本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。図1において、感光性基板であるウェハWの法線方向に沿ってZ軸を、ウェハWの面内において図1の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハWの面内において図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。図1を参照すると、本実施形態の露光装置は、露光光(照明光)を供給するための光源1を備えている。
光源1として、たとえば248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源や193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源などを用いることができる。光源1からZ方向に沿って射出されたほぼ平行な光束は、X方向に沿って細長く延びた矩形状の断面を有し、一対のレンズ2aおよび2bからなるビームエキスパンダー2に入射する。各レンズ2aおよび2bは、図1の紙面内(YZ平面内)において負の屈折力および正の屈折力をそれぞれ有する。したがって、ビームエキスパンダー2に入射した光束は、図1の紙面内において拡大され、所定の矩形状の断面を有する光束に整形される。
整形光学系としてのビームエキスパンダー2を介したほぼ平行な光束は、折り曲げミラー3でY方向に偏向された後、1/4波長板4a、1/2波長板4b、デポラライザ(非偏光化素子)4c、および輪帯照明用の回折光学素子5を介して、アフォーカルレンズ6に入射する。ここで、1/4波長板4a、1/2波長板4b、およびデポラライザ4cは、後述するように、偏光状態切換部4を構成している。アフォーカルレンズ6は、その前側焦点位置と回折光学素子5の位置とがほぼ一致し且つその後側焦点位置と図中破線で示す所定面7の位置とがほぼ一致するように設定されたアフォーカル系(無焦点光学系)である。
一般に、回折光学素子は、基板に露光光(照明光)の波長程度のピッチを有する段差を形成することによって構成され、入射ビームを所望の角度に回折する作用を有する。具体的には、輪帯照明用の回折光学素子5は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、そのファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に輪帯状の光強度分布を形成する機能を有する。
したがって、光束変換素子としての回折光学素子5に入射したほぼ平行光束は、アフォーカルレンズ6の瞳面に輪帯状の光強度分布を形成した後、ほぼ平行光束となってアフォーカルレンズ6から射出される。なお、アフォーカルレンズ6の前側レンズ群6aと後側レンズ群6bとの間の光路中においてその瞳面またはその近傍には、円錐アキシコン系8が配置されているが、その詳細な構成および作用については後述する。以下、説明を簡単にするために、円錐アキシコン系8の作用を無視して、基本的な構成および作用を説明する。
アフォーカルレンズ6を介した光束は、σ値可変用のズームレンズ9および偏光変換素子10を介して、オプティカルインテグレータとしてのマイクロフライアイレンズ(またはフライアイレンズ)11に入射する。偏光変換素子10の構成および作用については後述する。マイクロフライアイレンズ11は、縦横に且つ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子である。一般に、マイクロフライアイレンズは、たとえば平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成される。
ここで、マイクロフライアイレンズを構成する各微小レンズは、フライアイレンズを構成する各レンズエレメントよりも微小である。また、マイクロフライアイレンズは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズ(微小屈折面)が互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、正屈折力を有するレンズ要素が縦横に配置されている点でマイクロフライアイレンズはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。
所定面7の位置はズームレンズ9の前側焦点位置の近傍に配置され、マイクロフライアイレンズ11の入射面はズームレンズ9の後側焦点位置の近傍に配置されている。換言すると、ズームレンズ9は、所定面7とマイクロフライアイレンズ11の入射面とを実質的にフーリエ変換の関係に配置し、ひいてはアフォーカルレンズ6の瞳面とマイクロフライアイレンズ11の入射面とを光学的にほぼ共役に配置している。
したがって、マイクロフライアイレンズ11の入射面上には、アフォーカルレンズ6の瞳面と同様に、たとえば光軸AXを中心とした輪帯状の照野が形成される。この輪帯状の照野の全体形状は、ズームレンズ9の焦点距離に依存して相似的に変化する。マイクロフライアイレンズ11を構成する各微小レンズは、マスクM上において形成すべき照野の形状(ひいてはウェハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形状の断面を有する。
マイクロフライアイレンズ11に入射した光束は多数の微小レンズにより二次元的に分割され、その後側焦点面またはその近傍(ひいては照明瞳)には、入射光束によって形成される照野とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源、すなわち光軸AXを中心とした輪帯状の実質的な面光源からなる二次光源が形成される。マイクロフライアイレンズ11の後側焦点面またはその近傍に形成された二次光源からの光束は、ビームスプリッター12aおよびコンデンサー光学系13を介した後、マスクブラインド14を重畳的に照明する。
こうして、照明視野絞りとしてのマスクブラインド14には、マイクロフライアイレンズ11を構成する各微小レンズの形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。なお、ビームスプリッター12aを内蔵する偏光モニター12の内部構成および作用については後述する。マスクブラインド14の矩形状の開口部(光透過部)を介した光束は、結像光学系15の集光作用を受けた後、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。
すなわち、結像光学系15は、マスクブラインド14の矩形状開口部の像をマスクM上に形成することになる。マスクMのパターンを透過した光束は、投影光学系PLを介して、感光性基板であるウェハW上にマスクパターンの像を形成する。こうして、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面(XY平面)内においてウェハWを二次元的に駆動制御しながら一括露光またはスキャン露光を行うことにより、ウェハWの各露光領域にはマスクMのパターンが逐次露光される。
なお、偏光状態切換部4において、1/4波長板4aは、光軸AXを中心として結晶光学軸が回転自在に構成されて、入射する楕円偏光の光を直線偏光の光に変換する。また、1/2波長板4bは、光軸AXを中心として結晶光学軸が回転自在に構成されて、入射する直線偏光の偏光面を変化させる。また、デポラライザ4cは、相補的な形状を有する楔形状の水晶プリズムと楔形状の石英プリズムとにより構成されている。水晶プリズムと石英プリズムとは、一体的なプリズム組立体として、照明光路に対して挿脱自在に構成されている。
光源1としてKrFエキシマレーザ光源やArFエキシマレーザ光源を用いる場合、これらの光源から射出される光は典型的には95%以上の偏光度を有し、1/4波長板4aにはほぼ直線偏光の光が入射する。しかしながら、光源1と偏光状態切換部4との間の光路中に裏面反射鏡としての直角プリズムが介在する場合、入射する直線偏光の偏光面がP偏光面またはS偏光面に一致していないと、直角プリズムでの全反射により直線偏光が楕円偏光に変わる。
偏光状態切換部4では、たとえば直角プリズムでの全反射に起因して楕円偏光の光が入射しても、1/4波長板4aの作用により変換された直線偏光の光が1/2波長板4bに入射する。1/2波長板4bの結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して0度または90度の角度をなすように設定された場合、1/2波長板4bに入射した直線偏光の光は偏光面が変化することなくそのまま通過する。
