(発明の詳細な説明)
本明細書において使用されるとき、「軟組織」とは、骨以外の任意の生物学的組織を指し、これらに限られるわけではないが、腱、靱帯、筋膜、関節全体、硬膜、皮膚、心膜、心臓弁、血管、神経組織、粘膜下組織(例えば、腸組織)、および軟骨が挙げられる。
本明細書において使用されるとき、「インプラント」とは、ヒトまたは動物への埋め込み有益であると考えられる任意の材料を指す。したがって、インプラントは、骨および皮膚などといった組織由来の材料であってよく、清浄化、滅菌、または不活化を必要としうる外表面または内部構造を有する金属材料または合成材料であってよい。インプラントは、自家移植片、同種移植片、異種移植片、またはこれらの組み合わせを含むことができ、骨などのミネラル化された組織の場合には、インプラントは、ミネラル化された組織、部分的に脱ミネラル化された組織、完全に脱ミネラル化された組織、およびこれらの組み合わせを含むことができる。インプラントは、一体または一枚岩の移植片材料、米国特許出願第09/782,594号および第09/941,154号に記載されているような組み立てられた骨材料、米国特許第6,440,444号および第6,696,073号の記載されているような異形のインプラント、ならびに米国特許出願第10/754,310号および第10/793,976号に記載されているような同種異系の生体適合性マトリクスであってよい。本発明のプロセスおよび装置は、米国特許第D461,248号、第6,290,718号、第6,497,726号、第6,652,592号、第6,685,626号、および第6,699,252号に記載されているようなインプラントの処理においても使用可能である。上述の特許および特許出願はすべて、ここでの言及によって本明細書に組み込まれたものとする。
本明細書において使用されるとき、「運動学的拘束」とは、インプラントの物理的位置および/または向きに対する制御を指し、インプラントまたはインプラントの任意の特定の部位の引っ張り、圧縮、および/または不動化を含むことができる。好ましくは、インプラントへと加えられる運動学的拘束は、インプラントの軟組織へと加えられる引っ張りを含んでいる。適切な運動学的拘束装置は、インプラントへと軸方向および/または半径方向の拘束または引っ張りをもたらすことができ、あるいは1、2、または3次元においてインプラントへと引っ張りまたは拘束をもたらすことができる。インプラントへと加えられる運動学的拘束は、インプラントの好ましくは軟組織へと加えられる引っ張り、圧縮、および/または不動化を含むことができる。運動学的拘束は、1〜6つの自由度について、軟組織を含んでなるインプラントの位置、向き、動き、または応力の制御をもたらす。
本明細書において使用されるとき、「不活化」とは、胞子、細菌、バクテリア、および他の微生物などの潜在的な病原生物ならびに免疫原生の物質をインプラントから除去し、減退させ、あるいは不活化することを指す。したがって、滅菌、殺胞子効果、病原体の不活化および/または除去、ならびに抗原性の低減が、この用語によって意図されるが、インプラントの有益な生物学的特性の除去は、この用語の意図するところではない。不活化という用語が、無菌化という用語よりも好ましい。何故ならば、無菌化が目標である一方で、この用語は、付随の組織の破壊を伴わない限りは完全に達成することがほとんど不可能である絶対的な意味を有しているためである。さらには、本発明のプロセスによって製造されるインプラントは、抗原性または発熱性を完全には欠いていないかもしれないが、これらの望ましくない様相が大幅に減じられており、これも本明細書において使用される不活化という用語の意図するところである。抗原性の低減は、加速された治癒の可能性を促進する。このように、感染または疾患の伝染の恐れが本質的に低減されており、炎症反応が最小限にされており、加速された治癒の可能性を有している不活化されたインプラントが、埋め込みのために好ましい。
本明細書において使用されるとき、「灌流処理」または「灌流」は、レシピエントへの埋め込みが予定されている材料のチャネルまたは裂け目への清浄剤または生物学的に有効な物質の相互浸透を意味することを意図している。
「迅速」および「迅速に」とは、本明細書において圧力サイクルに適用されるとき、数時間または数日ではなく、数秒〜数分のオーダにある時間枠を指す。
「音波処理する」および「音波処理」とは、音波または超音波エネルギーの印加を指す。音波処理は、インプラントへの音波エネルギーの効率的伝達を可能にする条件のもとで、本発明のプロセスによる処理が加えられているインプラントの容器を介して、加えることができる。当業者であれば、音波処理のプロセス、ならびに処理対象への正味の超構造のダメージをもたらすことなく効率的な清浄化およびバクテリアまたは細胞の破壊が達成されるように音波エネルギーを流体を介して処理対象へと伝達できる条件に、精通している。
これらに限られるわけではないが、骨および軟組織、ミネラル化されあるいは脱ミネラル化された組織、ならびに上述の種類の組織の組み合わせなど、軟組織を含んでなるインプラントを処理するため、新規なプロセスが提供される。とくには、本発明によるプロセスによって処理された軟組織は、軟組織への過剰な構造的または化学的損傷を伴うことなく、軟組織を徹底的に清浄化、滅菌、および/または不活化できる。
本発明の発明者らは、理論に縛られることを意図していないが、種々の処理プロセスからの軟組織の損傷がコラーゲンの劣化から生じうることが、現時点において理論化されている。そのようなコラーゲンの劣化は、軟組織の清浄化および滅菌において典型的に使用される清浄剤への化学的な暴露によって引き起こされる可能性がある。実施例1が、本発明の発明者らによって軟組織の強度に影響を及ぼすことが見出された化学的および物理的プロセス・パラメータを特定している。後述されるように、本発明の発明者らは、酸化滅菌剤(例えば、過酸化物)によるコラーゲンへの損傷が大きな懸念を引き起こすことを見出した。本発明の技法は、そのような酸化による損傷を低減するためのやり方を提供する。
インプラントの処理および滅菌プロセスに関する公知の技術の背景の検討に照らし、本発明の技法は、軟組織を含んでなるインプラントを少ない損傷にて処理(例えば、清浄化、滅菌、または不活化)できる点で、改善をもたらすものと確信される。いくつかの方法論が提示され、その追加の効果は、レシピエントへと毒性を引き起こすことなく埋め込むことができかつ良好な臨床性能を有している高度に清浄化および不活化された軟組織がもたらされる点にある。本発明のプロセスの種々の実施形態は、上述の特徴、すなわち幅広い範囲のバクテリアおよびウイルスの病原体を有効に除去または不活化できること;移植片に毒性がないこと;生体機械的強度または成長誘起特性などの所望の組織特性が維持されること;幅広い範囲の作業上の変更および幅広い軟組織の種類について有効であること;移植のための無菌の梱包および配送を保証するため、プロセスを最終のインプラント組織容器にて完了できること;自動化された制御および監視システムを適用でき、自動化および検証されたプロセスを展開できること、の大部分またはすべてを含んでいる。さらに、ある実施形態においては、1つまたは複数の生理活性物質またはその組み合わせは、インプラントに注入する。本明細書におけるインプラントという用語の使用に照らし、当業者であれば、本発明によるインプラントが、広く自家移植片組織、同種移植片組織、異種移植片組織、またはこれらの組み合わせを含んでよいこと、および具体的には腱、靱帯、筋膜、関節全体、硬膜、皮膚、心膜、心臓弁、血管、神経組織、粘膜下組織(例えば、腸組織)、および軟骨を含んでよいことを、理解できるであろう。
本発明のプロセスは、望ましくない成分を有しているインプラントをもたらす可能性を減らすための他の技法と組み合わせて、使用することが可能である。例えば、本明細書においてドナー適格確認と称されるが、病原のドナー組織が組織バンクによって採取および処理される恐れを最小限にするための方法が、この技術分野において知られている。したがって、徹底的なドナーのスクリーニング、ならびに酵素、免疫学、生化学、および分子生物学の技法による組織の検査を、病原(ウイルスおよびバクテリアなど)を保持している組織が処理される材料に含まれて埋め込みに利用可能にされる恐れを最小限にするために、適用することができる。ヒト免疫不全ウイルス、HIV、B型肝炎ウイルス、HBV、C型肝炎ウイルス、HCVによる汚染についての検査が、今やこの技術分野において日常作業になっている。望ましくは、公知のスクリーニングおよび適格確認方法が、本発明のプロセスによるインプラント材料の処理に先立って、最初の工程として含まれる。しかしながら、これらのスクリーニング方法のいずれも、同種移植片の疾患の伝染を含む近年の事例によって証明されているように、100%信頼できるわけではない。Morbidity and Mortality Weekly Report、U.S. Department of Health and Human Services、Centers for Disease Control and Prevention、2003年12月5日(「同種移植による感染は稀ではあるが、それらは組織の評価および処理の基準の改善の必要性を強調している」)。さらには、本明細書に開示されるきわめて効率的なインプラント処理プロセスゆえ、日常の検査が未だ開発されていない未特定の潜在的な病原生物を、本発明の処理プロセスによってインプラントから取り除くことができるのではないかと期待される。本発明の不活化プロセスへと組み込まれるインプラントの清浄化のレベルにおける冗長性が、そのような生物または潜在的な病原因子の除去および不活化を保証しつつ、同時に効率的なインプラントの処理を可能にする。
以下の説明の目的においては、典型的な軟組織インプラントとして骨−腱−骨(「BTB」)の移植片に言及し、この骨−腱−骨のインプラントは、本発明の技法によって、従来の技法に比べて少ない酸化の損傷にて上手く処理されることができる軟組織を含んでいる。図1(a)〜(e)が、本発明の技法によって処理することができる骨−腱−骨のインプラントを示している。図1(a)が上面図を示しており、図1(b)が側面図を示しており、図1(c)が底面図を示している。この骨−腱−骨の移植片は、膝蓋骨および脛骨からの骨ブロックが取り付けられている膝蓋腱である。図1(d)は、膝蓋骨のブロックを示しており、図1(e)は、脛骨のブロックを示している。本発明の技法は、骨−腱−骨の移植片に関して頻繁に説明されるが、これらに限られるわけではないが種々の軟組織ならびに骨および軟組織の組み合わせを含む他のインプラントを、本明細書においてBTBを参照して例示される本発明の技術的思想から離れることなく、本明細書において定められる原理に従って処理できることを、当業者であれば理解できるであろう。当業者であれば、本発明によるインプラントが、多数の硬および軟の自家移植片組織、同種移植片組織、異種移植片組織、またはこれらの組み合わせを含んでよいことを、理解できるであろう。
