実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態1に係る無線通信システムは、例えばWCDMA方式の無線通信システムである。図1に示されるように、本実施の形態1に係る無線通信システムは、基地局装置1と、移動機21と、基地局上位装置31とを備えている。基地局上位装置31は、基地局装置1と有線通信を行い、主として基地局装置1を制御する。基地局装置1は複数の移動機21と無線通信を行うことが可能であり、基地局装置1及び移動機21はそれぞれ無線通信装置である。図1では複数の移動機21のうちの一つを示している。
図2,3は基地局装置1及び移動機21の構成をそれぞれ示すブロック図である。図2に示されるように、基地局装置1は、I/F部2により基地局上位装置31と接続されている。基地局上位装置31からのデジタル信号はI/F部2で受信されて無線フレーム処理部3及び後述の接続移動機モニタ部9に入力される。無線フレーム処理部3は、基地局上位装置31からの信号に基づいて、通信対象の移動機21ごとにデジタル形式の送信信号を生成し、各送信信号に対してCRC(Cyclic Redundancy Check)符号化、誤り訂正符号化、無線フレームへのマッピング、拡散コードを使用した拡散処理等を実施して、各送信信号を送信電力制御部4に出力する。送信電力制御部4は、後述する送信電力制御パターン生成部12とともに、入力された各送信信号に対して送信電力制御を行い、送受信部5に出力する。送受信部5は、入力された各送信信号を合成して多重送信信号を生成し、当該多重送信信号をアナログ形式に変換する。そして、送受信部5は、アナログ形式の多重送信信号に対して変調処理を行い、その後、当該多重送信信号を送信周波数まで周波数変換して電力増幅し、アンテナ6を通じて複数の移動機21に出力する。
WCDMA方式では、同一セクタ内に位置する複数の移動機21に対して基地局装置1から、同一周波数帯域を使用して同時に信号を送信することが可能であることから、あるセクタに対する基地局装置1の送信電力は、当該セクタ内で同時に通信されている複数の移動機21のそれぞれに対する送信電力の総和となる。よって、通信対象の移動機21の数が増加するほど、基地局装置1の送信電力は大きくなる。
アンテナ6で受信された信号は、送受信部5で所定の低い周波数まで周波数変換されて、その後復調処理されてデジタル形式の信号に変換され、無線デフレーム処理部7に入力される。無線デフレーム処理部7は、入力された受信信号に対して逆拡散処理を行い、その後、受信信号中の無線フレームから必要な信号を抜き取り、当該信号に対して誤り訂正復号化及びCRC復号化等を実施して、当該信号をI/F部2あるいは後述の制御部8に出力する。I/F部2は入力された信号を基地局上位装置31へ出力する。
基地局装置1にはさらに制御部8が設けられている。制御部8は、接続移動機モニタ部9と、送信電力モニタ部10と、同期管理部11と、送信電力制御パターン生成部12とを備えている。接続移動機モニタ部9は、基地局装置1と接続される移動機21に関する情報を取得する。送信電力モニタ部10は、送信電力制御部4での送信電力制御の結果から送信信号の送信電力をモニタする。同期管理部11は、送受信部5での復調処理結果から既知のデータ系列の品質測定を行い、その品質測定結果から基地局装置1と移動機21との間の同期状態を把握する。同期管理部11では、RSSI(Received Signal Strength Indicator)測定、SINR(Signal to Interference and Noise Ratio)測定、BLER(Block Error Rate)測定及びBER(Bit Error Rate)測定などが行われる。送信電力制御パターン生成部12は、無線デフレーム処理部7を通じて入力される、後述の移動機21からの送信電力制御コマンドなどに基づいて、各移動機21に対する送信電力を決定する送信電力制御パターンを生成して送信電力制御部4へ出力する。送信電力制御部4は、入力された送信電力制御パターンに基づいて、通信対象の各移動機21への送信信号に対して個別に送信電力制御を行う。このように、本実施の形態1では、送信電力制御部4及び送信電力制御パターン生成部12が送信電力制御を行う制御部として機能する。これにより、同時に接続される複数の移動機21に対する送信電力のそれぞれが個別に制御される。
移動機21では、アンテナ26で受信された信号は、送受信部22において、所定の低い周波数まで周波数変換されて、その後復調処理されてディジタル形式に変化され、無線デフレーム処理部23に入力される。無線デフレーム処理部23は、入力された受信信号に対して逆拡散処理を実行し、その後、当該受信信号中の無線フレームから必要な信号を抜き取り、当該信号に対して誤り訂正復号化及びCRC復号化等を実施して、アプリケーション部24に出力する。アプリケーション部24は、入力された受信信号に基づいて所定の処理を実行する。例えば、図示しない表示部への画像表示を行ったり、図示しないスピーカから音声を出力する。
一方で、アプリケーション部24で生成された送信信号は、無線フレーム処理部25に入力される。無線フレーム処理部25は、入力された送信信号に対して、CRC符号化、誤り訂正符号化、無線フレームへのマッピング、拡散コードを使用した拡散処理等を実施して、当該送信信号を送受信部22に出力する。送受信部22は、入力された送信信号をアナログ形式に変換して、当該アナログ形式の送信信号に対して変調処理を行い、その後、当該送信信号を送信周波数まで周波数変換して電力増幅し、アンテナ26を通じて基地局装置1に出力する。
移動機21には、送信電力制御コマンド生成部27がさらに設けられている。送信電力制御コマンド生成部27は、送受信部22での復調処理結果から既知のデータ系列の品質測定を行い、その品質測定結果から、基地局装置1の送信電力を制御する送信電力制御コマンドを生成する。例えば、送信電力制御コマンド生成部27は、既知のデータ系列の品質が所定の基準を満足しない場合には、自身が属する移動機21に対する送信電力の増加を通知する送信電力制御コマンドを生成し、当該基準を満足する場合には、当該移動機21に対する送信電力の減少を通知する送信電力制御コマンドを生成する。送信電力制御コマンド生成部27では、RSSI測定、SINR測定、BLER測定及びBER測定などが行われる。
次に、本実施の形態1に係る基地局装置1での送信電力制御方法について詳細に説明する。
(第1の送信電力制御方法)
第1の送信電力制御方法では、基地局装置1と同期が取れていない移動機21に対する送信電力を制限することによって、基地局装置1の送信電力が急激に増大することを抑制し、これによって良好な通信品質の維持を確保する。以下に詳細に説明する。
接続移動機モニタ部9及び無線フレーム処理部3には、I/F部2を通じて、基地局上位装置31から通知される通信チャネル設定情報が入力される。この通信チャネル設定情報には、新たに接続する移動機21、言い換えれば新たに通信チャネルを設定する移動機21を特定する拡散コード、拡散率、初期送信電力などが含まれている。
接続移動機モニタ部9は、基地局上位装置31からの通信チャネル設定情報を参照して、同一セクタ内で新たに接続対象となる移動機21を検出し、当該移動機21を検出するたびに、内部に有するカウンタの値をカウントアップする。そして、接続移動機モニタ部9は、当該カウンタの値を当該新たに接続対象となる移動機21を識別する情報とともに、カウントアップするたびに接続移動機数nとして送信電力制御パターン生成部12に出力する。そして、当該カウンタの値は単位時間ΔT1経過ごとにリセットされる。したがって、接続移動機数nは、ある単位時間ΔT1の間に、新たに接続対象となる移動機21が検出されるたびにカウントアップする変数であって、単位時間ΔT1の経過後に“零”となる。
ここで、単位時間ΔT1は、基地局装置1が接続対象の移動機21に対して通信チャネルを設定してから、当該移動機21側で基地局装置1との下り方向の同期が取れるまでに通常必要な時間に設定される。したがって、単位時間ΔT1の間に新たに接続対象となる移動機21の数をカウントすることによって、基地局装置1と下り方向の同期が取れていない移動機21の数をカウントすることができ、その結果、基地局装置1と同期が取れていない移動機21を検出することができる。つまり、接続移動機モニタ部9は、基地局装置1との同期が取れていない移動機21を検出する検出部として機能する。なお、単位時間ΔT1は、通信チャネル設定から下り方向の同期が取れるまでに必要な時間の机上における平均値、あるいはシミュレーションおいて95%の移動機21が同期するまでの時間に設定する。また、同期時間は伝播環境に依存するため、高速道路わきに設置された基地局装置1に対して単位時間ΔT1にマージン値を加える等、基地局装置1の設置条件により単位時間ΔT1にマージン値を追加することが有効である。以後、単位時間ΔT1が終了した時点での接続移動機数nの値、つまり単位時間ΔT1の間で接続対象となった移動機21の総数を「単位時間あたりの接続移動機数N1」と呼ぶ。
一方で、無線フレーム処理部3は、基地局上位装置31からの通信チャネル設定情報に基づいて、新たに接続対象となる移動機21に対して拡散コードを割り当てるなど無線リソースの割り当てを行い、当該移動機21に対する通信チャネルを設定する。その後、無線フレーム処理部3は、新たに接続される移動機21に対する送信信号を生成しCRC符号化等を行って送信電力制御部4に出力する。
送信電力制御パターン生成部12は、ある単位時間ΔT1において、接続移動機数nが所定のしきい値Nth1を超えるまでは、接続対象の移動機21に対しては、当該移動機21から通知された送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。したがって、この場合には、接続対象の各移動機21に対する送信電力は、当該移動機21から送られてくる送信電力制御コマンドに応じて変化する。
一方で、ある単位時間ΔT1において接続移動機数nが所定のしきい値Nth1を超えると、送信電力制御パターン生成部12は、それまでに基地局上位装置81から接続の指示があった移動機21に対しては当該移動機21から送られてきた送信電力制御コマンドを使用し、それ以後に接続対象となる移動機21に対しては、当該移動機21から送られてきた送信電力制御コマンドは使用せずに当該移動機21に対する送信電力が十分小さくなるように送信電力制御パターンを生成する。
このように、本第1の送信電力制御方法では、単位時間ΔT1の間に新たに接続対象となった移動機21のうち、しきい値Nth1以下の数の各移動機21に対する送信電力は当該移動機21から送られてくる送信電力制御コマンドに応じて変化し、しきい値Nth1よりも多い分の各移動機21に対する送信電力は十分小さい値に制限される。しきい値Nth1よりも多い分の各移動機21に対する送信電力については、例えば、零に設定しても良いし、基地局装置1が移動機21との通信を開始する際の送信電力の初期値に設定しても良い。
