JP4651454B2 - 触媒劣化診断方法、触媒劣化診断装置 - Google Patents

触媒劣化診断方法、触媒劣化診断装置 Download PDF

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本発明は、排出ガスを浄化する触媒の劣化を診断する方法及びその装置に関する。
一般に、自動車等に搭載された内燃機関から排出される排出ガスを浄化する目的で、排気系に排出ガス中の有害物質を酸化/還元して無害化する触媒を装着している。この触媒は、排出ガス熱等により経年劣化し、酸素ストレージ効果等が減退する。触媒の排出ガス浄化能力は、触媒内に吸着した酸素量に依存する。そのため、触媒内の酸素吸着量が排出ガスの浄化に最適な範囲内にあるように、空燃比を制御することが行われる。典型的には、触媒の上流側、下流側にそれぞれO2センサまたは空燃比センサを設けておき、両センサの出力信号を用いる二重のフィードバックループを構成して空燃比を制御する。加えて、昨今では、両センサの出力を基に触媒をモデル化したシステムを同定し、その同定結果を利用して触媒内の酸素吸着量を予測した上で空燃比制御を行うことも試みられている(例えば、下記特許文献1、2を参照)。
触媒の劣化がさらに進行すると、排出ガスに含まれる有害物質の量も増大するが、一方で自動車の運転性能に影響はほとんど発生しない。よって、異常な排出ガス車が長期間、無意識に使用され続けるおそれがある。上記の事象に対処するべく、自動車等に触媒の劣化の度合いを自己診断する機能を実装していることが多い。既に知られているように、触媒の上流側及び下流側に設けた各センサの出力信号の挙動を対比することで、触媒の劣化を診断可能である。
従来、触媒の劣化診断は、特定の運転状態(アイドリング状態、定常運転状態等)の下で空燃比フィードバック制御を止め、空燃比を強制的に振動させて、そのときの上流側センサ、下流側センサの出力信号を観測して行うのが通例となっている(例えば、下記特許文献3を参照)。
特開2002−364425号公報 特開2002−318604号公報 特開平05−209511号公報(特に、段落0096以降)
従前の触媒劣化診断は特定の運転状態下でのみ実施されるため、どうしても診断の機会が少なくならざるを得ない。しかも、劣化診断時に空燃比を強制的に振動させることから、一時的に排出ガスの悪化やドライバビリティの低下を招くきらいがあった。
上述した課題を解決するべく、本発明に係る触媒劣化診断方法では、機関の排気系に装着された触媒の上流側及び下流側に設けられ、酸素濃度または空燃比に応じた出力信号を出力する上流側センサ、下流側センサのそれぞれの出力信号を基に、触媒を含むシステムのモデルパラメータを可変忘却要素(Variable Forgetting Factor、対象が変化しないときには値を1に近づけ、対象が変化したときにはその値を自動的に減少させる忘却要素)を用いた逐時最小二乗(Recursive Least Squares)法により推定し、かつ、推定の過程で逐時算出するVFFの時系列を参照して触媒の劣化の度合いを診断することとした。
システムのモデルとは、システムへの入力に対する出力の関係を数式化したもので、そのモデルを決定づける複数のパラメータを含んでなる。本発明では、運転条件や経年劣化等に応じて特性が変化する触媒を動的システムとして数学モデル化し、VFFを用いたRLS法により逐時同定する。システムの入力は上流側センサの出力信号、システムの出力は下流側センサの出力信号である。触媒の酸素ストレージ効果等により、下流側センサの出力信号の変動の周期は上流側センサの出力信号のそれよりも長い傾向にあるが、触媒の劣化が進むほどその効果は失われて、下流側センサの出力信号が頻繁に変動するようになる。それに伴い、VFFの値が変化(減少)する頻度も高くなる。従って、VFFの値を指標とすれば、触媒の劣化の度合いを診断することができる。さらに、VFFを用いたRLS法を採用していることは、過渡運転状態等における触媒モデルの同定の精度向上にも寄与する。また、このような診断方法であれば、センサ出力が劣化診断の用に独占されて空燃比フィードバック制御が一時不能となる不都合を回避できる。加えて、センサの出力信号を周波数解析(FFT解析等)しなくともよいため、ソフトウェアの容量を低減できる。
