JP4717777B2 - 気液接触用充填要素、気液接触用充填材および気液接触用充填要素の製造方法 - Google Patents

気液接触用充填要素、気液接触用充填材および気液接触用充填要素の製造方法 Download PDF

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本発明は、水溶性のガス吸収、水の冷却や熱交換、蒸留などのガスと水の接触装置内において用いられる気液接触用充填要素、気液接触用充填材および気液接触用充填要素の製造方法に関する。
従来、水溶性のガス吸収、水の冷却や熱交換、蒸留などのガスと水の接触装置内において用いられる気液接触用充填要素、気液接触用充填材としては、複雑な形状で樹脂製や金属製の均一な個片が用いられている(例えば、特許文献1〜5参照)。
その製法としては、金型による樹脂の射出成型による製造、金属片の折り曲げまたは切断、金属片のしわよせなどがある。
特表平6−503755号公報 特開2003−170041号公報 特開平11−90218号公報 特開平6−71166号公報 特開2006−15251号公報
しかし、従来の気液接触用充填要素、気液接触用充填材では、複雑な形状と空隙により充填材の詰め具合により偏った水の通り道(みずみち)が発生し、気液接触効率が低下する。
また、効率アップのために充填材の表面積を上げたことにより、下記のような不具合があった。
(1)複雑な形状となり、樹脂の場合、高価な金型が必要となる。
(2)複雑な形状となり、金属の場合、切断・折り曲げなどにより加工費が増大する。
(3)輸送時に空隙が多くなり体積が増大する(輸送費増)。
本発明は、斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、気液接触効率を向上させ、水溶性ガスの水への吸着率や水−空気などの熱交換率の高い安価な気液接触用充填要素、気液接触用充填材および気液接触用充填要素の製造方法を提供することにある。
請求項1に係る発明は、水と気体との接触装置内に用いられ、水の熱を効率よく気体に伝達する気液接触用充填要素であって、アルミニウム合金である金属材料を切削加工して作製された、内部空隙を形成するらせん状や円筒形を形成しない形状不均一な流れ形切りくず形状を為し、表面に微細な亀裂を有することを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の気液接触用充填要素において、前記気液接触用充填要素は、厚さ0.1mm〜0.3mm、長さ10mm〜100mm、および幅1mm〜2mmであることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の気液接触用充填要素の集合物であることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3の何れか1項記載の気液接触用充填要素の製造方法において、切込み(削り厚さ)0.3mm以下、送り(刃の移動速度)2.0mm/rev.でアルミニウム合金である金属材料を切削刃で切削することを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項記載の気液接触用充填要素の製造方法において、円筒状の地金を円盤ノコで切削することを特徴とする。
本発明に係る気液接触用充填要素およびその製造方法は、例えば、円筒状の地金を円盤ノコで切削することによって容易に大量に生産することができる。
本発明に係る気液接触用充填要素は、切削加工時に微細な亀裂が端部に入るので、これにより表面積が増大し、気液接触効率を向上させることができる。
本発明に係る気液接触用充填材は、内部空隙を形成するらせん状や円筒形を形成しない形状が不均一なため水の通り道(みずみち)が不規則に発生し、気液の接触機会も増大し、気液接触効率を向上させることができる。
本発明に係る気液接触用充填材は、大きな個片と小さな個片とが混ざり合っているので、集約すると隙間に小さな個片が入り込み、コンパクトにまとまることができる。
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る気液接触用充填要素10を示す。