送信電力制御パターン生成部12は、ある単位時間ΔT1において送信電力が十分小さくなるように設定された移動機21に対しては、次の単位時間ΔT1において、通常通り、当該移動機21から通知される送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。また、送信電力制御パターン生成部12は、当該次の単位時間ΔT1では、前回の単位時間ΔT1において送信電力が十分小さくなるように設定された移動機21の数を初期値として、当該初期値から新たな接続される移動機の数をカウントする。例えば、ある単位時間ΔT1において3つの移動機21に対する送信電力が制限されていたとすると、その次の単位時間ΔT1では接続移動機数nを“3”からカウントアップする。そして、送信電力制御パターン生成部12は、当該次の単位時間ΔT1においても、上述と同様にして、接続移動機数nがしきい値Nth1を超えるまでは、接続対象の移動機21に対しては送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成し、接続移動機数nが所定のしきい値Nth1を超えると、それまでに接続の指示があった移動機21に対しては当該移動機21からの送信電力制御コマンドを使用し、それ以後に接続対象となる移動機21に対しては送信電力が十分小さくなるように送信電力制御パターンを生成する。
なお、移動機21は、基地局装置1との下り方向の同期が取れていない場合には、基地局装置1に対して送信電力の増加を通知する送信電力制御コマンドを送信し続けるため、送信電力の制限が無ければ、基地局装置1は当該移動機21に対する送信電力を所定の増加率で増加することになる。したがって、単位時間ΔT1の間に新たに接続対象となった移動機21のうち、しきい値Nth1以下の数の各移動機21に対する送信電力は増加を維持し、しきい値Nth1よりも多い分の各移動機21に対する送信電力は増加が停止して小さい値に制限される。
図4は本実施の形態1に係る第1の送信電力制御方法を示す図である。図4に示されるように、ある期間T2では単位時間あたりの接続移動機数N1がしきい値Nth1を超えたため、次の期間T3において、その超えた分の移動機21に対して送信電力の増加が行われる。
以上のように、本実施の形態1に係る第1の送信電力制御方法では、新たに接続される移動機21が所定数よりも多くなると、言い換えれば、基地局装置1と同期が取れていない移動機21の数が所定数よりも多くなると、当該所定数よりも多い分の移動機21に対する送信電力が制限される。そのため、基地局装置1での急減な送信電力の増加を回避することができる。その結果、基地局装置1と移動機21との間で良好な通信品質を維持することができる。
(第2の送信電力制御方法)
第2の送信電力制御方法では、新たに接続される移動機21の数が所定数よりも多くなると、当該所定数よりも多い分の移動機21に対しては通信チャネルの設定を遅延させることによって、基地局装置1の送信電力が急激に大きくなることを抑制し、これによって良好な通信品質の維持を確保する。以下に、第1の送信電力制御方法との相違点を中心に説明する。
接続移動機モニタ部9は、上述の第1の送信電力制御方法と同様にして、接続移動機数nをカウントアップし、当該接続移動機数nを新たに接続対象となる移動機21を識別する情報とともにカウントアップごとに送信電力制御パターン生成部12に出力する。
送信電力制御パターン生成部12は、ある単位時間ΔT1において、接続移動機数nが所定のしきい値Nth1を超えるまでは、接続対象の移動機21に対しては、当該移動機21から通知された送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。
一方で、ある単位時間ΔT1において接続移動機数nが所定のしきい値Nth1を超えると、送信電力制御パターン生成部12は、それまでに基地局上位装置81から接続の指示があった移動機21に対しては当該移動機21から送られてきた送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成し、それ以後に接続対象となる移動機21に対しては、通信チャネルの設定を保留(キューイング)する旨を無線フレーム処理部3に出力するとともに、当該移動機21に対する送信電力制御パターンは生成しない。したがって、本第2の送信電力制御方法では、送信電力制御パターン生成部12は、無線フレーム処理部3での通信チャネルの設定を制御する制御部としても機能する。無線フレーム処理部3は、送信電力制御パターン生成部12からの通知を受けると、該当する移動機21の通信チャネルの設定を保留する。したがって、この時点では、当該移動機21に対する送信信号は生成されない。
このように、本第2の送信電力制御方法では、単位時間ΔT1の間に新たに接続対象となった移動機21のうち、しきい値Nth1以下の数の各移動機21に対しては通信チャネルが設定されるとともに、当該移動機21に対する送信電力は当該移動機21から送られてくる送信電力制御コマンドに応じて変化する。一方で、しきい値Nth1よりも多い分の各移動機21に対しては通信チャネルの設定が遅延される。
送信電力制御パターン生成部12は、ある単位時間ΔT1において通信チャネルの設定を保留した移動機21に対しては、次の単位時間ΔT1において、通信チャネルの設定を行う旨を無線フレーム処理部3に通知するとともに、当該移動機21から通知される送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。そして、無線フレーム処理部3は、送信電力制御パターン生成部12からの通知を受けると、該当する移動機21の通信チャネルを設定し、当該移動機21に対する送信信号を生成する。
また、送信電力制御パターン生成部12は、当該次の単位時間ΔT1では、前回の単位時間ΔT1において通信チャネルの設定が保留された移動機21の数を初期値として、当該初期値から新たに接続対象となる移動機の数をカウントする。例えば、ある単位時間ΔT1において3つの移動機21に対する通信チャネルの設定が保留されたとすると、その次の単位時間ΔT1では接続移動機数nを“3”からカウントアップする。そして、送信電力制御パターン生成部12は、当該次の単位時間ΔT1においても、上述と同様にして、接続移動機数nがしきい値Nth1を超えるまでは、接続対象の移動機21に対しては送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成し、接続移動機数nが所定のしきい値Nth1を超えると、それまでに接続の指示があった移動機21に対しては当該移動機21からの送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成し、それ以後に接続対象となる移動機21に対しては通信チャネルの設定を保留する旨を無線フレーム処理部3に通知する。
上述の図4は本実施の形態1に係る第2の送信電力制御方法をも示す図である。図4に示されるように、ある期間T2では単位時間あたりの接続移動機数N1がしきい値Nth1を超えたため、次の期間T3において、その超えた分の移動機21に対して通信チャネルの設定が行われる。
以上のように、本実施の形態1に係る第2の送信電力制御方法では、新たに接続対象となる移動機21の数が所定数よりも多くなると、当該所定数よりも多い分の移動機21に対する通信チャネルが遅延されるため、基地局装置1での急減な送信電力の増加を回避することができる。その結果、基地局装置1と移動機21との間で良好な通信品質を維持することができる。
(第3の送信電力制御方法)
第3の送信電力制御方法では、所定時間の間に通信チャネルの設定が行われた移動機21の数に応じて通信チャネルの設定を実行しない期間を決定し、当該所定時間の経過後当該期間の間は通信チャネルの設定を実行しないことにより、基地局装置1の送信電力が急激に大きくなることを抑制し、これによって良好な通信品質の維持を確保する。以下に、第1の送信電力制御方法との相違点を中心に説明する。
接続移動機モニタ部9は、上述の第1及び第2の送信電力制御方法と同様にして、接続移動機数nをカウントアップし、当該接続移動機数nを新たに接続対象となる移動機21を識別する情報とともにカウントアップごとに送信電力制御パターン生成部12に出力する。
送信電力制御パターン生成部12は、ある単位時間ΔT1において、新たな接続対象の移動機21に対して、当該移動機21から通知された送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。そして、当該単位時間ΔT1が終了すると、送信電力制御パターン生成部12は、当該単位時間ΔT1での単位時間あたりの接続移動機数N1、つまり、単位時間ΔT1の間に通信チャネルの設定が行われた移動機21の数に応じて、通信チャネル設定を実行しない期間(以後、「保留期間Tp」と呼ぶ)を決定して無線フレーム処理部3及び接続移動機モニタ部9に出力する。ここで、保留期間Tpは、接続対象の移動機21のすべてにおいて、通信チャネルの設定から下り方向の同期が取れるまでに必要な平均的な時間に設定される。保留時間Tpについては、接続台数ごとに、事前に試験を実施するなどして決定されることが望ましい。あるいは、単位時間ΔT0に単位時間あたりの接続移動機数N1を掛け合わせた値としても良い。単位時間ΔT0は、通常は上記単位時間ΔT1と同じ値に設定するが、必ずしもその必要はなく、異なった値に設定しても良い。以下の説明では、保留期間Tpを単位時間ΔT0に単位時間あたりの接続移動機数N1を掛け合わせた値とする。
無線フレーム処理部3は、保留期間Tpが通知されると、その後保留期間Tpの間、基地局上位装置31から通知される接続対象の移動機21に対しては通信チャネル設定を行わずに保留する。そして、保留期間Tpが経過すると、無線フレーム処理部3は、通信チャネル設定が保留されていた移動機21に対して通信チャネル設定を行う。
一方で、接続移動機モニタ部9は、保留期間Tpが通知されると、接続移動機数nはカウントアップするものの、接続移動機数nの値と接続対象の移動機21を識別する情報は送信電力制御パターン生成部12には出力しない。そして、接続移動機モニタ部9は、保留期間Tpが経過すると、その時点での単位時間ΔT1における接続移動機数nの値に対して、それよりも前の単位時間ΔT1であって当該保留期間Tpに属する単位時間ΔT1における単位時間あたりの接続移動機数N1をすべて足し合わせて、現在の単位時間ΔT1における接続移動機数nの新たな値とする。