本発明によれば、適格確認されたドナーからの同種移植片材料を、最初にバイオバーデン(bioburden)を減らすための種々の公知の方法によって処理することができる。最初にバイオバーデンを減らし表面を清浄化する随意による工程に続き、インプラント材料をさらに処理して、残りが基本的に生物学的マトリクスになり、あらゆる形態の生存できる生物(ウイルス、バクテリア、アメーバ、リケッチア、菌類)について5〜6logの低減が達成されるように、骨髄、血液、タンパク質、および粒子状物質を効率的に除くことができる。さらに詳しく後述されるとおり、これは、マトリクスへと効率的に相互浸透するようにされた種々の清浄化および滅菌溶液を使用し、圧力のサイクリングおよび振動のプロセスによって達成される。サイクリングおよび清浄化溶媒の交換を繰り返すことによって、基本的にすべての多孔性マトリクスのチャネルの詰まりが除かれ、清浄化される。あらかじめ定められて、あらかじめプログラムされた洗浄サイクルを、好ましくは同時に超音波爆撃を行いつつ、インプラントの浸透滅菌を達成すべく使用することができる。振動する流体圧力と超音波エネルギーとの組み合わせが、溶液の相互浸透および内在の物質の除去を加速することが、本発明の発明者らによって見出されている。
医学的に解放された後(例えばHIV特定PCRなどを含む一連のリスク因子および生化学的アッセイの通過を含むことができる)、ドナー組織を、無関係な組織または付随的な組織について清浄化することができる。清浄化した組織を、密封可能な反応チャンバに入れることができる。次いで、複数の洗浄工程を含んでいる前もって好ましくプログラムされた組織清浄化プロセスが、開始される。インプラントを種々の清浄剤に浸漬しつつチャンバ内の圧力を振動させることによって、清浄剤の組織への深い相互浸透が達成される。清浄剤の浸透、ならびに望ましくない汚染物質の除去、または血液、脂質、および非構造または望ましくないタンパク質などの内在の物質の除去を加速するため、この清浄化プロセスの種々の段階において、超音波エネルギーを加えてもよい。
本発明のプロセスは、驚くべきことに、例えばコラーゲンへのダメージであるが公知の処理方法に関連するダメージから組織を保護することが見いだされた清浄剤の新規な順序を含んでいる。驚くべきことに、軟組織を、過酸化物に接触させる前にアルコールに接触させ、過酸化物に接触させた後にアルコールに接触させることで、従来の方法によって過酸化物に接触させた軟組織にくらべ、過酸化物との接触に起因するダメージがより少ない不活化済み軟組織が得られることが見出された。さらには、驚くべきことに、軟組織に張力が加えられているときに過酸化物に接触させることで、従来の方法のように張力が加えられていない場合に比べ、ダメージが少なくなることが見出された。したがって、本発明の技術的範囲において、過酸化物または他の酸化滅菌剤(あるいは、他の清浄剤)との接触を、インプラントが引っ張り下にあるときに生じさせることが考えられる。さらには、過酸化物または他の酸化滅菌剤との接触の前および後の両者において、インプラントにアルコールを接触させることが考えられる。
本発明のプロセスの好ましい実施形態においては、血液、脂肪、バクテリア、ウイルス、菌類、または他の汚染物質を取り除くため、軟組織を含んでなるインプラントを、1つまたは複数の清浄剤に接触させる。清浄剤(および、そのような清浄剤の使用方法)は、米国特許第6,482,584号、第6,613,278号、および第6,652,818号に記載されている。清浄剤としては、洗浄剤、消毒剤(殺菌剤と呼ばれることもある)、防染剤(汚染除去剤と呼ばれることもある)、抗生物質、殺ウイルス性化合物、などが挙げられる。清浄剤は、溶液または他の混合物の形態で供給することができる。好ましくは、清浄剤は、水溶液として供給される。例えば、後述の清浄剤のうちの1つまたは複数を、不活化プロセスの一部として軟組織を含んでなるインプラントへと接触させることができる。(清浄剤およびそのような清浄剤の使用方法)が、米国特許第6,482,584号、第6,613,278号、および第6,652,818号に記載されている。それらは、くずの除去ならびにウイルスおよびバクテリアの殺傷のための溶媒/洗浄剤であるTriton X−100/TNBP(清浄剤B);細胞のくずを除去し、ウイルスおよびバクテリアを不活化するための3%過酸化水素(清浄剤C);清浄剤BおよびCの混合物(洗浄剤D);またはエタノールやイソプロパノールなどの水混和性のアルコール(洗浄剤E);ならびに任意の割合でのB、C、D、Eの混合物である。
しかしながら、本発明の技法によれば、過酸化物を含んでいる洗浄剤(洗浄剤Cなど)の軟組織への適用の前および後の両者において、軟組織が、引っ張りによって運動学的に拘束され、さらに/あるいはアルコールに接触させられる。運動学的拘束は、単一の拘束として加えることができ、あるいは複数の拘束として加えることができる。運動学的拘束は、清浄剤との接触の前、最中、および/または後に加えることができる。運動学的拘束は、定常状態または時間変化する様相で、一定の様相または可変の様相で加えることができる。
さらに詳しくは、軟組織を有するインプラントが、随意により軟組織に張力が加えられた状態で、加圧可能な処理チャンバへと入れられる(さらに詳しくは後述する)。インプラントは、随意により、金属、合成、または他の人工のインプラント材料、ドナーからの自家移植片または同種移植片の骨および軟組織、異種移植片の骨および軟組織を含んでいる。さらには、インプラントが、軟組織のみ、あるいは軟組織と骨および/または合成材料との組み合わせを含んでもよいことを、理解すべきである。
清浄剤(清浄剤B、C、D、E、およびこれらの混合物のうちの1つまたは複数など)が、処理チャンバへと導入される。インプラントを浸漬する(換言すれば、インプラントが洗浄剤に沈められる)ための充分な量の清浄剤が、通常は導入される。洗浄剤の存在のもとで、随意により音波を伴って、圧力の上昇および下降の一連の「n」サイクルを使用して、清浄剤がインプラントのマトリクスへと押し込まれる。インプラントのマトリクスのチャネル(軟組織の内部を含む)が、振動する圧力の結果として、清浄剤および取り去ろうとする成分で繰り返し満たされ、空にされる。この工程が繰り返される回数は、1〜約150回(n=1〜150)であってよく、あるいは約10〜約50回であってよく、あるいは約5〜約20回であってよい。
好ましくは、洗浄剤が、繰り返しの圧力を充分な繰り返し数で使用することによって、インプラントを灌流する。洗浄サイクルの数は、1〜150回であってよく、好ましくは約1〜50回であってよく、さらに好ましくは約5〜10回であってよい。適切に周期的に増減される圧力は、すでに記載した。清浄剤との接触に適した温度は、部分的には清浄剤およびその濃度に依存するが、望ましい温度としては、少なくとも約30℃、あるいは少なくとも約40℃、あるいは少なくとも約42℃、あるいは少なくとも約48℃が挙げられる。洗浄剤が比較的高濃度のアルコールを含んでいる場合には、例えば約35℃、約30℃、約25℃、あるいはそれ未満といったより低い温度を使用することが望ましいかもしれない。清浄剤(酸化滅菌剤を除く)に、インプラントを、例えば約1分〜約120分、あるいは約5分〜約20分、あるいは約10分といった適切な時間期間にわたって接触させることができる。上述の時間期間は、連続的な時間であってよく、あるいはインプラントが他の清浄剤、すすぎ用流体、または他の溶液と接触する時間期間によって仕切または分離されてもよい。
インプラントを、上述の清浄剤での処理の前および/または後で、加工でき、成形でき、あるいは他の方法で処理(例えば、脱ミネラル化)できる。多くの状況において、この処理がインプラントを不活化するために充分であり、インプラントが梱包されてもよい。あるいは、上述のものと同じまたは異なる工程ならびに/あるいは同じまたは異なる清浄剤を使用するさらなる処理のため、インプラントを反応チャンバに入れ、あるいは組織を反応チャンバ内に保つことが、望ましいかもしれない。このようにして、深い浸透による清浄化、不活化、または滅菌のサイクルが、好ましくはプログラム可能なロジック制御のもとで、随意により清浄剤B、C、D、およびEとは異なる清浄剤を使用して実行される。例えば、この時点で、清浄剤が、米国特許第6,482,584号、第6,613,278号、および第6,652,818号に記載の清浄剤(および、そのような清浄剤の使用方法)のうちの1つまたは複数であってよい。さらに詳しくは、以下の清浄剤のうちの1つまたは複数を、軟組織を含んでなるインプラントに接触させることができる。すなわち、インプラントの抗原性を低減するための6Mの尿素または他のカオトロピック剤、例えば4MのグアニジンHCl(清浄剤F);ウイルス、バクテリア、菌類、または他の残余の汚染物質を不活化するための1%の次亜塩素酸ナトリウム(清浄剤G);ウイルスおよびバクテリアを不活化するための1Nの水酸化ナトリウム(清浄剤H);滅菌剤としての6%の過酸化水素(清浄剤I);ヘキサン、エーテル、ジエタノールアミン(DEA)、トルエン、キシレン、ブタン、CO2(超臨界)、イソブタン、プロパン、アセトン、イソプロパノール、メタノール、ケトン、エーテル、脂肪族または芳香族炭化水素、HCl、気体HCl(清浄剤J);および任意の望ましい割合でのF、G、H、I、Jの混合物である。当業者であれば、種々の清浄剤が使用可能であり、あるいは上述の洗浄剤の混合が可能であることを、理解できるであろう。
繰り返すと、本発明の技法によれば、過酸化物を含んでいる清浄剤(清浄剤Iなど)を軟組織へと適用する前に、軟組織が引っ張られ、あるいはアルコールに接触させられる。同様に、過酸化物を含んでいる清浄剤を軟組織へと適用した後に、軟組織を引っ張り、あるいはアルコールに接触させてもよい。
本発明のプロセスにおいて使用するために適したアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール(イソプロパノールを含む)、およびブタノール(イソブタノールおよび第3ブチルアルコールを含む)が挙げられる。現在のところ、イソプロパノールが好ましい。アルコールは、約0.1%〜約100%、あるいは約5%〜約95%、あるいは約10%〜約80%の範囲の好ましい濃度を有する溶液または混合物にて供給できる。初期の接触段階におけるアルコールの濃度を、後の接触段階における濃度よりも高くすることが考えられる。好ましいアルコールは、低い分子量(例えば、約32g/モル〜約360g/モルの範囲にあり、あるいは約61g/モル、あるいは約90g/モル、あるいは約120g/モル、あるいは約240g/モル、あるいは約360g/モル以下の分子量を有するアルコール)および/または本発明のプロセスにおいて使用される実施形態の作業条件を下回る融点を有するアルコールである。アルコールの代わりに、例えばポリオールであるが、他の保護剤を使用することが考えられる。好ましいポリオールは、比較的低い分子量(例えば、約32g/モル〜約360g/モルの範囲)を有するポリオールである。
本発明のプロセスにおいて使用することができる酸化滅菌剤としては、過酸化物、酸化物、次亜塩素酸塩、過カルボン酸、およびオゾンが挙げられる。本発明のプロセスにおける使用に好ましい過酸化物は、過酸化水素である。酸化滅菌剤は、約1%〜約10%、あるいは約2%〜約8%、あるいは約6%〜約7%の範囲の好ましい濃度を有する溶液または混合物にて供給できる。好ましくは、約1%〜約10%の濃度範囲を有する過酸化水素の水溶液が供給される。適切な暴露時間および温度は、上述されている。
