および(2-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を、それぞれ植物細胞に導入して各々の遺伝子を発現する植物を作出し、得られた植物を交配することにより、これらの遺伝子を発現する本発明植物2を作製してもよい。さらに、上述の(1)および(2)のうちから選ばれる1以上の酵素活性を有し、該酵素活性によって、植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を阻害する量の除草剤に対して耐性を示す植物の細胞に、(2-3)、(2-4)および(2-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を導入し、得られた細胞から該遺伝子を発現する本発明植物2を作出してもよく、また、(2-3)、(2-4)および(2-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子が導入され該遺伝子を発現する植物細胞に、「「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子および/または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子を導入し、得られた細胞からこれらの遺伝子を発現する本発明植物2を作出してもよい。尚、いずれの場合も、「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子、「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子、(2-3)、(2-4)および(2-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子のうちの任意の遺伝子について、2種類以上の遺伝子を植物細胞に導入してもよい。
【0029】
本発明植物3は、本発明植物1と同様に上記(1)および(2)のうちから選ばれる1以上の酵素活性を有し、該酵素活性によって、植物の天然のEPSPS活性を阻害する量の除草剤に対して耐性を示す植物であって、かつ、下記の(3-3)、(3-4)および(3-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子が導入されてなり該遺伝子を発現する植物である。
(3-3)プロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合する。
(3-4)コプロポルフィリノーゲンIIIに対する変性能を持つ。
(3-5)免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない。
「プロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合する」とは、前述のごとく、例えば、酵素と基質、または、酵素と阻害剤もしくは活性調節因子との間の酵素化学的結合、受容体とリガンドとの間の受容体化学的結合等において示されるような親和性と特異性に基いて、当該タンパク質がプロトポルフィリノーゲンIXに結合することを意味する。
「コプロポルフィリノーゲンIIIに対する変性能を持つ」とは、コプロポルフィリノーゲンIIIに対して酵素化学的な反応性があることを意味し、例えば、コプロポルフィリノーゲンIIIを、その化学構造式とは異なる化学構造式で示される物質に変換する酵素化学的反応を触媒する能力を実質的に持つ場合をあげることができる。具体的には例えば、コプロポルフィリノーゲンIIIをプロトポルフィリノーゲンIXに変換する能力(コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ活性)をあげることができ、該変換能力は、例えば、Yoshinaga, T.,Sano,S., J. Biol. Chem., 255; p4722(1980)等に記載の方法に準じて測定することができる。
「免疫グロブリンの可変領域のフレームワーク領域を実質的に含まない」とは、前述のとおり、免疫グロブリンの可変領域に特有の立体構造を形成しないことを意味する。
本発明植物3において、その遺伝子が発現することにより産生される上記(3-3)、(3-4)および(3-5)の性質を有するタンパク質としては、天然に存在するタンパク質であってもよく、天然のタンパク質にアミノ酸置換、付加、欠失等が導入されてなるタンパク質であってもよく、ランダムなアミノ酸配列を有する人為的に作出されたタンパク質の中から本物質との結合性を指標に選抜されたタンパク質であってもよい。
このようなタンパク質としては、具体的には、コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ、および、コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼの改変タンパク質であってコプロポルフィリノーゲンIIIを酸化してプロトポルフィリノーゲンIXを生成する能力を持つタンパク質などがあげられる。コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼをコードする遺伝子は、例えば、前述の方法で取得することができる。
【0030】
本発明植物3は、例えば、上記ような「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」および「GOX活性を実質的に有するタンパク質」のうちから選ばれる1以上のタンパク質をコードする遺伝子を植物細胞に導入し発現させる工程と、上述の(3-3)、(3-4)および(3-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を植物細胞に導入し発現させる工程とを含む方法により作製することができる。具体的には例えば、「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子および/または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子と、(3-3)、(3-4)および(3-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子とを同時に植物細胞へ導入し、得られた細胞からこれらの遺伝子を発現する本発明植物3を作出してもよい。「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子および/または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子を導入した植物細胞に、(3-3)、(3-4)および(3-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を導入し、得られた細胞からこれらの遺伝子を発現する本発明植物3を作出してもよい。(3-3)、(3-4)および(3-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を導入した植物細胞に、「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子および/または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子を導入し、得られた細胞からこれらの遺伝子を発現する本発明植物3を作出してもよい。また、「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子および/または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子、ならびに、(3-3)、(3-4)および(3-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を、それぞれ植物細胞に導入して各々の遺伝子を発現する植物を作出し、得られた植物を交配することにより、これらの遺伝子を発現する本発明植物3を作製してもよい。さらに、上述の(1)および(2)のうちから選ばれる1以上の酵素活性を有し、該酵素活性によって、植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を阻害する量の除草剤に対して耐性を示す植物の細胞に、(3-3)、(3-4)および(3-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子を導入し、得られた細胞から該遺伝子を発現する本発明植物3を作出してもよく、また、(3-3)、(3-4)および(3-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子が導入され該遺伝子を発現する植物細胞に、「「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子および/または「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子を導入し、得られた細胞からこれらの遺伝子を発現する本発明植物3を作出してもよい。尚、いずれの場合も、「EPSPS活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子、「GOX活性を実質的に有するタンパク質」をコードする遺伝子、(3-3)、(3-4)および(3-5)の性質を有するタンパク質をコードする遺伝子のうちの任意の遺伝子について、2種類以上の遺伝子を植物細胞に導入してもよい。
【0031】
本発明植物1〜3を作製するに際し、遺伝子を植物の細胞に導入する方法としては、アグロバクテリウム感染方法(特公平2-58917および特開昭60-70080)、プロトプラストへのエレクトロポレーション方法(特開昭60-251887および特開平5-68575)、またはパーティクルガン方法(特表平5-508316および特開昭63-258525)などの公知の手段を用いることができる。細胞に導入する遺伝子は、細胞生育阻害剤耐性を該細胞に付与し得る遺伝子などの選抜マーカー遺伝子を有するベクターに組み込んでおくとよい。
目的とする遺伝子を植物の細胞で発現させるには、相同組換え[Fraley,R.T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80; p4803 (1983)]によって該遺伝子を植物の染色体に導入し該遺伝子を発現する細胞を選抜してもよいし、該遺伝子をあらかじめ、植物細胞で機能可能なプロモーターおよび植物細胞で機能可能なターミネーターと機能可能な形で結合させて、これを細胞に導入してもよい。ここで、「機能可能な形で」とは、本タンパク質をコードする遺伝子が、導入される植物の細胞において前記プロモーターおよびターミネーターの制御下に発現するように、これらのプロモーターおよびターミネーターと結合された状態にあることを意味する。