例えば、保留期間Tpが経過した時点での接続移動機数nが“1”であって、それよりも前の単位時間ΔT1であって当該保留期間Tpに属する2つの単位時間ΔT1における単位あたりの接続移動機数N1がそれぞれ“2”及び“3”であるとすると、それらを足し合わせて、現在の単位時間ΔT1における接続移動機数nの新たな値を“6”とする。したがって、この新たな値は、通信チャネル設定が保留されている移動機21の数である。そして、接続移動機モニタ部9は、新たな値の接続移動機数nを送信電力制御パターン生成部12に出力するとともに、通信チャネル設定が保留されている移動機21を識別する情報を送信電力制御パターン生成部12に出力する。その後、接続移動機モニタ部9は、次に保留期間Tpが通知されるまでは通常動作を行う。つまり、接続移動機数nの新たな値から、新たに接続対象となる移動機21を検出するたびにカウントアップし、接続移動機数nと当該移動機21を識別する情報とをカウントアップごとに送信電力制御パターン生成部12に出力する。
以上の動作により、送信電力制御パターン生成部12は、保留期間Tpの間は、通信チャネル設定が保留されている移動機21に対して送信電力制御パターンを生成せず、保留期間Tpの経過後、通信チャネル設定が保留されていた移動機21に対して、当該移動機21から通知される送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。
その後、単位時間ΔT1が終了すると、送信電力制御パターン生成部12は、当該単位時間ΔT1における単位時間あたりの接続移動機数N1に応じて保留期間Tpを決定して無線フレーム処理部3及び接続移動機モニタ部9に出力する。
なお、保留期間Tpが経過した時点での単位時間ΔT1よりも前の単位時間ΔT1であって当該保留期間Tpに属する単位時間ΔT1が存在しない場合には、つまり、保留期間Tpが単位時間ΔT1よりも短い場合には、接続移動機モニタ部9は現在の単位時間ΔT1での接続移動機数nの値をそのまま送信電力制御パターン生成部12に出力する。
図5は本実施の形態1に係る第3の送信電力制御方法を示す図である。図5の横軸に示される時間T11〜T14のそれぞれは、単位時間ΔT1が終了した時点を示している。図5に示されるように、時間T11において単位時間あたりの接続移動機数N1が“1”であるとすると、時間T11からΔT0の間、通信チャネルの設定は実行されない。そして、ΔT0が経過した後の時間T12において単位時間あたりの接続移動機数N1が“3”であるとすると、時間T12から(ΔT0×3)の間、通信チャネルの設定は実行されない。(ΔT0×3)が経過し、時間T14における単位時間あたりの接続移動機数N1が“2”であるとすると、時間T14から(ΔT0×2)の間、通信チャネル設定が実行されない。
以上のように、本実施の形態1に係る第3の送信電力制御方法では、単位時間ΔT1の間に通信チャネルの設定が行われた移動機21の数に応じて通信チャネルの設定を実行しない保留期間Tpを決定し、当該単位時間ΔT1の経過後保留期間Tpの間は通信チャネルの設定を実行していない。
通常、同時期に基地局装置1と同期を取ろうとする移動機21の数が多くなると、移動機21間の干渉量が多くなるため、移動機21側で基地局装置1との下り方向の同期が確立するまでの時間も長くなる。したがって、単位時間ΔT1の間に通信チャネルの設定が行われた移動機21の数に応じて通信チャネルの設定を実行しない保留期間Tpを決定することによって、同時期に基地局装置1との同期を取ろうとする移動機21の数を抑制することができる。その結果、基地局装置1の送信電力が急激に大きくなることを抑制することができ、これによって良好な通信品質の維持を確保することができる。
(第4の送信電力制御方法)
第4の送信電力制御方法では、基地局装置1と同期が取れていない複数の移動機21に対して互いに異なった時間帯で送信電力を増加することにより、基地局装置1の送信電力が急激に大きくなることを抑制し、これによって良好な通信品質の維持を確保する。以下に、第1の送信電力制御方法との相違点を中心に説明する。
接続移動機モニタ部9は、上述の第1乃至第3の送信電力制御方法と同様にして、接続移動機数nをカウントアップし、当該接続移動機数nを新たな接続対象の移動機21を識別する情報とともにカウントアップごとに送信電力制御パターン生成部12に出力する。
送信電力制御パターン生成部12は、ある単位時間ΔT1の間で新たに接続対象となった移動機21を複数のグループに分類する。つまり、基地局装置1との同期が取れていない移動機21を複数のグループに分類する。例えば、A1〜C1のグループに分類する。そして、送信電力制御パターン生成部12は、まず、期間Ta1の間、グループA1に属する移動機21に対して、当該移動機21から通知された送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成し、その他のグループに属する移動機21に対しては、上述の第1の送信電力制御方法と同様に、当該移動機21に対する送信電力が十分小さくなるように送信電力制御パターンを生成する。上述のように、移動機21は、基地局装置1との同期が取れていない場合には、基地局装置1に対して送信電力の増加を通知する送信電力制御コマンドを送信し続けるため、期間Ta1の間では、グループA1に属する移動機21に対する送信電力は増加することになる。
送信電力制御パターン生成部12は、期間Ta1に続いて、期間Tb1の間、今度はグループB1に属する移動機21に対して、当該移動機21から通知された送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成し、その他のグループに属する移動機21に対しては、当該移動機21に対する送信電力が十分小さくなるように送信電力制御パターンを生成する。そして、送信電力制御パターン生成部12は、期間Tb1に続いて、期間Tc1の間、今度はグループC1に属する移動機21に対して、当該移動機21から通知された送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成し、その他のグループに属する移動機21に対しては、当該移動機21に対する送信電力が十分小さくなるように送信電力制御パターンを生成する。以後、次の単位時間ΔT1においても同様の処理が行われる。
図6は本実施の形態1に係る第4の送信電力制御方法を示す図である。図6に示されるように、グループA1の移動機21に対する送信電力を増加する期間Ta1と、グループB1の移動機21に対する送信電力を増加する期間Tb1と、グループC1の移動機21に対する送信電力を増加する期間Tc1とは、分離されている。
このように、本実施の形態1に係る第4の送信電力制御方法では、基地局装置1との同期が取れていない複数の移動機21に対して互いに異なった時間帯で当該移動機21に対する送信電力を増加しているため、基地局装置1の送信電力が急激に大きくなることを抑制することができる。その結果、良好な通信品質の維持を確保することができる。本第4の送信電力制御方法によれば、上述の第3の送信電力制御方法と比べて、移動機21側で基地局装置1との同期がとれるまでの時間が長くなるが、システム的に安定して動作することができる。
なお、本第4の送信電力制御方法では、単位時間ΔT1の間に新たに接続対象となる移動機21を複数のグループに分類し、当該グループごとに送信電力制御コマンドに基づく送信電力制御を実行する時間帯を設けていたが、単位時間ΔT1の間に新たに接続対象となる移動機21に対して、あらかじめ、送信電力制御コマンドに基づく送信電力制御を実行する複数の時間帯を準備しておき、各時間帯において、当該送信電力制御を行う移動機21の数に上限を設けても良い。例えば、この順で連続する3つの時間帯Td〜Tfを設けて各時間帯Td〜Tfでの上限数を“3”とすると、まず時間帯Tdにおいて、3台まで移動機21に対して送信電力制御コマンドに基づく送信電力制御を行う。そして、3台を超えると、4台目〜6台目までは時間帯Teで行い、7台目〜9台目までは時間帯Tfで行う。このような場合であって、同時に基地局装置1との同期を取ろうとする移動機数21の数を低減することができるため、移動機基地局装置1の送信電力が急激に大きくなることを抑制することができる。
(第5の送信電力制御方法)
第5の送信電力制御方法では、基地局装置1との同期が取れていない移動機21の状態に応じて同期確立の優先順位を決定し、当該優先順位を考慮して適切な送信電力制御を行う。以下に、第1の送信電力制御方法との相違点を中心に説明する。
接続移動機モニタ部9は、上述の第1乃至第4の送信電力制御方法と同様にして接続移動機数nをカウントアップし、当該接続移動機数nを新たな接続対象の移動機21を識別する情報とともにカウントアップごとに送信電力制御パターン生成部12に出力する。ここで、あるセクタ内で新たに接続対象となる移動機21は、当該セクタ内にハンドオーバによって移動してきた移動機21と、当該セクタ内で電源オンされた移動機21とで構成されている。接続移動機モニタ部9は、接続移動機数nをカウントアップするとともに、基地局上位装置31からの通信チャネル設定情報を参照して、単位時間ΔT1の間にハンドオーバによって新たに接続対象となる移動機21と、当該単位時間ΔT1の間に電源オンによって新たに接続対象となる移動機21とを特定する。つまり、接続移動機モニタ部9では、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない移動機21であってハンドオーバによって新たに接続対象となった移動機21と、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない移動機21であって電源オンによって新たに接続対象となった移動機21とが、基地局装置1と同期していない移動機21として検出される。そして、接続移動機モニタ部9は、ハンドオーバにより新たに接続対象となった移動機21を識別する情報と、電源オンにより新たに接続対象となった移動機21を識別する情報とを送信電力制御パターン生成部12に出力する。
同期管理部11は、送受信部5での復調処理結果から既知のデータ系列の品質測定を行い、その品質測定結果から、上り方向の同期がはずれた移動機21を検出し、当該移動機21を検出するたびに、内部に有するカウンタの値をカウントアップする。そして、同期管理部11は、当該カウンタの値を当該同期がはずれた移動機21を識別する情報とともに、カウントアップするたびに同期はずれ移動機数mとして送信電力制御パターン生成部12に出力する。そして、当該カウンタの値は単位時間ΔT1経過ごとにリセットされる。したがって、同期はずれ移動機数mは、ある単位時間ΔT1の間に、上り方向の同期がはずれた移動機21が検出されるたびにカウントアップする変数であって、単位時間ΔT1の経過後に“零となる。以後、単位時間ΔT1が終了した時点での同期はずれ移動機数mの値を「単位時間あたりの同期はずれ移動機数M1」と呼ぶ。このように、同期管理部11は、基地局装置1との上り方向の同期はずれを生じた移動機21を検出する検出部として機能する。