インプラントを酸化滅菌剤に接触させた後で使用するために適したすすぎ用流体としては、アルコール、ポリオール(例えば、グリセロール)、アセトン、生理食塩水、水、およびこれらの混合物が挙げられる。すすぎ用流体を、水溶液として供給することができる。現時点においては、1〜8個の炭素原子を有する一価アルコールを含んでいる水溶液が、すすぎ用流体としての使用に好ましい。
以上概括したプロセスの仕様を、本明細書の開示から離れることなく変更できることを、当業者であれば理解できるであろう。所与のインプラント組織の要件に応じて、本明細書において示唆したもの以外の清浄剤、溶液、または濃度を、使用することが可能であり、高められた圧力と低められた圧力との間のサイクルの数、繰り返しの時間、圧力上昇および圧力低下のレベルおよび気間を、変更することが可能である。この手順において清浄化される材料としては、これらに限られるわけではないが、腱、靱帯、筋膜、関節全体、硬膜、皮膚、心膜、心臓弁、血管、神経組織、粘膜下組織(例えば、腸組織)、軟骨、ミネラル化させ、脱ミネラル化させ、あるいは部分的に脱ミネラル化させた皮質骨、ミネラル化させ、脱ミネラル化させ、あるいは部分的に脱ミネラル化させた海綿骨、金属、セラミクス、およびポリマーなどの非組織材料、ならびに以上の材料のいずれかを含むアセンブリ、組み合わせ、または混合物などの組織が挙げられる。
過酸化物からのダメージに対する保護剤としてアルコールを使用するプロセスの変種を、より薄い種類の軟組織、例えば血管および心臓弁などの心臓血管組織、心膜、または真皮を処理するために適用することができる。より薄い組織の種類は、接触時間、圧力、および運動学的拘束の大きさについて低減を必要とするかもしれない。さらに、圧力変化の速度、運動学的拘束の種類、および化学剤の濃度の種類を、調節することができる。
本発明のプロセスは、本明細書に開示のとおりインプラントの処理を促進するためにいくつか考えられる代案としてのプロセス、および上記概括した工程を実行するためにいくつか考えられる代案としての装置を、当業者に対して示唆する。すなわち、例えば本発明による1つの実施形態において、図2に概略的に示したような装置を、本発明の技法を使用する周期的灌流不活化プロセスを半手動で実現するために使用することができる。蓋210およびトラフ220を有するチャンバ200が、インプラントの周期的灌流不活化に合わせて構成されている。一連のボルト240を締め付けることができる一連の柱230が、蓋210をトラフ220へと固定するために設けられている。処理対象のインプラント材料を受け止めるため、格子250がチャンバ200の内側に設けられている。一連のアクセス・ポート260、261、262、263が、蓋210を貫いて設けられている。アクセス・ポート260は、滅菌水投入ラインである。アクセス・ポート261は、清浄剤を含んでいる溶液など、他の流体のための投入ラインである。アクセス・ポート262は、真空ラインである。アクセス・ポート263は、圧力入力のためのラインである。さらに、温度プローブの挿入のため、ポート264が設けられている。ポート265は、チャンバ200に壁面225に作りつけられた音波装置へと動力を供給するためのポートである。ポート266は、排水口である。したがって、図2に示したような装置を、軟組織を含んでなるインプラントを不活化すべくアルコールおよび過酸化物が使用される周期的灌流不活化プロセスを実行するために使用することができる。
図3を参照すると、自動化または半自動化された装置300を、処理プロセスを実行するために使用することができる。本明細書の開示によって、プログラム可能なロジック・コントローラが、清浄化サイクルの所定の時点においてバルブまたはソレノイド301a〜hを作動または停止させる。インプラントは、密封された反応チャンバ310内に配置される。大気への通気320が、フィルタ処理済み空気の導入および除去を可能にすべく設けられており、ドレイン321が、廃棄物または溶媒を除去すべく設けられている。清浄剤(例えば、アルコール溶液または過酸化物溶液)が、化学品混合タンク330から反応チャンバ310へと導入される。化学品混合タンク330は、タンク330内に真空が形成されることがないよう、フィルタ付きの大気への通気335を有している。化学品供給ライン340が、共通の管路345を介して流体リザーバ341から化学品混合タンク330へとつながっている。プログラム可能に制御されるポンプ350が、適切に混合された流体をタンク330から反応容器310へと送出すべく運転される。真空または負圧が、真空ポンプ365によって負圧の源が生成されている真空レシーバ・タンク360によって、反応容器310へと加えられる。真空リザーバ360を備えることは、真空ポンプ365などによって負圧を徐々に形成する必要なく、既知の大きさの真空を基本的に瞬時に反応チャンバ310へと加えることができるため、望ましい。真空レシーバ・タンク360を、反応タンク310が正圧のもとにあるときに、ポンプ365によって排気することが可能である。滅菌水、生理食塩水、または同様の水溶液の源が、貯蔵タンク370に設けられる。貯蔵タンク370は、タンク370内に真空が形成されることがないよう、フィルタ付きの通気375を有している。反応チャンバ310への導入のために、水溶液を化学品混合タンク330へと迅速に注入するため、ポンプ376が設けられている。タンク370からの水を、最初に化学品混合タンク330へと導入することなく、反応タンク310へと直接導入してもよいことを、当業者であれば理解できるであろう。正の圧力が、反応タンク310に無菌性を維持するため、フィルタ処理済みガスの圧縮機によって加圧される圧力タンク380に蓄えられる。実施においては、適切にプログラムされたコンピュータまたはプログラム可能なロジック・コントローラが、組織の投入を可能にすべく反応チャンバ310の通気を可能にする。次いで、チャンバが密封され、すでに概括したとおり流体が導入および除去され、インプラントの清浄化プロセスが完了する。さらに、装置の内部のフィルタ処理済みの無菌領域を迅速に滅菌するため、フィルタ処理済みの無菌蒸気322の源が設けられている。また、システムの温度を迅速に平衡させるため、熱交換手段323を備えることが望まれる。望まれる内部の温度に応じ、水冷、空冷、窒素による冷却、水による加熱、熱電対による加熱、または同様の手段が、すべて受け入れ可能である。
インプラント材料の浸透による不活化に続いて、このインプラント材料を最終の梱包に配置することができる。好ましくは、これは、外来のバイオバーデンを持ち込むことがないよう、無菌の環境で実行される。最終の加工済み移植片のそれらの最終の未封止の梱包への無菌の梱包を保証するため、インプラントが、気相の過酸化水素/過酢酸または同様の気相の滅菌環境に暴露される。次いで、インプラントを保存または医師への出荷のために無菌場から取り出すときに汚染が生じることがないようにするため、梱包が閉じられる。次いで、密封された梱包が、随意により、組織の特性に悪影響を及ぼすことがないと分かっているレベルのガンマまたは他の種類の放射(例えば、約3.0Mrad未満、または表面の滅菌を達成し、残余の大きなゲノム生物の内部破壊を保証する短い時間期間にわたる;ただし、本明細書において説明したように清浄化手順またはその変種によって深い滅菌が達成されており、このような内部処理は一般的には不要である)にさらされる。電子ビームへの暴露およびエチレンオキシドへの暴露など、他の表面および冗長の内部無菌化方法を、それによって毒性または望ましい生物学的活動の減少がもたらされない限りにおいて、この段階で実行してもよい。
本明細書に定めるプロセスのさらなる向上として、所望の生物活性の灌流を備えるインプラント材料の製造のための能力がある。したがって、清浄剤との接触の後のすすぎ工程において、所望の抗生物質、抗感染薬、または他の生物学的に活性な薬剤を含んでいる溶液または混合物を、抗生物質または他の所望の生物活性物質を清浄化および不活化済みの組織へと注入するために、使用することができる。これに代え、あるいはこれに加えて、骨形成タンパク質、軟骨由来の成長因子、組織成長因子、天然(自家移植片、同種移植片、または異種移植片)または組み換え体、などのこの技術分野において公知の成長因子を、インプラントへと灌流させることができる。一つの好ましい実施形態においては、プラスミド、ウイルスまたは直鎖DNAまたはRNAベクター形式の表現できる核酸を含んでいる溶液が、インプラントへと注入される。核酸は、好ましくは、組織の性質に応じて、適切な成長因子(例えば、BMP、TGF−β、CDMP、VEGF、IGF、FGF、または他の公知の任意の成長因子)、抗腫瘍薬、ペプチドまたはタンパク質(P15)をエンコードしている。核酸は、DNA、RNAであってよく、あるいはそれらの組み合わせであってよく、随意により合成ヌクレオチドまたは核酸の浸透および濃度を追跡するためのマーカを含んでいる。さらに、脱ミネラル化した骨マトリクス(DBM)を微細に砕き、その水和スラリーまたは水性混合物を形成することによって、インプラントを、成長因子の複合混合物を含んでいるDBMで灌流することができる。あるいは、本発明の技法を使用し、埋め込みに先立って成長因子を露出するためにインプラントを部分的に脱ミネラル化することができる。同様に、骨髄または骨髄抽出物を、適切なインプラントのマトリクスへと灌流させることができる。これに代え、あるいはこれに加えて、抗生物質、がん治療、および回復または治療の様相のためのシーケンスを含んでいる遺伝子を、インプラントへと灌流させることができる。
本発明の技法のさらなる実施形態においては、清浄化プロセスが、組織から病原の生物または状態を取り除くべく適用される。これは、例えば、がん細胞の成長によって破壊された病気の下顎または他の任意の骨または組織を取り去ることによって達成できる。自家移植片の部位が、生体外で清浄化および不活化され、成長因子、核酸エンコードの成長因子、抗生物質、抗腫瘍剤、抗炎症剤、または他の任意の所望の生物学的に活性な物質で灌流され、次いで発病していない組織をもたらすために、同じまたは別の患者へと再び埋め込まれる。
以上の詳細な開示から理解できるとおり、本発明のプロセスは、インプラント製造の任意の段階において実行することができ、軟骨の除去などの特別な準備、または穴の穿孔などのインプラントを傷める可能性のある工程を、必要としない。本発明のプロセスは、自動化され、制御され、あるいは検証される組織処理手順へと容易に取り入れることができる。したがって、本発明のプロセスは、品質管理、在庫管理、および効率性の向上のために好適である。
