JP4649671B2 - 酵素センシングにおける検出セル、及び酵素センシングシステム - Google Patents

酵素センシングにおける検出セル、及び酵素センシングシステム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酵素センシングシステムにおいて用いる検出セルに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、医療や食品関係で高感度で、選択性の高いセンサーの開発が望まれている。バイオセンサーは、その有力な候補である。たとえば、尿素を例に取ると、酵素を用いたバイオセンサーの研究開発が活発に行われている。検出の方法としては、酵素ウレアーゼとの特異反応を利用したときのpH変化を検出する電位検出型が一般的である。しかし、近年電流検出型の尿素センサーについても検討されている。両者の一般的な特性を比較すると、表1に示す通りである。
【0003】
【表1】
Figure 0004649671
【0004】
従って、両者とも、理想的ではなく、満足できるものは得られていない。
【0005】
センサーにとって感度は最も重視しなくてはならないものであり、その観点からは電流検出型が望ましい。さらに電流型にすれば、緩衝液の濃度にも依存されずに最終的な数値の取り扱いも容易になる。しかし、妨害物質の影響を受け、さらに尿素の電流検出を行う際酵素を2種類以上用いた複雑な系を用いなければならない。
【0006】
このような点から、本発明者らは、pH応答性の電解重合絶縁性ポリピロール被覆電極を用いたバイオセンサーについて検討を行ってきている。特に、酵素をポリイオンコンプレックス中に固定化し、電解重合膜を複合化した電極において高感度電位検出型尿素センサーを報告しているが、このセンサーの今後の発展のためには、下記の技術課題がある。
▲1▼尿素の電位応答が緩衝液濃度に依存する。
▲2▼酵素反応に伴い電極付近のpHが大きく変化し、酵素の変性・失活が起こり、センサーの劣化および長期間安定性に欠ける。
▲3▼電位応答が尿素濃度対数値に比例するため扱いにくい。
【0007】
このため、上記の問題点を解決するためのアプローチとしてpH変化を電流応答に変換するpHスタット法に着目し、電流検出型への転換を行った。また、一般的に電流検出型は電極活性物質の影響を受けやすいという問題があるため、フローインジェクション分析(FIA)法を用いその影響を排除するセンシングシステムを構築し、尿素検出の可能性の確認を報告している。これによれば、種々の緩衝液濃度においてほぼ同一の電流応答が得られ、尿素濃度に対して直線的な応答を得ることができ、また電極活性物質(妨害物質)の影響を受けにくく、妨害電流が生じないことが確認された。
【0008】
しかしながら、上記方法を実用化する上で、pH測定を行うセルの構造をできるだけコンパクトにし、またセルの選定によっては、応答値の再現信頼性に劣る場合もあることから、常に確実な応答再現性を与えるセル構造が要望された。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記要望に応えるために鋭意検討を行った結果、pHスタット型フローアンペロメトリックセンシングシステムに最適なセル構造を見出したものである。
【0010】
即ち、本発明は、試料液が流れている流路に所用物質を注入し、試料液を酵素に接触させて、この試料液中の所用物質を酵素反応させると共に、この試料液流路とは別の流路において所用の電解液を電気分解することにより水素イオン(H+)又は水酸化物イオン(OH-)を発生させた電解液を流し、上記酵素反応によりpH変化が生じた試料液と、上記水素イオン(H+)又は水酸化物イオン(OH-)を含む電解液を混合し、上記pH変化が生じた試料液を中和して、上記pH変化が生じた試料液のpHを初期のpHで一定に保つのに要する上記電気分解の電流値を指標として上記試料液中の所用物質の濃度を測定するフローインジェクション分析による酵素センシングにおける検出セルであって、上記試料液が流れる流路と、上記水素イオン(H+)又は水酸化物イオン(OH-)を含む電解液が流れる流路と、これら両流路と連通し、上記両液が乱流状態で混合される混合ゾーンと、この混合ゾーンと連通し、上記両液の混合液のpHを測定するpH測定部と、このpH測定部に連通し、上記混合液をpH測定部から排出する排出流路とを備えたことを特徴とする検出セル、及び