また、1/2波長板4bの結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように設定された場合、1/2波長板4bに入射した直線偏光の光は偏光面が90度だけ変化した直線偏光の光に変換される。さらに、デポラライザ4cの水晶プリズムの結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように設定された場合、水晶プリズムに入射した直線偏光の光は非偏光状態の光に変換(非偏光化)される。
偏光状態切換部4では、デポラライザ4cが照明光路中に位置決めされたときに水晶プリズムの結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように構成されている。ちなみに、水晶プリズムの結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して0度または90度の角度をなすように設定された場合、水晶プリズムに入射した直線偏光の光は偏光面が変化することなくそのまま通過する。また、1/2波長板4bの結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して22.5度の角度をなすように設定された場合、1/2波長板4bに入射した直線偏光の光は、偏光面が変化することなくそのまま通過する直線偏光成分と偏光面が90度だけ変化した直線偏光成分とを含む非偏光状態の光に変換される。
偏光状態切換部4では、上述したように、直線偏光の光が1/2波長板4bに入射するが、以下の説明を簡単にするために、図1においてZ方向に偏光方向(電場の方向)を有する直線偏光(以下、「Z方向偏光」と称する)の光が1/2波長板4bに入射するものとする。デポラライザ4cを照明光路中に位置決めした場合、1/2波長板4bの結晶光学軸を入射するZ方向偏光の偏光面(偏光方向)に対して0度または90度の角度をなすように設定すると、1/2波長板4bに入射したZ方向偏光の光は偏光面が変化することなくZ方向偏光のまま通過してデポラライザ4cの水晶プリズムに入射する。水晶プリズムの結晶光学軸は入射するZ方向偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように設定されているので、水晶プリズムに入射したZ方向偏光の光は非偏光状態の光に変換される。
水晶プリズムを介して非偏光化された光は、光の進行方向を補償するためのコンペンセータとしての石英プリズムを介して、非偏光状態で回折光学素子5に入射する。一方、1/2波長板4bの結晶光学軸を入射するZ方向偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように設定すると、1/2波長板4bに入射したZ方向偏光の光は偏光面が90度だけ変化し、図1においてX方向に偏光方向(電場の方向)を有する直線偏光(以下、「X方向偏光」と称する)の光になってデポラライザ4cの水晶プリズムに入射する。水晶プリズムの結晶光学軸は入射するX方向偏光の偏光面に対しても45度の角度をなすように設定されているので、水晶プリズムに入射したX方向偏光の光は非偏光状態の光に変換され、石英プリズムを介して、非偏光状態で回折光学素子5に入射する。
これに対し、デポラライザ4cを照明光路から退避させた場合、1/2波長板4bの結晶光学軸を入射するZ方向偏光の偏光面に対して0度または90度の角度をなすように設定すると、1/2波長板4bに入射したZ方向偏光の光は偏光面が変化することなくZ方向偏光のまま通過し、Z方向偏光状態で回折光学素子5に入射する。一方、1/2波長板4bの結晶光学軸を入射するZ方向偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように設定すると、1/2波長板4bに入射したZ方向偏光の光は偏光面が90度だけ変化してX方向偏光の光になり、X方向偏光状態で回折光学素子5に入射する。
以上のように、偏光状態切換部4では、デポラライザ4cを照明光路中に挿入して位置決めすることにより、非偏光状態の光を回折光学素子5に入射させることができる。また、デポラライザ4cを照明光路から退避させ且つ1/2波長板4bの結晶光学軸を入射するZ方向偏光の偏光面に対して0度または90度の角度をなすように設定することにより、Z方向偏光状態の光を回折光学素子5に入射させることができる。さらに、デポラライザ4cを照明光路から退避させ且つ1/2波長板4bの結晶光学軸を入射するZ方向偏光の偏光面に対して45度をなすように設定することにより、X方向偏光状態の光を回折光学素子5に入射させることができる。
換言すれば、偏光状態切換部4では、1/4波長板4aと1/2波長板4bとデポラライザ4cとからなる偏光状態切換部の作用により、回折光学素子5への入射光の偏光状態(ひいてはマスクMおよびウェハWを照明する光の偏光状態)を直線偏光状態と非偏光状態との間で切り換えることができ、直線偏光状態の場合には互いに直交する偏光状態間(Z方向偏光とX方向偏光との間)で切り換えることができる。
さらに、偏光状態切換部4では、1/2波長板4bおよびデポラライザ4cをともに照明光路から退避させ、且つ1/4波長板4aの結晶光学軸を入射する楕円偏光に対して所定の角度をなすように設定することにより、円偏光状態の光を回折光学素子5に入射させることができる。また、一般的には、1/2波長板4bの作用により、回折光学素子5への入射光の偏光状態を、任意方向に偏光方向を有する直線偏光状態に設定することもできる。
次に、円錐アキシコン系8は、光源側から順に、光源側に平面を向け且つマスク側に凹円錐状の屈折面を向けた第1プリズム部材8aと、マスク側に平面を向け且つ光源側に凸円錐状の屈折面を向けた第2プリズム部材8bとから構成されている。そして、第1プリズム部材8aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム部材8bの凸円錐状の屈折面とは、互いに当接可能なように相補的に形成されている。また、第1プリズム部材8aおよび第2プリズム部材8bのうち少なくとも一方の部材が光軸AXに沿って移動可能に構成され、第1プリズム部材8aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム部材8bの凸円錐状の屈折面との間隔が可変に構成されている。
ここで、第1プリズム部材8aの凹円錐状屈折面と第2プリズム部材8bの凸円錐状屈折面とが互いに当接している状態では、円錐アキシコン系8は平行平面板として機能し、形成される輪帯状の二次光源に及ぼす影響はない。しかしながら、第1プリズム部材8aの凹円錐状屈折面と第2プリズム部材8bの凸円錐状屈折面とを離間させると、円錐アキシコン系8は、いわゆるビームエキスパンダーとして機能する。したがって、円錐アキシコン系8の間隔の変化に伴って、所定面7への入射光束の角度は変化する。
図2は、輪帯状の二次光源に対する円錐アキシコン系の作用を説明する図である。図2を参照すると、円錐アキシコン系8の間隔が零で且つズームレンズ9の焦点距離が最小値に設定された状態(以下、「標準状態」という)で形成された最も小さい輪帯状の二次光源30aが、円錐アキシコン系8の間隔を零から所定の値まで拡大させることにより、その幅(外径と内径との差の1/2:図中矢印で示す)が変化することなく、その外径および内径がともに拡大された輪帯状の二次光源30bに変化する。換言すると、円錐アキシコン系8の作用により、輪帯状の二次光源の幅が変化することなく、その輪帯比(内径/外径)および大きさ(外径)がともに変化する。
図3は、輪帯状の二次光源に対するズームレンズの作用を説明する図である。図3を参照すると、標準状態で形成された輪帯状の二次光源30aが、ズームレンズ9の焦点距離を最小値から所定の値へ拡大させることにより、その全体形状が相似的に拡大された輪帯状の二次光源30cに変化する。換言すると、ズームレンズ9の作用により、輪帯状の二次光源の輪帯比が変化することなく、その幅および大きさ(外径)がともに変化する。
図4は、図1の偏光モニターの内部構成を概略的に示す斜視図である。図4を参照すると、偏光モニター12は、マイクロフライアイレンズ11とコンデンサー光学系13との間の光路中に配置された第1ビームスプリッター12aを備えている。第1ビームスプリッター12aは、たとえば石英ガラスにより形成されたノンコートの平行平面板(すなわち素ガラス)の形態を有し、入射光の偏光状態とは異なる偏光状態の反射光を光路から取り出す機能を有する。
第1ビームスプリッター12aにより光路から取り出された光は、第2ビームスプリッター12bに入射する。第2ビームスプリッター12bは、第1ビームスプリッター12aと同様に、例えば石英ガラスにより形成されたノンコートの平行平面板の形態を有し、入射光の偏光状態とは異なる偏光状態の反射光を発生させる機能を有する。そして、第1ビームスプリッター12aに対するP偏光が第2ビームスプリッター12bに対するS偏光になり、且つ第1ビームスプリッター12aに対するS偏光が第2ビームスプリッター12bに対するP偏光になるように設定されている。