本実施形態に係る気液接触用充填要素10は、金属材料を切削加工して作製された流れ形切りくず形状を為している。本発明において、流れ形切りくずとは、例えば、「機械工学便覧」(発行所 社団法人日本機械学会、1991年9月30日発行)の「第5章切削加工 5・切削加工の基礎」(B2−119)で記載されている「なめらかで一様な断面を持つ流れ形(flow type)」および「図285 切りくず形態の大別」(B2−119)で示されている「(a)流れ形」をいう。本実施形態に係る気液接触用充填材は、本実施形態に係る気液接触用充填要素10の集合物である。
本実施形態に係る気液接触用充填要素10は、金属材料を切削加工して作製された流れ形切りくず形状を為し、厚さH=0.1mm〜0.3mm、長さL=10mm〜100mmおよび幅W=1mm〜2mmで表面に微細な亀裂11を有する。微細な亀裂11は、切削加工による応力で端部に生じる。
本実施形態に係る気液接触用充填要素10は、例えば、次のようにして作製される。
例えば、「機械加工現場診断シリーズ1 旋削加工」(西 嶢祐著、日刊工業新聞社発行)の「図5・2 チップで鋼を切削するときの切りくずの変形状況、切りくずの厚さは送り(mm/rev)の3倍」で示されるように、金属材料片をチップ(切削刃)または円盤ノコにて切削する。
ここで、切削条件は、例えば、クロムモリブデン鋼SCM435の場合、切込み(削り厚さ)0.3mm以下、送り(刃の移動速度)2.0mm/rev.、切削速度150m/min、チップTNMG160408とした。この条件は、「機械加工現場診断シリーズ1 旋削加工」(西 嶢祐著、日刊工業新聞社発行)の「図5・8 各条件での切りくずの状態」に準拠して決めた。
また、金属材料としては、アルミニウム、鉄、銅などがある。軽量で切削が容易な材料として、アルミニウム合金(JIS6063)、クロムモリブデン鋼(SCM435)がある。これらの材料組成(最大保有成分%)を表1に示す。
Figure 0004717777
また、本実施形態に係る気液接触用充填要素10を作製する金属材料として、アルミニウム合金(JIS6063)、クロムモリブデン鋼(SCM435)は、下記の理由から望ましい。
気体と液体を接触させ、温度を回収する湿式熱交換の場合、気体、液体の温度移動をスムーズにまた、空気中の水溶性ガスを水に吸着させるための装置における充填材においても、気体の水への溶け込みやすさは一般に温度が低いほど大きくなるので、噴霧した水を低温に冷却して噴霧する場合、この熱を効率よく気体に伝達できる高熱伝導率の充填材は有用である。材料別熱伝導率を表2に示す。
Figure 0004717777
図2は、本実施形態に係る気液接触用充填要素10の作製工程を示す。
この作製工程では、金属材料を切削加工する際に、切りくずの形態としては、なめらかで一様な断面を持つ流れ形である。
そして、切りくずの長さL=10mm〜100mm、厚さH=0.1mm〜0.3mmおよび幅W=1mm〜2mmとする理由は、下記の通りである。
(1)気液接触用充填要素10にプレスをかけて圧縮し、シート状のコンパクトな形にして輸送し、気液接触用充填材として使用する際にほぐして使えば輸送費を低減できる。あまり厚すぎると圧縮してもコンパクトにならず、薄いとほぐす際、切れてしまう。
(2)切削加工の条件(切込み、送り)からあまり長いものはできない(100mm程度がMAX)。
(3)幅W=1mm〜2mm、厚さH=0.1mm〜0.3mmにすると、ほぐす際、しわができ、絡まりあい、複雑な水の通り道(みずみち)を誘発できる。空隙のあるらせん状や円筒形などは好ましくない。このような金属材料から作られた気液接触用充填要素がらせんや円筒形状をしていると、その内部空隙には外から他の気液接触用充填要素が入り込むことが困難であり、その結果、水の通り道(みずみち)の途中に大きな空間が存在することとなり、その空間により水の流下を単調な下向きな流れにしか形作れず、水を気液接触用充填要素に絡めて保持しづらいこととなるからである。
(4)幅W=1mm〜2mm、厚さH=0.1mm〜0.3mmにすると、端部の応力による亀裂11が発生しやすく、材料体積による表面積の割合が大きくなる。
(5)気液接触装置に設置する際、ほぐした状態で、上から降り積もらせる要領で、敷かれた網の上に乗せる(500mm×500mm×500mmで、6kg、48kg/m3の密度が好ましい)。装填は自在で、その作業性から1片は薄く、短尺のものが良い。
次に、本実施形態に係る気液接触用充填要素10で構成した気液接触用充填材を用いた水噴霧除去装置実験機を説明する。
図3、図4は、水噴霧除去装置実験機20を示す。
表3に水噴霧除去装置実験機の仕様を示す。
Figure 0004717777
