動画像を具現する用途に従来から主として用いられてきた陰極線管(CRT:Cathode Ray Tube)に対して、LCD(Liquid Crystal Display)は、動きのある画像を表示した場合に、観る者には動き部分の輪郭がぼけて知覚されてしまうという、所謂、動きぼけの欠点がある。この動きぼけは、LCDの表示方式そのものに起因することが指摘されている(例えば、特許文献1参照)。
電子ビームを走査して蛍光体を発光させて表示を行うCRTでは、各画素の発光は蛍光体の若干の残光はあるものの概ねインパルス状になる。これをインパルス型表示方式という。一方、LCDでは、液晶に電界を印加することにより蓄えられた電荷が、次に電界が印加されるまで比較的高い割合で保持される。特に、TFT方式の場合、画素を構成するドット毎にTFTスイッチが設けられており、さらに通常は各画素に補助容量が設けられており、蓄えられた電荷の保持能力が極めて高い。このため、画素が次のフレームあるいはフィールド(以下、フレームで代表する)の画像情報に基づく電界印加により書き換えられるまで発光し続ける。これをホールド型表示方式という。
上記のようなホールド型表示方式においては、画像表示光のインパルス応答が時間的な広がりを持つため、時間周波数特性が劣化して、それに伴い空間周波数特性も低下し、動きぼけが生じる。すなわち、人の視線は動くものに対して滑らかに追従するため、ホールド型のように発光時間が長いと、時間積分効果により画像の動きがぎくしゃくして不自然に見えてしまう。
上記のホールド型表示方式における動きぼけを改善するために、フレーム間に画像を内挿することにより、フレームレート(フレーム数)を変換する技術が知られている。この技術は、FRC(Frame Rate Converter)と呼ばれ、液晶表示装置等において実用化されている。
従来、フレームレートを変換する方法には、単に同一フレームの複数回繰り返し読み出しや、フレーム間の直線内挿(線形補間)によるフレーム内挿などの各種の手法が知られている。しかしながら、線形補間によるフレーム内挿処理の場合、フレームレート変換に伴う動きの不自然さ(ジャーキネス、ジャダー)が発生するとともに、上述したホールド型表示方式に起因する動きぼけ妨害を十分に改善することはできず、画質的には不十分なものであった。
そこで、上記ジャーキネスの影響等をなくして動画質を改善するために、動きベクトルを用いた動き補償型のフレーム内挿(動き補正)処理が提案されている。この動き補正処理によれば、動画像そのものをとらえて補正するため、解像度の劣化がなく、また、ジャーキネスの発生もなく、極めて自然な動画を得ることができる。さらに、内挿画像信号は動き補償して形成されるので、上述したホールド型表示方式に起因する動きぼけ妨害を十分に改善することが可能となる。
前述の特許文献1には、動き適応的に内挿フレームを生成することにより、表示画像のフレーム周波数を上げて、動きぼけの原因となる空間周波数特性の低下を改善するための技術が開示されている。これは、表示画像のフレーム間に内挿する少なくとも1つの内挿画像信号を、前後のフレームから動き適応的に形成し、形成した内挿画像信号をフレーム間に内挿して順次表示するようにしている。
このように、動きベクトル情報を用いて動き補償フレーム内挿処理を行い、表示フレーム周波数を上げることで、LCD(ホールド型表示方式)の表示状態を、CRT(インパルス型表示方式)の表示状態に近づけることができ、動画表示の際に生じる動きぼけによる画質劣化を改善することが可能となる。
ここで、上記動き補償フレーム内挿処理においては、動き補正のために動きベクトルの検出が不可欠となる。この動きベクトル検出の代表的な手法として、例えば、ブロックマッチング法、勾配法などが提案されている。
図22は、勾配法を用いた従来の動きベクトル検出部の構成を示すブロック図で、図中、100は動きベクトル検出部、101はベクトルメモリを示す。動きベクトル検出部100は、遅延部100a、ベクトル選択部100b、及び動きベクトル演算部100cを備えて構成される。
入力画像信号は、遅延部100aによって1フレーム期間遅延され、前フレームと現フレームそれぞれの画像データは、ベクトル選択部100b、動きベクトル演算部100cに入力される。ベクトルメモリ101からは、1フレーム前の検出ベクトルが推定ベクトル(すなわち、初期ベクトル候補)として順次出力される。
ベクトル選択部100bは、ベクトルメモリ101から順に入力される推定ベクトルからDFD(Displaced Field Difference)を算出する。このDFDとは、算出ベクトル(ここでは推定ベクトル)の正確さの程度を示す指標であり、被検出ブロック内の各画素におけるフレーム間差分の絶対値和である。そして、ベクトル選択部100bは、DFDの値が最小となる推定ベクトルを初期ベクトルとして選択する。
動きベクトル演算部100cは、ベクトル選択部100bからの初期ベクトルに基づいてフレーム間の動きベクトルを勾配法演算によって算出し検出ベクトルとして出力する。この勾配法においては、連続した2つのフレーム間で各画素または小さなブロック毎に動きベクトルを検出し、それにより2つのフレーム間の内挿フレームの各画素または各小ブロックを内挿する。すなわち、2つのフレーム間の任意の位置の画像を正しく位置補正して内挿することにより、フレーム数の変換を行う。
図23は、ブロックマッチング法を用いた従来の動きベクトル検出部の構成を示すブロック図で、図中、100は動きベクトル検出部、102は推定ベクトル出力部を示す。動きベクトル検出部100は、遅延部100a、ベクトル選択部100bを備えて構成される。
図22に示した勾配法のときと同様に、入力画像信号は、遅延部100aによって1フレーム期間遅延され、前フレームと現フレームそれぞれの画像データは、ベクトル選択部100bに入力される。推定ベクトル出力部102は、ベクトル探索範囲の座標を評価するために、注目座標と探索座標とを結ぶ推定ベクトルを順に出力する。
ベクトル選択部100bは、推定ベクトル出力部102から順に入力される推定ベクトルからDFDを算出し、ブロックマッチング法を用いて、入力された推定ベクトルの中から、DFDの値が最小となる推定ベクトルを検出ベクトルとして出力する。
しかしながら、上記のような動きベクトル検出においては、格子模様などの規則的な繰り返し模様が画像中に存在する場合、前フレームと後フレームのブロックで周期的に模様が一致してしまい、動きベクトルが一意に定まらず、正しい動きを推定できないことがある。この結果、繰り返し模様部分に大きな画質劣化が生じてしまう(例えば、非特許文献1参照)。
繰り返し模様とは、画像中において、空間方向に同じ模様が規則的に繰り返されているものをいう。同じ模様が繰り返されているため、ブロックマッチング法などで動きベクトルを検出したときに、注目位置でない別の繰り返し位置に相当するベクトルを間違えて検出し、正しい動きベクトルが検出されないことがある。このような繰り返し模様を含む画像(動画像)の例を図24〜図26に示す。
図24に示す画像例は、ビルをゆっくりパンニングしたときの画像である。このビルの縦方向の窓枠が繰り返し模様Pに相当する。図25に示す画像例は、格子模様の振り子が背景の中を図中左右方向に振れている画像である。この振り子の格子模様が繰り返し模様Pに相当する。