また、第2ビームスプリッター12bを透過した光は第1光強度検出器12cにより検出され、第2ビームスプリッター12bで反射された光は第2光強度検出器12dにより検出される。第1光強度検出器12cおよび第2光強度検出器12dの出力は、それぞれ制御部(不図示)に供給される。制御部は、偏光状態切換部4を構成する1/4波長板4a、1/2波長板4bおよびデポラライザ4cを必要に応じて駆動する。
上述のように、第1ビームスプリッター12aおよび第2ビームスプリッター12bにおいて、P偏光に対する反射率とS偏光に対する反射率とが実質的に異なっている。したがって、偏光モニター12では、第1ビームスプリッター12aからの反射光が、例えば第1ビームスプリッター12aへの入射光の10%程度のS偏光成分(第1ビームスプリッター12aに対するS偏光成分であって第2ビームスプリッター12bに対するP偏光成分)と、例えば第1ビームスプリッター12aへの入射光の1%程度のP偏光成分(第1ビームスプリッター12aに対するP偏光成分であって第2ビームスプリッター12bに対するS偏光成分)とを含むことになる。
また、第2ビームスプリッター12bからの反射光は、例えば第1ビームスプリッター12aへの入射光の10%×1%=0.1%程度のP偏光成分(第1ビームスプリッター12aに対するP偏光成分であって第2ビームスプリッター12bに対するS偏光成分)と、例えば第1ビームスプリッター12aへの入射光の1%×10%=0.1%程度のS偏光成分(第1ビームスプリッター12aに対するS偏光成分であって第2ビームスプリッター12bに対するP偏光成分)とを含むことになる。
こうして、偏光モニター12では、第1ビームスプリッター12aが、その反射特性に応じて、入射光の偏光状態とは異なる偏光状態の反射光を光路から取り出す機能を有する。その結果、第2ビームスプリッター12bの偏光特性による偏光変動の影響を僅かに受けるものの、第1光強度検出器12cの出力(第2ビームスプリッター12bの透過光の強度に関する情報、すなわち第1ビームスプリッター12aからの反射光とほぼ同じ偏光状態の光の強度に関する情報)に基づいて、第1ビームスプリッター12aへの入射光の偏光状態(偏光度)を、ひいてはマスクMへの照明光の偏光状態を検知することができる。
また、偏光モニター12では、第1ビームスプリッター12aに対するP偏光が第2ビームスプリッター12bに対するS偏光になり且つ第1ビームスプリッター12aに対するS偏光が第2ビームスプリッター12bに対するP偏光になるように設定されている。その結果、第2光強度検出器12dの出力(第1ビームスプリッター12aおよび第2ビームスプリッター12bで順次反射された光の強度に関する情報)に基づいて、第1ビームスプリッター12aへの入射光の偏光状態の変化の影響を実質的に受けることなく、第1ビームスプリッター12aへの入射光の光量(強度)を、ひいてはマスクMへの照明光の光量を検知することができる。
こうして、偏光モニター12を用いて、第1ビームスプリッター12aへの入射光の偏光状態を検知し、ひいてはマスクMへの照明光が所望の非偏光状態、直線偏光状態または円偏光状態になっているか否かを判定することができる。そして、制御部が偏光モニター12の検知結果に基づいてマスクM(ひいてはウェハW)への照明光が所望の非偏光状態、直線偏光状態または円偏光状態になっていないことを確認した場合、偏光状態切換部4を構成する1/4波長板4a、1/2波長板4bおよびデポラライザ4cを駆動調整し、マスクMへの照明光の状態を所望の非偏光状態、直線偏光状態または円偏光状態に調整することができる。
なお、輪帯照明用の回折光学素子5に代えて、4極照明用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、4極照明を行うことができる。4極照明用の回折光学素子は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、そのファーフィールドに4極状の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、4極照明用の回折光学素子を介した光束は、マイクロフライアイレンズ11の入射面に、たとえば光軸AXを中心とした4つの円形状の照野からなる4極状の照野を形成する。その結果、マイクロフライアイレンズ11の後側焦点面またはその近傍にも、その入射面に形成された照野と同じ4極状の二次光源が形成される。
また、輪帯照明用の回折光学素子5に代えて、円形照明用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、通常の円形照明を行うことができる。円形照明用の回折光学素子は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールドに円形状の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、円形照明用の回折光学素子を介した光束は、マイクロフライアイレンズ11の入射面に、たとえば光軸AXを中心とした円形状の照野からなる4極状の照野を形成する。その結果、マイクロフライアイレンズ11の後側焦点面またはその近傍にも、その入射面に形成された照野と同じ円形状の二次光源が形成される。
さらに、輪帯照明用の回折光学素子5に代えて、他の複数極照明用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、様々な複数極照明(2極照明、8極照明など)を行うことができる。同様に、輪帯照明用の回折光学素子5に代えて、適当な特性を有する回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、様々な形態の変形照明を行うことができる。
図5は、図1の偏光変換素子の構成を概略的に示す図である。また、図6は、水晶の旋光性について説明する図である。また、図7は、偏光変換素子の作用により周方向偏光状態に設定された輪帯状の二次光源を概略的に示す図である。本実施形態にかかる偏光変換素子10は、マイクロフライアイレンズ11の直前に、すなわち照明光学装置(1〜PL)の瞳またはその近傍に配置されている。したがって、輪帯照明の場合、偏光変換素子10には光軸AXを中心としたほぼ輪帯状の断面を有する光束が入射することになる。
図5を参照すると、偏光変換素子10は、全体として光軸AXを中心とした輪帯状の有効領域を有し、この輪帯状の有効領域は光軸AXを中心とした円周方向に等分割された8つの扇形形状の基本素子により構成されている。これらの8つの基本素子において、光軸AXを挟んで対向する一対の基本素子は互いに同じ特性を有する。すなわち、8つの基本素子は、光の透過方向(Y方向)に沿った厚さ(光軸方向の長さ)が互いに異なる4種類の基本素子10A〜10Dを2個づつ含んでいる。
具体的には、第1基本素子10Aの厚さが最も大きく、第4基本素子10Dの厚さが最も小さく、第2基本素子10Bの厚さは第3基本素子10Cの厚さよりも大きく設定されている。その結果、偏光変換素子10の一方の面(たとえば入射面)は平面状であるが、他方の面(たとえば射出面)は各基本素子10A〜10Dの厚さの違いにより凹凸状になっている。なお、偏光変換素子10の双方の面(入射面および射出面)をともに凹凸状に形成することもできる。
また、本実施形態では、各基本素子10A〜10Dが旋光性を有する光学材料である結晶材料としての水晶により構成され、各基本素子10A〜10Dの結晶光学軸が光軸AXとほぼ一致、すなわち入射光の進行方向とほぼ一致するように設定されている。以下、図6を参照して、水晶の旋光性について簡単に説明する。図6を参照すると、厚さdの水晶からなる平行平面板状の光学部材100が、その結晶光学軸と光軸AXとが一致するように配置されている。この場合、光学部材100の旋光性により、入射した直線偏光の偏光方向が光軸AX廻りにθだけ回転した状態で射出される。
このとき、光学部材100の旋光性による偏光方向の回転角(旋光角度)θは、光学部材100の厚さdと水晶の旋光能ρとにより、次の式(a)で表わされる。
θ=d・ρ (a)
一般に、水晶の旋光能ρは、波長依存性(使用光の波長に依存して旋光能の値が異なる性質:旋光分散)があり、具体的には使用光の波長が短くなると大きくなる傾向がある。「応用光学II」の第167頁の記述によれば、250.3nmの波長を有する光に対する水晶の旋光能ρは、153.9度/mmである。
