JP4793753B2 - 分子間相互作用の解析装置 - Google Patents

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本発明は電磁波照射により分子間相互作用を解析するための分子間相互作用の解析装置に関する。
近年、医薬、バイオの分野においてはヒトゲノムの全塩基配列が決定され、タンパクの構造や機能解明が注目されている。タンパクの機能解明においては、分子間の相互作用解明が極めて重要で、さらに、医薬品の効果のスクリーニングにおいて、その医薬品と生体関連分子との分子間相互作用をモニターすることがますます重要になってきている。特に、今後、画期的な医薬品を効率的に開発していくためには、医薬品と生体関連分子との分子間相互作用の理解が欠かせない。
従来の分子間相互作用を解析する方法としては、核磁気共鳴(NMR)や赤外分光法が知られている。NMRは、磁気共鳴のミリ秒から秒オーダーにわたる緩和時間の変化(運動性)によって、分子間相互作用に関する知見を得るものである。また、赤外分光法は、スペクトルのピーク位置の変化によって、分子間相互作用を観察するものである。しかし、これらの方法は、間接的に分子間相互作用を解析するものであり、さらに、分子間相互作用による緩和時間の変化やスペクトルのピーク位置の変化は極めて僅かであることから、これらの方法によってどの分子構造が相互作用に関わっているかを正確に判定するのは困難であった。
一方、表面プラズモンを利用して、分子間相互作用を解析する方法が知られている。これは高屈折率の媒体プリズム上に金属薄膜を付け、その上に相互作用する分子を固定させ、その分子と試料が相互作用するとプリズム側から通した反射光の入射角度分布が変化するという原理に基づくものである。また、蛍光標識した分子と試料とが相互作用を起こすとブラウン運動の相関時間に変化が起こることを利用した、蛍光相関法といわれる方法が知られている。しかし、これらの方法は、分子間相互作用を直接観測するものであるが、分子間相互作用の有無を評価することを目的とした方法であることから、これらの方法によって化学構造的にどの分子構造が相互作用に関わっているかを判定するのは困難であった。
したがって、上記の従来技術は、いずれも医薬品と生体関連分子との分子間相互作用を解析するための方法として適したものではなかった。
ところで、テラヘルツ波の振動エネルギー帯は、分子の回転などの穏やかな振動エネルギーや水素結合、あるいはファン・デア・ワールス力に対応することから、分子間振動が直接観測されるのではないかと期待されている。しかし、タンパクなどの高分子や水などの極性溶媒では大きなブロードの吸収が観測されるのみで、スペクトル上で特徴あるピークが観測されにくいことが判明している。この原因としては、多くの基準振動の重ね合わせ、もしくは強い水素結合のためではないかと考えられている。
ところが、最近、医薬品などに水などの溶媒が導入されることでテラヘルツ波の周波数領域に特色あるシグナルが大きく生成、消滅することが見出され、分子の溶媒などとの相互作用の初期段階に関する知見が得られるようになってきた(非特許文献1)。すなわち、比較的分子量の小さい医薬品をプローブに各種溶媒や溶液をスポッティングした後のテラヘルツ波のシグナル応答の経時変化を見ることで、分子間相互作用に関する知見が直接得られることがわかってきた。さらに、このテラヘルツ波を利用する方法では、シグナル応答がスペクトルという形で表現されることから、スペクトルを解析することで分子間相互作用がどの構造で発現しているかを考察できる可能性がある。
N. Nagai, R. Kumazawa, R. Fukasawa, Chem. Phys. Lett, 413 (2005) 495-500. "Direct evidence of inter-molecular vibrations by THzspectroscopy".
