JP4792735B2 - フッ素化剤および含フッ素化合物の製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、フッ素化剤および含フッ素化合物の製造法に関する。
含フッ素化合物は、医農薬化合物および電子材料をはじめとする各種化学製品およびその合成中間体等として極めて重要な化合物である。
フッ化物イオンによる求核置換反応を利用して、有機化合物にフッ素原子を導入する反応およびそのためのフッ素化剤が、種々開発されている。かかるフッ素化剤のうち、フッ化カリウムを用いる方法としては、例えば非プロトン性極性溶媒中でクロロ置換ニトロベンゼン上の塩素原子をフッ素原子に置換する方法(例えば、非特許文献1参照。)、スプレイドライ法により高活性化したフッ化カリウムを用いて種々の有機塩素化物または臭素化物上の塩素原子または臭素原子をフッ素原子に置換する方法(例えば、非特許文献2参照。)、ポリエチレングリコール400を溶媒としてスルホン酸エステル化合物のスルホニルオキシ基をフッ素原子に置換する方法(例えば、非特許文献3参照。)、イミダゾリウム塩などのイオン性溶媒の存在下で種々のフッ素化を行う方法(例えば、特許文献1および2参照。)等が知られている。しかしながら、これらはいずれも、目的とする含フッ素化合物の収率や選択率が低く、また、高温もしくは長時間という条件を要したり、スプレイドライ用の特殊な装置を必要とするなど、工業的な製法としては十分なものとはいえなかった。
一方、四級塩型カチオンを持つフッ素化剤を用いる方法として、例えば四級アンモニウムフルオライドを用いる方法(例えば、非特許文献4参照。)および四級アンモニウムフルオライドとフッ化セシウムとを併用する方法(例えば、非特許文献5参照。)などが知られているが、いずれも目的とする含フッ素化合物の収率および選択性が低く、工業的に十分な方法とはいえなかった。また、フッ素化活性が比較的高い四級塩型カチオンを持つフッ素化剤を用いる方法として、例えば、四級アンモニウムビフルオライドを用いる方法(例えば、非特許文献6参照。)および四級ホスホニウムビフルオライド類を用いる方法(例えば、特許文献3および4参照。)などが知られているが、これらはいずれも分子中に腐食性および毒性の高いフッ化水素を包含しており、その製造においてもフッ化水素酸を用いていることから、工業的に満足できる方法ではなかった。
国際公開特許WO02/092608号公報 国際公開特許WO03/076366号公報 特開昭61−161224号公報 特開平4−124146号公報 J.Amer.Chem.Soc.,78,6034(1956) Chemistry Lett.,761(1981) Synthsis,920(1987) J.Org.Chem.,49,3216(1984) Synthetic Commun.,18,1661(1988) Tetrahedron Lett.,28,4733(1987)
そこで本発明者は、腐食性や毒性の高い化合物を用いることなしに、また工業的にも有利な含フッ素化合物の製造方法を開発すべく、鋭意検討したところ、フッ素化剤としてフッ化物イオンと他のアニオンとの混合アルキル置換イミダゾリウム塩を用いれば、求核置換フッ素化反応が効率よく進行することを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、式(1)
Figure 0004792735
(式中、RおよびRは、それぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基を表し、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す。Yはフッ化物イオンを除く1価のアニオンを表す。また、0<x≦1である。)
で示されるフッ素化剤、その使用、並びにそれを用いた含フッ素化合物の製造法を提供するものである。
本発明によれば、腐食性や毒性の高い化合物を用いることなく、脂肪族および芳香族の含フッ素化合物を効率よく安価に製造することができるため、工業的に有利である。さらに、本発明のフッ素化剤は、それ自体がイオン性液体の性質も有しているため回収・再利用が容易であり、また、式(1)においてxを適宜選択することにより融点を室温以下にすることもできるため幅広い温度条件で反応を実施可能である等、工業的な取り扱いや環境の面においても有利である。
まず、式(1)で示されるフッ化物イオンを含有する混合アルキル置換イミダゾリウム塩(以下、フッ素化剤(1)と略記する。)について説明する。
式中、RおよびRは、それぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基を表し、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す。
ここでアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。