本実施形態において、第1基本素子10Aは、Z方向に偏光方向を有する直線偏光の光が入射した場合、Z方向をY軸廻りに+180度回転させた方向すなわちZ方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さdAが設定されている。したがって、この場合、図7に示す輪帯状の二次光源31のうち、一対の第1基本素子10Aの旋光作用を受けた光束が形成する一対の円弧状領域31Aを通過する光束の偏光方向はZ方向になる。
第2基本素子10Bは、Z方向に偏光方向を有する直線偏光の光が入射した場合、Z方向をY軸廻りに+135度回転させた方向すなわちZ方向をY軸廻りに−45度回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さdBが設定されている。したがって、この場合、図7に示す輪帯状の二次光源31のうち、一対の第2基本素子10Bの旋光作用を受けた光束が形成する一対の円弧状領域31Bを通過する光束の偏光方向はZ方向をY軸廻りに−45度回転させた方向になる。
第3基本素子10Cは、Z方向に偏光方向を有する直線偏光の光が入射した場合、Z方向をY軸廻りに+90度回転させた方向すなわちX方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さdCが設定されている。したがって、この場合、図7に示す輪帯状の二次光源31のうち、一対の第3基本素子10Cの旋光作用を受けた光束が形成する一対の円弧状領域31Cを通過する光束の偏光方向はX方向になる。
第4基本素子10Dは、Z方向に偏光方向を有する直線偏光の光が入射した場合、Z方向をY軸廻りに+45度回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さdDが設定されている。したがって、この場合、図7に示す輪帯状の二次光源31のうち、一対の第4基本素子10Dの旋光作用を受けた光束が形成する一対の円弧状領域31Dを通過する光束の偏光方向はZ方向をY軸廻りに+45度回転させた方向になる。
なお、別々に形成された8つの基本素子を組み合わせて偏光変換素子10を得ることもできるし、あるいは平行平面板状の水晶基板に所要の凹凸形状(段差)を形成することにより偏光変換素子10を得ることもできる。また、偏光変換素子10を光路から退避させることなく通常の円形照明を行うことができるように、偏光変換素子10の有効領域の径方向の大きさの3/10以上、好ましくは1/3以上の大きさを有し且つ旋光性を有しない円形状の中央領域10Eが設けられている。ここで、中央領域10Eは、たとえば石英のように旋光性を有しない光学材料により形成されていてもよいし、単純に円形状の開口であってもよい。ただし、中央領域10Eは偏光変換素子10に必須の要素ではない。なお、中央領域10Eの大きさは周方向偏光状態である領域とそうでない領域との境界を決定する。
本実施形態では、周方向偏光輪帯照明(輪帯状の二次光源を通過する光束が周方向偏光状態に設定された変形照明)に際して、Z方向に偏光方向を有する直線偏光の光を偏光変換素子10に入射させる。その結果、マイクロフライアイレンズ11の後側焦点面またはその近傍には、図7に示すように、輪帯状の二次光源(輪帯状の照明瞳分布)31が形成され、この輪帯状の二次光源31を通過する光束が周方向偏光状態に設定される。周方向偏光状態では、輪帯状の二次光源31を構成する円弧状領域31A〜31Dをそれぞれ通過する光束は、各円弧状領域31A〜31Dの円周方向に沿った中心位置における光軸AXを中心とする円の接線方向とほぼ一致する偏光方向を有する直線偏光状態になる。
こうして、本実施形態では、開口絞りにおいて大きな光量損失が発生する従来技術とは異なり、偏光変換素子10の旋光作用により、光量損失を実質的に発生させることなく、周方向偏光状態の輪帯状の二次光源31を形成することができる。換言すれば、本実施形態の照明光学装置では、光量損失を良好に抑えつつ、周方向偏光状態の輪帯状の照明瞳分布を形成することができる。さらに、本実施形態では、光学素子の偏光作用を用いているため、偏光変換素子自体の製造が極めて容易であり、典型的には各基本素子の厚み公差を極めて緩く設定することができるという優れた効果を奏する。
なお、周方向偏光状態の輪帯状の照明瞳分布に基づく周方向偏光輪帯照明では、最終的な被照射面としてのウェハWに照射される光がS偏光を主成分とする偏光状態になる。ここで、S偏光とは、入射面に対して垂直な方向に偏光方向を有する直線偏光(入射面に垂直な方向に電気ベクトルが振動している偏光)のことである。ただし、入射面とは、光が媒質の境界面(被照射面:ウェハWの表面)に達したときに、その点での境界面の法線と光の入射方向とを含む面として定義される。
その結果、周方向偏光輪帯照明では、投影光学系の光学性能(焦点深度など)の向上を図ることができ、ウェハ(感光性基板)上において高いコントラストのマスクパターン像を得ることができる。すなわち、本実施形態の露光装置では、光量損失を良好に抑えつつ周方向偏光状態の輪帯状の照明瞳分布を形成することのできる照明光学装置を用いているので、適切な照明条件のもとで微細パターンを忠実に且つ高スループットで転写することができる。
ところで、本実施形態では、X方向に偏光方向を有する直線偏光の光を偏光変換素子10に入射させることにより、図8に示すように輪帯状の二次光源32を通過する光束を径方向偏光状態に設定し、径方向偏光輪帯照明(輪帯状の二次光源を通過する光束が径方向偏光状態に設定された変形照明)を行うことができる。径方向偏光状態では、輪帯状の二次光源32を構成する円弧状領域32A〜32Dをそれぞれ通過する光束は、各円弧状領域32A〜32Dの円周方向に沿った中心位置における光軸AXを中心とする円の半径方法とほぼ一致する偏光方向を有する直線偏光状態になる。
径方向偏光状態の輪帯状の照明瞳分布に基づく径方向偏光輪帯照明では、最終的な被照射面としてのウェハWに照射される光がP偏光を主成分とする偏光状態になる。ここで、P偏光とは、上述のように定義される入射面に対して平行な方向に偏光方向を有する直線偏光(入射面に平行な方向に電気ベクトルが振動している偏光)のことである。その結果、径方向偏光輪帯照明では、ウェハWに塗布されたレジストにおける光の反射率を小さく抑えて、ウェハ(感光性基板)上において良好なマスクパターン像を得ることができる。
なお、上述の実施形態では、偏光変換素子10に入射する光束を、Z方向に偏光方向を有する直線偏光状態とX方向に偏光方向を有する直線偏光状態との間で切り換えることにより、周方向偏光輪帯照明と径方向偏光輪帯照明とを実現している。しかしながら、これに限定されることなく、たとえばZ方向またはX方向に偏光方向を有する直線偏光状態の入射光束に対して、偏光変換素子10を図5に示す第1状態と光軸AX廻りに90度だけ回転させた第2状態との間で切り換えることにより、周方向偏光輪帯照明と径方向偏光輪帯照明とを実現することもできる。
また、上述の実施形態では、マイクロフライアイレンズ11の直前に偏光変換素子10を配置している。しかしながら、これに限定されることなく、一般に照明光学装置(1〜PL)の瞳またはその近傍に、たとえば投影光学系PLの瞳またはその近傍や、結像光学系15の瞳またはその近傍や、円錐アキシコン系8の直前(アフォーカルレンズ6の瞳またはその近傍)などに偏光変換素子10を配置することもできる。
ただし、投影光学系PL中や結像光学系15中に偏光変換素子10を配置すると、偏光変換素子10の所要有効径が大きくなり易いため、高品質で大きい水晶基板を得ることが困難である現状を考えるとあまり好ましくない。また、円錐アキシコン系8の直前に偏光変換素子10を配置すると、偏光変換素子10の所要有効径を小さく抑えることができるが、最終的な被照射面であるウェハWまでの距離が長く、その間の光路中にレンズの反射防止コートやミラーの反射膜のように偏光状態を変化させる要素が介在し易いのであまり好ましくない。ちなみに、レンズの反射防止コートやミラーの反射膜では、偏光状態(P偏光とS偏光)や入射角度によって反射率に差が生じ易く、ひいては光の偏光状態が変化し易い。
また、上述の実施形態では、偏光変換素子10の少なくとも一方の面(たとえば射出面)が凹凸状に形成され、ひいては偏光変換素子10が周方向に離散的(不連続的)に変化する厚さ分布を有する。しかしながら、これに限定されることなく、偏光変換素子10が周方向にほぼ連続的に変化する厚さ分布を有するように、偏光変換素子10の少なくとも一方の面(たとえば射出面)を曲面状に形成することもできる。