植物細胞で機能可能なプロモーターとしては、例えば、ノパリン合成酵素遺伝子プロモーター、オクトピン合成酵素遺伝子プロモーター等のT-DNA由来の構成型プロモーター、カリフラワーモザイクウィルス由来の19Sプロモーターもしくは35Sプロモーター等の植物ウィルス由来のプロモーター、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ遺伝子プロモーター、カルコンシンターゼ遺伝子プロモーター、Pathogenesis-related protein遺伝子プロモーター等の誘導型プロモーターなどを挙げることができる。さらに、これらに限定されない他の植物プロモーターを用いてもよい。
また、植物細胞で機能可能なターミネーターとしては、例えば、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーターなどT-DNA由来のターミネーター、ニンニクウィルスGV1,GV2のターミネーターなどの植物ウィルス由来のターミネーターなどを挙げることができる。さらに、これらに限定されない他の植物ターミネーターを用いるてもよい。
【0032】
かかる遺伝子を導入する細胞としては、植物組織、植物個体、培養細胞、種子などを用いることができる。また、かかる遺伝子を導入する植物種としては、例えば、タバコ、ワタ、ナタネ、テンサイ、シロイヌナズナ、カノーラ、アマ、ヒマワリ、バレイショ、アルファルファ、レタス、バナナ、ダイズ、エンドウ、その他のマメ類、マツ、ポプラ、リンゴ、ブドウ、オレンジ、レモン、その他の柑橘類、アーモンド、クルミ、その他のナッツ類等の双子葉植物、トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク、ソルガム、オートムギ、サトウキビ、芝類等の単子葉植物をあげることができる。
導入された遺伝子を発現する形質転換植物細胞は、該遺伝子が導入された細胞を、該遺伝子に座上・連結させた選抜マーカー遺伝子に対応する選抜用培地、例えば細胞生育阻害剤を含む培地等で培養し、該培地において増殖可能なクローンを単離することによって取得することができる。また、前記形質転換植物細胞は、遺伝子が導入された細胞を、耐性付与対象の除草剤またはその有効成分を含む培地で培養し増殖可能なクローンを単離することによっても選抜することができる。このようにして得られた形質転換植物細胞から、例えば、植物遺伝子操作マニュアル:トランスジェニック植物の作り方(内宮著、講談社サイエンティフィック1990年)、27-55頁などに記載されている植物細胞培養方法により植物体を再生させることによって、導入された遺伝子を発現する植物を得ることができる。
より具体的には、例えば、モデル植物の実験プロトコール イネ・シロイヌナズナ編(島本功、岡田清孝監修、秀潤社1996年)、第4章に記載の方法によって、導入された遺伝子を発現するイネやシロイヌナズナを得ることができる。また、特開平3-291501に記載されている方法で、パーティクルガンを用いて遺伝子をダイズ不定胚に導入し、導入された遺伝子を発現するダイズを得ることができる。同様に、Fromm,M.E.,et al. Bio/Technology, 8; p838 (1990)に記載されている方法に準じて、パーティクルガンを用いて遺伝子をトウモロコシ不定胚に導入し、導入された遺伝子を発現するトウモロコシを得ることができ、宅見ら著、育種学会雑誌、1995年、第44巻、別冊1号、57頁に記載されている通常の方法に準じて、パーティクルガンを用いて無菌培養したコムギ未熟胚盤に遺伝子を導入し、導入された遺伝子を発現するコムギを得ることができる。同様に、萩尾ら著、育種学会雑誌、1995年、第44巻、別冊1号、67頁に記載されている通常の方法に準じて、パーティクルガンを用いて無菌培養したオオムギ未熟胚盤に遺伝子を導入し、導入された遺伝子を発現するオオムギを得ることができる。
【0033】
導入された遺伝子を発現する植物の除草剤耐性を確認するには、例えば、該植物の栽培域に評価の対象とする除草剤を散布し、該植物の生育度を測定するとよい。より定量的に確認するには、例えば、PPO阻害型除草剤に対する耐性を確認する場合には、該植物の葉片を様々な濃度のPPO阻害型除草剤を含む水溶液中に浸すか、または、該植物の葉片に除草剤水溶液を噴霧し寒天培地上で明所室温で放置し、数日後、該葉片からMacknney, G., J. Bol. Chem.,140; p315(1941)に記載の方法に準じてクロロフィルを抽出してクロロフィル含量を測定するとよい。
【0034】
本発明植物1〜3は、グリフォセート化合物およびPPO阻害型除草性化合物の両方に対して耐性を示すため、これらの化合物を有効成分として含む除草剤が散布された場合にも良好に生育することができる。従って、本発明の方法によって目的の栽培植物にグリフォセート化合物に対する耐性およびPPO阻害型除草性化合物に対する耐性を付与し、該植物を栽培してその栽培域に前記のグリフォセート性化合物およびPPO阻害型除草性化合物を有効成分として含む除草剤を散布することにより、効率よく雑草を取り除くことができ、雑草防除作業の省力化、該栽培植物の収量の向上、高品質化などが可能となる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例および参考例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
参考例1 グリフォセート耐性遺伝子の単離
グリフォセート耐性ダイズ(Glycine max)を播種後、27℃で30日間栽培し、発芽個体の第一葉を採取した。採取した緑葉を液体窒素で凍結させ、これを乳鉢と乳棒で磨砕し、該磨砕物から、ゲノムDNA抽出試薬ISOPLANT(ニッポンジーン社製)を用いて付属のマニュアルに従ってゲノムDNAを抽出した。得られたゲノムDNAを鋳型にして、配列番号1で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号2で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーに使ってPCRを行い、ペチュニア(Petunia hybrida)のEPSPSの葉緑体トランジットペプチド(以下、CTPと記す。)配列をコードする塩基配列とアグロバクテリウム(Agrobacterium sp. Strain CP4)のEPSPS遺伝子とを含むDNA断片(以下、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子と記す。)を増幅した。なお、該オリゴヌクレオチドはDNA合成装置(PEアプライドバイオシステムズ社:Model 394 DNA/RNA Synthesizer)を用いて合成し、オリゴヌクレオチド精製用カートリッジ(PEアプライドバイオシステムズ社:OPC カートリッジ)で精製した。また、PCRは、94℃にて5分間次いで55℃にて2分間さらに72℃にて3分間の保温を1回行った後、94℃にて1分間次いで55℃にて2分間さらに72℃にて3分間の保温1サイクルとしてこれを38回実施し、最後に94℃にて1分間次いで55℃にて2分間さらに72℃にて10分間の保温を1回行った。増幅されたDNA断片をプラスミドpCR2.1(Invitrogen社製)のPCR産物クローニング部位に連結することにより、プラスミドpCREPSPS(図1)を得た。次いで、該プラスミドを大腸菌JM109株のコンピテントセル(宝酒造社製)に導入し、アンピシリン耐性株を選抜した。さらに、選抜されたアンピシリン耐性株に含まれるプラスミドの塩基配列をThermo Sequence II Dye Terminator kit(アマシャムファルマシアバイオテク社製)およびDNAシークエンサー373S(PEアプライドバイオシステムズ社製)を用いて決定した。その結果、配列番号3で示される塩基配列が明らかとなり、プラスミドpCREPSPSは本CTP-CP4 EPSPS遺伝子を含むことが確認された。
【0036】
参考例2 タバコマグネシウムケラターゼのプロトポルフィリンIX結合サブユニットの改変タンパク質をコードする遺伝子の取得
タバコ(Nicotiana tabacum cv. SR1)の葉部組織から、RNeasy Plant Kit(QIAGEN社製)を用いて付属のマニュアルにしたがって操作を行ない、全 RNA を調製した。さらに、RNA LA PCR Kit (AMV) Ver 1.1(宝酒造社製)を用いて付属のマニュアルに従って操作を行ない、葉緑体移行シグナルを欠失したタバコマグネシウムケラターゼのプロトポルフィリンIX結合サブユニットタンパク質(以下、本改変タバコケラターゼサブユニットと記す。)をコードする遺伝子を含むDNA断片を取得した。まず、プライマーとして前記キットに含まれるOligo dT-Adaptor Primerを用い、タバコ全RNAを鋳型として使用し、前記キットに含まれる逆転写酵素を添加して1st strand cDNAを合成した。続いて、該1st strand cDNAを鋳型として、前記キットに含まれるLA Taq polymeraseを用いてPCRを行い、本改変タバコケラターゼサブユニットをコードする遺伝子を含むDNA断片を増幅した。ここでPCRのプライマーとしては、配列番号4で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー、および配列番号5で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを用いた。該オリゴヌクレオチドはDNA合成装置(PEアプライドバイオシステムズ社:Model 394 DNA/RNA Synthesizer)を用いて合成し、オリゴヌクレオチド精製用カートリッジ(PEアプライドバイオシステムズ社:OPC カートリッジ)で精製した。また、PCRは、94℃にて2分間の保温を1回行い、続いて、94℃にて30秒間次いで50℃にて30秒間さらに72℃にて7分間の保温を1サイクルとしてこれを30サイクル実施した。前記PCR反応で増幅されたDNA断片についてTA Cloning Kit(Invitrogen社製)を用いて付属のマニュアルに従って操作を行ない、該DNA断片をpCR2.1プラスミドのPCR産物クローニング部位にクローニングした。得られたプラスミドのDNAを制限酵素KpnIで消化した後、アガロースゲル電気泳動で分析し、8.0kbのDNA断片が検出されたプラスミドをpTCHLHと名付けた。該プラスミドは、本改変タバコケラターゼサブユニットをコードする遺伝子がlacプロモーターの制御下でセンスの方向に発現可能な形で挿入された構造を有する。さらに、このプラスミドpTCHLHを制限酵素KpnIで消化した後、自己環化させ、約60塩基からなるDNA断片がプラスミドpTCHLHから除去された構造を有するプラスミドpTCHLH1(図2)を得た。