追加の利点として、一つの実施形態においては、清浄化プロセスによって、そうでなければ骨マトリクスまたは組織マトリクスの劣化または自己分解をもたらしうる内生の酵素が、効率的に除去、希釈、または変性される。これは、例えば、本明細書に開示されるように組織を洗浄剤、還元剤(例えば、プロテイン・ジスルフィド結合の破壊のためにこの技術分野において知られているジチオスレイトール、DTT、など)、過酸化物、イソプロパノール、などへと繰り返し暴露することによって達成される。内生の酵素の活性の除去、希釈、または変性の結果として、インプラントを凍結または凍結乾燥させる必要性が低減または除去され、大きな利点がもたらされる。インプラント組織を凍結状態に保つことは困難であり、同種移植片、自家移植片、または異種移植片の骨インプラントを含む組織インプラントを凍結乾燥(凍結乾燥)させることは、低速かつ高価である。そのような組織を本発明のプロセスに従って処理し、次いで組織を無菌の環境または梱包に保管することで、組織の凍結および凍結乾燥につきもののコストおよび時間遅れが除去される。
本発明のさらなる態様として、インプラント、とくには腱などの軟組織を含んでいるインプラントへと運動学的拘束(引っ張り、圧縮、または不動化など)を加えるためのプロセスおよび装置が提供される。腱、骨−腱−骨の移植片、および他の軟組織などの軟組織を含んでいるインプラントが、1つまたは複数の洗浄剤との接触を含んでいる処理プロセス(例えば、清浄化、不活化、および/または滅菌)にさらされるとき、処理プロセスの少なくともいくつかの部分の最中にインプラント(とくには、軟組織)に引っ張りを加えることによって、インプラント(とくには、軟組織)へのダメージを軽減できることが見出された。軟組織へと引っ張りなどの運動学的拘束を加えることによって、処理プロセス(または、その個々の工程の1つまたは複数)によって引き起こされるダメージを軽減、最小化、またはなくすことができる。さらに、軟組織へと引っ張りを加えることで、処理プロセスの有効性および/または一貫性を向上させることができる。
骨および軟組織インプラントのための従来からの処理方法としては、例えば、米国特許第5,333,626号、第5,512,662号、第5,556,428号、第5,769,893号、第5,797,871号、第5,976,104号、第6,024,735号、第6,293,970号、ならびに他の特許または刊行物に記載の処理方法が挙げられる。従来からのプロセスにおいては、軟組織を含んでなるインプラントが、インプラントを引っ張ることなく、あるいはインプラントに運動学的拘束を加えることなく、処理チャンバに入れられている。このような従来からのプロセスにおいては、プロセス中の軟組織の位置および向きが、プロセスにおいて使用される清浄剤、器具、または方法によって変化させられる可能性がある。この位置または向きの変化によって、別々のインプラント試料が(例えば、組織が重なり合い、あるいは組織が自身の周囲に巻き付く結果として)清浄剤へと異なって暴露される可能性があるため、別々のインプラント試料の間の一貫性の欠如につながる可能性がある。また、組織の一領域が外側に位置するがゆえに過剰に暴露されうる一方で、組織の他の領域が、内側において丸められ、先細りにされ、あるいは不適切に拘束され、清浄剤への暴露をあまり受けないため、単一の組織についても一貫しない清浄化および清浄剤の接近が引き起こされる可能性がある。従来からの滅菌プロセスを軟組織において使用することから生じうる他の問題は、軟組織が縮む可能性があり、後に術後の過剰な緩みを引き起こす可能性がある望ましくない外観的および構造的変化につながる点にある。軟組織の処理におけるさらに他の懸念は、炎症である。組織の炎症が、種々の清浄剤と血液、脂肪、または軟組織内の他の材料との相互作用によって、引き起こされる可能性がある。例えば、過酸化物と内在の材料との反応が、組織の膨潤を引き起こす可能性があり、組織の損傷につながる可能性がある。これらの反応は、過酸化物を表面の傷へと振り掛けて適用したときに観察されるように、一般に発泡反応と称される。過酸化物の反応の残余の副生成物が、最終的に術後の炎症反応につながる可能性がある。組織が引き伸ばされていない場合(処理の際に拘束されていない場合)、泡および副生成物が組織の内部に捉えられる可能性がより大きいため、発泡反応がより害を引き起こす可能性がある。
本発明のプロセスおよび装置は、上述の問題の1つまたは複数を低減、最小化、またはなくすことができる。清浄剤を使用する処理プロセスの最中に軟組織を含んでなるインプラントに張力を加えることで、チャンバ内での軟組織の位置を所望の様相に維持でき、清浄剤が位置を変化させるための充分な力で加わる可能性が小さくなる。清浄剤がより均一かつ予想されたとおりにインプラント(とくには、軟組織)に接触するため、別々のインプラント間および単一のインプラント内により一貫性が存在ことになるであろう。軟組織が縮む傾向が少なくなり、結果として、望ましくない外観を有するインプラントが生成される可能性が小さくなる。処理プロセスの最中に軟組織へと張力を加えることで、発泡作用が組織の内側にとどまってより損傷を引き起こすのではなく、引き伸ばされた組織から発泡作用が逃げ出す機会がより大きくなるため、内部の発泡反応からの炎症および損傷を減らすことができる。さらに、処理の最中に加えられる張力が、従来からの処理の際の移植片の収縮または縮みによって引き起こされうる術後の緩みから、移植片を保護する。
運動学的拘束を加えるための装置であって、部品が少なく、使用が容易であり、直面するであろう化学品および状況に耐えることができる装置を提供することが望ましい。装置において、動かさなければならない拘束または部品の数が過剰であることは、望ましくない。さらに、装置は、使用および清浄化の環境に耐えることができる材料から作られなければならない。例えば、装置が、約120℃(約250°F)の領域に温度を有するオートクレーブ内の温度に耐えることができることが望ましい。オートクレーブにおいては、蒸気が装置の種々の部品へと接触して滅菌が行われる。したがって、装置が多数の部品、ねじ、狭い角、または小さな造作を有している場合、装置のこれらの部品のすべてを再び使用することができるようにオートクレーブが適切に殺菌を行えるかどうか、確実でなくなる。
運動学的拘束を加えるための装置は、組織の大部分または実質的にすべてを、処理プロセスにおいて使用される清浄剤へとさらすように設計されなければならない。装置が、組織のかなりの量を覆ってしまうこと、または処理プロセスの際に清浄またはすすぎ用の溶液の流れを妨げてしまうことは、一般に望ましくない。
装置は、軟組織そのものからなるインプラント、ならびに軟組織および骨(または、他の比較的硬い材料)を含んでいるインプラントとともに使用されると考えられる。プロセスおよび装置は、腱または靱帯などといった軟組織単独へと、さらには腱の両端に骨ブロックを有している骨−腱−骨のインプラントなど、軟組織および骨を含んでいるインプラントへと、張力または他の運動学的拘束を加えるために用意される。本発明のプロセスおよび装置における使用に適したインプラントの多様性に鑑み、装置の種々の実施形態が考えられ、本明細書において説明される。それら種々の実施形態は、インプラントを装置へと固定するやり方、および/または運動学的拘束の加え方において相違してよいが、それら実施形態は、軟組織を含んでなるインプラントへと運動学的拘束を加えて当該インプラントへの処理プロセスを改善するという共通の用途を有している。
運動学的拘束を加えるために適した装置としては、インプラントの1つまたは複数の部位をしっかりと保持するように構成されたファスナ、および2つのファスナの間に配置された調節可能なスペーサ部材が挙げられる。ファスナは、ブロック、クリップ、フック、ピン、ループ、ブラケット、ラチェット、またはこれらの手段のいずれかの組み合わせなど、インプラントの硬い端部または柔らかい端部を固定するために適した任意の装置であってよい。ファスナそのものが、インプラントをファスナへと保持するためのクリップを備えることができ、あるいはファスナが、ジップ・タイなどの他の装置と組み合わせて使用されてもよい。後述の実施形態においては、ジップ・タイが、インプラントの端部を保持するために使用できる手段の例である。インプラントにおいて自然に生じる付着(例えば、腱と骨ブロックとの間の付着)が保存されるため、骨ブロックをジップ・タイで保持することができ、それによってインプラント全体が所定の位置に保持される。ジップ・タイは、市販のジップ・タイ・ガンによって適用することができる。ジップ・タイ・ガンを、或る荷重が加えられ、次いで解放されるように使用することができ、ジップ・タイの端部が断ち落とされる。ファスナは、プラスチック、金属、セラミクス、複合材料、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される材料で製作することができる。
好ましくは、スペーサ部材は弾性部材であり、ばね、ラック、レバー、リンク、柔軟または剛なプラスチック部材、ならびに一体または多部品の部材からなる群より選択できる。代案として、スペーサ部材が、ファスナが配置される軸であってよい。
この装置は、インプラントの清浄化、不活化、および/または滅菌のためのプロセスにおいて有用であるだけでなく、回復、処理、梱包、出荷、保存、インプラントの手術前の準備、インプラントの手術中の準備、およびインプラントの手術中の取り扱いのうちの1つまたは複数の工程を通じて、インプラントへと運動学的拘束をもたらすために有用であり、そのように構成することができる。
装置が、軟組織を含んでなるインプラントへと張力を加えるために使用されるとき、腱へと加えられる張力は、望ましくは約3〜約5重量ポンドの間(約13〜約22ニュートンの間)であり、あるいは約1〜約10重量ポンド(約4.5〜約45ニュートンの間)であり、あるいは約0.5〜約20重量ポンド(約2〜約89ニュートンの間)である。したがって、組織テンショナは、上述の範囲の1つまたは複数の張力の量を加えるように設計されなければならない。
組織テンショナに使用される材料は、強度があり、生物学的に不活性であり(換言すると、生物学的組織と反応しない)、使用および清浄化において想定される化学および温度環境に耐えることができなければならない。組織テンショナに適した材料としては、ポリマー、セラミクス、および耐蝕性の金属が挙げられる(これらに限られるわけではない)。好ましい金属としては、ステンレス鋼、チタニウム、およびニッケル主体の合金などの合金、あるいは鋼を銅、ニッケル、クロムでめっきして得られる材料が挙げられる。1つの好ましい実施形態においては、軸、つまみねじ、ばね、および蝶ナットが、ステンレス鋼で作られ、ファスナおよび端部ピースが、高温プラスチックであって想定される用途に見合って充分に硬いDELRIN樹脂で作られる。さらにDELRINは、適切な引っ張り強度および温度耐性を有しており、生物学的に不活性である。他の好ましい実施形態においては、処理、梱包、出荷、保存、および手術前の準備の工程のうちの1つまたは複数の間ずっと移植片にテンショナを随伴させておくことができるよう、テンショナのすべての部品が、ステンレス鋼、または他の一般的な金属板、またはプラスチックなど、適切に安価な滅菌可能材料から作られる。