また、上述の実施形態では、輪帯状の有効領域の8分割に対応する8つの扇形形状の基本素子により偏光変換素子10を構成している。しかしながら、これに限定されることなく、たとえば円形状の有効領域の8分割に対応する8つの扇形形状の基本素子により、あるいは円形状または輪帯状の有効領域の4分割に対応する4つの扇形形状の基本素子により、あるいは円形状または輪帯状の有効領域の16分割に対応する16つの扇形形状の基本素子により偏光変換素子10を構成することもできる。すなわち、偏光変換素子10の有効領域の形状、有効領域の分割数(基本素子の数)などについて様々な変形例が可能である。
また、上述の実施形態では、水晶を用いて各基本素子10A〜10Dを(ひいては偏光変換素子10を)形成している。しかしながら、これに限定されることなく、旋光性を有する他の適当な光学材料を用いて各基本素子を形成することもできる。この場合、使用波長の光に対して100度/mm以上の旋光能を有する光学材料を用いることが好ましい。すなわち、旋光能の小さい光学材料を用いると、偏光方向の所要回転角を得るために必要な厚さが大きくなり過ぎて、光量損失の原因になるので好ましくない。
また、上述の実施形態において、偏光変換素子10を照明光路に対して固定的に設けたが、この偏光変換素子10を照明光路に対して挿脱可能に設けても良い。また、上述の実施形態では、ウェハWに対するS偏光と輪帯照明とを組み合わせた例を示したが、ウェハWに対するS偏光と2極や4極などの多極照明および円形照明と組み合わせても良い。なお、上述の実施形態において、マスクMへの照明条件やウェハWへの結像条件(開口数や収差等)は、例えばマスクMのパターンの種類等に従って自動的に設定することができる。
図9は、複数の偏光変換素子を交換可能に設けた変形例を示す。なお、図9の変形例は図1に示した実施形態と類似の構成を有するが、複数の偏光変換素子を交換可能にするターレット10Tを有する点で異なる。
図10は、図9における交換機構としてのターレット10Tに載置された複数種類の偏光変換素子10a〜10eを示す図である。図9および図10に示したように、この変形例では、光軸AXと平行な方向を軸として回転可能なターレット10T上に複数種類の偏光変換素子10a〜10eを設け、ターレット10Tの回転動作によりこれら複数種類の偏光変換素子10a〜10eを交換可能としている。なお、図9では複数種類の偏光変換素子10a〜10eのうち、偏光変換素子10a,10bのみを図示している。なお、偏光変換素子の交換機構としてはターレット10Tには限定されず、たとえばスライダでも良い。
図11は、複数種類の偏光変換素子10a〜10eのそれぞれの構成を示す図である。図11(a)において、第1の偏光変換素子10aは、図5に示した実施形態の偏光変換素子10と同じ構成を有する。図11(b)において、第2の偏光変換素子10bは、図11(a)に示した偏光変換素子10aと類似した構成を有するが、中央領域10Eに偏光解消部材104cが設けられている点で異なる。この偏光解消部材104cは、図1に示したデポラライザ4cと同様の構成を有し、入射する直線偏光の光を非偏光状態の光に変換する機能を有する。
図11(c)において、第3の偏光変換素子10cは、図11(a)に示した偏光変換素子10aと類似した構成を有するが、中央領域10Eの大きさが大きくなっている点(第1〜第4基本素子10A〜10Dの幅が狭くなっている点)で異なる。また、図11(d)において、第4の偏光変換素子10dは、図11(c)に示した偏光変換素子10cと類似した構成を有するが、中央領域10Eに偏光解消部材104cが設けられている点で異なる。
図11(e)において、第5の偏光変換素子10eは、8つの基本素子ではなく、6つの基本素子10C,10F,10Gを組み合わせて構成されている。第5の偏光変換素子10eは全体として光軸AXを中心とした輪帯状の有効領域を有し、この輪帯状の有効領域は光軸AXを中心とした円周方向に等分割された6つの扇形形状の基本素子10C,10F,10Gにより構成されている。これら6つの基本素子10C,10F,10Gにおいて、光軸AXを挟んで対向する一対の基本素子は互いに同じ特性を有する。すなわち、6つの基本素子10C,10F,10Gは、光の透過方向(Y方向)に沿った厚さ(光軸方向の長さ)が互いに異なる3種類の基本素子10C,10F,10Gを2個ずつ含んでいる。
ここで、基本素子10Cは、図7に示した第3基本素子10Cと同じ機能を有する部材であるため、その機能の説明を省略する。基本素子10Fは、Z方向に偏光方向を有する直線偏光が入射した場合、Z方向をY軸廻りに+150度回転させた方向すなわちZ方向をY軸廻りに−30度回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さdFが設定されている。基本素子10Gは、Z方向に偏光方向を有する直線偏光が入射した場合、Z方向をY軸廻りに+30度回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さdGが設定されている。なお、中央領域10Eに代えて、偏光解消部材104cを設けても良い。
また、図10に戻って、ターレット10Tには偏光変換素子が載置されない開口部40が設けられており、周方向偏光照明ではない偏光照明を行う場合や、大きなσ値(σ値=照明光学装置のマスク側開口数/投影光学系のマスク側開口数)のもとでの非偏光照明を行う場合には、この開口部40が照明光路中に位置する。
なお、上述では、ターレット10Tに載置される偏光変換素子10a〜10eの中央部に、円形状の開口または旋光性を有しない材料からなる中央領域10Eあるいは偏光解消部材104cを設けた例のみ示したが、中央領域10Eまたは偏光解消部材104cを設けない偏光変換素子(扇形状の基本素子からなる偏光変換素子)を載置しても良い。
図12は、偏光変換素子の作用により周方向偏光状態に設定された二次光源の一例を概略的に示す図である。なお、図12では、理解を容易にするために偏光変換素子も重ねて図示してある。
図12(a)は、回折光学素子5に代えて、ファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に8極状の光強度分布を形成する回折光学素子(光束変換素子)が照明光路に設置されるとともに、偏光変換素子10aまたは10bが照明光路に設置された場合における8極状の二次光源33を示している。ここで、8極状の二次光源33を通過する光束が周方向偏光状態に設定される。周方向偏光状態では、8極状の二次光源33を構成する8つの円形領域33A〜33Dをそれぞれ通る光束が、これら8つの円形領域33A〜33Dを結ぶ円の円周方向、すなわちこれら8つの円形領域33A〜33Dを結ぶ円の接線方向とほぼ一致する偏光方向を有する直線偏光状態になる。なお、図12(a)では、8極状の二次光源33を8つの円形領域33A〜33Dで構成した例を示したが、8つの領域の形状は円形には限定されない。
図12(b)は、回折光学素子5に代えて、ファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に4極状の光強度分布を形成する回折光学素子(光束変換素子)が照明光路に設置されるとともに、偏光変換素子10cまたは10dが照明光路に設置された場合における4極状の二次光源34を示している。ここで、4極状の二次光源34を通過する光束が周方向偏光状態に設定される。周方向偏光状態では、4極状の二次光源34を構成する4つの領域34A、34Cをそれぞれ通る光束が、これら4つの領域34A,34Cを結ぶ円の円周方向、すなわちこれら4つの領域34A,34Cを結ぶ円の接線方向とほぼ一致する偏光方向を有する直線偏光状態になる。なお、図12(b)では、4極状の二次光源34を4つのほぼ楕円形状の領域34A,34Cで構成した例を示したが、4つの領域の形状はほぼ楕円形状には限定されない。
図12(c)は、回折光学素子5に代えて、ファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に6極状の光強度分布を形成する回折光学素子(光束変換素子)が照明光路に設置されるとともに、偏光変換素子10eが照明光路に設置された場合における6極状の二次光源35を示している。ここで、6極状の二次光源35を通過する光束が周方向偏光状態に設定される。周方向偏光状態では、6極状の二次光源35を構成する6つの領域35C,35F,35Gをそれぞれ通る光束が、これら6つの領域35C,35F,35Gを結ぶ円の円周方向、すなわちこれら6つの領域35C,35F,35Gを結ぶ円の接線方向とほぼ一致する偏光方向を有する直線偏光状態になる。なお、図12(c)では、6極状の二次光源35を4つのほぼ台形形状の領域35C,35F,35Gで構成した例を示したが、6つの領域の形状はほぼ台形形状には限定されない。
また、上述の実施形態並びに変形例では、偏光変換素子が光軸廻りに固定されていたが、偏光変換素子を光軸廻りに回転させても良い。図13は、光軸AX廻りに回転可能に設けられた偏光変換素子10fの構成を概略的に示す図である。