かかるアルキル基は、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基等の炭素数1〜20の置換されていてもよいアルコキシ基;例えばフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基などの炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基;例えばフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基等の炭素数6〜20の置換されていてもよいアリールオキシ基;例えばベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基、3−フェノキシベンジルオキシ基等の炭素数7〜20の置換されていてもよいアラルキルオキシ基;例えばフッ素原子;例えばアセチル基、エチルカルボニル基等の炭素数2〜20の置換されていてもよいアルキルカルボニル基;例えばベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等の炭素数7〜20の置換されていてもよいアリールカルボニル基;例えばベンジルカルボニル基、4−メチルベンジルカルボニル基、4−メトキシベンジルカルボニル基等の炭素数8〜20の置換されていてもよいアラルキルカルボニル基;例えばカルボキシ基;などで置換されていてもよく、かかる置換基で置換されたアルキル基としては、例えばフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、ベンジル基、4−フルオロベンジル基、4−メチルベンジル基、フェノキシメチル基、2−オキソプロピル基、2−オキソブチル基、フェナシル基、2−カルボキシエチル基等が挙げられる。
はフッ化物イオンを除く1価のアニオンを表す。フッ化物イオンを除く1価のアニオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のフッ化物イオンを除くハロゲン化物イオン類;例えばテトラフルオロホウ酸アニオン等のホウ酸イオン類;例えばヘキサフルオロリン酸アニオン等のリン酸イオン類;例えばヘキサフルオロアンチモン酸アニオン等のアンチモン酸イオン類;例えばトリフルオロメタンスルホン酸アニオン等のスルホン酸イオン類;例えば炭酸アニオン、メチル炭酸アニオンなどの炭酸イオン類;例えば酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン等のカルボン酸イオン類;例えばビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン等のアミドイオン類;硝酸イオン;などが挙げられる。
xは、0<x≦1の範囲で任意に選択できる。xが0に近くなればフッ素化効率が低下し、xが1に近づけば融点が高くなる傾向があるため、より低温側で効率よくフッ素化を行う目的において、0.4<x<0.9程度の範囲が好ましい。
かかるフッ素化剤(1)としては、x=1の場合、例えば1,3−ジメチルイミダゾリウムフルオライド、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムフルオライド、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムフルオライド、1,2,3,4,5−ペンタメチルイミダゾリウムフルオライド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムフルオライド、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムフルオライド、1,3−ジエチルイミダゾリウムフルオライド、1−メチル−3−(n−プロピル)イミダゾリウムフルオライド、1−メチル−3−(n−ブチル)イミダゾリウムフルオライド、1,2−ジメチル−3−(n−ブチル)イミダゾリウムフルオライド、1−メチル−3−(n−ペンチル)イミダゾリウムフルオライド、1−メチル−3−(n−ヘキシル)イミダゾリウムフルオライド、1−メチル−3−(n−オクチル)イミダゾリウムフルオライド、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウムフルオライド、1,3−ジメチル−2−(n−プロピル)イミダゾリウムフルオライド、1,3−ジメチル−2−(n−ブチル)イミダゾリウムフルオライド、1−ドデシル−2−メチル−3−ドデシルイミダゾリウムフルオライド、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムフルオライド、1−エトシキシメチル−3−メチルイミダゾリウムフルオライド、1−メチル−3−(メトキシエトキシメチル)イミダゾリウムフルオライド、1−トリフルオロメチル−3−メチルイミダゾリウムフルオライド等のアルキル置換イミダゾリウムフルオライドが挙げられる。
また、0<x<1の場合、例えばフッ化物イオンと塩化物イオンとの混合アニオンと、例えば1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3,4,5−ペンタメチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(n−プロピル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(n−ブチル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(n−ブチル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(n−ペンチル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(n−ヘキシル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(n−オクチル)イミダゾリウムフルオライド、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−2−(n−プロピル)イミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−2−(n−ブチル)イミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