しかしながら、医薬品開発においては網羅的な分析、解析が欠かせない背景の中で、このテラヘルツ波を用いた手法では、試料に各種溶媒や溶液を導入してからの経時変化を適当な時間をおいてからマニュアルで測定しなければならず、さらに、異なる溶媒や溶液に対する分子間相互作用の効果を見るためには試料をセッティングし直さなければならなく、効率が悪く時間がかかるものであった。
本発明は、テラヘルツ波を用いて多種類の溶媒や溶液に対する試料の分子間相互作用に関する知見を効率よく得ることのできる、新たな分子間相互作用の解析装置を提供することを目的とする。
本発明の請求項1記載の分子間相互作用の解析装置は、試料が収容される複数のセルと、このセルに液体を導入する導入手段と、前記複数のセルに収容された試料にテラヘルツ波を照射する照射手段と、前記試料からの応答を検出する検出手段とを備え、前記複数のセルは基板に形成され、前記導入手段は前記基板に形成された液路であり、前記複数のセルは直線上に配列され、前記液路は前記複数のセルを貫通して形成され、前記液路に液体を供給する供給手段を備え、前記基板を移動させる移動手段を備えるとともに、前記セルの列が垂直になるように固定されて前記液路の上部に導入された液体が重力によって下方へ移動していき上方の前記セル内の試料から順に試料と液体の相互作用が進行していくように構成されたことを特徴とする
本発明の請求項記載の分子間相互作用の解析装置は、試料が収容される複数のセルと、このセルに液体を導入する導入手段と、前記複数のセルに収容された試料にテラヘルツ波を照射する照射手段と、前記試料からの応答を検出する検出手段とを備え、前記複数のセルは基板に形成され、前記導入手段は前記基板に形成された液路であり、前記複数のセルは行列上に配列され、前記液路は前記複数のセルの各列のセルを貫通して形成され、前記液路に液体を供給する供給手段を備え、前記基板を移動させる移動手段を備えるとともに、前記セルの列が垂直になるように固定されて前記液路の上部に導入された液体が重力によって下方へ移動していき上方の前記セル内の試料から順に試料と液体の相互作用が進行していくように構成されたことを特徴とする
本発明の請求項1記載の分子間相互作用の解析装置によれば、複数のセルに試料を収容し、この複数のセルにそれぞれ異なる種類の溶媒や溶液などの液体を導入し、テラヘルツ波を照射したときの応答を検出することによって、多種類の溶媒や溶液に対する試料の分子間相互作用に関する知見を効率よく得ることができる。また、この複数のセルにそれぞれ異なる種類の試料を収容することによって、液体に対する多種類の試料の分子間相互作用に関する知見を効率よく得ることができる。さらに、この複数のセルに適当な時間をおいて同じ種類の液体を導入することによって、試料に液体を導入してからの分子間相互作用の経時変化に関する知見を効率よく得ることができる。また、複数のセルは基板に形成されており、解析装置内へのセルのセッティングを容易に行うことができる。また、導入手段は、基板に形成された液路であり、解析装置内にセルがセッティングされた状態においても、液路を通じて簡便に液体を導入することができる。また、複数のセルは直線上に配列され、液路は複数のセルを貫通して形成されており、液路から導入された液体が時間をおいて次々に各セルに収容された試料に浸透することにより、試料に液体を導入してからの分子間相互作用の経時変化に関する知見を効率よく得ることができる。また、液路に液体を供給する供給手段を備えており、液体を液路に供給するタイミングや供給する液体の量などを容易に調整することができる。また、基板を移動させる移動手段を備えており、各セルをテラヘルツ波の照射及び応答の検出に適切な位置へ容易に移動させることができる。
本発明の請求項記載の分子間相互作用の解析装置によれば、複数のセルは行列上に配列され、液路は複数のセルの各列のセルを貫通して形成されており、液路から導入された液体が時間をおいて次々に各セルに収容された試料に浸透することにより、試料に液体を導入してからの分子間相互作用の経時変化に関する知見を効率よく得ることができる。また、各列のセルにそれぞれ異なる種類の溶媒や溶液などの液体を導入することによって、多種類の溶媒や溶液に対する試料の分子間相互作用に関する知見を効率よく得ることができる。さらに、各列のセルにそれぞれ異なる種類の試料を収容することによって、液体に対する多種類の試料の分子間相互作用に関する知見を効率よく得ることができる。
以下、本発明の分子間相互作用の解析装置の一実施例について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
図1において、1は基板であり、テラヘルツ波の周波数帯において透明な材料である石英から形成されている。基板1には、試料が収容される複数のセル2が形成されている。