図26(A)に示す画像例は、和室の障子を背景とする画像で、女性の歩行に追従して図中右方向へゆっくりパンニングした画像である。この背景の障子が繰り返し模様Pに相当する。また、図26(B)に示す画像例は、図26(A)に示す画像に動き補正処理が施された内挿画像で、楕円で囲った領域内の繰り返し模様Pに破綻が発生している状態を示す。この破綻は、上述したように、繰り返し模様に相当する領域で別の繰り返し位置への動きベクトルが検出されてしまうために発生する。このことは、ブロックマッチング法だけではなく、勾配法を用いた動きベクトル検出でも初期ベクトルの評価にブロックマッチング法と同様の評価方法を使用しているために起こり得るものである。
図27は、繰り返し模様の破綻原理を説明するための図である。図中、vは本来の動きベクトル、V1,V2は初期ベクトルの候補(以下、推定ベクトルV1,V2という)を示す。上述の繰り返し模様に対応する領域の前フレームと現フレームにおいて、本来の動きベクトルvに近い推定ベクトルV1と、その倍の大きさの推定ベクトルV2が検出されてしまうことがある。このとき、推定ベクトルV1に本来の動きベクトルvに対するずれがあり、推定ベクトルV2に本来の動きベクトルvに対するずれが少なくなると、DFD2がDFD1より小さくなるために推定ベクトルV2が優先的に選択され、その結果、内挿画像に破綻が発生する。
上記のような問題に対して、前述の非特許文献1では、動きベクトル検出の高精度化を図ることで、画像に含まれる繰り返し模様部分の画質劣化を防止する手法が提案されている。これについて以下に説明する。
前述の図21に示した勾配法(反復勾配法)による動きベクトルvは、初期ベクトルv0として、式(1)により求められる。
v=Δv+v0 ・・・式(1)
ここで、Δvの水平,垂直成分vx,vyは、画素値の水平勾配Δx、垂直勾配Δy、v0による動き補償フィールド間差分Δtから式(2),(3)で表される。
vx=−Σsign(Δx)Δt/Σ|Δx| ・・・式(2)
vy=−Σsign(Δy)Δt/Σ|Δy| ・・・式(3)
なお、Σは被検出ブロック内の全画素の和、signは符号を示す。初期ベクトルv0は、被検出ブロック近傍のブロックにおける既検出動きベクトル(推定ベクトル)を候補としてブロックマッチング法を用いて決定される。
上記の式(2),(3)は、最小2乗法による推定式である式(4),(5)を式(6)の条件において近似したものである。
vx=−(ΣΔy 2)(ΣΔtΔx)−(ΣΔxΔy)(ΣΔtΔy)/ΣΔx 2ΣΔy 2−(ΣΔxΔy)2 ・・・式(4)
vy=−(ΣΔx 2)(ΣΔtΔy)−(ΣΔxΔy)(ΣΔtΔx)/ΣΔx 2ΣΔy 2−(ΣΔxΔy)2 ・・・式(5)
ΣΔxΔy=0、Σ|Δx|>>0、Σ|Δy|>>0 ・・・式(6)
式(6)の条件によれば、斜め方向の勾配が存在せず、水平,垂直方向の勾配が十分大きいことが仮定されている。従来用いられていた式(2),(3)の近似式は、式(6)の条件を常に満たしているわけではなく、繰り返し模様などの平坦部が多い画像などでは動き推定の精度が低下し、動きベクトルにばらつきが生じていた。
このような従来の動きベクトル検出に対して、非特許文献1で提案されている手法によれば、上記(4),(5)式を忠実にハードウェア化することにより、より高精度に動きベクトルを求め、動きベクトルのばらつきの低減化を図っている。
特許第3295437号明細書
川田亮一、浜田高宏、松本修一、「動き補正テレビ方式変換の改善」、映像情報メディア学会誌、Vol.51、No.9、pp.1577−1586(1997)
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な画像表示装置の実施の形態について説明する。なお、本発明は、フィールド信号及び内挿フィールド信号、フレーム信号及び内挿フレーム信号のいずれに対しても適用できるものであるが、両者(フィールドとフレーム)は互いに類似の関係にあるため、フレーム信号及び内挿フレーム信号を代表例として説明するものとする。
図1は、本発明の画像表示装置が備える動き補償型フレームレート変換部の構成例を示すブロック図で、図中、10はフレームレート変換部(以下、FRC部)で、該FRC部10は、入力画像信号に含まれる2つの連続したフレーム間で動きベクトルを検出するベクトル検出部11と、検出した動きベクトルに基づいて内挿フレーム(内挿画像)を生成するフレーム生成部12とから構成される。なお、ベクトル検出部11は、動きベクトル検出に反復勾配法を用いた場合の例について示すが、この反復勾配法に限定されず、後述するブロックマッチング法などを用いてもよい。
ここで、反復勾配法の特徴は、動きベクトルの検出がブロック単位で可能であるため、数種類の動き量が検出でき、また、小領域の動物体でも動きベクトルを検出することができる。また、回路構成も他の方式(ブロックマッチング法など)と比較して小規模で実現することができる。この反復勾配法では、被検出ブロックに対して、すでに検出された近傍のブロックの動きベクトルを初期偏位ベクトルとして、これを起点として勾配法の演算を繰り返す方法が用いられる。この方法によれば、勾配法の繰り返しは2回程度でほぼ正確な動き量を得ることができる。
図1において、ベクトル検出部11は、入力画像信号(RGB信号)から輝度信号(Y信号)を抽出する輝度信号抽出部11aと、抽出したY信号にLPFを掛けて高域部の帯域を制限するための前処理フィルタ11bと、動き検出用フレームメモリ11cと、初期ベクトル候補を推定ベクトルとして蓄積するためのベクトルメモリ11dと、反復勾配法を用いてフレーム間の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部11eと、検出した動きベクトルに基づいてフレーム間に内挿ベクトルを割り付ける内挿ベクトル評価部11fと、を備えて構成される。
なお、FRC部10は、本発明のレート変換手段に相当し、動きベクトル検出部11eは、本発明の動きベクトル検出部に相当し、内挿ベクトル評価部11fは、本発明の内挿ベクトル割付部に相当する。
反復勾配法を適用した場合、演算に画素の微分成分を用いているため、ノイズの影響を受け易く、また、検出ブロック内の勾配の変化量が多いと演算誤差が大きくなるため、前処理フィルタ11bにおいてLPFをかけて高域部の帯域を制限しておく。ベクトルメモリ11dには、初期ベクトル候補(推定ベクトル)として、前々フレームで既に検出されている動きベクトルを蓄積しておく。
動きベクトル検出部11eは、ベクトルメモリ11dに蓄積されている推定ベクトルの中から被検出ブロックの動きベクトルに最も近い動きベクトルを初期ベクトルとして選択する。すなわち、被検出ブロック近傍のブロックや所定の相対座標における既検出動きベクトル(推定ベクトル)の中からDFDの一番小さい初期ベクトルを選択する。そして、動きベクトル検出部11eは、選択した初期ベクトルを起点として、勾配法演算によって前フレームと現フレーム間の動きベクトルを検出する。
内挿ベクトル評価部11fは、動きベクトル検出部11eにより検出された動きベクトルを評価し、その評価結果に基づいて最適な内挿ベクトルをフレーム間の内挿ブロックに割り付けて、フレーム生成部12に出力する。