−2−メチル−3−ドデシルイミダゾリウムカチオン、1−エトシキシメチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(メトキシエトキシメチル)イミダゾリウムフルオライド、1−トリフルオロメチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−(n−ドデシル)−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムカチオン等のアルキル置換イミダゾリウムカチオンとからなる、フッ化物イオンを含有する混合アルキル置換イミダゾリウム塩、および上記フッ化物イオンを含有する混合アルキル置換イミダゾリウム塩の塩化物イオンが、それぞれ臭化物イオン、ヨウ化物イオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、炭酸アニオン、酢酸アニオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン、硝酸アニオン等で置き換えられた混合アルキル置換イミダゾリウム塩などが挙げられる。
これらは、例えば水や極性溶媒等の求核置換フッ素化反応に不活性な化合物と錯体を形成していてもよい。
かかるフッ素化剤(1)は、例えばフッ化銀やフッ化カリウム等のフッ化物と式(1)において0≦x<1であるアルキル置換イミダゾリウム塩との塩交換反応などの方法を用いて製造することができる。また、例えば、式(1)において0≦x<1であるアルキル置換イミダゾリウム塩とx=1であるアルキル置換イミダゾリウムフルオライドとを混合することにより、xが任意の値になるように調製してもよい。
次に、フッ素化剤(1)を用いた、求核置換フッ素化反応を受ける置換基を1または2以上有する有機化合物のフッ素化反応について説明する。
求核置換フッ素化反応を受ける置換基を1または2以上有する有機化合物としては、例えば、
置換されていてもよい飽和炭化水素上の1または2以上の水素原子が求核置換フッ素化反応を受ける置換基で置換された有機化合物;
置換されていてもよい芳香族化合物上の1または2以上の水素原子が求核置換フッ素化反応を受ける置換基で置換された有機化合物;
などが挙げられ、本フッ素化反応により、それぞれ対応する、
置換されていてもよい飽和炭化水素上の1または2以上の水素原子がフッ素原子で置換された有機化合物;
置換されていてもよい芳香族化合物上の1または2以上の水素原子がフッ素原子で置換された有機化合物;
に変換される。
飽和炭化水素としては、例えばメタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−デカン、シクロプロパン、2,2−ジメチルシクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルカンが挙げられる。かかる飽和炭化水素は、例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−フェノキシフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルフェニル基、2−ピリジル基等の炭素数5〜20の置換されていてもよいアリール基;例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基等の炭素数1〜20の置換されていてもよいアルコキシ基;例えばフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基等の炭素数6〜20の置換されていてもよいアリールオキシ基;例えばベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基、3−フェノキシベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジルオキシ基等の炭素数7〜20の置換されていてもよいアラルキルオキシ基;例えばフッ素原子;例えばアセチル基、エチルカルボニル基等の炭素数2〜20の置換されていてもよいアルキルカルボニル基;例えばベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等の炭素数7〜20の置換されていてもよいアリールカルボニル基;例えばベンジルカルボニル基、4−メチルベンジルカルボニル基、4−メトキシベンジルカルボニル基等の炭素数8〜20の置換されていてもよいアラルキルカルボニル基;例えばカルボキシ基;などで置換されていてもよい。かかる置換基で置換された飽和炭化水素としては、例えばフルオロメタン、トリフルオロメタン、メトキシメタン、エトキシメタン、メトキシエタン、トルエン、4−メトキシトルエン、3−フェノキシトルエン、2,3,5,6−テトラフルオロトルエン、2,3,5,6−テトラフルオロ−パラキシレン、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシトルエン、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルトルエン、2−プロピルナフタレン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、フェニルアセトン等が挙げられる。
