以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1(a)(b)、図2は、本発明の実施の形態1における構造体7を含むマニピュレータを示す図である。マニピュレータは、構造体7と、エンドエフェクタとしてのハンド機構6と、を備えている。この構造体7は、アーム2,3,4と、第1,2の関節50,51と、ハンド機構用の第3の関節53とを備えている。
図1(a)に示すように、アーム2はベース1(ベース部)を有する。ベース1は、固定体である基準面Sに固定されているものとする。アーム2(第1部材)は部材21,22を備え、アーム3(第2部材)は部材31〜35を備え、アーム4(第3部材)は部材41,42を備える。部材21はベース1に支持されている。すなわち、マニピュレータに含まれる構造体7は、合計で9つの部材を有しおり、これらの部材が一列に並ぶように互いに連結されている。ベース1に固定されたアーム2の部材21が、第1部材(基端側部材)であり、第3の関節53に結合されたアーム4の部材42が第3部材(先端側部材)である。これらの間の部材22〜41が第2部材(中間部材)を構成する接続部材となっている。そして、ベース1に固定された部材21の基端面が定着部となっている。
第1の関節50は、紙面に垂直な軸回りに相対回転可能にアーム2とアーム3とを連結しており、第1の関節50によってアーム3がアーム2に対して回動する。すなわち、第1の関節50は、互いに相対回転可能な2つの部材を有し、この一方の部材にアーム2の部材22が固定され、他方の部材にアーム3の部材31が固定されている。言い換えると、第1の関節50は、第1の接続部材である部材22と、第2の接続部材である部材31との間に配設されている。
第2の関節51は、紙面に垂直な軸回りに相対回転可能にアーム3とアーム4とを連結しており、第2の関節51によってアーム4がアーム3に対して回動する。すなわち、第2の関節51は、互いに相対回転可能な2つの部材を有し、この一方の部材にアーム3の部材35が固定され、他方の部材にアーム4の部材41が固定されている。言い換えると、第2の関節51は、第1の接続部材である部材35と、第2の接続部材である部材41との間に配設されている。アーム4とハンド機構6の間には、紙面に平行な軸周りの回転をハンド機構6に与える第3の関節53が設けられている。
尚、本実施形態では、関節50,51,53を有する構造体7について示しているが、この構成に限られるものではない。例えば、関節を有しないアーム3のみの構造体としてもよい。この構成では、部材31が固定体に直接的又は間接的に結合され得る第1部材(基端側部材)となり、部材35が第3部材(先端側部材)となり、部材32〜34が第2部材(中間部材)を構成する接続部材となる。
図2は、アーム3の長手方向に平行な断面における図である。アーム3を構成する部材31〜35は、一列に並ぶように配列されている。アーム3は全体として一方向(図中のA方向)に長手方向を有する。各部材31〜35は、隣接する部材と接触する端面がA方向(長手方向)に略垂直な平面となっている。この端面に平行な方向を横断面方向と定義する。
部材31〜35は何れも同様の形状である。例えば部材32は、剛な物質で構成された剛構造部32aと、その周囲に装着される外装32bとを有する。剛構造部32aは、有底の円筒状または多角形柱状である。図例では、剛構造部32aは、筒状の胴部32dと、この胴部32dの内側に固定される板状の架設部32eとを有する。架設部32eは、部材32の軸方向とは直交する方向に延びる板状に形成されていて、胴部32dに架設されている。外装32bは、ウレタンゴム、シリコンゴム等の弾性体によって構成されている。図2において、部材32の下側の端面が第1端面であり、上側の端面が第2端面である。なお、中間部材としての第1端面は、部材22の基端側の端面であり、中間部材としての第2端面は、部材41の先端側の端面である。
剛構造部32aは、軽量と剛性を両立させる樹脂として、好ましくはガラスファイバーで補強されたPPSなどで構成されている。更に振動を抑えたい場合には、剛構造部32aの材料として、液晶ポリマーを用いるのが好ましい。
アーム3には、結合力発生部としての牽引機構が設けられている。牽引機構は、弾性体からなる線材30と、この線材30に固着されたストッパ30aとを有する。部材31の剛構造部31aの架設部31eには、貫通穴31cが形成されており、部材32の剛構造部32aの架設部32eには貫通穴32cが形成されている。そして、線材30は、貫通穴31cを貫通して部材32の貫通穴32cに至っている。線材30に設けられたストッパ30aは、部材31と32とが接触した状態で部材31,32の軸方向の移動を規制している。すなわち、線材30はストッパ30aの作用によって、貫通穴31c、32cを有する架設部31e,32eに係合することで、部材32を部材31に向かって牽引している。言い換えると、牽引機構は、部材32の基端側端面(第1端面)と部材31の先端側端面(第2端面)との間に、互いに押圧する結合力を発生させている。この結合力をN1とする。
線材30は、部材33〜35にも同様に貫通している。このため、牽引機構としては、部材32と33の間、部材33と34との間、等にも結合力を発生させている。この結合力をN2、N3等とする。ここで、ストッパ30aによる線材30の移動規制によって、それぞれの結合力の大きさは、N1>N2>N3…となっている。これらの結合力により各部材は相互に押しつけられている。
上記結合力により、各部材間には、横断面方向の力に対して抵抗する摩擦力が生じている。例えば、部材31と32の間において、結合力N1に抗して生じる最大静止摩擦力をF1とし、部材32と33の間では結合力N2に抗して生じる最大静止摩擦力をF2とする。言い換えると、部材(30+i)と部材(30+i+1)の間において、結合力Niによる最大静止摩擦力がFiとなる。
最大静止摩擦力はほぼアモントン−クーロンの法則に従うので、結合力はN1>N2>N3…に対し、最大静止摩擦力もF1>F2>F3…である。
なお、これらの結合力の相対的相異は、例えば次のような構造で実現することができる。即ち部材32、33、34…のA方向の寸法(軸方向長さ)が同一である場合において、個々のストッパ30a間に張られる弾性体30の自由長が部材31で最も短く、部材32、部材33…の順番で自由長が次第に長くなるように設定すればよい。このようにすると、弾性体30の伸びによる歪が部材31に該当する部分で最も大きくなって結合力N1が最も大きくなる。従って、その復元力による結合力を、N1>N2>N3…とすることができる。