上記検出セルと、上記検出セルの試料液流路と連通する試料流路部と、該試料流路部の一端と連通する試料液容器と、上記検出セルの電解液流路と連通する電解液流路部と、該電解液流路部の一端と連通する電解液容器とを備え、
上記試料流路部が、一端が上記試料液容器に連通し、他端が上記検出セルに連結された試料液管に、上流側から下流側にかけてポンプ、インジェクションバルブ、及び酵素固定化カラムが介装されてなり、
上記電解液流路部が、一端が上記電解液容器に連通し、他端が上記検出セルに連結された電解液管に、上流側から下流側にかけてポンプ及び電解セルが介装されてなることを特徴とする酵素センシングシステムを提供する。
【0011】
pHスタット法に基づいた新規バイオセンシングシステムの実用化には、システムの心臓部であるpH検出用セルの構造の最適化と再現性に富む計測特性の向上が肝要となる。前述のように本システムでは二流路を用いているために、その二流路の接合部において合流液が瞬時に均一、混合化されることが要求される。従って、セル構造を最適に設計するため、セルの精密加工、作製も必須とされる。また、本システムにおけるキャリヤー(緩衝液)と電解液流の各通液速度も高精度で制御されることが肝心である。その上、分析時間の短縮化、および検査試料量の大幅な削減も課題とされるが、上記セル構造によれば、かかる課題を確実に達成し得るものである。
【0012】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0013】
図1は、本発明に係るpHスタット型フローアンペロメトリックセンシングシステムの一例を示す説明図で、図中Aは試料流路部、Bは電解液流路部である。試料流路部Aは、一端が試料液容器10に連通していると共に、他端が検出セル(FETセル)Cに連結された試料液管11に、上流側から下流側にかけて順次ポンプ12、インジェクションバルブ13、酵素固定化カラム15が介装され、上記試料液容器10内の試料液が、ポンプ12、インジェクションバルブ13の作動によりサンプルループ14に保持された試料が酵素固定化カラム15内に導入され、このカラム15内の酵素により上記試料液中の所用の物質、例えば尿素が酵素反応し、この酵素反応によって試料液のpH変動が生じ、このpH変動が生じた試料液が上記セルC内に供給される。また、電解液流路部Bは、一端が電解液容器20に連通し、他端が上記セルCに連結された電解液管21に、上流側から下流側にかけてポンプ22、電解セル23が介装されているものである。ここで、上記電解セル23は、塩橋或いは隔膜24等によって2室(イオン発生室25と対極室26)に分離され、イオン発生室25にはジェネレーション電極(G.E.)27が配設され、対極室26にはカウンター電極(C.E.)28が配設されているもので、図示していないが、これら電極27、28はポテンショスタットに接続され、上記電解液容器20内の電解液がポンプ22によって電解セル23内に導入され、電気分解されるようになっている。この場合、ジェネレーション電極(G.E.)27を陰極とした際、水の電気分解であれば、ここで水素イオン(H+)が発生し、水酸化物イオン(OH-)は対極室26に移行し、上記電気分解によって発生した水素イオン(H+)を含む電解液が上記検出セルCに供給される。
【0014】
図2は、この検出セルCの一実施例の概略を示す分解斜視図であり、図3〜6は検出セルC構成図を示す。図中31がセル本体を示す。このセル本体31には、上記試料液管11の他端と連通する試料液流路孔32及び電解液管21の他端と連通する電解液流路孔33がそれぞれ形成されている。ここで、セル本体31は略図角ブロック状に形成され、上記試料液流路孔32は、セル本体31の一側面から側方に伸び、途中で上向きに折曲してセル本体31の上面に達するL字状に穿孔された状態に形成されていると共に、電解液流路孔33は、セル本体31の他の側から側方に伸び、途中で上向きに折曲してセル本体31の上面に達する同様のL字状に穿孔された状態に形成されており、これら両流路孔32、33の上端開口部は互いに近接している。