芳香族化合物としては、例えばベンゼン、ナフタレン等の炭化水素系芳香族化合物、例えばピリジン、キノリン等の複素芳香族化合物が挙げられる。かかる芳香族化合物は、例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−フェノキシフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルフェニル基、2−ピリジル基等の炭素数5〜20の置換されていてもよいアリール基;例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基等の炭素数1〜20の置換されていてもよいアルコキシ基;例えばフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基等の炭素数6〜20の置換されていてもよいアリールオキシ基;例えばベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基、3−フェノキシベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジルオキシ基等の炭素数7〜20の置換されていてもよいアラルキルオキシ基;例えばアセチル基、エチルカルボニル基等の炭素数2〜20の置換されていてもよいアルキルカルボニル基;例えばベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等の炭素数7〜20の置換されていてもよいアリールカルボニル基;例えばベンジルカルボニル基、4−メチルベンジルカルボニル基、4−メトキシベンジルカルボニル基等の炭素数8〜20の置換されていてもよいアラルキルカルボニル基;例えばカルボキシ基;スルホンアミド基;シアノ基;アミド基;フッ素原子等で置換されていてもよい。また、これら置換基のうち、隣接する置換基同士が結合して、その結合炭素原子とともに環を形成してもよい。これらの芳香族化合物に有していてもよい置換基のうち、反応性の点において電子吸引性の置換基が好ましく、かかる電子吸引性の置換基としては、例えばフッ素原子、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアラルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、カルボキシル基、スルホンアミド基、シアノ基等が挙げられる。かかる置換基で置換された芳香族化合物としては、例えばシアノベンゼン、テレフタロニトリル、イソフタロニトリル、オルソフタロニトリル、フルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、ベンゼンスルホンアミド、ビフェニル、2−フェニルナフタレン、ジフェニルエーテル、3−メチルピリジン、4−フェニルピリジン、ベンゾフェノン、1,2−ジフェニルエタノン等が挙げられる。
かかる飽和炭化水素上または芳香族化合物上の水素原子と置換される、求核置換フッ素化反応を受ける置換基としては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、スルホ基、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基、置換されていてもよいアルキルカルボニルオキシ基または置換されていてもよいアリールカルボニルオキシ基等が挙げられる。かかる置換基を2以上有する場合には、それらは互いに同一であってもよいし、相異なってもよい。
置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ基としては、例えばメタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などが挙げられ、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基としては、例えばパラトルエンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、1−ナフタレンスルホニルオキシ基などが挙げられ、置換されていてもよいアルキルカルボオキシ基としては、例えばトリフルオロアセトキシ基、ペンタフルオロエチルカルボニルオキシ基などが挙げられ、置換されていてもよいアリールカルボニルオキシ基としては、例えばテトラフルオロベンゾイルオキシ基、ベンソイルオキシ基などが挙げられる。
かかる求核置換フッ素化反応を受ける置換基を1または2以上有する有機化合物としては、例えば1−クロロブタン、1−ブロモブタン、1−ヨードブタン、1−クロロシクロブタン、1−クロロペンタン、1−ブロモペンタン、1−クロロシクロペンタン、1−クロロ−4−ブロモブタン、1−クロロヘキサン、1−ブロモヘキサン、1,6−ジブロモヘキサン、1−クロロヘプタン、1−ブロモヘプタン、2−クロロへプタン、2−ブロモヘプタン、1−クロロオクタン、1−ブロモオクタン、2−クロロオクタン、2−ブロモオクタン、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、(1−クロロエチル)ベンゼン、(1−ブロモエチル)ベンゼン、4−メトキシベンジルクロライド、4−メチルベンジルブロマイド、3,4,5−トリフルオロベンジルブロマイド、パラトルエンスルホン酸n−ブチル、メタンスルホン酸n−ブチル、パラトルエンスルホン酸n−ペンチル、メタンスルホン酸n−ペンチル、パラトルエンスルホン酸n−ヘキシル、メタンスルホン酸n−ヘキシル、パラトルエンスルホン酸n−ヘプチル、メタンスルホン酸n−ヘプチル、パラトルエンスルホン酸n−オクチル、メタンスルホン酸n−オクチル、トリフルオロ酢酸n−ブチル、テトラフルオロ安息香酸n−ブチル、トリフルオロ酢酸n−オクチル、4−クロロニトロベンゼン、4−ブロモニトロベンゼン、2−クロロニトロベンゼン、2−ブロモニトロベンゼン、4−シアノクロロベンゼン、4−シアノブロモベンゼン、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン、テトラクロロテレフタロニトリル、テトラクロロイソフタロニトリル、テトラクロロオルソフタロニトリル、1,3−ジクロロ−4,6−ジニトロベンゼン、2−クロロキノリン、2−クロロ−5−ニトロピリジン、2−クロロ−5−トリフルオロメチルピリジン等が挙げられる。