送信電力制御パターン生成部12は、ある単位時間ΔT1における接続移動機数nと、当該単位時間ΔT1における同期はずれ移動機数mとを足し合わせて未同期移動機数lとする。このとき、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない移動機21であってハンドオーバによって新たに接続対象となった移動機21については、通信チャネルが設定されてから短時間で上り同期が取れ、その後短時間で上り同期がはずれた移動機21も含まれることがあることから、同期管理部11で当該単位時間ΔT1の間に検出された、上り方向の同期はずれが生じた移動機21と重複することがある。その場合には、その重複する数は未同期移動機数lから差し引く。通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない移動機21であって電源オンによって新たに接続対象となった移動機21についても同様である。
送信電力制御パターン生成部12は、ある単位時間ΔT1における未同期移動機数lが所定のしきい値Nth1を超えるまでは、当該単位時間ΔT1において新たに接続対象となった移動機21あるいは上り同期はずれを生じた移動機21に対して、当該移動機21から送られてくる送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。
一方で、ある単位時間ΔT1において未同期移動機数lが所定のしきい値Nth1を超えると、送信電力制御パターン生成部12は、上述の第1の送信出力制御方法と同様に、当該単位時間ΔT1において新たに接続対象となった移動機21及び上り同期はずれを生じた移動機21のうち、しきい値Nth1以下の数の移動機21に対しては当該移動機21から通知される送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成し、しきい値Nth1よりも多い分の移動機21に対して当該移動機21に対する送信電力が十分低い値となるように送信電力制御パターンを生成する。
ここで、新たに接続対象となった移動機21及び上り同期はずれを生じた移動機21に対して、同期確立の優先順位が割り当てられており、送信電力制御パターン生成部12は、当該優先順位の高い移動機21から順に送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御を行い、同期確立が早期に行われるようにする。本例では、最も優先順位の高い移動機21を上り同期はずれを生じた移動機21とし、その次に優先順位が高い移動機21としてハンドオーバによって新たに接続対象となった移動機21とする。そして、最も優先順位が低い移動機21を、電源オンによって新たに接続対象となった移動機21とする。
電源オンにより新たに接続対象となった移動機21については、まだ課金が行われておらず、使用者が再度発呼からやり直すことが可能である。また、ハンドオーバにより新たに接続対象となった移動機21については、移動元の基地局装置1との通信ができる可能性がある。そして、上り同期はずれを生じた移動機21については、前者の2つの場合とは異なり、できる限り通信が切れる危険から遠ざける必要がある。したがって、上記のような優先順位とする。
送信電力制御パターン生成部12は、ある単位時間ΔT1において未同期移動機数lが所定のしきい値Nth1を超えると、当該単位時間ΔT1において上り同期はずれを生じた移動機21に対して優先的に送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成し、送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成した移動機21の数がしきい値Nth1よりも少なければ、今度は、ハンドオーバによって新たに接続対象となった移動機21に対して送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成し、送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成した移動機21の数がまだしきい値Nth1よりも少なければ、最後に、電源オンによって新たに接続対象となった移動機21に対して送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。そして、送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成した移動機21の数がしきい値Nth1と同じになれば、残りの移動機21に対しては、送信信号が十分小さい値となるように送信電力制御パターンを生成する。
このような送信電力制御を実行することによって、同期確立の優先順位が高い移動機21に対しては優先的に送信電力の増加が行われ、当該優先順位の低い移動機21に対しては送信電力が制限されるようになる。その結果、基地局装置1での送信電力が急激に増加することを抑制しつつ、当該優先順位の高い移動機21について基地局装置1との同期が早期に確立するようになる。
送信電力制御パターン生成部12は、ある単位時間ΔT1において送信電力が十分小さくなるように設定された移動機21に対しては、上述の第1の送信電力制御方法と同様に、次の単位時間ΔT1において、通常通り、当該移動機21から通知される送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。また、送信電力制御パターン生成部12は、当該次の単位時間ΔT1では、前回の単位時間ΔT1において送信電力が十分小さくなるように設定された移動機21の数を未同期移動機数lに足し合わせる。そして、送信電力制御パターン生成部12は、当該次の単位時間ΔT1においても、上述と同様の処理を行う。
なお上述のように、移動機21は、基地局装置1との下り方向の同期が取れていない場合には、基地局装置1に対して送信電力の増加を通知する送信電力制御コマンドを出力し続けるため、理想的には下り方向の同期はずれを生じた移動機21に対する送信電力を制限する必要がある。しかしながら、基地局装置1側では、下り方向の同期はずれを生じている移動機21を検出することは容易ではない。一方で、基地局装置1と上り方向の同期がはずれている移動機21は、下り方向の同期もはずれている可能性がある。したがって、本例では、検出が比較的困難である下り方向の同期はずれを生じている移動機21を検出するのではなく、検出が比較的容易な上り方向の同期はずれを生じている移動機21を検出している。なお、基地局装置1側で下り方向の同期はずれを生じている移動機21を容易に検出できる場合には、当該移動機21の数を上述の同期はずれ移動機数mとして使用しても良い。
以上のように、本実施の形態1に係る第5の送信電力制御方法では、基地局装置1との同期が取れていない移動機21に対してその状態に応じて同期確立の優先順位を設けているため、移動機21の状態に応じて適切に送信電力制御を行うことができる。
また上述のように、基地局装置1との同期が取れていない移動機21に対しては、送信電力の制限が無ければ、基地局装置1は送信電力を所定の増加率で増加することになるが、この増加率を上述の優先順位に応じて変化させても良い。例えば、上り方向の同期はずれを生じた移動機21については基地局装置1との同期を早期に確立する必要があることから、ハンドオーバにより新たに接続対象となった移動機21及び電源オンとなって新たに接続対象となった移動機21に対する送信電力の増加率を制限して、当該増加率よりも、上り方向の同期はずれを生じた移動機21に対する送信電力の増加率の方が大きくなるようにしても良い。
また、本第5の送信電力制御方法においては、上述の第1の送信電力制御方法と同様に、送信電力を零あるいは初期値に設定することによって、移動機21に対する送信電力を制限することができるが、移動機21から出力される送信電力制御コマンドが送信電力の減少を通知する場合には当該送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御を行い、送信電力の増加を通知する場合には当該送信電力制御コマンドを無視して現在の送信電力を維持するように送信電力制御を行うことによっても、移動機21に対する送信電力が増加しないように制限することができる。この送信電力の制限方法については第1の送信電力制御方法でも使用できる。
また、本第5の送信電力制御方法では、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない移動機21であってハンドオーバにより新たに接続対象となった移動機21と、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない移動機21であって電源がオフからオンになったことによって新たに接続対象となった移動機21と、既に通信チャネル設定が行われているが上り方向の同期はずれが発生した移動機21とを、基地局装置1と同期が取れていない移動機1として検出しているが、その替わりに、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない移動機21であってハンドオーバにより新たに接続対象となった移動機21と、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない移動機21であって電源がオフからオンになったことによって新たに接続対象となった移動機21と検出しても良い。この場合には、同期管理部11でカウントアップされる同期はずれ移動機数mは送信電力制御パターン生成部12では使用されず、未同期移動機数lとして接続移動機数nが採用される。