【0015】
図41は天板であり、この天板41は、セル本体31と天板41との間に内部連通空間を有する通液性多孔板42が介在した状態でセル本体31上面に取り付けられるようになっている。なお、セル本体31と天板41との間には、ガスケット44が介装され、セル本体31と天板41とは液密に保持される。上記多孔体42は、この多孔体42がセル本体31と天板41との間に介装された状態において混合ゾーン43を形成し、その一端側は上記両流路32、33の上端開口部と連通し、多孔体42(混合ゾーン43)の一端側に試料液と電解液とがそれぞれ流入し、この多孔体42内を他端側に流動するようになっており、多孔体42内を流れる際、上記試料液と電解液とが十分に混合されるものである。
【0016】
上記多孔体42(混合ゾーン43)の他端側に位置して、上記セル本体31には、上下方向に貫通する流下路孔34が形成され、上記試料液と電解液との混合液が流下すると共に、セル本体31の下面には、長孔52が形成され、この長孔52が混合液流通路53とされたガスケット51を介してpH測定用のISFET(Ion Sensitive Field Effect Transistor)54が配設された支持板55が液密に取り付けられるようになっている。この場合、上記長孔52(混合液流通路53)の一端側は、上記流下路孔34が連通していると共に、上記ISFET54は混合液流通路53内に露呈し、混合液と接触し得るようになっている。
【0017】
更に、上記セル本体31には、上記長孔52(混合流通路53)の他端側と連通して、上記セル本体31の下面から側面に上向傾斜して貫通する混合液排出流路孔35が形成されていると共に、セル本体31の別の側面から側方に向けて先端が上記排出流路孔35と連通する参照電極挿入孔36が形成され、この挿入孔36に参照電極(R.E.)56が挿入、配設されるようになっている。なお、図中37は取付孔であり、これに図示していない支柱が挿入される。
【0018】
上記システムはフローインジェクション分析を利用して試料を注入し、「酵素反応を専用に行う流路」と「酵素反応の結果生ずるpH変化を打ち消すための、水の電気分解専用流路」の2流路から構成され、pH検出部手前において合流し、検出するものである。2流路を構成することにより目的物質以外の卑な酸化還元電位を持つ妨害物質の影響を抑制できるという利点がある反面、溶液の流れ分布に問題が生じる。そこで、検出部セルの作製においてはそれを考慮した混合層を設置することが肝要である。また、測定の迅速化には検出部セルの容積を可及的に小さくし、セル中の流路を細くすればよい。電気分解セルの作製において応答の再現性を得るには、電気分解により生成される水素イオン(H+)および水酸化物イオン(OH-)を確実に分離し、水素イオン(H+)の再現性の良い形成が可能である。
【0019】
上記システムにより、例えば尿素を定量する場合、尿素は、酵素(例えばウレアーゼ)固定化カラムにおいて次のように酵素反応すると共に、電解セルにて次のようなアノード電解反応が生じる。
【0020】
Figure 0004649671
【0021】
酵素反応における水素イオン(H+)の消費量を(2)式の水のアノード電解により生ずる水素イオン(H+)で補うことでpHを一定に保ち、そのときに要した電流値を指標として尿素濃度の測定を行うもので、図1に示す測定システムは実試料を用いた尿素測定時の電極活性物質(妨害物質)の影響を排除するため、電気分解のみを行う電解液流路部と試料のみが流れる試料液流路部とに分けられる。試料及び電気分解により生成した水素イオン(H+)とFETセルにて混合される。セル中に設置されたISFETにおいて試料pHを検出し、初期pH値になるようにジェネレーション電極(G.E.:Pt tube)にて水の電気分解を行い、水素イオン(H+)を供給している。ここで、試料は電解液流路部に流入しないので妨害物質はG.E.にて酸化されず妨害電流応答は検出されない。
【0022】