本発明では、かかる求核置換フッ素化反応を受ける置換基を1または2以上有する有機化合物にフッ素化剤(1)を作用させることにより、含フッ素化合物が得られる。ここで、求核置換フッ素化反応を受ける置換基を2以上有する有機化合物を用いる場合には、それらは相異なる置換基であってもよく、通常は以下のような反応性を示し、最も反応性が高い置換基のみがフッ素原子に置換されることもあるし、反応条件によっては同一または相異なる2以上の置換基がフッ素原子に置換されることもある。
置換されていてもよい芳香族化合物上の1または2以上の水素原子が求核置換フッ素化反応を受ける置換基で置換された有機化合物の反応において、置換されていてもよい芳香族化合物が炭化水素系芳香族化合物の場合は、通常、パラ位やオルト位に電子吸引性の置換基を持つ求核置換フッ素化反応を受ける置換基が優先的にフッ素原子に置換される。例えば、4−クロロニトロベンゼンの反応において、塩素原子とニトロ基はともに求核置換フッ素化反応を受ける置換基であるが、より電子吸引性の高いニトロ基をパラ位に持つ塩素原子が優先的にフッ素原子に置換され、通常は4−フルオロニトロベンゼンが選択的に生成する。もちろん、例えばフッ素化剤(1)を大過剰量用いる等、反応条件を適宜選択すればニトロ基もフッ素原子に置換され、パラジフルオロベンゼンを得ることもできる。
また、置換されていてもよい芳香族化合物上の1または2以上の水素原子が求核置換フッ素化反応を受ける置換基で置換された有機化合物の反応において、置換されていてもよい芳香族化合物が複素芳香族化合物である場合は、通常、複素芳香環を構成するヘテロ原子に対して、2位、4位または6位の求核フッ素化反応を受ける置換基が優先的にフッ素原子に置換される。例えば、2−クロロ−3−ニトロピリジンでは、通常、2位のクロル基が置換され2−フルオロ−3−ニトロピリジンが生成する。もちろん、例えばフッ素化剤(1)を大過剰量用いる等、反応条件を適宜選択すればニトロ基もフッ素原子に置換され、2,3−ジフルオロピリジンを得ることもできる。
フッ素化剤(1)の使用量は通常、求核置換フッ素化反応を受ける置換基を1または2以上有する有機化合物上の、フッ素化反応を所望する置換基に対し、フッ化物イオン基準で1モル倍以上用いる。その上限は特にないが、求核置換フッ素化反応を受ける置換基を1つのみ有する場合は、反応効率の観点から好ましくは1.5〜5.0モル倍程度の範囲である。また、求核置換フッ素化反応を受ける置換基を2以上有する場合は、上記反応性の優先順位に基づいてフッ素反応を所望しない置換基がフッ素原子で置換されない範囲で使用量を適宜設定すればよい。
本反応は、有機溶媒もしくは水またはそれらの混合溶媒の存在下において実施することもできるし、無溶媒で実施することもできる。
溶媒を用いて実施する場合の有機溶媒としては、例えばメチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;例えばシクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド溶媒;スルホラン、ジメチルスルフォキシドなどの含イオウ溶媒;などが挙げられる。
溶媒を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、フッ素化剤(1)に対して、通常100重量倍以下程度である。
反応温度があまり低いと反応が進行しにくく、また反応温度があまり高いと原料や生成物の分解等副反応が進行する恐れがあるため、実用的な反応温度は、通常−20〜200℃程度の範囲である。
反応試剤の混合順は特に制限されず、例えば反応温度条件下の求核置換フッ素化反応を受ける置換基を1または2以上有する有機化合物にフッ素化剤(1)を加えていってもよいし、その逆でもよい。また、両試剤を同時に混合してから反応温度を調整してもよい。
本反応は、常圧条件下で実施してもよいし、加圧条件下で実施してもよい。また、反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
反応終了後、晶析処理や蒸留等を行ったり、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、反応生成物である含フッ素化合物を取り出すことができる。取り出した含フッ素化合物は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ等の手段によりさらに精製してもよい。
ここで、水に不溶の有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;例えば酢酸エチル等のエステル溶媒;などが挙げられる。
かくして得られるフッ素化合物としては、例えば1−フルオロブタン、1−フルオロシクロブタン、1−フルオロペンタン、1−フルオロシクロペンタン、1,4−ジフルオロブタン、1−クロロ−4−フルオロブタン、1−フルオロヘキサン、1,6−ジフルオロヘキサン、1−フルオロヘプタン、2−フルオロへプタン、1−フルオロオクタン、2−フルオロオクタン、ベンジルフルオライド、(1−フルオロエチル)ベンゼン、4−メトキシベンジルフルオライド、4−メチルベンジルフルオライド、3,4,5−トリフルオロベンジルフルオライド、4−フルオロニトロベンゼン、2−フルオロニトロベンゼン、4−シアノフルオロベンゼン、1−フルオロ−2,4−ジニトロベンゼン、テトラフルオロテレフタロニトリル、テトラフルオロイソフタロニトリル、テトラフルオロオルソフタロニトリル、1,3−ジフルオロ−4,6−ジニトロベンゼン、2−フルオロキノリン、2−フルオロ−5−ニトロピリジン、2−フルオロ−5−トリフルオロメチルピリジン等が挙げられる。