なお、テラヘルツ波は、電波と光の中間領域にある電磁波であり、テラヘルツ波のエネルギーは、分子回転のエネルギーと分子の基準振動のエネルギーの中間に位置し、分子間相互作用のエネルギーや高分子の大振幅振動のエネルギー等に対応する。本発明の分子間相互作用の解析装置に用いられるテラヘルツ波とは、波数が100cm−1〜3cm−1の範囲の電磁波のことをいう。
複数のセル2は、本実施例においては、図1に示すように、10行9列の行列上に配列されている。すなわち、直線上に配列された10個のセル2からなる列が、9列配列されている。そして、基板1には、これらのセル2へ液体を導入する導入手段としての液路3が、各列のセル2を貫通して形成されている。なお、本実施例では、基板1を加工して溝を作成することで液路3が形成されている。
また、本実施例の分子間相互作用の解析装置は、図示しないが、テラヘルツ波を照射する照射手段と、応答を検出する検出手段とを備えている。なお、本実施例で用いられる照射手段と検出手段の構成は、公知のテラヘルツ波領域の分光装置に用いられている照射手段と検出手段の構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
また、本実施例の分子間相互作用の解析装置は、液路3に液体を供給する供給手段としてのスポッティング装置(図示せず)と、基板1を移動させる移動手段としての駆動装置(図示せず)を備えている。駆動装置は電気的に制御され、基板1に行列上に配列された複数のセル2のうち、テラヘルツ波の応答を観測したい試料が収容されたセル2を、照射手段からテラヘルツ波が照射される位置へ自動的に移動させることができるように構成されている。スポッティング装置と駆動装置の動作は一つの制御系によって連動して制御可能に構成されている。
なお、本実施例において、供給手段にスポッティング装置を用いているが、液体の供給は必ずしもスポッティングに限る必要はなく、ペリスタルティックポンプなどを用いて液体を供給してもよい。
つぎに、本実施例の分子間相互作用の解析装置を用いた分子間相互作用の解析方法について説明する。
まず、試料を各セル2内に収容する。ここで、同じ列の各セル2には、同じ試料を収容する。試料としては、医薬品などの薬剤、アミノ酸、ペプチド、タンパク、酵素、糖、脂質、塩基、DNAや生体抽出物などを対象とすることができる。
試料が収容されたセル2の列が垂直になるように、駆動装置に基板1を固定し、液路3の上部よりスポッティング装置により液体を導入する。導入する液体は、試料との間に分子間相互作用を誘起するものであり、この液体としては、溶媒のほか、医薬品などの薬剤、アミノ酸、ペプチド、タンパク、酵素、糖、脂質、塩基、DNAや生体抽出物などの溶液を用いることができる。液体を液路3の上部に導入すると、液体が重力によって下方へ移動していき、上方のセル2内の試料から順に試料と液体の相互作用が進行していく。
そして、駆動装置により基板1を移動させ、照射手段からテラヘルツ波が照射される位置へ順次セル2を移動させることによってテラヘルツ波を複数のセル2上に短時間で走査させ、検出手段により各セル2の試料からのテラヘルツ波の応答、すなわちテラヘルツ波スペクトルを検出する。このように、液体の重力による移動を利用して各セル2の試料が液体と相互作用を開始する時間に差を生じさせ、テラヘルツ波を各セル2上に走査することによって、テラヘルツ波の経時変化スペクトルが短時間で得られる。そして、この経時変化スペクトルを比較解析することによって、分子間相互作用に関する知見を得ることができる。
さらに、セル2の各列に同じ試料を収容して、セル2の列ごとに異なる液体を導入することで、異なる液体との分子間相互作用に関する情報が得られる。または、セル2の列ごとに異なる試料を収容して、各列に同じ液体を導入してもよい。さらに、セル2の列ごとに異なる試料を収容して、セル2の列ごとに異なる液体を導入してもよい。このように、試料と液体の組み合わせを設定することによって、一度の測定で、異なる各種の試料と液体の分子間相互作用に関する豊富な知見を容易に得ることができる。
なお、本実施例においては、テラヘルツ波を試料に照射して、その応答として得られるテラヘツル波スペクトルを観測するが、必要に応じてテラヘルツ波の領域外の電磁波を照射して観測してもよく、また、目的とする分子間相互作用がわかるのであれば、テラヘルツ波の領域のなかの一部の領域のテラヘルツ波のみを用いて観測してもよい。