結合力N1,N2,…を異なる大きさにするための構成は、前述の構成に限られない。例えば、線材30の弾性力がその長さ方向(軸方向)に次第に変わる構成としてもよい。この場合、線材30の断面積がその長さ方向で異なる構成や線材30の弾性率自体がその長さ方向で異なる構成を採用することができる。
また、弾性力の異なる複数の線体を、各部材間に配したものも採用できる。この構成では、一部の線体が使用不能なっても、その部材を固定することで、マニピュレータ100の機能を保つことができる。
アーム2、アーム4でもアーム3と同様の構造が実現できる。また、マニピュレータ全体として(アーム2での結合力)>(アーム3での結合力)>(アーム4での結合力)である。したがって、構造体7において、基端側部材21の先端面(図1(a)における上端面)と部材22の基端側端面(第1端面;図1(a)における下端面)との結合力の大きさ(第1の大きさ)は、部材41の先端側端面(第2端面)と先端側部材42の基端面との結合力の大きさ(第2の大きさ)よりも大きくなっている。
そして、関節50,51を挟んで基端側に位置する部材間の結合力が、関節50,51の先端側に位置する部材間の結合力よりも大きな大きさとなるように設定されている。具体的には、第1の関節50に対して基端側に位置するアーム2を構成する部材21と部材22の間の結合力の大きさは、第1の関節50の先端側に位置するアーム3の部材31と部材32の間の結合力の大きさよりも大きくなっている。また、第2の関節51に対して基端側に位置するアーム3を構成する部材34と部材35の間の結合力の大きさは、第2の関節51の先端側に位置するアーム4の部材41と部材42の間の結合力の大きさよりも大きくなっている。
各部材がその隣接部材に対し横断面方向に変位がない状態を正規状態とする。ここでは、重力の影響を無視して考える。例えば図2において部材32よりも紙面上側の全部材を、慣性力が無視できる程度の低加速度で部材31に対して横断面方向に変位を発生させる場合を考える。部材31と32の間に滑りが生じるためには、最大静止摩擦力F1の力が必要である。
また、部材32のみを、他の部材に対し横断面方向に動かそうとすると、部材31と32との間に滑りを生じさせると共に、部材32と33との間に滑りを生じさせなければならない。このため、最大静止摩擦力F1+F2の力が必要となる。好ましくはこういった結合力が生じる構造を、例えばアーム2、3、4の単位で構成する。これにより関節50、51を超えて線材30を引き回す必要がなく、姿勢による影響等を受けにくくすることができる。
以上のように構成された構造体及びマニピュレータについて、以下、その動作を説明する。
図1(a)のように、マニピュレータ100に物体9が接近し、図1(b)のように衝突したとする。このとき、物体9がアーム3の部材33と部材34に衝突した場合、その衝撃力がF2+F4を上回ると、図1(b)のようにまず部材33、34が横断面方向に変位を始める。物体9が十分な運動エネルギをもっていれば、部材33と34は加速度運動を始め、正規状態からずれる。
このとき物体9に衝突の反作用として生じる力は、ほぼ部材33、34の質量によるものであって、構造体としてのアーム3全体、またはマニピュレータ100全体から受ける反作用に比べれば比較的小さいものとすることができる。すなわち、外力を受けた部材と、この部材に隣接する部材との間で変位を生じさせることにより、受けた外力の一部を吸収することができる。
このようにして、本実施の形態によれば、マニピュレータ100の質量の分離により衝突時の反力が低減されるため、物体9は衝突による損傷を免れることができる。これは、相対的な関係であり、物体9が静止した人体で、アーム3またはマニピュレータ100が動くことによって接近しても事情は同じである。このため、本実施の形態によれば、人体が損傷することを回避することができる。
また、物体9がアーム3の中心軸からはずれた位置で衝突した場合、例えばアーム3の側面をかすめるような状態で接触したような場合には、アーム3に中心軸周りの回転モーメントが生じるが、このモーメントに抗する静止力も結合力に応じて大きくなるので、本実施の形態では上記の横断面方向の衝撃に対する場合と同様の効果が有る。
最大静止摩擦力および結合力は、構造体7の根元の方が大きくなっているので、回転運動等を行う際に根元側(基端側)に生じるモーメントに十分抗しながら、先端側に大きな加速度を与えることができる。
ここではアーム3を直線状としているが、例えばアーム3の長手方向が曲線状に曲がっていてもよい。この場合には、長手方向の局所的接線を平均法線とする平面または曲面で分割することによって各部材が構成されることとなる。
アーム3が直線状の場合であっても、図2に示した平面状の部材の分割面に代え、曲面状の分割面としても差し支えない。例えば、図3のような曲面を有する部材71の形態としてもよい。この場合には、曲面同士が接触するので部材同士の接触面積が増え、これにより、横断面方向の力に対する摩擦力をより安定にし、また正規位置の状態での結合が明確にわかるようになる。
例えば衝撃で人が苦痛に耐える値としては、50N以下が推奨される。そして、1つの部材が横断面方向に変位する場合には、上下面においてそれぞれ摩擦力が作用する。このため、最大静止摩擦力が生じる断面が部材32である場合には、例えばF1+F2<50[N]程度になるように線材30による結合力N1,N2を設定するのが好ましい。
また、横断面方向において、部材を正規位置に位置決めする構造としては、図4に示すような、突起結合もあり得る。この場合には、部材81、82、83…の軸方向端面が平面状ではなく、傾斜面88を有する段差面が形成されることにより、部材81、82、83…の一端面に突起状の部分が設けられ、部材81、82、83…の他端面には突起状の部分の形状に対応する凹状の部分が形成されている。また、これ以外にも、ピン結合等による構成も可能である。これらを上記線材30で結合することは可能である。
なお、各部材において、それぞれの架設部の中心部に穴が空いている。この穴は、第1の関節50等におけるモータへの結線の径路やアームの支持軸、等に用いられる。こういった穴を図2の部材31、32…や図3の部材71等に設ける。なお、モータへの配線等には、部材のずれによる摩擦の影響等を低減するため、好ましくはデュポン社のテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂系の物質を含む摺動性被覆等が設けられる。また、この穴の径は、アームの支持軸等の径よりも大きいことが好ましい。これは、各部材が変位するため、変位によりアームの支持軸等に加わる力の影響を軽減するためである。
