JP4738575B2 - 建物敷地の地盤解析装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物の建築予定の敷地に、当該建物の重量による地盤沈下がどの程度生じるかを、事前に解析するための建物敷地の地盤解析装置に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、敷地に建築した建物の重量により地盤沈下が発生し、当該建物が傾斜しないように、敷地の地盤について地盤調査試験を行っている。
特に、軟弱地盤であるといわれている地域に敷地がある場合、地盤調査試験を行い、地盤調査試験の結果に基づき、軟弱地盤でも建物が傾かない基礎を設計する必要がある。
このような地盤調査試験は、建物の設計を行う前に、地盤調査の専門家が、敷地の複数地点に対してスウェーデン式サウンディング試験等を実施し、これにより、その敷地の各地点の地耐力データを得るものとなっている。
ここで、スウェーデン式サウンディング試験について簡単に説明する。すなわち、スウェーデン式サウンディング試験は、図6(A)に示されるように、棒状の細長いロッド81と、このロッド81の先端に設けられたスクリューポイント82とを備えた、重力荷重50Nの捻り角錐83を地面に鉛直に立て、この状態で、重力荷重100Nの載荷板84を二枚、重力荷重250Nの載荷板85を三枚、順次捻り角錐83に載荷し、50Nから1kNまでの各荷重段階における捻り角錐83の地盤への貫入量を測定し、さらに、図6(B)に示されるように、1kNの荷重状態において、捻り角錐83のハンドル86を操作し、これにより、地盤に所定深さ(例えば、深さ25cm)まで貫入させるのに要する捻り角錐83の回転数を測定するものである。
【0003】
そして、建物の設計時に、得られた地耐力データに基づいて、地盤沈下による建物の傾斜を予測し、この予測結果に基づいて基礎の設計を行っている。
ここで、建物の構造や規模が当初のものから変更されると、建物の傾斜を予想するのに必要な地耐力データが不足することがあり、不足している地耐力データを得るには、地盤調査試験を再実施しなければならない。
このような地盤調査試験の再実施を回避するには、当該敷地に建築しうる様々な建物、および、その基礎を想定しておき、一回の地盤調査試験で、想定された基礎すべてを設計するのに充分な地耐力データを採取すればよく、多くの地点の地耐力データを用意しておけば、これからどの様な建物が設計されても、地盤沈下による建物の傾斜を予測することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、地盤調査試験の再実施を回避するために、多くの地点について地耐力データの採取を行うようにすると、実際には不要となる地耐力データまでも採取してしまい、データ採取に手間と時間とがかかり、地盤調査試験が煩雑なものとなるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、地盤調査試験が容易に行えるようになる建物敷地の地盤解析装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、図面をも参照して説明すると、建物の建築予定の敷地Gに、当該建物の重量による地盤沈下がどの程度生じるかを、事前に解析するための建物敷地の地盤解析装置1であって、地盤に貫入される捻り角錐83を用いるスウェーデン式サウンディング試験の試験結果である、前記捻り角錐83に加えた荷重Wsw、前記捻り角錐83を回転操作して前記地盤に貫入させた際における、前記捻り角錐83の所定貫入量当たりの半回転数Nsw、および、前記地盤の圧密層の厚さ寸法Hと、前記建物の単位面積当たりの荷重qとに基づいて、前記捻り角錐を貫入した地点の地盤沈下量Sを、次式
S=mv・(△σ1z´+△σz−Pc)・H
(ただし、mvは地盤の体積圧縮係数であり、mv=1/(40・qu)