フレーム生成部12は、2つの入力フレーム(前フレーム、現フレーム)を蓄積するための内挿用フレームメモリ12aと、内挿用フレームメモリ12aからの2つの入力フレームと内挿ベクトル評価部11fからの内挿ベクトルとに基づいて内挿フレームを生成する内挿フレーム生成部12bと、入力フレーム(前フレーム、現フレーム)を蓄積するためのタイムベース変換用フレームメモリ12cと、タイムベース変換用フレームメモリ12cからの入力フレームに内挿フレーム生成部12bからの内挿フレームを挿入して出力画像信号(RGB信号)を生成するタイムベース変換部12dと、を備えて構成される。
なお、内挿フレーム生成部12bは、本発明の内挿画像生成部に相当し、タイムベース変換部12dは、本発明の画像内挿部に相当する。
図2は、フレーム生成部12による内挿フレーム生成処理の一例を説明するための図である。内挿フレーム生成部12bは、内挿ブロックに割り付けられた内挿ベクトルVを前フレーム、現フレームに伸ばして、各フレームとの交点近傍の画素を用いて内挿ブロック内の各画素を補間する。例えば、前フレームでは近傍3点よりA点の輝度を算出する。現フレームでは近傍3点よりB点の輝度を算出する。内挿フレームではP点の輝度をA点とB点の輝度から補間する。P点の輝度は、例えばA点の輝度とB点の輝度の平均としてもよい。
上記のようにして生成された内挿フレームは、タイムベース変換部12dに送られる。タイムベース変換部12dは、前フレーム、現フレームの間に、内挿フレームを挟み込んで、フレームレートを変換する処理を行う。このように、FRC部10により、入力画像信号(60フレーム/秒)を、動き補償された出力画像信号(120フレーム/秒)へ変換することができ、これを表示パネルに出力することにより、動きぼけ妨害の発生を低減して動画質を改善することが可能となる。尚、ここでは、60フレーム/秒の入力画像信号を、120フレーム/秒の出力画像信号にフレームレート変換する場合について説明するが、例えば90フレーム/秒、180フレーム/秒の出力画像信号を得る場合に適用しても良いことは言うまでもない。
図3は、本発明に係るFRC部10を備えた画像表示装置の構成例を示すブロック図で、画像表示装置は、FRC部10、制御部13、電極駆動部14、及び液晶表示パネル15を備える。
液晶表示パネル15は、液晶層と該液晶層に走査信号及びデータ信号を印加するための電極とを有するアクティブマトリクス型の液晶ディスプレイである。電極駆動部14は、FRC部10によりフレームレート変換された画像信号に基づいて液晶表示パネル15の走査電極及びデータ電極を駆動するための表示ドライバである。制御部13は、上記各部を制御するためのCPUやメモリを備える。
液晶表示パネル15の駆動周波数は、FRC部10により変換されたフレーム周波数となる。従って、例えば60Hzのフレーム周波数で入力された画像信号が、FRC部10で120Hzのフレーム周波数に変換された場合、液晶表示パネル15の駆動周波数は、120Hzとなる。なお、本発明は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電気泳動ディスプレイなどのホールド型の表示特性を有する画像表示装置全般に適用可能であるが、以下の各実施形態においては、表示パネルとして液晶表示パネルを用いた液晶表示装置に本発明を適用した場合を代表例として説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態は、動きベクトル検出に用いる推定ベクトルに基づいて、入力画像中に繰り返し模様が含まれるかどうかを検出し、繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、前記推定ベクトルを無効化し、動きベクトルを検出するものである。より詳しくは、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対しては、推定ベクトルを0ベクトルとして、動きベクトルの検出を行うことで、繰り返し模様部分での破綻が生じないようにするものである。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る動きベクトル検出部11eの構成例を示すブロック図である。図中、動きベクトル検出部11eは、遅延部111e、推定ベクトル選択部112e、繰り返し模様検出部113e、切替部114e、及び動きベクトル演算部115eを備えて構成される。
入力画像信号は、遅延部111eによって1フレーム期間遅延され、前フレームと現フレームそれぞれの画像データは、推定ベクトル選択部112e、繰り返し模様検出部113e、及び動きベクトル演算部115eに入力される。ベクトルメモリ11dからは、1フレーム前(前々フレーム)の検出ベクトルn個が推定ベクトル(すなわち、初期ベクトル候補)として順次出力される。
推定ベクトル選択部112eは、ベクトルメモリ11dから順に入力される推定ベクトルからDFDiを算出し、DFDiの値が最小となる推定ベクトルを初期ベクトルとして選択し、選択した1つの推定ベクトルとそのDFDiの値を繰り返し模様検出部113eへ出力すると共に、上記推定ベクトルを切替部114eへ出力する。
繰り返し模様検出部113eは、後述の図5で説明する検出手法により、入力画像に繰り返し模様が含まれるかどうかを検出ブロック毎に検出し、その結果、検出ブロックに繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様検出信号を“1”として切替部114eへ出力する。切替部114eは、繰り返し模様検出信号に従って、0ベクトル側(図面実線側)へ切り替えて、推定ベクトル選択部112eからの推定ベクトルに代えて0ベクトルを動きベクトル演算部115eへ出力する。
一方、検出ブロックに繰り返し模様が検出されなかった場合、繰り返し模様検出部113eは、繰り返し模様検出信号を“0”として切替部114eへ出力する。切替部114eは、繰り返し模様検出信号に従って、推定ベクトル選択部112eからの推定ベクトル側(図面点線側)へ切り替えて、この推定ベクトルを初期ベクトルとして動きベクトル演算部115eへ出力する。
動きベクトル演算部115eは、検出ブロック毎に、0ベクトルあるいは推定ベクトル選択部112eからの初期ベクトルに基づいてフレーム間の動きベクトルを算出し検出ベクトルとして出力する。このときの検出ベクトルは、前述の式(1)〜式(3)の勾配法演算によって算出されるため、演算処理量が増大することなく、繰り返し模様部分の破綻を防止することができる。
このように、入力画像中に繰り返し模様を検出した場合、勾配法の初期ベクトルを0ベクトルにすることにより、前提条件なしに勾配法を計算することになり、結果として、正しい動きベクトルを算出することができる。また、勾配法によるベクトル検出に失敗した場合でも、0ベクトルの内挿画像(すなわち、同―座標間で線形補間した内挿画像)が生成されることになるため、内挿フレームにゆがんだ画像は生成されず、繰り返し模様部分における破綻を見た目上低減することができる。
図5は、繰り返し模様検出部113eによる繰り返し模様の検出方法の一例を説明するための図である。図中、vは本来の動きベクトル、Viは選出初期ベクトル、Vgは全画面ベクトルを示す。繰り返し模様検出部113eは、現フレームに含まれるB領域とC領域間のDFDr(フレーム内差分)を算出し、このDFDrと、推定ベクトル選択部112eから入力されるDFDiとを比較する。DFDiは、前フレームのA領域と現フレームのB領域間のDFD(フレーム間差分)である。