また、線材30を形状記憶合金や、形状記憶合金とばねの直列結合としてもよい。この場合には、電流加熱や冷却により結合力を可変にすることができる。
部材が横断面方向に変位すると、線材30は、部材を元の位置に戻させる復元力を発生する。この復元力と変位の特性を、復元力が変位に対し1次以上の関数で増えるよう、好ましくは2次関数等、変位に対し急激に復元力が増えるようにすると、衝撃後、部材が正規位置近傍に復元する確率が増えるので好ましい。こういった特性は、例えば下記方法で実現できる。すなわち、図2の構造のように、線材30の引張り方向における復元力が、線材30の変形に対して線形であれば、横断面方向変位に対する復元力は非線形に増大する。
結合力発生部としては、線材30に代え、図5のように、磁気的な力を利用する構成としてもよい。アーム11は、部材111、112、113、114…を有しており、このアーム11は、例えば図1のアーム3の位置に配設される。例えば部材112は磁性体112aと外装112bを備え、部材113、114…なども同様の構成である。アーム11において、最も基端側に配設される部材111は磁石111aと外装111bを備える。このような構成により、アーム11では、磁石111aからの距離の増大とともに吸引力N1、N2…が減少する。従って、部材間の最大静止摩擦力を、容易にF1>F2>F3…とすることができる。
また、磁石111aを電磁石にした場合には、電流を調整することにより、発生させる結合力を可変とすることができる。更に、図6(a)、図6(b)に示すように、磁石111aを磁性体112aに対し回転可能にしても、結合力を可変にすることができる。すなわち、通常の状態では、部材111の磁石111aと部材112の磁性体112aとが周方向における同じ位置にある。そして、部材111の磁石111aが周方向に移動することにより、磁石111aと磁性体112aとの中心間距離を大きくすることができ、これにより部材111の磁石111aと部材112の磁性体112aとの間の結合力を低減することができる。この場合において、外装111bは、磁石111aのガイド機能を兼ねるのであれば硬質の材料によって構成されるのが好ましい。また、上下方向の距離安定化の理由から、外装112bも硬質材料によって構成されるのが好ましい。
部材111、112…が軸回りに回動する形態では、外力を受けた場合であっても、部材111、112…の軸心位置は変位しない。このため、部材111、112…の内部に挿入された伝送線等の部材を保護することができる。
また、磁気回路構造を図14のように構成することも可能である。アーム19は、アーム11を代替するものであり、部材191、192…を備える。部材192は、内側磁性体192aと外側磁性体192cと、非磁性体192dと、外装192bとを備える。非磁性体192dは、内側磁性体192aと外側磁性体192cとの間に配設されている。部材193、194…も同様の構成である。一方、部材191は、磁石191aと外側磁性体191cと非磁性体191dと外装191bとを有し、磁石191aの一端面(部材192aから遠い側の面)は外側磁性体191cに磁気的に接続され、磁石191aの他端面(部材192側の面)は部材192の内側磁性体192aと磁気的に接続されている。このようにアーム19が構成されることにより、アーム11と同様な吸引力N1、N2…の分布を得ると共に、磁気回路がほぼ閉回路になるので、外部への漏洩磁束による影響等を減少させることができる。このため、アーム2、アーム4への影響等を低減することができる。
磁石や磁性体を用いることにより、変位を生じた際に、部材間に障害物(線材30、等)が存在しない。そのため、物体9への影響を、より小さくできる。しかしながら、磁石や磁性体を用いることにより、周囲に磁場による影響が発生する場合がある。その場合は、必要に応じて、これに対する対策が必要である。
また、線材30の数などは、必要に応じて任意に変更が可能である。ただし、安定に結合力を与えるには、各部材の断面内で3本以上が望ましい。
また、外装31b、32b…等は例であって、必要なければ除去しても差し支えない。
また、線材30を導電体によって構成することにより、信号線や電力線等の機能を持たせることも、可能である。しかしながら、衝突時に線材30が引っ張られる。そのため、線材30に信号線や電力線等の機能を持たせる場合は、その強度に十分に注意する必要がある。
なお、本実施の形態では、最大静止摩擦力をメインにしたため、部材間の結合力と関係させて説明した。しかしながら、後述するように、動摩擦力等を利用した形態も含む発明であるため、必ずしも部材間の結合力が必須のものではないことは言うまでもない。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図面を参照しながら説明する。
図7(a)、図7(b)及び図8は、本発明の実施の形態2における構造体、マニピュレータ及び制御システムを概略的に示している。本実施の形態のマニピュレータ101は、実施の形態1のアーム3における線材30を、形状記憶合金によって構成される線材38に変更したものであり、その他の構成は物体9を含め実施の形態1のマニピュレータ100と同じである。
制御システムは、カメラ61、距離算出部62、判断部63及びアンプ64を備えている。カメラ61は、マニピュレータ101とその周辺を捉えている。距離算出部62は、カメラ61の出力情報から、マニピュレータ101とその周辺の物体との距離を算出する。カメラ61と距離算出部62は観測部を形成する。判断部63は、距離算出部62の出力に基づいて、マニピュレータ101とカメラ61で捕らえられた物体との衝突の予測を行い、その結果に基づいてアンプ64を制御する。アンプ64は、判断部63の出力に従って線材38に流す電流量を変化させる。これにより、線材38による部材31,32,33,…間の結合力N1、N2…が変化する。アンプ64は、結合力の大きさを設定する力設定部の概念に含まれるものである。線材38は、温度が上がると短縮する方向の力を発生する。
以上のように構成された構造体7及びマニピュレータ及び制御システムについて、以下その動作を説明する。
通常の状態では、線材38に通電され、各部材31,32,33,…間の結合力がそれぞれN1、N2…以上の値になっているものとする。カメラ61は、マニピュレータ101と物体9を静止画像としてとらえ、距離算出部62にフレームとして画像信号を送る。距離算出部62は、前回のフレーム画像と今回のフレーム画像からマニピュレータ101と物体9の距離変化を算出するとともに、今回のフレーム画像から絶対距離を算出する。そしてこれら距離変化を表す信号と絶対距離を表す信号とを判断部63に送る。判断部63はこれらの信号に基づいた信号をアンプ64に与える。