【0037】
参考例3 本CTP-CP4 EPSPS遺伝子のタバコへの導入
本CTP-CP4 EPSPS遺伝子をアグロバクテリウム法で植物へ導入するためのプラスミドを構築した。まず、pNG01[Shiota et al.(1994)Plant Physiol 106:17-23](図3)を制限酵素HindIIIで消化した後、DNA Polymerase Iを用いて2本鎖DNAのギャップにヌクレオチドを付加してDNAの末端を平滑化した後、T4 DNA ligaseを用いて自己環化させてpNG04(図4)を得た。pNG04をXbaIで消化し、ノパリン合成酵素遺伝子のターミネーターとその下流に位置するカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターとを含むDNA断片を得て、これをプラスミドpUC19(宝酒造社製)のXbaI切断部位に挿入することでpNT35S(図5)を得た。次に参考例1において調製されたプラスミドpCREPSPSをHindIIIとSalIで消化して、得られた本CTP-CP4 EPSPS遺伝子を含むDNA断片をpNT35SのHindIII切断部位とSalI切断部位との間に挿入することにより、プラスミドpCENS(図6)を得た。このプラスミドpCENSを制限酵素HindIIIで消化した後、DNA Polymerase Iを用いて2本鎖DNAのギャップにヌクレオチドを付加しDNA末端を平滑化し、仔牛小腸由来のAlkaline phosphataseで処理して該DNAの5'末端を脱りん酸化し、りん酸化KpnIリンカー(宝酒造製4668A)を挿入して環化させ、プラスミドpCENSK(図7)を得た。一方、バイナリーベクターpBI121(Clontech社製)を制限酵素SmaIで消化し、そこへKpnIリンカー(宝酒造製)を挿入することにより、pBI121のSmaI認識部位が除去されKpnI認識部位が付加されたプラスミドpBI121Kを作製した。該プラスミドpBI121KのDNAを制限酵素SacIで消化した後、DNA polymerase Iを用いて2本鎖DNAの3'突出末端を消化して該DNAの末端を平滑化した。次に仔牛小腸由来のAlkaline phosphataseで該DNAの5'末端を脱りん酸化し、りん酸化SalIリンカー(宝酒造製4680P)を挿入して環化させ、プラスミドpBI121KSを構築した。該バイナリーベクターpBI121KSを制限酵素KpnIとSalIとで消化することによりβ-glucuronidase遺伝子を除去し、これに換えて前記のプラスミドpCENSKを制限酵素KpnIとSalIで消化して得られる本CTP-CP4 EPSPS遺伝子を含むDNA断片を挿入し、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの下流に本CTP-CP4 EPSPS遺伝子が結合されてなるプラスミドpBICE(図8)を作製した。また、バイナリーベクターpBI121(Clontech社製)を制限酵素BamHIとSacIで消化することによりβ-glucuronidase遺伝子を除去し、得られたDNA断片の末端をT4 DNA polymeraseを用いて平滑化した後、T4 DNA ligaseを用いて自己環化させプラスミドpNO(図9)を構築した。該プラスミドは本CTP-CP4 EPSPS遺伝子発現プラスミドpBICEのベクターコントロールとして用いた。
該プラスミドpBICEおよびpNOをそれぞれ、Agrobacterium tumefaciens LBA4404(Clontech社製)に導入し、これを300μg/mlストレプトマイシン、100μg/mlリファンピシン、25μg/mlカナマイシンを含むLB培地(0.5% Yeast extract, 1.0% Bacto tryptone, 0.5% NaCl)で培養して形質転換体を選抜することによって、pBICEを持つアグロバクテリウム株およびpNOを持つアグロバクテリウム株を単離した。
次いで、植物遺伝子操作マニュアル(内宮博文著、講談社サイエンティフィック、1992年)に記載されている方法に準じて、タバコへの遺伝子導入を行った。プラスミドpBICEを持つアグロバクテリウム株をLB培地(0.5% Yeast extract, 1.0% Bacto tryptone, 0.5% NaCl)中で28℃にて終夜培養し、該培養液に無菌培養したタバコ(Nicotiana tabacum cv. SR1)の葉片を浸漬した。該タバコ葉片を、Murashige-Skoog培地[Murashige T. and Skoog F., Physiol. Plant. (1962) 15, p473に記載。以下、MS培地と記す。]に0.8%寒天、0.1mg/lナフタレン酢酸および1.0mg/lベンジルアミノプリンを添加した培地上で室温にて2日間培養した。次に、該タバコ葉片を滅菌水で洗浄した後、0.8%寒天、0.1mg/lナフタレン酢酸、1.0mg/lベンジルアミノプリン、および、500μg/mlセフォタキシムを添加したMS培地上で7日間培養した。次いで、該タバコ葉片を0.8%寒天、0.1mg/lナフタレン酢酸、1.0mg/lベンジルアミノプリン、500μg/mlセフォタキシム、および、100μg/mlカナマイシンを添加したMS培地(以下、選抜用MS培地と記す。)上に移植し培養した。該培養は、前記タバコ葉片を1ヶ月後毎に新鮮な選抜用MS培地に移植しながら継続的に4ヶ月間実施した。この間に、該タバコ葉片から出現した茎葉分化したシュートを、0.8%寒天、300μg/mlセフォタキシム、および、50μg/mlカナマイシンを添加したMS培地に移植して発根させ再生個体を得た。該再生個体を0.8%寒天、および、50μg/mlカナマイシンを添加したMS培地に移植して培養し、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子が導入されたタバコ個体を取得した。また、同様にして、pNOを持つアグロバクテリウム株をタバコの葉片に感染させ、該タバコ葉片から再生個体を得て、タバコ個体(以下、コントロール組換えタバコと記す。)を取得した。
【0038】
実施例1 本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本改変タバコケラターゼサブユニットをコードする遺伝子のタバコへの導入
本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本改変タバコケラターゼサブユニットをコードする遺伝子をアグロバクテリウム法で植物へ導入するためのプラスミドを構築した。まず、参考例2で作製されたプラスミドpTCHLH1を制限酵素KpnIとSalIとで消化することにより、本改変タバコケラターゼサブユニットをコードする遺伝子を含むDNA断片を調製した。一方、参考例3で作製されたバイナリーベクターpBI121KSを制限酵素KpnIとSalIとで消化することによりβ-glucuronidase遺伝子を除去し、これに替えて、前記の本改変タバコケラターゼサブユニットをコードする遺伝子を含むDNA断片を挿入し、該遺伝子が35Sプロモーターの下流に結合されてなるプラスミドpBITCHLH(図10)を作製した。次に、参考例3において調製されたプラスミドpCENSKを制限酵素KpnIで消化し、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子と、該遺伝子の下流に位置するノパリン合成酵素をコードする遺伝子のターミネーターと、さらにその下流に位置するカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターとを含むDNA断片を得て、これを前記のプラスミドpBITCHLHのKpnI切断部位に挿入することで、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本改変タバコケラターゼサブユニットをコードする遺伝子がそれぞれカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの下流に結合されてなるプラスミドpBICETCH(図11)を作製した。
該プラスミドpBICETCHを、Agrobacterium tumefaciens LBA4404に導入し、これを300μg/mlストレプトマイシン、100μg/mlリファンピシン、25μg/mlカナマイシンを含むLB培地で培養して形質転換体を選抜することによって、pBICETCHを持つアグロバクテリウム株を単離した。
該アグロバクテリウム株を無菌培養したタバコの葉片に感染させ、参考例3記載の方法と同様の操作で、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本改変タバコケラターゼサブユニットをコードする遺伝子が導入されたタバコを取得した。
【0039】
試験例1 本CTP-CP4 EPSPS遺伝子が導入されたタバコ、ならびに本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本改変タバコケラターゼサブユニットをコードする遺伝子が導入されたタバコの除草剤耐性試験
参考例3で得られた本CTP-CP4 EPSPS遺伝子が導入されたタバコ2個体(個体名;CE-1、CE-2)の葉およびコントロール組換えタバコの葉、ならびに実施例1で得られた本CTP-CP4 EPSPS遺伝子と本改変タバコケラターゼサブユニットをコードする遺伝子とが導入されたタバコ2個体(個体名;CETCH-1、CETCH-2)の葉を採取して、これらをそれぞれ主葉脈に沿って左右均等に2分割し、一方の葉片に前記 構造式8で示されるPPO阻害型除草性化合物を0.3ppmの濃度で含む水溶液を全面に塗布した。尚、他方の葉片には前記の除草性化合物の塗布を行なわなかった。これらの葉片を、0.8%寒天を含むMS培地上に置き、明所、室温にて7日間放置した。次いで、各葉片を、それぞれ乳鉢と乳棒とを用いて5mlの80%アセトン水溶液中で磨砕してクロロフィルを抽出した。抽出液を80%アセトン水溶液で10倍に希釈した後、750nm、663nm、645nmにおける吸光度を測定し、Macknney G., J. Biol. Chem. (1941) 140, p315記載の方法によって総クロロフィル含量を算出した。結果を表1に示す。表中、PPO阻害型除草性化合物に対する耐性度は、PPO阻害型除草性化合物処理した葉片の総クロロフィル含量の、未処理の葉片の総クロロフィル含量に対する百分率で表した。
