JP4665743B2 - 湿潤路面上のゴム材料の摩擦特性評価方法 - Google Patents
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また、下記非特許文献2では、ウェット摩擦係数を、凝着摩擦係数から弾性流体潤滑の寄与分を減算して算出している。
しかし、これらの文献の方法で求められるゴム材料のウェット摩擦係数の評価は、実際の結果を十分に説明できるものではなかった。
ゴム材料の湿潤摩擦力をFとするとき、湿潤摩擦力Fは、第1の摩擦力Fh、第2の摩擦力Fa及び係数Ehlを用いて下記式(1)で表され、ゴム材料が路面に対して滑るときに発生する第1の摩擦力Fhを、湿潤路面のプロファイルから求めるステップと、ゴム材料が路面と粘着するときに発生する第2の摩擦力Faを、湿潤路面のプロファイルから求めるステップと、湿潤摩擦力Fの計測結果から前記第1の摩擦力Fhを減算することにより下記式(1)中の(1−Ehl )・Fa を求め、この値と求めた前記第2の摩擦力Faとを用いて、ゴム材料と路面との間に水膜が介在することにより、湿潤摩擦力における前記第2の摩擦力の寄与を低下させる係数Ehlを求めるステップと、を有し、前記第1の摩擦力Fa、前記第2の摩擦力Fh及び前記係数Ehlを用いて、湿潤摩擦力を評価する湿潤路面上のゴム材料の摩擦特性評価方法を提供する。
F = (1− Ehl )・Fa + Fh (1)
さらに、前記第2の摩擦力Faは、湿潤路面のプロファイル形状における突起の平均直径をDとし、ゴム材料の弾性係数をEとしたとき、下記式(2)で算出されることが好ましい。
Fa = k・(D/E)(2/3) (2)
但し、kは定数である。
Fh = f(tanδ)・(W/E)(1/4)・r−3/4 (3)
但し、f(tanδ)は、tanδの高次の多項式である。
図1は、湿潤路面上のゴム材料の摩擦特性評価方法を実施するシステムの例を示す図である。図1に示すシステム10は、主にコンピュータ12、サンプル粘弾性測定試験機14及びサンプル摩擦試験機16を有して構成される。コンピュータ12は、ディスプレイ18、マウス・キーボード20及びプリンタ22が接続されている。
所定の速度で回転するアルミ製回転ドラム40と、ゴムサンプルXを周状に巻きつけて配した回転可能な保持具42と、水供給管44と、水深調整皿46とを有して構成される。
回転ドラム40には、レプリカ路面が複数レーン設けられている。例えば、エメリーペーパ等の#240の研磨紙及びこの研磨紙を研削したものが用いられる。
水供給管44から供給される水は、水深調整皿46に溜まり、水深調整皿46の皿底に設けられた開口部を介してゴムサンプルXが回転ドラム40の表面に当接するように構成される。これらの装置は、断熱壁で囲まれて恒温槽内に設けられるように構成されている。保持具42の図示されない回転シャフトにはトルクメータ48が設けられ、ゴムサンプルXに作用する摩擦力を計測するようになっている。トルクメータ48から出力される計測結果は、アンプ50により増幅されてコンピュータ12に供給される。
サンプル摩擦試験機16の例として、本願出願人により出願され公開された特開2000−329687の摩擦試験機が例示される。
具体的には、サンプル粘弾性測定試験機14から供給された物性値E’,E’’,tanδからゴム材料が路面に対して滑るときに発生する第1の摩擦力Fhを求める。この第1の摩擦力Fhは、路面の凹凸の表面形状に従ってゴム材料が変形することによって生じるヒステリシス損失に基づく摩擦力である。
この第1の摩擦力Fhは、下記式(3)に従って算出される。
Fh = f(tanδ)・(W/E)(1/4)・r−3/4 (3)