運動学的拘束を加えるための装置の例として、軟組織を含んでなるインプラントへと張力を加える組織テンショナを説明する。図4が、腱を含んでいるが骨は取り付けられていないインプラントのために設計されたテンショナを示している。すなわち、インプラントの両端(単に、インプラントの張力が加えられようとする部位の両端でよい)が軟組織である。したがって、この組織テンショナは、2つのファスナ402および403を有する軸401を備えており、2つのファスナのそれぞれが、2つの別個のファスナ半分402a、402b、403a、および403bを有している。ファスナ半分は、好ましくはDELRIN樹脂または他の適切なポリマー材料で作られている。インプラントの端部が、2つのファスナ半分402a、402b、403a、および403bの間に配置され、これら端部を2つのファスナ半分の間にしっかりと保持するため、適切な締め付け機構が使用される。例えば、ジップ・タイを、ファスナ半分の溝409においてファスナ半分の周囲に巻き付けることができ、これらファスナ半分を一体に結び付けることができる。2つのファスナ半分が、組織へと締め付けられて、組織を堅固に保持する。ファスナ半分402a、402b、403a、および403bは、噛合する歯を有しているが、この歯は、間を清浄剤が移動してインプラントの端部に接触できるようになっている。
ばね404が、軸401に沿って配置されている。インプラントの端部がファスナ402および403へと固定された後、作業者がファスナ403を引っ張る。ファスナ403は、つまみねじ405(手によって締め込むことができ、手によって緩めることができるよう、背の高い頭部および軸を備えているねじ)を受け入れるように構成されている。ファスナ403がファスナ402から離れるように引かれるとき、他方のファスナ402が組織によって引っ張られるため、ばね404が押される。ばね404が、片側においては軸401の中央のストッパ406において、他方の側においてはファスナ402によって、圧縮される。作業者がファスナ403を引いたとき、組織テンショナが、腱を通じて力を伝達し、他方のファスナ402を引っ張って、ばね404を圧縮する。ばねの力は、腱の張力によって対抗される。次いで、組織が所望の張力まで引き伸ばされたならば、つまみねじ405によってその位置に固定をすることができる。ばねが圧縮されることによって所望の張力に達したとき、作業者は、つまみねじ405を軸401の溝411に係合するよう回転させて、ファスナ403を引っ張りの位置に保持することによって、テンショナを固定する。つまみねじ405が機能すると、ファスナ403がさらに引き伸ばされることはなく、あるいは引っ張りの少ない位置へと引き戻されることはない。
図4に示した組織テンショナは、図の最も左方に端部キャップ408を備え、右方に蝶ナット410を備えている。端部キャップ408および蝶ナット410は、組織への張力の供給においては機能しないが、組織テンショナの使用を作業者にとって便利にするために存在している。
端部キャップ408は、軸の端部が露出しないよう、またテンショナが使用されていないときにファスナ403が軸から脱落することがないよう、設けられている。蝶ナット410は、ファスナ402が軸401から押し出されることがないよう、ファスナ402のための後方ストッパとして設けられている。
ファスナ402(ばね404と接触している)は、最初は(組織テンショナが使用される前は)ばね404によって蝶ナット410に向かって押されている。ファスナ403(つまみねじ405を有している)は、つまみねじ405が係合していないとき、軸に沿って前後に自由に移動できる。軸に沿ったファスナ403の移動に対する抵抗は、組織を所定の位置においての移動を容易にするため、最小限でなければならない。
インプラントが2つのファスナ402および403上の所定に位置に固定されたとき、テンショナは、その時点において何ら機能していない。次いで、作業者が、ばねに対して所望の圧縮が達成されるまでファスナ403を引っ張るが、これは、所望の張力がインプラントへと加えられることを意味している。この時点で、つまみねじ405が所定の位置に設定され、ファスナ403をこの位置に保持して、所望の張力を維持する。このようにして、インプラントを所定の位置に備えた組織テンショナを、滅菌プロセスへとさらす準備ができる。例えば、組織テンショナおよびインプラントを、上述のような処理のために、図2または図3に示した処理チャンバに配置することができる。
軸401は、意図する範囲の受け入れ可能なインプラントの引っ張りに対応するため、充分に長くなければならない。長さは、インプラントのサイズについて予想される範囲、または許容される範囲に対応できるようにされる。軸は、処理されようとする最長の腱を引き伸ばした場合に、依然としていくらかの余地が残されるよう、充分に長くなければならず、処理されようとする最短の腱が取り付けられたときに、底付きすることがないよう、充分に短くなければならない。
図5は、骨−腱−骨の移植片(すなわち、両端に骨または硬い材料を有しているインプラント)に合わせて設計されたテンショナを示している。テンショナは、軸501および2つのファスナ502および503を有している。使用される腱が比較的短い腱であるため、比較的短い軸を有している(例えば、アキレス腱に合わせて設計されたテンショナに比べて)。ばね504が、軸501に沿って配置されている。インプラントの骨ブロックが、ファスナ502および503にセットまたは配置されるが、ファスナ502および503は、インプラントの両端の相違ゆえファスナ402および403と相違している。図5の組織テンショナにおいては、図4の組織テンショナにおいてファスナへと取り付けられる軟組織ではなく、骨ブロックあるいは他のまたは硬い材料が、ファスナ502および503へと取り付けられると考えられる。骨ブロックは、ファスナ全体を巡って延びる溝509へと嵌まり込んで骨ブロックをファスナ502および503へと効果的に結束するジップ・タイなど、適切な固定機構によってファスナ502および503へと固定される。
ファスナ502および503の表面は平坦であるが、清浄剤がインプラントのファスナと接触している部位の直下へと達することができるよう、運河を有している。骨ブロックがファスナから滑り落ちることがないよう、骨ブロックと接触するように構成された出っ張りまたはリップ507が、テンショナの中央に向かって設けられている。
ばね504が、軸501に沿って配置されている。作業者がファスナ503を引っ張ると、他方のファスナ502が組織によって引っ張られるにつれて、ばね504が圧縮される。組織が固定された後、作業者がファスナ503を引っ張ると、組織テンショナが、腱を通じて力を伝達し、他方のファスナ502を引っ張って、ばね504を圧縮する。ばねの力は、腱の張力によって対抗される。次いで、組織が所望の張力まで引き伸ばされたならば、つまみねじ505によってその位置に固定をすることができる。したがって、つまみねじ505がねじ込まれ、軸501の溝511に係合する。
充分な張力に到達し、ばねが充分に圧縮されると、作業者は、つまみねじ505を回転させることによってテンショナを固定する。ひとたびつまみねじ505が係合すると、フファスナをどちらの方向にも動かすことはできない。
テンショナは、つまみねじ505、軸501、最も左方の端部キャップ508、ファスナ502および503、蝶ナット510、軸501に被せられたばね504、ならびに軸501の中央のストッパ506を備えているが、これらはすべて、図4の同じ装置に関して説明したとおりに機能する。
このようにして、インプラントを所定の位置に備えた組織テンショナを、滅菌プロセスへとさらす準備ができる。例えば、組織テンショナおよびインプラントを、上述のような処理のために、図2または図3に示した処理チャンバに配置することができる。
軸501は、移植片の認容可能な引っ張りの全範囲に対応できるよう、充分に長くなければならない。長さは、移植片のサイズについて予想される範囲、または許容される範囲に対応できるようにされる。軸は、処理されようとする最長の腱を引き伸ばした場合に、依然としていくらかの余地が残されるよう、充分に長くなければならず、処理されようとする最短の腱が取り付けられたときに、底付きすることがないよう、充分に短くなければならない。
ファスナ502および503が、軸上に保持され、骨ブロックが、ファスナに保持される。ファスナは、好ましくはDELRIN樹脂または他の適切なポリマー材料で作られる。ファスナは、軸によって捕らえられ、軸上を前後にスライドする。骨ブロックは、図5において上方を向いている主たる平坦面へと置くことによって、ファスナへと取り付けられる。骨ブロックが、この平坦面に配置され、次いで2つのジップ・タイが、ファスナおよび骨ブロックの両者の周囲に完全かつしっかりと巻き付けられる。
組織テンショナは、テンショナによって加えられている引っ張りのレベルを知らせるため、視覚的な表示器を備えることができる。例えば、図5の文脈においては、作業者がファスナ503を引っ張るとき、推奨される引っ張りの点にほぼ達するときに、ファスナ502がばねの端部を覆うように通過し、ばねが視界から消えた点が、推奨される引っ張りレベル(推奨されるばね504の圧縮)が達成されたことを知らせる視覚的表示器である。
さらに幅広くは、視覚的表示器は、軸上のマーキングなどのように簡単であってよく、あるいはテンショナへと設計された機械的な造作であってよい。視覚的表示器は、軸へと記されたメモリを含むことができる。あるいは、視覚的表示器が、ファスナ502の段付きの穴およびこの穴の内側に進入するばね504を有してよい。ばねが、或る量だけ段付きの穴へと進み、途中のどこかで段に接触する。段は、蝶ナット510に最も近い側におけるファスナ502のうちは輪の小径の穴への移行によって形成されている。この穴の直径は、ファスナ502の中実部分がばね504に係合できるように充分に小さいが、軸501が通過できるように充分大きい。ばねの圧縮範囲の所望の点において、もはやばね504を見ることができない(ファスナ502によって隠される)よう、ファスナ502の端部が軸上のリップ507に達する。ばねを圧縮するとき、最終的にばねの全体がファスナの内側となる。これが、適切な量の圧縮が達成された旨の視覚的な表示器として機能する。これが、正しい点に達した旨の明快な視覚的表示器をもたらす。ばねがもはや見えていないとき、充分な引っ張りが存在している。未だばねが見えている場合、完全に充分な引っ張りはもたらされていない。
この視覚的表示器は、インプラントが最初に配置されたとき、テンショナがまったく機能しておらず、インプラントをその場に置きつつファスナ502が動かされたときに自動的に整列するため、種々の長さの移植片に対応できる。すなわち、ばねの圧縮がゼロであるゼロ点が、最初にインプラントが張力が加えられる前の長さまで引っ張られたところになる。引っ張りの長さにかかわらず、ばねの同じ程度の移動(すなわち、圧縮)によって同じ張力または力が加えられる。適切な長さまたは力のばねを選択することによって、張力のレベルを容易に判断および/または制御することができるテンショナをもたらすことができる。
視覚的表示器を、図5の文脈において説明したが、図4および6に示される装置ならびに他の装置へも適用が可能である。