△σ1z´は着工前の建物が存在しない状態での、前記敷地の地盤内部に生じている応力で、地盤を形成する土壌の単位体積当たりの重量に、深さ寸法を乗じ、地下水が存在する場合には、地下水の浮力を差し引いたものであり、
△σzは前記敷地に建物を建築されたことで地盤の内部の応力の増大分である増大応力であり、△σz=q・fB(m,n)、
fB(m,n)は、ニューマークの式による応力関数であり、変数mは、建物の妻方向寸法B、および前記敷地の深さzを用い、m=B/zとしたもの、変数nは、建物の桁方向寸法L、前記敷地の深さzを用い、n=L/zとしたものであり、
Pcは、地盤の圧密応力であり、Pc=1.2qu
quは、地盤が備えている一次圧縮強度であり、
qu=0.045Wsw+0.075Nsw(kN/m 2 )
であるものとする)
に基づいて算出する地盤沈下量算出手段を備え、前記地盤沈下量算出手段22は、前記敷地Gの異なる複数の地点についてスウェーデン式サウンディング試験を行って得た、各地点の前記荷重Wsw、前記半回転数Nswおよび前記圧密層の厚さ寸法Hが入力され、各地点における地盤沈下量Sを算出するものとされ、当該地盤解析装置1は、前記地盤沈下量算出手段22が算出した前記各地点における前記地盤沈下量Sに基づいて、前記敷地Gに建築される前記建物による沈下量を立体的に示す沈下イメージ図40を生成する沈下イメージ図生成手段23を備え、この沈下イメージ図40は、前記敷地Gを平面として表示するとともに、前記各地点の地盤沈下量Sを示す複数の指示バー41を備え、これらの指示バー41は、上端部から下端部に向かって延びる沈下量表示部42を備えることを特徴とする。
このような本発明では、スウェーデン式サウンディング試験により、荷重Wswおよび半回転数Nswと、地盤の圧密層の厚さ寸法Hとが得られれば、様々な建物についての単位面積当たりの荷重qを入力することで、その場で、試験地点の地盤沈下量Sが速やかに算出され、複数の地点についてスウェーデン式サウンディング試験を行えば、データを事務所等に持ち帰らなくとも、敷地で建物の傾斜を予測することができる。
【0007】
例えば、図1に示されるように、敷地Gの地盤が備えている一次圧縮強度quは、次の数1に示されるように、スウェーデン式サウンディング試験により得られた荷重Wswおよび半回転数Nswから求めることができる。
【0008】
[数1]
qu=0.045Wsw+0.075Nsw(kN/m2)
【0009】
この際、地盤の圧密応力Pcおよび体積圧縮係数mvは、一次圧縮強度quから求まる。すなわち、Pc=1.2・quおよびmv=1/(40・qu)により求めることができる。
【0010】
一方、敷地Gに建物を建築したことにより、地盤の内部に生じている応力は、増大するが、この応力の増大分である増加応力Δσzは、次の数2に示されるように、ニューマークの式による応力関数から求めることができる。ただし、数2において、qは、建物が敷地Gに加えている単位面積当たりの荷重である。
また、数2において、応力関数fB(m,n)の変数mは、図1の如く、建物の妻方向寸法Bを敷地Gの深さzで除したもの(m=B/z)であり、変数nは、建物の桁方向寸法Lを敷地Gの深さzで除したもの(n=L/z)となっている。
【0011】
[数2]
Δσz=q・fB(m,n)
【0012】
さらに、試験地点の地盤沈下量Sは、次の数3から求まる。ここで、数3において、Δσ1z′は、建物が存在しない状態、すなわち着工前の状態において、敷地Gの地盤内部に生じている応力であり、具体的には、地盤を形成する土壌の単位体積当たりの重量に、深さ寸法を乗じ、地下水が存在する場合には、地下水の浮力を差し引いたものである。ここで、Δσ1z′の値としては、現地の土壌を計測した計測値に限らず、地質統計書等から得た値が採用できる。