一方、f(tanδ)は、tanδの高次多項式であり、例えば、f(tanδ)=0.248・tanδ−0.092・(tanδ)2+0.005・(tanδ)4の式が用いられ、コンピュータ10に記憶される。
なお、上記式(3)による第1の摩擦力Fhの算出方法は、上述の非特許文献1に開示されている。
なお、ゴム材料が湿潤路面上を転動するとき、乾燥路面を転動するときゴム材料が路面と粘着する粘着領域には、水膜が進入して部分的に摩擦力の発生しない潤滑領域が生成する。この潤滑領域の、粘着領域に対する比率が、下記式(1)中の係数Ehlに対応する。
F = (1− Ehl )・Fa + Fh (1)
ここで、Dは湿潤路面のプロファイル形状における突起の平均直径である。ゴム材料の弾性係数Eとしてゴム材料の物性値E’(20Hz,0℃)を用いる。また、kは定数である。
Fa = k・(D/E)(2/3) (2)
平均直径Dは、上述した突起の平均先端半径rの2倍の値が用いられる。また、定数kは、以下のように求められる。
なお、定数kは、#240の研磨紙に基づいて算出されるが、サンプル摩擦試験機16にて所定の路面におけるゴム材料の湿潤摩擦力を計測する度に、#240の研磨紙のプロファイル形状を基準凹凸路面としたときのゴム材料の湿潤摩擦力を計測して、定数kを算出してもよい。
所定の路面におけるゴム材料において、式(1)中の(1− Ehl )・Faと、定数kを用いて求められた第2の摩擦力Faとから、1− Ehlを求め、これより、係数Ehlを算出する。具体例は後述する。
例えば、評価しようとするゴム材料の第1の摩擦力Fhは、比較対象のゴム材料の第1の摩擦力と同等であるが、第2の摩擦力Faは、比較対象のゴム材料の第2の摩擦力に比べて大きく、さらに係数Ehlは比較対象のゴム材料の係数Ehlに比べて小さく、水膜が突起に進入しにくいゴム材料である旨の評価が、コンピュータ10にて行われる。さらには、上述した#240の研磨紙の表面を路面としたときのゴム材料の第1の摩擦力Fh、第2の摩擦力Fa及び係数Ehlと、#240の研磨紙を研削した後の表面を路面としたときのゴム材料の第1の摩擦力Fh、第2の摩擦力Fa及び係数Ehlと、を用いて、評価しようとするゴム材料においてどの摩擦力又は係数に大きな差異があるかを判別することができ、ゴム材料の路面依存性についても評価することができる。
このとき、基準凹凸路面として#240の研磨紙の未研削状態(新品時)のプロファイル形状を有する路面を用いて実測される結果から定数kは算出される。
図4(a),(b)は、#240の研磨紙のプロファイル形状(新品時及び研削後)を示す鳥瞰図であり、図4(c),(d)は、#240の研磨紙の新品時、及び研削後のプロファイル形状を示す図である。
#240の研磨紙の新品のプロファイル形状では、突起の平均先端半径rは30μmであり、研削後のプロファイル形状では突起の平均先端半径rは300μmである。平均突起間隔はいずれも330μmであり、突起1個に作用する平均荷重Wは0.028(N)である。
これらの情報を用いて下記表1に示すように第1の摩擦力Fh、第2の摩擦力Fa及び係数Ehlが算出される。
上記表1における第1の摩擦力Fh、第2の摩擦力Fa及び係数Ehlから、ゴム材料は比較的凹凸の小さい滑らかな研削後の路面では、粘着摩擦力は増加するが、係数Ehlも増加し、この結果、第2の摩擦力Faの湿潤摩擦力Fに対する寄与が小さくなり、湿潤摩擦力Fが低下したと評価することができる。
以上より、サンプル1〜6のうち、サンプル6が、種々の湿潤路面上を走行するタイヤのトレッドゴムとしてウェット摩擦力を向上させるのに好適なゴム材料であると評価することができる。
このような評価は、湿潤摩擦力Fを、第1の摩擦力Fh、第2の摩擦力Fa及び係数Ehlに分解することによりはじめて可能である。