【0040】
【表1】
また、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子が導入されたタバコ2個体(個体名;CE-1、CE-2)、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子と本改変タバコケラターゼサブユニットをコードする遺伝子とが導入されたタバコ2個体(個体名;CETCH-1、CETCH-2)、およびコントロール組換えタバコを、グリホサート(イソプロピルアンモニウム N-(ホスホノメチル)グリシナート)を100ppmの濃度で含む水溶液で同様に処理し、当該グリフォセート化合物に対する耐性度を測定した。結果を表2に示す。表中、グリフォセート化合物に対する耐性度は、グリフォセート化合物で処理した葉片の総クロロフィル含量の、未処理の葉片の総クロロフィル含量に対する百分率で表した。
【0041】
【表2】
【0042】
参考例4 hemG遺伝子欠失大腸菌におけるダイズ由来PPO遺伝子の発現
ダイズ(Glycine max var. Williams82)を播種後、25℃で20日間栽培し、緑葉を採取した。採取した緑葉5gを液体窒素で凍結させ、これを乳鉢と乳棒で磨砕し、該磨砕物から、RNA抽出試薬ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いて付属のマニュアルにしたがってRNAを抽出した。得られたRNA抽出液からエタノール沈殿で全RNAを回収し、これをpoly(A)RNA分画キットBIOMAG mRNA Purification Kit(パーセプティブバイオシステム社製)を用いて付属のマニュアルに準じて分画し、poly(A)RNA画分を回収した。このpoly(A)RNA画分1μgを鋳型に用いてMarathon cDNA amplification kit(Clontech社製)に含まれるcDNA合成試薬を用い付属のマニュアルに従ってcDNAを合成した。得られたcDNAを鋳型にして、配列番号6で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号7で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーに使ってPCRを行い、葉緑体型PPO遺伝子を含むDNA断片を増幅した。なお、該オリゴヌクレオチドはDNA合成装置(PEアプライドバイオシステムズ社:Model 394 DNA/RNA Synthesizer)を用いて合成し、オリゴヌクレオチド精製用カートリッジ(PEアプライドバイオシステムズ社:OPC カートリッジ)で精製した。また、PCRは、94℃にて1分間次いで65℃にて5分間の保温を1回行った後、94℃にて15秒間次いで65℃にて5分間の保温を1サイクルとしてこれを29回実施した。PCR反応後、反応液をMicroSpin S-400HR(ファルマシアバイオテク社製)で濾過することによって、増幅されたDNA断片を精製し、該DNA断片を、制限酵素SalIで切断されたプラスミドpCR2.1(Invitrogen社製)と連結することにより、プラスミドpSPPO-Pを得た。次いで、該プラスミドを大腸菌INVαF'株のコンピテントセル(Invitrogen社製)に導入し、アンピシリン耐性株を選抜した。さらに、選抜されたアンピシリン耐性株に含まれるプラスミドの塩基配列をDye terminator cycle sequencing kit(PEアプライドバイオシステムズ社製)およびDNAシークエンサー373S(PEアプライドバイオシステムズ社製)を用いて決定した。その結果、配列番号8で示される塩基配列が明らかとなり、プラスミドpSPPO-Pはダイズの葉緑体型PPO遺伝子を含むことが確認された。
このプラスミドpSPPO-Pを制限酵素PshBIで消化し、得られたDNA断片の末端をT4 DNA polymeraseを用いて平滑化した後、さらにSphIで消化し、ダイズの葉緑体型PPO遺伝子とlacプロモーターとを含むDNA断片を単離した。次に、プラスミドpACYC184(ニッポンジーン社製)を制限酵素NruIとSphIで消化し、410bpの断片を除去してこれに替えて前記DNA断片を挿入することにより、プラスミドpACYCSP(図12)を得た。次いで、該プラスミドpACYCSPを、Yamamoto,F.et al., Japanese J. Genet.,63; p237(1988)等に記載されているPPO遺伝子(hemG遺伝子座)欠損突然変異系統大腸菌BT3株にHanahan,D.J., Mol. Biol., 166; p557(1983)に記載の方法に従って導入し、これを15μg/mlクロランフェニコール、10μg/mlカナマイシンを含むYPT培地(5g/l酵母エキス, 5g/lトリプトン, 5g/lペプトン, 10g/l NaCl, pH7.0)で培養することにより、クロランフェニコールおよびカナマイシンに耐性であり、hemG遺伝子欠失がダイズ由来のPPO遺伝子で相補された大腸菌BT3/pACYCSP株を選抜した。
【0043】
参考例5 ダイズPPOの改変タンパク質であってプロトポルフィリノーゲンIXに対する酸化能を持たずプロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合するタンパク質をコードする遺伝子の取得
配列番号9で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号10で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーに用い、参考例4で作製されたプラスミドpSPPO-Pを鋳型にしてPCRを行い、葉緑体移行シグナルとFAD結合配列を欠失したダイズPPO(以下、本改変ダイズPPOと記す。)をコードするDNA断片を増幅した。なお、前記オリゴヌクレオチドはDNA合成装置(PEアプライドバイオシステムズ社:Model 394 DNA/RNA Synthesizer)を用いて合成し、オリゴヌクレオチド精製用カートリッジ(PEアプライドバイオシステムズ社:OPC カートリッジ)で精製した。また、PCRは、94℃にて1分間次いで55℃にて2分間さらに72℃にて3分間の保温を1サイクルとしてこれを30回実施した。増幅したDNA断片を、制限酵素NcoIとSalIで消化し、プラスミドpTV118N(宝酒造社製)のNcoI切断部位とSalI切断部位の間に挿入することにより、プラスミドpTVGMP(図13)を構築した。
該プラスミドpTVGMPをPPO遺伝子欠失突然変異系統大腸菌BT3株にHanahan,D.J., Mol. Biol.,166; p557(1983)に記載の方法に従って導入し、これを100μg/mlアンピシリン、10μg/mlカナマイシンを含むYPT培地(5g/l酵母エキス, 5g/lトリプトン, 5g/lペプトン, 10g/l NaCl, pH7.0)で培養したところ、生育相補されたクローンは全く得られなかった。
【0044】
実施例2 本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本改変ダイズPPOをコードする遺伝子のタバコへの導入
本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本改変ダイズPPOをコードする遺伝子をアグロバクテリウム法で植物へ導入するためのプラスミドを構築した。参考例5記載の方法と同様に、配列番号11で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーおよび配列番号12で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、参考例4で作製されたプラスミドpSPPO-Pを鋳型にしてPCRを実施することにより、本改変ダイズPPOをコードする遺伝子を含むDNA断片を増幅した。次いで、参考例3で作製されたプラスミドpBI121Kを制限酵素KpnIとSacIとで消化することによりβ-glucuronidase遺伝子を除去し、これに替えて、前記の本改変ダイズPPOをコードする遺伝子を含むDNA断片を制限酵素KpnIとSacIとで消化して得られるDNA断片を挿入し、該遺伝子が35Sプロモーターの下流に結合されてなるプラスミドpBIGMP(図14)を作製した。
次に、参考例3において調製されたプラスミドpCENSKを制限酵素KpnIで消化し、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子、その下流に位置するノパリン合成酵素をコードする遺伝子のターミネーター、およびさらにその下流に位置するカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターを含むDNA断片を得て、これを前記のプラスミドpBIGMPのKpnI切断部位に挿入することで、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本改変ダイズPPOをコードする遺伝子がそれぞれカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの下流に結合されてなるプラスミドpBICEGMP(図15)を作製する。
該プラスミドpBICEGMPを、Agrobacterium tumefaciens LBA4404に導入し、これを300μg/mlストレプトマイシン、100μg/mlリファンピシン、25μg/mlカナマイシンを含むLB培地で培養して形質転換体を選抜することによって、pBICEGMPを持つアグロバクテリウム株を単離する。
該アグロバクテリウム株を無菌培養したタバコの葉片に感染させ、参考例3記載の方法と同様の操作で、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本改変ダイズPPOをコードする遺伝子が導入されたタバコを取得する。
【0045】
試験例2 本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本改変ダイズPPOをコードする遺伝子の導入されたタバコの除草剤耐性試験
実施例2で得られる本CTP-CP4 EPSPS遺伝子と本改変ダイズPPOをコードする遺伝子とが導入されたタバコ、およびコントロール組換えタバコについて、試験例1と同様の操作で試験することにより、前記 構造式8で示されるPPO阻害型除草性化合物に対する耐性度を定量的に確認する。
また、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子と本改変ダイズPPOをコードする遺伝子とが導入されたタバコおよびコントロール組換えタバコを、試験例1と同様の操作で試験することにより、グリフォセート化合物に対する耐性度を定量的に確認する。