ここで、応力関数fB(m,n)は、専門書等に図表として記載されているものであり、Δσ1z′は、敷地Gが存在する地域の土壌の種類でほぼ決まるので、スウェーデン式サウンディング試験により、荷重Wswおよび半回転数Nswを求めれば、単位体積当たりの荷重qを備えた建物を敷地Gに建築した際の、地盤沈下量Sを求めることができる。
【0013】
[数3]
S=mv・(Δσ1z′+Δσz−Pc)・H
【0014】
そして、本発明に基づく建物敷地の地盤解析装置を利用すれば、スウェーデン式サウンディング試験が行われる敷地で、建物傾斜の予測が可能となるので、典型的な地点についての地耐力データを採取すれば、当該敷地の地盤沈下の傾向が把握でき、様々な建物の傾斜を予測するにあたり、試験開始後、速やかに試験すべき地点が明確となって、必要最低限の地点について試験を行えばこと足りるようになり、データ採取にかかる手間と時間とが軽減され、地盤調査試験が容易となる。
【0015】
以上のような建物敷地の地盤解析装置1において、前記地盤沈下量算出手段22は、前記敷地Gの異なる複数の地点についてスウェーデン式サウンディング試験を行って得た、各地点の前記荷重Wsw、前記半回転数Nswおよび前記圧密層の厚さ寸法Hが入力され、各地点における地盤沈下量Sを算出するものとされ、前記地盤沈下量算出手段22が算出した前記各地点における前記地盤沈下量Sに基づいて、前記敷地に建築される前記建物による沈下量を立体的に示す沈下イメージ図40を生成する沈下イメージ図生成手段23を設けることを特徴とする。
このような沈下イメージ図生成手段23を設け、目視で確認できる沈下イメージ図40を生成すれば、試験すべき地点の数が不足する場合には、沈下イメージ図40が不自然なものとなり、この不自然な沈下イメージ図40から試験すべき地点の把握が容易となり、試験を行うべき必要最低限の地点を速やかに設定でき、この点からも、データ採取にかかる手間と時間とが軽減され、地盤調査試験が容易となる。
【0016】
また、前記建物52の沈下を防止するために、前記敷地Gに打ち込むべき杭53の本数および位置を示す杭伏図50を、前記沈下イメージ図生成手段23が生成した前記沈下イメージ図40に基づいて生成する杭伏図生成手段24が設けられ、前記杭伏図生成手段24は、柱等の荷重により、前記杭53の本数および位置を決定し、前記沈下イメージ図40から前記地盤沈下量Sを推定して、推定した地盤沈下量Sに応じて前記杭53の長さを決定し、これらの決定した前記杭53の本数、位置、および長さに基づいて杭伏図50を生成することが好ましい。
このようにすれば、敷地Gに建築されることが想定される建物52が複数種類あっても、地盤調査試験が完了するのとほぼ同時に、全種類の建物52について、その傾斜が回避される杭基礎の設計が完了するので、地盤調査試験の完了後、該当する杭基礎の設計を参考にすれば、敷地に関する留意点等が明確となり、建物52の設計を速やかに開始することが可能となる。
【0017】
さらに、前記杭伏図生成手段24が生成した前記杭伏図50に基づいて、杭打工事の積算を行う積算手段25が設けられていることが望ましい。
このようにすれば、地盤調査試験が完了するのとほぼ同時に、設計された杭基礎の積算が完了するので、該当する杭基礎の積算価格から、建物52の工費全体を算出でき、予算を超過した建物の設計を回避することが可能となる。
【0018】
また、当該地盤解析装置には、増加応力Δσzを求めるために、ニューマークの式による応力関数fB(m,n)に基づいて作成した三次元マップを記憶したマップ記憶手段11が設けられていることが好ましい。
このように、応力関数fB(m,n)に基づいた三次元マップを記憶したマップ記憶手段11を設ければ、応力関数fB(m,n)を演算するのよりも速く、増加応力Δσzを求めることが可能となり、地盤沈下量Sの算出や沈下イメージ図の生成が短時間で行えるようになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