また、本実施例ではスポッティング装置と駆動装置は連動して制御可能に構成されており、液体を導入するタイミングとテラヘルツ波スペクトルを取得するタイミングを制御することによって、より細かい測定条件を設定することができる。なお、スポッティング装置による液体の供給速度は規定するほうが望ましく、セル2の数、容積、液路3の大きさなどにも依存するが、例えば100ml/min〜0.01ml/min、あるいは10ml/min〜0.1ml/minとする。また、液体の供給は、測定終了までに継続的に行ってもよく、一定量の供給のみで終了してもよい。また、テラヘルツ波スペクトルの取得は液体の供給時に行ってもよく、液体の供給の終了後、時間が経過してから行ってもよい。
以上のように、本発明の分子間相互作用の解析装置によれば、試料が収容される複数のセル2と、このセル2に液体を導入する導入手段としての液路3と、前記複数のセル2に収容された試料にテラヘルツ波を照射する照射手段と、前記試料からの応答を検出する検出手段とを備えたものである。複数のセル2に試料を収容し、この複数のセル2にそれぞれ異なる種類の溶媒や溶液などの液体を導入し、テラヘルツ波を照射したときの応答を検出することによって、多種類の溶媒や溶液に対する試料の分子間相互作用に関する知見を効率よく得ることができる。また、この複数のセル2にそれぞれ異なる種類の試料を収容することによって、液体に対する多種類の試料の分子間相互作用に関する知見を効率よく得ることができる。さらに、この複数のセル2に適当な時間をおいて同じ種類の液体を導入することによって、試料に液体を導入してからの分子間相互作用の経時変化に関する知見を効率よく得ることができる。
また、前記複数のセル2は基板1に形成されたものであり、解析装置内へのセル2のセッティングを容易に行うことができる。
また、前記導入手段は、前記基板1に形成された液路3であり、解析装置内にセル2がセッティングされた状態においても、液路3を通じて簡便に液体を導入することができる。
また、前記複数のセル2は直線上に配列され、前記液路3は前記複数のセル2を貫通して形成されており、液路3から導入された液体が時間をおいて次々に各セル2に収容された試料に浸透することにより、試料に液体を導入してからの分子間相互作用の経時変化に関する知見を効率よく得ることができる。
また、前記複数のセル2は行列上に配列され、前記液路3は前記複数のセル2の各列のセル2を貫通して形成されており、液路3から導入された液体が時間をおいて次々に各セル2に収容された試料に浸透することにより、試料に液体を導入してからの分子間相互作用の経時変化に関する知見を効率よく得ることができる。また、各列のセル2にそれぞれ異なる種類の溶媒や溶液などの液体を導入することによって、多種類の溶媒や溶液に対する試料の分子間相互作用に関する知見を効率よく得ることができる。さらに、各列のセル2にそれぞれ異なる種類の試料を収容することによって、液体に対する多種類の試料の分子間相互作用に関する知見を効率よく得ることができる。
また、前記液路3に液体を供給する供給手段としてのスポッティング装置を備えており、液体を液路3に供給するタイミングや供給する液体の量などを容易に調整することができる。
さらに、前記基板1を移動させる移動手段としての駆動装置を備えており、各セル2をテラヘルツ波の照射及び応答の検出に適切な位置へ容易に移動させることができる。
以上、本発明の分子間相互作用の解析装置の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の思想の範囲内で変形実施可能である。例えば、本実施例において、セルは行列上に配列したものを例にとって説明したが、1列のみの直線上に配列したものであってもよい。また、本実施例においては、駆動装置によって基板を移動させることによってテラヘルツ波を走査する構成になっているが、駆動装置を用いる代わりに、テラヘルツ波のビームの方向を変化させて走査するように構成してもよい。
以下、上記実施形態の分子間相互作用の解析装置を用いて行った測定結果について説明する。
生化学上重要ないくつかの化学物質をセル内に固定し、液路の上部より溶媒を導入し、各セルのテラヘルツ波スペクトルを観測した。図2〜図6に、観測したテラヘルツ波スペクトルを示す。
図2〜図6におけるセルの番号は、溶媒との接触が開始する順番を表している。すなわち、小さい数字ほど溶媒との相互作用の時間が長くなっている。本実施例においては、図1に示すような1列に10個のセルが配列した基板を用いており、縦方向に上から順にセル1、セル2、・・・、セル10としている。
図2は、リンゴ酸をセルに固定し、5mlの水を液路の上部に導入してから1時間後に測定した各セルのテラヘルツ波スペクトルである。水と接触してからの時間が短い場合は、セル10のスペクトルに表れているように、水による右上がりのバックグラウンドが大きく現れている。また、分子内水素結合によるシグナルと考えられる0.5THz及び1.25THz付近のシグナルが、時間の経過とともに次第に小さくなり、セル4で最も小さくなっている。これは、リンゴ酸の分子内水素結合と水との相互作用が進んでいることを示していると考えられる。一方、さらに時間が経過すると、セル1のスペクトルに現れているように、水との水素結合が弱まり、再び0.5THz及び1.25THz付近のシグナルの強度が増加していく現象が観察された。