【0046】
参考例6 コナミドリムシPPO遺伝子の取得
コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)CC407 株を、Chlamydomonas Genetics Center (address: DCMB Group, Department of Botany, Box 91000, Duke University, Durham, NC 27708-1000, USA)より入手し、200μE/m2/秒の光合成活性照明下、7mM NH4Cl、0.4mM MgSO4・7H2O、0.34mM CaCl2・2H2O、25mM リン酸カリウム、0.5mM トリス(pH 7.5)、1ml/L ハトナー微量要素、および 1ml/L 氷酢酸からなる TAP 液体培地(E. H. Harris、The Chlamydomonas Sourcebook、Academic Press、San Diego、1989年、576-577頁)中で5日間培養し、初期定常増殖期の細胞を含む培養液 200ml(1.0x106 cells/ml)を得た。
この細胞から、ISOGEN(日本ジーン社製)を用いて付属のマニュアルにしたがって操作を行ない、全 RNA を調製した。さらに、BioMag mRNA Purification Kit(パーセプティブバイオシステム社)を用いて付属のマニュアルに従って操作を行ない、poly(A)RNA を分画した。得られた poly(A)RNA から、Marathon cDNA Amplification Kit(Clontech 社製)を用いて付属のマニュアルに従って操作を行ないcDNAを合成し、PCRの鋳型とした。
PCRのプライマーとして、配列番号13で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号14で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを調製した。これらのオリゴヌクレオチドはDNA合成装置(PEアプライドバイオシステムズ社:Model 394 DNA/RNA Synthesizer)を用いて合成し、オリゴヌクレオチド精製用カートリッジ(PEアプライドバイオシステムズ社:OPC カートリッジ)で精製した。
PCRは、Advantage cDNA PCR Kit(Clontech 社製)を用いて付属のマニュアルに従って反応液を調製し、94℃にて1分間次いで65℃にて5分間の保温を1回行った後、94℃にて15秒間次いで65℃にて5分間の保温を1サイクルとしてこれを29回実施した。PCR反応後、反応液をMicroSpin S-400HR(ファルマシアバイオテク社製)で濾過することによって、増幅されたDNA断片を精製した。TA Cloning Kit(Invitrogen社製)を用いて付属のマニュアルに従って操作を行ない、該増幅DNA断片をpCR2.1プラスミドのPCR産物クローニング部位にクローニングし、プラスミドpCPPOを構築した。
得られた組換えプラスミドpCPPOが有するDNA断片の塩基配列をDye terminator cycle sequencing kit(PEアプライドバイオシステムズ社製)およびDNAシークエンサー373S(PEアプライドバイオシステムズ社製)を用い決定した。その結果、配列番号15で示される塩基配列が明らかとなり、pCPPOはコナミドリムシのPPOの完全長cDNAを含むプラスミドであることが判明した。
【0047】
参考例7 コナミドリムシPPOの改変タンパク質であってプロトポルフィリノーゲンIXに対する酸化能を持たずプロトポルフィリノーゲンIXに特異的に結合するタンパク質をコードする遺伝子の取得
配列番号16で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号17で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーに用い、参考例6で作製されたプラスミドpCPPOを鋳型にしてPCRを行い、葉緑体移行シグナルとFAD結合配列を欠失したコナミドリムシのPPO(以下、本改変コナミドリムシPPOと記す。)をコードするDNA断片を増幅した。なお、オリゴヌクレオチドはDNA合成装置(PEアプライドバイオシステムズ社:Model 394 DNA/RNA Synthesizer)を用いて合成し、オリゴヌクレオチド精製用カートリッジ(PEアプライドバイオシステムズ社:OPC カートリッジ)で精製した。また、PCRは、94℃にて1分間次いで55℃にて2分間さらに72℃にて3分間の保温を1サイクルとしてこれを30回実施した。増幅したDNA断片を、制限酵素BamHIとSacIで消化し、これをプラスミドpTV119N(宝酒造社製)のBamHI切断部位とSacI切断部位の間に挿入することにより、プラスミドpTVCRP(図16)を構築した。
該プラスミドpTVCRPをPPO遺伝子欠失突然変異系統大腸菌BT3株にHanahan,D.J., Mol. Biol., 166; p557(1983)に記載の方法に従って導入し、これを100μg/mlアンピシリン、10μg/mlカナマイシンを含むYPT培地(5g/l酵母エキス, 5g/lトリプトン, 5g/lペプトン, 10g/l NaCl, pH7.0)で培養したところ、生育相補されたクローンは全く得られなかった。
【0048】
実施例3 本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本改変コナミドリムシPPOをコードする遺伝子のタバコへの導入
本CTP-CP4 EPSPS遺伝子と本改変コナミドリムシPPOをコードする遺伝子とをアグロバクテリウム法で植物へ導入するためのプラスミドを構築した。参考例7で作製されたプラスミドpTVCRPを制限酵素BamHIとSacIとで消化することにより、本改変コナミドリムシPPOをコードする遺伝子を含むDNA断片を調製した。バイナリーベクターpBI121(Clontech社製)を制限酵素BamHIとSacIとで消化することによりβ-glucuronidase遺伝子を除去し、これに替えて、前記の本改変コナミドリムシPPOをコードする遺伝子を含むDNA断片を挿入し、該遺伝子が35Sプロモーターの下流に結合されてなるプラスミドpBICRP(図17)を作製した。
次いで、該プラスミドpBICRPを制限酵素BamHIで消化した後、DNA Polymerase Iを用いて2本鎖DNAのギャップにヌクレオチドを付加しDNA末端を平滑化し、仔牛小腸由来のAlkaline phosphataseで処理して該DNAの5'末端を脱りん酸化し、りん酸化KpnIリンカー(宝酒造製4668A)を挿入して環化させ、プラスミドpBICRPKを得る。次に、参考例3において調製されたプラスミドpCENSKを制限酵素KpnIで消化し、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子、その下流に位置するノパリン合成酵素をコードする遺伝子のターミネーター、およびさらにその下流に位置するカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターを含むDNA断片を得て、これを前記のプラスミドpBICRPKのKpnI切断部位に挿入することで、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本改変ダイズPPOをコードする遺伝子がそれぞれカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの下流に結合されてなるプラスミドpBICECRP(図18)を作製する。
該プラスミドpBICECRPを、Agrobacterium tumefaciens LBA4404に導入し、これを300μg/mlストレプトマイシン、100μg/mlリファンピシン、25μg/mlカナマイシンを含むLB培地で培養して形質転換体を選抜することによって、pBICECRPを持つアグロバクテリウム株を単離する。
該アグロバクテリウム株を無菌培養したタバコの葉片に感染させ、参考例3記載の方法と同様の操作で、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本改変コナミドリムシPPOをコードする遺伝子が導入されたタバコを取得する。
【0049】
試験例3 本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本改変コナミドリムシPPOをコードする遺伝子の導入されたタバコの除草剤耐性試験
実施例3で得られる本CTP-CP4 EPSPS遺伝子と本改変コナミドリムシPPOをコードする遺伝子とが導入されたタバコ、よびコントロール組換えタバコについて、試験例1と同様の操作で試験することにより、前記 構造式8で示されるPPO阻害型除草性化合物に対する耐性度を定量的に確認する。
また、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子と本改変コナミドリムシPPOをコードする遺伝子とが導入されたタバコおよびコントロール組換えタバコを、試験例1と同様の操作で試験することにより、グリフォセート化合物に対する耐性度を定量的に確認する。
【0050】
参考例8 シロイヌナズナの葉緑体局在型フェロケラターゼをコードする遺伝子の取得