図2には、本実施形態に係る建物敷地の地盤解析装置1が示されている。この地盤解析装置1は、キーボード3および液晶ディスプレイ4が一体化された可搬型のハードウエアであるノートブック・コンピュータ2に、地盤解析、杭伏図生成および杭打工事積算用のソフトウエアがインストールされたものである。地盤解析装置1により、地盤調査試験の現場となる敷地でも、杭打工事の概算見積が行える程度の杭伏図の作成が迅速に行えるようになっている。
地盤解析装置1には、図2の如く、前述のソフトウェア等を記憶した記憶装置10と、前述のソフトウェアを実行する演算装置20とが設けられている。
このうち、演算装置20には、マウス5が着脱可能に設けられてるとともに、必要に応じて見積書等を印刷するためのプリンタ6が接続可能となっている。
【0020】
記憶装置10は、比較的大容量のハードディスク装置を備えたものである。この記憶装置10には、前述のニューマークの式による応力関数fB(m,n)に基づいて作成した三次元マップを記憶したマップ記憶手段11と、杭伏図を生成するためのデータが蓄積された杭伏図情報蓄積手段12と、杭打工事の積算に必要なデータを蓄積した積算情報蓄積手段13とが設けられている。
マップ記憶手段11に記憶された三次元マップは、X軸、Y軸およびZ軸のそれぞれに、変数m、変数nおよび応力Fが設定された三次元の直交座標系に、変数mおよび変数nと応力Fとの関係を示す面が設定されたものである。
杭伏図情報蓄積手段12には、複数種類の杭と、図面に描かれる際に各杭を示すシンボルのイメージデータと、各杭を区別するために付与された記号からなるコードデータとが蓄積されている。
積算情報蓄積手段13には、敷地に打ち込まれる各杭の価格および各杭を打ち込む際に必要な費用とが蓄積されている。
【0021】
演算装置20は、マイクロプロセッサ等からなる高速演算素子を有し、インストールされた各種のソフトウェアを同時に並行処理するマルチタスク機能を備えたものである。
演算装置20には、スウェーデン式サウンディング試験で得たデータを入力するためのデータ入力手段21と、スウェーデン式サウンディング試験で得たデータに基づいて地盤沈下量Sを算出する地盤沈下量算出手段22と、地盤沈下量算出手段22が算出した地盤沈下量Sに基づいて沈下イメージ図を生成する沈下イメージ図生成手段23と、沈下イメージ図生成手段23が生成した沈下イメージ図に基づいて生成する杭伏図生成手段24と、杭伏図生成手段24が生成した杭伏図に基づいて杭打工事の積算を行う積算手段25と、記憶装置10との間のデータの送受信を制御する情報制御部26とが、前述のソフトウェアによって形成されている。
【0022】
データ入力手段21は、後述する入力画面30を液晶ディスプレイ4に表示させ、この入力画面30を利用して、スウェーデン式サウンディング試験で得たデータを入力するものである。
入力画面30は、図3に示されるように、建物の単位面積当たりの荷重q、着工前の有効地中応力Δσ1z′、および、地盤の圧密層の厚さ寸法Hのそれぞれを入力するための入力欄31,32,33を左上の角隅近傍に有するものとなっている。
また、入力画面30には、敷地Gの概略図を示す領域34が設けられている。この領域34には、建築される建物の妻方向の長さ寸法Bおよび桁方向の長さ寸法Lを入力するための入力欄35A, 35Bと、スウェーデン式サウンディング試験を行った各地点の座標を入力するための入力欄36A, 36Bと、当該地点の荷重Wswおよび半回転数Nswを入力するための入力欄37A, 37Bとが設けられている。
【0023】
このうち、入力欄35A, 35Bに長さ寸法B,Lを入力すると、入力画面30に表示される敷地Gの輪郭は、入力された寸法Bおよび長さ寸法Lの比率に応じて、その縦寸法および横寸法の長さが設定されるようになっている。
また、入力欄36A には、各地点のX軸方向(縦方向)の座標として、点Pまたは点Qのいずれかを基準点としたX軸方向の距離が入力され、入力欄36B には、各地点のY軸方向(横方向)の座標として、点Pまたは点Qのいずれかを基準点としたY軸方向の距離が入力される。