DFDiとDFDrとの比較処理の結果、両者が略同じであれば、A領域とB領域とC領域の画素値が略等しいであろうと考えられる。このことは、すなわち、検出ブロック内に繰り返し模様の存在を表すことになる。但し、B領域とC領域は重ならないものとする。
また、DFDiはいくつかの推定ベクトルと比較した中の最小のDFDであることを考えれば、DFDi>DFDrである場合、ベクトルViよりもベクトルVgのほうが初期ベクトルとして適当であろうと推測される。つまりViが初期ベクトルとして適当ではない可能性が出てくる。そこで、繰り返し模様検出部113eは、DFDi≧DFDrを満たした場合に、ベクトルViを初期ベクトルとして適当でないと判定し、ベクトルViを無効化する。この無効化の手段としては、例えば、図4に示したようにベクトルViを0ベクトルにする。
なお、実際には、映像信号のサンプリング誤差を吸収するために、係数k(k>1.0)をDFDiに乗じた下記の式(7)を条件として用いるようにしてもよい。
DFDi*k≧DFDr・・・式(7)
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態は、動きベクトル検出に用いる推定ベクトルに基づいて、入力画像中に繰り返し模様が含まれるかどうかを検出し、繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、前記推定ベクトルを無効化し、動きベクトルを検出するものである。より詳しくは、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対しては、推定ベクトルを画面全体の動きベクトルとして、動きベクトルの検出を行うことで、繰り返し模様部分での破綻が生じないようにするものである。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る動きベクトル検出部11eの構成例を示すブロック図である。図中、動きベクトル検出部11eは、遅延部111e、推定ベクトル選択部112e、繰り返し模様検出部113e、切替部114e、動きベクトル演算部115e、さらに、全画面平均ベクトル算出部116eを備えて構成される。
入力画像信号は、遅延部111eによって1フレーム期間遅延され、前フレームと現フレームそれぞれの画像データは、推定ベクトル選択部112e、繰り返し模様検出部113e、及び動きベクトル演算部115eに入力される。ベクトルメモリ11dからは、1フレーム前の検出ベクトルn個が推定ベクトル(すなわち、初期ベクトル候補)として順次出力される。また、全画面平均ベクトル算出部116eは、全画面における平均動きベクトルを算出し切替部114eへ出力する。
推定ベクトル選択部112eは、ベクトルメモリ11dから順に入力される推定ベクトルからDFDiを算出し、ブロックマッチング法を用いて、DFDiの値が最小となる推定ベクトルを初期ベクトルとして選択し、選択した1つの推定ベクトルとそのDFDiの値を繰り返し模様検出部113eへ出力すると共に、上記推定ベクトルを切替部114eへ出力する。
繰り返し模様検出部113eは、前述の図5で説明した検出手法により、入力画像に繰り返し模様が含まれるかどうかを検出ブロック毎に検出し、その結果、検出ブロックに繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様検出信号を“1”として切替部114eへ出力する。切替部114eは、繰り返し模様検出信号に従って、全画面の平均動きベクトル側(図面実線側)へ切り替えて、推定ベクトル選択部112eからの推定ベクトルに代えて、全画面平均動きベクトルを動きベクトル演算部115eへ出力する。
一方、検出ブロックに繰り返し模様が検出されなかった場合、繰り返し模様検出部113eは、繰り返し模様検出信号を“0”として切替部114eへ出力する。切替部114eは、繰り返し模様検出信号に従って、推定ベクトル選択部112eからの推定ベクトル側(図面点線側)へ切り替えて、この推定ベクトルを初期ベクトルとして動きベクトル演算部115eへ出力する。
動きベクトル演算部115eは、検出ブロック毎に、全画面平均ベクトル算出部116eからの全画面平均動きベクトルあるいは推定ベクトル選択部112eからの初期ベクトルに基づいてフレーム間の動きベクトルを算出し検出ベクトルとして出力する。このときの検出ベクトルは、前述の式(1)〜式(3)の勾配法演算によって算出されるため、演算処理量が増大することなく、繰り返し模様部分の破綻を防止することができる。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態は、動きベクトル検出に用いる推定ベクトルに基づいて、入力画像中に繰り返し模様が含まれるかどうかを検出し、繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、前記推定ベクトルを無効化し、動きベクトルを検出するものである。より詳しくは、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対しては、推定ベクトルを繰り返し模様の周辺領域の動きベクトルとして、動きベクトルの検出を行うことで、繰り返し模様部分での破綻が生じないようにするものである。
図7は、本発明の第3の実施形態に係る動きベクトル検出部11eの構成例を示すブロック図である。図中、動きベクトル検出部11eは、遅延部111e、推定ベクトル選択部112e、繰り返し模様検出部113e、切替部114e、動きベクトル演算部115e、さらに、周辺平均ベクトル算出部117eを備えて構成される。
入力画像信号は、遅延部111eによって1フレーム期間遅延され、前フレームと現フレームそれぞれの画像データは、推定ベクトル選択部112e、繰り返し模様検出部113e、及び動きベクトル演算部115eに入力される。ベクトルメモリ11dからは、1フレーム前の検出ベクトルn個が推定ベクトル(すなわち、初期ベクトル候補)として順次出力される。また、周辺平均ベクトル算出部117eは、繰り返し模様の周辺領域における平均あるいは加重平均の動きベクトルを算出し切替部114eへ出力する。
推定ベクトル選択部112eは、ベクトルメモリ11dから順に入力される推定ベクトルからDFDiを算出し、DFDiの値が最小となる推定ベクトルを初期ベクトルとして選択し、選択した1つの推定ベクトルとそのDFDiの値を繰り返し模様検出部113eへ出力すると共に、推定ベクトルを切替部114eへ出力する。
繰り返し模様検出部113eは、前述の図5で説明した検出手法により、入力画像に繰り返し模様が含まれるかどうかを検出ブロック毎に検出し、その結果、検出ブロックに繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様検出信号を“1”として切替部114eへ出力する。切替部114eは、繰り返し模様検出信号に従って、繰り返し模様の周辺領域における平均あるいは加重平均の動きベクトル側(図面実線側)へ切り替えて、推定ベクトル選択部112eからの推定ベクトルに代えて、周辺平均動きベクトルを動きベクトル演算部115eへ出力する。