また、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない移動機21については、実際には基地局装置1との下り方向の同期が取れている移動機21が含まれる可能性があることから、同期管理部11からの情報を使用することによって、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない移動機21であって上り方向の同期が取れていない移動機21を検出し、これにより、接続移動機モニタ部9で検出された同期が取れていない移動機21から、実際には下り方向の同期が取れている移動機21をある程度排除することができる。したがって、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない上り方向の同期が取れていない移動機21であってハンドオーバにより新たに接続対象となった移動機21と、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない上り方向の同期が取れていない移動機21であって電源がオフからオンになったことによって新たに接続対象となった移動機21とを、第5の送信電力制御方法において同期がとれていない移動機21として検出しても良い。この場合には、同期管理部11は、上り方向の同期が取れていない移動機21を検出して、当該移動機21を識別する情報を接続移動機モニタ部9に出力する。接続移動機モニタ部9は、同期管理部11からの情報を参照して、単位時間ΔT1の間に新たに接続対象となった移動機21であって上り方向の同期が取れていない移動機21を特定し、当該移動機21の数を送信電力制御パターン生成部12に出力する。送信電力制御パターン生成部12は、接続移動機モニタ部9から受け取った数がしきい値Nth1以下であれば、当該単位時間ΔT1の間に接続対象となった移動機21に対して送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。一方で、送信電力制御パターン生成部12は、受け取った数がしきい値Nth1よりも大きければ、当該単位時間ΔT1においてハンドオーバによって新たに接続対象となった移動機21であって上り方向の同期が取れていない移動機21に対して優先的に送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成し、送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成した移動機21の数がまだしきい値Nth1よりも少なければ、今度は電源オンによって新たに接続対象となった移動機21であって上り方向の同期が取れていない移動機21に対して送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。そして、送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成した移動機21の数がしきい値Nth1と同じになれば、残りの移動機21に対しては、送信信号が十分小さい値となるように送信電力制御パターンを生成する。
また、上述の第2の送信電力制御方法においても、ハンドオーバによって新たに接続対象となる移動機21と電源オンによって新たに接続対象となる移動機21とを検出して、前者の移動機21に対して優先的に通信チャネル設定を行うことによって、移動機21の状態に応じて適切に送信電力制御を行うことができる。
また、上述の第3の送信電力制御方法においても、ハンドオーバによって新たに接続対象となる移動機21と電源オンによって新たに接続対象となる移動機21とを検出して、前者の移動機21に対して割り当てる単位時間ΔT0を後者の移動機21に割り当てる単位時間T0よりも長く設定することによって、移動機21の状態に応じて適切に送信電力制御を行うことができる。
(第6の送信電力制御方法)
上述の第5の送信電力制御方法では、基地局装置1との同期が取れていない移動機21の状態に応じて同期確立の優先順位を設けていたが、本第6の送信電力制御方法では、移動機21の種別に応じて同期確立の優先順位を設けて、当該優先順位の高い移動機21が早期に同期確立するように送信電力制御を行う。以下に、第1の送信電力制御方法との相違点を中心に説明する。
一般的に、移動機21には、緊急通報用に用いられるもの、VIP(Very Important Person)が用いるもの等クラス分けがなされており、各クラスに対して移動機21を呼び出す際の優先順位が設けられている。この優先順位を移動機21を呼び出す際の受付処理時のみならず、送信電力制御時にも使用する。
接続移動機モニタ部9には、基地局上位装置31から、移動機21に対するクラス分けの情報が通知される。接続移動機モニタ部9は、接続移動機数nを送信電力制御パターン生成部12に通知する際には、接続対象の移動機21のクラスを識別する情報を出力する。本例では、図7に示されるように、各移動機21に対してクラスA2,B2,C2のいずれか一つが割り当てられており、クラスA2,B2,C2の順で同期確立の優先順位が高くなっている。
送信電力制御パターン生成部12は、ある単位時間ΔT1において、接続移動機数nが所定のしきい値Nth1を超えるまでは、接続対象の移動機21に対しては、当該移動機21から通知された送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。
一方で、ある単位時間ΔT1において接続移動機数nが所定のしきい値Nth1を超えると、送信電力制御パターン生成部12は、上述の第1の送信出力制御方法と同様に、当該単位時間ΔT1において新たに接続対象となる移動機21のうち、しきい値Nth1以下の数の移動機21に対しては当該移動機21から通知される送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成し、しきい値Nth1よりも多い分の移動機21に対して当該移動機21に対する送信電力が十分低い値となるように送信電力制御パターンを生成する。このとき、同期確立の優先順位が高い移動機21から順に送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御を行う。本例では、上述のようにクラスA2,B2,C2の順で優先順位が高くなっているため、送信電力制御パターン生成部12は、ある単位時間ΔT1において接続移動機数nが所定のしきい値Nth1を超えると、クラスA2の移動機21に対して優先的に送信電力制御コマンドを使用し、送信電力制御コマンドを使用する移動機21の数がまだしきい値Nth1よりも少なければ、今度は、クラスB2の移動機21に対して送信電力制御コマンドを使用し、送信電力制御コマンドを使用する移動機21の数がまだしきい値Nth1よりも少なければ、最後に、クラスC2の移動機21に対して送信電力制御コマンドを使用する。そして、送信電力制御コマンドを使用する移動機21の数がしきい値Nth1と同じになれば、残りの移動機21に対しては、送信信号が十分小さい値となるように送信電力制御パターンを生成する。
以上のように、第6の送信電力制御方法では、移動機の種別に応じて同期確立の優先順位を設けているため、移動機21の種別に応じて適切に送信電力制御を行うことができる。
なお、上述の第5の送信電力制御方法においても、同期確立の優先順位を決定する際に移動機の種別を考慮しても良い。図8はこの場合の優先順位を示す図である。
また、上述の第2の送信電力制御方法においても、移動機21の種別に応じて同期確立の優先順位を設けて、優先順の高い種別の移動機21に対して優先的に通信チャネルを設定することによって移動機21の種別に応じて適切に送信電力制御を行うことができる。
また、上述の第3の送信電力制御方法においても、移動機21の種別に応じて同期確立の優先順位を設けて、優先順の高い移動機21ほど、保留期間Tpを決定する際に使用される単位時間ΔT0を長く設定することによって、移動機21の種別に応じて適切に送信電力制御を行うことができる。図9はこの様子を示す図である。図9の横軸に示される時間T15〜T18のそれぞれは単位時間ΔT1が終了した時点を示している。また、各移動機21に対して上述のクラスA2,B2,C2のいずれか一つが割り当てられており、クラスA2,B2,C3には、単位時間T0として単位時間Ta2,Tb2,Tc2がそれぞれ割り当てられている。単位時間Ta2,Tb2,Tc2はこの順で長く設定されている。
図9に示されるように、時間T15において、単位時間T0の間に1台のクラスA2の移動機21が接続対象となっていたとすると、時間T15からΔTa2の間、通信チャネルの設定は実行されない。そして、ΔTa2が経過した後の時間T16において、単位時間T0の間に1台のクラスA2の移動機21と、2台のクラスB2の移動機21とが接続対象となっていたとすると、(ΔTa2×1+ΔTb2×2)の間、通信チャネルの設定が実行されない。そして、(ΔTa2×1+ΔTb2×2)が経過し、時間T18において、単位時間T0の間に1台のクラスB2の移動機21と1台のクラスC2の移動機21とが接続対象となっていたとすると、時間T18から(ΔTb2+ΔTc2)の間、通信チャネル設定が実行されない。
また、移動機21が通信しているデータには音声データや動画データのようにリアルタイム性が要求されるものと、WEBブラウジングやEメールのようにネットワークの上位レイヤでリアルタイム性が不要であり、かつARQ(Automatic Repeat reQuest)が働きベストエフォート型の通信で十分なものなどがあり、QoS(Quality of Service)によるクラス分けも有効である。特に、許容できるデータの遅延時間と関連付けを持たせたクラス分けが有効である。例えば、遅延時間50ms以下が要求される移動機21を最も高い優先順位とし、遅延時間500ms以下が要求される移動機21をその次に、ベストエフォート型の通信で十分な移動機21を最も低い優先順位とする。このようなクラス分けであっても、移動機21の種別に応じて適切に送信電力制御を行うことができる。
(第7の送信電力制御方法)
第7の送信電力制御方法では、基地局装置1の送信電力が最大許容送信電力に達すると、基地局装置1との同期がとれていない移動機21に対する送信電力の増加を停止することによって、基地局装置1の送信電力が急激に大きくなることを抑制し、これによって良好な通信品質の維持を確保する。以下に、第1の送信電力制御方法との相違点を中心に説明する。
送信電力モニタ部10は、送信電力制御部4での送信電力制御の結果から、自身が属する基地局装置1での移動機21に対する全送信電力(以後、「総送信電力」と呼ぶ)を所定時間ごとに繰り返して取得して送信電力制御パターン生成部12に出力する。総送信電力は、移動平均値であっても良いし、単位時間あたりの平均値であっても良い。
送信電力制御パターン生成部12は、入力された総送信電力と、基地局装置1の最大許容送信電力SMAXとを比較する。この最大許容送信電力SMAXは一般的に基地局上位装置31が決定し、基地局上位装置31から基地局装置1に通知される。
送信電力制御パターン生成部12は、総送信電力が最大許容送信電力SMAXよりも小さい場合には、接続移動機モニタ部9及び同期管理部11から通知される同期が取れていない移動機21に対しては、当該移動機21から通知される送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。
ここで、本第7の送信電力制御方法での「同期が取れていない移動機21」には、上述の第5の送信電力制御方法で説明した、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない移動機21であってハンドオーバにより新たに接続対象となった移動機21と、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない移動機21であって電源がオフからオンになったことによって新たに接続対象となった移動機21と、既に通信チャネル設定が行われているが上り方向の同期はずれが発生した移動機21とが含まれる。なお、第5の送信電力制御方法でも説明したように、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない移動機21であってハンドオーバにより新たに接続対象となった移動機21と、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない移動機21であって電源がオフからオンになったことによって新たに接続対象となった移動機21とを本例での「同期が取れていない移動機21」としても良いし、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない上り方向の同期が取れていない移動機21であってハンドオーバにより新たに接続対象となった移動機21と、通信チャネル設定から単位時間ΔT1経過していない上り方向の同期が取れていない移動機21であって電源がオフからオンになったことによって新たに接続対象となった移動機21とを本例での「同期が取れていない移動機21」としても良い。同期が取れていない移動機21は、第5の送信電力制御方法と同様にして検出することができる。