判断部63によってマニピュレータ101と物体9の衝突が予測された場合には、線材38の電流を所定の値以下にする。これにより、線材38による引張り力が減退し、線材38による結合力がN1、N2…未満の値に下がる。
この状態で物体9がマニピュレータ101に衝突した際には、結合力の低下による横断面方向の抵抗力の低下により、アーム3は部材が容易に分離又は変位する状態となり、物体9の衝突による衝撃を緩和することができる。
このように、本実施の形態によれば、衝突を予測した場合にのみ、必要に応じて結合力を弱めるため、構造体7としての剛性を確保しつつ、衝突時の衝撃をより緩和することが可能となる。
アーム3に関しては、例えば実施の形態1で述べた磁石による部材同士の結合(図5)も可能である。図9にその例を示す。磁石111aが電磁石である場合には、上記同様衝突が予測されたらアンプ64による電流を低減させることにより、衝突時の分離又は変位を容易にすることができる。また、磁石111aが永久磁石である場合には、図6(a)、図6(b)を用いて説明したように、磁石111aを移動させる磁石回転機構(図示せず)を設けるようにしてもよい。この場合、アンプ64が磁石回転機構を駆動する構造でも差し支えない。
また、部材の構造は、図3、図4に示す構造も可能である。また、アンプ64のオンオフ制御も、系によっては可能である。
また、線材38に関し、結合力の制御が困難な場合には、直列にばねを設ける等の改善を行うことができる。
また、本実施形態2では、観測部として、カメラ61と距離算出部62による例を挙げたが、これらは距離及び距離変化という物理量を電気信号に変換する手段であるから、他の方法でも差し支えない。例えば超音波距離センサ、ステレオカメラ、赤外線センサ、レーザを用いた距離センサ等が観測部の一例としてあり得るし、また、観測部を、マニピュレータ101と周囲の距離に基づく電気容量変化を見る手段によって構成してもよい。
また、線材38に例えば高周波を重畳して、信号線や電力線として用いることも可能である。
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、図面を参照しながら説明する。
図10は、本発明の実施の形態3における構造体、マニピュレータ及び制御システムの要部を示している。マニピュレータ自体は実施の形態2の図7のマニピュレータ101と同じものである。ここでは、同一の構成部材に同一の記号を付している。図10に示すように、制御システムは、カメラ61、距離算出部62、判断部63、アンプ64及びタスク状況管理部65を備えている。タスク状況管理部65は、マニピュレータのタスク遂行状況の把握と予測を行い、結合力を強めるか、弱めるための信号を判断部63に対して出力可能な機能を有する。
例えば、外部の物体(例えば実施の形態2の物体9)の衝突が生じた際の衝撃では、アーム3等での衝撃を抑えるために所定の部材を分離又は変位させる必要があるが、ハンド機構6が硬質の物体(例えば金属の棒等)を把持し、それを更に硬質の棚(例えば金属板)などに設置する場合、速度ゼロで確実に設置することは非常に難しいので、設置の際にアーム3等に衝撃が生じ、外部の物体衝突と同等の加速度が生じる可能性がある。
このためアーム2、3、4に生じる加速度による反力が、通常の結合力N1、N2…や最大静止摩擦力F1、F2…を生じさせる反力を超えると、部材が不要に分離又は変位する。これを回避すべくタスク状況管理部65は、現在のタスクがマニピュレータ101に硬質物設置等の衝撃を生じる可能性が予測される場合に、判断部63に対し結合力を強めるよう、信号を出す。判断部63は、他の物体の衝突が予想されない場合、タスク状況管理部65の信号を優先し、アンプ64の駆動電流を上げたままとして結合力を高めることで硬質物設置の衝撃に備えることができる。
また、通常の等速輸送タスクにおいては加速度が生じる可能性はほとんど予測されないので、タスク状況管理部65は、より安全性を高めるために結合力を弱める信号を判断部63に出す。
タスク状況管理部65による結合力強化予測として硬質物を設置する状況にある場合を例に挙げたが、その他の状況の場合でも加速度が生じると予測されるタスクに対しては、結合力を強める指示を出す。例えば、構造体7を移動系に搭載する場合において、この移動系が段差や凹凸の上を走向するタスクが遂行される場合や、クリック感のある非線形な対象を扱うタスクが遂行されるとき等も結合力を強める。また、通常のタスクで予測される加減速信号に同期させて結合力を変化させてもよい。
なお、本実施の形態3においても、実施の形態2で述べた様々なバリエーションが適用可能である。
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について、図面を参照しながら説明する。
図11は本発明の実施の形態4における構造体を示す図である。図11において、構造体としてのアーム12の部材123には、駆動軸15が固定されている。アーム12は、この駆動軸15により、B方向の回転駆動やC方向の並進駆動が可能となっている。
アーム12は、全体としては実施の形態1で示したアーム3と同様の構成であるが、固定体に固定される固定点がアーム12中間の部材123である点が主たる相違点である。すなわち、部材123が基端側部材となっており、この部材123は、先端面(図11における上側の端面)123aと、この先端面とは反対側の第2の先端面(図11における下側の端面)123bとを有する。そして、この先端面123aと第2の先端面123bとの間の部位が、固定体に固定される定着部となっている。また、部材123の先端面123aに連結される部材124から部材41(図1(a)参照)に至る各部材は、中間部材となり、部材42は先端側部材となる。部材123の第2の先端面123bに連結される部材122は、第2の中間部材であり、部材121は、第2の先端側部材となっている。したがって、部材121は直接的にも間接的にも固定体に結合されるものではない。また、駆動部材123、部材124等の結合力を発生させる線材130は、結合力発生部として機能し、駆動部材123、部材122及び部材121の結合力を発生させる線材131は、第2の結合力発生部として機能する。この構造体においては、線材130及び線材131による部材間の結合力N1、N2…が、それぞれ部材123に近いほど大きく、部材123から離れるに従って小さくなるように設定され、それに伴い最大摩擦力F1、F2…も駆動部材123に隣接する面が最大となっている。つまり、部材123と部材122との間に生ずる結合力の大きさ(第1の大きさ)が、部材122と部材121との間に生ずる結合力の大きさ(第2の大きさ)以上となっている。