一方、検出ブロックに繰り返し模様が検出されなかった場合、繰り返し模様検出部113eは、繰り返し模様検出信号を“0”として切替部114eへ出力する。切替部114eは、繰り返し模様検出信号に従って、推定ベクトル選択部112eからの推定ベクトル側(図面点線側)へ切り替えて、この推定ベクトルを初期ベクトルとして動きベクトル演算部115eへ出力する。
動きベクトル演算部115eは、検出ブロック毎に、周辺平均ベクトル算出部117eからの周辺平均動きベクトルあるいは推定ベクトル選択部112eからの初期ベクトルに基づいてフレーム間の動きベクトルを算出し検出ベクトルとして出力する。このときの検出ベクトルは、前述の式(1)〜式(3)の勾配法演算によって算出されるため、演算処理量が増大することなく、繰り返し模様部分の破綻を防止することができる。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態は、動きベクトル検出に用いる推定ベクトルに基づいて、入力画像中に繰り返し模様が含まれるかどうかを検出し、繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、前記推定ベクトルを無効化をし、動きベクトルを検出するものである。より詳しくは、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対しては、前記推定ベクトル以外の他の推定ベクトルを選択して、動きベクトルの検出を行うことにより、繰り返し模様部分での破綻が生じないようにするものである。
図8は、本発明の第4の実施形態に係る動きベクトル検出部11eの構成例を示すブロック図である。図中、動きベクトル検出部11eは、遅延部111e、動きベクトル演算部115e、さらに、推定ベクトル評価部118e、ベクトル選択部119eを備えて構成される。
入力画像信号は、遅延部111eによって1フレーム期間遅延され、前フレームと現フレームそれぞれの画像データは、推定ベクトル評価部118e及び動きベクトル演算部115eに入力される。ベクトルメモリ11dからは、1フレーム前の検出ベクトルn個が推定ベクトルV(すなわち、初期ベクトル候補)として順次出力される。
推定ベクトル評価部118eは、ベクトルメモリ11dから順に入力される推定ベクトルVから、DFDiとDFDrを算出・比較し、繰り返し模様の検出を行う。繰り返し模様が検出されない場合、その推定ベクトルVとDFDiの値をベクトル選択部119eへ出力し、一方、繰り返し模様が検出された場合、その推定ベクトルVを使用しないようにする。例えば、当該推定ベクトルVのDFDiを十分に大きな値に置換してベクトル選択部119eへ出力するようにしてもよい。
ベクトル選択部119eは、推定ベクトル評価部118eから順に入力されるDFDiを参照し、最小の値のDFDiを持つ推定ベクトルVを初期ベクトルとして動きベクトル演算部115eへ出力する。このとき、繰り返し模様部分の検出に用いた推定ベクトルVのDFDiは十分に大きな値になっているため、この推定ベクトルは選択されず、次に値が小さいDFDiが求められた際の他の推定ベクトルVが選択される。
動きベクトル演算部115eは、検出ブロック毎に、ベクトル選択部119eからの初期ベクトルに基づいてフレーム間の動きベクトルを算出し検出ベクトルとして出力する。このときの検出ベクトルは、前述の式(1)〜式(3)の勾配法演算によって算出されるため、演算処理量が増大することなく、繰り返し模様部分の破綻を防止することができる。
なお、本実施形態では、時間方向に推定ベクトル評価部118eとベクトル選択部119e等の回路を並べたが、これらの回路を並列化して実現するようにしてもよい。
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態は、入力画像中に繰り返し模様が含まれるかどうかを検出し、繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、FRC部10における動き補正処理を無効化するために、内挿ブロックの内挿ベクトルを0ベクトルとし、繰り返し模様部分での破綻が生じないようにするものである。
図9は、本発明の第5の実施形態に係る動きベクトル検出部11eの構成例を示すブロック図である。図中、動きベクトル検出部11eは、遅延部111e、推定ベクトル選択部112e、繰り返し模様検出部113e、及び動きベクトル演算部115eを備えて構成される。
入力画像信号は、遅延部111eによって1フレーム期間遅延され、前フレームと現フレームそれぞれの画像データは、推定ベクトル選択部112e、繰り返し模様検出部113e、及び動きベクトル演算部115eに入力される。ベクトルメモリ11dからは、1フレーム前の検出ベクトルn個が推定ベクトル(すなわち、初期ベクトル候補)として順次出力される。
推定ベクトル選択部112eは、ベクトルメモリ11dから順に入力される推定ベクトルからDFDiを算出し、DFDiの値が最小となる推定ベクトルを初期ベクトルとして選択し、選択した1つの推定ベクトルとそのDFDiの値を繰り返し模様検出部113eへ出力すると共に、上記推定ベクトルを初期ベクトルとして動きベクトル演算部115eへ出力する。
動きベクトル演算部115eは、検出ブロック毎に、推定ベクトル選択部112eからの初期ベクトルに基づいてフレーム間の動きベクトルを算出し検出ベクトルとして後段の内挿ベクトル評価部11fへ出力する。
繰り返し模様検出部113eは、前述の図5で説明した検出手法により、入力画像に繰り返し模様が含まれるかどうかを検出ブロック毎に検出し、その結果、検出ブロックに繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様検出信号を“1”として内挿処理、すなわち、制御部13を介して後段のフレーム生成部12へ出力する。
図10は、本発明の第5の実施形態に係る液晶表示装置の要部構成例を示すブロック図で、液晶表示装置は、FRC部10、制御部13、電極駆動部14、及び液晶表示パネル15を備えて構成されている。FRC部10は、図1に示したように、動きベクトル検出部11e、内挿ベクトル評価部11f、内挿フレーム生成部12b、タイムベース変換部12dを備え、さらに、内挿ベクトル評価部11fにより割り付けられた内挿ベクトルを内挿ベクトル毎に蓄積する内挿ベクトルメモリ12eを備える。
制御部13は、図9に示した動きベクトル検出部11eから入力された繰り返し模様検出信号が“1”、すなわち、繰り返し模様が検出された場合、内挿ベクトルメモリ12eにアクセスし、繰り返し模様部分に対応する内挿ブロックの内挿ベクトルを0ベクトルにする。また、繰り返し模様部分以外の内挿ブロックについては、内挿ベクトルメモリ12eの内挿ベクトルを内挿フレーム生成部12bに入力する。
具体的には、制御部13が、内挿ベクトルメモリ12eにアクセスしたときに、繰り返し模様部分に対応する内挿ブロックにフラグ情報を付与する。このフラグ情報は、内挿ブロックの内挿ベクトルを使わないようにするためのフラグであり、フラグ情報が付与された内挿ブロックの内挿ベクトルの出力が0になるように制御される。このように、内挿ベクトルメモリ12eの内挿ベクトルを0にすることで、動き補正内挿を行わないようにすることができる。