反応後は、求核置換フッ素化反応を受ける置換基を含んだ混合アルキル置換イミダゾリウム塩として、アルキル置換イミダゾリウムカチオンを回収することができる。反応液からろ過処理、分液処理等により回収された混合アルキル置換イミダゾリウム塩は、再度、フッ化物イオンにイオン交換することにより、フッ素化剤(1)として再使用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
実験例1(フッ素化剤(1)(x=1)の製造例)
3角フラスコに、1−メチル−3−(n−ブチル)イミダゾリウムクロライド22gと水200gを仕込み、溶解させた。別の3角フラスコに、フッ化銀(I)16.1gと水120gを仕込み、溶解させた後、2つの水溶液を25℃で混合し、同温度で30分攪拌を続けた。反応後に析出した結晶を濾過し、結晶を水洗した。得られた濾液と洗液を合一して濃縮し、1−メチル−3−(n−ブチル)イミダゾリウムフルオライド・2水和物を24.5g得た。
収率:100%。
元素分析値: C:49.5、H:9.9、N:14.5、F:9.2
計算値 : C:49.5、H:9.9、N:14.4、F:9.8
1H−NMR(δppm、DMSO−d6、TMS基準):0.90(t、3H)、
1.25(m、2H)、1.72(m、2H)、3.88(s、3H)、
4.19(t、2H)、7.79(d、2H)、10.1(bs、1H)
実験例2(フッ素化剤(1)(x=1)の製造例)
3角フラスコに、1−メチル−3−(n−ヘキシル)イミダゾリウムクロライド5.0gと水50gを仕込み、溶解させた。別の3角フラスコにフッ化銀(I)3.1gと水50gを仕込み、溶解させた後、2つの水溶液を25℃で混合し、同温度で30分攪拌を続けた。反応後に析出した結晶を濾過し、結晶を水洗した。得られた濾液と洗液を合一して濃縮し、無色オイル5.4gを得た。元素分析の結果、得られたオイルは1−メチル−3−(n−ヘキシル)イミダゾリウムフルオライドの2水和物と同定された。
収率:99%。
元素分析値: C:54.4、H:11.0、N:12.7、F:8.3
計算値 : C:54.0、H:10.4、N:12.6、F:8.5
1H−NMR(δppm、DMSO−d6、TMS基準):0.90(m、3H)、
1.29(m、6H)、1.78(m、2H)、3.89(s、3H)、
4.18(q、2H)、7.82(d、2H)、10(bs、1H)
実験例3(フッ素化剤(1)(x=1)の製造例)
3角フラスコに、1−メチル−3−(n−オクチル)イミダゾリウムクロライド5.0gと水50gを仕込み、溶解させた。別の3角フラスコにフッ化銀(I)2.74gと水50gを仕込み、溶解させた後、2つの水溶液を25℃で混合し、同温度で30分攪拌を続けた。反応後に析出した結晶を濾過し、結晶を水洗した。得られた濾液と洗液を合一して濃縮し、無色オイル5.8gを得た。元素分析の結果、得られたオイルは1−メチル−3−(n−オクチル)イミダゾリウムフルオライドの3水和物と同定された。
収率:100%。
元素分析値: C:53.6、H:10.8、N:10.1、F:6.7
計算値 : C:53.6、H:11.0、N:10.4、F:7.1
1H−NMR(δppm、DMSO−d6、TMS基準):0.86(m、3H)、
1.20(m、10H)、1.77(m、2H)、3.89(s、3H)、
4.16(q、2H)、7.80(d、2H)、10(bs、1H)
実験例4(フッ素化剤(1)(x=0.475)の製造例)
3角フラスコに、1−メチル−3−(n−ブチル)イミダゾリウムクロライド5.0gと水50gを仕込み、溶解させた。別の3角フラスコに、フッ化銀(I)1.72gと水30gを仕込み、溶解させた後、2つの水溶液を25℃で混合し、同温度で30分攪拌を続けた。反応後に析出した結晶を濾過し、結晶を水洗した。得られた濾液と洗液を合一して濃縮し、無色オイル5.8gを得た。このオイルは、0℃でも液体であった。元素分析の結果、得られたオイルはフッ化物イオン47.5モル%、塩化物イオン52.5モル%の混合アニオンと1−メチル−3−n−ブチルイミダゾリウムカチオンとからなる塩の2水和物と同定された。
収率:100%。
元素分析値: C:48.2、H:9.5、N:14.1、F:4.6、Cl:9.5
計算値 : C:47.4、H:9.5、N:13.8、F:4.5、Cl:9.2
1H−NMR(δppm、DMSO−d6、TMS基準):0.88(t、3H)、
1.25(m、2H)、1.78(m、2H)、3.90(s、3H)、
4.19(t、2H)、7.85(d、2H)、10.0(bs、1H)
実験例5(フッ素化剤(1)(x=0.83)の製造例)
3角フラスコに、1−メチル−3−(n−ブチル)イミダゾリウムクロライド5.0gと水50gを仕込み、溶解させた。別の3角フラスコに、フッ化銀(I)3.0gと水 30gを仕込み、溶解させた後、2つの水溶液を25℃で混合し、同温度で30分攪拌を続けた。反応後に析出した結晶を濾過し、結晶を水洗した。得られた濾液と洗液を合一して濃縮し、無色オイル5.6gを得た。このオイルは、室温では一部が結晶化した。元素分析の結果、得られたオイルはフッ化物イオン83モル%、塩化物イオン17モル%の混合アニオンと1−メチル−3−n−ブチルイミダゾリウムカチオンとからなる塩の2水和物と同定された。
収率:99%。
元素分析値: C:47.3、H:9.8、N:13.8、F:8.1、Cl:3.1
計算値 : C:48.7、H:9.7、N:14.2、F:8.0、Cl:3.1