そして、入力欄36A, 36Bに各地点の座標が入力されると、入力画面30に表示された敷地Gには、入力されたX軸およびY軸方向の距離に応じた各位置に、スウェーデン式サウンディング試験を行った各地点が表示されるようになっている。
【0024】
ここで、スウェーデン式サウンディング試験を行う地点である測定点としては、敷地Gの四隅近傍の測定点A〜D、および、敷地Gの中央近傍の測定点Eの計5点を採用することが好ましい。
このような測定点A〜Eから地耐力データを得ることにより、建物の平面形状によらず、地盤沈下による建物傾斜の傾向が推定できるようになるので、測定点A〜E以外の地耐力データがなくとも、杭伏図生成手段24で、平面形状が異なる複数種類の建物のそれぞれに適した杭伏図の生成が可能となっている。
【0025】
地盤沈下量算出手段22は、前述の数1、数2および数3と、マップ記憶手段11とを利用して、データ入力手段21により入力された数値データから、スウェーデン式サウンディング試験を行った各地点の地盤沈下量Sを算出するものである。
沈下イメージ図生成手段23は、測定点A〜Eにおける各地盤沈下量Sを、図4に示されるように、立体的に示す沈下イメージ図40を生成するものである。
沈下イメージ図40は、図4の如く、敷地Gを平面として表示するとともに、各測定点A〜Eの地盤沈下量Sを示す複数の指示バー41を備えたものである。
指示バー41の各々は、全体が所定の高さ寸法を有する四角柱状に表示されるとともに、その上端部から下端へ向かって延びる沈下量表示部42を備えている。
【0026】
沈下量表示部42は、指示バー41の他の部分43とは、色が異なる、あるいは、表示される色の濃度が異なる部分である。
沈下量表示部42の高さ寸法Kは、地盤沈下量Sに応じて増減する、すなわち、地盤沈下量Sが大きいほど長くなる一方、その分だけ部分43が短くなり、指示バー41全体の高さ寸法が変わらないようになっている。
沈下量表示部42の表示濃度は、地盤沈下量Sに応じて変化する、すなわち、地盤沈下量Sが大きいほど濃くなるようになっている。
沈下量表示部42の内部には、地盤沈下量Sが数値でも示されている。
【0027】
杭伏図生成手段24は、地盤沈下量算出手段22が算出した測定点A〜Eの各地盤沈下量Sと、杭伏図情報蓄積手段12に蓄積された各杭のデータとに基づいて、建物に応じた杭伏図を生成するものである。
ここで、杭伏図生成手段24は、建物の種類に応じた杭伏図を作成する機能を有するものとなっている。
すなわち、杭伏図生成手段24は、柱および梁となる長尺状の軸組材を組んだ軸組フレーム構造を有する建物、例えば、四隅の柱の上下端を梁で連結した直方体状の軸組フレームを有する建物ユニットが複数組み合わされたユニット式建物が建築される場合には、建物の鉛直荷重を地面へ伝達する柱の位置に応じて杭が配置された杭伏図を生成可能となっている。
【0028】
具体的に説明すると、ユニット式建物が建築される場合には、杭伏図生成手段24は、図5に示されるように、建物ユニット51が複数組み合わされたユニット式建物52が建築される場合には、平面視で、柱が配置される建物ユニット51の角隅部に対応して複数の杭53を表示した杭伏図50を生成するようになっている。
換言すれば、図5において、ユニット式建物52の角隅部には、平面視で、1本の柱が単独で配置され、これに応じて、当該角隅部には、各1本の杭53が配置されている。また、ユニット式建物52の外周縁の各辺中央部には、2本の柱がまとめて配置されるので、当該辺中央部角隅部には、各2本の杭53が配置されている。さらに、ユニット式建物52の中心部には、4本の柱がまとめて配置されるので、当該中心部には、4本の杭53が配置されている。