なお、制御部13は、どの内挿ブロック(あるいはどの画素)に繰り返し模様が対応しているかを示す情報を保持している。この情報は、例えば、画素の座標位置情報、内挿ブロックの領域情報などであり、繰り返し模様部分に対応する画素あるいは領域がわかる情報であればよい。また、フラグ情報が付与されていない内挿ブロックの内挿ベクトルは、内挿ベクトルメモリ12eから出力されて内挿フレーム生成部12bに入力され、内挿フレーム生成部12bにおいて内挿フレーム生成に利用される。
このように、通常の動画像表示時においては動き補償型のFRC処理により動画質を改善することができるとともに、入力画像に繰り返し模様が含まれる場合に、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対する動き補正処理を無効化することにより、繰り返し模様部分の画質劣化を容易に防止することができる。
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態は、入力画像中に繰り返し模様が含まれるかどうかを検出し、繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、FRC部10における動き補正処理を無効化するために、内挿フレーム生成部12bの内挿ブロックの内挿ベクトルを0とし、繰り返し模様部分での破綻が生じないようにするものである。
図11は、本発明の第6の実施形態に係る液晶表示装置の要部構成例を示すブロック図で、液晶表示装置は、FRC部10、制御部13、電極駆動部14、及び液晶表示パネル15を備えて構成されている。FRC部10は、図1に示したように、動きベクトル検出部11e、内挿ベクトル評価部11f、内挿フレーム生成部12b、及びタイムベース変換部12dを備える。
図11において、内挿フレーム生成部12bは、内挿ベクトル評価部11fで割り付けられた内挿ベクトルから内挿フレームを生成する。制御部13は、図9に示した動きベクトル検出部11eから入力された繰り返し模様検出信号が“1”、すなわち、繰り返し模様が検出された場合、内挿フレーム生成部12bにアクセスし、繰り返し模様部分に対応する内挿ブロックの内挿ベクトルを0ベクトルにする。また、繰り返し模様部分以外の内挿ブロックについては、内挿フレーム生成部12bが内挿ベクトルから内挿フレームを生成する。
ここで、制御部13は、どの内挿ブロック(あるいはどの画素)に繰り返し模様部分が対応しているかを示す情報(座標位置情報、領域情報など)を内挿フレーム生成部12bに渡し、内挿フレーム生成部12bは、制御部13からの指示に従って、該当する画素あるいはその画素を含む内挿ブロックの内挿ベクトルを0ベクトルにする。
このように、通常の動画像表示時においては動き補償型のFRC処理により動画質を改善することができるとともに、入力画像信号に繰り返し模様が含まれる場合に、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対する動き補正処理を無効化することにより、繰り返し模様部分の画質劣化を容易に防止することができる。
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態は、FRC部10への入力経路とは別の経路上に線形補間内挿処理部を備え、入力画像中に繰り返し模様が含まれるかどうかを検出し、繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、線形補間内挿処理部側に切り替えて、繰り返し模様部分にだけ線形補間を施した画像信号を内挿するものである。すなわち、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対しては、動き補償による内挿処理を行うのではなく、線形内挿処理を行うことで、フレームレート変換するように切り替えるものである。
図12は、本発明の第7の実施形態に係る液晶表示装置の要部構成例を示すブロック図で、液晶表示装置は、FRC部10、制御部13、切替部16、さらに、FRC部10への入力経路とは別に設けられた経路17と、経路17上に線形補間内挿処理部18とを備えて構成されている。なお、電極駆動部14、液晶表示パネル15の記載は省略している。
切替部16は、FRC部10の後段に設けられ、制御部13からの指示に従って、FRC部10からの画像信号(動き補償画像)を出力させるか、線形補間内挿処理部18からの画像信号(線形補間画像)を出力させるかを切り替える。
制御部13は、図9に示した動きベクトル検出部11eから入力された繰り返し模様検出信号が“1”、すなわち、繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、切替部16を経路17(線形補間内挿処理部18)側に切り替えて、入力画像信号のフレーム間に、線形補間処理を施した画像信号を内挿して生成された表示画像信号を表示パネルに出力する。線形補間内挿処理部18は、入力画像信号が入力され、繰り返し模様が検出されたときに、繰り返し模様部分に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、入力画像信号のフレーム間に、線形補間処理を施した内挿フレームを挿入する処理を行う。また、繰り返し模様部分以外の画素あるいは該画素を含む領域に対しては、切替部16をFRC部10側に切り替えて、入力画像信号のフレーム間においてFRC処理(動き補償フレーム内挿処理)が施された表示画像信号を表示パネルに出力する。
なお、上述の線形補間処理とは、前フレームの信号と現フレームの信号からフレーム内挿比αによる線形補間により内挿フレームを得るものである。
このように、入力画像に繰り返し模様が含まれる場合に、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、動き補償による内挿処理を行わないようにすることにより、繰り返し模様部分の画質劣化を容易に防止することができる。
(第8の実施形態)
本発明の第8の実施形態は、FRC部10への入力経路とは別の経路上にメモリを備え、入力画像中に繰り返し模様が含まれるかどうかを検出し、繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、メモリ側に切り替えて、繰り返し模様部分にだけメモリから同一フレームの画像信号を複数回高速で繰り返し読み出してフレームレート変換するものである。すなわち、繰り返し模様が検出された画素あるいは該画素を含む領域に対しては、動き補償による内挿処理を行わず、入力画像信号を高速連続出力することにより、フレームレート変換するように切り替えるものである。
図13は、本発明の第8の実施形態に係る液晶表示装置の要部構成例を示すブロック図で、液晶表示装置は、FRC部10、制御部13、切替部16、さらに、FRC部10への入力経路とは別に設けられた経路17と、経路17上にメモリ19とを備えて構成されている。なお、電極駆動部14、液晶表示パネル15の記載は省略している。切替部16は、FRC部10の後段に設けられ、制御部13からの指示に従って、FRC部10からの画像信号(動き補償画像)を出力させるか、メモリ19からの前フレーム又は後フレームの画像信号を出力させるかを切り替える。