1H−NMR(δppm、DMSO−d6、TMS基準):0.88(t、3H)、
1.20(m、2H)、1.75(m、2H)、3.88(s、3H)、
4.19(t、2H)、7.85(d、2H)、9.85(s、1H)
実験例6(フッ素化剤(1)(x=0.61)の製造例)
3角フラスコに、1−メチル−3−(メトキシエトキシメチル)イミダゾリウムクロライド12.0gと水50gを仕込み、溶解させた。別の3角フラスコに、フッ化銀(I)5.33gと水30gを仕込み、溶解させた後、2つの水溶液を25℃で混合し、同温度で30分攪拌を続けた。反応後に析出した結晶を濾過し、結晶を水洗した。得られた濾液と洗液を合一して濃縮し、無色オイル12.6gを得た。このオイルは、室温では一部が結晶化した。元素分析の結果、得られたオイルはフッ化物イオン61モル%、塩化物イオン39モル%の混合アニオンと1−メチル−3−(メトキシエトキシメチル)イミダゾリウムカチオンとからなる塩の1.3水和物と同定された。
収率:99%。
元素分析値: C:42.7、H:8.0、N:12.6、F:5.8、Cl:6.9
計算値 : C:43.6、H:8.0、N:12.7、F:5.3、Cl:6.3
1H−NMR(δppm、DMSO−d6、TMS基準):3.19(s、3H)、
3.44(m、2H)、3.67(m、2H)、3.97(s、3H)、
5.69(s、2H)、7.95(d、2H)、10.1(bs、1H)
実施例1
還流冷却管を付した50mLフラスコに、実験例1で合成したフッ素化剤(1)500mgとベンジルブロマイド171mgを仕込み、80℃で5時間攪拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、主生成物はベンジルフルオライドであった。
収率:95%。
実施例2
実施例1において使用したベンジルブロマイド171mgに代えてパラトルエンスルホン酸n−オクチル284mgを用いて150℃で3時間攪拌する以外は実施例1と同様に実施した。主生成物は1−フルオロオクタンであった。
収率:98%。
実施例3
実施例1において使用したベンジルブロマイド171mgに代えて1−ブロモオクタン193mgを用いて100℃で3時間攪拌する以外は実施例1と同様に実施した。主生成物は1−フルオロオクタンであった。
収率:90%。
実施例4
実施例1において使用したベンジルブロマイド171mgに代えて4−クロロニトロベンゼン158mgを用いて150℃で3時間攪拌する以外は実施例1と同様に実施した。主生成物は4−フルオロニトロベンゼンであった。
収率:88%。
実施例5
還流冷却管を付した50mLフラスコに、実験例4で合成したフッ素化剤(1)640mgとベンジルクロライド254mgを仕込み、80℃で3時間攪拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、主生成物はベンジルフルオライドであった。
収率:75%(ベンジルクロライド基準)。ベンジルクロライドが25%回収された。
フッ素化剤(1)のフッ化物イオン基準での収率は100%であった。
実施例6
還流冷却管を付した50mLフラスコに、実験例5で合成したフッ素化剤(1)300mgとベンジルクロライド127mg、アセトニトリル500mgを仕込み、80℃で3時間攪拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、主生成物はベンジルフルオライドであった。
収率:99%(ベンジルクロライド基準)。ベンジルクロライドが1%回収された。
フッ素化剤(1)のフッ化物イオン基準での収率は79%であった。
実施例7
還流冷却管を付した50mLフラスコに、実験例2で合成したフッ素化剤(1)330mgと1−オクチルクロライド149mgを仕込み、100℃で4時間攪拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル5gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、主生成物は1−オクチルフルオライドであった。
収率:63%(1−オクチルクロライド基準)。1−オクチルクロライドが32%回収された。
実施例8
実施例7において、実験例2で合成したフッ素化剤(1)の代わりに、実験例3で合成したフッ素化剤(1)を320mg用いる以外は実施例7と同様に実施した。主生成物は1−オクチルフルオライドであった。
収率:64%(1−オクチルクロライド基準)。1−オクチルクロライドが32%回収された。
実施例9
還流冷却管を付した50mLフラスコに、実験例1で合成したフッ素化剤(1)500mg、2,6−ジブロモピリジン236mgおよびアセトニトリル2gを仕込み、80℃で3時間攪拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル5g、水5を加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、主生成物は2−フルオロ−6−ブロモピリジンであった。
収率:78%(2,6−ジブロモピリジン基準)。2,6−ジブロモピリジンが20%回収された。
実施例10
還流冷却管を付した50mLフラスコに、実験例1で合成したフッ素化剤(1)600mgとベンジルクロライド250mgを仕込み、80℃で3時間攪拌した。室温まで冷却後、n−ヘキサン5gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、主生成物はベンジルフルオライドであった。
収率:94%(ベンジルクロライド基準)。ベンジルクロライドが6%回収された。
実施例11