具体的な診断手法としては、VFFの複数のサンプル値をそれぞれ所定の閾値と比較し、その比較結果の統計から触媒の劣化の度合いを判断することが考えられる。即ち、触媒の劣化が進んでいれば、VFFの複数のサンプル値の中に比較的小さい値が出現する割合が高くなることから、複数のサンプル値のうち所定の閾値よりも大きい(あるいは、小さい)値をとるものの個数または割合を計数して、その多寡により触媒の劣化の度合いを知得する。
なお、VFFの時系列を参照した結果、触媒の劣化の度合いが大きいと診断される場合に、先に推定したモデルパラメータからシステムの伝達関数を決定してその周波数特性を解析し、これを参照して触媒の劣化に関する最終的な判断を下すようにしてもよい。上流側センサ出力と下流側センサ出力との関係に鑑みれば、触媒を低域通過フィルタに見立てることができる。触媒の劣化の度合いが大きくなると、触媒の特性は低域通過フィルタから全域通過フィルタへと変貌してゆく。即ち、触媒システムの周波数特性(特に、高域カットオフ周波数)を掴むことで、触媒の劣化の度合いを定量的に評価することができる。VFFの時系列を参照して触媒の劣化を仮に診断し、劣化の度合いが大きいと考えられる場合にのみシステムの周波数解析を行うことで、劣化診断の精度の向上を図りつつ、周波数解析に伴う計算負荷を軽減することが可能となる。
本発明に係る触媒劣化診断方法を実施するためには、触媒の上流側における酸素濃度または空燃比に応じた出力信号を出力する上流側センサと、触媒の下流側における酸素濃度または空燃比に応じた出力信号を出力する下流側センサと、上流側センサ及び下流側センサのそれぞれの出力信号を基に、触媒を含むシステムのモデルパラメータをVFFを用いたRLS法により推定するシステム同定部とを具備し、システム同定部で逐時算出するVFFの時系列を参照して触媒の劣化の度合いを診断し得る触媒劣化診断装置を構成することが好ましい。
本発明によれば、特定の運転状態下でなくとも触媒の劣化診断を実施可能であり、診断機会を増やして触媒の劣化を好適に感知し得る。また、劣化診断時に空燃比フィードバック制御を止めて空燃比を強制的に振動させる必要がなく、排出ガスの悪化やドライバビリティの低下を避けることができる。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態における触媒劣化診断装置は、機関2で燃料を燃焼させることによって発生する有害物質を無害化する触媒3の劣化診断を行うためのものであって、図1に示すように、触媒3の上流側における酸素濃度または空燃比に応じた出力信号を出力する上流側センサ11(フロントセンサ)と、触媒3の下流側における酸素濃度または空燃比に応じた出力信号を出力する下流側センサ12(リアセンサ)と、両センサ11、12のそれぞれの出力信号を基に触媒3を含むシステムのモデルパラメータをVFFを用いたRLS法により推定するシステム同定部13と、システム同定部13で逐時算出するVFFの時系列を参照して触媒3の劣化の度合いを診断する診断部14とを具備する。
ハードウェア構成の概要を、図2に示す。本実施形態において、触媒劣化診断装置は自動車等に装備され、内燃機関2から排出される排出ガスを浄化する触媒3の劣化を感知する。内燃機関2は、例えば多気筒の燃料噴射式エンジンであり、吸気管圧力、エンジン回転数等を参照して燃料噴射量の基本量を設定し、その基本燃料噴射量にエンジン温度(冷却水温)や要求量、排出ガスの空燃比等に応じた補正を加えて燃料噴射量を決定する。
内燃機関2で生成された燃焼ガスは排出ガスとなり、排気ポートから排気系を形成する排気マニホルド41、触媒3及び排気管42を通じて大気中に放出される。触媒3の上流側に位置する排気マニホルド41には上流側センサ11を、下流側に位置する排気管42には下流側センサ12を、各々設ける。本実施形態では、上流側センサ11、下流側センサ12をともにO2センサとしている。O2センサは、排出ガスに接触して反応することにより、排出ガス中の酸素濃度に応じた電圧信号を出力する。O2センサの出力特性を、図3に例示する。O2センサは、空燃比に対して非線形な出力特性を有する。O2センサの出力電圧は理論空燃比近傍で急峻な傾きを示すが、それよりも空燃比が大きい領域では約0.1V、小さい領域では約0.8Vにほぼ飽和する。因みに、空燃比が理論空燃比14.5のときの出力電圧は約0.6Vとなっている。但し、上流側センサ11または下流側センサ12として、線形な出力特性を有する空燃比センサ等を用いることを妨げない。