一方で、送信電力制御パターン生成部12は、総送信電力が最大許容送信電力SMAXと一致すると、その時点で同期が取れていない各移動機21に対しては、そのときの送信電力を維持するように送信電力制御パターンを生成し、その後、総送信電力が最大許容送信電力SMAXよりも小さくなると、送信電力制御パターン生成部12は、一定時間T21、送信電力を一定に維持している状態が持続するように送信電力制御パターンを生成する。この一定時間T21は、例えば、基地局装置1が接続対象の移動機21に対して通信チャネルを設定してから、当該移動機21側で基地局装置1との下り方向の同期が取れるまでに通常必要とされる時間に設定される。その後、一定時間T21が経過すると、送信電力制御パターン生成部111は、総送信電力と最大許容送信電力SMAXとの比較結果に応じて同様に動作する。
図10は、本実施の形態1に係る第7の送信電力制御方法を示す図である。図10に示されるように、基地局装置1での総送信電力が最大許容送信電力SMAXに達すると、同期が取れていないある移動機21に対する送信電力の増加が停止し、そのときの値が維持される。そして、他の移動機21で基地局装置1との同期が取れる等の理由により、総送信電力が最大許容送信電力SMAXよりも小さくなると、一定時間T21の間、一定値が維持されている状態が持続し、その後、一定時間T2が経過すると、当該ある移動機21に対する送信電力は、当該ある移動機21が基地局装置1との同期が取れていない場合には、再度増加し始める。
以上のように、本実施の形態1に係る第7の送信電力制御方法では、基地局装置1の総送信電力が最大許容送信電力SMAXに達すると、同期が取れていない移動機21に対する送信電力の増加を停止している。
ここで、一般に、移動機21の目の前から基地局装置1を遮蔽する車が移動する場合など、移動機21に対する送信電力をむやみに増加させなくても伝播環境の変化により移動機21は基地局装置1との同期を取れる場合がある。したがって、同期が取れていない移動機21に対して常に送信電力を増加する必要は無い。
本例のように、基地局装置1の総送信電力が最大許容送信電力SMAXに達すると、同期が取れていない移動機21に対する送信電力の増加を停止することによって、移動機21が基地局装置1と実際に同期するまでの時間をそれほど増加させることなく、基地局装置1での急減な送信電力の増加を回避することができる。その結果、基地局装置1と移動機21との間で良好な通信品質を維持することができる。
なお、本第7の送信電力制御方法において、上述の第6の送信電力制御方法と同様に、移動機21の種別に応じて同期確立の優先順位を設けて、優先順の高い移動機21ほど、一定時間T21を短く設定することによって、移動機21の種別に応じて適切に送信電力制御を行うことができる。図11はこの様子を示す図である。図11の例では、各移動機21に対してクラスD,Eのいずれか一つが割り当てられており、クラスDの移動機21よりもクラスEの移動機21の方が同期確立の優先順位が高いものとしている。また、クラスDの移動機21に対する一定時間T21を「一定時間T21d」とし、クラスEの移動機21に対する一定時間T21を「一定時間T21e」としている。図11に示されるように、基地局装置1の総送信電力が最大許容送信電力SMAXよりも小さくなってからの一定時間T21がクラスEの移動機21の方がクラスDの移動機21より短く設定されている。したがって、クラスEの移動機21の方が早く同期確立しやすくなる。
(第8の送信電力制御方法)
第8の送信電力制御方法では、基地局装置1との同期が取れていない移動機21に対する送信電力が急減に増加し、かつ当該送信電力がしきい値よりも大きくなると、当該送信電力の増加を停止することにより、基地局装置1の送信電力が急激に大きくなることを抑制し、これによって良好な通信品質の維持を確保する。以下に詳細に説明する。なお、ここので同期が取れていない移動機21とは、第7の送信電力制御方法と同様であり、その検出方法も第7の送信電力制御方法と同様である。以下に、第7の送信電力制御方法との相違点を中心に説明する。
送信電力モニタ部10は、送信電力制御部4での送信電力制御の結果から、基地局装置1からの送信電力が急激に増加している移動機21であって当該送信電力がしきい値Wthよりも大きい移動機21を検出し、当該移動機21を識別する情報を送信電力制御パターン生成部12に出力する。このとき、送信電力制御パターン生成部12は、通信対象の各移動機21に対して、当該移動機21から通知される送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成している。つまり、送信電力制御パターン生成部12及び送信電力制御部4は、移動機21からの通知に従って当該移動機21に対する送信電力を制御している。送信電力モニタ部10は、送信電力の増加率が所定のしいき値Rthよりも大きければ急激に増加していると判定する。さらに送信電力モニタ部10は、上述の第7の送信電力制御方法と同様に、送信電力制御部4での送信電力制御の結果から、基地局装置1の総送信電力を所定時間ごとに繰り返して取得して送信電力制御パターン生成部12に出力する。
送信電力制御パターン生成部12は、送信電力モニタ部10から通知された移動機21のうち、同期が取れていない移動機21を特定する。そして、送信電力制御パターン生成部12は、特定した移動機21、つまり基地局装置1との同期がとれておらず、かつ基地局装置1からの送信電力が急減に増加し、かつ当該送信電力がしきい値Wthよりも大きい移動機21に対しては、当該移動機21から通知される送信電力制御コマンドは使用せずに、当該移動機21に対する送信電力の増加が停止し、そのときの値が一定時間T31保持されるように送信電力制御パターンを生成する。他の移動機21については、送信電力制御パターン生成部12は、通常通り、当該移動機21からの送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。この一定時間T31は、例えば、基地局装置1が接続対象の移動機21に対して通信チャネルを設定してから、当該移動機21側で基地局装置1との下り方向の同期が取れるまでに通常必要とされる時間に設定される。
その後、一定時間T31が経過すると、送信電力制御パターン生成部12は、基地局装置1の総送信電力が最大許容送信電力SMAXに対して余裕があれば、送信電力の増加を停止した移動機21に対して、当該移動機21から通知される送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。このとき、当該移動機21からの送信電力制御コマンドが依然として送信電力の増加を通知している際には、当該移動機21に対する送信電力の増加率を、増加を停止する前の増加率よりも小さく設定する方が好ましい。例えば、送信電力の増加を停止する前の増加率が、100msの間で1.25倍となるような増加率であり、一定時間T31経過直後の同期が取れていない移動機数がn個であるとすると、100msの間で(1+0.25/n)倍になるような増加率とする。
一方で、一定時間T31が経過した際に、基地局装置1の総送信電力が最大許容送信電力SMAXに対して余裕がない場合には、送信電力制御パターン生成部12は、送信電力の増加を停止した移動機21に対しては、当該移動機21から通知される送信電力制御コマンドが送信電力の増加を示していると、送信電力の増加の停止が維持されて送信電力が固定値となるように送信電力制御パターンを生成し、その後、当該送信電力制御コマンドが送信電力の低下を示すようになると、当該移動機21に対しては、当該送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。また、一定時間T31が経過した際に基地局装置1の総送信電力が最大許容送信電力SMAXに対して余裕がなく、送信電力の増加を停止した移動機21からの送信電力制御コマンドが送信電力の低下を示していると、当該移動機21に対しては、当該送信電力制御コマンドを使用して送信電力制御パターンを生成する。
基地局装置1の総送信電力が最大許容送信電力SMAXに対して余裕があるかどうかの判定は、最大許容送信電力SMAXよりも小さい所定のしきい値Sthを設けて、当該しきい値Sthよりも大きいか否かを判定することによって行うことができる。
なお、送信電力制御パターン生成部12は、一定時間T31が経過すると、基地局装置1の総送信電力が最大許容送信電力SMAXに対して余裕があるかどうかを判定する代わりに、基地局装置1が通信している移動機21の数が所定数よりも少ないかどうかを判定しても良い。
図12は本実施の形態1に係る第8の送信電力制御方法を示す図である。図12に示されるように、周辺基地局への干渉を考慮して、十分低い送信電力で、ある移動機21への送信が開始し、当該移動機21への送信電力が初期電力値に達すると、送信電力の増加率が下がって比較的ゆっくりと送信電力が上昇する。そして、当該移動機21の送信電力がしいき値Wthよりも大きくかつ急減に増加していると判定されると、当該移動機21に対する送信電力の増加が停止し、そのときの値が一定時間T31保持される。図12の例では、一定時間T31経過後、基地局装置1の総送信電力がしきい値Sthよりも大きく、当該総送信電力が最大許容送信電力SMAXに対して余裕がないため、当該移動機21に対する送信電力は増加が停止した際の値で保持される。その後、当該移動機21が基地局装置1との下り方向の同期を確立すると、当該移動機21は送信電力の低下を通知する送信電力制御コマンドを出力するため、当該移動機21に対する送信電力は徐々に低下する。
以上のように、本実施の形態1に係る第8の送信電力制御方法では、基地局装置1との同期が取れていない移動機21に対する送信電力が急減に増加し、かつ当該送信電力がしきい値よりも大きくなると、当該送信電力の増加を停止している。したがって、基地局装置1での送信電力が急激に大きい値になることを防止することができる。その結果、基地局装置1と移動機21との間で良好な通信品質を維持することができる。
実施の形態2.