図6は、アキレス腱に合わせて設計されたテンショナを示している。アキレス腱が比較的長い腱であるため、図6および7の組織テンショナに比べ、比較的長い軸601を有している。このアキレス腱テンショナにおいて、ファスナ602は、アキレス腱移植片の下部が骨ブロックを含んでいるものと想定されるため、BTB移植片に合わせて設計された組織テンショナ(図5)のものと同じである。あるいは、このファスナが、軟組織からなる移植片端部を保持するように設計された組織テンショナである図4に示したファスナの形態であってもよい。図6において、ファスナ602は、アキレス腱移植片の骨ブロックを縛り付けるために使用される。この組織テンショナは、ばね604、つまみねじ605、ストッパ606、出っ張り部607、端部キャップ608、溝609、および蝶ナット610を有しており、これらは図6および7に関して説明した同じ装置と同じ様相で機能する。ファスナは、好ましくはDELRIN樹脂または他の適切なポリマー材料で作られている。
ファスナ603は、アキレス腱およびアキレス腱を含んでなるインプラントの形状および構造を反映した別の設計を有している。アキレス腱は、足の付近においてかなり細く、ひも状であるが、腓筋を上るにつれて広くなり、かなり劇的に扇状に広がる。アキレス腱は、腓筋に達するときまでには、約2または3インチの差し渡しとなり、腓筋の周囲に巻き付いている。アキレス腱を含んでなるインプラントは、典型的には踵骨における腱で出発し、骨ブロックが、インプラントの一部として腱に同行するよう、典型的には踵骨から切り出される。インプラントは、典型的には、腓筋までの腱のすべてを含んでおり、したがって腓筋の周囲に巻き付く腱のより広い部分を含んでいる。
ファスナ603は、作業者がアキレス腱の上部の幅広い部分をこのファスナ603の周囲に巻き付けることができるよう、おおむね円形の形状を有している。結果として、腱の扇状に広がる部位の形状および幅が、ファスナ603によって維持される。ファスナ603には、他のテンショナと同様、作業者が腱をファスナへと(例えば、ジップ・タイによって)固定できるよう、溝が設けられており、腱が、内側および外側の出っ張り部の間に落とし込まれる。ファスナ603は、比較的高い壁、低い領域、およびもう1つの高い壁を有しており、ジップ・タイが、2つの高い壁の間を通過して、腱を所定の位置に拘束できる。さらにファスナ603は、清浄剤がファスナへと固定された腱の下方へと届くことができるよう、穴を有しており、これが組織への清浄剤の灌流を助けている。
アキレス腱テンショナに合わせて設計された特別なファスナ603は、他の特定のインプラント形状および寸法に合わせて設計できる他のファスナの典型である。当業者であれば、本明細書の開示にもとづいて、特定のインプラントにもとづく他のファスナを設けることができ、したがってそのようなファスナも本明細書の開示の技術的範囲に包含されることを、理解できるであろう。
さらに図6は、アキレス・テンショナに限られず、むしろ本明細書に開示されるあらゆる組織テンショナに適用できる他の特徴を示している。この図は、溝611を有する軸601を示しており、溝611が、つまみねじ605と係合するための歯612を備えている。つまみねじが歯と係合することによって、ファスナが、作業者によって配置された位置にとどまり、軸に沿って移動することがない。しかしながら、これらの歯612が必須の特徴ではなく、図6および7の組織テンショナが歯612がなくても機能できることに、気付くであろう。平坦面に対するつまみねじの金属対金属の接触が、つまみねじおよびファスナを所定の位置に維持するために充分であることが分かっている。さらに図6は、ファスナが軸の周囲で回転することがないようにするD字の軸を示している。ファスナ603も、ファスナ(したがって、腱)の回転が存在しないよう、その中央にD字形の穴を有している。軸は、D字形、多角形形状、キー溝が切り込まれてなる円形軸など、半径方向において非対称である任意の断面を有することができる。ファスナは、半径方向において非対称である軸に係合すべく、相互一致するように形作られた穴を有することができる。あるいは、軸の内側または外側が、より良好な前向きの係止およびより良好な固定をもたらすべくつまみねじを特定のすき間へと締め込むことができる畝または個々の段を備えることができる。あるいは、軸601の内部の溝611が、つまみねじ605を所定の位置に保持すべくさらなる摩擦をもたらすざらつきのある表面であってよい。
テンショナの他の実施形態を、さらに考えることができる。図7は、基本的に平たい金属片である板ばね704を使用する組織テンショナの実施形態を示している。板ばね704が曲げられたとき、板ばね704が、元の形状へと復帰しようとして、力を生み出す。このテンショナを使用するため、作業者は、最初にそれを曲げ、次いで骨ブロック(または、インプラントの両端)を直接板ばねの端部(または、随意により板ばねに取り付けられているファスナ902および903)へと取り付け、次いでテンショナを解放(曲げを止める)し、その結果、組織テンショナによってインプラントへと引っ張りが加えられる。この実施形態は、元の形状に復帰する傾向を有しており、この傾向が有用な力を生み出すべく利用される点で、弓に類似している。この設計は簡潔であるが、インプラントを取り付けるために2本以上の手を必要とする。この設計は、部品の数が少なく、簡単化された形状造作を有している。しかしながら、このテンショナは、おそらくは、インプラントのサイズの範囲に対応するために複数のサイズを必要とするであろう。また、作業者が、(所与のインプラントに対して)適切なサイズのテンショナを選択しなければならないであろう。さらには、作業者が取り付けを試みている最中に、テンショナが元の状態へと跳ね戻る恐れが存在する。インプラントを取り付ける際にこのテンショナを曲げられた状態に保持するため、或る種の固定具を設けることが考えられる。
図8は、組織テンショナについて他の代案となる実施形態を示している。軸801が、2つの部品801aおよび801bであり、一方が他方へと望遠鏡式に進入する。一方の部品801bが中空であって、他方801aが嵌まり込むすき間を有している。ばね804が、軸の2つの部品が一体に押されたときにばねが圧縮されるように、801bの中空部の内部に位置している。ばねが所望の程度まで圧縮され、所望の大きさの引っ張りが生み出されたとき、インプラントが、バンド805、タイ、または他の適切な固定機構によって、ファスナ802および803へと取り付けられる。作業者が、軸の2つの部品を一体に押すことを止めたとき、組織テンショナが、インプラントへと張力を加える。図7の実施形態と同様に、インプラントが組織テンショナへと完全に取り付けられる前に、テンショナを圧縮(張力を生成)しなければならない。図8は、ファスナ802および803を軸801に一体化できる旨を実証している。
図9は、組織テンショナについて他の代案となる実施形態を示している。張力をただ1つの軸において一方向に加える代わりに、この組織テンショナは、二次元に張力を加える。この組織テンショナは、例えば心膜および真皮といったシート状のインプラントにとくに適している。この組織テンショナは、2つの方向に(あるいは、2つの軸に沿って)張力が存在するよう、箱の構成を有している。このテンショナは、2部品からなる軸(それぞれの軸は、図8に示したテンショナに類似している)を4つ有しており、軸の1つの部品901aが、他方の部品901bへと望遠鏡式に進入するとともに、ばね904と係合する。穴902または或る種のフックを、縫合糸903によって組織をテンショナへと保持できるように、取り付けることができる。やはり、インプラントが組織テンショナへと完全に取り付けられる前に、テンショナが圧縮される(張力が生成される)。作業者がテンショナを解放すると、トランポリンと同様のやり方でインプラントのシートへと張力がもたらされる。
上述の説明によって示されたとおり、ファスナは、ブロック、クリップ、ループ、ブラケット、ラチェット、およびこれらの組み合わせの形態であってよい。ファスナは、一部品からなるファスナ(例えば、図5に示されているような)であってよく、複数の部品からなるファスナ(例えば、図4に示されているような)であってもよい。
以上の実施形態にもとづき、軸方向および半径方向の引っ張り、または任意の2または3次元の引っ張りの考え方へと拡張すべく、適切な組織テンショナを構築することが考えられる。
以下の実施例は、軟組織を含んでなるインプラントについて、そのようなインプラントを過酸化水素などの清浄剤によって処理することからのダメージを少なくするという、本発明のプロセスおよび装置の能力を実証している。これらの実施例は、軟組織(例えば、腱)を、それらの腱のコラーゲンに対する変化を観察することによって評価できると考えている。
ヒトの腱は、1型コラーゲンを含んでおり、その構造が、腱の生物学的および生体機械的特性をもたらしている。腱の構造における異常は、組織の遺伝的疾患(エーラー・ダンロス症候群、骨形成不全症)、後天性疾患(壊血病)、および機能的疾患(アキレス腱の自然断裂)につながっている。完全な1型コラーゲンは、高度のグリシンおよびヒドロキシプロリンの処理のおかげで、独特の主たる三次構造を有しており、コラゲナーゼ族からのものを除く大部分の酵素による劣化に対して耐性を有している。コラーゲンの構造が損傷すると、構造的ダメージを引き起こすだけでなく、酵素不安定性も変化する(化学的ダメージ)。したがって、生化学的手段による分子レベルでの腱の評価を、腱の完全性またはダメージを評価するための方法として使用することができる。さらに具体的には、不活化プロセスに関する種々の化学品への暴露の前および後において、分子レベルで腱を評価することが、それら化学品がインプラントにもたらす影響を特定する効果的な方法でありうる。
トリプシンは、完全なコラーゲン鎖に破断(変性において生じる破断など)を有している腱のみを消化することができるセリン・プロテアーゼ酵素である。したがって、腱の試料をトリプシンで処理することができ、消化の程度が、それらの試料におけるコラーゲンの破壊の程度を知らせるであろう。そのようなプロセスにおいて、消化された部分と消化されていない部分(天然のコラーゲン鎖)とを分離し、それぞれの部分から自由アミノ酸を解放するため、強力な酸で(例えば、6NのHClを使用して)加水分解することができる。酸の中和(例えば、1NのNaOHを使用する)に続いて、それぞれの部分におけるヒドロキシプロリン(コラーゲン中にのみ高濃度で存在するアミノ酸)のレベルを、比色法(例えば、クロラミンTの結合、および基質DABの色付き最終生成物への還元、など)によって評価する。次いで、所与の試料における変性されたコラーゲンのレベルを、トリプシンに可溶である部分とトリプシンに可溶でない部分との合計に対するトリプシンに可溶である部分の割合として表現できる。
以下の実施例においては、種々の処理の影響を比較するため、たいていは実施例において使用された同じドナーからの対照の(処理されていない)腱が含まれている。さらには、検定結果は、分析した腱の重量にもとづいて標準化されている。
(実施例1:清浄剤の評価)
腱の試料(軟組織)を、化学品から引き起こされるコラーゲンのダメージを判断するため、一連の化学品またはその組み合わせに暴露した。これらの化学品は、従来からの処理プロセスにおいて使用される清浄剤である。これら化学品がコラーゲン構造に及ぼす影響が、表1に示されており、より大きな数字はコラーゲンがより変性されることを表わしている。対照よりも大きな数字は、テスト対象の化学品に起因するコラーゲンのダメージを表わしていると考えられる。
