JP4787777B2 - 信号分離装置、信号分離方法、信号分離プログラム、記録媒体 - Google Patents
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Description
以下では音波も信号と称して説明する。まず、ブラインド信号分離の定式化を行う。扱う信号は、あるサンプリング周波数fsでサンプリングされ、離散的に表現される。N個の信号が混合されてM個のセンサで観測されたとする。本発明では、信号の発生源からセンサまでの距離により信号が減衰・遅延し、また壁などにより信号が反射して伝送路歪みが発生しうる状況を扱う。このような状況の混合は、源信号sk(t)からセンサxj(t)へのインパルス応答hjk(r)による畳み込み混合
xj(t)=Σk=1 NΣr=0 ∞hjk(r)sk(t-r) (1)
となる。ブラインド信号分離の目的は、源信号s1(t),...,sN(t)やインパルス応答h11(r
),...,h1N(r),...,hM1(r),...,hMN(r)を知らずに、観測信号x1(t),...,xM(t)のみから、源信号s1(t),...,sN(t)にそれぞれ対応する分離信号y1(t),...,yN(t)を求めることにある。
本発明では周波数領域において分離の操作を行う。そのために、センサでの観測信号xj(t)にL点の短時間フーリエ変換を適用して周波数毎の時間系列
次に、独立成分分析(ICA:Independent Component Analysis)を用いて、周波数毎に信号分離を行う。周波数領域での処理により、畳み込み混合、式(1)を単純混合、式(5)およびそのベクトル表記、式(6)に近似できるため、ICAも単純混合のモデルに従って行う。ICAでは、観測信号ベクトルx(f,t)のみから、N行M列の分離行列W(f)および分離信号ベクトル
ICAでは信号の独立性に着目して分離を行うため、得られる分離信号y1,...,yNには順序の任意性がある。その順序が入れ替わっても、独立性が保たれているからである。この任意性は、同じ源信号sk(t)に対応する分離信号成分yi(f,t)がすべての周波数fで同じ添え字iになるように解決されなければならない。これは、パーミュテーション問題と呼ばれ、周波数領域での信号分離において非常に重要な問題である。この問題を解決する従来技術は、周波数毎の分離信号のエンベロープの相関関数に基づくもの([非特許文献2]、[非特許文献3]など)と、ICAの結果から信号源の方向や位置に相当する値を推定することに基づくもの([特許文献1])に大別できる。
パーミュテーション解決手段30は図2に示すように、占有度算出手段30−1と、クラスタリング部30−2と、並べ替え手段30−3とによって構成される。
時間領域のセンサ信号をまとめたベクトル[x1(t),...,xM(t)]Tは、周波数領域変換手段10において、短時間フーリエ変換により周波数毎の時系列を表現する観測信号ベクトルx(f,t)=[x1(f,t),...,xM(f,t)]Tに変換される。次に、分離信号算出手段20において、観測信号ベクトルx(f,t)から周波数f毎に分離信号ベクトルy(f,t)=[y1(f,t),...,yN(f,t)]Tと基底ベクトルを列に持つ行列A(f)=[a1(f),...,aN(f)]を算出する。
周波数領域変換手段10では、従来技術の説明で記載したように、式(2)に従って短時間フーリエ変換を行う。
分離信号算出手段20では、周波数f毎に処理を行う。まず、従来技術の説明に記載したように、式(7)に示すICAを適用し、分離信号ベクトルyを算出する。次に、式(10)を用いるか、あるいは分離行列Wの逆行列として、基底ベクトルを列に持つ行列Aを算出する。
図2にパーミュテーション解決手段30の構成を示す。パーミュテーション解決手段30はこの発明で特徴とする占有度算出手段30−1と、クラスタリング部30−2と、並べ替え手段30−3とによって構成される。
この発明で特徴とする占有度算出手段30−1では従来技術のエンベロープに代わるものとして分離信号の占有度を示す値を系列υi f(t)として計算する。ここでのクラスタリングは、一般的なものとは異なり、クラスタリング結果は周波数毎の順列Πfで表現される。最後に並べ替え手段30−3において、順列Πfに従って分離ベクトルy(f,t)の要素と基底ベクトルの並びを変更する。