図13は本発明の実施の形態2に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態2に係る無線通信システムは、例えばOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)方式あるいはSC−FDMA(Singlw Carrier-Frequency Division Multiplexing Access)方式の無線通信システムである。
上述の実施の形態1では、WCDMA方式の無線通信システムでの送信電力制御について説明したが、OFDMA方式やSC−FDMA方式の無線通信システムにおいても同様の考え方で送信電力制御を行うことができる。Reuse=1以上を考えるときには、少しでも他の基地局装置や、他のセクタへの干渉を低減するために精度の良い送信電力制御が必要になるため、実施の形態1と同様の送信電力制御を行うことが有効である。特に、上り方向においては、移動機間の周波数オフセットが存在するために完全に複数の移動機からの信号を直交関係にすることはできず、上り同期の確立ができていない移動機からの急激な送信電力の増加は、同時に多数の移動機が存在する場合には、干渉量も急減に増加し、十分な同期がとれないことがある。以下に本実施の形態2に係る無線通信システムについて詳細に説明する。
図13に示されるように、本実施の形態2に係る無線通信システムは、基地局装置51と、移動機71と、基地局上位装置81とを備えている。基地局上位装置81は、基地局装置51と有線通信を行い、主として基地局装置81を制御する。基地局装置51は複数の移動機71と無線通信を行うことが可能である。図13では、当該複数の移動機71のうちの一つを示している。
図14,15は基地局装置51及び移動機71の構成をそれぞれ示すブロック図である。図14に示されるように、基地局装置1は、I/F部52により基地局上位装置81と接続されている。基地局上位装置81からのデジタル信号はI/F部52で受信されて無線フレーム処理部53に入力される。無線フレーム処理部53は、基地局上位装置81からの信号に基づいて、通信対象の移動機21に対するデジタル形式の送信信号を生成し、当該送信信号に対してCRC符号化、誤り訂正符号化、無線フレームへのマッピング等を実施して、当該送信信号を送信電力制御部54に出力する。無線フレーム処理部53で生成される送信信号には、後述する移動機メッセージ生成部62から出力される、移動機71での送信電力制御に関するメッセージ(以後、「送信電力制御メッセージ」と呼ぶ)が含められる。
送信電力制御部54は、入力された送信信号に対して所定の送信電力制御を行い、送受信部55に出力する。送受信部55は、入力された送信信号をアナログ形式に変換する。そして、送受信部55は、アナログ形式の送信信号に対して変調処理を行い、その後、当該送信信号を送信周波数まで周波数変換して電力増幅し、アンテナ56を通じて複数の移動機71に出力する。
アンテナ56で受信された信号は、送受信部55で所定の低い周波数まで周波数変換されて、その後復調処理されてデジタル形式の信号に変換され、無線デフレーム処理部57に入力される。無線デフレーム処理部57は、入力された受信信号中の無線フレームから必要な信号を抜き取り、当該信号に対して誤り訂正復号化及びCRC復号化等を実施して、I/F部52あるいは後述の制御部58に出力する。I/F部52は入力された信号を基地局上位装置81へ出力する。
基地局装置51にはさらに制御部58が設けられている。制御部58は、接続移動機モニタ部59と、同期管理部61と、移動機メッセージ生成部62とを備えている。接続移動機モニタ部59は、基地局装置51と接続される移動機71に関する情報を取得する。同期管理部61は、送受信部55での復調処理結果から既知のデータ系列の品質測定を行い、その品質測定結果から、基地局装置51と移動機71との間の同期状態を把握する。同期管理部61では、RSSI測定、SINR測定、BLER測定及びBER測定などが行われる。移動機メッセージ生成部62は、移動機71での送信電力制御で使用される送信電力制御メッセージを生成して無線フレーム処理部53に出力する。
移動機71では、アンテナ76で受信された信号は、送受信部72において、所定の低い周波数まで周波数変換されて、その後復調処理されてディジタル形式に変化され、無線デフレーム処理部73に入力される。無線デフレーム処理部73は、入力された受信信号中の無線フレームから必要な信号を抜き取り、当該信号に対して誤り訂正復号化及びCRC復号化等を実施して、アプリケーション部74あるいは後述のメッセージ解析部77に出力する。アプリケーション部74は、入力された受信信号に基づいて所定の処理を実行する。例えば、図示しない表示部への画像表示を行ったり、図示しないスピーカから音声を出力する。
一方で、アプリケーション部74で生成された送信信号は、無線フレーム処理部75に入力される。無線フレーム処理部75は、入力された送信信号に対して、CRC符号化、誤り訂正符号化、無線フレームへのマッピング等を実施して、当該送信信号を送信電力制御部78に出力する。送信電力制御部78は、入力された送信信号に対して送信電力制御を行い、当該送信信号を送受信部72に出力する。送受信部72は、入力された送信信号をアナログ形式に変換して、当該アナログ形式の送信信号に対して変調処理を行い、その後、当該送信信号を送信周波数まで周波数変換して電力増幅し、アンテナ76を通じて基地局装置1に出力する。
移動機71にはメッセージ解析部77がさらに設けられている。メッセージ解析部77は、無線デフレーム処理部73を通じて入力される、基地局装置51からの送信電力制御メッセージを解析し、送信電力制御部78への制御情報を生成して出力する。送信電力制御部78は、メッセージ解析部77からの制御情報に基づいて、入力された送信信号に対して送信電力制御を行う。
次に、本実施の形態2に係る無線通信システムでの送信電力制御方法について詳細に説明する。
(第1の送信電力制御方法)
第1の送信電力制御方法では、基地局装置1と同期が取れていない移動機71の数に応じて、移動機71での基地局装置51に対する送信電力の増加率を変化させることにより、移動機71での基地局装置51への送信電力が急激に大きくなることを抑制し、これによって良好な通信品質の維持を確保する。以下に詳細に説明する。
接続移動機モニタ部59は、I/F部52を通じて基地局上位装置81から通知される通信チャネル設定情報に基づいて、単位時間ΔT2の間に同一セクタ内で新たに接続対象となった移動機71の総数(以後、「単位時間あたりの接続移動機数N11」と呼ぶ)を取得し、その数を移動機メッセージ生成部62に出力する。単位時間ΔT2は、基地局装置51が接続対象の移動機71に対して通信チャネルを設定してから、基地局装置51側で当該移動機71との上り方向の同期が取るまでに通常必要な時間に設定される。したがって、単位時間あたりの接続移動機数N11は、基地局装置51において上り方向の同期が取れていない移動機71の数であると言える。
移動機メッセージ生成部62は、ある単位時間ΔT2での単位時間あたりの接続移動機数N11が、所定のしきい値Nth11よりも大きい場合には、その単位時間あたりの接続移動機数N11を示すメッセージを送信電力制御メッセージとして生成し、無線フレーム処理部53に出力する。その後、当該送信電力制御メッセージは、アンテナ56から、接続対象の移動機71のそれぞれに入力される。なお、送信電力制御メッセージの送信は単位時間ΔT2ごとに行われる。
移動機71のメッセージ解析部77は、無線デフレーム処理部73を通じて入力された、基地局装置51からの送信電力制御メッセージを受け取ると、当該送信電力制御メッセージを解析して、それに含まれている単位時間あたりの接続移動機数N11を取得する。そして、メッセージ解析部77は、自身が属する移動機71での基地局装置51に対する送信電力の増加率を、後述する基準増加率に対して(1/N11)倍することを通知する制御情報を生成して送信電力制御部78に出力する。
移動機71側で基地局装置51との上り方向の同期が取れていない状態において、送信電力制御部78は、メッセージ解析部77から制御情報が通知される前は、基地局装置51に対する送信電力が所定の増加率で増加するように、入力された送信信号に対して送信電力制御を行っている。この所定の増加率が基準増加率である。送信電力制御部78は、メッセージ解析部77から制御情報を受け取ると、基地局装置51に対する送信電力の増加率が基準増加率に対して(1/N11)倍となるように、入力された送信信号に対して送信電力制御を行う。
その後、送信電力制御部78は、自身が属する移動機21と基地局装置51との間で上り方向の同期が確立すると、後述する送信電力制御メッセージに含まれる送信電力制御コマンドに基づいて送信電力制御を行う。