即ち、上記酵素反応によりpHが上昇した試料液に、上記水素イオン(H+)を含む電解液を混合し、この混合液のpHをISFETにおいて検出し、このpHが初期のpH値になるに要する水素イオン(H+)補充量、従ってポテンショスタットの印加電流量から尿素濃度を算出する。この場合、pH変化(この場合はpH上昇)が生じた試料液に電気分解後の電解液(この場合は水素イオン(H+)を含む電解液)を混合する際、両液が十分に混合されないと、検出値にばらつきが生じ、再現性が低下するが、上記検出セルによれば、両液の混合は通液多孔板を混合ゾーンとしてこの多孔体内を流れるときに行われるので、両液は十分に混じり合い、確実に混合される。従来のセル構造は、この混合ゾーンが単に長溝とされていたため、上記両液が長溝に導入され、この長溝内を流れるときに層流となるため、両液が十分に混ざり合わない場合が生じ、検出の再現性、精度に劣る場合があった。この場合、長溝をより長くすれば、両液が十分に混合される可能性が高くなるが、そうすると検出セルが長くなり、或いは大型化する。これに対し、上記検出セル構造によれば、混合ゾーンが通液性多孔体によって形成されるため、多孔体自体の長さが短くても両液が十分に混合し、検出セルもコンパクトになる。しかも、単に通液性多孔体を介装するだけで混合ゾーンを形成し得るので、セル本体を含む検出セルの構造も簡単なものとなる上、安価に製作し得るものである。
【0023】
本発明において、混合ゾーンは、上記多孔体の配設によって形成される場合に限られず、混合ゾーンを両液が乱流状態で流れることが可能である構成であればよく、例えばセル本体上面又は天板下面に長溝を形成すると共に、この長溝の両内側壁にそれぞれ側方に向けて突出する突出部を交互に設け、長溝流路を液がジグザク状に流れるように構成するようにしてもよいが、製作的には面倒である上、コストも高くなるおそれがあることから、上記多孔体の使用も混合性、製作性、コスト等の点で最も優れている。
【0024】
なお、上記多孔体としては、内部連通空間を有し、通液性のあるものであれば、材質は制限されず、試料液、電解液に不活性である限り、セラミックスでもプラスチックでもよい。また、多孔体の代りに不織布を用いることも効果があり、場合によっては織布でもよいが、親水性を有するものが好ましい。
【0025】
また、上記検出セルは、排出路孔がセル本体の下面より上向傾斜した状態に形成されているので、他の流路、混合ゾーンに対し若干の背圧がかかり、この点から混合ゾーンを流れる両液の十分な混合がより保障されるものである。
【0026】
本発明は、加水分解に係わる酵素触媒反応の全てに適用できる特徴を持ち、尿素の測定に限られず、酵素を選定することにより、酵素反応可能な種々の物質の測定を行うことができる。この場合、酵素反応でpHが低下するような物質であれば、電解セルのGEをポテンショスタットの陽極に接続し、pHの低下した試料液に水酸化物イオン(OH-)を供給し、上記と同様に操作すればよく、上記と同様の妨害電流応答のない測定が可能である。
【0027】
以上のように、本発明においては、pHスタット法を用いることにより、単純な1酵素を用いる電流検出が可能になる。さらに、フローインジェクション法を用いて2経路にすることで妨害物質の影響も受けなくなった。更にシステム化を行うことで大量サンプル連続測定が可能である。したがって、表1の理想的な検出を行うことができる。
【0028】
本発明における適用デバイスとして、緊急用のアナライザーやパーソナル用のアナライザーに照準を措いている。本センシングシステムは、フローインジェクション分析(FIA)によりセンシングを行っていることから、バッチシステムのような不連続操作とは異なり、定常状態のほか非定常状態でも測定を行うことが可能である。従って、より迅速な測定を実現出来るシステムになりうると考えられる。さらに自動化も行えるので、実用性の高いシステムであると言える。
【0029】
また、実用化のためには、検査時間の短縮と検査サンプルの少量化である。例えば、現在は10から15分間要してしまう検査時間を2から3分程度に短縮する必要があるが、上記検出セルによれば、上記混合ゾーンにおいて瞬時の均一混合が行われることから、検査時間の短縮化が可能である。さらに、2mlのサンプルのみならず、数10μl程度の少量でも検出できるものである。