なお、部材123と部材124との間に生ずる結合力の大きさと、部材123と部材122との間に生ずる結合力の大きさとは、同等であっても異なっていてもよい。この結合力の大小関係は、連結される部材の数等によって適宜設定すればよい。
この構造の動作は、実施の形態1におけるアーム3を部材123から両端に延ばした構造と同等であるので省略する。アーム12は、部材123に対して対称な構成である必要はない。
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5について、図面を参照しながら説明する。
図12(a)、図12(b)、図13は、本発明の実施の形態5における構造体、マニピュレータ及び制御システムを示している。本実施の形態のマニピュレータ102は、実施の形態2のアーム2、3、4の外装を変更したものであり、各々アーム16、17、18としている。図13は、例えばアーム17を代表させて表示している。アーム17は、部材171〜175を備え、部材171〜175の外装171b〜175bは、それぞれ接触センサとして構成されている。アーム16、18においても、アーム17と同様の構成である。アンプ64、結合力を与える線材38も、実施の形態2と同じものである。
接触センサ171b〜175bは、外部からの接触があると、信号を出力する。この信号は判断部66に集められる。図示しないが、他のアームの接触センサも同様に判断部66に入力されている。判断部66は、接触センサからの信号の入力があると、アンプ64に対し電流を下げるよう指示する。
アンプ64は、判断部66の出力に従って線材38に流す電流量を変化させ、結合力N1、N2…を変化させる。アンプ64と各部材171〜175で力設定部を形成する。形状記憶合金によって構成される線材38は、温度が上がると短縮する方向の力を発生する。
以上のように構成された構造体及びマニピュレータ及びシステムについて、以下その動作を説明する。
通常の状態において、線材38には通電されており、結合力がN1、N2…以上の値になっているものとする。図12(b)に示すように、物体9がアーム17の部材173、174の接触センサ173b、174bに接触すると、接触センサ173b、174bは信号を出力する。この信号は判断部66に送られる。すると判断部66は、電流を下げる信号をアンプ64に送り、線材38が冷却されて引張り力が減退し、結合力がN1、N2…未満の値に下がる。
こうして物体9がマニピュレータ102に接触して直後に結合力が低下し、横断面方向の抵抗力が低下するため、アーム17は容易に部材が分離する状態となり、物体9の衝突による衝撃が緩和される。
このように、本実施の形態によれば、接触センサ171b〜175bを設けることにより、衝突時の結合力を弱めて、より衝撃を緩和することが可能となる。
なお、アーム17は、線材38による結合構造に代え、例えば実施の形態1で述べた図5のアーム11での磁石による結合構造に変更可能である。特に磁石111aが電磁石である場合には、接触時に瞬時に電流を下げることにより、短時間で衝突に備えることができ、部材間の分離をより容易にすることができる。その他、本実施の形態でも、実施の形態2における種々のアームの結合状態を利用することができる。
また、接触センサで接触を検知する代わりに、力センサを設置することが考えられる。この力センサを用いて、マニピュレータ102に外部の物体9が接触した時の力を検出する。検出した力に基づいて、結合力を変化させることで、効果を奏することができる。このように力センサを用いた場合は、実施の形態4と比べて遅れて反応することになるが、外部の物体9から加わる力に正確に対応することが可能になる。
なお、実施の形態1〜5で述べた構造体をアームとして、複数並列に備えたマニピュレータ、制御システム等も、本発明の範囲内で実施可能である。この場合は、衝突に対し緩和効果が同等で、かつ全体の変形等が少なくなる。
また、実施の形態2、3、5で横断面方向に対抗する力を設定する構成として、最大静止摩擦力を結合力によって制御する構成を説明したが、横断面方向に対抗する力そのもの(例えば、動摩擦力)を設定する構成とすることも可能である。この構成としては、部材分割面の形状を変化させることによって、横断面方向の力に対向する力を設定する構成を採用することができる。例えば、結合力そのものは変化させず、図4に示すように、部材間の結合面を形成する端面に形成される斜面88の角度を変えるようにしてもよい。この構成では、固定体に近い結合面ほど斜面88の傾斜が大きく(軸方向に近く)、固定体から遠い結合面ほど斜面88の傾斜が緩い構成にすることが可能である。傾斜面88を順次変化させる構成以外にも、突起の高さを変更することによって、各部材に生じるせん断力の大きさを順次変える構成でも実現可能であり、また、密着する結合面の表面粗さを変化させることでも実現可能である。
このように、例えば動摩擦力を用いた場合は、動摩擦力の影響により、衝突時に各部材が元に戻る速度を遅くできる。そのため、最大静止摩擦力や磁石を用いた場合と比べて、復元時に物体9に影響を及ぼす可能性を小さくすることができる。
また、最大静止摩擦力や磁石を用いた構造と、動摩擦力を用いた構造を適宜組み合わせることで、より効果を奏することも可能である。
[実施形態の概要]
以上の実施形態をまとめると、以下の通りである。
(1) 前記実施形態の構造体は、少なくとも3つの部材が一列に並ぶように互いに連結された構成であり、固定体に直接的又は間接的に結合されるべき構造体である。この構造体は、第1部材と第2部材と第3部材とを備える。そして、第1部材は、固定体に直接的又は間接的に結合され得る定着部(ベース部)と、先端面とを有する。第3部材は、基端面と、前記基端面の反対側に位置する先端面とを有する。第2部材は、第1端面と、その反対側に位置する第2端面とを有し、前記第1端面が第1部材の前記先端面に接し、かつ前記第2端面が前記第3部材の前記基端面に接する状態で前記第1部材と前記第3部材との間に配置される。前記第1部材の前記先端面と前記第2部材の前記第1端面とが互いに押圧し合う第1結合力と、前記第2部材の前記第2端面と前記第3部材の前記基端面とが互いに押圧し合う第2結合力とを発生させる結合力発生部と、を備える。そして、前記第1結合力により前記第1部材の前記先端面と前記第2部材の前記第1端面との間に生じた力よりも大きな外力が付与されると、前記第1部材と前記第2部材との間に相対変位を生じさせ、前記第2結合力により前記第2部材の前記第2端面と前記第3部材の前記基端面との間に生じた力よりも大きな外力が付与されると、前記第2部材と前記第3部材との間に相対変位を生じさせる。