図13において、偏光変換素子10fは、4つの基本素子10A,10Cを組み合わせて構成されている。偏光変換素子10fは全体として光軸AXを中心とした輪帯状の有効領域を有し、この輪帯状の有効領域は光軸AXを中心とした円周方向に等分割された4つの扇形形状の基本素子10A,10Cにより構成されている。これら4つの基本素子10A,10Cにおいて、光軸AXを挟んで対向する一対の基本素子は互いに同じ特性を有する。すなわち、4つの基本素子10A,10Cは、光の透過方向(Y方向)に沿った厚さ(光軸方向の長さ)が互いに異なる2種類の基本素子10A,10Cを2個ずつ含んでいる。
ここで、基本素子10Aは、図7に示した第1基本素子10Aと同じ機能を有する部材であり、基本素子10Cは、図7に示した第3基本素子10Cと同じ機能を有する部材であるため、その機能の説明を省略する。なお、中央領域10Eに代えて、偏光解消部材104cを設けても良い。
この偏光変換素子10fは光軸AXを中心として回転可能となるように設けられており、たとえば光軸AXを中心として+45度または−45度だけ回転可能となっている。図14は、偏光変換素子10fの作用により周方向偏光状態に設定された二次光源の一例を概略的に示す図である。なお、図14では、理解を容易にするために偏光変換素子10fも重ねて図示してある。
図14(a)は、回折光学素子5に代えて、ファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に2極状の光強度分布を形成する回折光学素子(光束変換素子)が照明光路に設置されるとともに、偏光変換素子10fが回転角0度の状態(基準状態)で照明光路に設置された場合における2極状の二次光源36(36A)を示している。ここでは、2極状の二次光源36(36A)を通過する光束が縦方向偏光状態に設定される。
図14(b)は、回折光学素子5に代えて、ファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に4極状の光強度分布を形成する回折光学素子(光束変換素子)が照明光路に設置されるとともに、偏光変換素子10fが回転角0度の状態(基準状態)で照明光路に設置された場合における4極状の二次光源37を示している。ここでは、4極状の二次光源37を通過する光束が周方向偏光状態に設定される。なお、図14(b)における4極状の光強度分布は紙面内上下方向(Z方向)及び左右方向(X方向)に局在している。
周方向偏光状態では、4極状の二次光源37を構成する4つの円形領域37A,37Cをそれぞれ通る光束が、これら4つの円形領域37A,37Cを結ぶ円の円周方向、すなわちこれら4つの円形領域37A,37Cを結ぶ円の接線方向とほぼ一致する偏光方向を有する直線偏光状態になる。なお、図14(b)では、4極状の二次光源37を4つの円形領域37A,37Cで構成した例を示したが、4つの領域の形状は円形には限定されない。
図14(c)は、図14(b)の回折光学素子に代えて、ファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に紙面内+45度(−135度)方向及び紙面内−45度(+135度)方向に局在する4極状の光強度分布を形成する回折光学素子(光束変換素子)が照明光路に設置され、且つ偏光変換素子10fを回転角+45度の状態(基準状態に対して時計回りに45度だけ回転した状態)に回転させて照明光路に設置した場合における4極状の二次光源38を示している。
図14(c)では、偏光状態切換部4中の1/2波長板4bを光軸廻りに回転させて、偏光変換素子10fに対して、+45度方向(−135度方向)に偏光方向を有する直線偏光を入射させる。ここで、基本素子10Aは入射した直線偏光の偏光方向を180度±n×180度(nは整数)だけ回転させる機能を有し、基本素子10Cは入射した直線偏光の偏光方向を90度±n×180度(nは整数)だけ回転させる機能を有するため、4極状の二次光源38を通過する光束が周方向偏光状態に設定される。
図14(c)に示した周方向偏光状態では、4極状の二次光源38を構成する4つの円形領域38B,38Dをそれぞれ通る光束が、これら4つの円形領域38B,38Dを結ぶ円の円周方向、すなわちこれら4つの円形領域38B,38Dを結ぶ円の接線方向とほぼ一致する偏光方向を有する直線偏光状態になる。なお、図14(c)では、4極状の二次光源38を4つの円形領域38B,38Dで構成した例を示したが、4つの領域の形状は円形には限定されない。
このように、偏光状態切換部4の偏光方向の変更動作と、偏光変換素子10fの回転動作とにより、+45度(−135度)方向及び−45度(+135度)方向に局在する4極状の二次光源であっても、0度(+180度)方向及び90度(270度)すなわち縦横方向に局在する4極状の二次光源であっても、0度(+180度)方向又は90度(270度)すなわち縦横方向に局在する2極状の二次光源であっても、周方向偏光状態を実現することができる。
また、光軸AXを中心とした円周方向に等分割された8つの扇型形状の基本素子から構成される偏光変換素子を、光軸AX廻りに回転可能としても良い。図15(a)に示すように、例えば上記8分割の基本素子からなる偏光変換素子(たとえば偏光変換素子10a)を+45度だけ光軸AX廻りに回転させると、8極状の二次光源39を構成する8つの円形領域39A〜39Dをそれぞれ通る光束が、これら8つの円形領域39A〜39Dを結ぶ円の円周方向(これら8つの円形領域39A〜39Dを結ぶ円の接線方向)に対して−45度だけ回転された偏光方向を有する直線偏光状態になる。
また、15(b)に示すように、8極状の二次光源を構成する8つの円形領域をそれぞれ通る光束が、これら8つの円形領域を結ぶ円の円周方向(これら8つの円形領域を結ぶ円の接線方向)に対して+45度だけ回転された方向に長軸を持つ楕円偏光である場合には、図15(a)に示したように偏光変換素子(たとえば偏光変換素子10a)を+45度だけ光軸AX廻りに回転させることによって、図15(c)に示すように、ほぼ周方向偏光状態を得ることができる。
図16は、偏光変換素子を照明光学装置の瞳近傍の位置のうち、円錐アキシコン系8の直前の位置(入射側近傍の位置)に配置した例を示す。この図16の例では、ズームレンズ系9の変倍作用によって、マイクロフライアイレンズ11の入射面に投影される中央領域10Eの像の大きさと、マイクロフライアイレンズ11の入射面に投影される各基本素子10A〜10Dの像の大きさとが変更され、円錐アキシコン系8の動作によって、マイクロフライアイレンズ11の入射面に投影される各基本素子10A〜10Dの像における光軸AXを中心とする半径方向の幅が変更される。
したがって、図16に示した変形例のように中央領域10E(または偏光解消部材104c)を有する偏光変換素子を、変倍作用を有する光学系(ズームレンズ9)よりも光源側に設ける場合には、中央領域10Eの占める領域がズームレンズ9の変倍によって変更されることを考慮して、中央領域10Eの大きさを定めれば良い。
また、図16に示した変形例のように、中央領域10E(または偏光解消部材104c)を有する偏光変換素子を、輪帯比を変更する作用を有する光学系(円錐アキシコン系8)よりも光源側に設ける場合には、図17に示すように、以下の条件式(1)および(2)の少なくとも一方の条件式を満足することが好ましい。
(1) (10in+ΔA)/10out <0.75
(2) 0.4<(10in+ΔA)/10out
ただし、
10in:偏光変換素子10の中央領域10Eの有効半径、
10out:偏光変換素子10の外側有効半径、
ΔA:輪帯比を変更する作用を有する光学系を通過した光束の内側半径の増加分、
である。
ここで、条件式(1)を満足しない場合には、偏光変換素子10によって周方向偏光状態に変換される輪帯状の領域の幅が狭くなり、小さい輪帯比のもとでの輪帯状または多極状二次光源による周方向偏光照明を達成することができなくなるため好ましくない。また、条件式(2)を満足しない場合には、偏光変換素子10の中央領域を通過できる光束の径が著しく小さくなり、たとえば当該偏光変換素子10を照明光路から外すことなく、偏光状態を変えずに小σ照明することができなくなるため好ましくない。
また、図18に示すように、偏光変換素子を照明光学装置の瞳近傍の位置のうち、マイクロフライアイレンズ11よりもマスク側の位置、具体的にはマスクブラインド14の像をマスク上に投影する結像光学系15の瞳位置の近傍に設けても良い。図16および図18に示した実施形態においても、図9乃至図11の実施形態と同様に複数の偏光変換素子を交換可能としても良い。