【0030】
本発明のセンシングシステムは、酵素カラムを用いているためにメンテナンスフリーで長期安定性に優れた分析システムとなり得、さらに専門的な知識・操作が必要でないことに利点がある。FIAによりセンシングを行っていることから、緊急な場合でも迅速に測定ができ、バックアップ用のセンシングシステムとしての優れた利点も有している。また、小型、軽量、安価なシステム構築が可能なことからパーソナルユース用にも最適である。
【0031】
一方で、従来の尿素分析は吸光光度計による分析が一般的なために、サンプル測定に際して前処理を施す必要があり、さらに、装置も大きく、重く、高価であることが挙げられる。このため、多くのサンプルを一度に測定する病院や分析センターのような場所での使用には最適であるが、緊急用の測定や専門的な知識や技術を有していない個人的な使用には適していない。それゆえ、医療や食品等の各分野において、尿素等のセンシングを緊急かつ簡便に測定可能なシステム構築が望まれている。しかしながら、従来の尿素分析システムではその要求には応じられない。これに対し、本発明のシステムによれば、以上のような尿素のセンシングに対する要求に応じるばかりでなく、今後高まるセンシングに対する要望に応えることが可能で、酵素カラムの固定化酵素を変えることによりpH変動を伴う反応すべてに適応可能な、汎用性の高いバイオセンシングシステムといえるものである。
【0032】
【実施例】
以下、実施例により本発明につき更に具体的に説明する。なお、以下の実験は図2〜6の検出セルを用いて図1に示すシステムで行った。この場合、セル本体としては、57mm×50mm×高さ25mmの大きさのものを用い、内部が透視し得るようにアクリル樹脂を用いて作製した。また、多孔体としてはポリエチレン系のものを用いた。その大きさは、長さ約25mm、幅約4mm、厚さ1.6mmであった。
【0033】
[実施例1]
電解液として0.1MNa2SO4水溶液を用いると共に、試料液として0.1MNa2SO4を含む10mMPBSを用い、疑似尿素としてNaOHをアルカリ試料とした。このため、この実験では固定化酵素カラムは使用していない。
【0034】
上記検出セル(FETセル)を用いてシステムの最適化の検討を行い、電解液200μl/min、試料液200μl/minが最適流量であることがわかった。最適化した流量値にてアルカリ試料を用いてpHスタットシステムの動作確認を行った結果、アルカリ濃度に対する電流応答は図7に示すように直線性を示した(相関係数0.991)。これよりpHスタットシステムが予期したとおりに機能することを確認でき、本システムヘの尿素測定の適用が可能であると考えられた。
【0035】
尿素の長期間測定には固定化酵素が長期間測定可能であること及び本システムの安定性が必要とされる。そこで、図8に示すように126μMアルカリ試料を繰り返し注入し、本システムのpHスタット応答再現性について調べた。その結果、30回の連続アルカリ電流応答に対し、一定した応答を示し(相対標準偏差4.35%)、本システムが長期間測定において安定して動作することを確認できた。以上の結果より、開発したpHスタット型フローアンペロメトリックセンシングシステムは、固定化酵素が長期間に活性を保持するのであれば、尿素の長期間測定が可能であることがわかった。
【0036】
以上のように、pHスタット型フローアンペロメトリックセンシングシステムの開発を行い、下記の知見を得た。
(1)溶液の混合を十分に行うために混合ゾーンを設け信頼性を向上した。
(2)アルカリ濃度に対する電流応答は直線性を示した(相関係数0.991)のでセンシングシステムとして十分な特性を得ることができた。
(3)30回の繰り返しアルカリ電流応答に対し、一定した応答を示し(相対標準偏差4.35%)、長期間安定であることを確認した。
【0037】
[実施例2]