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana WS)の葉部組織から、RNeasy Plant Kit(QIAGEN社製)を用いて付属のマニュアルに従って操作を行ない、全 RNA を調製した。さらに、RNA LA PCR Kit (AMV) Ver 1.1(宝酒造社製)を用いて付属のマニュアルに従って操作を行ない、葉緑体局在型フェロケラターゼ(以下、本シロイヌナズナフェロケラターゼと記す。)をコードする遺伝子を含むDNA断片を取得した。まず、プライマーとして前記キットに含まれるOligo dT-Adaptor Primerを用い、シロイヌナズナ全RNAを鋳型として用いて、前記キットに含まれる逆転写酵素を添加して1st strand cDNAを合成した。続いて、該1st strand cDNAを鋳型として、前記キットに含まれるLA Taq polymeraseを用いてPCRを行い、本シロイヌナズナフェロケラターゼをコードする遺伝子を含むDNA断片を増幅した。ここでPCRのプライマーとしては、配列番号18で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー、および配列番号19で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを用いた。該オリゴヌクレオチドはDNA合成装置(PEアプライドバイオシステムズ社:Model 394 DNA/RNA Synthesizer)を用いて合成し、オリゴヌクレオチド精製用カートリッジ(PEアプライドバイオシステムズ社:OPC カートリッジ)で精製した。また、PCRは、94℃にて2分間の保温を1回行い、続いて、94℃にて30秒間次いで55℃にて30秒間さらに72℃にて3分間の保温を1サイクルとしてこれを30サイクル実施した。前記のPCR反応後、該PCR反応で増幅されたDNA断片についてTA Cloning Kit(Invitrogen社製)を用いて付属のマニュアルに従って操作を行ない、該DNA断片をpCR2.1プラスミドのPCR産物クローニング部位にクローニングしてプラスミドpCRATF(図19)と名付けた。該プラスミドは、本シロイヌナズナフェロケラターゼをコードする遺伝子がlacプロモーターの制御下でセンス方向に発現可能な形で挿入された構造を有する。次いで、該プラスミドを大腸菌JM109株のコンピテントセル(宝酒造社製)に導入し、アンピシリン耐性株を選抜した。さらに、選抜されたアンピシリン耐性株に含まれるプラスミドの塩基配列をThermo Sequence II Dye Terminator kit(アマシャムファルマシアバイオテク社製)およびDNAシークエンサー373S(PEアプライドバイオシステムズ社製)を用いて決定した。その結果、配列番号20で示される塩基配列が明らかとなり、プラスミドpCRATFは本シロイヌナズナフェロケラターゼをコードする遺伝子を含むことが確認された。
【0051】
実施例4 本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本シロイヌナズナフェロケラターゼをコードする遺伝子のタバコへの導入
本CTP-CP4 EPSPS遺伝子と本シロイヌナズナフェロケラターゼをコードする遺伝子とをアグロバクテリウム法で植物へ導入するためのプラスミドを構築した。まず、参考例8で作製されたプラスミドpCRATFを制限酵素SacIで消化することにより、本シロイヌナズナフェロケラターゼをコードする遺伝子を含むDNA断片を調製した。このDNA断片をバイナリーベクターpBI121(Clontech社製)の制限酵素SacI切断部位に挿入することでプラスミドpBIATFGUSを得た。このプラスミドを制限酵素BamHIで消化することによりβ-glucuronidase遺伝子を除去し、自己環化させることで、該遺伝子が35Sプロモーターの下流に結合されてなるプラスミドpBIATF(図20)を作製した。
次いで、該プラスミドpBIATFを制限酵素BamHIで消化した後、DNA Polymerase Iを用いて2本鎖DNAのギャップにヌクレオチドを付加しDNA末端を平滑化し、仔牛小腸由来のAlkaline phosphataseで処理して該DNAの5'末端を脱りん酸化し、りん酸化KpnIリンカー(宝酒造製4668A)を挿入して環化させ、プラスミドpBIATFKを得る。次に、参考例3において調製されたプラスミドpCENSKを制限酵素KpnIで消化し、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子、その下流に位置するノパリン合成酵素をコードする遺伝子のターミネーター、およびさらにその下流に位置するカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターを含むDNA断片を得て、これを前記のプラスミドpBIATFKのKpnI切断部位に挿入することで、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本シロイヌナズナフェロケラターゼをコードする遺伝子がそれぞれカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの下流に結合されてなるプラスミドpBICEATF(図21)を作製する。
該プラスミドpBICEATFを、Agrobacterium tumefaciens LBA4404に導入し、これを300μg/mlストレプトマイシン、100μg/mlリファンピシン、25μg/mlカナマイシンを含むLB培地で培養して形質転換体を選抜することによって、pBICEATFを持つアグロバクテリウム株を単離する。
該アグロバクテリウム株を無菌培養したタバコの葉片に感染させ、参考例3記載の方法と同様の操作で、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本シロイヌナズナフェロケラターゼをコードする遺伝子が導入されたタバコを取得する。
【0052】
試験例4 本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本シロイヌナズナフェロケラターゼをコードする遺伝子の導入されたタバコの除草剤耐性試験
実施例4で得られる本CTP-CP4 EPSPS遺伝子と本シロイヌナズナフェロケラターゼをコードする遺伝子とが導入されたタバコ、およびコントロール組換えタバコについて、試験例1と同様の操作で試験することにより、前記 構造式8で示されるPPO阻害型除草性化合物に対する耐性度を定量的に確認する。
また、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子と本シロイヌナズナフェロケラターゼをコードする遺伝子とが導入されたタバコおよびコントロール組換えタバコを、試験例1と同様の操作で試験することにより、グリフォセート化合物に対する耐性度を定量的に確認する。
【0053】
参考例9 ダイズのコプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼをコードする遺伝子の単離
ダイズ(Glycine max cv. Jack)を播種後、25℃で20日間栽培し、緑葉を採取した。採取した緑葉5gを液体窒素で凍結させ、これを乳鉢と乳棒で磨砕し、該磨砕物から、RNA抽出試薬ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いて付属のマニュアルにしたがって全 RNA を調製した。さらに、RNA LA PCR Kit (AMV) Ver 1.1(宝酒造社製)を用いて付属のマニュアルに従って操作を行ない、コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ(以下、本ダイズCPOXと記す。)をコードする遺伝子を含むDNA断片を取得した。まず、プライマーとして前記キットに含まれるOligo dT-Adaptor Primerを用い、ダイズ全RNAを鋳型として使用して、前記キットに含まれる逆転写酵素を添加して1st strand cDNAを合成した。続いて、該1st strand cDNAを鋳型として、前記キットに含まれるLA Taq polymeraseを用いてPCRを行い、本ダイズCPOXをコードする遺伝子を含むDNA断片を増幅した。ここでPCRのプライマーとしては、配列番号21で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー、および配列番号22で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを用いた。該オリゴヌクレオチドはDNA合成装置(PEアプライドバイオシステムズ社:Model 394 DNA/RNA Synthesizer)を用いて合成し、オリゴヌクレオチド精製用カートリッジ(PEアプライドバイオシステムズ社:OPC カートリッジ)で精製した。また、PCRは、94℃にて2分間の保温を1回行い、続いて、94℃にて30秒間次いで55℃にて30秒間さらに72℃にて3分間の保温を1サイクルとしてこれを30サイクル実施した。前記のPCR反応後、該PCR反応で増幅されたDNA断片についてTA Cloning Kit(Invitrogen社製)を用いて付属のマニュアルに従って操作を行ない、該DNA断片をpCR2.1プラスミドのPCR産物クローニング部位にクローニングしてプラスミドpCRSCPOX(図22)と名付けた。該プラスミドは、本ダイズCPOXをコードする遺伝子がlacプロモーターの下流にアンチセンス方向に挿入された構造を有する。次いで、該プラスミドを大腸菌JM109株のコンピテントセル(宝酒造社製)に導入し、アンピシリン耐性株を選抜した。さらに、選抜されたアンピシリン耐性株に含まれるプラスミドの塩基配列をThermo Sequence II Dye Terminator kit(アマシャムファルマシアバイオテク社製)およびDNAシークエンサー373S(PEアプライドバイオシステムズ社製)を用いて決定した。その結果、配列番号23で示される塩基配列が明らかとなり、プラスミドpCRSCPOXは本ダイズCPOX遺伝子を含むことが確認された。
【0054】
実施例5 本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本ダイズCPOXをコードする遺伝子のタバコへの導入
本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本ダイズCPOXをコードする遺伝子をアグロバクテリウム法で植物へ導入するためのプラスミドを構築した。まず、参考例9で作製されたプラスミドpCRSCPOXを制限酵素BamHIで消化することにより、本ダイズCPOXをコードする遺伝子を含むDNA断片を調製した。このDNA断片を参考例3で作製されたバイナリーベクターpBI121KSの制限酵素BamHI切断部位に挿入することでプラスミドpBISCPOXGUSを得た。このプラスミドを制限酵素SalIで消化することによりβ-glucuronidase遺伝子を除去し、自己環化させることで、該遺伝子が35Sプロモーターの下流に結合されてなるプラスミドpBISCPOX(図23)を作製した。