一方、杭伏図生成手段24は、耐力壁や床となる構造パネルを組んだモノコックフレーム構造の建物が建築される場合には、建物の鉛直荷重を地面へ伝達する耐力壁に沿って均等に杭が配置された杭伏図を生成可能となっている。
また、杭伏図生成手段24は、各杭の位置における地盤沈下量を、沈下イメージ図40に基づいて推定し、推定した地盤沈下量に応じた長さの杭を、杭伏図情報蓄積手段12の中から選択し、選択した杭のコードを杭伏図の図面データに付加するようになっている。
【0029】
積算手段25は、杭伏図生成手段24が生成した杭伏図から、杭の種類毎に杭を拾い、積算情報蓄積手段13に蓄積された各杭の価格および打込費用から、杭打工事の概算見積金額を算出するものとなっている。
【0030】
このような本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、スウェーデン式サウンディング試験により得た荷重Wswおよび半回転数Nswと、圧密層の厚さ寸法Hと、建物の単位面積当たりの荷重qとに基づいて、測定点の地盤沈下量Sを算出する地盤沈下量算出手段22を地盤解析装置1に設け、スウェーデン式サウンディング試験が行われる現場(敷地)で、建物傾斜の予測を可能としたので、敷地における典型的な地点の地耐力データを採取すれば、当該敷地の地盤沈下の傾向が把握でき、必要最低限の地点について行った測定データにより、様々な建物の傾斜が予測でき、データ採取にかかる手間と時間とを軽減でき、地盤調査試験を容易なものとできる。
【0031】
また、スウェーデン式サウンディング試験を行う地点である測定点として、敷地Gの四隅近傍の測定点A〜D、および、敷地Gの中央近傍の測定点Eの計5点を採用し、これら5点の測定点のデータから、地盤沈下による建物傾斜の傾向が推定できるようにしたので、測定点A〜E以外の地耐力データがなくとも、杭伏図生成手段24で、平面形状が異なる複数種類の建物のそれぞれに適した杭伏図を生成することができる。
【0032】
さらに、敷地Gに建築される建物による沈下量を立体的に示す沈下イメージ図40を生成する沈下イメージ図生成手段23を設け、目視でも確認できる沈下イメージ図40を自動生成するようにしたので、測定点の数が不足する場合には、沈下イメージ図40が不自然なものとなり、この不自然な沈下イメージ図40から、さらに試験すべき地点の把握が容易となり、試験を行うべき必要最低限の地点を速やかに設定でき、この点からも、データ採取にかかる手間と時間とを軽減でき、地盤調査試験を容易なものとできる。
【0033】
また、敷地Gに打ち込むべき杭53の本数および位置を示す杭伏図50を、沈下イメージ図生成手段23が生成した沈下イメージ図40に基づいて生成する杭伏図生成手段24を設けたので、敷地Gに建築されることが想定される建物が複数種類あっても、地盤調査試験が完了するのとほぼ同時に、全種類の建物について、その傾斜が回避される杭基礎の設計を完了でき、地盤調査試験の完了後、該当する杭基礎の設計を参考にすれば、敷地Gに関する留意点等が明確となり、建物の設計を速やかに開始することができる。
【0034】
さらに、杭伏図生成手段24が生成した杭伏図50に基づいて、杭打工事の積算を行う積算手段25を設けたので、地盤調査試験が完了するのとほぼ同時に、杭伏図生成手段24が設計した杭基礎の積算が完了するので、建物の概算金額を算出すれば、該当する杭基礎の積算価格から、建物の工費全体を速やかに算出でき、予算を超過した建物の設計を回避することができる。
【0035】
また、ニューマークの式による応力関数fB(m,n)に基づいて作成した三次元マップを記憶したマップ記憶手段11を地盤解析装置1に設け、増加応力Δσzを求めるにあたり、応力関数fB(m,n)を演算する必要がなく、応力関数fB(m,n)の演算を行う場合よりも速く、増加応力Δσzを求めることが可能となり、地盤沈下量Sの算出や沈下イメージ図40の生成を短時間で行うことができる。
【0036】