酵素固定化カラムとして、内部に開発したpHスタット型フローアンペロメトリックセンシングシステム〔4〕内の酵素固定化カラム中には、ウレアーゼ(99 units/mg、ナタ豆由来)が多孔質ガラスビーズ(controlled pore glass:Mean Pore Dia. 246Å)に固定化され、充填されているものを用いた。尿素の加水分解時の水素イオン(H+)の消費量を、ジェネレーション電極(G.E.)において水の電気分解により生じる水素イオン(H+)を供給することにより、下流のISFETに流入する溶液のpHすなわち電位を一定に保ち、このようにISFETにて感知される電位を一定に保つために必要である電気分解量(印加電流値)を尿素電流応答とみなし、尿素濃度との比例関係を利用して試料中の尿素を検出した。
【0038】
図9に、センシングシステム中の酵素カラムに充填した固定化酵素の長期間安定性について調べた結果を示す。図9より、酵素ウレアーゼは尿素試料204回の測定を行った後も、尿素電位応答が一定(相対標準偏差:5.61%、n=204)であることから、尿素連続測定において酵素が活性を保っていることが分かった。
【0039】
電流応答の再現性を調べた結果、図10のように、15回の連続尿素電流応答に対し、40μAの一定した応答を示した(相対標準偏差:5.64%、n=15)。前述のように204回の連続測定において酵素活性が失活しないことから、連続尿素電流応答も非常に再現性よく、長期的に安定して得られると考えられる。
【0040】
そこで、次に尿素濃度を100〜800μMに変化させて電流応答を測定した(図11)。これより、尿素−電流応答間に良好な直線性が得られていることが分かった。尿素含有生体試料を20倍希釈して用いると、100〜800μMの直線範囲内で定量可能である。
【0041】
次に、尿素の電流応答を妨害する物質の代表例として考えられるアスコルビン酸について検討を行った。アスコルビン酸の生体中濃度は、上限値約400μMであるが、本検討では約20倍希釈したものを試料として用いるため、約20μMのアスコルビン酸共存下において尿素電流応答に影響を受けなければよいことになる。表2より、100μM尿素+20μMアスコルビン酸試料において、アスコルビン酸は尿素電流応答に影響を及ぼさないことが確認できた。
【0042】
【表2】
Figure 0004649671
【0043】
そこで、100μM尿素サンプル中のアスコルビン酸濃度を増大させていき、尿素電流応答に影響を与えない上限値を調べた。その結果、表3のようにアスコルビン酸は尿素との共存濃度を50μMまで上昇させても、尿素電流応答に影響を与えないことが分かった。
【0044】
【表3】
Figure 0004649671
【0045】
60μM以上の濃度における尿素電流応答の減少は、アスコルビン酸を添加することで試料のpHが下がるために、アルカリ側への尿素電流応答が妨害されるものと考えられる。
【0046】
リン酸塩緩衝液(PBS)の緩衝作用により、アスコルビン酸の添加による試料pHの低下を軽減する、という観点から、リン酸塩緩衝液(PBS)の濃度を50mMに変え、10mMの場合との検出応答電位上限値との比較を行った。
【0047】
表4の結果より、10mMのリン酸塩緩衝液(PBS)の場合、アスコルビン酸濃度が60μMで電位変化を生じてしまうが、50mMのリン酸塩緩衝液(PBS)においては、緩衝液の緩衝作用により90μMまで、電位変化を生じないことが明らかとなった。よって、表2、3、4の結果より、作製した尿素センサーは実試料の測定においても、妨害物質の影響を受けることなく、尿素の検出が可能であると考えられる。
【0048】
【表4】
Figure 0004649671
【0049】
以上のことから、pHスタット型フローアンペロメトリックセンシングシステムの尿素分析への応用を検討した結果、尿素濃度100−800μMで直線性が保たれ、妨害物質の影響も受けないことが確認された。本システムを用いることにより、有効な尿素の検出が行なえることを確認した。
【0050】
【発明の効果】
本発明の検出セルは、pHスタット型フローアンペロメトリックセンシングシステムに好適に用いられ、優れた応答信頼性を与えるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るpHスタット型フローアンペロメトリックセンシングシステムの説明図である。