これらの結果は、腱の試料を過酸化水素単独、または過酸化水素と他の化学品との組み合わせにさらすことで、腱の試料における変性コラーゲンの量の増加が引き起こされる(換言すれば、腱に対するコラーゲンのダメージが引き起こされている)ことを示している。さらに、処理用の他の化学品(SDS、Triton、アルコール)が、腱において同様の反応を引き起こしてはいないことが示されている。表1における「荷重あり」への言及は、化学品への腱の暴露の期間において腱に張力が加えられていることを指している。これらの結果は、腱へと張力を加えることによって、化学品からの腱へのダメージを少なくできることを示している。
これらの処理用化学品へと順次に暴露された3人のドナーからの組織に関する後の実験は、この観察を確認する傾向であった。
(実施例2:過酸化物への暴露時間)
過酸化物への暴露は、有効な滅菌方法である。しかしながら、過酸化物への暴露の時間が長くなると、腱のダメージの恐れも大きくなる。一般には、劣化時間というものが存在し、それを超えると、組織(コラーゲンを含む)の測定可能な劣化が存在し、それ未満であると、測定できる劣化は存在しない。3人の別個のドナーからの腱の試料を、過酸化水素に暴露し、コラーゲンの完全性を(上述のように)生化学的に分析した。結果は、一致するドナーにおいて処理前および処理後に存在する変性コラーゲンの比として表現される。このようにデータを表現することで、複数のドナーおよび複数の実験からの化学品の影響を一般化できる。得られた結果の見本の表現を、表2に示す。
この実施例は、過酸化物への暴露がコラーゲンのダメージを大きくするという実施例1からの観察を追認している。さらなる実験を、同じドナーにおいて、2つの異なる暴露時間で行った。長い方の暴露時間は、短いほうの暴露時間の2倍にした。結果(比として表現)が、表3に示されている。
これらの結果から、より長い過酸化物への暴露時間にさらされた腱の試料が、コラーゲンのダメージを受けることが確認された。さらに、この作用が暴露温度にかかわりないことが観察された。また、これらの結果は、暴露時間を短くすることによってコラーゲンのダメージを少なくできることを示唆している。さらに重要なことに、これらの実施例は、不活化を達成するために充分であるが腱に過剰なコラーゲンのダメージを引き起こすことがない暴露時間にわたって、軟組織を過酸化物に接触させることが望ましいことを示している。好ましくは、軟組織に過酸化水素などの酸化滅菌剤を、連続する約80分未満、あるいは連続する約60分以下、あるいは連続する約40分以下、あるいは連続する約20分以下、あるいは連続する約10分以下、あるいは約5分以下、あるいは連続する約60秒以下、あるいは連続する約45秒以下、あるいは連続する約30秒以下、あるいは連続する約20秒以下、あるいは連続する約15秒以下、あるいは連続する約10秒以下、あるいは連続する約5秒以下、あるいは連続する約2秒以下にわたって接触させる。
(実施例4:交互のアルコールおよび過酸化物への暴露)
この実施例は、或る継続時間にわたる過酸化物との接触を間欠的にし、あるいは区分けすることで、連続的な過酸化物との接触に比べてコラーゲンへのダメージを少なくできるという仮説を検証するため、過酸化物との接触の時間をアルコールとの接触で仕切ることの効果を評価する。本発明の発明者らは、それらの理論に制約されるわけではないが、他の仮説は、中間のアルコール洗浄が、一時的に組織を処置することによって組織のマトリクスを過酸化物による劣化から遮蔽することによって、保護効果をもたらすというものである。
軟組織の試料を、連続する処理にわたって、あるいは過酸化物への暴露がアルコール洗浄によって仕切られている区分けされた処置にわたって、過酸化物に暴露した。連続処理および区分けされた処理の両者について、過酸化物への累積の暴露時間は同じにした。さらに、一方が前記劣化時間よりも長く、他方が前記劣化時間よりも短い、2つの異なる累積暴露時間を評価した。すべてのサンプルについて、コラーゲンのレベルを比較した。
短い方の累積過酸化物暴露時間でテストされた試料においては、連続期間の方がコラーゲンのダメージがわずかに少なかったものの、連続処理および区切られた処理の後のコラーゲンのダメージは、充分に有意なほどには相違しなかった。しかしながら、長い方の累積過酸化物暴露時間でテストされた試料においては、区切られた処理からの試料が、連続処理からの試料よりも大幅に少ないコラーゲンのダメージを示し、区切られた処理が、累積過酸化物暴露時間が連続処理と同じであっても、コラーゲンを大きくは傷めないことが示された。一方で、短い接触時間は殺胞子効果が少なくなり、組織の不活化作用が少なくなることが分かった。
この実施例によって、アルコールおよび過酸化物との交互の接触が、そのようにされることなく等価な時間にわたって過酸化物に暴露される試料に対して、コラーゲンの保護をもたらすことが示された。この保護が、軟組織を含んでなるインプラントの効果的な不活化を、軟組織を過剰に傷めることなく可能にした。
(実施例5:張力下の試料の不活化)
この実施例は、区切られた処理の不活化効果および引っ張られた組織へのコラーゲンのダメージの軽減を評価する。この実施例は、さらに、区切られた処理の最中に試料へと張力を加えることの効果を評価する。3人の異なるドナーからの腱の試料を用意した。プロセスによる不活化について評価を行うための試料を、Bacillus stearothermophilusの胞子でスパイクした。すべての試料を、累積で60分間にわたって過酸化物に暴露した。最初の過酸化物への暴露の前、および連続する20分間の過酸化物への暴露の期間のそれぞれの後において、試料をイソプロパノール溶液に接触させた。
コラーゲンのダメージについてテストした試料において、引っ張りを加えた試料は、拘束をしなかった試料に比べてコラーゲンの劣化が有意に少なかった。さらに、不活化効果についてテストした試料において、累積で60分間の過酸化物への暴露期間は、充分な不活化を達成するために充分であった。
(実施例6:処理プロセス)
この実施例においては、軟組織を含んでなるインプラント、さらに詳しくは両端に骨ブロックを有している腱移植片を不活化するために、以下の処理プロセスを使用する。このプロセスは、腱および骨ブロックの両方を不活化する。
インプラントを、図5に示したものと類似の組織テンショナに取り付ける。腱へと張力を加え、下方のファスナを引っ張り位置に固定する。次いで、この引っ張られたインプラントを、周期的に増減される圧力のもとでいくつかの清浄剤をインプラントに接触させる手順によって不活化するため、適切な処理チャンバへと配置する。清浄剤は、水溶液として供給される。
インプラントを処理チャンバ内に配置した後、チャンバを洗浄剤の水溶液で、インプラントを溶液中に浸漬させるために充分なレベルまで満たす(この清浄剤および後続の清浄剤において、迅速な圧力サイクルを促進するため、いくらかの上部空間がチャンバ内に残されてもよい)。洗浄剤溶液は、Triton X−100または骨および軟組織の処理に通常使用されている他の市販の洗浄剤を、約6.67%の濃度(例えば約5%〜約8%といった他の濃度も使用可能であるが)で含んでいる。次いで、チャンバ内の圧力を、約48℃の温度(例えば約40℃〜52℃といった他の温度も使用可能であるが)にて周期的に増減させる。高められたときの圧力は、大気を上回ること約50PSIであり、例えば25PSIまたは75PSIといった他の圧力も使用可能であるが、一般的には、大気を上回ること約5PSI〜大気を上回ること約150psiの範囲にある。この高められた圧力が、約10秒間(あるいは、約1秒〜約20秒の範囲の時間)にわたって維持される。次いで、下げられた圧力が、約110秒間(あるいは、約30秒〜約5分の範囲の時間)にわたって加えられるが、この下げられた圧力は、大気圧を下回ること約12PSI(あるいは、大気圧〜大気圧を下回ること約14PSIの範囲の圧力)である。洗浄剤溶液における高低の圧力の10サイクル(あるいはそれ以上、またはそれ以下)の後、洗浄剤溶液がチャンバから取り去られる。
洗浄剤溶液の後、インプラントは、約85%(約70%〜約100%などの他の適切な濃度も使用可能であるが)の濃度のイソプロパノールの水溶液に浸漬される。イソプロパノール溶液がインプラントに接触する一方で、イソプロパノール溶液のインプラントへの灌流を促進するため、チャンバに迅速にサイクルする圧力が加えられる。チャンバ内の圧力が、約42℃の温度(あるいは、約40℃〜48℃の範囲の温度)にて周期的に増減させられる。高められたときの圧力は、大気を上回ること約50PSIであり、例えば25PSIまたは75PSIといった他の圧力も使用可能であるが、一般的には、大気を上回ること約5PSI〜大気を上回ること約150PSIの範囲にある。この高められた圧力が、約10秒間(あるいは、約5秒〜約20秒の範囲の時間)にわたって維持される。次いで、下げられた圧力が、約50秒間(あるいは、約20秒〜約220秒の範囲の時間)にわたって加えられるが、この下げられた圧力は、大気圧を下回ること約12PSI(あるいは、大気圧〜大気圧を下回ること約14PSIの範囲の圧力)である。高低の圧力の10サイクル(あるいはそれ以上、またはそれ以下)の後、イソプロパノール溶液がチャンバから取り去られる。
イソプロパノール溶液の後、インプラントは、約6.67%の濃度(約1%〜約10%の範囲の濃度も使用可能であるが)の過酸化水素、および約6.5%の濃度(やはり、約1%〜約10%の範囲の濃度も使用可能であるが)のTriton X−100の混合物を含んでいる水溶液に浸漬される。チャンバ内の圧力が、約48℃の温度(あるいは、約40℃〜約52℃の範囲の温度)にて周期的に増減させられる。高められたときの圧力は、大気を上回ること約50PSIであり、例えば25PSIまたは75PSIといった他の圧力も使用可能であるが、一般的には、大気を上回ること約5PSI〜大気を上回ること約150PSIの範囲にある。この高められた圧力が、約10秒間(あるいは、約1秒〜約20秒の範囲の時間)にわたって維持される。次いで、下げられた圧力が、約110秒間(あるいは、約30秒〜約5分の範囲の時間)にわたって加えられるが、この下げられた圧力は、大気圧を下回ること約12PSI(あるいは、大気圧〜大気圧を下回ること約14PSIの範囲の圧力)である。高低の圧力の10サイクル(あるいはそれ以上、またはそれ以下)の後、過酸化物/洗浄剤の溶液がチャンバから取り去られる。
過酸化物/洗浄剤の溶液の後、インプラントは、7サイクルの高低の圧力において、48℃の温度(あるいは、約40℃〜約52℃の範囲の温度)の水ですすぎ洗いされる。高められたときの圧力は、大気を上回ること約50PSIであり、例えば25PSIまたは75PSIといった他の圧力も使用可能であるが、一般的には、大気を上回ること約5PSI〜大気を上回ること約150PSIの範囲にある。この高められた圧力が、約10秒間(あるいは、約5秒〜約20秒の範囲の時間)にわたって維持される。次いで、下げられた圧力が、約20秒間(あるいは、約10秒〜約110秒の範囲の時間)にわたって加えられるが、この下げられた圧力は、大気圧を下回ること約12PSI(あるいは、大気圧〜大気圧を下回ること約14PSIの範囲の圧力)である。最後のサイクルの後、水が処理チャンバから取り去られる。
次いで、インプラントを、すでに詳しく述べたようにイソプロパノールの水溶液に接触させる。