占有度算出手段30−1では、分離信号y(f,t)が観測信号x(f,t)をどれほど占有しているかを示す値を計算する。その方法の一つとして、この実施例では、課題を解決するための手段の項で説明した複数のセンサの中の特定したセンサにおけるi番目の分離信号のパワーとすべての分離信号のパワーの総和との割合を占有度として求める式(13)或は全てのセンサに着目して占有度を求める式(13’)、或は部分集合に該当するセンサに着目して占有度を求める方法を提案する。
占有度算出手段30−1で算出された占有度系列υi f(t)は、次にクラスタリング手段30−2に入力される。クラスタリング手段30−2の構成を図3に示す。クラスタリング手段30−2はこの実施例では大域的最適化手段30−2−1と、局所的最適化手段30−2−2とによって構成した場合を示す。
Α(f)={f−3Δf,f−2Δf,f−Δf,f+Δf,f+2Δf,f+3Δf}
として定義できる。ここで、Δf=(1/L)fsは、隣り合う周波数ビン間の周波数の差である。また、倍音関係にある周波数の集合Ηは、例えば、
Η(f)={round(f/2)−Δf,round(f/2),round(f/2)+Δf,2f−Δf,2f,2f+Δf}
として定義できる。ここで、round(・)は、周波数の集合Fから・に最も近い周波数を意味する。局所的最適化部では、式(19)に従った順列Πfの最適化を、すべての周波数で改善が起こらなくなるまで繰り返す。
並べ替え手段30−3では、クラスタリング手段30−2で算出された順列Πfに基づいて、分離信号ベクトルy=[y1,...,yN]Tの要素と、基底ベクトルから成る行列A=[a1,...,aN]の列を以下のように並べ替える。
yk(f,t)←yΠf(k)(f,t),ak(f)←aΠf(k)(f),∀k,f,t
以上でパーミュテーション解決手段30の説明を終わる。
ICAでは信号の独立性に着目して分離を行うため、得られる分離信号には、振幅や移相、すなわちスケーリングの任意性がある。時間領域に戻した際に適切な分離信号となるためには、振幅や位相を適切に設定する必要がある。この実施例では、あるセンサJでの観測信号に合わせるという考え方を採用し、
yk(f,t)←ajk(f)yk(f,t),∀k,f,t
によりスケーリング調整を行う。
最後に時間領域変換手段50で、これまでに得られた周波数領域の分離信号に、短時間逆フーリエ変換などを施して、時間領域の分離信号を作成する。
つまり、実施例1では特定のセンサ番号Jを選択し、選択したセンサにおける分離信号のパワーと分離信号の総パワーの比により占有度系列υi f(t)を算出する構成としたから、或るセンサJを指定しなければならないが、状況によっては不適切なセンサ(例えば感度の悪いセンサ)を選んでしまう恐れがある。
bi=Vai,z=Vx
は、観測信号ベクトル白色化空間での、それぞれ、biは白色化された基底ベクトル、zは白色化された観測信号ベクトルであり、白色化行列VはVHV=(E{xxH})-1を満たすものとして、例えば、固有値分解E{xxH}=EDEHを行った後
V=D-1/2EH
として計算できる。式(13)及び(13’)では分離信号ベクトルyと基底ベクトルを列に持つ行列Aを用いるのに対し、この式(15)では図5に記載されている観測信号ベクトルxと行列Aを用い、分離信号ベクトルyは占有度の算出には用いない。また、ここでは観測信号ベクトルxを演算指標として用いるから、全てのセンサの観測信号を対象としている。従ってこの実施例によれば特定のセンサを選択する必要はない。
入力ポート105には特に図示していないが例えば磁気ディスク読取装置、CD-ROM読取装置、メモリカード読取装置、或いはモデム等を接続し、コンピュータが読取可能な記録媒体から入力ポート105を通じて記録装置104にプログラムをインストールする。
以上により本発明による信号分離プログラムをコンピュータにインストールすることにより、コンピュータを信号分離装置として機能させることができることが理解できよう。
本発明の効果を示すために、図11に示す実験条件と図12に示すマイクロホンM1〜M3とスピーカSP1〜SP3の配置を用いて実験を行った。3つの音を同時に鳴らした時の混合音を3つのマイクロホンM1〜M3で観測し、その観測信号のみからそれぞれの音に対応する分離信号を算出するという問題設定である。様々な音声信号の組合せで評価できるように、スピーカSP1〜SP3からマイクロホンM1〜M3までのインパルス応答を測定し、音声信号をインパルス応答に畳み込んで混合することで観測信号を生成した。図12に示す配置では、二つの音源が同じ方向からマイクロホンM1〜M3に到来し、しかもマイクロホンM1〜M3の間隔は4cmと狭いため、信号源の方向や位置に相当するICAの結果から推定するパーミュテーションの解法([特許文献1]、[特許文献2]、[非特許文献4]に記載)は、適用しにくい。分離性能は、signal-to-interference ratio (SIR)の改善量で評価した。これは、各出力i毎に、出力SIRと入力SIRの差OutputSIRi-InputSIRiとして計算される。入力SIRと出力SIRは、それぞれ以下の式で計算される。