水噴霧除去装置実験機20は、500mm×500mm×1500mmの4つの槽21,22,23,24を仕切板25,26,27を介して連結し、各槽21,22,23,24には、上部に噴霧角度110°に設定されたノズル28,29,30,31を配置し、その下部に充填槽32,33,34,35を配置し、その下部に水槽36を配置している。
槽21は、ホルムアルデヒドを含んだ空気を取り込む取込口37が配置され、そこに濃度測定点1が設定される。
槽24は、処理後の空気を排気する排気口38が配置され、ミストエリミネータ39、加熱コイル40が配置され、加熱コイル40の上方にはケミカルフィルタ41、排気ファン42を備えた排気装置43が配置される。加熱コイル40の下流側では、空気に顕熱のみ与えられ、湿潤ではない所定の温度の空気になるように制御される。加熱コイル40の上方に濃度測定点2が設定される。
充填槽32,33,34,35には、それぞれ500mm×500mm×500mmの充填槽21に下部に網が敷いてある上に降り積もらせるように6kgの気液接触用充填要素10を密度48kg/m3で充填することによって構成された、#1〜#4の気液接触用充填材が配置されている。そして、通水テストを行い、複雑な水の通り道(みずみち)を確認した。
水槽36に落下した水は、循環ポンプ45,46,47でノズル28,29,30に供給されている。#4の槽のノズル31だけは、補給水が供給される。
仕切板25は、槽21の上部から充填槽32を通して水槽36との間に隙間ができるように配置され、仕切板26は、槽22の上部との間に隙間ができるように配置され、仕切板27は、槽24の上部から充填槽35を通して水槽36との間に隙間ができるように配置されている。これによって、槽21から導入された空気は、仕切板25,26,27によって蛇行する。
次に、水噴霧除去装置実験機20の動作を説明する。
ノズル28,29,30,31を駆動して、水を噴霧し、#1〜#4の気液接触用充填材内に滴下し、流下してきた水を水槽36内に溜める。水槽36にはドレンパイプ48が設けられており、一定の水位が確保されている。水槽36の水を循環ポンプ45,46,47にて再度ノズル28,29,30へ水を圧送する。空気へ溶け込んだ分(加湿分)と水滴として風に乗っていた分を#4の気液接触用充填材内にノズル31から補給水として導入する。
次に、実験方法について説明する。
図4に示すように、定量ポンプ49を用いて一定速度でホルマリン溶液(35%水溶液)をホットプレート50上に滴下し、その空気をフード51、ダクト52を介して取込口37から吸引し装置へ導入する。この速度を変えることによりホルマリンガスの濃度を制御する。
装置には4槽それぞれに20L/minの水をノズル28,29,30,31にて噴射する。
濃度測定点1を10分おきに計測し、濃度が安定していることを確認する。ここで、定量ポンプ49の滴下速度で濃度測定点1の濃度を定める。
同時に濃度測定点1および2にて濃度を測定する。
(測定点1濃度−測定点2濃度)÷測定点1濃度にて除去率を求める。
10分おきに4回測定しその平均値を除去率とした。
なお、濃度測定点1,2は、静圧(圧損)、風量、温度、湿度を測定する。
また、濃度測定点2では、湿度90%以上では濃度を測定できないため、加熱コイル40で加熱する(Δt=2℃)。
さらに、ケミカルフィルタ41では、排気からのホルマリンを除去する。
なお、本実施形態に係る気液接触用充填要素10で構成した気液接触用充填材の代わりに月島環境エンジニアリング株式会社の樹脂成型(テラレットS−O)を用い、充填材の評価を行った
結果を表4に示す。
本実施形態に係る気液接触用充填要素10で構成した気液接触用充填材を用いた場合のホルムアルデヒド除去率は94%であった。これに対し、月島環境エンジニアリング株式会社の樹脂成型(テラレットS−O)を用いた場合のホルムアルデヒド除去率は70%であった。
これは、本実施形態に係る気液接触用充填要素10の形状が不均一なため、水の通り道(みずみち)が不規則に発生し、気液の接触機会が増大し、気液接触効率が向上したことによるものと思われる。これに対し、月島環境エンジニアリング株式会社の樹脂成型(テラレットS−O)では、複雑な形状と空隙により充填材の詰め具合により偏った水の通り道(みずみち)が発生し、気液の接触機会が低下し、気液接触効率が低下したことによるものと思われる。
Figure 0004717777
本実施形態に係る気液接触用充填要素10を用いた気液接触用充填材では、下記の利点が得られた。