上流側センサ11及び下流側センサ12は、吸気圧センサ、回転数センサ、水温センサ、カムポジションセンサ、スロットルセンサ等の各種センサとともに、電子制御装置5に電気的に接続している。電子制御装置5は、プロセッサ51、RAM52、ROM(または、フラッシュメモリ)53、A/D変換器54、I/Oインタフェース55等を包有する。上流側センサ11、下流側センサ12がそれぞれ出力する出力信号(加えて、他のセンサの出力信号)は、A/D変換器54を介して取得される。上流側センサ11、下流側センサ12の出力信号は、触媒3の劣化診断のみならず、空燃比の制御にも用いられる。
プロセッサ51が実行するべきプログラムはROM53に格納されており、その実行の際にROM53からRAM52へ読み込まれ、プロセッサ51によって解読される。電子制御装置5は、プログラムに従い、内燃機関2の制御を実行する。例えば、目標空燃比を実現するように燃料噴射量を決定し、決定した燃料噴射量に対応した制御信号をI/Oインタフェース55を介して燃料噴射弁に入力して、内燃機関2の燃料噴射を制御する。空燃比制御について補足すると、図4に示すように、触媒3の前後に設けたO2センサ11、12の出力信号を用いる二重のフィードバックループを構成して、空燃比フィードバック制御を行う。図4中、TTAUSは基本燃料噴射量を表す。Front A/F、Rear A/Fはそれぞれ、触媒3の上流側、下流側における排出ガスの空燃比であり、本実施形態では先に述べたO2センサにより検出する。上流側センサ11は電圧OXADを出力し、下流側センサ12は電圧OX2ADを出力する。フロントフィードバックの出力FAFは燃料噴射補正量、即ち基本燃料噴射量を何%補正するかを表す。リアフィードバックの出力FACFは、フロントフィードバックの制御誤差を補正する。OXAD*はOXADの目標値、OX2AD*はOX2ADの目標値であって、ともに0.6V近傍の値に設定する。
その上で、電子制御装置5は、プログラムに従い、図1に示す触媒劣化診断装置の要素であるシステム同定部13、診断部14としての機能を発揮する。
システム同定部13の機能である、触媒3のモデリング及びその同定に関して詳述する。本実施形態では、図5に示すような触媒3を含むシステムを、VFFを用いたRLS法により同定し、その過程で算出されるVFFの値を触媒3の劣化診断の指標とする。当該システムにあって、上流側センサ11の出力信号をシステムの入力u、下流側センサ12の出力信号をシステムの出力yとし、触媒3の特性をP、上流側センサ11の特性をS1、下流側センサ12の特性をS2とおくと、式(数1)が成立する。
Figure 0004651454
上式より、システムの入力uと出力yとの関係について、式(数2)が成立する。
Figure 0004651454
本実施形態では、システムを同定するための入出力データとして、触媒3の前後に設けたO2センサ11、12の出力を参照する。従って、厳密には、触媒3の特性だけでなくO2センサ11、12の特性をも同定の対象としていることになる。
触媒3は、運転条件や劣化等により化学的特性が変化することから、非線形時変システムであると言える。故に、オフラインの線形システム同定法によって高精度なモデリングを行うことは難しい。しかしながら、触媒3を動的非線形システムではなく動的かつ区分的線形システムとして考えれば、オンラインのシステム同定法であるVFFを用いたRLS法を適用することで、立上がりや立下がり等で異なる特性を分割して同定できる、ひいては高精度のモデリングを実現し得る。VFFとは、対象が変化しないときには忘却要素の値を1に近づけ、対象が変化したときにはその値を自動的に減少させるものである。