10 周波数領域変換手段 30−2 クラスタリング手段
20 分離信号算出手段 30−3 並べ替え手段
30 パーミュテーション解決手段 30−2−1 大域的最適化手段
40 スケーリング調整手段 30−2−2 局所的最適化手段
50 時間領域変換手段
Claims (10)
- 複数の信号源から発せられた信号が混合され、この混合された混合信号を各信号源からの信号に分離する信号分離装置において、
互いに異なる位置に設置された複数のセンサで観測された前記混合信号を周波数領域信号に変換する周波数領域変換手段と、
前記周波数領域信号に独立成分分析を適用し、周波数毎に分離信号ベクトル及び基底ベクトルを列に持つ行列を算出する分離信号算出手段と、
前記分離信号算出手段の算出結果を用いて周波数毎の観測信号において、各分離信号が元の観測信号をどれくらい占有しているかを示す値を各分離信号の占有度として求め、前記占有度の時間方向の系列を占有度系列として算出する占有度系列算出手段と、
前記占有度系列算出手段で算出された占有度系列に従って周波数毎の順列を算出するクラスタリング手段と、
前記クラスタリング手段で得られた順列に従って前記分離信号ベクトルの要素と基底ベクトルを並べ替える並べ替え手段と、
を備えることを特徴とする信号分離装置。 - 請求項1記載の信号分離装置において、前記占有度系列算出手段では分離信号毎に、各分離信号のパワーとすべての分離信号のパワーの総和との割合を指標として占有度系列を算出することを特徴とする信号分離装置。
- 請求項1記載の信号分離装置において、前記占有度系列算出手段は観測信号ベクトル白色化空間での基底ベクトルと観測信号ベクトルのコサイン距離を指標として、占有度系列を算出する構成されることを特徴とする信号分離装置。
- 請求項1乃至3の何れかに記載の信号分離装置において、前記クラスタリング手段は、前記占有度系列と信号源に対応するセントロイドとの相関係数を全ての信号源および全ての周波数で足し合わせて得られる関数を最大化する条件で得られた順列を出力する大域的最適化手段を備えることを特徴とする信号分離装置。
- 複数の信号源から発せられた信号が混合され、この混合された混合信号を各信号源からの信号に分離する信号分離方法において、
互いに異なる位置に設置された複数のセンサで観測された前記混合信号を周波数領域信号に変換する周波数領域変換処理と、
前記周波数領域信号に独立成分分析を適用し、周波数毎に分離信号ベクトル及び基底ベクトルを列に持つ行列を算出する分離信号算出処理と、
前記分離信号算出処理の算出結果を用いて周波数毎の観測信号において、各分離信号が元の観測信号をどれくらい占有しているかを示す値を各分離信号の占有度として求め、前記占有度の時間方向の系列を占有度系列として算出する占有度系列算出処理と、
前記占有度系列算出処理で算出された占有度系列に従って周波数毎の順列を算出するクラスタリング処理と、
前記クラスタリング処理で得られた順列に従って前記分離信号ベクトルの要素と基底ベクトルを並べ替える並べ替え処理と、
を含むことを特徴とする信号分離方法。 - 請求項5記載の信号分離方法において、前記占有度系列算出処理は分離信号毎に、各分離信号のパワーとすべての分離信号のパワーの総和との割合を指標として占有度系列を算出する処理とされることを特徴とする信号分離方法。
- 請求項5記載の信号分離方法において、前記占有度系列算出処理は観測信号ベクトル白色化空間での基底ベクトルと観測信号ベクトルのコサイン距離を指標として、占有度系列を算出する処理されることを特徴とする信号分離方法。
- 請求項5乃至7の何れかに記載の信号分離方法において、前記クラスタリング処理は、前記占有度系列と信号源に対応するセントロイドとの相関係数を全ての信号源および全ての周波数で足し合わせて得られる関数を最大化する条件で得られた順列を出力する大域的最適化処理を含むことを特徴とする信号分離方法。
- コンピュータが解読可能なプログラム言語によって記述され、コンピュータに請求項1乃至3の何れかに記載の信号分離装置として機能させる信号分離プログラム。
- コンピュータが読み取り可能な記録媒体によって構成され、この記録媒体に請求項9記載の信号分離プログラムを記録した記録媒体。
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