A.形状不均一の効果
(1)形状が不均一なため水の通り道(みずみち)が不規則に発生し、気液の接触機会も増大し、気液接触効率を向上させることができる。
(2)大きな個片と小さな個片とが混ざり合っているので、集約すると隙間に小さな個片が入り込み、コンパクトにまとまることができる。
B.表面亀裂の効果
切削加工時に微細な亀裂が端部に入るので、これにより表面積が増大し、気液接触効率を向上させることができる。
C.製造方法の簡略化
円筒状の金属材料を円盤ノコで切断するだけで製造可能であるため、製造費が安価である。
これに対し、月島環境エンジニアリング株式会社の樹脂成型(テラレットS−O)を用いた気液接触用充填材では、下記の不具合があった。
A.均一形の個片集合による不具合
(1)複雑な形状と空隙により充填材の詰め具合により偏った水の通り道(みずみち)が発生し、気液接触効率が低下した。
B.効率アップのために充填材の表面積を上げたことによる不具合
(1)複雑な形状となり、樹脂の場合、高価な金型が必要となる。
(2)複雑な形状となり、金属の場合、切断・折り曲げなどにより加工費が増大する。
(3)輸送時に空隙が多くなり体積が増大する(輸送費増)。
なお、本実施形態では、水溶性ガスとしてホルムアルデヒドについて説明したが、アンモニア、亜硫酸ガスなどでも同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態では、水噴霧除去装置の充填材について説明したが、水と空気の接触による熱交換器(湿式熱交換器)の充填材としても適用することができる。
また、本実施形態では、本発明に係る気液接触用充填要素およびその製法として、円筒状の地金を円板ノコで切削する場合について説明したが、これに限らず、円筒状の地金を回転してバイト状の刃で切削しても、平面上の地金をその平面に平行して移動して刃で切削しても良く、その材料の回転(平行移動)速度によっては、表面に微細な亀裂を有しながら、本実施形態で作製された厚さ0.1mm〜0.3mmおよび幅1mm〜2mmの気液接触用充填要素10とは異なる気液接触用充填要素を得ることが可能である。その場合は、水の通り道(みずみち)の途中に大きな空間が存在しないものであれば、本発明に係る気液接触用充填要素として採用可能である。また、本発明に係る気液接触用充填要素およびその製法として、長さに関しては、切りくず形状の気液接触用充填要素を経済的に作製するため、その切削用の刃をたたいてピッチングなどを発生させないように、刃近傍に曲面を設けて所定の長さに気液接触用充填要素を折ることもあるが、その刃近傍に設ける曲面の曲率によって異なる長さに調整も可能である。その場合も、水の通り道(みずみち)の途中に大きな空間が存在しないものであれば、本発明に係る気液接触用充填要素として採用可能である。
本実施形態に係る気液接触用充填要素を示す斜視図である。 本実施形態に係る気液接触用充填要素を製作工程を示す説明図である。 本実施形態に係る気液接触用充填要素を用いた水噴霧除去装置実験機を示す説明図である。 図3の側面図である。
符号の説明
10 気液接触用充填要素
11 亀裂

Claims (5)

  1. 水と気体との接触装置内に用いられ、水の熱を効率よく気体に伝達する気液接触用充填要素であって、
    アルミニウム合金である金属材料を切削加工して作製された、内部空隙を形成するらせん状や円筒形を形成しない形状不均一な流れ形切りくず形状を為し、表面に微細な亀裂を有する
    ことを特徴とする気液接触用充填要素。
  2. 請求項1記載の気液接触用充填要素において、前記気液接触用充填要素は、厚さ0.1mm〜0.3mm、長さ10mm〜100mm、および幅1mm〜2mmであることを特徴とする気液接触用充填要素。
  3. 請求項1または請求項2に記載の気液接触用充填要素の集合物であることを特徴とする気液接触用充填材。
  4. 請求項1ないし請求項3の何れか1項記載の気液接触用充填要素の製造方法において、切込み(削り厚さ)0.3mm以下、送り(刃の移動速度)2.0mm/rev.でアルミニウム合金である金属材料を切削刃で切削することを特徴とする気液接触用充填要素の製造方法
  5. 請求項記載の気液接触用充填要素の製造方法において、円筒状の地金を円盤ノコで切削することを特徴とする気液接触用充填要素の製造方法
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