なお、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、次に示すような変形等をも含むものである。
すなわち、スウェーデン式サウンディング試験としては、手動式の捻り角錐83を利用するものに限らず、モータ等の動力源やマイクロコンピュータを備え、捻り角錐への載荷板の段階的な載荷、捻り角錐の回転操作、ならびに、貫入量および回転数の測定を自動的に行い、かつ、デジタル信号でデータを出力する全自動のスウェーデン式サウンディング試験装置を利用したものでもよい。
【0037】
また、地盤解析装置を構成するハードウエアとしては、ノートブック・コンピュータに限らず、事務所等から外に持ち出されることが殆どない、デスクトップ型コンピュータでもよく、移動が困難なデスクトップ型コンピュータを採用する場合は、形態型情報端末装置およびインターネット等の移動電話網を利用し、スウェーデン式サウンディング試験で得たデータをデスクトップ型コンピュータへ伝送し、デスクトップ型コンピュータで演算した結果を形態型情報端末装置送り返せばよく、要するに、スウェーデン式サウンディング試験の進行に従って、ほぼリアルタイムで地盤沈下量を算出でき、サウンディング試験を行っている現場で地盤沈下量が把握できるようにすればよい。
【0038】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1に記載の発明によれば、スウェーデン式サウンディング試験が行われる敷地で、建物傾斜の予測が可能となるので、典型的な地点についての地耐力データを採取すれば、当該敷地の地盤沈下の傾向が把握でき、様々な建物の傾斜を予測するにあたり、試験開始後に、速やかに試験すべき地点が明確となって、必要最低限の地点について試験を行えばこと足りるようになり、データ採取にかかる手間と時間とが軽減され、地盤調査試験を容易なものとできる。
【0039】
また、請求項2に記載の発明によれば、沈下イメージ図生成手段により、目視で確認できる沈下イメージ図が自動生成され、試験すべき地点の数が不足する場合には、沈下イメージ図が不自然なものとなるので、この不自然な沈下イメージ図から試験すべき地点の把握が容易となり、試験を行うべき必要最低限の地点を速やかに設定でき、この点からも、データ採取にかかる手間と時間とが軽減され、地盤調査試験を容易なものとできる。
【0040】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、敷地に建築されることが想定される建物が複数種類あっても、地盤調査試験が完了するのとほぼ同時に、全種類の建物について、その傾斜が回避される杭基礎の設計が完了するので、地盤調査試験の完了後、該当する杭基礎の設計を参考にすれば、敷地に関する留意点等が明確となり、建物の設計を速やかに開始することができる。
【0041】
また、請求項4に記載の発明によれば、地盤調査試験が完了するのとほぼ同時に、設計された杭基礎の積算が完了するので、該当する杭基礎の積算価格から、建物の建築工費全体を算出でき、予算を超過した建物の設計を回避することができる。
【0042】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、応力関数fB(m,n)に基づいた三次元マップを記憶したマップ記憶手段により、応力関数fB(m,n)を演算するのよりも速く、増加応力Δσzを求めることが可能となり、地盤沈下量Sの算出や沈下イメージ図の生成を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の一形態に係る地盤解析装置を示すブロック図である。
【図3】前記実施形態に係る入力画面を示す図である。
【図4】前記実施形態で生成される沈下イメージ図を示す図である。
【図5】前記実施形態で生成される杭伏図を示す図である。
【図6】スウェーデン式サウンディング試験を説明するための図である。
【符号の説明】