図3は、アミノ酸であるシスチン(システインの2量体)に対して同様に測定を行った結果を示したものである。この場合には、水との相互作用は大きくなく、セル1及びセル8でシグナルに大きな差は見られなかった。
図4は、アミノ酸であるアルギニンに対して同様に測定を行った結果を示したものである。なお、水を液路の上部に導入してから2時間経過した後に測定した。水と接触した時間が短いセル10では、水による右上がりのバックグラウンドが見られるが、セル7のあたりから傾きが変化している。また、水との接触時間が長くなるとともに、1.1THz及び1.25THzに新たなピークが認められ、相互作用が始まってから2時間後のセル1においても、両ピークは依然として明瞭に観察されている。これは、アルギニンと水との間に強い水素結合が発生し、その水素結合が容易には消失しないことを示している。
図5は、2糖類であるスクロースに対する結果である。なお、水を15ml導入し、測定は導入の10分後に行った。水が導入された後の各セルのスペクトルにはほとんど差が見られないが、導入される前のスペクトルに比べてスペクトル幅が細くなっている。これは、1.5THz付近のショルダーにあるシグナルが消失しているためと考えられる。この結果より、糖も水と強く相互作用し、本来存在する糖の分子間相互作用に水の水素結合が影響を及ぼしていることが確認された。
以上の現象は、本来テラヘルツ波の領域に存在している分子内振動、分子内相互作用、分子間相互作用の振動モードの変化を観察しているものである。これらの結果を詳しく解析することによって、分子のどの構造が相互作用に関与しているかという情報を得ることができる。
図6は、アミノ酸であるグルタミンをセルに固定し、5mlのエタノールを導入してから20分後に測定した結果である。エタノールによる右上がりのバックグラウンドが発生するものの、アセトンを導入した場合に発生する1.2THzのピーク変化及び0.6THzの新たなピーク(図示せず)は認められず、グルタミンにおいては、アセトン分子とは特異的に相互作用するが、エタノール分子とは相互作用しない分子構造上のサイトの存在が示唆された。
本発明の分子間相互作用の解析装置の一実施例を示す基板の模式図である。 リンゴ酸に水を導入したときの分子間相互作用の経時変化を示すテラヘルツ波スペクトルである。 シスチンに水を導入したときの分子間相互作用の経時変化を示すテラヘルツ波スペクトルである。 アルギニンに水を導入したときの分子間相互作用の経時変化を示すテラヘルツ波スペクトルである。 スクロースに水を導入したときの分子間相互作用の経時変化を示すテラヘルツ波スペクトルである。 グルタミンにエタノールを導入したときの分子間相互作用の経時変化を示すテラヘルツ波スペクトルである。
1 基板
2 セル
3 液路(導入手段)

Claims (2)

  1. 試料が収容される複数のセルと、このセルに液体を導入する導入手段と、前記複数のセルに収容された試料にテラヘルツ波を照射する照射手段と、前記試料からの応答を検出する検出手段とを備え、前記複数のセルは基板に形成され、前記導入手段は前記基板に形成された液路であり、前記複数のセルは直線上に配列され、前記液路は前記複数のセルを貫通して形成され、前記液路に液体を供給する供給手段を備え、前記基板を移動させる移動手段を備えるとともに、前記セルの列が垂直になるように固定されて前記液路の上部に導入された液体が重力によって下方へ移動していき上方の前記セル内の試料から順に試料と液体の相互作用が進行していくように構成されたことを特徴とする分子間相互作用の解析装置。
  2. 試料が収容される複数のセルと、このセルに液体を導入する導入手段と、前記複数のセルに収容された試料にテラヘルツ波を照射する照射手段と、前記試料からの応答を検出する検出手段とを備え、前記複数のセルは基板に形成され、前記導入手段は前記基板に形成された液路であり、前記複数のセルは行列上に配列され、前記液路は前記複数のセルの各列のセルを貫通して形成され、前記液路に液体を供給する供給手段を備え、前記基板を移動させる移動手段を備えるとともに、前記セルの列が垂直になるように固定されて前記液路の上部に導入された液体が重力によって下方へ移動していき上方の前記セル内の試料から順に試料と液体の相互作用が進行していくように構成されたことを特徴とする分子間相互作用の解析装置。
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