VFFを用いたRLS法の更新式を示す。
#1 一段先予測値
Figure 0004651454
#2 予測誤差
Figure 0004651454
#3 ゲイン
Figure 0004651454
#4 モデルパラメータ推定
Figure 0004651454
#5 忘却要素
Figure 0004651454
#6 共分散行列
Figure 0004651454
なお、kはサンプリング点を表し、u(k)はシステムの入力、y(k)はシステムの出力である。λminは、VFFλ(k)の下限である。Σ0は、追従速度を規定する定数である。Σ0を小さくすると追従性が向上し、大きくすると安定性が向上する。また、回帰ベクトルφ(k)は、下式(数9)で表される。nはモデルの次数である。
Figure 0004651454
次に、触媒モデルの同定実験の結果を示す。本実施形態では、空燃比フィードバック制御を止めることなく触媒3の劣化診断を行う。つまり、図4に示しているフィードバックループにおける上流側センサ11の出力OXADをシステムの入力、下流側センサ12の出力OX2ADをシステムの出力として同定を行うが、この問題は明らかに閉ループシステム同定問題となる。だが、TTAUSが運転条件に対応して変化することから、時変設定値のような外部入力が存在していると考えることができる。
触媒3の劣化の度合いによる同定結果の相異を明らかにするため、実験では下記の3種の触媒3を使用した。
(a)劣化触媒;通常評価時に使用する劣化触媒は6万km走行相当だが、これはさらにその10倍以上劣化したものである。尤も、浄化率が1/10以下になっているということであり、60万km走行相当の意ではない
(b)OBD触媒;通常評価時に使用する劣化触媒の4倍劣化したもの
(c)新品触媒
図6ないし図8に示すものは、CD34モード(実走行のデータから作られたテストモード。実使用条件に近い)の走行下で自動車を運転した場合における上流側センサ11の出力信号OXAD、下流側センサ12の出力信号OX2ADの実測データである。各データは、劣化触媒、OBD触媒、新品触媒という劣化度合い以外は全て同等の条件下で実験して得たものである。OXADは各データともほぼ同様であるが、OX2ADは触媒3の劣化度合いに応じた差異が認められる。OX2ADについて、劣化触媒では比較的振動的な応答を示し、反対に新品触媒では振動的でなくなっている。つまり、劣化によって触媒3の周波数特性が低域通過フィルタから全域通過フィルタへと変貌してゆくことが容易に想起される。因みに、OXAD、OX2ADともに0.1V近傍、0.8V近傍の値をとることが多いが、これは図3に示したO2センサのスイッチング特性に近い出力特性による。
図6ないし図8に示したセンサ11、12の出力信号を基に、VFFを用いたRLS法によるシステムの同定を行う。なお、ここでは、式(数10)に示すように、OXAD、OX2ADをサンプリングした値um(k)、ym(k)から、式(数11)で与えられるサンプル平均値(確率近似法のアルゴリズムに則ったオンライン推定値)を減算したものをシステムの実測入出力u(k)、y(k)とした。但し、サンプル値um(k)、ym(k)をそのままシステムの入出力u(k)、y(k)として同定を行うことも当然に可能である。
Figure 0004651454
Figure 0004651454
同定モデルの次数nは、例えば2とする。VFFの下限λminは、例えば0.97とする。また、追従速度を決定するΣ0の値は、実験では一段先予測値と実測出力との平均二乗誤差(Mean Square Error)が最小となるように決定するものとし、1.0とした。触媒3のモデリングを行った結果を、図9ないし図11に示す。図9ないし図11中、上段のグラフは、一段先予測値を破線で、実測出力を実線で示したものであるが、一段先予測値が実測出力によく追随できており、グラフの上で両者の区別をつけるのは難しい。下段のグラフは、VFFの値を示したものである。実測出力の立上がりや立下がりに伴い、VFFの値は大きく減少している。これは、実測出力の立上がりや立上がりの際に対象が変化したと判断しているためである。触媒3の劣化の度合いが大きくなるにつれて、実測出力が頻繁に変動するようになり、VFFの値が変化(減少)する頻度も高くなることが分かる。