前記実施形態では、第1の大きさの結合力によって基端側部材の先端面と中間部材の第1端面との間に生じた力未満の外力が例えば中間部材に付与された場合には、基端側部材と中間部材との間の相対変位は生じないが、前記力よりも大きな外力が例えば中間部材に付与されると、基端側部材と中間部材との間に相対変位が生じる。また、第2の大きさの結合力によって中間部材の第2端面と先端側部材の基端面との間に生じた力未満の外力が例えば中間部材に付与された場合には、中間部材と先端側部材との間に相対変位は生じないが、前記力よりも大きな外力が例えば中間部材に付与されると、中間部材と先端側部材との間に相対変位が生ずる。相対変位が発生することにより、外力を構造体全体で受けるのではなく、構造体の一部で負担することができる。このため、例えば構造体が移動中に外部の物体に衝突した場合でも、外部の物体に与えられる慣性力を低減することができる。
(2) 前記第1の結合力は前記第2の結合力以上の大きさよりも大きいので、外力が付与された場合にも構造体が安定し易くなる。また、中間部材に対する先端側部材の変位の方が、基端側部材に対する中間部材の変位よりも生じ易いため、この構造体がマニピュレータに用いられる場合であっても、外部の人又は物体に衝突した際に生ずる衝撃力を低減し易くなる。すなわち、先端側部材の可動範囲が中間部材の可動範囲に比べて大きくなるため、先端側部材の方が外部の物体に衝突する可能性が高くなる。しかしながら、衝突の確率が高い先端側部材の方が位置ずれし易くなることにより、外部の人又は物体と衝突した際の衝撃力を緩和することができる。
(3) 前記第2部材は、連結された複数の中間部材から構成され、前記結合力発生部は、前記中間部材の接触面のうち、前記ベース部からi番目の接触面に生ずる結合力をN(i)とした時に、任意のiに対してN(i)>N(i+1)となる結合力を発生させるものである。すなわち、前記中間部材は、一列に並ぶように互いに接触した状態で連結される複数の接続部材を備え、前記結合力発生部は、互いに接触し合う接続部材同士の接触面にも結合力を発生させ、前記基端側部材とこれに接触する接続部材との間の接触面、各接続部材間の各接触面、及び前記先端側部材とこれに接触する接続部材との間の接触面のうち、基端側からi番目の接触面に生ずる力をN(i)としたときに、任意のiに対してN(i)>N(i+1)である。
したがって、外力が付与された場合において中間部材自身での安定性をも向上することができる。またこの構造体がマニピュレータに用いられる場合等のように、先端側ほど可動範囲が大きく、外部の物体と衝突する可能性が高い場合であっても、中間部材での衝突時の衝撃力を低減し易くすることができる。
(4) 前記接触面に生ずる前記力は、摩擦力であってもよい。すなわち、前記結合力発生部が発生させる前記第1結合力及び前記第2結合力は、静止摩擦力であってもよい。また、前記結合力発生部が発生させる前記第1結合力及び前記第2結合力は、動摩擦力であってもよい。
(5) 前記結合力発生部が発生させる前記第1結合力及び前記第2結合力は、磁力であってもよい。また、前記磁力が電磁力であってもよい。また、前記結合力発生部は、前記第1部材、前記第2部材および前記第3部材に段差を設け、前記第1部材と前記第2部材との間の段差の端面に形成される斜面の傾斜角度を、前記第2部材と前記第3部材との間の段差の端面に形成される斜面の傾斜角度より大きくするようにしてもよい。
(6) 前記第1部材と前記第2部材との間、または、前記第2部材と前記第3部材との間の少なくともいずれかに、関節部を有していてもよい。すなわち、前記複数の接続部材には第1の接続部材と、この第1の接続部材の先端側に隣接する第2の接続部材とが含まれており、前記構造体は、前記第1の接続部材と前記第2の接続部材との間に配置された関節部をさらに備えていてもよい。
この態様では、関節の基端側の部位に対して関節の先端側の部位を折り曲げることができる。この場合でも、外力が付与された際の構造体の安定性を確保することができる。
(7) 前記基端側部材の前記定着部は、前記先端面とは反対側の基端面によって定義されていてもよい。この態様では、基端側部材に対して一方向に中間部材と先端側部材が並ぶ。
(8) 前記基端側部材は、前記先端面とは反対側に第2の先端面を有し、前記定着部は、前記先端面と前記第2の先端面との間の部位によって定義され、前記構造体は、第1端面と、その反対側に位置する第2端面とを有し、前記基端側部材の前記第2の先端面に連結される第2の中間部材と、前記第2の中間部材に連結される第2の先端側部材と、前記基端側部材の前記第2の先端面と前記第2の中間部材の前記第1端面とが互いに押圧し合う第1の大きさの結合力と、前記第2の中間部材の前記第2端面と前記第2の先端側部材の基端面とが互いに押圧し合う第2の大きさの結合力とを発生させる第2の結合力発生部と、をさらに備えていてもよい。
この態様では、基端側部材に対して、一方側に中間部材及び先端側部材が並び、その反対側に第2の中間部材及び先端側部材が並ぶ。言い換えると、固定体に固定される基端側部材が先端側部材と第2の先端側部材との間に位置する。
(9) 前記基端側部材の前記第2の先端面と前記第2の中間部材の第1端面とを互いに押圧させる前記第1の結合力は、前記第2の中間部材の第2端面と前記第2の先端側部材の基端面とを互いに押圧させる前記第2の結合力以上の大きさであるのが好ましい。
この態様では、外力が付与された場合にも構造体が安定し易くなる。また、第2の中間部材に対する第2の先端側部材の変位の方が、基端側部材に対する第2の中間部材の変位よりも生じ易いため、この構造体がマニピュレータに用いられる場合であっても、外部の人又は物体に衝突した際に生ずる衝撃力を低減し易くなる。すなわち、第2の先端側部材の可動範囲が第2の中間部材の可動範囲に比べて大きくなるため、第2の先端側部材の方が外部の物体に衝突する可能性が高くなる。しかしながら、衝突の確率が高い第2の先端側部材の方がずれ易くすることにより、外部の人又は物体と衝突した際の衝撃力を緩和することができる。
(10) 前記第1部材と前記第2部材との間、および、前記第2部材と前記第3部材との間に、それぞれ関節部を有する場合、前記結合力発生部は、前記第1部材、前記第2部材、前記第3部材の各部材を前記関節部で区切って部材群とし、各部材群それぞれにおいて前記ベース部からj番目の接触面に生じる結合力をN(j)とした時に、任意のjに対してN(j)>N(j+1)となる結合力を発生させるものであるのが好ましい。