実施例10で得られた水層に、フッ化銀390mgを水5gに溶解した水溶液を加え、25℃で2時間攪拌後に、析出した結晶をろ過して除去し、濃縮して淡黄色オイル605mgを得た。このオイルに、ベンジルクロライド250mgを加え、80℃で3時間攪拌した。室温まで冷却後、n−ヘキサン5gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、主生成物はベンジルフルオライドであった。
収率:95%(ベンジルクロライド基準)。ベンジルクロライドが5%回収された。

Claims (8)

  1. 式(1)
    Figure 0004792735
    (式中、RおよびRは、それぞれ同一または相異なって、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R、RおよびRはそれぞれ水素原子を表す。Yはフッ化物イオンを除く1価のアニオンを表す。また、0<x≦1である。)
    で示されるフッ素化剤。
  2. 0<x<1であり、Yで示される1価のアニオンがハロゲン化物イオン類、ホウ酸イオン類、リン酸イオン類、アンチモン酸イオン類、スルホン酸イオン類、炭酸イオン類、カルボン酸イオン類、アミドイオン類または硝酸イオンである請求項1に記載のフッ素化剤。
  3. フェニル基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルカンの1または2以上の水素原子が、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基で置換された有機化合物をフッ素化するための式(1)
    Figure 0004792735
    (式中、R およびR は、それぞれ同一または相異なって、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R 、R およびR はそれぞれ水素原子を表す。Y はフッ化物イオンを除く1価のアニオンを表す。また、0<x≦1である。)
    で示されるフッ素化剤の使用。
  4. ニトロベンゼンの1または2以上の水素原子が、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基で置換された有機化合物をフッ素化するための式(1)
    Figure 0004792735
    (式中、R およびR は、それぞれ同一または相異なって、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R 、R およびR はそれぞれ水素原子を表す。Y はフッ化物イオンを除く1価のアニオンを表す。また、0<x≦1である。)
    で示されるフッ素化剤の使用。
  5. ピリジンの1または2以上の水素原子が、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基で置換された有機化合物をフッ素化するための式(1)
    Figure 0004792735
    (式中、R およびR は、それぞれ同一または相異なって、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R 、R およびR はそれぞれ水素原子を表す。Y はフッ化物イオンを除く1価のアニオンを表す。また、0<x≦1である。)
    で示されるフッ素化剤の使用。
  6. フェニル基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルカンの1または2以上の水素原子が、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基で置換された有機化合物に、式(1)
    Figure 0004792735
    (式中、R およびR は、それぞれ同一または相異なって、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R 、R およびR はそれぞれ水素原子を表す。Y はフッ化物イオンを除く1価のアニオンを表す。また、0<x≦1である。)
    で示されるフッ素化剤を作用させることを特徴とする含フッ素化合物の製造法。
  7. ニトロベンゼンの1または2以上の水素原子が、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基で置換された有機化合物に、式(1)
    Figure 0004792735
    (式中、R およびR は、それぞれ同一または相異なって、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R 、R およびR はそれぞれ水素原子を表す。Y はフッ化物イオンを除く1価のアニオンを表す。また、0<x≦1である。)
    で示されるフッ素化剤を作用させることを特徴とする含フッ素化合物の製造法。
  8. ピリジンの1または2以上の水素原子が、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基で置換された有機化合物に、式(1)
    Figure 0004792735
    (式中、R およびR は、それぞれ同一または相異なって、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R 、R およびR はそれぞれ水素原子を表す。Y はフッ化物イオンを除く1価のアニオンを表す。また、0<x≦1である。)
    で示されるフッ素化剤を作用させることを特徴とする含フッ素化合物の製造法。
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