次いで、該プラスミドpBISCPOXを制限酵素BamHIで消化した後、DNA Polymerase Iを用いて2本鎖DNAのギャップにヌクレオチドを付加しDNA末端を平滑化し、仔牛小腸由来のAlkaline phosphataseで処理して該DNAの5'末端を脱りん酸化し、りん酸化KpnIリンカー(宝酒造製4668A)を挿入して環化させ、プラスミドpBISCPOXKを得る。次に、参考例3において調製されたプラスミドpCENSKを制限酵素KpnIで消化し、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子、その下流に位置するノパリン合成酵素をコードする遺伝子のターミネーター、およびさらにその下流に位置するカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターを含むDNA断片を得て、これを前記のプラスミドpBISCPOXKのKpnI切断部位に挿入することで、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本ダイズCPOXをコードする遺伝子がそれぞれカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの下流に結合されてなるプラスミドpBICESCPOX(図24)を作製する。
該プラスミドpBICESCPOXを、Agrobacterium tumefaciens LBA4404に導入し、これを300μg/mlストレプトマイシン、100μg/mlリファンピシン、25μg/mlカナマイシンを含むLB培地で培養して形質転換体を選抜することによって、pBICESCPOXを持つアグロバクテリウム株を単離する。
該アグロバクテリウム株を無菌培養したタバコの葉片に感染させ、参考例3記載の方法と同様の操作で、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子と本ダイズCPOXをコードする遺伝子とが導入されたタバコを取得する。
【0055】
試験例5 本CTP-CP4 EPSPS遺伝子および本ダイズCPOXをコードする遺伝子の導入されたタバコの除草剤耐性試験
実施例5で得られる本CTP-CP4 EPSPS遺伝子と本ダイズCPOXをコードする遺伝子とが導入されたタバコ、およびコントロール組換えタバコについて、試験例1と同様の操作で試験することにより、前記 構造式8で示されるPPO阻害型除草性化合物に対する耐性度を定量的に確認する。
また、本CTP-CP4 EPSPS遺伝子と本ダイズCPOXをコードする遺伝子とが導入されたタバコおよびコントロール組換えタバコを、試験例1と同様の操作で試験することにより、グリフォセート化合物に対する耐性度を定量的に確認する。
【0056】
【発明の効果】
本発明により、グリフォセート化合物に対する耐性およびPPO阻害型除草性化合物に対する耐性が付与された植物が提供可能となる。
【0057】
[配列表フリーテキスト]
配列番号1
ペチュニア由来のEPSPS遺伝子の葉緑体トランジットペプチドをコードする塩基配列の下流にアグロバクテリウム由来のEPSPS遺伝子が結合されたキメラ遺伝子を有するDNA断片を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号2
ペチュニア由来のEPSPS遺伝子の葉緑体トランジットペプチドをコードする塩基配列の下流にアグロバクテリウム由来のEPSPS遺伝子が結合されたキメラ遺伝子を有するDNA断片を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号4
タバコ由来のchlH遺伝子の部分塩基配列を有するDNA断片を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号5
タバコ由来のchlH遺伝子の部分塩基配列を有するDNA断片を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号6
ダイズ由来のPPO遺伝子を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号7
ダイズ由来のPPO遺伝子を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号9
ダイズ由来のPPO遺伝子の部分塩基配列を有するDNA断片を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号10
ダイズ由来のPPO遺伝子の部分塩基配列を有するDNA断片を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号11
ダイズ由来のPPO遺伝子の部分塩基配列を有するDNA断片を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号12
ダイズ由来のPPO遺伝子の部分塩基配列を有するDNA断片を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号13
コナミドリムシ由来のPPO遺伝子を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号14
コナミドリムシ由来のPPO遺伝子を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号16
コナミドリムシ由来のPPO遺伝子の部分塩基配列を有するDNA断片を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号17
コナミドリムシ由来のPPO遺伝子の部分塩基配列を有するDNA断片を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号18
シロイヌナズナ由来の葉緑体局在型フェロケラターゼ遺伝子を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号19
シロイヌナズナ由来の葉緑体局在型フェロケラターゼ遺伝子を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号21
ダイズ由来のコプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ遺伝子を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号22
ダイズ由来のコプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ遺伝子を増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
【0058】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】プラスミドpCREPSPSの制限酵素地図を示す。CTP-EPSPSはペチュニア由来のEPSPSの葉緑体トランジットペプチドをコードする塩基配列の下流にアグロバクテリウム由来のEPSPS遺伝子が結合されたキメラ遺伝子であり、lac proはラクトースオペロンのプロモーター配列を意味する。また、Amprはアンピシリン耐性遺伝子、Kmrはカナマイシン耐性遺伝子、oriは複製開始点を表す。
【図2】プラスミドpTCHLH1の制限酵素地図を示す。TCHLHは葉緑体移行シグナルを欠失したタバコマグネシウムケラターゼのプロトポルフィリンIX結合サブユニット遺伝子であり、lac proはラクトースオペロンのプロモーター配列を意味する。また、Amprはアンピシリン耐性遺伝子、Kmrはカナマイシン耐性遺伝子、oriは複製開始点を表す。
【図3】プラスミドpNG01の制限酵素地図を示す。NPはノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター配列を、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを意味する。また、NPTIIはカナマイシン耐性遺伝子、GUSはβ-glucuronidase遺伝子、RB及びLBはT-DNAの左右境界配列を表す。
【図4】プラスミドpNG04の制限酵素地図を示す。NPはノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター配列を、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを意味する。また、NPTIIはカナマイシン耐性遺伝子、GUSはβ-glucuronidase遺伝子、RB及びLBはT-DNAの左右境界配列を表す。
【図5】プラスミドpNT35Sの制限酵素地図を示す。NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを、lac proはラクトースオペロンのプロモーター配列を意味する。また、Amprはアンピシリン耐性遺伝子、oriは複製開始点を表す。
【図6】プラスミドpCENSの制限酵素地図を示す。CTP-EPSPSはペチュニア由来のEPSPSの葉緑体トランジットペプチドをコードする塩基配列の下流にアグロバクテリウム由来のEPSPS遺伝子が結合されたキメラ遺伝子であり、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを、lac proはラクトースオペロンのプロモーター配列を意味する。また、Amprはアンピシリン耐性遺伝子、oriは複製開始点を表す。
【図7】プラスミドpCENSKの制限酵素地図を示す。CTP-EPSPSはペチュニア由来のEPSPSの葉緑体トランジットペプチドをコードする塩基配列の下流にアグロバクテリウム由来のEPSPS遺伝子が結合されたキメラ遺伝子であり、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを、lac proはラクトースオペロンのプロモーター配列を意味する。また、Amprはアンピシリン耐性遺伝子、oriは複製開始点を表す。
【図8】プラスミドpBICEの制限酵素地図を示す。CTP-EPSPSはペチュニア由来のEPSPSの葉緑体トランジットペプチドをコードする塩基配列の下流にアグロバクテリウム由来のEPSPS遺伝子が結合されたキメラ遺伝子であり、NPはノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター配列を、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを意味する。また、NPTIIはカナマイシン耐性遺伝子、RB及びLBはT-DNAの左右境界配列を表す。
【図9】プラスミドpNOの制限酵素地図を示す。NPはノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター配列を、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを意味する。また、NPTIIはカナマイシン耐性遺伝子、RB及びLBはT-DNAの左右境界配列を表す。