(11) 前記第2の中間部材は、一列に並ぶように互いに接触した状態で連結された複数の第2の接続部材を備え、前記基端側部材とこれに接触する第2の接続部材との間の接触面、各第2の接続部材間の各接触面、及び前記第2の先端側部材とこれに接触する第2の接続部材との間の接触面のうち、基端側からi番目の接触面に生ずる力をF(i)としたときに、任意のiに対してF(i)>F(i+1)であるのが好ましい。
この態様では、外力が付与された場合にも第2の中間部材自身での安定性を向上することができる。またこの構造体がマニピュレータに用いられる場合等のように、先端側ほど可動範囲が大きく、外部の物体と衝突する可能性が高い場合であっても、第2の中間部材での衝突時の衝撃力を低減し易くすることができる。
(12)前記結合力発生部は、前記ロボットハンドに信号または電力を供給する線材であってもよい。この態様では、中間部材及び先端側部材が位置ずれを許容できる一方で、これが分離してしまうことを防止することができる。
(13)前記結合力発生部は、前記各部材の相対可動範囲を、各部材の軸に垂直な方向のみとする結合力を発生させるものであってもよい。
(14)前記結合力発生部は、前記各部材の相対可動範囲を、各部材の軸周り方向のみとする結合力を発生させるものであってもよい。この態様では、外力を受けた場合であっても、中間部材及び先端側部材の軸心位置は変位しない。このため、中間部材及び先端側部材が筒状に形成されている場合であっても、中間部材及び先端側部材の内部に挿入された部材等を保護することができる。
(15)前記結合力発生部は、磁力によって前記結合力を発生させる磁石又は電磁石を含んでいてもよい。この態様では、基端側部材に中間部材及び先端側部材を直接結合させることなく、相対移動可能に連結することができる。
(16)前記実施形態は、構造体と外部の物体との相対位置関係を測定する観測部と、前記観測部による測定結果に基づいて前記構造体と前記外部の物体との衝突を予測する判断部と、前記判断部の予測に基づいて前記結合力発生部の結合力の大きさを変化させる力設定部と、を備える構造体制御システムである。すなわち、前記実施形態は、構造体制御システムであって、固定体に固定されるべき構造体であって、固定体に直接的又は間接的に固定され得る定着部と、先端面とを有する基端側部材と、基端面と、前記基端面の反対側に位置する先端面とを有する先端側部材と、第1端面と、その反対側に位置する第2端面とを有し、前記第1端面が前記基端側部材の前記先端面に接し、かつ前記第2端面が前記先端側部材の前記基端面に接する状態で前記基端側部材と前記先端側部材との間に配置される中間部材と、前記基端側部材の前記先端面と前記中間部材の前記第1端面とが互いに押圧し合う第1の大きさの結合力と、前記中間部材の前記第2端面と前記先端側部材の前記基端面とが互いに押圧し合う第2の大きさの結合力とを発生させる結合力発生部と、を有し、前記第1の大きさの結合力により前記基端側部材の前記先端面と前記中間部材の前記第1端面との間に生じた力よりも大きな外力が付与されると、前記基端側部材と前記中間部材との間に相対変位を生じさせ、前記第2の大きさの結合力により前記中間部材の前記第2端面と前記先端側部材の前記基端面との間に生じた力よりも大きな外力が付与されると、前記中間部材と前記先端側部材との間に相対変位を生じさせる構造体と; 前記構造体と外部の物体との相対位置関係を測定する観測部と; 前記観測部による測定結果に基づいて前記構造体と前記外部の物体との衝突を予測する判断部と; 前記結合力発生部が発生させる結合力の大きさを設定するとともに、前記判断部の出力に応じて、設定された結合力の大きさを変化させる力設定部と;を備えている。
この構造体制御システムでは、判断部によって構造体と外部の物体との衝突が予測されると、結合力発生部が発生させる結合力の大きさを変えることができるので、衝突の発生しない通常時には構造体の剛性を確保しつつ、衝突時には衝撃力を低減することができる。
(17) 前記実施形態は、前記構造体の表面に設けられた力センサと、前記力センサによる測定結果に基づいて前記結合力発生部の結合力の大きさを変化させる力設定部と、を備える構造体制御システムである。
(18)前記実施形態は、構造体制御システムであって、固定体に固定されるべき構造体であって、固定体に直接的又は間接的に固定され得る定着部と、先端面とを有する基端側部材と、基端面と、前記基端面の反対側に位置する先端面とを有する先端側部材と、第1端面と、その反対側に位置する第2端面とを有し、前記第1端面が前記基端側部材の前記先端面に接し、かつ前記第2端面が前記先端側部材の前記基端面に接する状態で前記基端側部材と前記先端側部材との間に配置される中間部材と、前記基端側部材の前記先端面と前記中間部材の前記第1端面とが互いに押圧し合う第1の大きさの結合力と、前記中間部材の前記第2端面と前記先端側部材の前記基端面とが互いに押圧し合う第2の大きさの結合力とを発生させる結合力発生部と、を有し、前記第1の大きさの結合力により前記基端側部材の前記先端面と前記中間部材の前記第1端面との間に生じた力よりも大きな外力が付与されると、前記基端側部材と前記中間部材との間に相対変位を生じさせ、前記第2の大きさの結合力により前記中間部材の前記第2端面と前記先端側部材の前記基端面との間に生じた力よりも大きな外力が付与されると、前記中間部材と前記先端側部材との間に相対変位を生じさせる構造体と; 前記構造体のタスク遂行状況を把握するタスク状況管理部と; 前記結合力発生部が発生させる結合力の大きさを設定するとともに、前記タスク状況管理部の出力に基づいて、設定された結合力の大きさを変化させる力設定部と;を備えている。
この構造体制御システムでは、タスク状況管理部によって把握されているタスク遂行状況から構造体への外力の付与が予測されると、結合力発生部の発生させる結合力の大きさを変えることができるので、通常時には構造体の剛性を確保しつつ、外力付与時には衝撃力を低減することができる。