続いて、診断部14の機能である、触媒3の劣化診断に関して述べる。触媒3の劣化診断に際しては、触媒システムの同定の過程で算出されるVFFの値の時系列を参照する。例えば、VFFの複数のサンプル値のうち所定の閾値よりも大きい(あるいは、小さい)値をとるものの個数または割合を計数し、その多寡によって触媒3の劣化の度合いを診断する。本実施形態では、一部のまたは全てのサンプリング点kに対して下記の判定式(数12)を適用し、この判定式を満足するサンプリング点kの割合を計算する。
Figure 0004651454
λbは閾値である。また、lは非負整数とする。上式(数12)は区分的または動的なVFFの変化を表すものであり、上式(数12)を満足するサンプリング点kの割合を忘却要素変化率と呼ぶこととする。閾値λbを0.9999、lを10に設定し、実験で得たVFFについて忘却要素変化率を計算した結果を、図12に示す。触媒3の劣化の度合いが大きくなるにつれて、忘却要素変化率が概ね線形的に減少することが分かる。
電子制御装置5がプログラムに従い実行する劣化診断の手順を、図13のフローチャートに示す。時刻kにおいて、まず、上流側センサ11、下流側センサ12のそれぞれの出力信号をサンプリングして、システムの入出力の値を得る(ステップS1)。既に述べたように、システムの入出力値は、式(数10)、(数11)から得てもよく、センサ11、12の出力信号のサンプル値をそのまま用いてもよい。
次に、時刻kにおける触媒モデルを、VFFを用いたRLS法を適用して同定する(ステップS2)。触媒モデルの同定は、式(数3)ないし(数9)に則り、一段先予測値、予測誤差、ゲイン、モデルパラメータ、忘却要素及び共分散行列を計算することで行う。上記ステップS1、S2を通じて得られるシステムの入出力値、モデルパラメータ、忘却要素、共分散行列等のデータは、RAM52またはフラッシュメモリ53の所要の記憶領域に格納しておく。
その上で、VFFの時系列を参照して触媒3の劣化診断を行う。具体的には、忘却要素変化率を計算し(ステップS3)、その忘却要素変化率が所定の基準値よりも小さい場合(ステップS4)に、交換等が必要な程度に触媒3の劣化が進んでいるものと判断する。触媒3の劣化が進んでいると判断した暁には、その旨を人間の視聴覚に訴えかける態様で通知する(ステップS5)。例えば、電子制御装置5がI/Oインタフェース55を介して電気信号を出力し、コックピット内で発光デバイスを点灯または点滅させる。
しかして、電子制御装置5は、図13に示している処理手順をkをインクリメントしつつ反復的に実行し、触媒3の劣化を監視する。但し、触媒劣化診断ステップ(S3、S4)は、触媒モデルの同定(ステップS1、S2)とは独立に、言い換えるならば異なる周期で実行することができる。
本実施形態によれば、特定の運転状態下でなくとも触媒3の劣化診断を実施することができ、診断機会を増やして触媒3の劣化を好適に感知し得る。VFFを用いたRLS法を採用していることは、過渡運転状態等における触媒モデルの同定の精度向上にも寄与する。また、センサ11、12の出力が劣化診断の用に独占されて空燃比フィードバック制御が一時不能となる不都合を回避できる。加えて、センサ11、12の出力信号を周波数解析しなくともよいため、ソフトウェアの容量を低減できる。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。特に、VFFを用いたRLS法により同定したシステムのモデルパラメータから、システムの伝達関数を決定し、その周波数特性を解析して触媒3の劣化の度合いを定量的に評価することも可能である。以降、システムの周波数特性を解析して触媒3の劣化診断に利用する変形例を説明する。
このときの電子制御装置5は、プログラムに従い、図14に示す触媒劣化診断装置の要素であるシステム同定部13、診断部14並びに解析部15としての機能をも発揮する。解析部15は、システム同定部13で推定した触媒システムのモデルパラメータから当該システムの伝達関数を決定し、その周波数特性を解析する。特に、伝達関数のゲインが定常ゲインに対し所定の割合以下になる周波数を算出して、その高低によって触媒3の劣化に関する判断を下す。