基地局装置51の移動機メッセージ生成部62は、同期管理部61が出力する情報からある移動機71との上り方向の同期を確認すると、同期管理部61での既知のデータ系列の品質測定結果に基づいて当該移動機71に関する送信電力制御コマンドを生成する。例えば、移動機メッセージ生成部62は、既知のデータ系列の品質が所定の基準を満足しない場合には、基地局装置51に対する送信電力の増加を通知する送信電力制御コマンドを生成し、当該基準を満足する場合には、基地局装置51に対する送信電力の減少を通知する送信電力制御コマンドを生成する。そして、移動機メッセージ生成部62は、当該移動機71に関する送信電力制御メッセージには、単位時間あたりの接続移動機数N11の情報を含めずに送信電力コマンドを含める。よって、基地局装置51側である移動機21との上り方向の同期が取れた場合には、送信電力制御コマンドを含む送信電力制御メッセージが基地局装置51から当該移動機71に出力される。移動機71のメッセージ解析部77は、送信電力制御コマンドを含む送信電力制御メッセージを受け取ると、制御情報として当該送信電力制御コマンドを送信電力制御部78に出力する。送信電力制御部78は、入力された送信電力制御コマンドに基づいて送信電力制御を行う。
以上のように、本実施の形態2に係る第1の送信電力制御方法では、基地局装置1側で同期が取れていない移動機71の数に応じて、移動機71での基地局装置51に対する送信電力の増幅率が変化するため、移動機71での基地局装置51への送信電力が急激に大きくなることを抑制することができる。よって良好な通信品質の維持を確保することができる。
(第2の送信電力制御方法)
第2の送信電力制御方法では、基地局装置51側で同期が取れていない移動機71として、基地局装置51との同期はずれを生じた移動機71も考慮して、移動機71での基地局装置51に対する送信電力を変化させる。以下に第1の送信電力制御方法との相違点を中心に説明する。
接続移動機モニタ部59は、上述の第1の送信電力制御方法と同様にして、単位時間あたりの接続移動機数N11を取得し、その数を、単位時間ΔT2の間で新たに接続対象となった移動機71を識別する情報とともに移動機メッセージ生成部62に出力する。
同期管理部61は、送受信部55での復調処理結果から既知のデータ系列の品質測定を行い、その品質測定結果から、単位時間ΔT2の間に基地局装置51側で上り方向の同期がはずれた移動機71の総数(以後、単位時間あたりの上り同期はずれ移動機数M11」と呼ぶ)を取得して、その数を、当該移動機21を識別する情報とともに移動機メッセージ生成部62に出力する。
移動機メッセージ生成部62は、接続移動機モニタ部59から通知される単位時間あたりの接続移動機数N11と、同期管理部61から通知される単位時間あたりの上り同期はずれ移動機数M11とを足し合わせて、それを単位時間あたりの未同期移動機数L11とする。このとき、通信チャネル設定から単位時間ΔT2が経過していない場合であっても、通信チャネルが設定されてから短時間で上り方向の同期が取れ、その後短時間で上り方向の同期がはずれる移動機71も存在することから、同期管理部61で検出された、上り方向の同期はずれが生じた移動機21と、接続移動機モニタ部59で検出された、新たに接続対象となった移動機21とが重複する場合には、その重複する数は単位時間あたりの未同期移動機数L11から差し引く。その後、移動機メッセージ生成部62は、単位時間あたりの未同期移動機数L11を示すメッセージを送信電力制御メッセージとして生成し、無線フレーム処理部53に出力する。これにより、送信電力制御メッセージは、通信対象の移動機71のそれぞれに入力される。なお、送信電力制御メッセージの移動機71への送信は単位時間ΔT2ごとに行われる。
移動機71のメッセージ解析部77は、無線デフレーム処理部73を通じて入力された、基地局装置51からの送信電力制御メッセージを受け取ると、当該送信電力制御メッセージを解析して、それに含まれている単位時間あたりの未同期移動機数L11を取得する。そして、メッセージ解析部77は、移動機71での基地局装置51に対する送信電力の増加率を、基準増加率に対して(1/L11)倍することを通知する制御情報を生成して送信電力制御部78に出力する。
送信電力制御部78は、メッセージ解析部77から制御情報を受け取ると、それまでは送信電力の増幅率が基準増幅率となるように制御していたのを、基地局装置51に対する送信電力の増加率が基準増加率に対して(1/L11)倍となるように送信電力制御を行う。
その後、送信電力制御部78は、第1の送信電力制御方法と同様に、自身が属する移動機21と基地局装置51との間で上り方向の同期が確立すると、送信電力制御メッセージに含まれる送信電力制御コマンドに基づいて送信電力制御を行う。
以上のように、本実施の形態2に係る第2の送信電力制御方法では、基地局装置1側で同期が取れていない移動機71の数に応じて、移動機71での基地局装置51に対する送信電力の増加を変化させているため、移動機71での基地局装置51への送信電力が急激に大きくなることを抑制することができる。よって良好な通信品質の維持を確保することができる。
なお、上述の第1及び第2の送信電力制御方法において、送信電力制御メッセージについては、各移動機71に対して、報知チャネル等の各移動機71に共通の共通チャネルで通知しても良いし、各移動機71に個別に用意される個別チャネルで通知しても良い。
また、上述の第1及び第2の送信電力制御方法では、基地局装置51から単位時間あたりの接続移動機数N11あるいは単位時間あたりの未同期移動機数L11を移動機71に出力し、移動機71が最終的な送信電力の増幅率を決定していたが、個別チャネルで送信電力制御メッセージを通知する場合には、基地局装置51側で、移動機71における送信電力の最終的な増幅率を決定し、送信電力の増加量あるいは減少量を通知する情報のみを送信電力制御メッセージとして移動機71に出力するのが有効である。この場合には、メッセージ解析部77は、送信電力の増加量あるいは減少量を通知する情報を送信電力制御メッセージから抽出して、送信電力制御部78に出力することになる。
また、上述の第1の送信電力制御方法では、基地局装置1側で単位時間あたりの接続移動機数N11と所定のしいき値Nth11とを比較していたが、単位時間あたりの接続移動機数N11を取得するたびにそれを示す送信出力制御メッセージを移動機71に出力し、移動機71側で単位時間あたりの接続移動機数N11としいき値Nth11との比較を行っても良い。
また、上述の実施の形態1に係る第4の送信電力制御方法のように、実施の形態2に係る第1及び第2の送信電力制御方法において、制御対象の移動機21を複数のグループに分類し、当該グループ間で送信電力制御コマンドに基づく送信電力制御を行う時間帯を相違させることによって移動機21の送信電力が急激に大きくなることを抑制しても良い。例えば、実施の形態2に係る第1の送信電力制御方法において、ある単位時間ΔT2の間で接続対象となった移動機21を複数のグループA〜Cに分類し、まずグループAの移動機21について基地局装置1からの送信電力制御コマンドに基づいて送信電力制御を行い、その他のグループB,Cの移動機21については基地局装置51に対する送信電力の増加率が基準増加率に対して(1/N11)倍となるように送信電力制御する。次に、グループBの移動機21について基地局装置1からの送信電力制御コマンドに基づいて送信電力制御を行い、その他のグループA,Cの移動機21については基地局装置51に対する送信電力の増加率が基準増加率に対して(1/N11)倍となるように送信電力制御し、最後に、グループCの移動機21について基地局装置1からの送信電力制御コマンドに基づいて送信電力制御を行い、その他のグループA,Bの移動機21については基地局装置51に対する送信電力の増加率が基準増加率に対して(1/N11)倍となるように送信電力制御する。
また、上述の実施の形態1に係る第6の送信電力制御方法のように、実施の形態2に係る第1及び第2の送信電力制御方法において、移動機21のクラス分けに応じて同期確立の優先順位を設けて、当該優先順位を考慮して送信電力制御を行っても良い。例えば、優先順位の最も低いクラスの移動機71だけについて送信電力の増加率を基準増加率よりも小さくしても良い。また、優先順位の高いクラスの移動機71ほど送信電力の増加率の基準増加率からの低減量を小さくしても良い。例えば、実施の形態2に係る第1の送信電力制御方法において、移動機71がクラスA2〜C2までに分類されており、クラスA2〜C2の順で同期確立の優先順位が高いとすると、クラスA2の移動機71については送信電力の増加率が基準増加率の(1/N11)倍となるように送信電力制御を行い、クラスB2の移動機71については送信電力の増加率が基準増加率の(1/(N11+1))倍となるように送信電力制御を行い、クラスC2の移動機71については送信電力の増加率が基準増加率の(1/(N11+2))倍となるように送信電力制御を行う。また、優先順位の最も低いクラスの移動機21については、送信電力を零に設定しても良い。
なお、クラス分けに応じて設けられた同期確立の優先順位に基づいて送信電力制御を行う際には、基地局装置51側が制御対象の移動機71に割り当てられたクラスと、当該クラスの優先順位を考慮して、当該移動機71に対する送信電力制御メッセージを生成しても良いし、移動機71側で自身のクラスを判断して、当該クラスに割り当てられた優先順位を考慮して自立的に送信電力制御を行っても良い。
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。