【図10】プラスミドpBITCHLHの制限酵素地図を示す。TCHLHは葉緑体移行シグナルを欠失したタバコマグネシウムケラターゼのプロトポルフィリンIX結合サブユニット遺伝子であり、NPはノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター配列を、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを意味する。また、NPTIIはカナマイシン耐性遺伝子、RB及びLBはT-DNAの左右境界配列を表す。
【図11】プラスミドpBICETCHの制限酵素地図を示す。CTP-EPSPSはペチュニア由来のEPSPSの葉緑体トランジットペプチドをコードする塩基配列の下流にアグロバクテリウム由来のEPSPS遺伝子が結合されたキメラ遺伝子であり、TCHLHは葉緑体移行シグナルを欠失したタバコマグネシウムケラターゼのプロトポルフィリンIX結合サブユニット遺伝子である。NPはノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター配列を、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを意味する。また、NPTIIはカナマイシン耐性遺伝子、RB及びLBはT-DNAの左右境界配列を表す。
【図12】プラスミドpACYCSPの制限酵素地図を示す。PPOはダイズのプロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼ遺伝子であり、lac proラクトースオペロンのプロモーター配列を意味する。また、Cmrはクロランフェニコール耐性遺伝子、oriは複製開始点を表す。
【図13】プラスミドpTVGMPの制限酵素地図を示す。GMPは葉緑体移行シグナルとFAD結合配列を欠失したダイズPPO遺伝子であり、lac proはラクトースオペロンのプロモーター配列を意味する。また、Amprはアンピシリン耐性遺伝子、oriは複製開始点を表す。
【図14】プラスミドpBIGMPの制限酵素地図を示す。GMPは葉緑体移行シグナルとFAD結合配列とを欠失したダイズPPO遺伝子であり、NPはノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター配列を、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを意味する。また、NPTIIはカナマイシン耐性遺伝子、RB及びLBはT-DNAの左右境界配列を表す。
【図15】プラスミドpBICEGMPの制限酵素地図を示す。CTP-EPSPSはペチュニア由来のEPSPSの葉緑体トランジットペプチドをコードする塩基配列の下流にアグロバクテリウム由来のEPSPS遺伝子が結合されたキメラ遺伝子であり、GMPは葉緑体移行シグナルとFAD結合配列とを欠失したダイズPPO遺伝子である。NPはノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター配列を、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを意味する。また、NPTIIはカナマイシン耐性遺伝子、RB及びLBはT-DNAの左右境界配列を表す。
【図16】プラスミドpTVCRPの制限酵素地図を示す。CRPは葉緑体移行シグナルとFAD結合配列とを欠失したコナミドリムシPPO遺伝子であり、lac proはラクトースオペロンのプロモーター配列を意味する。また、Amprはアンピシリン耐性遺伝子、oriは複製開始点を表す。
【図17】プラスミドpBICRPの制限酵素地図を示す。CRPは葉緑体移行シグナルとFAD結合配列とを欠失したコナミドリムシPPO遺伝子であり、NPはノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター配列を、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを意味する。また、NPTIIはカナマイシン耐性遺伝子、RB及びLBはT-DNAの左右境界配列を表す。
【図18】プラスミドpBICECRPの制限酵素地図を示す。CTP-EPSPSはペチュニア由来のEPSPSの葉緑体トランジットペプチドをコードする塩基配列の下流にアグロバクテリウム由来のEPSPS遺伝子が結合されたキメラ遺伝子であり、CRPは葉緑体移行シグナルとFAD結合配列とを欠失したコナミドリムシPPO遺伝子である。NPはノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター配列を、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを意味する。また、NPTIIはカナマイシン耐性遺伝子、RB及びLBはT-DNAの左右境界配列を表す。
【図19】プラスミドpCRATFの制限酵素地図を示す。ATFは葉緑体局在型のシロイヌナズナフェロケラターゼ遺伝子であり、lac proはラクトースオペロンのプロモーター配列を意味する。また、Amprはアンピシリン耐性遺伝子、Kmrはカナマイシン耐性遺伝子、oriは複製開始点を表す。
【図20】プラスミドpBIATFの制限酵素地図を示す。ATFは葉緑体局在型のシロイヌナズナフェロケラターゼ遺伝子であり、NPはノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター配列を、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを意味する。また、NPTIIはカナマイシン耐性遺伝子、RB及びLBはT-DNAの左右境界配列を表す。
【図21】プラスミドpBICEATFの制限酵素地図を示す。CTP-EPSPSはペチュニア由来のEPSPSの葉緑体トランジットペプチドをコードする塩基配列の下流にアグロバクテリウム由来のEPSPS遺伝子が結合されたキメラ遺伝子であり、ATFは葉緑体局在型のシロイヌナズナフェロケラターゼ遺伝子である。NPはノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター配列を、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを意味する。また、NPTIIはカナマイシン耐性遺伝子、RB及びLBはT-DNAの左右境界配列を表す。
【図22】プラスミドpCRSCPOXの制限酵素地図を示す。SCPOXはダイズのコプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ遺伝子であり、lac proはラクトースオペロンのプロモーター配列を意味する。また、Amprはアンピシリン耐性遺伝子、Kmrはカナマイシン耐性遺伝子、oriは複製開始点を表す。
【図23】プラスミドpBISCPOXの制限酵素地図を示す。SCPOXはダイズのコプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ遺伝子であり、NPはノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター配列を、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを意味する。また、NPTIIはカナマイシン耐性遺伝子、RB及びLBはT-DNAの左右境界配列を表す。
【図24】プラスミドpBICESCPOXの制限酵素地図を示す。CTP-EPSPSはペチュニア由来のEPSPSの葉緑体トランジットペプチドをコードする部分塩基配列の下流にアグロバクテリウム由来のEPSPS遺伝子が結合されたキメラ遺伝子であり、SCPOXはダイズのコプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ遺伝子である。NPはノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター配列を、NTはノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター配列を、35Sはカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターを意味する。また、NPTIIはカナマイシン耐性遺伝子、RB及びLBはT-DNAの左右境界配列を表す。
Claims (8)
- 葉緑体移行シグナルと連結されてなる配列番号3で示される塩基配列でコードされるアミノ酸配列にて特定される5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素の酵素活性を有し、該酵素活性によって、植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を阻害する量の除草剤に対して耐性を示す植物であって、
かつ、葉緑体移行シグナルを欠失した植物由来のマグネシウムケラターゼのプロトポルフィリンIX結合サブユニットタンパク質をコードする遺伝子が導入されてなり該遺伝子を発現する植物。 - 遺伝子が、植物細胞で機能可能なプロモーターおよび植物細胞で機能可能なターミネーターと機能可能な形で結合されてなる遺伝子である請求項1記載の植物。
- 葉緑体移行シグナルを欠失したマグネシウムケラターゼのプロトポルフィリンIX結合サブユニットタンパク質が、タバコ由来である請求項1または2記載の植物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の植物を増殖させることを特徴とする除草剤耐性植物の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の植物の栽培域に除草剤を散布する雑草防除方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の植物の栽培域に除草剤を散布する除草剤耐性植物の選抜方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の植物の細胞の培養域に除草剤を添加する除草剤耐性植物細胞の選抜方法。
- 葉緑体移行シグナルと連結されてなる配列番号3で示される塩基配列でコードされるアミノ酸配列にて特定される5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素の酵素活性を有し、該酵素活性によって、植物の天然の5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素活性を阻害する量の除草剤に対して耐性を示す植物の細胞に、
葉緑体移行シグナルを欠失した植物由来のマグネシウムケラターゼのプロトポルフィリンIX結合サブユニットタンパク質をコードする遺伝子を導入し発現させる工程を含むことを特徴とする除草剤耐性植物の作製方法。
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