解析部15の機能である、伝達関数の決定及び周波数特性の解析に関して述べる。同定モデルの次数を2と仮定すると、式(数6)で推定されるモデルパラメータから次数2、むだ時間1の入出力差分方程式(数13)を得ることができる。
Figure 0004651454
1、a2、b1及びb2は、離散時間のモデルパラメータ推定値である。オンラインのシステム同定を行っているので、厳密にはa1(k)、a2(k)、b1(k)、b1(k)と表記するべきかもしれないが、ここでは簡単化のため(k)を省略する。上記の入出力差分方程式(数13)に対応する離散時間伝達関数は、
Figure 0004651454
である。この離散時間伝達関数G(z)を、双一次変換によって連続時間伝達関数Gc(s)に変換する。式(数15)を式(数14)に代入して連続時間伝達関数Gc(s)を求めると、式(数16)のようになる。
Figure 0004651454
Figure 0004651454
sはサンプリング周期である。また、ac1、ac2、bc1、bc2、bc3は連続時間伝達関数のパラメータであり、それぞれ下式(数17)で示される。
Figure 0004651454
式(数16)で、s=jω(ωは角周波数)とおくことにより、Gc(s)の周波数伝達関数Gc(jω)は、
Figure 0004651454
となる。さて、システムの高域カットオフ周波数(または、バンド幅)は、ゲイン|Gc(jω)|が定常ゲインに対し1/√2倍になる周波数のことであるから、高域カットオフ周波数ωbについて下式(数19)が成立することになる。
Figure 0004651454
式(数19)の両辺を二乗して整理すると、
Figure 0004651454
と表すことができる。上式(数20)をωb 2について解く際、以下の二点に注意する必要がある。
(i)α2−4β<0またはωb 2の解が両方とも負であるならば、Gc(jω)は高域通過フィルタまたは全域通過フィルタの如き特性を示し、高域カットオフ周波数は存在しない
(ii)ωb 2の解が両方とも正であるならば、Gc(jω)は反共振点を持つ(凹形をなす)。即ち、ゲインが定常ゲインの1/√2になる周波数が二つ存在する
これら(i)、(ii)の何れかに該当する場合には、高域カットオフ周波数の算出を行わない。β<0、ωb 2の解の一つが正である場合にのみ、高域カットオフ周波数を算出することになる。その場合、
Figure 0004651454
として高域カットオフ周波数(ωbまたはfb。ωb>0、fb>0であることに留意)を計算する。但し、上式(数21)より得られる高域カットオフ周波数fbが、ナイキスト周波数fn=(2Ts-1よりも大きいならば、その値を劣化診断において利用しない。
電子制御装置5がプログラムに従い実行する劣化診断の手順を、図15のフローチャートに示す。本変形例では、VFFの時系列を参照した結果、触媒3の劣化の度合いが大きいと仮診断される場合に、伝達関数の決定及び周波数解析を実施する。ステップS1ないしS4は、上述した実施形態と同様に実行する。そして、ステップS4にて、その忘却要素変化率が所定の基準値よりも小さい場合にのみ、ステップS6に移行する。
伝達関数の決定及び高域カットオフ周波数の算出は、対象が頻繁に変化せず落ち着いている区間で行うことが望ましい。故に、時刻kにおいて、システム同定の過程で算出されたVFFの時系列が下式(数22)の条件を満足していることを条件として(ステップS6)、システムの周波数解析を開始する。
Figure 0004651454
即ち、時刻kにおいて、過去lサンプルに亘ってVFFの値が閾値λfb以上であれば、対象が落ち着いているとしてシステムの伝達関数を決定する(ステップS7)。伝達関数の決定は、式(数13)ないし(数18)に則り、VFFを用いたRLS法により同定されたモデルパラメータから連続時間伝達関数のパラメータを計算することで行う。