【図2】本発明の一実施例に係る検出セルの概略を示す分解斜視図である。
【図3】同検出セルの平面図である。
【図4】同検出セルの底面図である。
【図5】同検出セルの右側面図である。
【図6】同検出セルの正面図である。
【図7】アルカリ試料液に対する電流応答値を示すグラフである。
【図8】126μMNaOHに対するpHスタット応答の長期安定性を示すグラフである。
【図9】固定化ウレアーゼの長期安定性を示すグラフである。
【図10】100μM尿素に対する電流応答の長期安定性を示すグラフである。
【図11】尿素濃度に対する電流応答を示すグラフである。
【符号の説明】
A 試料流路部
B 電解液流路部
C 検出セル
10 試料液容器
11 試料液管
12 ポンプ
13 インジェクションバルブ
14 サンプルループ
15 酵素固定化カラム
20 電解液容器
21 電解液管
22 ポンプ
23 電解セル
24 塩橋又は隔膜
25 イオン発生室
26 対極室
27 ジェネレーション電極
28 カウンター電極
31 セル本体
32 試料液流路孔
33 電解液流路孔
34 流下路孔
35 混合液排出流路孔
36 参照電極挿入孔
37 取付孔
41 天板
42 通液性多孔板
43 混合ゾーン
51 ガスケット
52 長孔
53 混合液流通路
54 ISFET
55 支持板
56 参照電極

Claims (5)

  1. 試料液が流れている流路に所用物質を注入し、試料液を酵素に接触させて、この試料液中の所用物質を酵素反応させると共に、この試料液流路とは別の流路において所用の電解液を電気分解することにより水素イオン(H+)又は水酸化物イオン(OH-)を発生させた電解液を流し、上記酵素反応によりpH変化が生じた試料液と、上記水素イオン(H+)又は水酸化物イオン(OH-)を含む電解液を混合し、上記pH変化が生じた試料液を中和して、上記pH変化が生じた試料液のpHを初期のpHで一定に保つのに要する上記電気分解の電流値を指標として上記試料液中の所用物質の濃度を測定するフローインジェクション分析による酵素センシングにおける検出セルであって、
    記試料液が流れる流路と、上記水素イオン(H+)又は水酸化物イオン(OH-)を含む電解液が流れる流路と、これら両流路と連通し、上記両液が乱流状態で混合される混合ゾーンと、この混合ゾーンと連通し、上記両液の混合液のpHを測定するpH測定部と、このpH測定部に連通し、上記混合液をpH測定部から排出する排出流路とを備えたことを特徴とする検出セル。
  2. 混合ゾーンが、内部連通空間を有する通液性の多孔体、不織布又は織布の配設により形成されている請求項1記載の検出セル。
  3. 上記pH測定部に、混合液のpHを測定するためのISFETを備える請求項1又は2記載の検出セル。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項記載の検出セルと、上記検出セルの試料液流路と連通する試料流路部と、該試料流路部の一端と連通する試料液容器と、上記検出セルの電解液流路と連通する電解液流路部と、該電解液流路部の一端と連通する電解液容器とを備え、
    上記試料流路部が、一端が上記試料液容器に連通し、他端が上記検出セルに連結された試料液管に、上流側から下流側にかけてポンプ、インジェクションバルブ、及び酵素固定化カラムが介装されてなり、
    上記電解液流路部が、一端が上記電解液容器に連通し、他端が上記検出セルに連結された電解液管に、上流側から下流側にかけてポンプ及び電解セルが介装されてなることを特徴とする酵素センシングシステム。
  5. 上記電解セルが、イオン発生室と対極室とに分離され、上記イオン発生室に電解液を電気分解するジェネレーション電極が配設され、上記対極室にカウンター電極が配設されて、両電極がポテンショスタットに接続されると共に、上記検出セルのpH測定部に参照電極が配設されて、上記ポテンショスタットの印加電流値を上記電気分解の電流値として上記試料液中の所用物質の濃度を測定するように構成してなる請求項4記載の酵素センシングシステム。
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