これらサンプル1〜6の評価結果より、係数Ehlが路面によって大きく変化しないゴム材料を設計することが有効であるといえる。
図5(a)は、第1の摩擦力Fhと、ゴム材料の粘弾性特性の物性値を用いた値tanδ/(E’)1/4(0℃)との間で、略直線の関係を有することを示している。図5(c)は、係数Ehlと、ゴム材料の物性値の1つであるハードネスHs(60℃)との間で略直線の関係を有することを示している。ハードネスHs(60℃)は、測定温度60℃におけるJIS6253(1997)に従ったデュロメーター(タイプA)硬さである。これより、湿潤摩擦力Fを増大させるには、tanδ/(E’)1/4を大きくし、ハードネスHsを大きくすることが好ましいことがわかる。一方、図5(b)は、第2の摩擦力Faは直線関係を有する物性値からなる指標を得られないことを示している。図5(b)では、Tb/E’(Tbは引張強さ)を横軸としている。引張強さTbは、JIS K6251(2004)に準拠した値である。これらの結果から、第2の摩擦力Faと相関を有する指標を見出すことが必要であるといった課題(指針)が得られる。
このように、湿潤摩擦力Fを分解して、第1の摩擦力Fh、第2の摩擦力Fa及び係数Ehlを求めることにより、湿潤摩擦力Fを向上させる上で大きな指針を得ることもできる。
12 コンピュータ
14 サンプル粘弾性測定試験機
16 サンプル摩擦試験機
18 ディスプレイ
20 マウス・キーボード
22 プリンタ
40 アルミ製回転ドラム
42 保持具
44 水供給管
46 水深調整皿
48 トルクメータ
Claims (4)
- ゴム材料の、湿潤路面に対する湿潤摩擦力を評価する方法であって、
ゴム材料の湿潤摩擦力をFとするとき、湿潤摩擦力Fは、第1の摩擦力Fh、第2の摩擦力Fa及び係数Ehlを用いて下記式(1)で表され、
ゴム材料が路面に対して滑るときに発生する第1の摩擦力Fhを、湿潤路面のプロファイルから求めるステップと、
ゴム材料が路面と粘着するときに発生する第2の摩擦力Faを、湿潤路面のプロファイルから求めるステップと、
湿潤摩擦力Fの計測結果から前記第1の摩擦力Fhを減算することにより下記式(1)中の(1−Ehl )・Fa を求め、この値と求めた前記第2の摩擦力Faとを用いて、ゴム材料と路面との間に水膜が介在することにより、湿潤摩擦力における前記第2の摩擦力の寄与を低下させる係数Ehlを求めるステップと、を有し、
前記第1の摩擦力Fa、前記第2の摩擦力Fh及び前記係数Ehlを用いて、湿潤摩擦力を評価する湿潤路面上のゴム材料の摩擦特性評価方法。
F = (1− Ehl )・Fa + Fh (1) - 前記係数Ehlは、湿潤路面のレプリカ路面上でゴム材料を摺動させて計測された湿潤摩擦力Fの計測結果を用いて求められるものであり、予め設けられた基準凹凸路面における前記係数E hl を0としたときの値である請求項1に記載の湿潤路面上のゴム材料の摩擦特性評価方法。
- 前記第2の摩擦力Faは、湿潤路面のプロファイル形状における突起の平均直径をDとし、ゴム材料の弾性係数をEとしたとき、下記式(2)で算出される請求項1又は2に記載の湿潤路面上のゴム材料の摩擦特性評価方法。
Fa = k・(D/E)(2/3) (2)
但し、kは定数である。 - 前記第1の摩擦力Fhは、湿潤路面のプロファイル形状における突起1個に作用する平均荷重をW、ゴム材料の弾性係数をE、ゴム材料の損失正接をtanδ、前記突起の平均先端半径をrとしたとき、下記式(3)で算出される請求項1〜3のいずれかに記載の湿潤路面上のゴム材料の摩擦特性評価方法。
Fh = f(tanδ)・(W/E)(1/4)・r−3/4 (3)
但し、f(tanδ)は、tanδの高次の多項式である。
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