また、上述の実施形態において、偏光変換素子10よりもウェハW側の光学系(照明光学系や投影光学系)が偏光収差(リターデーション)を有している場合には、この偏光収差に起因して偏光方向が変化することがある。この場合には、これらの光学系の偏光収差の影響を考慮した上で、偏光変換素子10により旋回される偏光面の方向を設定すれば良い。また、偏光変換素子10よりもウェハW側の光路中に反射部材が配置されている場合、この反射部材にて反射された偏光方向毎に位相差が生じることがある。このとき、反射面の偏光特性に起因する光束の位相差を考慮した上で、偏光変換素子10により旋回される偏光面の方向を設定すれば良い。
次に、偏光状態の評価手法の実施形態について説明する。本実施形態では、感光性基板としてのウェハWを保持するウェハステージ(基板ステージ)の側方に取り付け可能なウェハ面偏光モニター90を用いて、感光性基板としてのウェハWに到達する光束の偏光状態を検出する。なお、ウェハ面偏光モニター90は、ウェハステージ内に設けられても良いし、当該ウェハステージとは別体の計測ステージに設けられても良い。
図19は、ウェハWを照明する光の偏光状態及び光強度を検出するためのウェハ面偏光モニター90の概略構成を示す図である。図19に示すように、ウェハ面偏光モニター90は、ウェハWの位置またはその近傍に位置決め可能なピンホール部材91を備えている。ピンホール部材91のピンホール91aを通過した光は、投影光学系PLの像面位置またはその近傍が前側焦点位置となるように配置されているコリメートレンズ92を介してほぼ平行な光束になり、反射鏡93で反射された後、リレーレンズ系94に入射する。リレーレンズ系94を介したほぼ平行な光束は、移相子としてのλ/4板95および偏光子としての偏光ビームスプリッター96を介した後、二次元CCD97の検出面97aに達する。ここで、二次元CCD97の検出面97aは、投影光学系PLの射出瞳と光学的にほぼ共役、ひいては照明光学装置の照明瞳面と光学的にほぼ共役となっている。
λ/4板95は、光軸を中心として回転可能に構成されており、このλ/4板95には、その光軸を中心とした回転角を設定するための設定部98が接続されている。こうして、ウェハWに対する照明光の偏光度が0でない場合には、設定部98を介してλ/4板95を光軸廻りに回転させることにより二次元CCD97の検出面97aにおける光強度分布が変化する。したがって、ウェハ面偏光モニター90では、設定部98を用いてλ/4板95を光軸廻りに回転させながら検出面97aにおける光強度分布の変化を検出し、この検出結果から回転移相子法により照明光の偏光状態を測定することができる。
なお、回転移相子法については、例えば鶴田著,「光の鉛筆−光技術者のための応用光学」,株式会社新技術コミュニケーションズなどに詳しく記載されている。実際には、ピンホール部材90(ひいてはピンホール90a)をウェハ面に沿って二次元的に移動させつつ、ウェハ面内の複数の位置における照明光の偏光状態を測定する。このとき、ウェハ面偏光モニター90では、二次元的な検出面97aにおける光強度分布の変化を検出するので、この検出分布情報に基づいて照明光の瞳内における偏光状態の分布を測定することができる。
なお、ウェハ面偏光モニター90では、移相子としてλ/4板95に代えてλ/2板を用いることも可能である。どのような移相子を用いたとしても、偏光状態、すなわち4つのストークスパラメーターを測定するためには、移相子と偏光子(偏光ビームスプリッター96)との光軸廻りの相対角度を変えたり、移相子または偏光子を光路から退避させたりして、少なくとも4つの異なる状態で検出面97aにおける光強度分布の変化を検出する必要がある。なお、本実施形態では移相子としてのλ/4板95を光軸廻りに回転させたが、偏光子としての偏光ビームスプリッター96を光軸廻りに回転させても良く、移相子および偏光子の双方を光軸廻りに回転させても良い。また、この動作に代えて、あるいはこの動作に加えて、移相子としてのλ/4板95および偏光子としての偏光ビームスプリッター96のうちの一方または双方を光路から挿脱させても良い。
また、ウェハ面偏光モニター90では、反射鏡93の偏光特性により光の偏光状態が変化してしまう場合がある。この場合、反射鏡93の偏光特性は予めわかっているので、所要の計算によって反射鏡93の偏光特性の偏光状態への影響に基づいてウェハ面偏光モニター90の測定結果を補正し、照明光の偏光状態を正確に測定することができる。また、反射鏡に限らず、レンズなどの他の光学部品に起因して偏光状態が変化してしまう場合でも同様に測定結果を補正し、照明光の偏光状態を正確に測定することができる。
以下、照明光の瞳内における偏光状態の分布の評価について具体的に説明する。まず瞳上の一点(または微小領域)を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する光線の一本一本に対して特定偏光度DSPを算出する。なお、以下の説明においては、図1,図16,図18で用いたXYZ座標系を用いる。上述の瞳上の一点(微小領域)は二次元CCD97の一画素に対応し、像面上の一点(微小領域)はピンホール90aのXY座標に対応する。
この特定偏光度DSPは、瞳上の一点(または微小領域)を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する特定光線におけるX方向偏光(瞳上においてX方向に振動方向を持つ偏光)成分の強度をIxとし、当該特定光線におけるY方向偏光(瞳上においてY方向に振動方向を持つ偏光)成分の強度をIyとするとき、
(3) DSP=(Ix−Iy)/(Ix+Iy)
で表される。なお、この特定偏光度DSPは、全強度S0に対する水平直線偏光強度マイナス垂直直線偏光強度S1(S1/S0)と同義である。
また、瞳上の一点(または微小領域)を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する特定光線におけるX方向偏光(瞳上においてX方向に振動方向を持つ偏光)成分の強度Ix、および当該特定光線におけるY方向偏光(瞳上においてY方向に振動方向を持つ偏光)成分の強度Iyから、下式(4),(5)の通り、水平偏光(パターン面内で水平方向に延びたマスクパターンの回折光に対してS偏光となる偏光)についての適正偏光率RSPh、および垂直偏光(パターン面内で垂直方向に延びたマスクパターンの回折光に対してS偏光となる偏光)についての適正偏光率RSPvを定義することができる。
(4) RSPh =Ix/(Ix+Iy)
(5) RSPv =Iy/(Ix+Iy)
ここで、理想的な非偏光照明のときにはRSPh,RSPvはともに50%となり、理想的な水平偏光のときにはRSPhが100%となり、理想的な垂直偏光のときにはRSPvが100%となる。
また、瞳上の一点(または微小領域)を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する光線の一本一本に対して、下式(6)〜(9)で偏光度Vを定義するとき、所定の有効光源領域を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する光線束に対して、下式(10)の通り平均偏光度V(Ave)を定義できる。
(6) V=(S1 2+S2 2+S3 2)1/2/S0
=(S1 '2+S2 '2+S3 '2)1/2
(7) S1 '=S1/S0
(8) S2 '=S2/S0
(9) S3 '=S3/S0
ただし、S0は全強度であり、S1は水平直線偏光強度マイナス垂直直線偏光強度であり、S2は45度直線偏光強度マイナス135度直線偏光強度であり、S3は右まわり円偏光強度マイナス左まわり円偏光強度である。
(10) V(Ave)=Σ[S0(xi,yi)・V(xi,yi)]/ΣS0(xi,yi)
なお、(10)式において、S0(xi,yi)は所定の有効光源領域(xi,yi)上の一点(または微小領域)を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する光線に対する全強度S0であり、V(xi,yi)は所定の有効光源領域(xi,yi)上の一点(または微小領域)を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する光線の偏光度である。
また、所定の有効光源領域を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する光線束に対して、以下の(11)式で水平偏光に関する平均特定偏光率RSPh(Ave)を、(12)式でおよび垂直偏光に関する平均特定偏光率RSPv(Ave)を定義することができる。
(11) RSPh(Ave)=Ix(Ave)/(Ix+Iy)Ave
=Σ[S0(xi,yi)・RSPh(xi,yi)]/ΣS0(xi,yi)
(12) RSPv(Ave)=Iy(Ave)/(Ix+Iy)Ave