制御部13は、図9に示した動きベクトル検出部11eから入力された繰り返し模様検出信号が“1”、すなわち、繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、切替部16を経路17(メモリ19)側に切り替えて、入力画像信号のフレーム間に、その前或いは後フレームの画像信号をメモリ19から繰り返し読み出して挿入し生成された表示画像信号を表示パネルに出力する。メモリ19には、入力画像信号が蓄積されており、繰り返し模様が検出されたときに、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域の画像信号が繰り返し読み出される。また、繰り返し模様部分以外の画素あるいは該画素を含む領域に対しては、切替部16をFRC部10側に切り替えて、入力画像信号のフレーム間においてFRC処理(動き補償フレーム内挿処理)が施された表示画像信号を表示パネルに出力する。
このように、入力画像信号に繰り返し模様が含まれる場合に、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、動き補償による内挿処理を行わないようにすることにより、繰り返し模様部分の画質劣化を容易に防止することができる。
(第9の実施形態)
本発明の第9の実施形態は、入力画像中に繰り返し模様が含まれるかどうかを検出し、繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、内挿フレーム生成部における動き補正処理の補正強度を可変するように構成される。具体的には、動き補正処理を施した画像信号と、線形補間処理を施した画像信号とを所定の比率で加重加算することにより、内挿フレームを生成する内挿フレーム生成部を備え、繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、加重加算比率を可変する。
図14は、本発明の第9の実施形態に係るFRC部10の要部構成例を示すブロック図で、FRC部10のフレーム生成部12は、内挿用フレームメモリ12a、内挿フレーム生成部12b、さらに、FRC部10における動き補正処理の補正強度を可変する補正強度可変部12f、を備えて構成される。なお、図中、Vは内挿ベクトル、αはフレーム内挿比、βは補正強度(加重加算比率)を示す。
一般に、フレーム内挿処理の方法として、例えば、2フレーム間の線形補間内挿によるフレーム内挿と、動きベクトルを用いたフレーム内挿(動き補正内挿)が知られている。前者は、前フレームの信号と現フレームの信号からフレーム内挿比αによる線形補間により内挿フレームを得るものである。従って、この線形補間内挿を用いれば、繰り返し模様部分の画質劣化を防止できる。
一方、後者は、前フレームと現フレームから内挿フレームを得るために、前フレームの画像と現フレームの画像間の動きベクトルから内挿ベクトルVを検出し、その値(内挿ベクトルV)をフレーム内挿比αで分割したαVの大きさだけ前フレームの画像をずらした信号と、現フレームの画像を(α―1)Vだけずらした信号との加重加算により内挿フレームを得る。この動き補正内挿を用いれば、動画像そのものをとらえて補正するため、解像度の劣化がなく、良好な画質を得ることができるが、繰り返し模様部分での動きベクトルの誤検出により画質が劣化してしまうことがある。
そこで、本実施形態では、フレーム生成部12に補正強度可変部12fを設けている。この補正強度可変部12fは、図9に示した動きベクトル検出部11eから入力された繰り返し模様検出信号が“1”、すなわち、繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して加重加算比率βを可変する。この加重加算比率βは、動き補正処理を施した画像信号と、線形補間処理を施した画像信号とを加重加算する際の比率である。本実施形態の内挿フレーム生成部12bは、この加重加算比率βに従って、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、線形補間内挿と動き補正内挿を加重加算して内挿フレームを生成する。
例えば、補正強度可変部12fは、繰り返し模様が検出された場合、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して加重加算比率β=0とし、線形補間処理を施した画像信号を内挿フレームにして繰り返し模様部分の画質劣化を防止する。また、繰り返し模様部分以外の画素あるいは該画素を含む領域に対して加重加算比率β=1とし、動き補正処理を施した画像信号を内挿フレームにして動画質を良好にする。
また、加重加算比率βは任意に可変設定できるため、0〜1の略中間の値に設定するようにしてもよい。これにより、内挿フレーム画像において動き補正も行いつつ、繰り返し模様部分の画質も劣化させないように制御することができ、動きぼけによる画質劣化と繰り返し模様の画質劣化との双方を適切に改善することが可能となる。なお、FRC部10における補正強度の可変処理は、画素単位で行う方法、ブロック(領域)単位で行う方法のいずれの方法で行ってもよい。
このようにして、入力画像に繰り返し模様が含まれる場合に、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、FRCにおける動き補正処理の補正強度を可変できる(弱くすることができる)ため、繰り返し模様部分の画質劣化を容易に防止することができる。
尚、上記第5乃至第9の実施形態においては、必ずしも推定ベクトルVから、DFDiとDFDrを算出・比較して、繰り返し模様の検出を行うものに限定されない。例えば、入力画像信号の空間周波数の分布などを解析することによって、繰り返し模様の有無を検出するようにしても良い。
(第10の実施形態)
本発明の第10の実施形態は、動きベクトルの検出にブロックマッチング法を適用した場合の例を示すものであって、入力画像中に繰り返し模様が含まれるかどうかを推定ベクトルを用いて検出し、繰り返し模様が検出された場合、該繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対して、この繰り返し模様の検出に用いた推定ベクトルを無効化して、動きベクトルの検出を行うものである。より詳しくは、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域に対しては、この繰り返し模様の検出に用いた推定ベクトル以外の他の推定ベクトルを選択し、動きベクトルの検出を行うことにより、繰り返し模様部分での破綻が生じないようにするものである。
図15は、本発明の第10の実施形態に係る動きベクトル検出部11eの構成例を示すブロック図である。図中、動きベクトル検出部11eは、遅延部111e、推定ベクトル評価部118e、ベクトル選択部119eを備えて構成される。
入力画像信号は、遅延部111eによって1フレーム期間遅延され、前フレームと現フレームそれぞれの画像データは、推定ベクトル評価部118eに入力される。推定ベクトル出力部11gからは、ベクトル探索範囲の座標を評価するために、注目座標と探索座標とを結ぶ推定ベクトルが順に出力される。
推定ベクトル評価部118eは、推定ベクトル出力部11gから順に入力される推定ベクトルVから、DFDiとDFDrを算出・比較し、繰り返し模様の検出を行う。繰り返し模様が検出されない場合、その推定ベクトルVとDFDiの値をベクトル選択部119eへ出力し、一方、繰り返し模様が検出された場合、その推定ベクトルVを使用しないようにする。例えば、当該推定ベクトルVのDFDiを十分に大きな値にしてベクトル選択部119eへ出力するようにしてもよい。