1 地盤解析装置
11 マップ記憶手段
22 地盤沈下量算出手段
23 沈下イメージ図生成手段
24 杭伏図生成手段
25 積算手段
40 沈下イメージ図
50 杭伏図
52 建物であるユニット式建物
53 杭
83 捻り角錐
G 敷地
Claims (4)
- 建物の建築予定の敷地に、当該建物の重量による地盤沈下がどの程度生じるかを、事前に解析するための建物敷地の地盤解析装置であって、
地盤に貫入される捻り角錐を用いるスウェーデン式サウンディング試験の試験結果である、前記捻り角錐に加えた荷重Wsw、前記捻り角錐を回転操作して前記地盤に貫入させた際における、前記捻り角錐の所定貫入量当たりの半回転数Nsw、および、前記地盤の圧密層の厚さ寸法Hと、前記建物の単位面積当たりの荷重qとに基づいて、前記捻り角錐を貫入した地点の地盤沈下量Sを、次式
S=mv・(△σ1z´+△σz−Pc)・H
(ただし、mvは地盤の体積圧縮係数であり、mv=1/(40・qu)
△σ1z´は着工前の建物が存在しない状態での、前記敷地の地盤内部に生じている応力で、地盤を形成する土壌の単位体積当たりの重量に、深さ寸法を乗じ、地下水が存在する場合には、地下水の浮力を差し引いたものであり、
△σzは前記敷地に建物を建築されたことで地盤の内部の応力の増大分である増大応力であり、△σz=q・fB(m,n)、
fB(m,n)は、ニューマークの式による応力関数であり、変数mは、建物の妻方向寸法B、および前記敷地の深さzを用い、m=B/zとしたもの、変数nは、建物の桁方向寸法L、前記敷地の深さzを用い、n=L/zとしたものであり、
Pcは、地盤の圧密応力であり、Pc=1.2qu
quは、地盤が備えている一次圧縮強度であり、
qu=0.045Wsw+0.075Nsw(kN/m 2 )
であるものとする)
に基づいて算出する地盤沈下量算出手段を備え、
前記地盤沈下量算出手段は、前記敷地の異なる複数の地点についてスウェーデン式サウンディング試験を行って得た、各地点の前記荷重Wsw、前記半回転数Nswおよび前記圧密層の厚さ寸法Hが入力され、各地点における地盤沈下量Sを算出するものとされ、
当該地盤解析装置は、前記地盤沈下量算出手段が算出した前記各地点における前記地盤沈下量Sに基づいて、前記敷地に建築される前記建物による沈下量を立体的に示す沈下イメージ図を生成する沈下イメージ図生成手段を備え、
この沈下イメージ図は、前記敷地を平面として表示するとともに、前記各地点の地盤沈下量Sを示す複数の指示バーを備え、これらの指示バーは、上端部から下端部に向かって延びる沈下量表示部を備える
ことを特徴とする建物敷地の地盤解析装置。 - 請求項1に記載の建物敷地の地盤解析装置において、
前記建物の沈下を防止するために、前記敷地に打ち込むべき杭の本数および位置を示す杭伏図を、前記沈下イメージ図生成手段が生成した前記沈下イメージ図に基づいて生成する杭伏図生成手段が設けられ、
前記杭伏図生成手段は、柱等の荷重により、前記杭の本数および位置を決定し、前記沈下イメージ図から前記地盤沈下量を推定して、推定した地盤沈下量に応じて前記杭の長さを決定し、これらの決定した前記杭の本数、位置、および長さに基づいて杭伏図を生成する
ことを特徴とする建物敷地の地盤解析装置。 - 請求項2に記載の建物敷地の地盤解析装置において、
前記杭伏図生成手段が生成した前記杭伏図に基づいて、杭打工事の積算を行う積算手段が設けられている
ことを特徴とする建物敷地の地盤解析装置。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の建物敷地の地盤解析装置において、
ニューマークの式による応力関数fB(m,n)に基づいて作成した三次元マップを記憶したマップ記憶手段が設けられている
ことを特徴とする建物敷地の地盤解析装置。
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