=Σ[S0(xi,yi)・RSPv(xi,yi)]/ΣS0(xi,yi)
ここで、Ix(Ave)は所定の有効光源領域(xi,yi)を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する光線束におけるX方向偏光(瞳上においてX方向に振動方向を持つ偏光)成分の強度の平均、Iy(Ave)は所定の有効光源領域(xi,yi)を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する光線束におけるY方向偏光(瞳上においてY方向に振動方向を持つ偏光)成分の強度の平均、RSPh(xi,yi)は所定の有効光源領域(xi,yi)上の一点(または微小領域)を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する光線の水平偏光についての適正偏光率、RSPv(xi,yi)は所定の有効光源領域(xi,yi)上の一点(または微小領域)を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する光線の垂直偏光についての適正偏光率である。また、(Ix+Iy)Aveは前記所定の有効光源領域を通過する全光束の強度の平均である。
ここで、理想的な非偏光照明のときにはRSPh(xi,yi),RSPv(xi,yi)はともに50%となり、理想的な水平偏光のときにはRSPh(xi,yi)が100%となり、理想的な垂直偏光のときにはRSPv(xi,yi)が100%となる。
そして、所定の有効光源領域(xi,yi)を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する光線束に対して、下式(13)の通り平均特定偏光度DSP(Ave)を定義できる。
(13) DSP(Ave)=(Ix−Iy)Ave/(Ix+Iy)Ave
={Σ[Ix(xi,yi)−Iy(xi,yi)]/Σ[Ix(xi,yi)+Iy(xi,yi)]}
=S1 '(Ave)
={ΣS1/ΣS0}
ここで、(Ix−Iy)Aveは、所定の有効光源領域(xi,yi)を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する光線束におけるX方向偏光成分の強度と所定の有効光源領域(xi,yi)を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する光線束におけるY方向偏光成分の強度との差の平均、Ix(xi,yi)は所定の有効光源領域(xi,yi)上の一点(または微小領域)を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する光線におけるX方向偏光成分の強度、Iy(xi,yi) は所定の有効光源領域(xi,yi)上の一点(または微小領域)を通過し像面上の一点(微小領域)に到達する光線におけるY方向偏光成分の強度、S1 '(Ave)は所定の有効光源領域(xi,yi)におけるS1 '成分の平均である。
(13)式において、理想的な非偏光照明のときにはDSP(Ave)は0となり、理想的な水平偏光のときにはDSP(Ave)が1となり、理想的な垂直偏光のときにはDSP(Ave)が−1となる。
なお、たとえば図13に示した4分割偏光変換素子10fを用いて4分割周方向偏光輪帯照明を行う場合には、図20に示すように、輪帯形状の二次光源31を4分割して、各々の分割領域31A1,31A2,31C1,31C2毎に平均特定偏光率RSPh(Ave),RSPv(Ave)を評価すれば良い。
上述の実施形態にかかる露光装置では、照明光学装置によってマスク(レチクル)を照明し(照明工程)、投影光学系を用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板に露光する(露光工程)ことにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。以下、上述の実施形態の露光装置を用いて感光性基板としてのウェハ等に所定の回路パターンを形成することによって、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法の一例につき図9のフローチャートを参照して説明する。
先ず、図9のステップ301において、1ロットのウェハ上に金属膜が蒸着される。次のステップ302において、その1ロットのウェハ上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップ303において、上述の実施形態の露光装置を用いて、マスク上のパターンの像がその投影光学系を介して、その1ロットのウェハ上の各ショット領域に順次露光転写される。その後、ステップ304において、その1ロットのウェハ上のフォトレジストの現像が行われた後、ステップ305において、その1ロットのウェハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウェハ上の各ショット領域に形成される。その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く得ることができる。
また、上述の実施形態の露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、図10のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。図10において、パターン形成工程401では、上述の実施形態の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィー工程が実行される。この光リソグラフィー工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルター形成工程402へ移行する。
次に、カラーフィルター形成工程402では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を複数水平走査線方向に配列したカラーフィルターを形成する。そして、カラーフィルター形成工程402の後に、セル組み立て工程403が実行される。セル組み立て工程403では、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルター等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。
セル組み立て工程403では、例えば、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルターとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。その後、モジュール組み立て工程404にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く得ることができる。
なお、上述の実施形態では、露光光としてKrFエキシマレーザ光(波長:248nm)やArFエキシマレーザ光(波長:193nm)を用いているが、これに限定されることなく、他の適当なレーザ光源、たとえば波長157nmのレーザ光を供給するF2レーザ光源などに対して本発明を適用することもできる。さらに、上述の実施形態では、照明光学装置を備えた露光装置を例にとって本発明を説明したが、マスクやウェハ以外の被照射面を照明するための一般的な照明光学装置に本発明を適用することができることは明らかである。
また、上述の実施形態において、投影光学系と感光性基板との間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用しても良い。この場合、投影光学系と感光性基板との間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開番号WO99/49504号公報に開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。
なお、液体としては、露光光に対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系や基板表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なものを用いることが好ましく、たとえばKrFエキシマレーザ光やArFエキシマレーザ光を露光光とする場合には、液体として純水、脱イオン水を用いることができる。また、露光光としてF2レーザ光を用いる場合は、液体としてはF2レーザ光を透過可能な例えばフッ素系オイルや過フッ化ポリエーテル(PFPE)等のフッ素系の液体を用いればよい。