ベクトル選択部119eは、推定ベクトル評価部118eから順に入力されるDFDiを参照し、最小の値のDFDiを持つ推定ベクトルVを検出ベクトルとして出力する。このとき、繰り返し模様部分の検出に用いた推定ベクトルVのDFDiは十分に大きな値になっているため、この推定ベクトルは選択されず、次にDFDiが小さくなった他の推定ベクトルVが選択される。
図16は、本発明の画像表示装置による画像表示方法の一例を説明するためのフロー図である。ここでは、前述の第1の実施形態乃至第4の実施形態のいずれかにおける画像表示方法の例について説明する。まず、画像表示装置は、DFDが最小となる推定ベクトルに基づいて繰り返し模様に対応する画素(或いはブロック)かどうかを判定し(ステップS1)、繰り返し模様に対応する画素(或いはブロック)と判定された場合(YESの場合)、このときの推定ベクトルを例えば0ベクトルに置換することにより無効化して、動きベクトルを検出する(ステップS2)。また、ステップS1において、繰り返し模様部分以外の画素(或いはブロック)と判定された場合(NOの場合)、DFDが最小となる推定ベクトルをそのまま用いて動きベクトルを検出する(ステップS3)。そして、動きベクトルに基づいて動き補正処理を施した画像信号を入力画像信号のフレーム間に内挿し、フレームレート変換された画像を液晶表示パネル15から表示出力する(ステップS4)。
図17は、本発明の画像表示装置による画像表示方法の他の例を説明するためのフロー図である。ここでは、前述の第5の実施形態又は第6の実施形態における画像表示方法の例について説明する。まず、画像表示装置は、繰り返し模様に対応する画素(或いはブロック)かどうかを判定し(ステップS11)、繰り返し模様に対応する画素(或いはブロック)と判定された場合(YESの場合)、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域(内挿ブロック)に対して、内挿ベクトルを0ベクトルにすることにより、FRC部10の動き補正処理を無効化する(ステップS12)。また、ステップS11において、繰り返し模様部分以外の画素(或いはブロック)と判定された場合(NOの場合)、FRC部10にて動き補償による内挿処理を施した画像信号を出力する(ステップS13)。そして、フレームレート変換された画像を液晶表示パネル15から表示出力する(ステップS14)。
図18は、本発明の画像表示装置による画像表示方法の他の例を説明するためのフロー図である。ここでは、前述の第7の実施形態における画像表示方法の例について説明する。まず、画像表示装置は、繰り返し模様に対応する画素(或いはブロック)かどうかを判定し(ステップS21)、繰り返し模様に対応する画素(或いはブロック)と判定された場合(YESの場合)、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域(内挿ブロック)に対して、線形補間画像を内挿した画像信号を出力することにより、FRC部10の動き補償内挿処理を行わないようにする(ステップS22)。また、ステップS21において、繰り返し模様部分以外の画素(或いはブロック)と判定された場合(NOの場合)、FRC部10にて動き補償による内挿処理を施した画像信号を出力する(ステップS23)。そして、フレームレート変換された画像を液晶表示パネル15から表示出力する(ステップS24)。
図19は、本発明の画像表示装置による画像表示方法の他の例を説明するためのフロー図である。ここでは、前述の第8の実施形態における画像表示方法の例について説明する。まず、画像表示装置は、繰り返し模様に対応する画素(或いはブロック)かどうかを判定し(ステップS31)、繰り返し模様に対応する画素(或いはブロック)と判定された場合(YESの場合)、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域(内挿ブロック)に対して、前或いは後フレーム画像を挿入した画像信号を出力することにより、FRC部10の動き補償内挿処理を行わないようにする(ステップS32)。また、ステップS31において、繰り返し模様部分以外の画素(或いはブロック)と判定された場合(NOの場合)、FRC部10にて動き補償による内挿処理を施した画像信号を出力する(ステップS33)。そして、フレームレート変換された画像を液晶表示パネル15から表示出力する(ステップS34)。
図20は、本発明の画像表示装置による画像表示方法の他の例を説明するためのフロー図である。ここでは、前述の第9の実施形態における画像表示方法の例について説明する。まず、画像表示装置は、繰り返し模様に対応する画素(或いはブロック)かどうかを判定し(ステップS41)、繰り返し模様に対応する画素(或いはブロック)と判定された場合(YESの場合)、繰り返し模様に対応する画素あるいは該画素を含む領域(内挿ブロック)に対して、FRC部10における動き補正処理の補正強度を可変(弱く)する(ステップS42)。また、ステップS41において、繰り返し模様部分以外の画素(或いはブロック)と判定された場合(NOの場合)、FRC部10における動き補正処理の補正強度を通常通り強くする(ステップS43)。そして、フレームレート変換された画像を液晶表示パネル15から表示出力する(ステップS44)。
図21は、本発明の画像表示装置により表示出力される画像例を示す図で、図中、Pは繰り返し模様を示す。図21(A)は本発明の繰り返し模様Pに対するFRC制御機能をオフにしたときの画像例を示し、図21(B)は本発明の繰り返し模様Pに対するFRC制御機能をオンにしたときの画像例を示す。
図21(A)では窓の縦構造に相当する繰り返し模様Pに破綻が生じているが、図21(B)では繰り返し模様Pの破綻が目立たなくなっている。このように、動画像を表示する場合において、上述した各実施形態による繰り返し模様Pに対するFRC制御機能をオンすることにより、繰り返し模様Pの破綻をほとんど目立たなくすることができる。
以上説明したように、本発明によれば、動き補償型のレート変換(FRC)部を備えた画像表示装置において、動き補正処理の演算処理量を増やすことなく、画像に含まれる規則的な繰り返し模様部分の画質劣化を効果的に防止することができる。
10…フレームレート変換(FRC)部、11…ベクトル検出部、11a…輝度信号抽出手段、11b…前処理フィルタ、11c…動き検出用フレームメモリ、11d,101…ベクトルメモリ、11e,100…動きベクトル検出部、111e,100a…遅延部、112e…推定ベクトル選択部、113e…繰り返し模様検出部、115e,100c…動きベクトル演算部、116e…全画面平均ベクトル算出部、117e…周辺平均ベクトル算出部、118e…推定ベクトル評価部、119e,100b…ベクトル選択部、11f…内挿ベクトル評価部、11g,102…推定ベクトル出力部、12…フレーム生成部、12a…内挿用フレームメモリ、12b…内挿フレーム生成部、12c…タイムベース変換用フレームメモリ、12d…タイムベース変換部、12e…内挿ベクトルメモリ、12f…補正強度可変部、13…制御部、14…電極駆動部、15…液晶表示パネル、16,114e…切替部、17…経路、18…線形補間内挿処理部、19…メモリ。