次に、インプラントを、約6.67%の濃度(約1%〜約10%の範囲の濃度も使用可能であるが)の過酸化水素の水溶液に浸漬させる。チャンバ内の圧力が、約48℃の温度(あるいは、約40℃〜約52℃の範囲の他の温度)にて周期的に増減させられる。高められたときの圧力は、大気を上回ること約50PSIであり、例えば25PSIまたは75PSIといった他の圧力も使用可能であるが、一般的には、大気を上回ること約5PSI〜大気を上回ること約150PSIの範囲にある。この高められた圧力が、約10秒間(あるいは、約5秒〜約20秒の範囲の時間)にわたって維持される。次いで、下げられた圧力が、約50秒間(あるいは、約20秒〜約220秒の範囲の時間)にわたって加えられるが、この下げられた圧力は、大気圧を下回ること約12PSI(あるいは、大気圧〜大気圧を下回ること約14PSIの範囲の圧力)である。過酸化物の溶液での高低の圧力の20サイクル(あるいはそれ以上、またはそれ以下)の後、過酸化物の溶液がチャンバから取り去られる。
次いで、このインプラントを、すでに詳しく述べたとおり、7サイクル(あるいはそれ以上、またはそれ以下)の高低の圧力を通じて水ですすぎ洗いする。
次いで、インプラントを、約50%(約30%〜約70%などの他の適切な濃度も使用可能であるが)からのイソプロパノールの濃度を有しているアルコールの水溶液に浸漬させる。イソプロパノール溶液がインプラントに接触する一方で、イソプロパノール溶液のインプラントへの灌流を促進するため、チャンバに迅速にサイクルする圧力が加えられる。チャンバ内の圧力が、約42℃の温度(あるいは、約40℃〜48℃の範囲の温度)にて周期的に増減させられる。高められたときの圧力は、大気を上回ること約50PSIであり、例えば25PSIまたは75PSIといった他の圧力も使用可能であるが、一般的には、大気を上回ること約5PSI〜大気を上回ること約150PSIの範囲にある。この高められた圧力が、約10秒間(あるいは、約5秒〜約20秒の範囲の時間)にわたって維持される。次いで、下げられた圧力が、約50秒間(あるいは、約20秒〜約220秒の範囲の時間)にわたって加えられるが、この下げられた圧力は、大気圧を下回ること約12PSI(あるいは、大気圧〜大気圧を下回ること約14PSIの範囲の圧力)である。洗浄剤溶液における高低の圧力の10サイクル(あるいはそれ以上、またはそれ以下)の後、イソプロパノール溶液がチャンバから取り去られる。
次に、インプラントを、再び過酸化物の水溶液に浸漬させ、すでに詳しく述べたとおり、繰り返しの高低の圧力での20サイクルにわたって、過酸化物の水溶液に接触させる。
次いで、このインプラントを、すでに詳しく述べたとおり、7サイクル(あるいはそれ以上、またはそれ以下)の高低の圧力において水ですすぎ洗いする。
次に、インプラントを、すでに詳しく述べたとおり、50%(約70%〜約100%などの他の適切な濃度も使用可能であるが)のイソプロパノール濃度を有している水溶液に、再び接触させる。
次いで、このインプラントを、すでに詳しく述べたとおり、7サイクル(あるいはそれ以上、またはそれ以下)にて48℃の温度(約40℃〜約52℃の他の温度の可能であるが)で、水ですすぎ洗いする。次いで、水がチャンバから取り去られ、すすぎ洗いを繰り返すことができるよう、さらなる水が加えられる。インプラントをすすぎ洗いして清浄剤を除去するため、5回のすすぎ洗いが実行される(より多数回、または少数回のすすぎ洗いを実行してもよいが)。それぞれのすすぎ洗いは、高低の圧力のサイクルを同数または異なる数だけ含むことができ、例えばそれぞれのすすぎ洗いが、7回の圧力サイクルを含むことができる。
次いで、不活化されたインプラントが、チャンバから取り出される。このインプラントに、梱包および梱包後の滅菌など、さらなる工程を加えてもよい。
この手順に従って処理されたインプラントは、腱に対する過剰または認容できないコラーゲンのダメージを抱えることがないが、依然としてこのプロセスは、ヒトまたは動物のレシピエントへと埋め込むために適したインプラントをもたらすよう充分な不活化をもたらしている。この実施例は、不活化およびコラーゲン維持の両方の効果を、本発明のプロセスおよび装置によって達成できることを示唆している。
(実施例7:生体機械的評価)
この実施例は、あらかじめ成形した骨−腱−骨(BTB)の試料を過酸化物に接触させることによって処理することに関する機械的な評価を判断する。あらかじめ成形した15個のBTBを、実施例6のプロセスに従った2回の実行で処理し、イソプロピルアルコールとの接触が先行および後続する間欠的な過酸化物への暴露にさらした。処理に先立ち、試料を(図5に示した形式の)組織テンショナに取り付け、5ニュートンの張力を加えた。腱の試料の大部分について、寸法の測定結果を、テンショナへの取り付け後かつ処理前について記録し、処理後に再び記録した。試料をテンショナから取り外し、後の機械的テストのために保存するため、−80℃へと凍結させた。凍結に先立ち、試料を密封可能な梱包へと縦に折り畳むことなく配置するよう、注意を払った。さらに、試料に対して混練、マッサージ、または他の操作は行わなかった。
動的引き延ばしを、Instron Model 5865 Universal Materials Testing Machineを使用して実行した。試料に、変位制御のもとで25分間にわたって20ニュートンを加えた。しかしながら、アクチュエータを、0分、5分、および15分の時点において20ニュートンへの荷重制御のもとで動かした。20ニュートンの荷重が達成されると直ぐに、アクチュエータを再び変位制御へと切り替えた。予張力の工程の直ぐ後に、腱にInstron検査装置を使用して周期的荷重を加えた。試料のうちの10個について、静的な予張力の際に生じる伸びの量を評価するため、予張力の工程の際にデータを採取した。剛性を、10回目のサイクルの荷重変位曲線の傾きとして割り出した。1000サイクルの後、8つの試料に壊れるまで荷重を加えた。2つの試料には、それぞれ30,000および85,000サイクルの延長の周期荷重を加えた。
この一連の試料において観察された最大の動的伸びは、1.07mmであった。延長の周期荷重を加えた2つの試料のどちらも、疲労で壊れることはなかった。これら2つの試料の全伸びは、それぞれ30,000および85,000サイクルの後に2.06mmおよび0.90mmであった。予張力の工程において生じる伸びは、0.76±0.21mm(n=10)であると特定された。このデータは、伝統的な方法によって処理された予成形BTBの構造属性について集められた先のデータと、好ましく比較される。
(実施例8:残留殺菌剤)
残留の殺菌剤、とくには過酸化水素のレベルを、実施例6に概括したプロセスに従って処理した腱の試料について評価した。試料は、過酸化水素との接触の際、引っ張られていた。
4人のドナーからの腱を、BTB全体として評価し、あるいは中間物質における骨ブロックへと分割し、評価した。次いで、サンプルを、検査目的のための組織試料からの抽出化学品に従って処理した。次いで、我々の検証済みのテスト手順に従って、溶離液に最初に分光測光法によって、さらに従来からの過マンガン酸カリウム滴定によって、過酸化物の分析を加えた。溶離液は、平均で0.02〜0.003%の過酸化物を有していたが、このレベルは、細胞傷害性ではなく、通常の生理学的再形成プロセスと干渉しうるものでもない。さらに、すでに述べたように、これらの条件のもとで実質的に完全な不活化が観察されている。
(実施例9:組織学的分析)
本発明のプロセスのうちの1つを加えた3人のドナーからの腱の試料について、組織学的分析を行った。ドナー組織は、完全なBTBが成功裏の生体機械的テストを受けた後に得られたものである。この分析において、3人のドナーのそれぞれからの中間物質(腱の部分)を、骨ブロックから切り取り、ホルマリン中に固定し、埋め込み、ヘマトキシリン−エオシンで着色した。代表的な長手および断面試料を、これらのブロックから切り出し、光学顕微鏡で眺めた。これらの断面において具体的に調べられた特徴は、腱のデセルラライズ(decellularize)のための本発明のプロセスの効率性、およびコラーゲン構造の保存を含んでいる。
(実施例10:骨−腱−骨の移植片の動物レシピエントへの埋め込み)
この実施例においては、本発明のプロセスの一実施形態によって製造されて羊へと埋め込まれた骨−腱−骨の移植片(BTB)を評価した。膝蓋腱および関連の骨ブロックを含んでいる骨−腱−骨の移植片を、ドナー羊から得て、不活化済みのインプラントをもたらすべく実施例6に開示したプロセスに従って処理した。これらのインプラントを、生まれつきの前十字靱帯(ACL)を切除した後の6匹の羊の膝を再構成するために使用した。
この研究は、24週間にわたって続けられた。研究の際、種々の時点において非侵襲的な方法(歩行分析および膝の緩み測定)および侵襲的な方法(安楽死後の組織学的、病理学的、および破壊式機械的テスト)の両者によって、インプラントを評価した。膝の緩みを、手術後6、10、12、18、および24週間において、関節計を使用し、所定の荷重(15、20、および30ポンド)における前後の緩みとして評価した。対照用の測定として、緩みの測定を、手術前およびACL切除の直後についても得た。インプラントの病理学的観察を、選ばれた動物を安楽死させた以下の時点において記録した。すなわち、2つのインプラントについて6週間、2つのインプラントについて12週間、および6つのインプラントについて24週間である。病理学的観察は、手術した膝全体ならびに滑液および流入領域リンパ節の観察を含んだ。移植片(大腿骨および脛骨の挿入部位、中間物質)および流入領域リンパ節の詳細な組織学的観察を実行した。
歩行分析は、標準的な方法に従って処理されたインプラントに比べ、上述のインプラントを受容した羊の歩行に、知覚できる相違がないことを示した。膝の緩みの測定および破壊式の機械的なテストは、インプラントが過剰な緩みまたは弱点を有さないことを示した。組織学的および病理学的テストの結果は、両方の骨トンネルおよび中間物質における移植片の取り込みの成功へと進行する新たな骨の成長を示す積極的な再形成の特徴を示した。とくには、細胞、グルコース、および酵素のレベルについての滑液の分析が、活動的な再形成部位を示す変化を伴っており、手術なしの対照の膝との比較において相違を示した。これらの分析および結果は、本発明のプロセスを、軟組織への過剰なダメージを引き起こすことなく軟組織を含んでなるインプラントを不活化するために使用できることを、実証している。
本明細書において引用したすべての特許、試験手順、および他の文献は、優先権書類を含め、それらの開示が本発明と矛盾しない範囲において、それらの援用が許されるすべての管轄において、言及によって完全に取り入れられる。
本発明を、特定の実施形態を参照することによって説明および例示したが、本発明が本明細書に示されていない多数のさまざまな変種に役立つことを、当業者であれば理解できるであろう。これらの理由から、本発明の真の技術的範囲を判断する目的においては、添付の特許請求の範囲のみを参照しなければならない。
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