続いて、式(数20)に示すβが負であることを条件として(ステップS8)、式(数21)に示す高域カットオフ周波数を計算する(ステップS9)。その上で、この高域カットオフ周波数がナイキスト周波数より大きいものでなければ(ステップS10)、これを所定の基準値と比較して触媒3の劣化に関する最終的な判断を下す。高域カットオフ周波数が所定の基準値よりも大きい場合(ステップS11)、交換等が必要な程度に触媒3の劣化が進んでいるものと判断して、その旨を人間の視聴覚に訴えかける態様で通知する(ステップS5)。
しかして、電子制御装置5は、図15に示している処理手順をkをインクリメントしつつ反復的に実行し、触媒3の劣化を監視する。但し、触媒劣化診断ステップ(S3、S4、S6ないしS11)は、触媒モデルの同定(ステップS1、S2)とは独立に、言い換えるならば異なる周期で実行することができる。
以上のように、VFFの時系列を参照して触媒3の劣化を仮に診断し、劣化の度合いが大きいと考えられる場合にのみシステムの周波数解析を行うことで、劣化診断の精度の向上を図りつつ、周波数解析に伴う計算負荷を軽減することが可能となる。
その他、各部の具体的構成や処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明に係る触媒劣化診断装置の構成説明図。 同触媒劣化診断装置のハードウェア資源構成図。 2センサの出力特性を示す図。 空燃比フィードバック制御ループを説明する図。 触媒システムを説明する図。 劣化触媒について、触媒システムの出力及び入力を示す図。 OBD触媒について、触媒システムの出力及び入力を示す図。 新品触媒について、触媒システムの出力及び入力を示す図。 劣化触媒について、触媒システムの出力及びVFFを示す図。 OBD触媒について、触媒システムの出力及びVFFを示す図。 新品触媒について、触媒システムの出力及びVFFを示す図。 触媒の劣化度合いと忘却要素変化率との関係を示す図。 触媒の劣化診断における処理手順を示すフローチャート。 本発明に係る触媒劣化診断装置の構成説明図。 触媒の劣化診断における処理手順を示すフローチャート。
符号の説明
11…上流側センサ
12…下流側センサ
13…システム同定部
14…診断部
2…機関
3…触媒
41、42…排気系

Claims (4)

  1. 機関の排気系に装着された触媒の上流側及び下流側に設けられ、酸素濃度または空燃比に応じた出力信号を出力する上流側センサ、下流側センサのそれぞれの出力信号を基に、触媒を含むシステムのモデルパラメータを可変忘却要素を用いた逐時最小二乗法により推定し、
    かつ、推定の過程で逐時算出する、対象が変化しないときには値を1に近づけ対象が変化したときにはその値を自動的に減少させる忘却要素である可変忘却要素の時系列を参照して触媒の劣化の度合いを診断することを特徴とする触媒劣化診断方法。
  2. 可変忘却要素の複数のサンプル値をそれぞれ所定の閾値と比較し、その比較結果の統計から触媒の劣化の度合いを診断する請求項1記載の触媒劣化診断方法。
  3. 可変忘却要素の時系列を参照した結果、触媒の劣化の度合いが大きいと診断される場合において、
    推定したモデルパラメータからシステムの伝達関数を決定してその周波数特性を解析し、
    かつ、解析した周波数特性を参照して触媒の劣化に関する判断を下す請求項1または2記載の触媒劣化診断方法。
  4. 機関の排気系に装着された触媒の劣化の度合いを診断するためのものであって、
    触媒の上流側における酸素濃度または空燃比に応じた出力信号を出力する上流側センサと、
    触媒の下流側における酸素濃度または空燃比に応じた出力信号を出力する下流側センサと、
    前記上流側センサ及び前記下流側センサのそれぞれの出力信号を基に、触媒を含むシステムのモデルパラメータを可変忘却要素を用いた逐時最小二乗法により推定するシステム同定部とを具備し、
    前記システム同定部で逐時算出する、対象が変化しないときには値を1に近づけ対象が変化したときにはその値を自動的に減少させる忘却要素である可変忘却要素の時系列を参照して触媒の劣化の度合いを診断し得るように構成した触媒劣化診断装置。
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