(19)前記実施形態は、構造体制御システムであって、固定体に固定されるべき構造体であって、固定体に直接的又は間接的に固定され得る定着部と、先端面とを有する基端側部材と、基端面と、前記基端面の反対側に位置する先端面とを有する先端側部材と、第1端面と、その反対側に位置する第2端面とを有し、前記第1端面が前記基端側部材の前記先端面に接し、かつ前記第2端面が前記先端側部材の前記基端面に接する状態で前記基端側部材と前記先端側部材との間に配置される中間部材と、前記基端側部材の前記先端面と前記中間部材の前記第1端面とが互いに押圧し合う第1の大きさの結合力と、前記中間部材の前記第2端面と前記先端側部材の前記基端面とが互いに押圧し合う第2の大きさの結合力とを発生させる結合力発生部と、を有し、前記第1の大きさの結合力により前記基端側部材の前記先端面と前記中間部材の前記第1端面との間に生じた力よりも大きな外力が付与されると、前記基端側部材と前記中間部材との間に相対変位を生じさせ、前記第2の大きさの結合力により前記中間部材の前記第2端面と前記先端側部材の前記基端面との間に生じた力よりも大きな外力が付与されると、前記中間部材と前記先端側部材との間に相対変位を生じさせる構造体と; 前記構造体に配設された接触センサと; 前記結合力発生部が発生させる結合力の大きさを設定するとともに、前記接触センサの出力に基づいて、設定された結合力の大きさを変化させる力設定部と;を備えている。
この構造体制御システムでは、接触センサによって構造体と外部の物体との衝突が検出されると、結合力発生部の発生させる結合力の大きさを変えることができるので、衝突の発生しない通常時には構造体の剛性を確保しつつ、衝突時には衝撃力を低減することができる。
(20)前記実施形態は、マニピュレータであって、固定体に固定されるべき構造体であって、固定体に直接的又は間接的に固定され得る定着部と、先端面とを有する基端側部材と、基端面と、前記基端面の反対側に位置する先端面とを有する先端側部材と、第1端面と、その反対側に位置する第2端面とを有し、前記第1端面が前記基端側部材の前記先端面に接し、かつ前記第2端面が前記先端側部材の前記基端面に接する状態で前記基端側部材と前記先端側部材との間に配置される中間部材と、前記基端側部材の前記先端面と前記中間部材の前記第1端面とが互いに押圧し合う第1の大きさの結合力と、前記中間部材の前記第2端面と前記先端側部材の前記基端面とが互いに押圧し合う第2の大きさの結合力とを発生させる結合力発生部と、を有し、前記第1の大きさの結合力により前記基端側部材の前記先端面と前記中間部材の前記第1端面との間に生じた力よりも大きな外力が付与されると、前記基端側部材と前記中間部材との間に相対変位を生じさせ、前記第2の大きさの結合力により前記中間部材の前記第2端面と前記先端側部材の前記基端面との間に生じた力よりも大きな外力が付与されると、前記中間部材と前記先端側部材との間に相対変位を生じさせる構造体と; 前記構造体の前記先端側部材に設けられたエンドエフェクタと;を備え、前記中間部材は、一列に並ぶように互いに接触した状態で連結された複数の接続部材を備え、前記結合力発生部は、互いに接触し合う接続部材同士の接触面にも結合力を発生させ、前記基端側部材とこれに接触する接続部材との間の接触面、各接続部材間の各接触面、及び前記先端側部材とこれに接触する接続部材との間の接触面のうち、基端側からi番目の接触面に生ずる力をN(i)としたときに、任意のiに対してN(i)>N(i+1)である。
(21)前記実施形態は、長手方向を有する構造体であって、前記構造体は、前記長手方向の局所的接線を平均法線とする平面または曲面で分割される複数の部材で構成され、前記平面または曲面の平均面が横断面方向と定義され、隣接する部材の横断面方向位置における正規位置が定義されており、ある部材と、これに隣接する部材との間に前記横断面方向に力が作用した場合、前記ある部材について、ある力F未満の力が作用した場合には前記正規位置からの変位が発生せず、前記力F以上の力が作用した場合に変位成分が前記力Fの向きに発生し、前記力Fは個々の隣接する部材間ごとに、または一括して全部の値を設定できるようにした構造体である。
この構成により、構造体に何らかの衝突等が生じても、複数の部材で構成された構造体の少なくとも一部の部材が衝撃に対し変位するので、衝撃力を緩和することができる。
(22)前記(21)に記載の構造体において、前記力Fの値は、所定の信号に基づいて設定できるのが好ましい。
(23)前記(21)に記載の構造体において、互いに隣接する部材間で引き合う力が結合力と定義されており、前記結合力に応じた横断面方向の力が前記力Fとして前記隣接部材間に生じるのが好ましい。
(24)前記(21)に記載の構造体において、互いに隣接する部材間で引き合う力が結合力と定義されており、前述のある部材が前記隣接部材に対し前記正規位置から横断面方向に変位した際に前記正規位置への復元力が生じ、前記復元力は、前記変位の量に対し多項式の次数にして1次以上の関係で増加するのが好ましい。
(25)前記(21)に記載の構造体は、n個の複数の部材で構成されるとともに、1番目の部材が固定端又は駆動力の作用する基端側となり、n番目の部材が自由端となる1個の直列構造体であり、この直列構造体において、任意のiに対しN(i)>N(i+1)であるのが好ましい。
(26)前記(21)に記載の構造体は、n個の複数の部材で構成されるとともに、端部からk番目の部材が固定端又は駆動力の作用する基端側部材となり、1番目及びn番目の部材が自由端となる1個の直列構造体であり、この直列構造体において、i<kである任意のiに対しN(i)<N(i+1)であり、かつ、k<iである任意のiに対しN(i−1)>N(i)であるのが好ましい。
(27)前記実施形態は、前記(22)に記載の構造体と、この構造体と外部の物体との相対位置関係を測定する観測部と、前記観測部の情報に基づき前記構造体と前記物体との衝突を予測する判断部とを備える制御システムであり、この制御システムは、前記力Nを設定する力設定部を前記構造体またはその周辺に有し、前記判断部の出力に応じて前記力設定部を制御する。
(28)前記実施形態は、前記(22)に記載の構造体と、この構造体の動作をタスクに従い予測するタスク状況管理部とを備える制御システムであり、この制御システムは、前記力Fを設定する力設定部を前記構造体またはその周辺に有し、前記タスク状況管理部の出力に応じて前記力設定部を制御する。
(29)前記実施形態は、前記(22)に記載の構造体と、接触センサとを備える制御システムであり、この制御システムは、前記力Fを設定する力設定部を前記構造体またはその周辺に有し、前記接触センサの出力に基づいて前記力設定部を制御する。
(30)前記(27)〜(29)の何れかに記載の制御システムにおいて、互いに隣接する部材間で引き合う力が結合力と定義されており、前記結合力に応じた横断面方向の力が前記力Fとして隣接する部材間に生じる構造体に対して、前記結合力を制御することによって前記力設定部を制御する。
(31)前記実施形態は、前記(25)に記載の構造体と、この構造体の前記n番目の部材側に配設されたエンドエフェクタと、を備えているマニピュレータである。
以上説明したように、前記実施形態では、安全な構造体、及び安全性を高めたマニピュレータ及び制御システムが実現可能である。